発明の詳細な説明
〔技術分野〕
本発明は、再発性妊娠損失のバイオマーカーと該バイオマーカーの使用法とに関する。
〔背景技術〕
妊娠20週未満の妊娠のうち推定で全体の10%〜15%が流産に終わる(Stirrat, Lancet 336:673-675, 1990)。再発性流産の定義は古くから確立されており、臨床的に確認された妊娠(但し、奇胎妊娠と子宮外妊娠を除く)が妊娠20週目を迎える前に流産に終わるケースが3回以上連続して続いた場合、再発性流産と診断される。流産のリスク評価を行った前向き研究によると、流産が1回発生した後に続けて流産が発生するリスクは15%である一方、流産が2回発生した後に続けて流産が発生するリスクは17%〜31%まで上昇し、流産が3回以上発生した後に続けて流産が起きるリスクは25%〜46%まで上昇するということである。なお、1回目(または、時として2回目)の妊娠損失までは正常の範囲内である(そして、妊娠損失が配偶子の障害に起因する可能性が高い)と多くの臨床医は考えている。しかし、妊娠損失の発生回数が3回以上になった場合では、病状との関連性が一般に考えられる。したがって、大半の臨床医は、連続して2回以上流産が発生した場合になって初めて、再発性妊娠損失(RPL)評価を行う。
〔発明の概要〕
再発性妊娠損失(RPL)歴のある女性と産科的合併症を併発することなく妊娠を経験している経産婦とを液性免疫反応について比較した場合、IgGのサブクラスと認識されるトロホブラスト細胞抗原とにおいて差異が見られることを発見し、該液性免疫反応上の差異の特徴付けを行った。本発明は、この液性免疫反応上の差異の発見および特徴付けの少なくとも一部に基づいている。よって、本発明に含まれる方法は、アポリポタンパク質B−100(ApoB−100)、アルファ2マクログロブリン(α2M)、およびフィブロネクチンの3つのタンパク質に特異的に反応する通常とは異なる液性反応の存在に基づいて、妊娠損失リスクを診断する方法および該妊娠損失リスクを予測する方法である。(i)トロホブラスト由来のフィブロネクチンおよび/またはアポリポタンパク質B−100に対する母体のIgG抗体が存在している、該IgG抗体が検出可能なレベルである、または、該IgG抗体が増加している場合、および/または、(ii)α2Mに対する抗体認識が存在している、該抗体認識が検出可能なレベルである、または該抗体認識が増加している場合は、RPL歴および将来的な妊娠損失リスクの増大に結び付けられる。
本発明が提供する方法は、対象(すなわち、女性の対象者(被験者))の妊娠損失リスクを予測する方法であって、(i)対象由来の血清を含有するサンプルを準備する工程と、(ii)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)、α2M(タンパク質または核酸)、およびApoB−100(タンパク質または核酸)のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)に対する抗体の、上記サンプル中での存在、非存在、またはレベルを検出する工程とを含み、上記サンプル中において、(a)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)に対する抗体および/またはApoB−100(タンパク質または核酸)に対する抗体の存在、または該抗体の検出可能なレベル、および/または、(b)α2M(タンパク質または核酸)に対する抗体の存在、または該抗体の検出可能なレベルによって、上記対象の妊娠損失リスクが増大していることが示される方法である。上記方法のいくつかの実施形態は、対象由来の血清を含有するサンプルを準備する工程と、フィブロネクチンに対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程とを含み、フィブロネクチンに対する抗体の上記サンプル中での存在が、上記対象の妊娠損失のリスクが増大していることを示す。また、上記方法のいくつかの実施形態は、ApoB−100に対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程をさらに含み、ApoB−100に対するフィブロネクチンに対する抗体の存在が、上記対象の妊娠損失のリスクが増大していることを示す。また、上記方法のいくつかの実施形態は、α2Mに対する抗体の上記サンプル中での非存在または存在を検出する工程をさらに含み、上記フィブロネクチンに対する抗体またはApoB−100に対する抗体の存在、またはα2Mに対する抗体の存在が、上記対象の妊娠損失リスクが増大していることを示す。
また、本発明が提供する他の方法は、妊娠損失のリスクがある対象を特定する方法であって、(i)上記対象由来の血清を含有するサンプルを準備する工程と、(ii)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)、α2M(タンパク質または核酸)、およびApoB−100(タンパク質または核酸)のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)に対する抗体の、上記サンプル中での存在、非存在、またはレベルを検出する工程とを含み、上記サンプル中において、(a)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)に対する抗体および/またはApoB−100(タンパク質または核酸)に対する抗体を有している場合、および/または、(b)α2M(タンパク質または核酸)に対する抗体を有している、または該抗体のレベルが検出可能な場合、上記対象を妊娠損失のリスクがある対象として特定する方法である。上記方法のいくつかの実施形態は、上記対象由来の血清を含有するサンプルを準備する工程、およびフィブロネクチンに対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程を含み、フィブロネクチンに対する抗体を上記サンプル中に有する場合、上記対象を妊娠損失のリスクがある対象として特定する。また、上記方法のいくつかの実施形態は、さらに、ApoB−100に対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程を含み、フィブロネクチンに対する抗体またはApoB−100に対する抗体を上記サンプル中に有する場合、上記対象を妊娠損失のリスクがある対象として特定する。また、上記方法のいくつかの実施形態は、さらに、上α2Mに対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程を含み、上記サンプル中において、フィブロネクチンに対する抗体またはApoB−100に対する抗体を有する場合、またはα2Mに対する抗体を有する場合、上記対象を妊娠損失のリスクがある対象として特定する。
また、本発明が提供する他の方法は、臨床研究の被験者とする対象を選定する方法であって、(i)上記対象由来の血清を含有するサンプルを準備する工程と、(ii)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)、α2M(タンパク質または核酸)、およびApoB−100(タンパク質または核酸)のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)に対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程とを含み、上記サンプル中において、(a)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)に対する抗体および/またはApoB−100(タンパク質または核酸)に対する抗体を有する場合、および/または、(b)α2M(タンパク質または核酸)に対する抗体を有する、あるいは該抗体のレベルが検出可能な場合、上記対象を臨床研究の被験者に選定する方法である。上記方法のいくつかの実施形態は、対象由来の血清を含むサンプルを準備する工程、およびフィブロネクチンに対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程を含み、フィブロネクチンに対する抗体を上記サンプル中に有する場合、上記対象を臨床研究の被験者として選定する。上記方法のいくつかの実施形態は、さらに、ApoB−100に対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程を含み、フィブロネクチンに対する抗体またはApoB−100に対する抗体を上記サンプル中に有する場合、上記対象を臨床研究の被験者として選定する。また、上記方法のいくつかの実施形態は、さらに、α2Mに対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程を含み、上記サンプル中において、フィブロネクチンに対する抗体またはApoB−100に対する抗体を有する場合、または、α2Mに対する抗体を有する場合、上記対象を臨床研究の被験者として選定する。
また、本発明が提供するさらに他の方法は、対象の妊娠損失リスクを減少させる方法であって、(i)上記対象由来の血清を含有するサンプルを準備する工程と、(ii)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)、α2M(タンパク質または核酸)、およびApoB−100(タンパク質または核酸)のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)に対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程とを含み、上記サンプル中において、(a)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)に対する抗体および/またはApoB−100(タンパク質または核酸)に対する抗体を有する場合、および/または、(b)α2M(タンパク質またはmRNA)に対する抗体を有する、あるいは該抗体のレベルが検出可能な場合、上記対象に治療上の処置を行う工程と、を含む方法である。上記方法のいくつかの実施形態は、対象由来の血清を含有するサンプルを準備する工程と、フィブロネクチンに対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程と、フィブロネクチンに対する抗体が上記サンプル中に存在する場合、上記対象に治療上の処置を行う工程とを備える。また、上記方法のいくつかの実施形態は、ApoB−100に対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程と、フィブロネクチンに対する抗体またはApoB−100に対する抗体が上記サンプル中に存在する場合、上記対象に治療上の処置を行う工程とを備える。また、上記方法のいくつかの実施形態は、α2Mに対する抗体の上記サンプル中での存在または非存在を検出する工程と、上記サンプル中において、フィブロネクチンに対する抗体またはApoB−100に対する抗体が存在する場合、または、α2Mに対する抗体が存在する場合、上記対象に治療上の処置を行う工程とをさらに含む。また、上記方法のいくつかの実施形態では、上記治療上の処置は、補体抑制因子、ホルモン療法、ステロイド療法、静注用免疫グロブリンを使用する受動免疫療法、アスピリン、および腫瘍壊死因子−(TNF−α)アンタゴニストとからなる一群から選択される。
上述の何れかの方法では、上記対象は現在妊娠している。また、上述の全ての方法の任意の実施形態では、上記サンプルは、妊娠20週以内(例えば、妊娠19週以内、妊娠18週以内、妊娠17以内、妊娠16以内、妊娠15週以内、妊娠14週以内、妊娠13週以内、妊娠12週以内、妊娠11週以内、妊娠10週以内、妊娠9週以内、妊娠8週以内、妊娠7週以内、妊娠6週以内、妊娠5週以内、妊娠4週以内、妊娠3週以内、妊娠2週以内、または妊娠1週以内)、妊娠13週以内、または妊娠12週以内の上記妊娠中の対象から取得される。
上記方法のいくつかの実施形態では、上記対象は、過去に妊娠損失を少なくとも1回(例えば、2回、3回、4回、または5回)経験しているか、または、過去に妊娠損失を少なくとも1回(例えば、2回、3回、4回、または5回)経験していると疑われる対象である。上述の全ての方法のいくつかの実施形態では、上記対象は現在妊娠していないが、将来的に妊娠することを計画または検討している対象である。
上述の全ての方法のいくつかの実施形態では、過去に妊娠損失を少なくとも1回経験している、またはそのように疑われる上記対象は、現在妊娠してもよいし、妊娠してなくてもよい。また、上述の全ての方法のいくつかの実施形態では、上記サンプルは、過去に妊娠損失を少なくとも1回経験している、またはそのように疑われる上記妊娠中の対象から、20週以内(例えば、妊娠19週以内、妊娠18週以内、妊娠17以内、妊娠16以内、妊娠15週以内、妊娠14週以内、妊娠13週以内、妊娠12週以内、妊娠11週以内、妊娠10週以内、妊娠9週以内、妊娠8週以内、妊娠7週以内、妊娠6週以内、妊娠5週以内、妊娠4週以内、妊娠3週以内、妊娠2週以内、または妊娠1週以内)、妊娠13週以内、または妊娠12週以内に取得される。
上述の全ての方法のいくつかの実施形態では、抗体の存在、非存在、またはレベルの検
出を行う工程では、ApoB−100(タンパク質または核酸)と、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)とからなる一群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)の抗原またはその抗原性フラグメントを上記サンプルに接触させ、上記抗原に対する抗体の結合を上記サンプル中において検出する。いくつかの実施形態では、上記抗原を表面上(例えば、アレイ内またはビーズ上)に固定する。上述の全ての方法のいくつかの実施形態では、上記ApoB−100(タンパク質または核酸)、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)、および/またはα2M(タンパク質または核酸)は、トロホブラスト由来である。上述の全ての方法のいくつかの実施形態では、上記対象はヒトである。
また、ApoB−100(タンパク質または核酸)、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)、およびα2M(タンパク質または核酸)の1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)、またはその抗原性フラグメントを主成分として含有するキットも提供する。
本明細書に用いられる場合、“対象” という用語は、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、および高等霊長類など哺乳類網の任意の種を含む脊椎動物を指し、ヒト、家畜動物および野生動物、動物園の動物、スポーツ用動物、または愛玩動物を含む。好適な実施形態では、上記対象はヒトである。
“以前に妊娠損失を経験していると疑われる” という語句は、以前に流産の症状(例
えば、膣からの出血、骨盤内の痙攣、腹痛、腰部の持続性の痛み、および血栓、または、膣を経過する灰色組織)を1以上(例えば、1、2、3、または4)経験したが、該症状の発症時点では妊娠と診断されていない(例えば、医療専門家による診断を受診していなかったり、家庭用診断キットを使用した診断を行っていたりしない)対象を意味する。
また、“以前に妊娠損失を経験している対象”という語句は、以前に流産を少なくとも1回(例えば、2回、3回、4回、または5回)経験している対象を意味する。例えば、この語句の意味する対象は、医療専門家(例えば、医師、看護士、医師助手、または検査技師)または家庭用診断キットにより妊娠と診断された後、流産の症状(例えば、膣からの出血、骨盤内の痙攣、腹痛、腰部の持続性の痛み、および血栓、または、膣を経過する灰色組織)を1以上経験するか、または、出産に至るまで胎児を妊娠し続けられなかった対象であってもよい。また、以前に発生した1回以上の流産を医療専門家(例えば、医師、看護士、医師助手、または検査技師)が確認していてもよい。
また、“抗原”または“抗原性フラグメント”という語句は、抗体によって特異的に認識される分子(例えば、ペプチド、核酸(例えば、mRNA))、炭水化物、および脂質の何れか、または、これらの任意の組み合わせ)の任意の部位を意味する。例えば、抗原または抗原性フラグメントは、少なくとも5個の連続するアミノ酸(例えば、少なくとも6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸)を有するペプチドでもよい。ペプチド抗原の例またはペプチド抗原性フラグメントの例は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18の何れか1つで示される配列内の少なくとも5個の連続するアミノ酸(例えば、少なくとも6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸)を含むものである。上記連続するアミノ酸の配列は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18の何れか1つに示す上記配列内の任意の部位に存在してもよく、例えば、N末端から開始する配列、C末端で終了する配列、または上記配列内の任意の単一アミノ酸から開始する配列(但し、上記タンパク質のC末端側の最後の4個のアミノ酸を除く)としてもよい。ペプチド抗原の更なる例は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18の何れか1つに示す配列を含む。
核酸からなる抗原または抗原性フラグメントの例は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、および17の何れか1つのうちの配列内の少なくとも5個(例えば、少なくとも6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個)の連続するヌクレオチドを含むものである。上記連続するヌクレオチドの配列は、配列番号1、3、5、7、9、11、13,15,および17の何れか1つに示す上記配列内の任意の部位に存在してもよく、例えば、5’末端から開始する配列、3’末端で終了する配列、または上記配列内の任意の単一ヌクレオチドから開始する配列(但し、上記核酸の3’末端側の最後の4個のヌクレオチドを除く)としてもよい。核酸抗原の更なる例は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、および17の何れか1つに示す配列を含む。
“妊娠損失リスクのある”という用語は、妊娠期間中に流産が発生するリスクがコントロール集団よりも高い対象を意味する(例えば、コントロール集団は、対象と同じ年齢のコントロールからなる集団、再発性妊娠損失と診断されなかったコントロールからなる集団、流産の経験が無いコントロールからなる集団、または、流産の症状が一度に3つ以上組み合わさって発症した経験が無いコントロールからなる集団)。
また、“将来的に妊娠することを計画または検討している対象”という語句は、現在妊娠していないが、将来的に妊娠することを計画または検討している対象を意味する。
“治療上の処置(治療法)”という語句は、対象の流産リスクを低下させる治療上の処置を意味する(例えば、対象の流産リスクを著しく(少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%など)低下させる治療上の処置(なお、本明細書に用いる場合、“低下”という用語は統計学的に有意な低下を意味する)。治療上の処置の非限定的例は当該技術分野において公知であり、補体抑制因子、ホルモン療法、ステロイド療法、静注用免疫グロブリンを使用する受動免疫療法、アスピリン、TNF−αアンタゴニストを含むが、これに限定されない。これら治療上の処置の例を本明細書に説明するが、治療上の処置の更なる例は当該技術において公知である。
他に特に規定がなければ、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明に使用される方法および材料を本明細書に説明するが、当該技術分野に公知の他の好適な方法および材料を使用することもできる。上記材料、方法、および、例は一例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書内にて言及する全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、および他の参考文献については、参照することによりその全内容を援用する。なお、矛盾が生じる場合には、用語の定義を含めて本明細書が優先される。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明と、図面と、請求の範囲とから明らかであろう。
〔図面の簡単な説明〕
図1は、トロホブラスト細胞タンパク質を取得する方法例とウエスタンブロットを行う方法の例を示す概略図である。
図2は、コントロールである満期産患者由来の全血中抗体の免疫反応性プロファイルとRPL患者の全血中抗体の免疫反応性プロファイルとを比較して示す代表的なウエスタン
免疫ブロットの結果を示す図である。妊娠第1三半期のSW71細胞株由来の核タンパク質、細胞タンパク質、細胞質タンパク質を10% SDS−PAGEゲルに塗布して、電
気泳動にて分離した後、コントロール群および試験群(RPL患者)から採取した血清を利用するウエスタン免疫ブロット法を使用して対象の自己抗体の反応性について分析した。RPL病歴を有する女性と妊娠・出産が正常なコントロールとに対して行ったウエスタンブロット法の全ての結果を比較したところ、PRL病歴を有する女性から採取した血清の免疫反応性は、コントロールから採取した血清の免疫反応性よりも高い値を示した。すなわち、核抗原に対する全抗体反応性について比較した場合、PRL病歴を有する女性から採取した血清の全抗体反応性が、コントロールから採取した血清の免疫反応性の全抗体反応性よりも3.6倍大きく(p=0.0044)、膜由来抗原に対する全抗体反応性について比較した場合、PRL病歴を有する女性から採取した血清の全抗体反応性が、コントロールから採取した血清の免疫反応性の全抗体反応性よりも4.1倍大きく(p=0.0001)、細胞質抗原に対する抗体認識について比較した場合、PRL病歴を有する女性から採取した血清中の抗体認識が、コントロールから採取した血清中の抗体認識よりも1.8倍大きかった(p=0.0113)。
図3は、図1に示すよう実施した6つのウエスタンブロットの実験の結果を示すものであり、図3A−3Cは満期産を経験したコントロールからのサンプルについての実験結果を示し、図3D−3FはPRL患者のサンプルについての実験結果を示す。また、図3Aおよび3DはIgGAMのレベルを示し、図3Bおよび3EはIgG2のレベルを示し、図3Cおよび3FはIgG3のレベルを示す(MW、分子量;M、膜タンパク分屑;N、核タンパク分屑;C、細胞質タンパク分屑)。
図4は、SW−71細胞の膜または核に由来する抗原に対してコントロール(満期産)群およびRPL群が示す抗体の反応性を示す棒グラフである。これら実験では、抗体−抗原複合体を有するウエスタンブロット法用のx線フィルムをスキャンし、2値化した後、ピクセル濃度へ変換した。核分画、膜分画、または、細胞質分画の何れかに由来する抗原に対する免疫反応を標準化し、平均値と標準偏差を算出した。
図5は、2つのウエスタンブロットと、該ウエスタンブロットで各レーンのトロホブラスト抗原(核抗原、膜抗原、細胞質抗原)に対して得られる抗体反応性のピクセル濃度を示す6つのグラフである。コントロール(満期産)について実施されたウエスタンブロットの典型例と、関連する3つのグラフとを示し(図中の上半分)、RPL対象について実施されたウエスタンブロットの典型例と、関連するグラフを示す(図中の下半分)。RPL対象について実施したウエスタンブロットで測定された反応性は、コントロール(満期産)について実施されたウエスタンブロットの典型例およびそのピクセル濃度グラフと比較して1.8倍大きい。
図6は、免疫沈降を利用したタンパク質発現のプロファイリングを行う方法例を示す概略図である。
図7は、コントロール(満期産)とRPL被験者との間で一致しない抗原−抗体複合体を示す。図中の矢印はα2−マクログロブリンと、フィブロネクチンと、アポリポタンパク質B−100とを示す。
〔発明を実施するための形態〕
胎児は母体にとって同種移植片であると言えるが、胎児がどのようにして同種反応性の母体環境内で生存しているかについては未解明のままである。細胞性免疫の抑制は妊娠の兆候の1つとして考えられ、妊娠が無事に分娩に至る上で重要な要因である。再発性妊娠損失(RPL)については、未知の要因およびメカニズムが多く、その病態生理学が複雑になっている。妊娠損失の原因として提案されているもののうち現在臨床評価に適用可能なものには、子宮または骨盤の解剖学的欠損、遺伝的または分子的異常、内分泌障害、血栓形成、抗リン脂質抗体症候群がある。しかし。最大で50%のケースでは、再発性妊娠損失の病因が特定されていない(Szekeres-Bartho et al., Hum. Reprod. Update 14:27-35, 2008)。増加する証拠が、母児間免疫調節の様々な異常機構の関与を裏付け、母体にとって同種移植片に等しい胎児が同種反応性の母体環境内で生存していることは未だ説明が付かないままだが、細胞性免疫の抑制が妊娠の兆候の1つとして考えられ、妊娠が首尾よく分娩に至る上で重要な要因であると考えられる。妊娠損失の病因はさまざまであり、遺伝子的要因、解剖学的要因、感染による要因、環境的な要因、免疫学的要因、内分泌要因、血液学的な要因を含む複数因子が潜在的に関与することで、しばしば議論を招いている。
通常の妊娠時における母体の免疫反応の抑制については、幾つかの経路が仮定されており、これら経路として、非対称性の防御抗体、抑制細胞の誘導、特定の典型的な主要組織適合(MHC)抗原の不足、抑制因子の生成および放出、Fasリガンド(FasL)の媒介によるT細胞のアポトーシス誘導、ヘルパーT1(Th1)に対するヘルパーT2(Th2)の割合の変化(Choudhury et al., Hum. Reprod. Update 7:113-134, 2001; Giacomini et al., Hum. Immunol. 39:281-289, 1994; Gill et al., Am. J. Reprod. Immunol. 41:23-33, 1999; Guller et al., Semin. Reprod. Endocrinol. 17:39-44, 1999; Mellor et al., Ann. Rev. Immunol. 18:367-391, 2000; Zavazava et al., Mol. Med. Today 4:116-121, 1998; Jenkins et al., Fertil. Steril. 73:1206-1208, 2000; Wilson et al., Fertil. Steril. 76:915-917, 2001)などが挙げられる。複雑で相互に結び付いていると考えられる上記母体の免疫反応を効果的に調節できない場合、胎盤形成に障害が生じる。一部の研究では、例えば、子宮内膜へ改変自己抗体が結合すると、胚着床が阻害されることが示唆されている。着床障害とその後の胎盤形成障害は、同種移植片である胎児の部分的なまたは全体的な拒絶の発症に重要な役割を果たしていると考えられ、自然流産などの合併症を引き起こす。
妊娠の成功例は、抗体生成(例えば、胎児反応性のIgG抗体の生成)率の増大と細胞媒介反応の減少とによって特徴付けられる、Th2型免疫反応への移行(例えば、Th2/Th1の免疫反応比の増大)に関連付けられる。ヒトの妊娠損失と妊娠成功例とにそれぞれ関連するTh1サイトカイン像とTh2サイトカイン像とを説明をするために、immunodystrophism理論が提唱されてきた。自然発生的に胎児を流産する母体の子宮内リンパ球には、着床に先行する免疫表現型の明確な特徴が見られ、母体子宮内の免疫状態が本質的に変化していることを示している。
妊娠期間中にT型リンパ球を活性化した場合、以下の異なる2つのサイトカイン像のうち何れかが発生する:細胞性免疫を抑制するTh2型分泌のサイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、およびIL−10)と細胞性免疫を誘発させる(例えば、T細胞の活性化)Th1型分泌のサイトカイン(例えば、IFM−γ、IL−2、およびTNF−α)。T細胞抑制を抑制できない場合、不妊と妊娠の有害転帰とにおける潜在的な主要原因である、胎児に対する細胞性免疫反応が発生してしまうことがある。Th1サイトカインに対するTh1サイトカインの割合の増大は、妊娠の成功と関連しており、Th1サイトカインに対するTh1サイトカインの割合の低下は、再発性妊娠損失に関連している(Jenkins et al., Fertil. Steril. 73:1206-1208, 2000; Hill et al., JAMA 273:1933-1936,1995)。臨床研究によれば、子癇前症などの妊娠合併症の患者では、Th1型サイトカインの生成が優位であることが示されている(Hill et al., JAMA 273:1933-1936, 1995)。これらの機構の一部または全体が機能的であるか否かについての決定的な証拠は無いが、免疫抑制にとって重要な機構が妊娠早期において極めて重要であると思われる。
T細胞の活性化を抑制できない場合、不妊と妊娠の有害転帰とにおける潜在的な重要原因を代表する、胎児に対する細胞性免疫反応が発生する場合がある。さらに、データによると、通常の妊娠患者におけるIgGの生起の誘発がIgG2サブクラスの優位性への転換と関連することも示唆されたが、このような関連性は再発性妊娠損失の女性患者には存在しないと思われる。ひとつの仮定として、再発性妊娠損失を患っている女性においては、エフェクター機能を含まない抗胎児性免疫反応か、または、エフェクター機能の弱い抗胎児性免疫反応への変換が生起しない。
本明細書において説明したように、再発性妊娠損失の病歴を有する女性は、アポリポタンパク質B−100と、アルファ2マクログロブリンと、フィブロネクチンとの3種類のタンパク質に対する抗体の異常な存在または非存在を示す。よって、トロホブラスト由来のフィブロネクチン(タンパク質または核酸)および/またはApoB−100(タンパク質または核酸)に対する母体のIgG抗体の存在、検出可能なレベル、または増大と、α2M(タンパク質または核酸)に特異的に結合する抗体の存在、検出可能なレベル、または増加との何れか一方または両方が、RPLの病歴と将来的な妊娠損失の大きなリスクと関連している。
(アポリポタンパク質B−100)
妊娠は高脂質血症を伴い、主にトリグリセリド値とリポタンパク質値の上昇を伴う(Sarandol et al., Clin. Biochem. 37:990-996, 2004; Cekmen et al., Clin. Biochem. 36:575-578, 2003)。リポタンパク質は内皮機能に直接的に関与し、酸化の影響を受けやすい(Sarandol et al., Arch. Gynecol. Obstet. 270:157-160, 2004)。アポリポタンパク質B(ApoB−100およびApoB−48)は、循環系内を輸送できるようにトリグリセリドおよびコレステロールエステルなどの中性脂肪をリポタンパク質内にパッキングするための枠組みを提供する。低比重リポタンパク質(LDL)受容体は、細胞内へのApoBの取込みを仲介するとともに、酸化を防ぐ。トロホブラスト細胞は、LDL受容体と該LDL受容体に関連するタンパク質を高レベルに発現する。子宮内発育遅延(IUGR)胎児に認められるApoBの高血中濃度は、ApoBの生成が過剰であること、ApoBの活用が不足していること、および/または、ApoBが細胞内へ異常に取込まれていることを示唆する。
リポタンパク質の酸化が、妊娠合併症(子癇前症およびIUGRなど)の発症に重要な役割を果たしていることが提案されてきた(Sarandol et al., Arch. Gynecol. Obstet. 270:157-160, 2004)。正常な妊娠の場合、生理的高脂質血症の発症が、抗酸化防御機構、ホルモン作用、または、他の生化学的作用により制御されていると考えられている(Cekmen et al., Clin. Biochem. 36:575-578, 2003; Sarandol et al., Arch. Gynecol. Obstet. 270:157-160, 2004)。これら制御機構に異常が生じた場合、酸化的損傷を仲介して播腫性内皮機能不全を引き起こす脂質過酸化産物が生成されうる(Sarandol et al., Clin. Biochem. 37:990-996, 2004)。正常な妊娠では、恐らく、酵素または他の基質/タンパク質/分子がリポタンパク質の安定化または活用を行い、酸化の一般的な経路を防ぐ。
一部の研究者によって、リポタンパク質の酸化防止における抗酸化物質(ビタミンEおよび/またはエストロゲンなど)の役割が提案されてきた(Sarandol et al., Arch. Gynecol. Obstet. 270:157-160, 2004)。一方、内因性保護機構が欠如している場合、子宮胎盤インターフェイスおいてリポタンパク質が異常なまでに酸化的損傷を被ることもある。
妊娠早期の母体の黄体においてApoBの活性が検出されてきた(Yamada et al., Human Reprod. 13:944-952, 1998)。黄体細胞は、血清由来のコレステロール化合物から合成されたプロゲステロンを豊富に生成して分泌する。ApoBが黄体のステロイド産生細胞へのLDLの取込みを示すことが研究により明らかにされた。ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)が与えられると、黄体細胞のLDL受容体のmRNAのレベルが向上する(Yamada et al., Human Reprod. 13:944-952, 1998; Benyo et al., Endocrinology 133:699-704, 1993)。内因性または外因性のHCGは、LDL受容体の存在の保存および/または増大に関与しうるため、プロゲステロンの実質的な産生に必要とされるコレステロール化合物の取込みを保持する。健康な妊娠患者では、恐らく、ApoBが抗体認識されると、抗体認識されたApoBが黄体形成に使用できたり、こうしたApoBの使用が支援されるので、妊娠早期期間中の支援および発達に必要とされるプロゲステロンが分泌できたり、プロゲステロンの分泌が支援される。一方、IgG認識を示さない患者では恐らく、黄体が機能不全に陥り、その結果として再発性妊娠損失が引き起こされる。
ApoBのmRNAの発現位置がヒト胎児卵黄の内胚葉細胞内にあることが特定されてきた(Cekmen et al., Clin. Biochem. 36:575-578, 2003)。そして、マウスの卵黄嚢内においてApoBが検出されたことにより、母性由来で栄養分に富んだApoB含有リポタンパク質が発生中の胚の卵黄嚢内へ輸送およびパッキングされる仕組みを適切に模倣するモデルが作製できた(Cekmen et al., Clin. Biochem. 36:575-578, 2003)。恐らく、正常の妊娠に認められるApoBの液性認識は、成熟中の胚に対する栄養補給に潜在的に関与している。しかし、抗体認識が欠如している場合、胚の持続的発達に障害が引き起こされる。
ヒトのアポリポタンパク質B−100の配列は、NM_000384.2(核酸;配列番号1)およびNP_000375.2(タンパク質;配列番号2)に示される。
上述の全ての方法の一部の実施形態は、アポリポタンパク質B−100またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の存在、検出可能レベル、または、レベルの増大を検出または特定する工程を含む。検出された上記抗体は、アポリポタンパク質B−100タンパク質またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体、または、アポリポタンパク質B−100の核酸(例えば、mRNA)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体であってもよい。例えば、任意の抗体は、配列番号2に記載の配列において連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸に特異的に結合してもよい。上記配列番号2に記載する配列中において連続する上記少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸は、この配列中の任意の部位に配置されていてよく、例えば、上記少なくとも5つのアミノ酸の配列は、N末端から開始してもよく、C末端で終了してもよく、または、上記配列番号2に示す配列の任意の部位(但し、C末端側の最後の4個のアミノ酸を除く)から開始してもよい。一部の実施形態では、検出した上記抗体は、上記配列番号2に記載の配列を含むポリペプチドに特異的に結合してもよい。
検出した上記抗体は、アポリポタンパク質の核酸(例えば、mRNA)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体であってもよい。例えば、検出した上記抗体は、配列番号1に記載の配列中において連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のヌクレオチドに特異的に結合してもよい。配列番号1に記載の配列中において連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のヌクレオチドは、この配列の任意の部位に配置されていてもよく、例えば、連続する少なくとも5つのヌクレオチドの配列は、5’末端から開始してもよく、3’側末端で終了してもよく、または、上記配列番号1に示す配列中の任意のヌクレオチド(但し、上記3’末端側の最後の4個のヌクレオチドを
除くものとする)から開始してもよい。一部の実施形態では、検出した上記抗体は、上記配列番号1に記載の配列を含む核酸に特異的に結合してもよい。
上述の全ての方法(例えば、対象の妊娠損失リスクを特定する方法、妊娠損失リスクのある対象を特定する方法、臨床研究に参加させる対象を選定する方法、対象の妊娠損失リスクを低下させる方法)の更なる実施形態は、上記対象から採取したサンプル中(例えば、上記対象の血清中)において、アポリポタンパク質B−100のタンパク質または核酸(例えば、mRNA)またはその何れかの抗原性フラグメントの存在、検出可能レベル、または、レベルの増大を検出または特定する工程を含む。上記方法では、検出する上記アポリポタンパク質B−100のタンパク質が、例えば、上記配列番号2に記載の配列含むタンパク質、または、その抗原性フラグメントであってもよい。例えば、検出するアポリポタンパク質B−100のタンパク質の抗原性フラグメントが、上記配列番号2に記載の配列中で連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸を含んでもよい。上記配列番号2に記載の配列中の上記連続する少なくとも5つ(少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸は、上記配列暗号2に記載の配列の任意の部位に配置されてよく、例えば、上記連続する少なくとも5つのアミノ酸の配列が、N側末端から開始してもよく、C側末端で終了してもよく、または、上記配列番号2に記載の配列中の任意のアミノ酸(但し、C側末端の最後の4つのアミノ酸を除く)から開始してもよい。
上記方法の更なる実施例では、検出される上記アポリポタンパク質の核酸(例えば、mRNA)が、例えば、上記配列番号1に記載の配列を含む核酸またはその抗原性フラグメントであってよい。例えば、検出されるであろうアポリポタンパク質B−100の核酸の抗原性フラグメントが、上記配列番号1に記載の配列中の連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のヌクレオチドを含んでよい。上記配列番号1に記載の配列中の連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のヌクレオチドは、この配列の任意の部位に配置されていてよく、例えば、連続するヌクレオチドの配列は、5’側末端から開始してもよく、3’側末端で終了してもよく、または、上記配列番号1に記載の配列中の任意のヌクレオチド(但し、上記3’末端側の最後の4つのヌクレオチドを除く)から開始してもよい。
(フィブロネクチン)
母体の細胞外マトリクスと母体−胎児インターフェイスが、再発性の早期流産、子宮内発育遅延、および子癇前症の状態に極めて重要に関与していることが示唆されてきた。胎児性フィブロネクチンは、“トロホブラスト接着剤”として機能しうる細胞外マトリクスタンパク質の一種であり、絨毛膜−脱落膜の縁部において濃度が増大し、絨毛外性トロホブラストを取り囲んでいる(Mercorio et al., Eur. J. Gynecol. Reprod. Biol. 126:165-169, 2006; Guller et al., Up-To-Date, version 17.3, 2009)。強い結合活性を有するフィブロネクチンのインテグリン受容体が未分化胚芽細胞の表面上に観察されてきた(Mercorio et al., Eur. J. Gynecol. Reprod. Biol. 126:165-169, 2006)。細胞マトリクスタンパク質(例えば、フィブロネクチン)と細胞接着分子との間の信号および受容性の乱れは、妊娠障害の原因になりうる。
フィブロネクチンの遺伝子は選択的スプライシングの対象となる3つの領域を含み、異なる20通りの転写物変異体を作製する可能性を有している。ヒト参照配列を以下のとおりである:フィブロネクチン1イソ型3プレプロタンパク質の配列はNM_002026.2(核酸:配列番号3)とNP_002017.1(タンパク質;配列番号4)とに示す配列であり;フィブロネクチン1イソ型7プレプロタンパク質の配列はNM_054034.2(核酸;配列番号5)とNP_473375.2(タンパク質;配列番号6)とに示す配列であり;フィブロネクチン1イソ型6プレプロタンパク質の配列はNM_212474.1(核酸;配列番号7)とNP_997639.1(タンパク質;配列番号8)とに示す配列であり;フィブロネクチン1イソ型2プレプロタンパク質の配列はNM_212475.1(核酸;配列番号9)とNP_997640.1(タンパク質;配列番号10)とに示す配列であり;フィブロネクチン1イソ型5プレプロタンパク質の配列はNM_212476.1(核酸;配列番号11)とNP_997641.1(タンパク質;配列番号12)とに示す配列であり;フィブロネクチン1イソ型4プレプロタンパク質の配列はNM_212478.1(核酸;配列番号13)とNP_997643.1(タンパク質;配列番号14)とに示す配列であり;フィブロネクチン1イソ型1プレプロタンパク質の配列はNM_212482.1(核酸;配列番号15)とNP_997647.1(タンパク質;配列番号16)とに示す配列である(最長のイソ型をエンコードする最長の転写物)。
上述の全ての方法の一部の実施形態は、フィブロネクチンに特異的に結合する抗体またはその抗原性フラグメントの存在、検出可能レベル、またはレベルの増大を決定する。上記検出した抗体は、フィブロネクチンのタンパク質またはその抗原性フラグメントと、フィブロネクチンの核酸(例えば、mRNA)またはその抗原性フラグメントとの何れかに特異的に結合する抗体であってよい。例えば、抗体は、配列番号4、6、8、10、12、14、または16に示す配列内で連続している少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸に特異的に結合してもよい。配列番号4、6、8、10、12、14、または16に示す上記配列内で連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸は、この配列内の任意の部位に配置されていてよく、例えば、上記少なくとも5つのアミノ酸の配列はNー末端から開始してもよく、上記Cー末端で終了してもよく、または、配列番号4、6、8、10、12、14、または16に示す上記配列内の任意のアミノ酸(但し、この配列内の上記C−末端側の最後の4つのアミノ酸を除く)から開始してもよい。一部の実施形態では、上記検出された抗体は、配列番号4、6、8、10、12、14、または16に示す上記配列を含むポリペプチドに特異的に結合してもよい。
上記検出された抗体は、フィブロネクチンの核酸(例えば、mRNA)に特異的に結合する抗体であってもよい。例えば、上記検出された抗体は、上記配列番号3、5、7、9、11、13、または15に記載の配列中に存在する少なくとも5つ(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のコンティグヌクレオチドに特異的に結合してもよい。上記配列番号3、5、7、9、11、13、または15に記載の配列中に存在する少なくとも5つ(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のコンティグヌクレオチドは、上記配列の任意の部位に配置されていてよく、例えば、上記コンティグヌクレオチドは上記5’ー末端から開始してもよく、3’ー末端で終了してもよく、または、上記配列番号3、5、7、9、11、13、または15に示す配列の任意のヌクレオチド(但し、これら配列のうち任意の1つの上記3’ー末端側の最後の4つのヌクレオチドを除く)から開始してもよい。一部の実施形態では、上記検出された抗体は、上記配列番号3、5、7、9、11、13、または15に記載の配列を含む核酸に特異的に結合してもよい。
上述の方法(例えば、対象の妊娠損失リスクを決定する方法と、妊娠損失リスクのある対象を特定する方法と、臨床研究用の対象を選定する方法と、対象の妊娠損失リスクを低下させる方法)の更なる実施形態は、対象から採取したサンプル中(例えば、上記対象から採取した血清中)のフィブロネクチンタンパク質またはフィブロネクチンの核酸、または、その何れかの抗原性フラグメントの存在、検出可能レベル、または、増加したレベルを検出する工程を含む。これらの方法では、検出される上記フィブロネクチンタンパク質は、例えば、配列番号4、6、8、10、12、14、および16に記載の配列の何れか、または、その任意の抗原性フラグメントを含むタンパク質であってよい。例えば、検出されるであろうフィブロネクチンタンパク質の抗原抗体は、配列番号4、6、8、10、12、14、および16に記載の何れかの配列中で互いに近接する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸を含んでよい。配列番号4、6、8、10、12、14、および16に記載の何れかの配列中で互いに近接する上記少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸は、上記何れかの配列中の任意の部位に配置されてよく、例えば、互いに連続する少なくとも5つのアミノ酸の配列は上記N末端から開始してもよく、上記C末端で終了してもよく、または、配列番号4、6、8、10、12、14、および16に記載の何れかの配列中の任意のアミノ酸(但し、上記C末端側のアミノ酸のうち最後の4つは除く)で終了してもよい。
上記方法の更なる実施例では、検出される上記フィブロネクチンの核酸(例えば、mRNA)は、例えば、配列番号3、5、7、9、11、13、および15に記載の何れかの配列またはその任意の抗原性フラグメント含む核酸であってよい。例えば、検出されるであろうフィブロネクチンの核酸の抗原性フラグメントは、配列番号3、5、7、9、11、13、および15に記載の何れかの配列中で互いに連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のヌクレオチドを含んでよい。配列番号3、5、7、9、11、13、および15に記載の何れかの配列中で互いに連続する上記少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のヌクレオチドは、上記何れかの配列の任意の部位に配置されてよく、例えば、互いに連続する上記ヌクレオチドの配列は、5’末端から開始してもよく、3’末端で終了してもよく、または、配列番号3、5、7、9、11、13、および15に記載の何れかの配列中の任意のヌクレオチド(但し、上記3’末端から数えて4つ目のヌクレオチドまでを除く)から開始してもよい。
(アルファ2−マクログロブリン)
アルファ2−マクログロブリン(α2M)はエンドプロテイナーゼの主要な阻害物質であり、サイトカインおよび成長因子の保護、輸送、除去における調整的な役目を果たす(Esadeg et al., Placenta 24:912-921, 2003)。α2Mは、ヒトの子宮と胎盤との界面において免疫を抑制する潜在的な手段を有し、胎盤を経て新生児へと輸送されうる(Benyo et al., Endocrinology 133:699-704, 1993)。α2Mによって、サイトカインの標的が、α2M受容体に関連したタンパク質を発現している細胞とリポタンパク質受容体に関連したタンパク質を発現している細胞との何れかに定められる(Esadeg et al., Placenta 24:912-921, 2003; Shimizu et al., Exp. Anim. 51:361-365, 2002)。子宮α2Mは、子宮の導管に沿って並ぶ内皮細胞に由来すると考えられている。健康成人ではα2Mの血清濃度が低いことが認められるが、該α2Mの血清濃度は月経周期の分泌期中に2倍または3倍に増加することが報告されており、α2Mが脱落膜化タンパク質として機能することが示唆されている(Esadeg et al., Placenta 24:912-921, 2003)。α2Mとα2Mプロテイナーゼとの複合体の受容体が妊娠期間中のヒト胎盤の合胞体栄養細胞に存在することが確認されてきた。(Thomas et al., Placenta 11:413-430, 1990; Jensen et al., Placenta 9:463-477, 1988)。さらに、α2Mの合成および分泌もラット胎児の内蔵卵黄嚢内において検出されてきた。ヒトα2Mの配列をNM_000014.4(核酸;配列番号17)とNP_000005.2(アミノ酸;配列番号18)に示す。
上述の方法の一部の実施形態は、α2Mまたはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の存在、検出可能レベル、または、増加したレベルを特定または検出する工程を含む。検出された上記抗体は、α2Mタンパク質またはその抗原性フラグメント、または、α2Mの核酸(例えば、mRNA)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体であってもよい。例えば、抗体は、配列番号18に示す配列中の連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸に特異的に結合してもよい。配列番号18に示す配列中の連続する上記少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸は、上記配列内の任意の部位に配置されてよく、例えば、連続する上記アミノ酸の配列は上記N末端から開始してもよく、上記C末端で終了してもよく、または、配列番号18に示す配列内の任意のアミノ酸(但し、上記C末端から4つ目のアミノ酸までを除く)から開始してもよい。一部の実施形態では、検出される上記抗体は、配列番号18に示す配列を含有するポリペプチドに特異的に結合してもよい。
検出された上記抗体は、α2Mの核酸(例えば、mRNA)に特異的に結合する抗体でもよい。例えば、検出された上記抗体は、配列番号17に示す配列内の連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のヌクレオチドに特異的に結合してもよい。配列番号17に示す配列中の上記連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のヌクレオチドは、上記配列中の任意の部位に配置されてよく、例えば、上記連続するヌクレオチドの配列は上記5’末端から開始されてもよく、上記3’末端で終了してもよく、または、上記配列番号17に示す配列の任意のヌクレオチド(但し、上記3’末端から4つ目のヌクレオチドまでを除く)から開始してもよい。一部の実施形態では、検出した上記抗体は、上記配列番号17に示す配列を含有する核酸に特異的に結合してもよい。
上述の全ての方法(例えば、対象の妊娠損失リスクを決定する方法と、妊娠損失リスクのある対象を特定する方法と、臨床研究用の対象を選定する方法と、対象の妊娠損失リスクを低下させる方法)の更なる実施形態は、上記対象から採取したサンプル中(例えば、上記対象の血清中)のα2Mタンパク質またはα2Mの核酸(例えば、mRNA)、または、その何れかの抗原性フラグメントの存在、検出可能レベル、または、増加したレベルを検出する工程を含む。これらの方法では、検出される上記α2Mタンパク質は、例えば、配列番号18に示す配列またはその抗原性フラグメントを含有するタンパク質であってよい。例えば、検出されるであろうα2Mタンパク質の抗原性フラグメントは、上記配列番号18に示す配列中の連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸を含んでよい。上記配列番号18に示す配列の上記連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸は、上記配列の任意の部位に配置されていてよく、例えば、上記連続するアミノ酸の配列は上記N末端から開始してもよく、上記C末端で終了してもよく、または、上記配列番号18に示す配列の任意の部位(但し、上記C末端から4つ目のアミノ酸までを除く)から開始してもよい。
上記方法の更なる例としては、検出される上記α2Mの核酸(例えば、mRNA)は、例えば、上記配列番号17に示す配列またはその抗原性フラグメントを含有する核酸であってもよい。例えば、検出されるであろうα2M核酸の抗原性フラグメントは、上記配列番号17に示す配列の連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のヌクレオチドを含有してもよい。上記配列番号17に示す配列の上記連続する少なくとも5つ(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のヌクレオチドは、上記配列の任意の部位に配置されていてもよく、例えば、上記連続するヌクレオチドの配列は上記5’末端から開始してもよく、上記3’末端で終了してもよく、または、上記配列番号17に示す配列中の任意のヌクレオチドから開始してもよい。
(妊娠損失の予測方法)
対象の妊娠損失リスクを予測する方法であって、上記対象から採取した血清を含有するサンプルを調製する工程と、上記サンプルのフィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)との1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ)、または、その抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の存在、非存在、またはレベルを検出する工程とを含み、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)とApoB−100(タンパク質または核酸)との何れか1つ以上、または、その抗原性フラグメントに対する抗体の存在、検出可能レベル、または、増大したレベル、および/または、上記サンプル中のα2M(タンパク質または核酸)またはその抗原性フラグメントに対する抗体の存在、検出可能レベル、または増加したレベルが、上記対象の妊娠損失リスクが増大(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の増大のような、統計学的に有意な増大)していることを示す方法を提供する。対象の妊娠損失リスクを予測する更なる方法は、上記対象から採取したサンプル(例えば、血清を含有するサンプル)を調製する工程と、上記サンプルにおけるフィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)との1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ)、または、その抗原性フラグメントの存在、非存在、またはレベルを検出する工程を含み、上記サンプル中のフィブロネクチン(タンパク質または核酸)および/またはApoB−100(タンパク質または核酸)、または、その抗原性フラグメントの存在、検出可能レベル、またはレベルの増大、または、α2M(タンパク質または核酸)またはその抗原性フラグメントの存在、検出可能レベル、またはレベルの増加が、上記対象の妊娠損失リスクが増大(少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の増大のような、統計学的に有意な増大)していることを示す。
上述の全ての方法の一部の実施形態では、上記対象が、妊娠第1期(妊娠0週〜12週)または妊娠第2期(妊娠13週〜27週)の妊婦(例えば、受精後0週目〜20週目と、受精後6週目〜20週目と、受精後6週目〜12週目と、受精後24週目との何れかの期間中の任意の時点)であってよい。上述の全ての方法の一部の実施形態では、上記対象が妊娠20週目以内(例えば、妊娠1週目以内、妊娠2週目以内、妊娠3週目以内、妊娠4週目以内、妊娠5週目以内、妊娠6週目以内、妊娠7週目以内、妊娠8週目以内、妊娠9週目以内、妊娠10週目以内、妊娠11週目以内、妊娠12週目以内、妊娠13週目以内、妊娠14週目以内、妊娠15週目以内、妊娠16週目以内、妊娠17週目以内、妊娠18週目以内、または妊娠19週目以内)の妊娠対象であってよい。早期の妊娠損失は、妊娠20週目より前の妊娠の終息または胎児体重が500g未満での妊娠の終息として定義される。
上記対象(例えば、妊娠中の対象または非妊娠中の対象)は過去に妊娠損失を少なくとも1回(例えば、2回、3回、4回、5回、または6回)経験していてもよく、または、過去に妊娠損失を少なくとも1回(例えば、2回、3回、4回、5回、または6回)経験していたと疑われてもよい。一部の実施形態では、上記対象は、妊娠20週目以内(例えば、妊娠1週目以内、妊娠2週目以内、妊娠3週目以内、妊娠4週目以内、妊娠5週目以内、妊娠6週目以内、妊娠7週目以内、妊娠8週目以内、妊娠9週目以内、妊娠10週目以内、妊娠11週目以内、妊娠12週目以内、妊娠13週目以内、妊娠14週目以内、妊娠15週目以内、妊娠16週目以内、妊娠17週目以内、妊娠18週目以内、または妊娠19週目以内)の妊娠期にあり、過去に妊娠損失を少なくとも1回(例えば、2回、3回、4回、5回、または6回)経験しているか、または、過去に妊娠損失を少なくとも1回(例えば、2回、3回、4回、5回、または6回)経験していると疑われる。
上記対象からのサンプル(例えば、血清)の採取は妊娠前に行ってもよいが、流産後または流産が疑われた後に行ってもよく、妊娠期間中の任意の時点(例えば、妊娠1週目以内、妊娠2週目以内、妊娠3週目以内、妊娠4週目以内、妊娠5週目以内、妊娠6週目以内、妊娠7週目以内、妊娠8週目以内、妊娠9週目以内、妊娠10週目以内、妊娠11週目以内、妊娠12週目以内、妊娠13週目以内、妊娠14週目以内、妊娠15週目以内、妊娠16週目以内、妊娠17週目以内、妊娠18週目以内、妊娠19週目以内、または妊娠20週目以内)に行ってもよい。また、サンプルからフィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)との1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)に対する抗体の存在、非存在、またはレベルの検出/特定を行う前、および/または、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)との1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)またはその抗原性部分の存在、非存在、またはレベルの検出/特定を行う前に、該サンプルを一定期間(例えば、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、または1週間)冷凍してもよいし、保存してもよい。
当該技術分野に公知の任意の方法を使用して、サンプル中の抗体(例えば、フィブロネクチン(タンパク質またはmRNA)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質またはmRNA)と、α2M(タンパク質またはmRNA)との何れか、または、その抗原性部分に特異的に結合する抗体)の存在を検出することができる。例えば、対象(例えば、妊娠中の対象など、上述の対象のうち任意の対象)から採取したサンプル(例えば、血清、血漿、または血液など、血清を含有するサンプル)に上述のタンパク質と核酸との何れかの全体または抗原性フラグメント(例えば、フィブロネクチンタンパク質またはフィブロネクチンの核酸、α2Mタンパク質またはα2Mの核酸、および/または、ApoB−100タンパク質またはApoB−100の核酸、または、その抗原性フラグメント)を接触されることができ、且つ、当該技術分野に公知の方法を使用して、該サンプル中の任意の抗体の該抗原への結合を検出することができる。
例えば、上記タンパク質の1種類以上、上記核酸の1種類以上、または上記抗原性フラグメントの1種類以上を備えるアレイ(例えば、当該技術分野に公知のような任意のアレイ、マイクロアレイ、生体素子、またはPOCT(point−of−care tes
t)法)を提供することができ、且つ、上記アレイに対象から採取した血清を含有するサンプルを接触させることができるとともに、上記サンプル中に存在する任意の抗体の結合を検出することができる。
抗体の結合を検出する方法は当該技術分野に公知であり、該方法は二次抗体を使用することができるが、該二次抗体の代わりに他の抗体特異的なリガンドを使用することもできる。通常、上記二次抗体は、検出可能となるように修飾されている(例えば、標識化されている)。なお、“標識化”という用語は、検出可能な物質を上記二次抗体にカップリングさせる(すなわち、物理的に結び付ける)ことによる直接的な標識化と、検出可能な物質に対する反応性を利用した多量体抗原の間接的な標識化との両方を含むよう意図された用語である。例えば、検出可能な物質として、多様な酵素、補欠分子族、蛍光体、発光体、生体発光体、および放射性物質が挙げられる。そして、好適な酵素として、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。好適な補欠分子族の複合体として、例えば、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる。好適な蛍光体として、例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、および量子ドット、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライド、およびフィコエリトリンが挙げられる。蛍光体として、例えば、ルミノーが挙げられる。例えば、生体発光体として、緑色蛍光タンパク質とその変異体、発光酵素、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられる。好適な放射性物質として、例えば、125I、131I、35S、または3Hが挙げられる。このような標識化抗体を作製する方法は当該技術分野に公知であり、多くの方法が市販されている。
一部の実施形態では、上記方法は、抗原に結合する抗体の亜類型を特定する工程、例えば、本明細書に説明するように液性応答反応の増大と妊娠損失リスクの増大とに関連するIgG3抗体の存在を検出する工程、をさらに含む。IgG3のFc領域に結合する抗体は市販されており、この抗体を使用して上記サンプルのIgG3抗体の存在、レベル、または非存在を特定してもよい。
上記抗体を検出する任意の方法を使用することができる。この方法としては、放射免疫測定(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、ウエスタンブロット法、表面プラスモン共鳴法、微小流体装置、タンパク質配列法、質量分析法、または、当該技術分野に公知の他の測定法が挙げられるが、これに限定されない。一部の実施形態では、米国特許出願US−2009−005425−A1に記載されているような四量体の形態で上記抗原を作製できる。
本明細書に説明するように、本発明は、異常な液性応答反応の存在を検出することで妊娠損失を予測する方法を提供する。上述のように、上記方法はアレイの使用を含むことができる。本発明は、生体サンプル中の特定の抗体の検出を容易にする固定化抗原を備えるアレイ(例えば、“生体素子”または“マイクロアレイ”)を提供する。上述のような抗体を識別する抗原を、妊娠損失(例えば、RPL)を生じやすい対象を検出するためのカスタムアレイに備えることができる。例えば、カスタムアレイは、フィブロネクチンと、α2Mと、ApoB−100との1つ以上(例えば、1つ、2つ、または、3つ)に抗体を特異的に結合させる抗原を備えることができる。上記抗原は、タンパク質の全長、核酸(例えば、mRNA)の全長、または、そのフラグメント(本明細書に記載のフラグメント)とすることができる。また、上記アレイは、更なる抗体を同定する生体分子も備えることができる。上記アレイを使用して、本明細書に記載の上記方法によって取得したデータを基に情報のデータベースを構築することができる。
本明細書に用いる場合、“アレイ”という用語は、通常、結合性のリガンドや抗原の所定の空間的配置、または、結合性のリガンドまたは抗原の空間的配置を指す用語である。また、表面上に固定された抗原を備える本発明のアレイを“抗原アレイ”とも称することがある。また、表面への抗原の結合を促進するように該表面を活性化、適合化、修飾化または調製した本発明のアレイを“結合アレイ”とも称すことがある。さらに、本明細書に用いる“アレイ”という用語は、表面上にアレイの複製を複数設置する場合では、表面上に配置された複数のアレイを指すことがある。このように複数のアレイを設置する表面を“複数アレイ”または“繰り返しアレイ”とも称することがある。“アレイ”という用語を本明細書中で使用する場合、抗原アレイと、結合アレイと、複数アレイと、これらの組み合わせとの何れを指してもよい。 該用語が何れのアレイを指しているかについては文脈から明らかであろう。アレイは、妊娠損失が発生する可能性の高い対象の体内で改変している抗体または他のタンパク質を検出する抗原を備えることができる。上記アレイを対象から採取した1つ以上の生体サンプルに接触させることができる。なお、上記生体サンプルは、対象の体内組織から採取された液状または固形状のサンプル(尿などの排泄液も含まれる)を含んでよい。尿以外のサンプルとして、血清、血漿、羊水、および胎盤組織が挙げられるが、これに限定されない。
本発明のアレイは基板を備える。本明細書に用いる“基板”または“固形状の支持体”という用語、または、これら用語に文法上相当する他の用語は、抗原を吸着させるのに適切な任意の材料を意味し、該材料は少なくとも1つの検出方法に適している。当該技術分野の当業者に理解されるように、利用可能な基板の数は非常に多い。利用可能な基板としては、ガラスおよび修飾ガラスまたは機能性ガラス;プラスチック(アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料との共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、TEFLON(登録商標)などを含む);多糖;ナイロンまたはニトロセルロース;樹脂;シリカ、または、シリコンおよび修飾シリコンを含むシリカ系材料;炭素;金属;無機ガラス;プラスチック;セラミック;および、他の多様な重合体が挙げられるが、これに限定されない。さらに、当該技術分野で公知のように、上記基板を任意の数の材料によってコーティングしてもよく、これらコーティング用の材料としては、デキストラン、アクリルアミド、ゼラチン、またはアガロースなどの重合体が挙げられる。このようなコーティングを行うことにより、上記アレイを尿または血清に由来する生体サンプルとともに使用することが容易になる。
本発明の平面アレイは、通常、抗原のアドレス可能位置(例えば、“パッド”、“アドレス”、または、“微小位置”)をアレイ形式で含んでいる。上記アレイのサイズは、上記アレイの組成物と最終用途に応じて決定される。上記アレイは、1つの抗原または2つ以上の異なる抗原を備えることができる。一部の実施形態では、同一のタンパク質の異なる抗原決定基にそれぞれ結合する抗体を検出するために、該同一のタンパク質の異なる部分が備えられている。通常、上記アレイに備えられる抗原の数は、上記アレイの最終用途に応じて、2個から最大で100,000個またはそれ以上となる。本発明のマイクロアレイは、通常、生体サンプル中に存在する抗体の特定または“捕捉”を行う少なくとも1つの抗原を備える。一部の実施形態では、本発明の上記組成物がアレイ形式でなくてもよい。すなわち、一部の実施形態では、単一の抗体からなる組成物を構成してもよい。さらに、一部のアレイでは、複数の基板を使用してもよく、該複数の基板の組成物は互いに異なるものでもよく、互いに同一のものでもよい。よって、例えば、大きな平坦アレイが複数の小さな基板を備えてもよい。
平坦アレイの代わりとして、フローサイトメトリー法と組み合わせたビーズベース分析法を開発して多様性免疫測定を行ってきた。ビーズベース分析系では、上記抗原をアドレス可能なマイクロスフェア上に固定することができる。個別の免疫測定法に使用する各抗原を異なるタイプのマイクロスフェア(すなわち、“マイクロビーズ”)にカップリングするので、免疫測定反応が上記マイクロの表面上で生じる。蛍光強度が不連続な染色マイクロスフェアの夫々に独立して、適切な生体分子を装填する。カスタムビーズアレイを作製できるように、異なる捕獲用プローブを担持する異なるビーズ組を必要に応じて集めておくことができる。その後、免疫処理を行えるように、ビーズアレイと上記サンプルに対して単一の反応槽内でインキュベート(培養)処理を行う。
一部の実施形態では、固定化されている上記抗原に上記抗体が結合することよって形成される生成物の検出を蛍光に基づくレポーター系を使用して行うことができる。上記抗体を発蛍光団によって直接的に標識化することができるが、蛍光標識化した第2の捕捉用生体分子によって検出することもできる。捕捉した抗体から生じる信号の強度をフローサイトメータ(flow cytometer)で測定する。上記フローサイトメータでは、先ず、各マイクロスフェアを個別の色コード基づいて同定する。次に、結合標的に特異的な第2の蛍光発色に基づいて、各ビーズ上に捕捉された抗体の量を測定する。これにより、1つのサンプルから得られる複数の標的に対して、多重定量法を同一の実験内で行うことが可能になる。上記多重定量法は、マイクロタイターELISA処置法と同程度の感度、信頼性、精度を有する。ビーズベース免疫測定系を使用することで、生体サンプルから抗体を同時に定量することができる。ビーズベース系の長所は、上記抗体をそれぞれ異なるマイクロスフェアに個別にカップリング可能なことである。
よって、マイクロビーズアッセイ技術では、特定の抗原に結合している抗体を複数のマイクロビーズを使用して分類することができ、各マイクロビーズの表面上に保持可能な特定抗原の同一分子の数は約100,000個ほどである。捕捉された抗体は流体として処理することができるので、本明細書では“流体マイクロアレイ”と称する。
アレイは、抗体を検出する任意の手段を含むことができる。例えば、固定化された抗原を高密度に配置したアレイを提供する生体素子であって、抗体の結合が間接的に(例えば、蛍光を介して)観察できる生体素子をマイクロアレイとして使用することができる。さらに、アレイのフォーマットを、生化学的な相互作用または分子間の相互作用を利用して抗体を捕捉することを含むフォーマットであって、質量分析(MS)法によって抗体を直接的に検出するフォーマットとすることができる。
本明細書に記載の上記方法と共に使用することが可能なアレイとマイクロアレイは、米国特許第6,329,209号、米国特許第6,365,418号、米国特許第6,406,921号、米国特許第6,475,808号、および米国特許第6,475,809号に記載の方法に応じて作製することができる。なお、上記米国特許を参照することにより、その全開示内容を本願に援用する。また、上記米国特許に記載の方法を使用して、本明細書に記載したバイオマーカーのうち特定の選択または特定の組を検出する新たなアレイを作製することも可能である。
表面上への抗原の固定化は、変性を最小限に抑える方法と材料、抗原の構造の変化を最小限に抑える方法と材料、または、抗原と抗原を固定化する表面との間の相互作用を最小限に抑える方法と材料を使用して行うことができる。
上記アレイに有用な表面の形状およびサイズを任意の所望形状および所望サイズとしてもよい。この表面の非限定例として、チップ、連続平面、曲面、柔軟性表面、膜、プレート、シート、および、管などが挙げられる。上記表面の面積は、好ましくは、約1平方マイクロン〜約500cm2の範囲である。本発明では、実施される分析に求められる条件に応じて、上記表面の面積、長さ、および、幅を変更してもよい。この際に考慮する事項としては、例えば、取扱の容易性、上記表面を形成する材料の制限、検出系に求められる条件、および、蒸着系(例えば、アレイヤー(arrayer))に求められる条件などが挙げられる。
特定の実施形態では、結合アイランド(island)の一群またはアレイ、または、固定化された抗原の一群またはアレイを分離する物理的手段を採用することが望ましい。このような物理的手段によって、異なる一群またはアレイを関心のある異なる溶液へ曝すことが容易になる。よって、特定の実施形態では、アレイは、96マイクロウェルプレート、384マイクロウェルプレート、1536マイクロウェルプレート、または、3456マイクロウェルプレートのウェル内に配置されている。このような実施形態では、上記ウェルの底部をアレイ形成用の表面としてもよいが、アレイを他の表面上に形成した後にウェル内に移動させてもよい。ウェルが設けられていない表面を使用するような特定の実施形態では、結合アイランドを形成してもよいが、該表面上と孔がアイランドに対応するような空間的位置に配列されたガスケット上とに抗原を固定化してもよく、または、抗原を該平面上に設置してもよい。このようなガスケットは、好ましくは、液密性のガスケットである。ガスケットをアレイ作製プロセスの任意の時点で表面上に設置してもよく、抗原の一群またはアレイの分離が必要でなくなった場合には取り除いてよい。
上記固定化された抗原は、自身の上に供給される生体サンプル中の抗体に結合できる。例えば、生体サンプルの抗体は固定化された抗原に接触し、該固定化抗原に結合することが可能なので、該抗体の検出が容易になる。
溶液中に存在するか、または、アレイ上に固定化された抗原に対する抗体の修飾または結合を当該技術分野に公知の検出技術を使用して検出してもよい。例えば、このような検出技術として、結合タンパク競合測定法およびサンドイッチ分析法などの免疫学的方法;共焦点スキャナ、共焦点顕微鏡、または、CCD系システムなどの道具と、蛍光発光法、蛍光偏光(FP)法、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法、全内部反射蛍光(TIRF)法、蛍光相関分光(FCS)法などの技術とを使用する蛍光検出法;測色技術/分光技術;表面に吸着した材料の質量の変化を測定する表面プラスモン共鳴法;従来の放射性同位体結合アッセイ法とシンチレーション近接分析(SPA)法を含む、放射性同位体を使用する技術;マトリクス支援レーザ脱離イオン化質量分光学(MALDI)法およびMALDI−TOF(飛行時間法)質量分光法などの質量分光法;タンパク質膜の厚みを測定する光学的方法である偏光解析法;表面に吸着している材料の質量を高感度で測定する方法である、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法;AFMおよびSEMなどの走査プローブ顕微鏡;ならびに、電気化学法、インピーダンス法、音波法、マイクロ法、および、IR/ラマン検出法などの技術が挙げられる。例えば、Mere L, et al., “Miniaturized FRET assays and microfluidics: key components for ultra-high-throughput screening,” Drug Discovery Today 4(8):363-369 (1999)および該文献に引用されている参照文献; Lakowicz J R, Principles of Fluorescence Spectroscopy, 第2版, Plenum Press (1999)を参照。
本明細書に記載のアレイをキットに備えることができる。このようなキットはまた、非限定的例として、結合アイランドまたはアレイ領域に固定化するための抗原を調製するのに有用な試薬、サンプルを調製するのに有用な試薬、または、固定化された抗原へのサンプル中の抗体の結合を検出するのに有用な試薬と、公知の抗体を含む対照サンプルと、使用説明書との1つ以上を含んでもよい。
例えば、本発明により提供されるキットは、フィブロネクチン(タンパク質および/または核酸)と、α2M(タンパク質および/または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質および/または核酸)との1つ以上、または、その抗原性フラグメントを本質的に備えてよい。キットはまた、フィブロネクチン(タンパク質および/または核酸)、α2M(タンパク質および/または核酸)、および、アポリポタンパク質B−100(タンパク質および/または核酸と、この抗原性フラグメントとの何れかに特異的に結合する1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ)の抗体も含んでよい。例えば、上記キット備えられる上記1つ以上の抗原または上記1つ以上の抗体を表面上に固定化してもよい(例えば、ELISA分析法の形態)。
本明細書に記載の全ての方法の一部実施形態では、対象から採取したサンプル(例えば、血清を含有するサンプル)中から、フィブロネクチンまたはそのmRNAと、アポリポタンパク質B−100またはそのmRNAと、α2MまたはmRNAとの何れか1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)、または、その抗原性フラグメントの存在、非存在、またはレベルを決定する。フィブロネクチンおよびその核酸(例えば、mRNA)と、アポリポタンパク質B−100およびその核酸(例えば、mRNA)と、α2Mおよびその核酸(例えば、mRNA)と、これらの抗原性フラグメントの様々な例を本明細書に記載する。生体サンプル中から抗原タンパク質またはペプチドの存在、非存在、またはレベルを、抗体を使用して測定する方法は当該技術分野において公知であり、該方法として、例えば、放射免疫分析(RIA)法、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ウエスタンブロット法、表面プラスモン共鳴法、マイクロ流体装置、タンパク質アレイ法、および、質量分析法が挙げられる。生体サンプル中から核酸の存在、非存在、または、レベルを測定する方法は当該技術分野において公知であり、該方法として、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)系技術(例えば、リアルタイム定量PCR法および遺伝子アレイ法)が挙げられる。核酸の存在、非存在、またはレベルを測定する上記方法に使用するプライマーを、当該技術分野に公知の方法を使用して、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、および17の何れかに示す配列に基づいて設計してもよい。
本明細書に記載の任意の方法では、上記対象から調製したサンプル中において、以下の任意の組み合わせが1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または、8つ)存在する場合、上記対象の妊娠損失リスクが増大(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または、100%の増大など、統計学的に有意な増大)していることを示す:α2Mのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在しているか、または、該抗体のレベルが検出可能である場合;α2Mのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増加している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増加している)場合;α2Mのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在しているか、または、レベルが検出可能である場合;α2Mのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増加している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増加している)場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在するか、または、該抗体のレベルが検出可能である場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在するか、または、レベルが検出可能である場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;アポリポタンパク質B−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書中に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在するか、または、該抗体のレベルが検出可能な場合;アポリポタンパク質B−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書中に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;アポリポタンパク質B−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在しているか、または、レベルが検出可能である場合;および、アポリポタンパク質B−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合。
本明細書に記載の任意の方法では、“減少”という用語は統計学的に有意な減少(例えば、少なくとも、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または、95%の減少)を意味する。本明細書に記載の任意の方法では、“増大”という用語は統計学的に有意な増大(例えば、少なくとも、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または、95%の増大)を意味する。また、“レベルが検出不可能である”という語句は、タンパク質、核酸、または、抗体のレベルが、特定の実験において測定を行うために使用される上記方法では検出できないことを意味する。タンパク質、核酸、または、抗体のどのレベルが検出不可能となるかは、上記測定を行うために使用される特定のアッセイに応じて変化する。さらに、“レベルが検出可能である”という語句は、タンパク質、核酸、または、抗体のレベルが、特定の実験において測定を行うために使用される上記方法によって検出されることを意味する。
(妊娠損失リスクのある対象を特定する方法)
妊娠損失リスクのある対象(例えば、コントロール集団と比較して、妊娠損失のリスクが高いまたは妊娠損失の発生回数が覆い対象)を特定する方法であって、(i)対象からサンプル(例えば、血清を含有するサンプル)を調製する工程と、(ii)上記サンプル中から、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質 B−100との1つ以上またはその抗原性フラグメントに特
異的に結合する抗体の存在、非存在、または、レベルを検出する工程を備え、上記サンプル中において、(a)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)とApoB−100(タンパク質または核酸)との少なくとも一方またはその抗原性フラグメントに対する抗体が存在するか、該抗体のレベルが検出可能であるか、または、該抗体のレベルが増大している場合、および/または、(b)α2M(タンパク質または核酸)またはその抗原性フラグメントに対する抗体が存在しているか、該抗体のレベルが検出可能であるか、または、該抗体のレベルが増加している場合、上記対象を妊娠リスクの増大した対象(例えば、増大率が5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または、100%などであるような、統計的に有意な増大)として特定する方法も提供する。妊娠損失リスクのある対象を特定する更なる方法は、(i)上記対象からサンプル(例えば、血清を含有するサンプル)を調製する工程と、(ii)上記サンプル中から、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)と1つ以上(例えば、1つ、2つ、または、3つ)またはその抗原性フラグメントの存在、非存在、または、レベルを検出する工程とを備えてもよく、上記サンプル中において、(a)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)とApoB−100(タンパク質または核酸)との少なくとも一方またはその抗原性フラグメントが存在するか、検出可能なレベルであるか、または、レベルが増大している場合、および/または、(b)α2M(タンパク質または核酸)またはその抗原性フラグメントが存在しているか、レベルが検出可能であるか、または、レベルが増加している場合、上記対象を妊娠損失リスクの増大した対象として特定する。
上記方法を本明細書に記載の任意の対象に実施してもよい。また、上記方法を本明細書に記載の任意の時点で実施してもよい。
本明細書に記載の任意の方法または当該技術分野に公知の方法を使用して、フィブロネクチン((タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)との何れかまたはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の存在、非存在、またはレベルを決定してもよい。また、本明細書に記載の任意の方法または当該技術分野に公知の方法を使用して、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)との何れかまたはその抗原性フラグメントの存在、非存在、またはレベルを決定してもよい。
本明細書に記載の任意の方法では、上記対象から調製したサンプル中において、以下の任意の組み合わせが1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または、8つ)存在する場合、上記対象を妊娠損失リスクのある対象(例えば、妊娠損失リスクが増大している対象)として特定する;ApoB−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書中に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在するか、または、該抗体のレベルが検出可能な場合;ApoB−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書中に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;ApoB−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在しているか、または、レベルが検出可能である場合;ApoB−100 タンパク質または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在するか、または、該抗体のレベルが検出可能である場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)と抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在するか、または、レベルが検出可能である場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;α2Mのタンパク質または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在しているか、または、該抗体のレベルが検出可能である場合;および、α2Mのタンパク質または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増加している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増加している)場合;α2Mのタンパク質または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在しているか、または、レベルが検出可能である場合;および、α2Mのタンパク質または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増加している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増加している)場合。
(臨床研究に参加させる対象を選定する方法)
臨床研究に参加させる対象を選定する方法であって、(i)対象からサンプル(例えば、血清を含有するサンプル)を調製する工程と、(ii)上記サンプルから、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)との1つ以上(例えば、1つ、2つ、または、3つ)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の存在、非存在、または、レベルを検出する工程を備え、上記サンプル中において、(a)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)とApoB−100(タンパク質または核酸)との何れかまたはその抗原性フラグメントに特異的に結合する1つ以上の抗体が存在するか、該1つ以上の抗体のレベルが検出可能である場合、または、該1つ以上の抗体のレベルが増大している場合、および/または、(b)α2M(タンパク質または核酸)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体が存在している場合、該抗体のレベルが検出可能である場合、または、該抗体のレベルが増加している場合、上記対象を臨床研究に参加させる対象として選択する方法も提供する。臨床研究に参加させる対象を選定する更なる方法は、(i)対象からサンプル(例えば、血清を含有するサンプル)を調製する工程と、(ii)上記サンプル中から、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質 B−100(タンパク質または核酸)との1つ
以上(例えば、1つ、2つ、または、3つ)またはその抗原性フラグメントの存在、非存在、またはレベルを検出する工程を備えてもよく、上記サンプル中において、(a)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)とApoB−100(タンパク質または核酸)の少なくとも1つまたはその抗原性フラグメントが存在しているか、レベルが検出可能であるか、または、レベルが増大している場合、および/または(b)α2M(タンパク質または核酸)またはその抗原性フラグメントが存在しているか、レベルが検出可能であるか、または、レベルが増加している場合、上記対象を臨床研究に参加させる対象として選定する。
上記方法を本明細書に記載の任意の対象に実施してもよい。また、上記方法を本明細書に記載の任意の時点で実施してもよい。
本明細書に記載の任意の方法または当該技術分野に公知の方法を使用して、フィブロネクチン((タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)との何れか、または、その抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の存在、非存在、またはレベルを決定してもよい。また、本明細書に記載の任意の方法または当該技術分野に公知の方法を使用して、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)との何れか、または、その抗原性フラグメントの存在、非存在、またはレベルを決定してもよい。
本明細書に記載の任意の方法では、上記対象から調製したサンプル中において、以下の任意の組み合わせが1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または、8つ)存在する場合、上記対象を臨床研究の被験者に選定する;ApoB−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書中に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在するか、または、該抗体のレベルが検出可能な場合;ApoB−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書中に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;ApoB−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在しているか、または、レベルが検出可能である場合;ApoB−100 タンパク質または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在するか、または、該抗体のレベルが検出可能である場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)と抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在するか、または、レベルが検出可能である場合;フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;α2Mのタンパク質または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在しているか、または、該抗体のレベルが検出可能である場合;および、α2Mのタンパク質または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増加している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増加している)場合;α2Mのタンパク質または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在しているか、または、レベルが検出可能である場合;および、α2Mのタンパク質または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増加している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増加している)場合。
(妊娠損失リスクを低下させる方法)
対象の妊娠損失リスクを低下させる方法であって、(i)対象からサンプル(例えば、血清を含有するサンプル)を調製する工程と、(ii)上記サンプル中から、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質 B−100(タンパク質または核酸)との1つ以上(例えば、1つ、2つ、また
は、3つ)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の存在、非存在、または、レベルを決定する工程と、(iii)上記対象において、(a)フィブロネクチン(タンパク質または核酸)とApoB−100(タンパク質または核酸)との少なくとも1つ以上またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体が存在しているか、該抗体のレベルが検出可能であるか、または、該抗体のレベルが増大している場合、および/または(b)α2M(タンパク質または核酸)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体が存在しているか、該抗体のレベルが検出可能であるか、または、該抗体のレベルが増加している場合、上記対象に治療上の処置を行う工程とを備える方法を提供する。対象の妊娠損失リスクを低下させる更なる方法は、(i)対象からサンプル(例えば、血清を含有するサンプル)を調製する工程と、(ii)上記サンプルから、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質 B−100(タンパク質または核酸)との1つ以上(例えば、1つ、2つ、または、3つ)またはその抗原性フラグメントの存在、非存在、または、レベルを決定する工程と、(iii)上記対象において、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)とApoB−100(タンパク質または核酸)との1つ以上またはその抗原性フラグメントが存在するか、レベルが検出可能であるか、または、レベルが増大している場合、および/または、α2M(タンパク質または核酸)またはその抗原性フラグメントが存在しているか、レベルが検出可能であるか、または、レベルが増加している場合、上記対象に治療上の処置を行う工程とを備える。
上記方法を本明細書に記載の任意の対象に対して実施してもよい。また、上記方法を本明細書に記載の任意の時点で実施してもよい。妊娠損失リスクの低下治療を行う対象を、上記方法を使用して選定してもよい。
本明細書に記載の任意の方法または当該技術分野に公知の方法を使用して、フィブロネクチン((タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)との何れか、または、その抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の存在、非存在、またはレベルを決定してもよい。また、本明細書に記載の任意の方法または当該技術分野に公知の方法を使用して、フィブロネクチン(タンパク質または核酸)と、α2M(タンパク質または核酸)と、アポリポタンパク質B−100(タンパク質または核酸)との何れか、または、その抗原性フラグメントの存在、非存在、またはレベルを決定してもよい。
本明細書に記載の任意の方法では、以下の特徴の任意の組み合わせのうち1つ以上が確認される対象に対して、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または、8つ)の治療上の処置を行えばよい:上記サンプル中において、ApoB−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在するか、または、該抗体のレベルが検出可能である場合;上記サンプル中において、ApoB−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;上記サンプル中において、ApoB−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在しているか、または、レベルが検出可能である場合;上記サンプル中において、ApoB−100のタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;上記サンプル中において、フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸 (例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在するか、または、該抗体のレベルが検出可能である場合;上記サンプル中において、フィブロ
ネクチンのタンパク質成分または核酸 (例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;上記サンプル中において、フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかが存在するか、または、レベルが検出可能である場合;上記サンプル中において、フィブロネクチンのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増大している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増大している)場合;上記サンプル中において、α2Mのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体が存在しているか、または該抗体のレベルが検出可能である場合;上記サンプル中において、α2Mのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかに特異的に結合する抗体のレベルが増加している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増加している)場合;上記サンプル中において、α2Mのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れか存在しているか、または、レベルが検出可能である場合;および、上記サンプル中において、α2Mのタンパク質成分または核酸(例えば、mRNA)とその抗原性フラグメント(本明細書に記載)との何れかのレベルが増加している(例えば、上記対象と同年齢のコントロール、過去に正常な妊娠・分娩を1回以上経験しているコントロール、および/または、過去に流産を経験したことがないか、または、過去に流産を経験している疑いの無いコントロールと比較して増加している)場合。
上記治療上の処置を医療専門家(例えば、医師、看護士、または、医師助手)が施術してもよい。また、上記治療上の処置を患者の自宅または医療施設(例えば、病院または診療所)で施術してもよい。一部の実施形態では、上記治療上の処置は、免疫反応を低下または抑制する治療上の処置であって、例えば、炎症を低下させる治療上の処置、Th1型免疫反応を低下させる治療上の処置、および/または、Th2型免疫反応を向上させる治療上の処置である。
治療上の処置の非限定的な例として、補体抑制因子(例えば、C1、C3、およびC5などの補体成分に結合する抗体(例えば、米国特許第4,146,640号、米国特許第4,007,270号、米国特許第4,241,301号、米国特許第5,847,082号、および米国特許出願第2007/0141573号、米国特許出願第2009/0117098号、米国特許出願第2009/0214538号に記載の5G1.1SCおよび5G1.1(Alexion社)、エクリズマブ(eculizumab)、および、パキセリズマブ(pex−elizumab));可溶性補体受容体1、C1抑制因子(C1−Inh)、C1エステラーゼ抑制因子、C3抑制因子(POT−4)、C5抑制因子(Alexion社)、コンプスタチン、ヘパリン、および補体抑制因子)、ホルモン(例えば、プロゲステロン)、ステロイド(例えば、プレドニゾン)、静脈注射用免疫グロブリンを使用する受動免疫療法、アスピリン(例えば、低用量アスピリン)、および、TNFアンタゴニスト(例えば、TNF−α受容体(例えば、エタネルセプト)の可溶性フラグメント、TNF−α受容体に特異的に結合する抗体(例えば、マダリゴマムおよびインフリキシマブ)の可溶性フラグメント、および、TNF−αの小分子抑制因子(例えば、ペントキシフィリン))が挙げられる。1つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、または、5つ)の治療上の処置を対象に施術してもよい。一部の方法では、上記対象は妊娠していてもよく(例えば、妊娠1週以内、妊娠2週以内、妊娠3週以内、妊娠4週以内、妊娠5週以内、妊娠6週以内、妊娠7週以内、妊娠8週以内、妊娠9週以内、妊娠10週以内、妊娠11週以内、妊娠12週以内、妊娠13週以内、妊娠14週以内、妊娠15週以内、妊娠16週以内、妊娠17週以内、妊娠18週以内、妊娠19週以内、または、妊娠20週以内)、または、将来的に妊娠することを計画していてもよい(例えば、上記治療上の処置を受胎の少なくとも1ヶ月前、少なくとも3週間前、少なくとも2週間前、少なくとも1週間前に施術してもよい)。
上記治療上の処置の投与量(例えば、0.1mg〜100mg、0.1、g〜80mg、0.1、g〜70mg、0.1mg〜60mg、0.1mg〜50mg、1mg〜40mg、1mg〜30mg、1mg〜20mg、および1mg〜10mg)と投与計画(例えば、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、2週間毎に1回、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、または、1ヶ月に4回)については、上記対象の生理的状態(例えば、年齢、健康、妊娠または非妊娠、および、他の健康状態)と当該技術分野に公知の服薬スケジュールおよび投与スケジュールとに応じて、医療専門家が決定してもよい(治療上の処置の概要については、Tincani et al., Clinic Rev. Allerg. Immunol. 39:153-159, 2010; Stephenson et al., Human Reproduction 25:2203-2209, 2010; and Dukhovny et al., Curr. Opin. Endocrinol. Diabetes Obes. 16:451-458, 2009を参照)。例えば、本発明が提供する上記方法を使用する治療上の処置の対象として特定された対象に対して、受動免疫グロブリンの静脈内投与を妊娠期間中または妊娠前(本明細書に記載の時点)に1回以上(例えば、2回、3回、4回、または、5回)実施してもよい。医師は、上記対象のモニタリングを(例えば、本明細書に記載した妊娠損失リスクの特定方法を使用して)行って、所定の期間(例えば、妊娠期間中(例えば、受胎から妊娠9ヶ月までの任意の期間、受胎から最大で妊娠8ヶ月までの任意の期間、受胎から最大で妊娠7ヶ月までの任意の期間、受胎から最大で妊娠6ヶ月までの任意の期間、受胎から最大で妊娠5ヶ月までの任意の期間、受胎から最大で妊娠4ヶ月までの任意の期間、受胎から最大で妊娠3ヶ月までの任意の期間、受胎から最大で妊娠2ヶ月までの任意の期間、妊娠3週から妊娠20週の任意の期間、妊娠5週から妊娠20週の任意の期間、または、妊娠10週から妊娠20週の任意の期間)、受胎前の期間(例えば、受胎から6ヶ月以内、5ヶ月以内、4ヶ月以内、3ヶ月以内、2ヶ月以内、1ヶ月以内、3週間以内、2週間以内、1週間以内、または、3日以内)、または、妊娠前から開始する期間(例えば、受胎から6ヶ月以内、5ヶ月以内、4ヶ月以内、3ヶ月以内、2ヶ月以内、1ヶ月以内、3週間以内、2週間以内、1週間以内、または、3日以内)から妊娠期末までの間、または、妊娠期の一時点(例えば、受胎から妊娠9ヶ月までの任意の時点、受胎から最大で妊娠8ヶ月までの任意の時点、受胎から最大で妊娠7ヶ月までの任意の時点、受胎から最大で妊娠6ヶ月までの任意の時点、受胎から最大で妊娠5ヶ月までの任意の時点、受胎から最大で妊娠4ヶ月までの任意の時点、受胎から最大で妊娠3ヶ月までの任意の時点、受胎から最大で妊娠2ヶ月までの任意の時点、妊娠3週から妊娠20週までの任意の時点、妊娠5週から妊娠20週までの任意の時点、または、妊娠10週から妊娠20週までの任意の時点)において、治療上の処置の投与量または投与の頻度を変更すべきか否かを決定してもよい。
(実施例)
本発明を以下の実施例にさらに説明するが、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を以下の実施例に限定するものではない。
(実施例1.再発性妊娠損失の女性患者の免疫反応の変化)
母体のリンパ球活性化経路と自己抗体の異常生成との抑制不全が不妊から再発性の自然妊娠損失(RPL)までの妊娠合併症に関連しているとする考えが、現在の文献では支持されている。これら文献の実験は、過去複数回の何れの妊娠時にも合併症が発症していない産科歴を有する女性と比較して、RPL歴を有する女性のヒト免疫反応と妊娠第1三半期中に発達する抗原認識パターンとに対する理解を促進するように設計されていた。
RPL病歴を有する対象および健康な対象から採取したヒト血清由来の抗体とトロホブラスト由来の抗原とを使用したウエスタン免疫ブロット法により、妊娠中の健康なコントロールとRPL患者との間に認められる全IgG認識プロファイルの差異を明らかにした(図1に示す実験方法の概略図を参照)。なお、上記抗原は、2mLのL−グルタミンと、10%ウシ胎仔血清と、1mMのピルビン酸ナトリウムと、0.1mMの非必須アミノ酸と、100ユニット/mLのペニシリン−ストレプトマイシンとを37℃の温度条件下で添加し、5%CO2を添加した75−cm2組織培養フラスコ内のDMEM/F12(Gibco Invitrogen社)培地に保持した妊娠第1第三半期のトロホブラスト由来細胞系SW.71(Yale University, New Haven, CT, USA)から採取した。また、この細胞系は、ヒトテロメラーゼの触媒サブユニットを異所性発現させて固定化した7週目の胎盤から単離した。
細胞分画キット(BioVision社、Mountain View、California、USA)を製造業者による取扱説明書に従って使用することで得られた上記Sw.71細胞系から、核タンパク質、細胞タンパク質、および、細胞質タンパク質を抽出した。Bio-Rad DC protein quantification assay(Bio-Rad Laboratories社、Hercules, California, USA)を使用して、各区分のタンパク質濃度を測定した。
対象の自己抗体の反応性パターンを可視化するために、抽出および可溶化した上記核タンパク質、細胞質タンパク質、および細胞膜タンパク質(40μg/レーン)を10%SDS−PAGEゲルに塗布し、Laemili法を使用して電気泳動にて分離した(Nature 227:680-685, 1970)。そして、上記反応性タンパク質をウエスタン免疫ブロット法によって分析した(Brown et al., Int. J. Cancer 55:678-684, 1993)。その後、患者の血清(希釈 1:100)を使用して、ニトロセルロース膜を4℃の温度条件下で一晩プローブした後、該ニトロセルロース膜をトリス緩衝食塩水(TBS)中で3回洗浄した。ペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgG2およびIgG3と全IgG(AbD Sertotec社、Raleigh、NC)を使用して、ウエスタンブロット処理を終了した。そして、増強化学発光法(Immun-Star社、Bio-Rad社、Hercules社、California)を使用して、抗体・抗原の結合複合体を可視化した。この結果得られたX線フィルムを16−ビットのJPEG画像としてスキャンした。その後、Un-scan-it software(Silk Scientific Corp社、Orem、UT)を使用して、この階調画像をデジタル化し、ピクセル濃度へと変換した。各ゲル画像において、全可視化帯域に割り当てられたピクセル数をUn-Scan-Itを使用して定量化し、全帯域に割り当てられた各レーン内のピクセル総数を算出した。全帯域に割り当てられた特定レーン内のピクセル総数を決定し、各集団(コントロール集団とRPL集団)に属する患者について、核画分由来の抗原および膜区分由来の抗原に対する上記特定レーンのピクセル平均総数を算出した。
本明細書に記載の上記実験に使用する上記血清サンプルを下記何れかの対象から採取した;すなわち、過去2回以上の妊娠の何れもが分娩に至らずに、再発性の自然流産に帰結した経験を有する妊娠第1三半期の妊婦(n=8)、または、過去に妊娠合併症を併発することなく満期産を2回以上経験している妊娠第1三半期の妊婦(n=2)である。RPL病歴を有する患者は、病因不明の再発性流産(すなわち、母親と父親の双方の染色体核型が正常であること、子宮腔の撮像および/または評価の結果が正常であること、および、血栓形成プロファイルも正常であるが文書によって証明されているにも関わらず発生する再発性流産)を連続して2回以上経験している妊娠第1三半期の患者である。静脈血液サンプルを採取し、凝固可能にし、血清の分離を行った。なお、上記静脈血液サンプルは、University of Louisville School of Medicine、Department of Obstetrics, Gynecology and Women’s Healthに設置されている産婦人科用の個室診療所および医院において、同大学の施設内治験審査委員会により認可されたインフォームドコンセントプロトコルに準拠してボランティアから採取した。このプロテオーム研究では、再発性の自然流産の病歴を有する8人の患者を被験者として参加した(表1)。上記患者のうち一人(被験者#8)は甲状腺機能を正常に働かせるために置換薬物療法を受けていたが、それ以外の患者は全体的に良好な健康状態にあり、実験時に如何なる薬物治療も受けていなかった。また、上記患者は一人(被験者#6)を除き白人であり、残りの一人は中国人であった。上記患者のうちRPL病歴を有している患者からは抗カルジオリピン抗体またはループス性抗凝固因子の存在が確認されなかった。卵管造影法またはsaline infusion sonohysterography法による診察の結果、上記患者のうち7人については子宮の輪郭が正常であることが判明した。この7人の患者については、血清中プロゲステロン濃度(10ng/mL)が正常であるか、または、黄体の生体検査結果が一致していた。
上記実験から得られたデータによれば、健康な妊娠コントロールとRPL患者との間にIgG認識の総プロファイルに明らかな差異が存在することが示された(図2および図3A−F)。図2および3A−3Fに示すデータによれば、RPL病歴を有する女性から採取した血清では、コントロールと比較して免疫反応がより盛んであり、核抗原に対する抗体の総反応度が3.6倍大きく(p=0.0044)、膜由来抗原に対する抗体の総反応度が4.1倍大きく(p=0.0001)、細胞質抗原に対する抗体の総反応度が1.8倍大きかった(p=0,0113)。IgGのサブクラスのうちIgG3において、とりわけ大きく増強された認識パターンが確認され、免疫反応がコントロールよりも1.8倍大きく増大したことが明らかにされた。この免疫反応の増大は、抗原の分子質量が15kDa〜250kDaの範囲である3つの抗原源(核抗原、膜抗原、および細胞質抗原)の全てにおいて一貫して認められた。
患者の血清を一次抗体源として使用した場合に得られた抗体−抗原の複合体をウエスタンブロット法によって処理し、得られた結果をスキャンし、デジタル化し、ピクセル濃度へと変換した。上記コントロール集団について得られたピクセル濃度と上記RPL病歴を有する患者集団について得られたピクセル濃度を、上記膜画分、上記核画分、および上記細胞質画分に由来する抗原に対するIgGの総反応度について比較した(図4)。各ゲルに含まれるコントロール基準(HRP抗マウスIgG)の画素値を使用して、各細胞内コンパートメントからの抗原に対する免疫反応を標準化した。各対象について複製ゲルを流し、その結果得られたゲルの比率を平均化した。また、InStat Graph Padを使用して平均値と標準偏差を算出した。RPL病歴を有する女性から採取した血清では、免疫反応がコントロールよりも盛んであり、核抗原に対する抗体の全反応が1.48倍大きく(p=0.0190)、膜由来の抗原に対する全反応が1.57倍大きく(p=0.0056)、細胞質抗原の認識が1.90倍大きかった(p=0.0162)。
IgGのサブクラスのうちIgG3において、著しく増大された認識パターンが確認され、免疫反応がコントロールの1.8倍に増大した(図5)。この免疫反応の増大は抗原の分子質量が15kDa〜250kDaの範囲である3つの抗原源(核抗原、膜抗原、および、サイトゾル抗原)全てに一貫して認められることが、上記反応性帯域のデジタル化により示された。上記増大された反応は更なる抗原タンパク質の認識と関連しており、単に同一成分に対して増大された反応ではなかった。
図6に実質的に示すように、質量分析法を行う前に行う免疫沈降法とゲル電気泳動法によるタンパク質分離とによって、抗原認識を決定した。これらの実験では、Sw.71細胞系由来の可溶化核タンパク質と可溶化細胞タンパク質(50μg)を、互いに独立して、RIPAバッファ(260μL、プロテアーゼ阻害剤カクテルとホスファターゼ阻害剤カクテルを含有、Sigma Chemical社)中で超音波によって分解し、コントロール(n=2)と試験対象(n=5)とから採取した血清由来免疫グロブリン(100μL)と共にインキュベートした。その後、上記サンプルの個々をアガロース結合抗ヒトIgG(40μL)中でインキュベートし、遠心分離機で分離し、洗浄することにより、免疫親和性によって単離された細胞タンパク質および核タンパク質の沈殿物を得た。なお、この処理を各コントロールおよび各試対象に対して行った。そして、抗原−抗体の複合体を緩和して、2×Laemiliバッファを使用して可溶化した。その後、サンプルを18-well 4-15% Tris-HCL, 1.0 mm, CriterionTM Precast Gel(Bio-Rad社、Hercules, California)に塗布し、電気泳動法により分離した。その後、ImperialTM Protein Stainを使用して各ゲルを染色し、PharosFXTM Molecular Imager System(Bio-Rad社、Hercules, California)を使用してスキャンした。
抗体−抗原の結合複合体中に認められた特定のトロホブラスト細胞性抗原の配列を質量分析法により決定した。コントロールと試験対象との免疫沈降ゲルのうち不一致なスポットを除去し、顔料による染色と阻害性化学物質とを洗浄除去し、吸収される分解バッファの体積が最大値となるように乾燥させた。その後、配列等級が修飾されたトリプシンを含有(質量比1:30)する分解バッファ中で、上記乾燥させたゲルスポットを再水和し、37℃の温度条件下でタンパク質のゲル内消化を行った。続いて、抽出用のトリフルオロ酢酸バッファを使用して上記ゲルから消化ペプチドを抽出し、C-18 Zip-tips(Millipore社)を使用して消化トリプシンペプチドを脱塩した。脱塩したペプチドをα−シアンー4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)マトリクスと混合し、MALDIプレートのウェル内に斑点状に供給した。Applied Biosystems 4700 Proteomics Analyzerを使用して、各サンプルに含まれる上記ペプチドの質量スペクトル(MS)を測定した。上記質量スペクトルの観測結果により最も強度が強いとされた各サンプル内のペプチドのうち最低10個に対してフラグメンテーション処理(fragmentation)とタンデム質量分析(MS/MS)処理をさらに行った。タンパク質の同定をペプチドフィンガープリント質量マッピング法(peptide fingerprint mass mapping)とペプチドフラグメンテーションマッピング法(peptide fragmentation mapping)(MS/MSスペクトルを使用)とに基づいて行った。MASCOT検索エンジンを備えたGPS Explorerソフトウェアを使用して、MSスペクトルとMS/MSスペクトルの組み合わせをデータベース検索し、一次配列のデータベースからタンパク質を同定した。
抗体−抗原の結合複合体中に確認される特定のトロホブラスト細胞性抗原の特徴付けを免疫沈降法(図7)と後続の質量分析による配列決定法によって行った(表2)。Sw.71トロホブラスト細胞の膜画分に由来するタンパク質と膜画分に由来するタンパク質との免疫沈澱物にSDS−PAGE処理を行うことにより、特定バンドの存在により特徴付けられるような多数の質的および量的な差異が明らかになった(図7)。そして、RPLとの間に独自の関連性を示す3つの主用帯域に焦点を当てた分析を行った。Applied Biosystems 4700 Proteomics Analyzerを使用して、各サンプルに含まれる上記ペプチドの質量スペクトル(MS)を測定した。その後、タンパク質の同定をペプチドフィンガープリント質量マッピング法(peptide fingerprint mass mapping)とペプチドフラグメンテーションマッピング法(peptide fragmentation mapping)(MS/MSスペクトルを使用)とに基づいて行った。Mascot v 2.1.04(Matrix Science Ltd社)を使用してMSとMS/MSの複合解析を行い、SwissProtデータベースを使用してタンパク質を同定した。マッチングを行った各ペプチドをイオンスコアによって特徴付けた;なお、2つ以上のイオンスコアが同一性を示した場合、タンパク質に対するペプチドのマッチングの信頼性は高いものとした(表2)。これにより得られた結果は、異なって認識された3つのトロホブラスト抗原(アポリポタンパク質B−100(ApoB−100)と、フィブロネクチンと、α2−マクログロブリン(α2M))を含むものであった。特に、RPL患者の女性から血清を採取した場合、トロホブラスト由来のフィブロネクチンとApoB−100が母親のIgG抗体によって認識されることが観察された。一方で、過去複数回の妊娠・分娩において合併症を発症しなかった産科歴を有する妊婦から血清を採取した場合、この抗体認識は発生しなかった。特に、コントロール群に属する同一の多産婦から採取された血清では、α2Mに対する抗体認識が確認されなかったが、このような認識パターンは上記RPL患者から採取した血清では存在した。これらの発見が示唆するところは、母親の抗体によってフィブロネクチンとα2Mが異常認識されると、恐らく、母体−児間のインターフェイスの発達が機能不全に陥るので、その後の妊娠損失または妊娠末期の他の産科合併症が引き起こされる可能性が生ずることである。同時に、ApoBの活性の前記3つの機能および機序の組み合わせが、早期妊娠が持続される上で決定的な役割を果たしている。健康なコントロールから採取した血清から示されるように、恐らく、抗体−ApoB結合のこうした非存在が、子宮内皮レベル、ステロイド生成用の黄体細胞レベル、および/または、栄養分に富んだ胚卵黄嚢レベルにおいて意図されるApoBの機能を変化させる。
上記胎児の抗原アレイの少なくとも半分は父親由来の遺伝物質によって決定されるため、これら要素が発現されると、上記胎児の自然損失(流産)に繋がり得る免疫反応が引き起こされてしまう。胎児を認識する抗体は母体循環系内に確認されており、父親由来の抗原に対して反応を示すIgGは上記胎盤から溶出される(Creus et al., Humn. Reprod. 13:39-43, 1998; Wilson et al., Fertil. Steril. 76:915-917, 2001)。この研究では、RPL患者の女性から採取した血中IgGの抗原認識パターンを、合併症を伴わない妊娠の第1三半期にある妊婦から採取した血中IgGの抗原認識パターンと比較して研究した。
妊娠は免疫系内に著しい変化をもたらすことが知られており、このような変化はTh2偏向の免疫反応(液性免疫反応)への転換として一般的に注目されている。一方で、RPL患者の女性では、こうした変化の多くが確認されていない。妊娠はTh2型サイトカイン(IL−10およびIL−4など)の生成と関連付けられ、RPLはTh1型サイトカイン(IFNγ、IL−12)の生成と関連付けられてきた。これまでの研究により、合併症を伴わない正常な妊娠がIgGのサブクラス内の著しい変化と関連付けられていることが示されてきた(Wilson et al., Fertil. Steril. 76:915-917, 2001)。正常な妊娠に関連付けられているIL−4の生成により、末梢血単核細胞の活性化が誘発されてIgGの総生成量が増加するとともに、IgG4の増強が誘発される。反対に、RPLに関連付けられているIFN−γの生成により、これらの事象が抑制される。RPLはIL−10レベルの低下と広く関連付けられており、RPL患者は全IgGのレベルの低下を示す(Eblen et al., Fertil. Steril. 73:305-313, 2000; Wilson et al., Fertil. Steril. 76:915-917, 2001)。
本実験により得られたデータによると、合併症を伴わない妊娠がトロホブラスト由来抗原に対して反応するIgGの生成の変化と関連していることが示されている。健康な妊婦と比較して、後に胎児を流産する妊婦は、IgGのサブセットのパターンが異なり、例えば、IgG3のレベルが増大している。抗体の上記IgGクラスが血中および間質液中で優位を占め、このIgGクラスが抗体の全クラスのうち最も多機能的なクラスである。上記IgG分子は、2つの抗原結合領域(Fab)と、自身を介して様々なエフェクター活性(例えば、古典敵補体経路、ファゴサイトーシス、および抗体依存性細胞障害作用の活性)が開始される1つのリガンド結合領域(Fc)とから構成される(Jefferis et al., Ann. Biol. Clin. 52:57-65, 1994)。上記IgG3サブクラスは、通常、血中IgGの全量の7%を占めているに過ぎないが、補体活性化が最も高く、免疫エフェクター細胞のFc受容体への親和性も高い。本研究の結果により、コントロールと比較してRPL患者の女性では、特にIgG3サブクラスについて、トロホブラスト抗原の抗体認識の全体的な増大と、独特な抗原−抗の体結合パターン(図2、3A〜3F、4)とが示された。このIgG3免疫活性の増大は、コントロールと比較して、PRL患者の対象から採取された血清に認められ、Th2型免疫細胞のより大きな活性化とその後に生じる同種移植片である胎児の拒絶とを示唆する。RPL患者のIgGサブクラス間の異常比率は免疫的により活性なIgG3の比重が高く、恐らく、再発性中絶患者の機序および病因との繋がりの可能性である。
RPL患者は、IgG3によるトロホブラスト由来抗原の認識が増強されるだけでなく、異なる抗原タンパク質への認識が認められた。トロホブラスト由来タンパク質のうち、RPL患者の体内で独特な抗体認識を示す2種類のタンパク質(フィブロネクチンおよびアポリポタンパク質B−100)を分離し、特徴付けた。なお、RPL患者の体内には、アルファ2−マクログロブリンを認識する抗体が存在していた。RPL患者の体内で認識された更なるトロホブラスト由来抗原を表2に示す。
アルファ2−マクログロブリン(α2M)は、分子量が180kDaのサブユニットのホモ四量体である。α2Mはエンドプロテイナーゼの主要な阻害物質であり、サイトカインおよび成長因子の輸送および除去において制御的な役目を担っている。また、α2Mは、あるサイトカインの分解を抑制する一方で、他の多様なサイトカインの細胞傷害効果を防ぐことがある(Esadeg et al., Placenta 24:912-921, 2003)。健康な成人体内ではα2Mの血中濃度は低く、哺乳類の血液中では、α2Mが、サイトカインの標的をα2M受容体関連タンパク質またはリポタンパク質受容体関連タンパク質を発現している細胞に定める(Esadeg et al., Placenta 24:912-921, 2003; Shimizu et al., Exp. Anim. 51:361-365, 2002)。ヒトについては、子宮α2Mは子宮内膜血管に沿って並ぶ内皮細胞に由来すると考えられている。α2Mの血清濃度は月経周期内の分泌期中に2倍または3倍に増加することが報告されており、脱落膜化細胞としてのα2Mの役割を示唆している(Esadeg et al., Placenta 24:912-921, 2003)。妊娠期間中、α2Mプロテイナーゼ複合体に対する受容体がヒト胎盤の合胞体栄養細胞上に確認された(Thomas et al., Placenta 11:413-430, 1990; Jensen et al., Placenta 9:463-477, 1988)。α2Mは、免疫抑制反応を示すため、ヒト子宮胎盤インターフェイスにおける免疫抑制の潜在的な手段として考えられており、胎盤を通過して新生児へと輸送されうる(Benyo et al., Endocrinology 133:699-704, 1993)。この研究では、健康なコントロールから採取した血清により、α2M四量体に対する抗体認識が明らかにされなかったが、RPL患者の妊娠女性から採取された血清では、α2M四量体に対する抗体認識が確認された(図7、表2)。α2Mは、白血球由来のサイトカインおよび非白血球由来のサイトカインの活性における制御的な役割を担うことから、RPLを引き起こす異常プロセスにおける主用な要素でありうる。健康なコントロールから採取された血清において示されたように、このタンパク質への抗体認識および抗体結合は、子宮の脱落膜化と、内皮構造と、トロホブラストの侵襲および成長と、経胎盤輸送とを含むα2Mの活性に対して多様な病巣部から影響を及ぼす。
アポリポタンパク質BはLDLのコアタンパク質であり、低密度リポタンパク質(LDL)と該LDLの受容体との間の相互作用を仲介する(Yamada et al., Hum. Reprod. 13:944-952, 1998)。アポリポタンパク質B(ApoB−100およびApoB−48)の主用な機能は、液体循環系内を輸送できるように中性脂肪(トリグリセリドおよびコレステロールエステルなど)をリポタンパク質内にパッキングするための構造的枠組みを提供することである(Farese et al., J. Lipid Res. 37:347-360, 1996)。さらに、アポリポタンパク質Bは、受容体を介した多様なリポタンパク質のエンドサイトーシスを引き起こすためのリガンドを含んでいる。上記LDL受容体と関連タンパク質との突然変異体によって、ApoBおよび他のリポタンパク質が細胞内に異常に吸収されることが示されてきた。リポタンパク質を制御する適切な機序の非存在は、最終的に、リポタンパク質の酸化生成物の生成へと繋がるが、こうした酸化生成物は酸化的損傷を仲介し、内皮機能不全および早期のアテローム性動脈硬化を引き起こす(Cekmen et al., Clin. Biochem. 36:575-578, 2003; Sarandol et al., Clin. Biochem. 37:990-996, 2004; Sarandol et al., Arch. Gynecol. Obstet. 270:157-160, 2004)。正常の妊娠では、ApoBを酸化とその後の破壊的作用から防ぎつつ、ApoBの利用を受容体を介したエンドサイトーシスを通じて促進させる要因が存在するように思われる。特にトロホブラスト細胞は、LDL受容体と関連するタンパク質とのレベルが高く、成長制限または脈管に発生する他の産科合併症がアテローム生成リポタンパク質または異常リポタンパク質の代謝の慢性的なパターンに関連しているという考えに繋がる。恐らく、正常の妊娠においては、特定の酵素または他の基質と、タンパク質と、分子との何れかがリポタンパク質の安定化に関与し、共通の酸化経路を防いでいる。リポタンパク質の酸化を抑制する抗酸化物質(ビタミンEおよび/またはエストロゲンなど)の役割が、一部の研究者によって提案されてきた(Sarandol et al., Arch. Gynecol. Obstet. 270:157-160, 2004)。反対に、内因性の保護機序の非存在は、子宮胎盤インターフェイスにおける異常リポタンパク質の酸化的損傷を発生させうる。このようなプロセスは、合併症を伴う妊娠(すなわち、RPL、子癇前症、IUGRなど)の環境に関連している。
in situ ハイブリッド形成法により、ApoB mRNAの発現位置がヒト胚卵黄内胚葉細胞内であることが判明した(Cekmen et al., Clin. Biochem. 36:575-578, 2003)。ヒト卵黄嚢内のApoBの生理的な目的は未解明のままだが、マウス卵黄嚢内およびラット卵黄嚢内にApoBを検出できたことにより、母性由来で栄養分に富んだApoB含有リポタンパク質の発生中の胚の卵黄嚢への輸送およびパッキングについて適当と思われるモデルが創出された(Cekmen et al., Clin. Biochem. 36:575-578, 2003)。RPL患者の試験者の体内の液性因子によるApoBの認識は成熟胚の栄養摂取に敵対的に影響することがあり、胚の正常な発達を妨げることがある。
この研究では、RPLの病歴を有する妊娠女性から血清を採取した場合に、母親のIgG抗体によるトロホブラスト由来ApoB−100の認識が確認された。妊娠中の健康なコントロールから血清を採取した場合、同様の抗体認識は確認されなかった(図7)。これら研究データが示唆することは、試験群に確認された上記認識のパターンおよびコントロール群に確認された上記認識の非存在が、リポタンパク質の代謝、酸化破壊、および、子宮胎盤インターフェイスにおける血管内機能の障害において異常な役割を果たしているということである。上記研究データから、RPL病歴を有する妊娠早期の対象では、血清
抗体がトロホブラスト由来ApoB−100を認識したことが示された。正常な産科歴を有する対象から採取した血清では、上記認識の非存在が観察された。上記抗体−ApoB認識は、子宮内皮レベル、ステロイドを生成する黄体細胞レベル、および、栄養分に富んだ胚卵黄嚢レベルの何れに関わらず、所望のApoBの機能の変化を生じさることがある。
胎児性フィブロネクチンは、“トロホブラスト接着剤(trophoblast glue)”として考えられている細胞外マトリクスタンパク質であり、絨毛膜の脱落膜マージンにおいて濃度が増大しており、絨毛外トロホブラストを囲んでいる(Guller et al., Up-to-Date 17.3, 2009; Mercorio et al., Eur. J. Obstet. Gynecol. Reprod. Biol. 126:165-169, 2006)。受容性の母性脱落膜の活性と、侵入性のトロホブラストと、発生中の絨毛膜との間には、厳重に規制されたバランスが存在している。実際、母性の細胞外マトリクスと母体−胎児のインターフェイスは、再発性早期中絶と、子宮内発育制限と、子癇前症との状態に中心的な役割を果たしていると考えられている。さらに、(i)自己分泌信号と傍分泌信号の異常、および、(ii)フィブロネクチンなどの細胞マトリクスタンパク質と細胞接着分子との間の受容力が、妊娠障害の原因となる場合がある。接着可能な侵入性のトロホブラスト細胞の獲得は、フィブロネクチンに対するインテグリン受容体が頂端側で集積されることと、胚盤胞表面上のフィブロネクチン結合活性が強いことにより特徴付けられる(Mecorio et al., Eur. J. Obstet. Reprod. Biol. 126:165-169, 2006)。本明細書に示すデータは、RPL病歴を抱える女性から血清を採取した場合、トロホブラスト由来フィブロネクチンに対する母親のIgG抗体が認識されたことを示す(図7、表1)。なお、経産婦である健康なコントロールにおいては、このような認識は非存在していた。これら発見は、恐らく、母親の抗体がフィブロネクチンを異常認識すると、母体−胎児間のインターフェイスの機能不全が進行し、妊娠損失または妊娠末期に生じる他の産科合併症が発生する可能性があることを示唆している。増大する大部分の証拠が、胎児性フィブロネクチンが着床において積極的な役割を果たしていることを示唆している。脱落膜内で作用する自己分泌/傍分泌の制御メカニズムが、トロホブラストの侵入の規制に、フィブロネクチンなどの細胞外マトリクスタンパク質とその特異的なインテグリントロホブラスト受容体との改変を介して関与してきた。
特定の免疫学的重要性のうち、フィブロネクチンがIL−1βの生成および放出を規制することができる。炎症中の免疫細胞の機能に対するIL−1βの計り知れない影響により、調査はIL−1βの発現を規制する要因に焦点を当ててきた。細胞外基質成分(ECM)は、IL−1βの発現を誘発することができる(Roman et al., cytokine 12:1581-1596, 2000)。よく研究された成分の1つはフィブロネクチン(FN)であり、この高分子接着性分子は組織マクロファージと線維芽細胞により発現される。したがって、FNはIL−1βの発現に作用するのに良い位置に配置されている。インビトロ(in vitro)研究により、FNがIL−1βmRNAの発現を活性化できること、および、IL−1βmRNAの細胞内前駆タンパク質(分子量:31kDa)への翻訳とヒト単核球内の活性体(分子量:17kDa)の分泌とを活性化できることが示されてきた(Roman et al., cytokine 12:1581-1596, 2000)。したがって、フィブロネクチンとの結合プロセスに反作用を示すエフェクターIgG3が、FN−誘導のIL−1β生成を阻害しうる。IL−1βが妊娠早期に関連する炎症性マスター調節因子として機能するため、IL−1βの閉塞が前炎症性環境の誘発を防ぐ。
これらトロホブラストの細胞応答が、正常の着床を阻害し、侵入中のトロホブラストと発生中の胚細胞の成長と生存を最終的に阻害する多種の前炎症性活性または他の免疫調節作用を活性化する可能性が高い。このデータは、RPL患者の女性をスクリーニングにとって臨床学的に有用であり、さらに重要なことには、妊娠前および出産前のケア中の治療上の処置の開発にとって臨床学的に有用である。
〔他の実施形態〕
本発明を詳細な説明と併せて説明したが、上記説明は本発明の一例を説明するものに過ぎないこと、および、上記説明は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により規定されることが明らかであろう。本発明の他の様態、利点、変形についても、下記の特許請求の範囲に含まれる。
トロホブラスト細胞タンパク質を取得する方法例とウエスタンブロットを行う方法の例を示す概略図である。
コントロールである満期産患者由来の全血中抗体の免疫反応性プロファイルとRPL患者の全血中抗体の免疫反応性プロファイルとを比較して示す代表的なウエスタン免疫ブロットの結果を示す図である。
図1に示すよう実施した実験の結果を示し、満期産を経験したコントロールからのサンプルについてのIgGAMのレベルの実験結果を示す図である(MW、分子量;M、膜タンパク分屑;N、核タンパク分屑;C、細胞質タンパク分屑)。
図1に示すよう実施した実験の結果を示し、満期産を経験したコントロールからのサンプルについてのIgG2のレベルの実験結果を示す図である(MW、分子量;M、膜タンパク分屑;N、核タンパク分屑;C、細胞質タンパク分屑)。
図1に示すよう実施した実験の結果を示し、満期産を経験したコントロールからのサンプルについてのIgG3のレベルの実験結果を示す図である(MW、分子量;M、膜タンパク分屑;N、核タンパク分屑;C、細胞質タンパク分屑)。
図1に示すよう実施した実験の結果を示し、PRL患者のサンプルについてのIgGAMのレベルの実験結果を示す図である(MW、分子量;M、膜タンパク分屑;N、核タンパク分屑;C、細胞質タンパク分屑)。
図1に示すよう実施した実験の結果を示し、PRL患者のサンプルについてのIgG2のレベルの実験結果を示す図である(MW、分子量;M、膜タンパク分屑;N、核タンパク分屑;C、細胞質タンパク分屑)。
図1に示すよう実施した実験の結果を示し、PRL患者のサンプルについてのIgG3のレベルの実験結果を示す図である(MW、分子量;M、膜タンパク分屑;N、核タンパク分屑;C、細胞質タンパク分屑)。
SW−71細胞の膜または核に由来する抗原に対してコントロール(満期産)群およびRPL群が示す抗体の反応性を示す棒グラフである。
2つのウエスタンブロットと、該ウエスタンブロットで各レーンのトロホブラスト抗原(核抗原、膜抗原、細胞質抗原)に対して得られる抗体反応性のピクセル濃度を示す6つのグラフである。
免疫沈降を利用したタンパク質発現のプロファイリングを行う方法例を示す概略図である。
コントロール(満期産)とRPL被験者との間で一致しない抗原−抗体複合体を示す図である(図中の矢印はα2−マクログロブリンと、フィブロネクチンと、アポリポタンパク質B−100とを示す)。