抗VEGF-C抗体の重鎖及び軽鎖HVRループ配列。図は重鎖HVR配列、H1、H2及びH3及び軽鎖HVR配列、L1、L2及びL3を示す。配列番号付けは次の通りである:クローンVC1(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:9;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.1(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:10;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.2(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:11;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.3(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:12;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.4(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:13;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.5(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:14;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.6(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:15;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.7(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:16;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.8(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:17;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.9(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:18;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.10(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:19;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.11(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:5;HVR-H3は配列番号:20;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.12(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:6;HVR-H3は配列番号:21;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC1.12.1(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:6;HVR-H3は配列番号:21;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:30);クローンVC1.12.2(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:6;HVR-H3は配列番号:21;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:31);クローンVC1.12.3(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:6;HVR-H3は配列番号:21;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:32);クローンVC1.12.4(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:6;HVR-H3は配列番号:21;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:33);クローンVC1.12.5(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:6;HVR-H3は配列番号:21;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:34);クローンVC1.12.6(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:6;HVR-H3は配列番号:21;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:35);VC1.12.8(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:6;HVR-H3は配列番号:21;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:36);クローンVC1.12.9(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:6;HVR-H3は配列番号:21;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:37);クローンVC1.12.10(HVR-H1は配列番号:1;HVR-H2は配列番号:6;HVR-H3は配列番号:21;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:38);クローンVC3(HVR-H1は配列番号:2;HVR-H2は配列番号:7;HVR-H3は配列番号:22;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC4(HVR-H1は配列番号:3;HVR-H2は配列番号:8;HVR-H3は配列番号:23;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC4.2(HVR-H1は配列番号:3;HVR-H2は配列番号:8;HVR-H3は配列番号:24;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);クローンVC4.3(HVR-H1は配列番号:4;HVR-H2は配列番号:91;HVR-H3は配列番号:23;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:39);クローンVC4.4(HVR-H1は配列番号:3;HVR-H2は配列番号:8;HVR-H3は配列番号:25;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29);andクローンVC4.5(HVR-H1は配列番号:3;HVR-H2は配列番号:8;HVR-H3は配列番号:26;HVR-L1は配列番号:27;HVR-L2は配列番号:28;HVR-L3は配列番号:29)。アミノ酸位置は下に記載するKabat番号付けシステムに従って番号付けされる。
本発明の実施における使用のための例示的なアクセプターヒトコンセンサスフレームワーク配列を示し、配列識別子は以下の通りである:可変重鎖(VH)コンセンサスフレームワーク:ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号:40);ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワークマイナス伸展超可変領域(配列番号:41−43);ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号:44);ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナス伸展超可変領域(配列番号:45−47);ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナス伸展;ヒトVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号:48);ヒトVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークマイナス伸展超可変領域(配列番号:49−51);ヒトVHアクセプターフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号:52);ヒトVHアクセプターフレームワークマイナス伸展超可変領域(配列番号:53−54);ヒトVHアクセプター2フレームワークマイナスKabatCDR(配列番号:55);ヒトVHアクセプター2フレームワークマイナス伸展超可変領域(配列番号:56−58);アミノ酸位置は下に記載するKabat番号付けシステムに従って番号付けされる。
本発明の実施における使用のための例示的なアクセプターヒトコンセンサスフレームワーク配列を示し、配列識別子は以下の通りである:可変軽鎖(VL)コンセンサスフレームワーク:ヒトVLカッパサブグループIコンセンサスフレームワーク(配列番号:59);ヒトVLカッパサブグループIIコンセンサスフレームワーク(配列番号:60);ヒトVLカッパサブグループIIIコンセンサスフレームワーク(配列番号:61);ヒトVLカッパサブグループIVコンセンサスフレームワーク(配列番号:62)。
huMAb4D5-8重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域配列を示す。上付き/太字の番号はKabatによるアミノ酸位置を示す。
huMAb4D5-8重鎖及び軽鎖の修飾/可変フレームワーク領域配列を示す。上付き/太字の番号はKabatによるアミノ酸位置を示す。
A.VEGF相同ドメイン(VHD)を含むVEGF-Cの模式図。B.増殖因子のVEGFファミリーの受容体リガンド相互作用。
抗VEGF-C抗体はインビトロでのVEGF-C誘導性細胞遊走を低減する。A.抗VEGF-C(10μg/ml)の存在又は非存在下において18時間の200ng/mlの成熟VEGF-C(R&DSystems)に対する反応におけるLECの遊走。(各条件に対しn=6)。B.抗VEGF-C(10μg/ml)の存在又は非存在において18時間の200ng/mlの完全長VEGF-Cに対する反応におけるLECの遊走。(各条件に対しn=6)。エラーバーはSEMを示す。*=p<0.05。
抗VEGF-C抗体はインビトロでのVEGF-C誘導性細胞増殖を低減する。A.抗VEGF-C(1μg/ml)の存在又は非存在において200ng/mlの成熟VEGF-C(R&DSystems)に対する反応におけるLECの増殖(各条件に対しn=6)。B.抗VEGF-C抗体(1μg/ml)の存在又は非存在における200ng/mlの完全長VEGF-Cに対する反応におけるLECの増殖(各条件に対しn=6)。エラーバーはSEMを示す。*=p<0.05。
抗VEGF-C抗体はインビトロでのVEGF-C誘導性スプラウティングを低減する。抗VEGF-C抗体(10μg/ml)の存在又は非存在において14日間の200ng/mlの成熟VEGF-C(R&DSystems)に対する反応におけるビーズスプラウティングアッセイにおけるLECのスプラウティング。LECを可視化するために培養物を抗LYVE-1抗体で染色した(代表画像を示す)。
抗VEGF-C抗体VC4.5はVEGFR3へのVEGF-Cの結合を遮断する。マウスIgG2a又はヒトIgG1形態の抗VEGF-C抗体VC4.5を比較する受容体遮断活性。固定濃度のビオチンコンジュゲートVEGF-Cを段階希釈の抗VEGF-C抗体mVC4.5(mIgG2a)及び抗VEGF-C抗体hVC4.5(hIgG1)で2時間インキュベートした。次いで非結合VEGF-Cを固定化VEGFR3-Fcで捕獲し、ストレプトアビジン-HRPコンジュゲートで検出した。
抗VEGF-C抗体はインビトロでVEGF-C誘導性VEGFR2活性を低減する。抗VEGF-C抗体(10μg/ml)の存在又は非存在において10分のVEGF-A(20ng/ml)又はVEGF-C(200ng/ml,R&DSystems)刺激に対する反応におけるpVEGFR2生産によって受容体活性を評価した。値を全VEGFR2レベルに正規化した。pVEGFR2及び全VEGFR2をELISAキット(R&DSystems)を使用して検出した。
増殖アッセイにおけるマウス及びヒトバックボーン抗VEGF-C抗体の比較。異なる用量のマウスバックボーン又はヒトバックボーン抗VEGF-C抗体の存在又は非存在において200ng/mlの成熟VEGF-C(R&DSystems)に対する反応におけるLEC増殖(各条件に対しn=6)。
抗VEGF-C抗体はインビボでのVEGF-C誘導性機能を低減する。LYVE-1染色角膜の代表画像であり、リンパ管を示し、FITC-Dextranは血管を示し、正常の無血管角膜における150ngペレットのVEGF-C(破線の円)の角膜内設置の効果を示す。染色は下のパネルに示すように定量化することが可能であり、分析において陽性として含まれる面積を下のパネルで偽着色した。
抗VEGF-C抗体はインビボでVEGF-C誘導性機能を低減する。抗VEGF-C抗体での全身処置(10mg/kgを週に2回)から(A)血管新生及び(B)リンパ管形成を評価するピクセル数での定量化。*p<0.05;エラーバーは平均の標準誤差を表す。
抗VEGF-C抗体処置は、同所性増殖66c14腫瘍における腫瘍血管新生の低減をもたらす。A.アイソタイプ特異性コントロール(抗ブタクサ)抗体(上)、又は抗VEGF-C抗体(下)で処置した66c14腫瘍におけるPECAM-1染色血管の代表画像。B.血管密度の定量化をグループにつき6の腫瘍の各々からの6の代表画像から決定し、ImageJによって平均ピクセル数を評価した。*p<0.05;エラーバーは平均の標準誤差を表す。
抗VEGF-C抗体処置は、単剤として又は抗VEGF-Aとの併用において、66c14腫瘍における腫瘍増殖の低減をもたらす。A.図15において分析した66c14腫瘍モデル研究の平均腫瘍体積グラフ。一旦腫瘍が100mm3の平均サイズに達すると、動物に抗VEGF-C抗体(10mg/kg)を週に2回腹腔内投与し、研究の間に渡って投与した。B.独立66c14腫瘍モデル研究の平均腫瘍体積グラフ。一旦腫瘍が100mm3の平均サイズに達すると、動物に抗VEGF-C(10mg/kg)、抗VEGF-A抗体(5mg/kg)、又は両薬剤の組合せを週に2回腹腔内投与し、研究の間に渡って投与した。
抗VEGF-C抗体処置は、単剤として又は抗VEGF-A抗体との組合せにおいて、H460腫瘍における生存率の増加をもたらす。一旦腫瘍が100mm3の平均サイズに達すると抗VEGF-C抗体(10mg/kg)、抗VEGF-A抗体(5mg/kg)、又は両薬剤の組合せで週に2回腹腔内処置した動物のグループに関するKaplan-Meyer生存曲線。腫瘍は5週間投与された。腫瘍体積が1000mm3に達した時動物を研究から除いた。
抗VEGF-C抗体処置は、単剤として、又は抗VEGF-A抗体との組合せにおいて、H460腫瘍における腫瘍血管新生の低減をもたらす。A.コントロール抗体(左上)、抗VEGF-A抗体(右上)、抗VEGF-C抗体(左下)又は抗VEGF-A抗体及び抗VEGF-C抗体の組合せ(右下)で処置されたH460腫瘍におけるMECA32染色血管の代表画像。B.血管密度の定量化を、グループにつき6の腫瘍の各々からの6の代表画像から決定し、ImageJによって平均ピクセル数について評価した。腫瘍を研究エンドポイントで評価した。*p<0.05;エラーバーは平均の標準誤差を表す。
マウス及びヒトバックボーン抗VEGF-C抗体のインビボ効果の比較。独立66c14腫瘍モデル研究をA.マウス又はB.ヒトバックボーン抗VEGF-C抗体のどちらかで実施した。類似の腫瘍増殖曲線が異なる研究で示され、インビボでの等価な活性を示唆する。
抗VEGF-C抗体処置は66c14腫瘍における肺転移の低減をもたらす。A.コントロール(左)及び抗VEGF-C抗体(右)で処置した動物からの肺の代表画像。肺を右心室かん流により固定の前に膨張させた。可視化を容易にるすために小結節を白で強調する。B.コントロール及び抗VEGF-C抗体処置動物における、肺あたりの転移性小結節の数の目視検査による定量化。
A.抗VEGF-C抗体処置は66c14腫瘍における肺転移の低減をもたらす。代表的なマイクロCTスキャンの肺の三次元レンダリングであり、コントロール及び抗VEGF-C抗体処置動物における肺小結節(赤)を示す。B.H&E染色の肺小結節(矢印)であり転移性腫瘍細胞を示す。*p<0.05;エラーバーは平均の標準誤差を表す。
抗VEGF-C抗体処置は腫瘍リンパ管の低減をもたらす。A.コントロール抗体(左欄)又は抗VEGF-C抗体(右欄)で処置した66c14(上列)及びC6(下列)腫瘍におけるLYVE-1染色リンパ管の代表画像。B.リンパ管密度の定量化を、グループにつき6の腫瘍の各々からの6の代表画像から決定し、ImageJにより平均ピクセル数について評価した。*p<0.05;エラーバーは平均の標準誤差を表す。
抗VEGF-C抗体VC1、VC3及びVC4のL1、L2及びL3アミノ酸配列。
抗VEGF-C抗体VC1、VC3及びVC4のH1、H2及びH3アミノ酸配列。
抗VEGF-C抗体VC4、VC4.2、VC4.3、VC4.4及びVC4.5のL1、L2及びL3アミノ酸配列。
抗VEGF-C抗体VC4、VC4.2、VC4.3、VC4.4及びVC4.5のH1、H2及びH3アミノ酸配列。
抗VEGF-C抗体VC1、VC1.1、VC1.2、VC1.3、VC1.4、VC1.5、VC1.6、VC1.7、VC1.8、VC1.9、VC1.10、VC1.11及びVC1.12のL1、L2及びL3アミノ酸配列。
抗VEGF-C抗体VC1、VC1.1、VC1.2、VC1.3、VC1.4、VC1.5、VC1.6、VC1.7、VC1.8、VC1.9、VC1.10、VC1.11及びVC1.12のH1、H2及びH3アミノ酸配列。
抗VEGF-C抗体VC1.12、VC1.12.1、VC1.12.2、VC1.12.3、VC1.12.4、VC1.12.5、VC1.12.6、VC1.12.8、VC1.12.9及びVC1.12.10のL1、L2及びL3アミノ酸配列。
抗VEGF-C抗体VC1.12、VC1.12.1、VC1.12.2、VC1.12.3、VC1.12.4、VC1.12.5、VC1.12.6、VC1.12.8、VC1.12.9及びVC1.12.10のH1、H2及びH3アミノ酸配列。
抗VEGF-C抗体VC1、VC3及びVC4の結合親和性データをまとめた表。
抗VEGF-C IgG VC1、VC3及びVC4の受容体遮断活性。抗VEGF-C IgG VC1、VC3及びVC4は、VEGFR3コートプレートに対するビオチン標識ヒトVEGF-Cの結合を用量異存性に遮断する。
ヒトVEGF-Cに対するVC4親和性改良変異体(VC4.2、VC4.3、VC4.4及びVC4.5)のファージIC50データをまとめた表。
ヒトVEGF-C(R&Dsystems)及びヒトVEGF-C C137Sに対する抗VEGF-C抗体VC4.5Fabタンパク質及び抗VEGF-C抗体VC4.5 IgGのキネティック結合親和性測定をまとめた表。
ヒトVEGF-Cに対するVC1親和性改良変異体(VC1.1、VC1.2、VC1.3、VC1.4、VC1.5、VC1.6、VC1.7、VC1.8、VC1.9、VC1.10、VC1.11及びVC1.12)のファージIC50データをまとめた表。
ヒトVEGF-C C137Sに対するVC1.12親和性改良変異体(VC1.12.1、VC1.12.2、VC1.12.3、VC1.12.4、VC1.12.5、VC1.12.6、VC1.12.8、VC1.12.9及びVC1.12.10)のファージ IC50データをまとめた表。
抗VEGF-C抗体のエピトープマッピング。VC4はVC3及びVC1系抗体に対し異なるエピトープを有する。
抗VEGF-C抗体VC1.12及びVC4.5の軽鎖可変領域を示す。
抗VEGF-C抗体VC1.12及びVC4.5の重鎖可変領域を示す。
細胞増殖アッセイ。抗VEGF-C抗体はインビトロでのVEGF-C誘導性細胞増殖を低減する。
抗VEGF-C抗体はVEGFR3のVEGF-C媒介リン酸化を阻害する。EGFR3 KIRAアッセイによって評価するVEGFR3リン酸化レベル。抗VEGF-C抗体(10μg/ml)又はVEGFR3 ECD(10μg/ml)の存在又は非存在においてVEGF-C(200ng/ml)を10分間加えて、VEGFR3のリン酸化の誘導を評価した(各条件に対しn=6)。*p<0.05;エラーバーは平均の標準誤差を表す。
抗VEGF-C抗体での処置はVEGF-C誘導血管透過性を低減する。マウス皮膚血管透過性アッセイからの結果の定量化。定量化を、透過性アッセイにおける皮膚サンプルから抽出したエバンスブルー色素から決定した。動物を抗VEGF-C抗体(0.5mg/ml)又はVEGFR3 ECD(1.0mg/ml)で処置した。示す値は6つの独立実験の平均である。*p<0.05;エラーバーは平均の標準誤差を表す。
VEGF-C及びVEGFの同時阻害は原発性腫瘍増殖停止に更なる利益を提供する。A.A549についての平均腫瘍増殖曲線であり、処置の順を変更した。処置を矢印が示す期間、抗VEGF抗体については5mg/kgを週に2回、抗VEGF-C抗体については10mg/kgを週に2回投与した。B.コントロール、パクリタキセル、抗VEGF+パクリタキセル又は抗VEGF+抗VEGF-C+パクリタキセルで処置したH460腫瘍モデルの平均腫瘍増殖曲線及びカプラン・マイヤー曲線。抗VEGF抗体については5mg/kgを週に2回及び抗VEGF-C抗体については10mg/kgを週に2回各々5週間、パクリタキセルについては30mg/kgを隔日で10日間処置した。
66c14腫瘍モデルをしようしたマウスバックボーン抗VEGF-C抗体のインビボ効果の比較。
増殖アッセイにおける抗VEGF-C抗体の比較。異なる用量の抗VEGF-C抗体の存在又は非存在における200ng/mlの成熟VEGF-Cに対する反応におけるLEC増殖。
抗VEGF-C処置はマウスにおける転移性腫瘍病変の数の低減をもたらす。
(発明の詳細な説明)
ここに記載の発明は、例えば、VEGF-Cの活性に伴う病態の診断、治療又は防止に有用である、VEGF-Cに結合する単離された抗体を提供する。薬学的組成物並びに治療の方法もまた提供される。幾つかの実施態様では、本発明の抗体は、腫瘍、癌、及び/又は細胞増殖性障害を治療するために使用される。幾つかの実施態様では、発明の抗体は、リンパ管形成及び血管形成に伴う病態を治療するために使用される。
別の態様では、本発明の抗VEGF-C抗体は、例えば様々な組織及び細胞タイプにおけるVEGF-Cの検出等、VEGF-Cの検出及び/又は単離のための試薬として有用性を持つ。
発明は抗VEGF-C抗体の作製方法、及び抗VEGF-C抗体をコードするポリヌクレオチドを更に提供する。
一般的技術
本願明細書中に記載又は引用される技術及び手順は、一般に十分に理解されるものであり、当業者によって従来の方法論を用いて共通して実施されるものである。その例として、以下の文献に記載される方法論が広く利用されている。Sambrook 等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3版(2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, 等編集 (2003));the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames 及び G. R. Taylor 編集 (1995))、Harlow and Lane編 (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, and ANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney編 (1987));Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis編, 1998) Academic Press;Animal Cell Culture (R. I. Freshney)編, 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, 及び D. G. Newell編, 1993-8) J. Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir 及び C. C. Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller 及び M. P. Calos編, 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis 等編, 1994);Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan 等編, 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley 及び Sons, 1999);Immunobiology (C. A. Janeway 及び P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: a practical approach (D. Catty.編, IRL Press, 1988-1989);Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd 及び C. Dean編, Oxford University Press, 2000);Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow 及び D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti 及び J. D. Capra編, Harwood Academic Publishers, 1995);及び Cancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita 等編, J.B. Lippincott Company, 1993)。
定義
この明細書を解釈する目的には、次の定義が適用され、適切な場合には、単数で使用される用語はまた複数を含み、その逆もある。以下に記載する定義が、ここに援用される何れかの文献と矛盾する場合には、以下の定義が優先する。
本明細書中の「抗体」は最も広義に用いられ、様々な免疫グロブリン構造を包含し、限定するものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、及び所望の抗原結合活性を呈する限り抗体断片を含む。
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる可能性がある突然変異、例えば自然に生じる突然変異を除いて同一である。従って、「モノクローナル」との形容は、個別の抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。ある実施態様では、このようなモノクローナル抗体は、通常、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、この場合、標的に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスにより得られる。例えば、この選択プロセスは、雑種細胞クローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールのような複数のクローンからの、唯一のクローンの選択とすることができる。重要なのは、選択された標的結合配列を更に変化させることにより、例えば標的への親和性の向上、標的結合配列のヒト化、細胞培養液中におけるその産生の向上、インビボでの免疫原性の低減、多選択性抗体の生成等が可能になること、並びに、変化させた標的結合配列を含む抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体の調製物とは異なり、モノクローナル抗体の調製物の各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体の調製物は、それらが他の免疫グロブリンで通常汚染されていないという点で有利である。
「モノクローナル」との形容は、抗体の、実質的に均一な抗体の集団から得られたものであるという特性を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は様々な技術によって作製することができ、それらの技術には、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495-97 (1975);Hongo等, Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995);Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerling等: Monoclonal Antibodies and T-Cell hybridomas 563-681 (Elsevier, N. Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1992);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004);Lee等, J. Mol. Biol. 340(5);1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee等, J. Immounol. Methods 284(1-2): 119-132 (2004))、並びに、ヒト免疫グロブリン座位の一部又は全部、或るいはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物にヒト又はヒト様抗体を生成する技術(例えば、国際公開第98/24893号;国際公開第96/34096号;国際公開第96/33735号;国際公開第91/10741号;Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362: 255-258 (1993);Bruggemann等, Year in Immunol. 7:33 (1993);米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;同第5661016号; Marks等, Bio.Technology 10: 779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368: 812-813 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnol. 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnol. 14: 826 (1996)及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)参照)が含まれる。
ここでモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部であり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致するか又は類似するものである(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855(1984))。キメラ抗体には、抗体の抗原結合領域が例えば対象の抗原をマカクザルに免疫投与することによって作製される抗体に由来している、PRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれる。
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び/又は能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRが、ヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一又は典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、例えばJones等, Nature 321:522-525(1986);Riechmann等, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992)を参照のこと。また例としてVaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);米国特許第6982321号及び同第7087409号も参照のこと。
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここで開示されたヒト抗体を製造するための何れかの技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む、当該分野で知られている様々な技術を使用して生産することが可能である。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。また、Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner等, J. Immunol., 147(1): 86-95 (1991)において記述される方法は、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できる。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)も参照のこと。抗原刺激に応答して抗体を産生するように修飾されているが、その内在性遺伝子座が無効になっているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによってヒト抗体を調製することができる(例として、XENOMOUSETM技術に関する米国特許第6075181号及び同第6150584号を参照)。また、例えば、ヒトのB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されるヒト抗体に関するLi等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)も参照のこと。
「種依存性抗体」は、二番目の哺乳動物種からの抗原の相同体に対して有している結合親和性よりも、一番目の哺乳動物種からの抗原に対してより強力な結合親和性を有するものである。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原(すなわち、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8以下、最も好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)と「特異的に結合」するが、そのヒト抗原に対する結合親和性よりも、少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い、二番目の非ヒト哺乳動物種からの抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上で定義した種々の型の抗体のいずれでもあることが可能だが、好ましくはヒト化又はヒト抗体である。
ここで用いる「抗体変異体」又は「抗体バリアント」は、種依存性の抗体のアミノ酸残基の一つ以上が変更された種依存性の抗体のアミノ酸配列変異体を指す。このような変異体は、必然的に種依存性の抗体と100%未満の配列同一性又は類似性がある。一実施態様では、抗体変異体は、種依存性の抗体の重鎖又は軽鎖の可変ドメインの何れかのアミノ酸配列と、少なくとも75%、他の実施態様では少なくとも80%、他の実施態様では少なくとも85%、他の実施態様では少なくとも90%、及び更に他の実施態様では少なくとも95%のアミノ酸配列同一性又は類似性があるアミノ酸配列を有する。ここでは、本配列に関する同一性又は類似性は、最大のパーセント配列同一性を得るために、種依存性の抗体残基と同一(すなわち同じ残基)又は類似(すなわち共通の側鎖の性質に基づく同じ群由来のアミノ酸残基、以下を参照)である候補配列配列を整列し、必要であれば間隙(ギャップ)を入れて、候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義されたものである。可変ドメインの外側の抗体配列中へのN末端、C末端、又は内部伸展、欠失、又は挿入の何れも配列同一性又は類似性に影響を及ぼすとみなしてはならない。
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、その抗体の研究、診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれうる。ある実施態様では、抗体は、(1)例えばローリー法で測定して95重量%を越える抗体、ある実施態様では99重量%を越えるまで、(2)例えばスピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端又は内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(3)クーマシーブルー又は銀染色を用いた非還元又は還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで、精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一つの精製工程により調製される。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを意味する。重鎖の可変ドメインは「VH」と称されうる。軽鎖の可変ドメインは「VL」と称されうる。これらのドメインは一般に抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含む。
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つのHVRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のHVRは、FRによって近接して結合され、他の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞毒性への抗体の関与を示す。
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる二つの明らかに異なる型の一方に分類できる。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、抗体(免疫グロブリン)は異なるクラスに分類できる。免疫グロブリンの五つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらの幾つかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3,IgG4、IgA1及びIgA2に分類される。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られており、一般に例えばAbbas等, Cellular and Mol. Immunology, 4版 (W.B. Saunders, Co., 2000)に記載されている。抗体は、一又は複数の他のタンパク質又はペプチドとの抗体の共有又は非共有結合によって形成される大きな融合分子の一部であってもよい。
「完全長抗体」、「インタクト抗体」及び「全抗体」という用語は、ここでは交換可能に使用され、その実質的にインタクトな形態の抗体を指し、以下に定義するような抗体断片は意味しない。この用語は、特にFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
ここでの目的に対する「ネイキッド抗体」は、細胞障害性部分又は放射標識にコンジュゲートされない抗体である。
「抗体断片」は、好ましくは抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2およびFv断片;ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多特異性抗体が含まれる。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を持ち、抗原になお架橋できるF(ab')2断片を生じる。
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。ある実施態様では、二本鎖Fv種は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、柔軟なペプチドリンカーによって1の重鎖及び1の軽鎖可変ドメインは共有結合性に連鎖することができ、よって軽鎖及び重鎖は、二本鎖Fv種におけるものと類似の「二量体」構造に連結することができる。この配置において、各可変ドメインの3つのHVRは相互に作用してVH-VL二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
Fab断片は、重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含み、また軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
「一本鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般には、sFvポリペプチドは、scFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にするポリペプチドリンカーをVH及びVLドメイン間に更に含む。scFvの概説については、例えばPluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, (Springer-Verlag, New York, 1994), pp. 269-315を参照のこと。
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持ち、その断片が同一のポリペプチド鎖(VH-VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む抗体断片を指す。非常に短いために同一鎖上で二つのドメイン間での対形成を可能にするリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディは二価又は二重特異的でありうる。ダイアボディは、例えば欧州特許出願公開第404097号;国際公開第93/11161号;及びHudson等, Nat. Med. 9:129-134 (2003);及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)に更に十分に記載されている。トリアボディ及びダイアボディはまたHudson等, Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
ここで使用される「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を意味する。一般に、抗体は6つの高頻度可変領域を含み;VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。天然の抗体では、H3及びL3は6つの高頻度可変領域のうちで最も高い多様性を示す、特にH3は抗体に良好な特異性を与える際に特有の役割を果たすように思われる。例としてXu等 (2000) Immunity 13:37-45;Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ)のJohnson and Wu (2003)を参照。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は機能的であり、軽鎖が無い状態で安定である。例としてHamers-Casterman等 (1993) Nature 363:446-448;Sheriff等, Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照。
多数のHVRの描写が使用され、ここに含まれる。カバット相補性決定領域(CDR)は配列変化に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットHVRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRのそれぞれからの残基を以下に示す。
HVRは、次のような「拡大HVR」を含むことができる、即ち、VLの24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VHの26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)である。可変ドメイン残基には、これら各々を規定するために、上掲のKabat等に従って番号を付した。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義する高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
「カバット(Kabat)による可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットに記載のアミノ酸位番号付け」なる用語及びその異なる言い回しは、上掲のKabat 等の抗体の編集の軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインに用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVR内の短縮又は挿入に相当する2、3のアミノ酸又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインには、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばカバットによる残基82a、82b及び82cなど)と、H2の残基52の後に単一アミノ酸の挿入(Kabatによる残基52a)を含んでもよい。残基のKabat番号は、「標準の」カバット番号付け配列によって抗体の配列の相同領域でアライメントすることによって与えられる抗体について決定してもよい。
カバット番号付けシステムは一般に、可変ドメイン内の残基を指す場合に用いられる(軽鎖のおよそ残基1−107及び重鎖の残基1−113)(例えばKabat等, Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は一般に、イムノグロブリン重鎖定常領域を指す場合に用いられる(例えば上掲のKabat等において報告されたEUインデックス)。「カバットにおけるEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号の参照は、カバット番号付けシステムによって番号付けする残基を意味する。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号の参照は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する(例えば、米国特許公開2008/0181888A1のEU番号付けに関する図を参照のこと)。
「多重特異性抗体」なる用語は最も広義に用いられ、特にポリエピトープ性特異性を有する抗体を包含する。このような多重特異性抗体は、限定するものではないが、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体であって、VHVLユニットはポリエピトープ性特異性を有する抗体、二以上のVL及びVHドメインを有し各VHVLユニットは異なるエピトープに結合する抗体、二以上の単可変ドメインを有し各単可変ドメインは異なるエピトープに結合する抗体、完全長抗体、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディおよびトリアボディ等の抗体断片、及び共有結合又は非共有結合された抗体断片を含む。一実施態様では、多重特異性抗体は、5μMから0.001pM、3μMから0.001pM、1μMから0.001pM、0.5μMから0.001pM、又は0.1μMから0.001pMの親和性で各エピトープに結合するIgG1抗体である。
「ポリエピトープ性特異性」は、同じ又は異なる抗原(一又は複数)における2以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。例えば「二重特異性」とは、ここで使用される場合、2つの異なるエピトープに結合する能力を指す。「単一特異性」は、1つのエピトープにのみ結合する能力を指す。
「単ドメイン抗体」(sdAbs)又は「単可変ドメイン」(SVD)抗体」なる発現は一般に、単可変ドメイン(VH又はVL)が抗原結合を与えることが可能な抗体を指す。言い換えると、単可変ドメインは、標的抗原を認識するために、別の可変ドメインを相互作用する必要がない。単ドメイン抗体の例は、ラクダ科(ラマ及びラクダ)及び軟骨魚類(例えば、テンジクザメ)から得られたもの、及びヒト及びマウス抗体から組換え法により得られたものを含む(Nature (1989) 341:544-546; Dev Comp Immunol (2006) 30:43-56; Trend Biochem Sci (2001) 26:230-235; Trends Biotechnol (2003):21:484-490;WO2005/035572;WO03/035694;Febs Lett (1994) 339:285-290;WO00/29004;WO02/051870)。
「線状抗体」なる表現は、一般に、Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995)に記載の抗体を意味する。簡潔には、これらの抗体は、一対の直列Fdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を有し、相補的軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する。線状抗体は二重特異性又は単一特異性でありうる。
「親和性成熟」抗体とは、その改変を有していない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめる、その一又は複数のHVRにおいて一又は複数の改変を持つものである。一実施態様では、親和成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性を有する。親和成熟抗体は、当該分野において知られているある手順を用いて生産されてよい。例えば、Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和成熟について記載している。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘導は、例としてBarbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
「ブロック(遮断)」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低減するものである。あるブロック抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的ないしは完全に阻害する。
本明細書中で用いる「アゴニスト抗体」は、対象のポリペプチドの機能的な活性の少なくとも一を部分的ないし完全に模倣する抗体である。
「増殖阻害性」抗体は、抗体が結合する抗原を発現している細胞の増殖を妨げるか又は低減するものである。
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
「Fc領域」なる用語は、天然配列Fc領域及び変異形Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226の位置又はPro230からの位置のアミノ酸残基からFc領域のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体の産生又は精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え遺伝子操作することによって取り除かれてもよい。したがって、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体群、K447残基が除去されていない抗体群、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合を含む抗体群を含みうる。
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的「エフェクター機能」には、C1q結合、補体依存性細胞障害作用(CDC)、Fcレセプター結合、抗体依存性細胞媒介性細胞障害作用(ADCC)、食作用、細胞表面レセプター(例えばB細胞レセプター;BCR)の下方制御などが含まれる。そのようなエフェクター機能は、通常、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わさることを必要とし、例えば本明細書中の定義に開示される様々なアッセイを使用して評価される。
「天然配列のFc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を包含する。天然配列のヒトFc領域は、天然配列のヒトIgG1Fc領域(非A-及びA-アロタイプ);天然配列のヒトIgG2Fc領域;天然配列のヒトIgG3Fc領域;及び天然配列のヒトIgG4Fc領域;並びに、これらの自然に生じる変異体が含まれる。
「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは一又は複数のアミノ酸置換により、天然配列のFc領域とは異なるアミノ酸配列を包含するものである。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列のFc領域もしくは親ポリペプチドのFc領域と比較した場合、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列のFc領域又は親のポリペプチドのFC領域におよそ1からおよそ10のアミノ酸置換、好ましくはおよそ1からおよそ5のアミノ酸置換を有する。本明細書中の変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列のFc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と、少なくともおよそ80%の同一性を有するか、最も好ましくは少なくともおよそ90%の配列同一性を、より好ましくは少なくともおよそ95%の配列又はそれ以上の同一性を有するものであろう。
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するものである。ある実施態様では、FcRは天然のヒトFcRである。ある実施態様では、FcRはIgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif;ITIM)を含んでいる(例としてDaeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRに関しては、 例としてRavetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991);Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haas等, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に概説されている。将来的に同定されるものも含む他のFcRはここでの「FcR」という言葉によって包含される。
また、「Fcレセプター」又は「FcR」なる用語には、母性IgGの胎児への移送と(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976) Kim等, J. Immunol.24:249 (1994))、免疫グロブリンのホメオスタシスの調節を担う新生児性レセプターFcRnも含まれる。FcRnへの結合の測定方法は公知である(例としてGhetie and Ward., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997);Ghetie等, Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997);Hinton等, J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004):国際公開2004/92219(Hinton等)を参照)。
インビボでのヒトFcRnへの結合とヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス又は形質転換されたヒト細胞株、又は変異体Fc領域を有するポリペプチドを投与された霊長類動物においてアッセイすることができる。国際公開公報00/42072(Presta)にFcRへの結合を向上又は減弱させた抗体変異型が述べられている。例としてShields等, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)も参照のこと。
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。ある実施態様では、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが望ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれる。エフェクター細胞は天然源、例えば血液から単離してもよい。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」又は「ADCC」とは、ある種の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcR)と結合した分泌Igにより、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞傷害性の形態を意味する。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
「補体依存性細胞傷害性」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。Fc領域アミノ酸配列を変更して(変異体Fc領域を有するポリペプチド)C1q結合能力が増大又は減少したポリペプチド変異体は、例として米特許第6194551号B1及び国際公開公報99/51642に記述される。また例としてIdusogie 等 J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)を参照のこと。
「Fc領域含有抗体」なる用語は、Fc領域を含む抗体を指す。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムに従うと残基447)は、例えば、抗体の精製中又は抗体をコードする核酸を組み換え操作することによって除去してもよい。したがって、本発明のFc領域を有する抗体を含んでなる組成物は、K447を有する抗体、すべてのK447が除去された抗体、又はK447残基を有する抗体とK447残基を有さない抗体の混合集団を包含しうる。
一般的に「結合親和性」は、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合的な相互作用の総合的な強度を意味する。特に明記しない限り、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する内因性結合親和性を意味する。一般的に、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離定数(Kd)として表される。親和性は、本明細書中に記載のものを含む当業者に公知の共通した方法によって測定することができる。低親和性抗体は抗原にゆっくり結合して素早く解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は抗原により密接により長く結合したままとなる。結合親和性の様々な測定方法が当分野で公知であり、それらの何れかを本発明のために用いることができる。以下に結合親和性を測定するための具体的な例示的実施態様を記載する。
一実施態様では、本発明の「Kd」又は「Kd値」は、以下のアッセイで示されるような、所望の抗体のFab型(バージョン)とその抗原を用いて実行される放射性標識した抗原結合アッセイ(RIA)で測定される。段階的な力価の非標識抗原の存在下で、最小濃度の(125I)-標識抗原にてFabを均衡化して、抗Fab抗体コートプレートと結合した抗原を捕獲することによって抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する(例としてChen,等, J. Mol. Biol. 293:865-881(1999)を参照)。アッセイの条件を決めるために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を5μg/mlの捕獲抗Fab抗体(Cappel Labs)を含む50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)にて一晩コートして、その後2%(w/v)のウシ血清アルブミンを含むPBSにて室温(およそ23℃)で2〜5時間、ブロックする。非吸着プレート(Nunc #269620)に、100pM又は26pMの[125I]抗原を段階希釈した所望のFabと混合する(例えば、Presta等, (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599の抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一致する)。ついで所望のFabを一晩インキュベートする;しかし、インキュベーションは平衡状態に達したことを確認するまでに長時間(例えばおよそ65時間)かかるかもしれない。その後、混合物を捕獲プレートに移し、室温で(例えば1時間)インキュベートする。そして、溶液を取り除き、プレートを0.1%のTween20TMを含むPBSにて8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MicroScint-20TM;Packard)を加え、プレートをTopcountTMγ計測器(Packard)にて10分間計測する。最大結合の20%か又はそれ以下濃度のFabを選択してそれぞれ競合結合測定に用いる。
他の実施態様によると、〜10反応単位(RU)の固定した抗原CM5チップを用いて25℃のBIAcore(登録商標)-2000又はBIAcore(登録商標)-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)にて表面プラズモン共鳴アッセイを行ってKd又はKd値を測定する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。抗原を10mM 酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入した。抗原の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。動力学的な測定のために、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流速で0.05%Tween20TM界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入した。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model) (BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出した。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出した。例として、Chen, Y.,等, (1999) J. Mol Biol 293:865-881を参照。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる結合速度が106M−1S−1を上回る場合、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop-flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度の抗原の存在下にて、PBS(pH7.2)、25℃の、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて結合速度を測定することができる。
また、本発明の「結合速度」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「kon」は、〜10反応単位(RU)の固定した抗原CM5チップを用いて25℃のBIAcore(登録商標)-2000又はBIAcore(登録商標)-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いた前述と同じ表面プラズモン共鳴アッセイにて測定される。
ここで用いる「実質的に類似」、「実質的に同じ」なる用語は、当業者が2つの数値(例えば、本発明の抗体に関連するもの、及び参照/比較抗体に関連する他のもの)の差異に、該値(例えばKd値)によって測定される生物学的性質上わずかに又は全く生物学的及び/又は統計学的有意差がないと認められるほど、2つの数値が有意に類似していることを意味する。前記2つの値間の差異は、参照/比較値の例えば約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、及び/又は約10%以下である。
ここで用いる「実質的に低減する」又は「実質的に異なる」という句は、当業者が2つの数値(一般に、分子に関連するもの、及び参照/比較分子に関連する他のもの)の差異に、該値(例えばKd値)によって測定される生物学的性質上統計学的に有意であると認められるほど、2つの数値が有意に異なっていることを意味する。前記2つの値間の差異は、参照/比較分子の値の、例えば約10%より大きく、約20%より大きく、約30%より大きく、約40%より大きく、及び/又は約50%より大きい。
本願明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」又は「ヒトアクセプターフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークから得られるVL又はVHフレームワークのアミノ酸配列を含有するフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「から得られる」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含有するか、又は既存のアミノ酸配列変化を含有してもよい。ある実施態様では、既存のアミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下又は2以下である。既存のアミノ酸変化がVH中に存在する場合、好ましくは、それらの変化は位置71H、73H及び78Hの内の3つ、2つ又は1つのみ起こり、例えば、それらの位置のアミノ酸残基は、71A、73T及び/又は78Aであってよい。一実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選別において、最も共通して生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列は、可変ドメイン配列のサブグループから選別する。通常、上掲のKabat等によると、配列のサブグループはサブグループである。一実施態様では、VLについて、上掲のKabat等によると、前記サブグループはサブグループκIである。一実施態様では、VHについて、上掲のKabat等によると、前記サブグループはサブグループIIIである。
「VHサブグループIIIコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変重鎖サブグループIIIのアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施態様では、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は次の各配列の少なくとも一部又は全部を含む:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:63)-H1-WVRQAPGKGLEWV(配列番号:64)-H2-RFTISADTSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号:65)-H3-WGQGTLVTVSS(配列番号:66)。図4を参照のこと。
「VLサブグループIコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変軽鎖カッパサブグループIのアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施態様では、VHサブグループIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は次の各配列の少なくとも一部又は全部を含む:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:67)-L1-WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:68)-L2-GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:69)-L3-FGQGTKVEIK(配列番号:70)。図5を参照のこと。
ここで使用される場合、「コドンセット」は所望の変異体アミノ酸をコードするのに用いられる一組の異なるヌクレオチドトリプレット配列を指す。一組のオリゴヌクレオチドは、コドンセットによって提供されるヌクレオチドトリプレットの可能な組合せのすべてを表し、所望のアミノ酸群をコードする配列を含み、例えば固相法によって合成することができる。標準的なコドン指定形式はIUBコードのそれであり、それは当該分野で知られておりここに記載されている。コドンセットは、典型的には3つのイタリック大文字、例えばNNK、NNS、XYZ、DVKなどで表される。よって、ここで用いられる「非ランダムコドンセット」とは、ここに記載のアミノ酸選別の基準を部分的に、好ましくは完全に満たす選択アミノ酸をコードするコドンセットを意味する。ある位置の選択されたヌクレオチド「縮重」を有するオリゴヌクレオチドの合成は当該分野でよく知られており、例えば、TRIM手法が知られている(Knappek等, J.Mol.Biol.(1999), 296:57-86);Garrard及びHenner, Gene(1993), 128:103)。そのようなある種のコドンセットを有しているオリゴヌクレオチドのセットは、市販の核酸シンセサイザー(Applied Biosystems, Foster City, CAなどから入手可能)を使って合成することができ、又は市販品を入手することができる(例えば、Life Technologies, Rockville, MDから)。従って、特定のコドンセットを有する合成オリゴヌクレオチドセットは、典型的には、異なる配列の複数のオリゴヌクレオチドを含み、この相違は配列全体の中のコドンセットによるものである。本発明で使用される、オリゴヌクレオチドは、可変ドメイン核酸テンプレートへのハイブリダイゼーションを可能にする配列を有し、また、そうであるとは限らないが、例えばクローニングに役立つ制限酵素部位を含むこともできる。
「線状抗体」との表現は、Zapata等(1995 Protein Eng, 8(10):1057-1062)に記載の抗体を意味する。簡単に言えば、これらの抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する一対の直列のFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。線状抗体は二重特異性又は単一特異性でありうる。
ここで用いられる場合、「ライブラリー」は、複数の抗体もしくは抗体断片配列(例えば、本発明のポリペプチド)、又はこれらの配列をコードする核酸を意味し、該配列は本発明の方法によってこれら配列内に導入される変異型アミノ酸の組合せにおいて異なっている。
「ファージディスプレイ」は、変異体ポリペプチドをファージ、例えば繊維状ファージの粒子の表面でコートタンパク質の少なくとも一部と融合したタンパク質として提示する手法である。ファージディスプレイの有用性は、ランダム化タンパク質変異体の大きなライブラリーから対象抗原と高親和性で結合する配列を迅速かつ効率的に選別できることにある。ファージ上のペプチド及びタンパク質ライブラリーの提示は、何百万ものポリペプチドから特異的結合特性を持つものをスクリーニングするために利用されてきた。多価ファージディスプレイ方法は、繊維状ファージの遺伝子III又は遺伝子VIIIとの融合体を通して小さなランダムペプチド及び小タンパク質を提示するために利用されてきた。Wells及びLowman (1992) Curr. Opin. Struct. Biol., 3: 355-362とその中の引用文献。一価のファージディスプレイでは、タンパク質又はペプチドのライブラリーが遺伝子III又はその一部に融合され、ファージ粒子が融合タンパク質の1個又は0個のコピーを提示するように野生型遺伝子IIIタンパク質の存在下で低レベルで発現される。アビディティー効果は多価のファージと比較して低下しているので、選別は内在性のリガンド親和性に基づいており、ファージミドベクターが使われるが、このベクターはDNA操作を単純化する。Lowman及びWells (1991) Methods: A companion to Methods in Enzymology 3:205-0216。
「ファージミド」は、細菌の複製起点、例えばCo1E1及びバクテリオファージの遺伝子間領域のコピーを有するプラスミドベクターである。ファージミドはいかなる既知のバクテリオファージ、例えば繊維状バクテリオファージ及びラムドイドバクテリオファージでも使用できる。プラスミドは、一般に、抗生物質耐性の選択マーカーも含む。これらのベクターにクローニングされたDNAセグメントは、プラスミドとして増殖することができる。これらのベクターを備える細胞がファージ粒子の生産のために必要なすべての遺伝子を備えているとき、プラスミドの複製様式はローリングサークル複製に変化し、プラスミドDNAの1つの鎖のコピーとパッケージファージ粒子を生成する。ファージミドは感染性又は非感染性ファージ粒子を形成しうる。この用語は、異種ポリペプチドがファージ粒子の表面で提示されるように遺伝子融合体として異種ポリペプチド遺伝子と結合したファージコートタンパク質遺伝子又はその断片を含むファージミドを含む。
「ファージベクター」なる用語は、異種遺伝子を含んでいて複製ができるバクテリオファージの二本鎖複製型を意味する。ファージベクターは、ファージ複製及びファージ粒子形成を可能にするファージ複製起点を有する。ファージは好ましくは繊維状バクテリオファージ、例えばM13、f1、fd、Pf3ファージもしくはその誘導体、又はラムドイドファージ、例えばラムダ、21、ファイ80、ファイ81、82、424、434、その他もしくはその誘導体である。
ここで使用される場合、「溶媒と接触しうる位置」は抗体源又は抗原結合断片の重鎖及び軽鎖の可変部のアミノ酸残基の位置を指し、これは、抗体又は抗原結合断片の構造、構造アンサンブル及び/又はモデル化された構造に基づき、溶媒露出が可能及び/又は抗体特異性抗原などの分子との接触が可能と判断されるものである。これらの位置は典型的にはCDRで、またタンパク質の外側に見られる。ここで定義されるように、抗体又は抗原結合断片の溶媒と接触しうる位置は、当該分野で知られている多くのアルゴリズムの何れかを使って決定できる。一実施態様では、溶媒と接触しうる位置は抗体の三次元モデルからの座標を使い、好ましくはInsightIIプログラム(Accelrys, San Diego, CA)のようなコンピュータプログラムを使って決定される。溶媒と接触しうる位置は、当該分野で知られているアルゴリズム(例えば、Lee及びRichards (1971) J. Mol. Biol. 55, 379 、及びConnolly (1983) J. Appl. Cryst. 16, 548)を使用しても決定することができる。溶媒と接触しうる位置の決定は、タンパク質モデリングに適したソフトウェア及び抗体から得られる三次元構造情報を使って行うことができる。これらの目的のために利用できるソフトウェアには、SYBYL生体高分子モジュールソフトウェア(Tripos Associates)が含まれる。一般に、アルゴリズム(プログラム)がユーザーの入力サイズパラメータを必要とする場合は、計算において使われるプローブの「サイズ」は半径約1.4オングストローム以下に設定される。また、パーソナルコンピュータ用のソフトウェアを使用した溶媒と接触しうる領域の決定法が、Pacios (1994) Comput. Chem. 18(4): 377-386に記載されている。
脈管発達のプロセスは厳密に調節されている。今日まで、有意に多くの分子、主に周辺細胞によって産生される分泌因子が、索状構造におけるEC分化、増殖、移動及び合体を制御することが示されている。例えば、血管内皮性増殖因子(VEGF)は、血管新生を刺激する際及び、血管透過を誘導する際に伴う重要な因子として同定されている。Ferrara等, Endocr. Rev. 18: 4-25 (1997)。単一のVEGF対立遺伝子でさえ欠失すると胚性致死になるという発見は、この因子が脈管系の発達及び分化において代替不可能な役割を果たしていることを示唆する。さらに、VEGFは、腫瘍及び眼内疾患と関係する血管新生の重要なメディエーターであることが示されている。上掲のFerrara等, Endocr. Rev. 。VEGF mRNAは、調べた大多数のヒト腫瘍によって過剰発現される。Berkman等, J. Clin. Invest. 91:153-159 (1993);Brown等, Human Pathol. 26:86-91 (1995);Brown等, Cancer Res. 53: 4727-4735 (1993);Mattern等, Brit. J. Cancer 73:931-934 (1996);Dvorak等, Am. J. Pathol. 146:1029-1039 (1995)。
抗VEGF中和抗体はヌードマウスの様々なヒト腫瘍細胞株の増殖を抑制し(Kim等, Nature 362:841-844 (1993);Warren等, J. Clin. Invest. 95:1789-1797 (1995);Borgstrom等, Cancer Res. 56: 4032-4039 (1996);Melnyk等, Cancer Res. 56: 921-924 (1996))、更に、虚血性網膜疾患のモデルの眼内血管新生も阻害する。Adamis等, Arch. Ophthalmol. 114:66-71 (1996)。したがって、VEGF作用の抗VEGFモノクローナル抗体又は他のインヒビターは、腫瘍及び様々な眼内新生血管性疾患の治療のための候補としての見込みがある。このような抗体は、例えば、1998年1月14日に公開の欧州特許出願公開第817648号;及び、1998年10月15日に公開の国際公開第98/45331号及び同第98/45332号に記載されている。抗VEGF抗体の一つであるベバシズマブは、転移性結腸直腸癌(CRC)及び非小細胞肺癌(NSCLC)を治療するために、化学療法投薬計画との併用使用のためにFDAの承認を得ている。そして、ベバシズマブは、様々な癌の徴候を治療するための多くの継続臨床試験において調査されている。
他の抗VEGF抗体、抗Nrp1抗体及び抗Nrp2抗体もまた知られており、例えば、Liang等, J Mol Biol 366, 815-829 (2007)及びLiang等, J Biol Chem 281, 951-961 (2006)、PCT公開番号WO2007/056470及びPCT出願PCT/US2007/069179(これらの特許出願の内容は出典明示により明示的にここに援用される)に記載されている。
「血管新生因子又は作用剤」は、血管の発達を刺激する、例えば、血管新生、血管内皮細胞増殖、血管の安定化及び/又は脈管形成などを促進する増殖因子である。例えば、血管形成因子には、限定するものではないが、例としてVEGF及びVEGFファミリーのメンバー(VEGF-B、VEGF-C及びVEGF-D)、PlGF、PDGFファミリー、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンギオポイエチン)、エフリン、デルタ様リガンド4(DLL4)、Del-1、線維芽細胞増殖因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF)、フォリスタチン、顆粒性コロニー刺激因子(G-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)/散乱係数(SF)、インターロイキン-8(IL-8)、レプチン、ミドカイン、ニューロピリン、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)、血小板由来増殖因子、特にPDGF-BB又はPDGFR-β、プレイオトロフィン(Pleiotrophin)(PTN)、プログラヌリン(Progranulin)、プロリフェリン(Proliferin)、トランスフォーミング増殖因子-α(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGFβ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などが含まれる。また、創傷治癒を促進する因子、例として成長ホルモン、インスリン様増殖因子-I(IGF-I)、VIGF、上皮細胞増殖因子(EGF)、CTGF及びそのファミリーメンバー、及びTGF-α及びTGF-βが含まれる。例えば、Klagsbrun及びD'Amore (1991) Annu. Rev. Physiol. 53:217-39;Streit及びDetmar (2003) Oncogene 22:3172-3179;Ferrara 及びAlitalo (1999) Nature Medicine 5(12):1359-1364;Tonini等 (2003) Oncogene 22:6549-6556 (例えば、既知の血管形成因子を列挙している表1);及びSato (2003) Int. J. Clin. Oncol. 8:200-206を参照のこと。
「抗血管新生剤」又は「血管新生(血管形成)インヒビター」は、直接的か間接的にの何れかで、血管新生、脈管形成又は望ましくない血管透過を阻害する小分子量の物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド(例えば、阻害性RNA(RNAi又はsiRNA)を含む)、単離したタンパク質、組換えタンパク質、抗体、又はそれらのコンジュゲート又は融合タンパク質を意味する。抗血管形成剤には、結合して血管形成因子又はそのレセプターの血管形成活性をブロックする作用剤が含まれることが理解されなければならない。例えば、抗血管形成剤は、上記に定義したように血管形成剤に対する抗体又は他のアンタゴニスト、例えば、VEGF-Aに対するか又はVEGF―Aレセプター(例えばKDRレセプター又はFlt-1レセプター)に対する抗体、GleevecTM(イマチニブメシレート)などの抗PDGFRインヒビター、VEGFレセプターシグナル伝達を阻止する小分子(例えばPTK787/ZK2284,SU6668,SUTENTR/SU11248(スミチニブマレート)、AMG706、又は例えば国際特許出願WO2004/113304に記載されたもの)である。また、抗血管新生剤には、天然の血管新生インヒビター、例えばアンジオスタチン、エンドスタチンなどが含まれる。Klagsbrun及びD'Amore (1991) Annu. Rev. Physiol. 53:217-39;Streit及びDetmar (2003) Oncogene 22:3172-3179(例えば、悪性黒色腫の抗血管形成治療を記載している表3);Ferrara 及びAlitalo (1999) Nature Medicine 5(12):1359-1364;Tonini等 (2003) Oncogene 22:6549-6556 (例えば、既知の抗血管新生因子を列挙している表2);及びSato (2003) Int. J. Clin. Oncol. 8:200-206(例えば、臨床試験で用いられる抗血管形成剤を列挙している表1)を参照。
本明細書中で用いる「VEGF」又は「VEGF-A」なる用語は、Leung等 Science, 246:1306 (1989)、及びHouck等 Mol. Endocrin., 5:1806 (1991)によって記載されているように、165アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子と、関連した121-、189-、及び206-アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子、並びにそれらの天然に生じる対立遺伝子型及びプロセシング型を意味する。また、「VEGF」は、マウス、ラット又は霊長類などの非ヒト動物腫由来のVEGFも意味する。特定の種由来のVEGFは、ヒトVEGFはhVEGF、マウスVEGFはmVEGFなどの用語で表されることが多い。また、「VEGF」なる用語は、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸8〜109、又は1〜109を含むポリペプチドの切断型を意味するために用いられる。そのようなVEGF型を指すときは、本明細書では、例えば、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」又は「VEGF165」と表す。「切断した(切断型の)」天然のVEGFのアミノ酸位置は、天然のVEGF配列に示される数で示す。例えば、切断型の天然VEGFのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然のVEGF中の位置17(メチオニン)でもある。切断型の天然VEGFは天然のVEGFに匹敵するKDR及びFlt-1レセプター結合親和性を有する。
「VEGFアンタゴニスト」は、一又は複数のVEGFレセプターへの結合を含むがこれに限定されないVEGF活性を中和、遮断、阻害、無効化、低減又は干渉することができる分子を指す。VEGFアンタゴニストには、限定しないが、抗VEGF抗体およびその抗原結合断片、VEGFに特異的に結合しそれによって一又は複数のレセプターへの結合を隔離するレセプター分子及びその誘導体、抗VEGFレセプター抗体及びVEGFRチロシンキナーゼの小分子インヒビターといったVEGFレセプターアンタゴニストが含まれる。本明細書中の「VEGFアンタゴニスト」なる用語には具体的に、VEGFに結合し、VEGF活性を中和、遮断、阻害、無効化、低減又は干渉することができる抗体、抗体断片、他の結合ポリペプチド、ペプチド及び非ペプチド小分子を含む分子が含まれる。ゆえに、「VEGF活性」なる用語は具体的に、VEGFのVEGF媒介生物活性が含まれる。
「抗VEGF抗体」とは、十分な親和性と特異性を有してVEGFに結合する抗体である。一実施態様では、抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患及び症状を標的とし、干渉する際の治療上の薬剤として有用でありうる。抗VEGF抗体は通常、VEGF-B又はVEGF-Cなどの他のVEGFホモログにも、PlGF、PDGF又はbFGFなどの他の増殖因子にも結合しないだろう。一実施態様では、抗VEGF抗体には、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体;Presta等 (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599に従って産生される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体であり、限定するものではないが「ベバシズマブ(BV)」とも「rhuMAb VEGF」又は「AVASTIN(登録商標)」としても知られる抗体が含まれる。AVASTIN(登録商標)は現在市販されている。ベバシズマブは、ヒトVEGFのそのレセプターへの結合をブロックするマウスの抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1から、変異したヒトのIgG1フレームワーク領域と抗原結合性相補性決定領域を含む。 フレームワーク領域のほとんどを含め、ベバシズマブのアミノ酸配列のおよそ93%は、ヒトのIgG1に由来し、配列のおよそ7%はマウスの抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは、およそ149000のダルトンの分子量を有し、グリコシル化されている。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日に発行の米国特許第6884879号にさらに記載されている。PCT出願公開番号WO2005/012359に記載のあるように、更なる好適な抗体には、G6又はB20系列抗体(例えば、G6-23、G6-31、B20-4.1)が含まれる。更なる抗体については、米国特許第7060269号、同第6582959号、同第6703020号;同第6054297号;国際公開第98/45332号;国際公開第96/30046号;国際公開第94/10202号;欧州特許第0666868号B1;米国特許公開第2006009360号、同第20050186208号、同第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126号;及び、Popkov等, Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004)を参照のこと。
ここで使用される「B20シリーズポリペプチド」なる用語は、VEGFに結合する抗体を含むポリペプチドを意味する。B20シリーズポリペプチドには、限定するものではないが、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号及び/又は米国特許出願公開第20070020267号に記載されたB20抗体又はB20誘導抗体の配列に由来する抗体が含まれ、これらの特許出願の内容は出典明示により明示的にここに援用される。一実施態様では、B20シリーズポリペプチドは、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号及び/又は米国特許出願公開第20070020267号に記載されたB20−4.1である。他の実施態様では、B20シリーズポリペプチドはPCT公開番号WO2009/073160に記載されたB20-4.1.1であり、この開示内容の全体は出典明示により明示的にここに援用される。
ここで使用される「G6シリーズポリペプチド」は、VEGFに結合する抗体を含むポリペプチドを指す。G6シリーズポリペプチドには、限定するものではないが、米国特許公開第20060280747号、米国特許公開第20070141065号及び/又は米国特許公開第20070020267号に記載されたG6抗体又はG6由来の抗体の配列から由来する抗体が含まれる。米国特許公開第20060280747号、米国特許公開第20070141065号および/または米国特許公開第20070020267号に記載されたG6シリーズポリペプチドには、限定するものではないが、G6-8、G6-23及びG6-31が含まれる。
VEGFファミリーのメンバーであるVEGF-Cは、チロシンキナーゼVEGFレセプター及びニューロフィリン(Nrp)レセプターといった少なくとも2つの細胞表面レセプターファミリを結合することが知られている。3つのVEGFレセプターのうち、VEGF-CはVEGFR2(KDRレセプター)及びVEGFR3(Flt-4レセプター)を結合し、レセプター二量体化(Shinkai等, J Biol Chem 273, 31283-31288 (1998))、キナーゼ活性化及び自己リン酸化(Heldin, Cell 80, 213-223 (1995);Waltenberger等, J. Biol Chem 269, 26988-26995 (1994))を引き起こしうる。リン酸化されたレセプターは、複数の基質の活性化を誘導し、脈管形成及びリンパ管形成を引き起こす(Ferrara等, Nat Med 9, 669-676 (2003))。
VEGF-Cは、最も研究されたリンパ管発生のメディエーターの一つである。腫瘍細胞におけるVEGF-Cの過剰発現は、腫瘍関連リンパ管形成を促し、その結果として局所のリンパ節への転移が亢進されることが示された(Karpanen等, Faseb J 20, 1462-1472 (2001);Mandriota等, EMBO J 20, 672-682 (2001);Skobe等, Nat Med 7, 192-198 (2001);Stacker等, Nat Rev Cancer 2, 573-583 (2002);Stacker等, Faseb J 16, 922-934 (2002))。また、VEGF-C発現は多くのヒトの癌についての腫瘍関連リンパ管形成及びリンパ節転移と相関していた(上掲のAchen等, 2006に概説される)。加えて、VEGF-Cが媒介するシグナル伝達の遮断は、マウスにおける腫瘍リンパ管形成とリンパ節転移を抑制することが示されている(Chen等, Cancer Res 65, 9004-9011 (2005);He等, J. Natl Cancer Inst 94, 8190825 (2002);Krishnan等, Cancer Res 63, 713-722 (2003);Lin等, Cancer Res 65, 6901-6909 (2005))。
「血管内皮増殖因子-C」、「VEGF-C」、「VEGFC」、「VEGF-関連タンパク質」、「VRP」、「VEGF2」及び「VEGF-2」なる用語は互換可能に使用され、完全長ポリペプチド及び/又は完全長ポリペプチドの活性断片を意味する。一実施態様では、活性断片は、配列番号:87に示される完全長アミノ酸配列の完全419アミノ酸以下を有する、完全長アミノ酸配列の何れかの部分を含む。このような活性断片は、VEGF-Cの生物学的活性を有し、限定するものではないが、成熟VEGF-Cを含む。一実施態様では、完全長VEGF-Cポリペプチドは、タンパク分解性に加工されて、成熟VEGF-Cとも称されるVEGF-Cポリペプチドの成熟形態を産生する。このような加工は、完全に加工された成熟形態を産生するための、シグナルペプチドの切断、アミノ末端ペプチドの切断(配列番号:87のアミノ酸1−102におよそ該当する)、及びカルボキシル末端ペプチド(配列番号:87のアミノ酸228−419におよそ該当する)の切断を含む。実験エビデンスは、完全長VEGF-C、部分的に加工された形態のVEGF-C、及び完全に加工された成熟形態のVEGF-Cが、VEGFR3(Flt-4受容体)に結合可能であることを示す。しかしながら、VEGFR2に対する高親和性結合は、完全に加工された成熟形態のVEGF-Cのみに生じる。
「VEGF-C」なる用語は、マウス、ラット又は霊長類等の非ヒト種からのVEGF-Cも意味する。時々、特定の種からのVEGF-Cは、ヒトVEGF-Cに対してはhVEGF-C、マウスVEGF-Cに対してはmVEGF-C等の用語によって表される。
「C137S」、「VEGF-C C137S」、「血管内皮増殖因子-C C137S」、「VEGFC C137S」及び「hVEGF-C C137S」なる用語は互換的に使用され、配列番号:88に示すようにアミノ酸残基位置137のシステイン残基がセリン残基によって置換されている、完全長ポリペプチド及び完全長ポリペプチドの断片を意味する。
「VEGF-Cアンタゴニスト」なる用語は、VEGF-C活性を中和、阻止、阻害、無効化、低減又は干渉することが可能な分子を指すために使用される。ある実施態様では、VEGF-Cアンタゴニストは、血管新生、リンパ系内皮細胞(EC)遊走、増殖又は成人リンパ管形成、特に腫瘍性リンパ管形成及び腫瘍性転移を調節するVEGF-Cの能力を、中和、阻止、阻害、無効化、低減又は干渉することが可能な分子を意味する。VEGF-Cアンタゴニストは、限定するものではないが、抗VEGF-C抗体及びその抗原結合断片、VEGF-Cに特異的に結合して、一又は複数の受容体へのVEGF-Cの結合を差し押さえる受容体分子及び誘導体、VEGFR2及びVEGFR3の小分子阻害剤等の抗VEGF-C受容体抗体及びVEGF-C受容体アンタゴニストを含む。「VEGF-Cアンタゴニスト」なる用語は、ここで使用される場合、VEGF-Cに結合し、VEGF-C活性を中和、阻止、阻害、無効化、低減又は干渉することが可能である、抗体、抗体断片、他の結合ポリペプチド、ペプチド、及び非ペプチド小分子を含む分子を特に含む。このように、「VEGF-C活性」なる用語は、VEGF-CのVEGF-C媒介生物学的活性(前述)を特に含む。
「抗VEGF-C抗体」又は「VEGF-Cに結合する抗体」なる用語は、十分な親和性でVEGF-Cに結合し、VEGF-Cを標的にする際に診断用及び/又は治療用製剤として有用であるような抗体を意味する。一実施態様では、無関係な非VEGF-Cタンパク質に対する抗VEGF-C抗体の結合程度は、VEGF-Cに対する抗体の結合の約10%未満であり、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される。ある実施態様では、VEGF-Cに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。ある実施態様では、抗VEGF-C抗体は、異なる種からのVEGF-C間で保存されているVEGF-Cのエピトープに結合する。
VEGF-Cポリペプチドに関して「生物学的活性」及び「生物学上活性な」なる用語は、完全長及び/又は成熟VEGF-Cに伴う物理的/化学的特性及び生物学的機能を意味する。幾つかの実施態様では、VEGF-C「生物学的活性」とは、Flt-4受容体(VEGFR3)に結合する、及びのリン酸化を刺激する能力を有することを意味する。一般に、VEGF-Cは、Flt-4受容体の細胞外ドメインに結合し、それによってその細胞内チロシンキナーゼドメインを活性化又は阻害する。結果的に、VEGF-Cの受容体への結合は、インビボ又はインビトロで、VEGF-Cに対するFlt-4受容体を有する細胞の増殖及び/又は分化及び/又は活性の増強又は阻害となりうる。VEGF-CのFlt-4受容体への結合は、一般的な技術を使用して決定されることができ、RIA、ELISA等の競合結合方法、及び他の競合結合アッセイを含む。リガンド/受容体複合体は、濾過、遠心分離、フローサイトメトリー等の分離方法を使用して同定されることができる(例えばLyman等, Cell, 75:1157-1167 [1993]; Urdal等, J. Biol. Chem., 263:2870-2877 [1988]; and Gearing等, EMBO J., 8:3667-3676 [1989]を参照)。結合研究からの結果は、スキャチャード解析(Scatchard, Ann. NY Acad. Sci.,51:660-672 [1949]; Goodwin等, Cell, 73:447-456 [1993])等、結合データの一般的なグラフ表示の何れかを使用して分析できる。VEGF-CはFlt-4受容体のリン酸化を誘導するため、一般的なチロシンリン酸化アッセイもまたFlt-4受容体/VEGF-C複合体の形成の指標として使用できる。VEGF-C「生物学的活性」とは、KDR受容体(VEGFR2)に結合する能力を有することを意味する。脈管透過性、並びに内皮細胞の遊走及び増殖。ある実施態様では、VEGF-CのKDR受容体への結合は、インビボ又はインビトロで、脈管透過性の増強又は阻害、並びにVEGF-Cに対するKDR受容体を有する内皮細胞の遊走及び/又は増殖及び/又は分化及び/又は活性化となりうる。
ここで使用される場合、「治療」(及び「治療する」又は「治療している」のような変形語)とは、治療される個体又は細胞の自然の経過を変化させる試みにおける臨床的介入を意味し、予防のため、又は臨床病理経過中に実施することができる。治療の所望する効果には、疾患の発症又は再発の予防、症状の緩和、疾病の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減少、転移の防止、疾病の進行速度の低減、病状の回復又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。ある実施態様では、本発明の抗体は、疾病又は疾患の発症を遅延させるため、又は疾病又は疾患の進行を遅延化させるために使用される。
「慢性」投与とは、急性様式とは異なり連続的な様式での薬剤を投与し、初期の治療効果(活性)を長時間に渡って維持することを意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処置である。
「疾患」は、治療から利益を得る任意の症状である(例えば、異常な血管形成(過剰、不適切又は制御不能の血管形成)又は血管透過性に罹患しているか、又はそれらに対して予防する必要がある哺乳動物)。これには、哺乳動物の問題とする疾患の素因となる病的状態を含む慢性及び急性の疾患又は疾病を包含する。限定するものでなく、ここで治療する疾患の例には、悪性及び良性の腫瘍;非白血病及びリンパ系の悪性腫瘍;特に腫瘍(癌)転移が含まれる。
「細胞増殖性疾患」及び「増殖性疾患」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖を伴う疾患を意味する。一実施態様では、細胞増殖性疾患は癌である。
ここで用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性に関わらず、全ての腫瘍形成細胞成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」なる用語は、ここでの意味は相互に排他的ではない。
「癌」及び「癌性」なる用語は、一般的に調節不可能な細胞成長に特徴がある哺乳動物の生理学的状態を指すか又は表す。癌の例には、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ系悪性腫瘍が含まれるが、これに限定されるものではない。このような癌のより具体的な例には、扁平細胞癌(例えば上皮性扁平細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃(gastric)又は腹部(stomach)癌(消化器癌及び胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、肝癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門部の癌腫、陰茎癌腫、メラノーマ、表在性伸展メラノーマ、黒色癌前駆症メラノーマ、末端性黒子性黒色腫、結節性メラノーマ、多発性骨髄腫
及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに、母斑症と関係する異常な血管性増殖、浮腫(脳腫瘍と関係するものなど)、メイグス症候群、脳、並びに頭頸部癌および関連する転移が含まれる。ある実施態様では、本発明の抗体による治療に影響を受けやすい癌には、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、膠芽細胞種、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎臓細胞癌、前立腺癌、肝癌、膵癌、柔組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫、頭頸部癌、卵巣癌、中皮腫および多発性骨髄腫が含まれる。いくつかの実施態様では、癌は、小細胞肺癌、膠芽細胞種、神経芽細胞腫、メラノーマ、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)および肝細胞癌からなる群から選択される。さらに、いくつかの実施態様では、癌は、それらの癌の転移型を含む、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、腎臓癌、神経膠芽腫および乳癌からなる群から選択される。
「転移」は、その原発部位から体の他の場所への癌の拡散を意味する。癌細胞は、原発腫瘍から離れ、リンパ管及び血管に浸潤し、血流中を循環し、体の正常組織の他の遠い病巣において増殖(転移)する。転移は、局所的又は遠位であり得る。転移は逐次的なプロセスであり、腫瘍細胞の原発腫瘍からの離脱、血流又はリンパ管を介した移動、遠位での停止が条件となる。新規な部位で、細胞は血液供給を確立し、増殖して致命的な腫瘤を形成し得る。ある実施態様では、転移性腫瘍なる用語は、転移性であるが、まだ体内のどこか他の組織又は臓器に転移していない腫瘍を意味する。ある実施態様では、転移性腫瘍なる用語は、体内のどこか他の組織又は臓器に転移していない腫瘍を意味する。
「転移性臓器」又は「転移性組織」は広義で使用され、原発腫瘍からの癌細胞又は体の他の部位からの癌細胞が広がった臓器又は組織を意味する。転移性臓器及び転移性組織の例は、限定するものではないが、肺、肝臓、脳、卵巣、骨及び骨髄を含む。
「転移前臓器」又は「転移前組織」とは、ここで使用される場合、原発腫瘍からの又は体の他の部位からの癌細胞が何れも検出されていない臓器又は組織を意味する。ある実施態様では、転移前臓器又は転移前組織は、ここで使用される場合、この臓器又は組織へ原発腫瘍又は体の他の部位から癌細胞の広がりが生じる前のフェーズにある臓器又は組織を意味する。転移前臓器又は転移前組織の例は、限定するものではないが、肺、肝臓、脳、卵巣、骨及び骨髄を含む。
「原発腫瘍」又は「原発癌」は、最初の癌を意味し、被験体の身体における他の組織、器官又は場所にある転移性病巣を意味していない。
ここで「癌再発」とは、治療後の癌の再発を意味し、原発臓器における癌の再発、並びに原発臓器外で癌が再発する遠隔再発を含む。
「腫瘍量(tumor burden)」とは、体内の癌細胞の数、腫瘍のサイズ、又は癌の量を意味する。腫瘍量は腫瘍量(tumor load)とも称される。
「腫瘍数」とは、腫瘍の数を意味する。
「難治性」とは、疾患又は状態の治療に対する抵抗性又は非応答性を意味する(例えば、治療が与えられたにも関わらず腫瘍性細胞の数が増加する等)。ある実施態様では、「難治性」なる用語は、限定するものではないがVEGFアンタゴニスト、抗血管新生剤及び化学療法治療を含む何れかの過去の治療に対する抵抗性又は非応答性を意味する。ある実施態様では、「難治性」なる用語は、VEGFアンタゴニスト、抗血管新生剤及び化学療法治療を含んでなる何れかの過去の治療に対する、疾患又は状態の本質的な非応答性を意味する。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。
「再発性」なる用語は、以前の罹患状態への患者の病気の逆戻り、特に明らかな回復又は部分的な回復後の症状の復活を指す。ある実施態様では、再発状態は、VEGFアンタゴニスト、抗血管新生剤及び/又は化学療法治療を含むがこれに限定しない、過去の治療の前の疾病状態への逆戻り又は逆戻りの過程を指す。ある実施態様では、再発状態は、VEGFアンタゴニスト、抗血管新生剤及び/又は化学療法治療を含んでなる癌療法に対する初期の強い反応の後、疾病状態への逆戻りの過程又は逆戻りを意味する。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。
「抗癌療法」又は「癌治療」なる用語は、癌を治療する際に有用な療法を指す。抗癌治療薬の例には、限定するものではないが、例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞障害剤、放射線療法に用いる薬剤、抗血管形成剤、アポトーシス剤、抗チューブリン薬剤、および癌を治療するための他の薬剤、例として、抗HER-2抗体、抗CD20抗体、上皮性増殖因子レセプター(EGFR)アンタゴニスト(例えばチロシンキナーゼインヒビター)、HER1/EGFRインヒビター(例えばエルロチニブ(TarcevaTM)、血小板由来増殖因子インヒビター(例えばGleevec(登録商標)(メシル酸イマチニブ))、COX-2インヒビター(例えばセレコキシブ)、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ,Imclone)インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGFレセプター(一又は複数)、TRAIL/Apo2の一又は複数に結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体)、および他の生理活性かつ有機化学的薬剤などが含まれる。また、その組合せが本発明に包含される。
「個体」、「被験体」、又は「患者」は脊椎動物である。ある実施態様では、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物は、限定するものではないが、家畜動物(ウシ等)、スポーツ動物、ペット(ネコ、イヌ、及びウマ等)、霊長類、マウス及びラットを含む。ある実施態様では、哺乳動物はヒトである。
「試料」又は「生体試料」なる用語は、ここで使用される場合、例えば身体的、生化学的、化学的及び/又は生理学的特徴に基づいて特性を示す又は同定される、細胞実体及び/又は他の分子実体を含有する対象とする被検体から得られる、又は対象とする被検体由来の組成物を指す。ある実施態様では、この定義には、血液及び生物起源の他の液体試料、及び生検試料などの組織試料又は組織培養物又はこれら由来の細胞が包含される。細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結されたおよび/または保存されていた臓器や組織試料または生検または吸引による固形組織;血液または血液成分;体液;及び被検体の妊娠期または発生期の任意の時期の細胞ないし血漿であってもよい。
別の実施態様では、該定義は、試薬による処理、可溶化又は特定成分(例えばタンパク質又はポリヌクレオチド)の濃縮、又は切断のための半固形又は固形マトリックスへの包埋といった、調達後の何れかの方法で操作されている生物学的試料が含む。ある実施態様では、組織試料の「切片」は、組織試料の一部又は断片、例えば、組織の薄切り又は組織試料からの細胞片を意味する。
試料には、限定するものではないが、原発性又は培養された細胞又は細胞株、細胞上清物、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体体液、リンパ液、関節液、ろ胞液、精液、羊水、乳汁、全血液、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物および組織培養液、組織抽出物、例としてホモジナイズした組織、腫瘍組織、細胞抽出物及びこれらの組合せが含まれる。
一実施態様では、試料は臨床試料である。他の実施態様では、試料は診断検査法で使われる。ある実施態様では、試料は、転移前臓器又は転移前組織から得られる。ある実施態様では、試料は原発性又は転移性の腫瘍から得られる。組織生検は、腫瘍組織の代表的な部分を得るために用いられることが多い。あるいは、腫瘍細胞は、対象の腫瘍細胞を含むとわかっているか又はそう思われる組織又は体液の形態で間接的に得られてもよい。例えば、肺癌病変の試料は、切除術、気管支鏡検査法、細針吸引、気管支のブラッシングによって、又は痰、胸膜液ないし血液から得られてよい。
ある実施態様では、試料は、抗VEGF-C抗体を用いた治療の前に、被験体又は患者から得られる。ある実施態様では、試料は、抗VEGF-C抗体を用いた治療後に、被験体又は患者から得られる。ある実施態様では、試料は、VEGFアンタゴニスト療法の前に被験体又は患者から得られる。ある実施態様では、試料は、抗VEGF-C抗体療法の前に被験体又は患者から得られる。ある実施態様では、試料は、癌が転移する前に得られる。ある実施態様では、試料は、癌が転移した後に得られる。
「有効量」とは所望の治療又は予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。
物質/分子の「治療的有効量」は、例えば個体の疾病ステージ、年齢、性別、及び体重、並びに個体に所望の応答を誘発する物質/分子の能力などの因子に従って変わりうる。また、治療的有効量は物質/分子の任意の毒性又は有害な効果よりも治療的に恩恵のある効果が上回るものである。「予防的有効量」とは所望の予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。典型的には必ずではないが、予防的用量は疾患の初期ステージ又はその前の被検体に用いるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないであろう。
「効果」なる用語は、広義においてここで使用され、所望の効果を生じせしめるための免疫グロブリン、抗体又はFc融合体タンパク質の能力を意味する。ある実施態様では、効果は、飽和レベルでの免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質の最大の観察された効果を意味する。ある実施態様では、効果は免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質のEC50を意味する。ある実施態様では、効果は免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質の作用強度を意味する。ある実施態様では、効果は、ここに定義される臨床効果を含む疾患の過程又は期間に対して有益な効果を生じせしめる免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質の能力を意味する。
「EC50」なる用語は、ベースラインと最大値の間の半分の応答を誘導する免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質の濃度を意味する。ある実施態様では、EC50は、その最大効果の50%が観察される免疫グロブリン、抗体又はFc融合タンパク質の濃度を表す。ある実施態様では、EC50は、最大のインビボ効果の50%を得るのに必要とされる血漿又は血清中濃度を表す。
癌の治療における効果は、癌細胞の増殖又は転移を阻害又は低減させ、あるいは癌に付随する一又は複数の症状を寛解又は軽減する本発明の抗体、融合タンパク質、コンジュゲート分子、又は組成物の能力を検出することによって証明されうる。治療は、本発明の抗体、融合タンパク質、コンジュゲート分子、又は組成物の投与後に癌細胞の増殖又は転移の低減、癌に付随する一又は複数の症状の寛解があれば、又は死亡率及び/又は罹患率に減少があれば、治療的と考えられる。本発明の抗体、融合タンパク質又は組成物を、インビトロ、エキソビボ及びインビボアッセイにおいて腫瘍形成を低減させるその能力について試験することができる。癌治療に対しては、インビボにおける効力は、また例えば生存期間、無増悪期間(TTP)、奏効率(RR)、応答期間、及び/又は生活の質の測定により測定される。また以下の治療効果と題したセクションを参照のこと。
臨床的利益は、様々なエンドポイント、例えば、緩徐化及び完全な停止を含む、ある程度の疾患進行の阻害;疾患発症及び/又は症状の数の減少;病巣サイズの減少;隣接する末梢器官及び/又は組織への疾患細胞浸潤の阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止);疾患の拡がりの阻害(すなわち減少、緩徐化又は完全な停止);必ずではないが病変の退行又は消失が生じうる自己免疫応答の低減;疾患と関係する一又は複数の症状の、ある程度の軽減;治療後に呈する疾患がない期間の増加;及び/又は治療後の所定の時点での死亡率の減少を評価することによって、測定できる。
「維持療法」とは、疾患再発又は進行の可能性を低減するために施される治療的投薬計画を意味する。維持療法は、患者の寿命まで延長された時間を含む任意の長さの時間に提供されうる。維持療法は、最初の療法の後又は、最初ないしは更なる療法と共に提供されうる。維持療法のために使用される用量は変化してもよく、他の種の療法に使用する用量と比較して、減少した用量を含みうる。
ここでの「アジュバント(補助)療法」は、手術後に施される治療を指し、疾患の再発のリスクを低減するために、残存する疾患の所見が検出されないものとする。アジュバント療法の目的は、癌の再発を予防することによって、癌関連の死亡の機会を低減することである。
一又は複数の更なる治療剤「との併用における」投与は、同時(コンカレント)及び任意の順での逐次投与を含む。
「同時に(simultaneously又はconcurrently)」なる用語は、2以上の治療薬の投与において、投与の少なくとも一部が時間において重複する投与を意味するために使用される。従って、同時投与は、一又は複数の他の薬剤の投与の中止後、一又は複数の薬剤の投与が継続する投与計画を含む。
「薬学的製剤」なる用語は、活性成分の生物学的活性が効果的であることを可能にするような形態であり、製剤が投与される患者に毒性が許容されない更なる成分を含まない調製物を意味する。かかる製剤は無菌であってもよい。
「無菌」製剤は無菌的又はあらゆる生きている微生物やその芽胞を含まない。
ここで用いられる「担体」は、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含む。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEENTM、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTMを含む。
「リポソーム」は、種々の型の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小胞体であり、哺乳動物への薬物(VEGFポリペプチド又はその抗体など)の輸送に有用である。リポソームの成分は、通常は生体膜の脂質配列に類似する二層形式に配列される。
「抗腫瘍性組成物」なる用語は、少なくとも一つの活性治療剤、例えば「抗癌剤」を含む、癌を治療する際に有効な組成物を指す。治療剤(抗癌剤)の例には、限定するものではないが、例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞障害性薬剤、放射線療法に用いられる作用剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チュービュリン剤及び癌を治療するための他の薬剤、例えば、抗HER-2抗体、抗CD20抗体、表皮増殖因子レセプター(EGFR)アンタゴニスト(例えばチロシンキナーゼインヒビター)、HER1/EGFRインヒビター(例えばエルロチニブ(TarcevaTM)、血小板由来成長因子インヒビター(例えばGleevecTM(メシル酸イマチニブ))、COX-2インヒビター(例えばセレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGFレセプタの一つ以上と結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体)、TRAIL/Apo2及び他の生理活性的で有機化学的作用剤などが含まれる。また、その組合せは本発明に含まれる。
ここで用いられる「細胞傷害剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は抑制し、及び/又は細胞死又は破壊を生じせしめる物質を意味する。該用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体)、化学療法剤(例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核溶解性酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、並びに下記に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を含むことが意図されている。他の細胞傷害剤が下記に記載されている。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
「毒素」は細胞の成長又は増殖に致命的な効果を有しうる任意の物質である。
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標登録))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビロール、MARINOL(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばNicolaou等, Angew. Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)を参照);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);ペメトレキセド(ALIMTA(登録商標));ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELIDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANETM)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナ薬剤、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標);ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;上記何れかの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体;並びに、上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略称)、及びFOLFOX(5-FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATINTM)を用いる治療計画の略称)が含まれる。
また、この定義には、癌の増殖を促進可能なホルモン効果を調節、低減、ブロック又は抑制するように働く抗ホルモン剤が含まれ、多くの場合は全身性又は全身体治療の形態である。それらはホルモン自体であってもよい。具体例には、抗エストロゲン及び選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)など、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)(EVISTA(登録商標))、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(FARESTON(登録商標));抗プロゲステロン;エストロゲンレセプターダウン-レギュレーター(ERDs);卵巣を抑制又は活動停止させるように機能する薬剤、例えば黄体化(leutinizing)ホルモン-放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば酢酸ロイプロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン及びトリプテレリン(tripterelin);他の抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)及びビカルタミド;及びアロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼ阻害物質、それらは副腎でのエストロゲン産生を調節するものであり、例えば4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、メゲストロールアセテート(MEGASE(登録商標))、エキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、ホルメスタイン(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、及びアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))が含まれる。さらに、化学療法剤のこのような定義には、ビスホスホナート、例えばクロドロナート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロナート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロナート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロナート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロナート(AREDIA(登録商標))、チルドロナート(SKELID(登録商標))又はリゼドロナート(ACTONEL(登録商標));並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に付粘着性細胞増殖に関係するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を抑制するもの、例えばPKC-アルファ、Raf及びH-Ras、及び上皮増殖因子レセプター(EGF-R);ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン、及び遺伝子治療用ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1インヒビター(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));ラパチニブジトシラート(ErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子インヒビターで、GW572016としても公知のもの);COX-2インヒビター、例えばセレコキシブ(CELEBREX(登録商標);4-(5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)ベンゼンスルホンアミド;及び上述した任意のものの製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体が含まれる。
ここで使用される「増殖阻害剤」なる用語は、インビトロ又はインビボの何れかにおいて、(VEGF-Cを発現する細胞又はVEGF-Cによって作用する細胞のような)細胞の増殖を阻害する化合物又は組成物を意味する。一実施態様では、増殖阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を防止又は低減する増殖阻害抗体である。一実施態様では、増殖阻害剤とは、S期において、細胞の割合を有意に低減させるものである。増殖阻害剤の例には、細胞分裂周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の場所において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。伝統的なM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止させる薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止に溢流する。更なる情報は、Murakami等の「Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs」と題されたThe Molecular Basis of Cancer、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、例えば13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標), Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標), Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化する。
疾患の「病理状態」には、患者の健康を損なうあらゆる現象が含まれる。癌の場合には、これに限定されるものではないが、異常又は制御不能な細胞成長、転移、隣接細胞の正常機能の阻害、サイトカイン又は他の分泌産物の異常なレベルでの放出、炎症又は免疫反応の抑制又は悪化等々が含まれる。
この出願で用いられる「プロドラッグ」なる用語は、親薬剤に比較して腫瘍細胞に対する細胞傷害性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, :375-382, 615th Meeting, Belfast (1986)、及びStella 等, 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery, Borchardt等(編), 247-267項, Humana Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、限定するものではないが、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、サルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、置換されていてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は置換されていてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定はしないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞傷害性剤の例には、前記の化学療法剤が含まれる。
「小分子」は約500ダルトン以下の分子量を有するものとここでは定義される。
「精製」とは、分子が、含まれる試料中の重量にして少なくとも95%、又は重量にして少なくとも98%の濃度で試料中に存在することを意味する。
「単離された」核酸分子は、例えば天然の環境に通常付随している少なくとも一の他の核酸分子から分離された核酸分子である。さらに、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子を通常発現するが、その核酸分子がその天然の染色体位置と異なる染色体位置にあるか又は染色体外に存在する、細胞に含まれる核酸分子を含む。
ここで使用される「ベクター」という用語は、それが結合している他の核酸を輸送することのできる核酸分子を意味するものである。一つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは付加的なDNAセグメントが結合されうる円形の二本鎖DNAを意味する。他の型のベクターはファージベクターである。他の型のベクターはウイルスベクターであり、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムへ結合させうる。所定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内において自己複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターとエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、宿主ゲノムと共に複製する。更に、所定のベクターは、それらが作用可能に結合している遺伝子の発現を指令し得る。このようなベクターはここでは「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形をとる。本明細書では、プラスミドが最も広く使用されているベクターの形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」を相互交換可能に使用する場合が多い。
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成反応によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後になされる修飾(一又は複数)、例えば標識との結合を含みうる。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。更に、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体又は半固体担体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有する有機キャップ基部分又はアミンで置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。またポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み得、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
ここで使用される「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長さの、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
ここで同定した参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、特定の参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を測定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁, ワシントンD.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウス サン フランシスコ, カリフォルニアから公的に入手可能であり、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2のA及びBのプログラムアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限りは、ここでの全ての%アミノ酸配列同一性値は、直ぐ上のパラグラフに示したようにALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られる。
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
ここで使用される場合、「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養」という表現は相互に交換可能に用いられ、その全ての用語は子孫を含む。従って、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という語句は、最初の対象細胞及び何度培養が継代されたかに関わらず最初のものから誘導された培養を含む。また、全ての子孫が、意図的な変異あるいは意図しない変異の影響で、正確に同一のDNAを有するわけではないことも理解される。元々の形質転換細胞についてスクリーニングしたものと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫が含まれる。命名を区別することが意図される場合は、文脈から明らかであろう。
ここでは「癌再発」は治療後に癌が再び現れることを意味する。一実施態様では、癌再発は乳房における癌の再発、並びに癌が乳房の外側で再発する遠隔再発を含む。
本発明の組成物
転移の多工程プロセスにおける重要なイベントは、原発腫瘍塊からの腫瘍細胞の放出を含む。固形腫瘍では、リンパ系はしばしば出発細胞に経路を提供する。VEGF-Cは、多くの腫瘍モデルにおける血管新生、リンパ管新生及び転移の重要な調節因子として知られ、VEGF-C軸の阻害は、転移形成を阻害するための有望なストラテジーと考えられる。
本発明の基礎をなす研究が下の実施例に提供され、血管新生、腫瘍リンパ管形成及び転移におけるVEGF-Cの重要な役割を裏付けする。更に、実施例に説明するデータは腫瘍内の機能的リンパ管の存在を示し、抗VEGF-Cでの処置がこれらの機能的リンパ管の減少となることを示す。図7−9、12−14及び22も参照のこと。
本発明は単離された抗体とポリヌクレオチド実施態様を包含する。一実施態様では、抗VEGF-C抗体が精製される。
この発明はまた抗VEGF-C抗体を含む薬学的組成物を含む組成物;及び抗VEGF-C抗体をコードする配列を含むポリヌクレオチドを包含する。ここで使用される場合、組成物はVEGF-Cに結合する一又は複数の抗体、及び/又はVEGF-Cに結合する一又は複数の抗体を含む一又は複数のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、当該分野で翼知られているバッファーを含む薬学的に許容可能な賦形剤のような、適切な担体を更に含みうる。
一実施態様では、本発明の抗VEGF-C抗体はモノクローナルである。また他の実施態様では、抗VEGF-C抗体はポリクローナルである。また本発明の範囲に包含されるものは、ここに提供された抗VEGF-C抗体のFab、Fab’、Fab’-SH及びF(ab’)2断片である。これらの抗体断片は、例えば酵素的消化のような伝統的な手段によって創製することができ、又は組換え法によって生産することができる。かかる抗体断片はキメラでもヒト化されてもよい。これらの断片は診断及び以下に記載する目的に対して有用である。一実施態様では、抗VEGF-C抗体はキメラ、ヒト化、又はヒト抗体である。
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られる。すなわち、少量で存在しうる可能な天然に生じる変異を除いて、集団を構成する個々の抗体が同一である。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。
ファージライブラリから得られた例示的なモノクローナル抗体がここに提供され、実施例1に記載される。それらの抗体は、限定するものではないが、VC1、VC1.1、VC1.2、VC1.3、VC1.4、VC1.5、VC1.6、VC1.7、VC1.8、VC1.9、VC1.10、VC1.11、VC1.12、VC1.12.1、VC1.12.2、VC1.12.3、VC1.12.4、VC1.12.5、VC1.12.6、VC1.12.8、VC1.12.9、VC1.12.10、VC3、VC4、VC4.2、VC4.3、VC4.4、VC4.5を含む。VC1、VC1.1、VC1.2、VC1.3、VC1.4、VC1.5、VC1.6、VC1.7、VC1.8、VC1.9、VC1.10、VC1.11、VC1.12、VC1.12.1、VC1.12.2、VC1.12.3、VC1.12.4、VC1.12.5、VC1.12.6、VC1.12.8、VC1.12.9、VC1.12.10、VC3、VC4、VC4.2、VC4.3、VC4.4、VC4.5の重鎖及び軽鎖可変ドメインの配列は図1a-fに示される。抗VEGF-C抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインの配列もまた図23−30及び38−39に示される。
抗体VC1、VC1.1、VC1.2、VC1.3、VC1.4、VC1.5、VC1.6、VC1.7、VC1.8、VC1.9、VC1.10、VC1.11、VC1.12、VC1.12.1、VC1.12.2、VC1.12.3、VC1.12.4、VC1.12.5、VC1.12.6、VC1.12.8、VC1.12.9、VC1.12.10のHVR-H3配列は、位置100a、100b、100c、100d及び100eでアミノ酸残基を持たない。抗体VC3のHVR-H3配列は、位置100dでアミノ酸残基を持たない。図24、28及び30も参照のこと。
ある実施態様では、ここに記載のVEGF-C又は断片に結合するモノクローナル抗体は、位置297でアラニンへのアミノ酸置換を更に有する。ある実施態様では、ここに記載のVEGF-C又は断片に結合するモノクローナル抗体は、位置297でアラニンへの、及び位置265でアラニンへのアミノ酸置換を更に有する。ある実施態様では、抗VEGF-C抗体VC4.5は、位置297でアラニンとのアミノ酸置換を有する。ある実施態様では、抗VEGF-C抗体VC4.5は、位置297でアラニンとの、位置265でアラニンへのアミノ酸置換を有する。ある実施態様では、抗VEGF-C抗体VC1.12.1、VC1.12.4及びVC1.12.9は、位置297でアラニンとのアミノ酸置換を有する。ある実施態様では、抗VEGF-C抗体VC1.12.1、VC1.12.4及びVC1.12.9は、位置297でアラニンとの、及び位置265でアラニンへのアミノ酸置換を有する。ある実施態様では、位置265及び297でアラニンとのアミノ酸置換と含んでなる抗体は、「DANA」と称される。
対象の抗原上の特定のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするには、常套的な交差ブロックアッセイ、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow及びDavid Lane (1988)に記載されたものを実施することができる。あるいは、例えばChampe等(1995) J. Biol. Chem. 270:1388-1394に記載されたようなエピトープマッピングを実施して、抗体が興味あるエピトープに結合するかどうかを決定することができる。抗VEGF-C抗体の更なる例示的な実施態様は以下に提供する。
抗VEGF-C抗体の特異実施態様
配列番号:1から39のアミノ酸配列は、図1a-fに示すように個々のHVR(例えばH1、H2又はH3)に対して番号付けされ、番号付けは、ここに記載するようにKabat番号付けシステムに一致する。
一態様では、発明は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3又は配列番号:4の配列を含んでなるHVR-H1領域を含んでなる抗体を提供する。一態様では、発明は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7又は配列番号:8の配列を含んでなるHVR-H2領域を含んでなる抗体を提供する。一態様では、発明は、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25又は配列番号:26の配列を含んでなるHVR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。
一実施態様では、発明は、配列番号:1の配列を含んでなるHVR-H1領域、及び配列番号:6の配列を含んでなるHVR-H2領域を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、発明は、配列番号:1の配列を含んでなるHVR-H1領域、配列番号:21の配列を含んでなるHVR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、発明は、配列番号:6の配列を含んでなるHVR-H2領域、及び配列番号:21の配列を含んでなるHVR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、発明は、配列番号:1の配列を含んでなるHVR-H1領域、配列番号:6の配列を含んでなるHVR-H2領域、及び配列番号:21の配列を含んでなるHVR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。
一実施態様では、発明は、配列番号:3の配列を含んでなるHVR-H1領域、及び配列番号:8の配列を含んでなるHVR-H2領域を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、発明は、配列番号:3の配列を含んでなるHVR-H1領域、及び配列番号:26の配列を含んでなるHVR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、発明は、配列番号:8の配列を含んでなるHVR-H2領域、及び配列番号:26の配列を含んでなるHVR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、発明は、配列番号:3の配列を含んでなるHVR-H1領域、配列番号:8の配列を含んでなるHVR-H2領域、及び配列番号:26の配列を含んでなるHVR-H3領域を含んでなる抗体を提供する。
一態様では、発明は、以下の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全3つを含んでなる抗体を提供する:
(i)配列番号:1の配列を含んでなるHVR-H1配列;
(ii)配列番号:6の配列を含んでなるHVR-H2配列;
(iii)配列番号:21の配列を含んでなるHVR-H3配列。
一態様では、発明は、以下の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全3つを含んでなる抗体を提供する:
(i)配列番号:3の配列を含んでなるHVR-H1配列;
(ii)配列番号:8の配列を含んでなるHVR-H2配列;
(iii)配列番号:26の配列を含んでなるHVR-H3配列。
一態様では、発明は、以下の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全3つを含んでなる抗体を提供する:
(i)配列番号:27の配列を含んでなるHVR-L1配列;
(ii)配列番号:28の配列を含んでなるHVR-L2配列;
(iii)配列番号:29の配列を含んでなるHVR-L3配列。
一態様では、発明は、以下の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全3つを含んでなる抗体を提供する:
(i)配列番号:27の配列を含んでなるHVR-L1配列;
(ii)配列番号:28の配列を含んでなるHVR-L2配列;
(iii)配列番号:30の配列を含んでなるHVR-L3配列。
一態様では、発明は、以下の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全3つを含んでなる抗体を提供する:
(i)配列番号:27の配列を含んでなるHVR-L1配列;
(ii)配列番号:28の配列を含んでなるHVR-L2配列;
(iii)配列番号:33の配列を含んでなるHVR-L3配列。
一態様では、発明は、以下の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全3つを含んでなる抗体を提供する:
(i)配列番号:27の配列を含んでなるHVR-L1配列;
(ii)配列番号:28の配列を含んでなるHVR-L2配列;
(iii)配列番号:37の配列を含んでなるHVR-L3配列。
一態様では、発明は、図1A-Cに示す重鎖HVR配列を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、発明は、重鎖配列配列番号:73又は配列番号:84を含んでなる抗体を提供すうる。
別の態様では、発明は、図1D-Fに示す軽鎖HVR配列を含んでなる抗体を提供する。一実施態様では、発明は、軽鎖配列配列番号:74、配列番号:75、配列番号:76、配列番号:77、配列番号:78、配列番号:79、配列番号:80.配列番号:81、配列番号:82、配列番号:83又は配列番号:85を含んでなる抗体を提供する。
発明の別の態様では、ここに記載の発明の何れかの抗VEGF-C抗体は、位置297でのアミノ酸アスパラギンは、アミノ酸アラニンと置換される。別の実施態様では、位置265でのアミノ酸アスパラギン酸は、アミノ酸アラニンと置換される。一実施態様では、重鎖配列配列番号:73又は配列番号:84を更に有する。別の実施態様では、抗体は、図1D-Fに示す軽鎖HVR配列を更に有する。別の実施態様では、抗体は、軽鎖配列配列番号:74、配列番号:75、配列番号:76、配列番号:77、配列番号:78、配列番号:79、配列番号:80、配列番号:81、配列番号:82、配列番号:83又は配列番号:85を更に有する。
ある実施態様では、本発明の抗体は、以下の配列番号:71に示すように、ヒト化4D5抗体(huMAb4D5-8)(HERCEPTIN(登録商標), Genentech, Inc., South San Francisco, CA, USA) (米国特許第6407213号及びLee等, J. Mol. Biol. (2004), 340(5):1073-93も参照される)の軽鎖可変ドメインを含む。
一実施態様では、huMAb4D5-8 軽鎖可変ドメイン配列は、位置30、66及び91の一又は複数で修飾されている(Asn、Arg及びHisは上ではそれぞれ太字/イタリック体で示す)。一実施態様では、修飾されたhuMAb4D5-8配列は30位にSerを、66位にGlyを、及び/又は91位にSerを含む。従って、一実施態様では、本発明の抗体は、以下の配列番号:72に示した配列を含む軽鎖可変ドメインを含む:
huMAb4D5-8に関して置換された残基は上では太字/イタリック体で示される。
本発明の抗体は、VEGF-Cに対する結合活性が実質的に保持されている限り、任意の適したフレームワーク可変ドメイン配列を含む。例えば、ある実施態様では、本発明の抗体は、ヒトサブグループIII重鎖フレームワークコンセンサス配列を含む。これらの抗体の一実施態様では、フレームワークコンセンサス配列は71、73及び/又は78位に置換を含む。これらの抗体のある実施態様では、71位がAであり、73位がTであり、及び/又は78位がAである。一実施態様では、これらの抗体は、huMAb4D5-8(HERCEPTIN(登録商標), Genentech, Inc., South San Francisco, CA, USA) (米国特許第6407213号及び5821337号及びLee等, J. Mol. Biol. (2004), 340(5):1073-93も参照される)の重鎖可変ドメインフレームワーク配列を含む。一実施態様では、これらの抗体はヒトκI軽鎖フレームワークコンセンサス配列を更に含む。一実施態様では、これらの抗体は、米国特許第6407213号及び5821337号に記載されたhuMAb4D5-8の軽鎖HVR配列を含む。一実施態様では、これらの抗体は、huMAb4D5-8(HERCEPTIN(登録商標), Genentech, Inc., South San Francisco, CA, USA) (米国特許第6407213号及び5821337号及びLee等, J. Mol. Biol. (2004), 340(5):1073-93も参照される)の軽鎖可変ドメイン 配列を含む。
一実施態様では、発明の抗体は、重鎖可変ドメインを有し、ここで、フレームワーク配列は配列番号:40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、又は58(図2A及び2B)の配列を有し、HVRH1、H2及びH3配列はそれぞれ配列番号:1、6及び/又は21である。一実施態様では、本発明の抗体は、軽鎖可変ドメインを有し、ここで、フレームワーク配列は配列番号:59、60、61又は62(図3)の配列を有し、HVRL1及びL2配列はそれぞれ配列番号:27及び28であり、HVRL3配列はそれぞれ配列番号:30、31、32、33、34、35、36、37又は38である。
一実施態様では、発明の抗体は重鎖可変ドメインを有し、ここでフレームワーク配列は、配列番号:40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、又は58の配列を有し、HVRH1、H2及びH3配列はそれぞれ配列番号:3、8及び26である。一実施態様では、発明の抗体は、軽鎖可変ドメインを有し、ここでフレームワーク配列は配列番号:59、60、61及び/又は62の配列を有し、HVRL1、L2及びL3配列はそれぞれ配列番号:27、28及び29である。
一実施態様では、発明の抗体は、配列番号:73の配列を含んでなる重鎖可変ドメインを有する。一実施態様では、発明の抗体は、配列番号:74、75、76、77、78、79、80、81、82又は83の配列を含んでなる軽鎖可変ドメインを有する。一実施態様では、発明の抗体は、配列番号:84の配列を含んでなる重鎖可変ドメイン、及び配列番号:85の配列を含んでなる軽鎖可変ドメインを有する。
一態様では、発明は、VEGF-Cへの結合に関して、上記抗体の何れかと競合する抗体を提供する。別の態様では、発明は、上記抗体の何れかと同じVEGF-C上のエピトープに結合する抗体を提供する。
抗体断片
本発明は抗体断片を包含する。抗体断片は伝統的な手段、例えば酵素的消化によって、あるいは組換え法によって生産することができる。ある状況下では、抗体全体よりも、抗体断片を用いることに利点がある。より小さなサイズの断片によって迅速なクリアランスが可能となり、固形腫瘍への接近の改良につながり得る。ある種の抗体断片の概説については、Hudson等 (2003) Nat. Med. 9:129-134を参照のこと。
抗体断片を産生するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化によって誘導された(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照のこと)。しかし、これらの断片は、現在は組換え宿主細胞により直接産生することができる。Fab、Fv及びScFv抗体断片は全て、大腸菌で発現させ分泌させることができ、従って、大量のこれら断片の産生が容易となった。抗体断片は、上で検討した抗体ファージライブラリーから単離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab')2断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。インビボ半減期が増した、サルベージレセプター結合性エピトープ残基を含むFab及びF(ab’)2が、米国特許第5869046号に記載されている。抗体断片を生成するのための他の方法は、当業者には明らかであろう。ある実施態様では、抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開93/16185号;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。Fv及びsFvは、定常領域を欠く無傷の連結部位を有する唯一の種である;従って、インビボで使用している間の減少した非特異的結合に適している。sFv融合タンパク質は、sFvのアミノ又はカルボキシ末端のどちらかで、エフェクタータンパク質の融合体が生成されるように構成されうる。上掲のAntibody Engineering, Borrebaeck編を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「線状抗体」であってもよい。そのような線状抗体断片は単一特異性又は二重特異性であってもよい。
ヒト化抗体
本発明は、ヒト化抗体を含む。非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が従来技術に既知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトのソースからそれに導入された一以上のアミノ酸残基を有することができる。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残基と呼ばれ、一般に「移入」可変ドメインに由来する。ヒト化は、基本的にヒト抗体の該当する配列を高頻度可変領域配列で置換することにより、Winter及び共同研究者(Jones等(1986)Nature 321:522-525;Riechmann等(1988)Nature, 332:323-327;Verhoeyen等(1988)Science 239:1534-1536)の方法に従って実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかの高頻度可変領域残基が、及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。
ヒト化抗体の作製に使用されるヒト可変ドメインの選択は、軽鎖及び重鎖いずれも、抗原性を減らすために重要である。いわゆる「最良に適合する(ベストフィット)」方法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。ついで、齧歯類の配列に最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして受け入れる(例としてSims等(1993)J. Immunol. 151:2296;Chothia等(1987)J. Mol. Biol. 196:901を参照)。別の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体のコンセンサス配列から得られた特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを数種の異なるヒト化抗体に使用することができる。例としてCarter等(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285;Presta等(1993)J. Immunol., 151:2623を参照。
更には、抗体は、抗原に対する高い親和性及びその他の望ましい生物学的特性を保持してヒト化されることが一般に好ましい。この目的を達成するために、一方法では、親の配列及びヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列及び様々な概念上のヒト化産物を分析するプロセスにより、ヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者に周知である。選択された候補免疫グロブリン配列の、ありそうな三次元立体配置的構造を図解し表示するコンピュータプログラムが利用可能である。このような表示を検査することにより、候補免疫グロブリン配列が機能する際に残基が果たすと思われる役割を分析することができ、つまり候補免疫グロブリンの、その抗原に対する結合能に影響する残基を分析することができる。このように、レシピエント及び重要な配列からFR残基を選択して組み合わせることにより、所望の抗体特性、例えば標的とする抗原に対する親和性の増大を達成することができる。一般に、高頻度可変領域残基は、抗原の結合に対する影響に、直接的に且つ最も実質的に関わっている。
ヒト抗体
本発明のヒト抗体は、上記のように、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択したFvクローン可変ドメイン配列を既知のヒト定常ドメイン配列と組み合わせることによって構築することができる。あるいは、本発明のヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の生産のためのヒトミエローマ及びマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株は、例えば、Kozbor, J. Immunol. 133, 3001(1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoerner 等, J. Immunol., 147: 86 (1991)に記載されている。
免疫化することで、内因性免疫グロブリンの生産なしに、ヒト抗体の完全なレパートリーを生産することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を生産することが現在は可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系変異体マウスでの抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合体欠失は、内因性抗体の生産の完全な阻害をもたらすことが記載されている。そのような生殖細胞系変異体マウスでのヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子配列の転移は、抗原の投与によってヒト抗体の生産を引き起こす。例えば、Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 2551-255(1993);Jakobovits等, Nature 362, 255-258(1993);Bruggermann等, Year in Immunol., 7: 33 (1993)を参照のこと。
また、遺伝子シャフリングは、ヒト抗体が開始非ヒト、例えば齧歯類の抗体と類似した親和性及び特性を有している場合、非ヒト、例えば齧歯類の抗体からヒト抗体を得るために使用することもできる。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法により、上記のファージディスプレイ技術により得られた非ヒト抗体断片の重鎖又は軽鎖可変領域の何れかをヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置換し、非ヒト鎖/ヒト鎖scFvないしFabキメラの集団を作成する。抗原を選択することにより、ヒト鎖が初めのファージディスプレイクローンにおいて一致した非ヒト鎖の除去により破壊された抗原結合部位を回復する、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFvないしFabが単離される、つまり、エピトープがヒト鎖パートナーの選択をつかさどる(インプリントする)。残りの非ヒト鎖を置換するためにこの工程を繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開のPCT特許出願WO93/06213を参照)。伝統的なCDR移植による非ヒト抗体のヒト化と異なり、この技術により、非ヒト起源のFR又はCDR残基を全く持たない完全なヒト抗体が得られる。
多重特異性抗体
本発明の多重特異性抗体の一つの例は、VEGF-C及び他の抗原に結合する抗体を含む。一実施態様では、多重特異性抗体は、VEGF-Cの2つの異なるエピトープに結合しうる。多重特異性抗体はVEGF-Cを発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はVEGF-C結合アーム及び細胞傷害剤、例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテンと結合するアームを有する。多重特異性抗体は完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')2二重特異性抗体)として調製することができる。
二重特異性抗体を作製する様々な方法が当該分野において述べられてきた。最初のアプローチの一つは、二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現を含み、二つの重鎖は異なる特異性を持つ(Millstein及びCuello, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が1993年5月13日に公開の国際公開第93/08829号及びTraunecker等, EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
異なったアプローチ法では、抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は例えば、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。ある実施態様では、第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させる。免疫グロブリン重鎖の融合体と、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これにより、コンストラクトに使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2又は3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
このアプローチ法の一実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
他のアプローチによると、「ノブインツホール」又は「KnH」技術は、一方のポリペプチドに突出(ノブ)を、他方のポリペプチドにキャビティ(穴)を、それらが相互作用する界面に導入するこによって、インビトロ又はインビボで2つのポリペプチドを対にるすことを誘導する。例えば、KnHは、抗体のFc:Fc結合面、CL:CH1面又はVH/VL面に導入された(例えば、US20007/0178552、WO96/027011、WO98/050431及びZhu等 (1997) Protein Science 6:781-788)。これは、多重特異性抗体の成熟の間、2つの異なる重鎖の対形成の誘導において特に有用である。例えば、それらのFc領域にKnHを有する多重特異性抗体は、各Fc領域に結合された単可変ドメインを更に含んでもよく、又は類似の又は異なる軽鎖可変ドメインと対形成する異なる重鎖可変ドメインを更に含んでもよい。一実施態様によると、第一抗体分子の界面からの一又は複数の小アミノ酸側鎖が、大きい側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置換される。大きい側鎖と同一又は類似なサイズの代償的「キャビティ」が、大きいアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はトレオニン)で置換することによって、第二抗体分子の界面に作られる。これは、ホモ二量体などの他の不必要な最終産物に対するヘテロ二量体の収率を増加するメカニズムを提供する。
多重特異性抗体は、架橋した又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体の一方はアビジンにカップリングし、他方はビオチンにカップリングする。そのような抗体は、例えば、不要の細胞に対する免疫系細胞をターゲティングするために(米国特許第4676980号)、またHIV感染の治療のために提案されている(国際公開1991/00360号、国際公開第1992/00373号、及び欧州特許第03089号)。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を用いて作製することができる。好適な架橋剤及び技術が知られている(例えば米国特許第4676980号)。
抗体断片から多重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science,229:81 (1985) はインタクトな抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。生産された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用することができる。
Fab'-SH断片を大腸菌から回収することが可能であり、化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成することが可能である。Shalaby等, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')2分子の生産を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学カップリングを受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞及びHER2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、またヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の細胞溶解活性を惹起する。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生成されている。Kostelny等, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法はまた抗体ホモ二量体の生成に対して使用することができる。Hollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供する。断片は、あまりに短くて同一鎖上の2つのドメイン間の対形成できないリンカーにより、軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)を結合してなる。従って、一つの断片のVH及びVLドメインは他の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させられ、よって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照。
二価より多い価数の抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等 J.Immunol. 147:60(1991)。
単一ドメイン抗体
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部、もしくは軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む、単一のポリペプチド鎖である。ある実施態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6248516B1号を参照)。一実施態様では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部からなる。
抗体変異体
いくつかの実施態様では、ここに記載された抗体のアミノ酸配列の修飾を考える。例えば、抗体の結合親和性及び/又は生物学的特性を改善することが望ましい。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチドに適切な変化を導入して、又はペプチド合成により調製することができる。そのような修飾は、抗体のアミノ酸配列内の残基の、例えば、欠失型、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。最終構成物が所望する特徴を有していれば、欠失、挿入及び置換をどのように組合せてもよい。アミノ酸変化は、配列が作製されるときに、対象となる抗体アミノ酸配列に導入することができる。
突然変異誘発に好ましい位置である抗体のある種の残基又は領域の同定に有益な方法は、Cunningham及びWells (1989) Science, 244:1081-1085に記載されているように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、残基又は標的残基の群が同定され(例えば、arg、asp、his、lys、及びgluなどの荷電残基)、中性の又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)で置換され、アミノ酸の抗原との相互作用に影響を与える。ついで、置換に対する機能的感受性を示しているそれらアミノ酸位置を、置換の部位において、又は置換の部位のために、更なる又は他の変異体を導入することにより精製する。このように、アミノ酸配列変異体を導入する部位は予め決定されるが、突然変異自体の性質は予め決定される必要はない。例えば、与えられた部位における突然変異のパーフォーマンスを分析するために、標的コドン又は領域においてalaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を実施し、発現した免疫グロブリンを所望の活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列挿入には、1残基から100又はそれ以上の残基を有するポリペプチドまでの長さに亘るアミノ-及び/又はカルボキシ末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を持つ抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を増加させるポリペプチド又は(例えばADEPTのための)酵素への抗体のN末端又はC末端の融合が含まれる。
ある実施態様では、本発明の抗体は、抗体がグリコシル化する程度が増加又は減少するように変化させられる。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここで、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O-結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N-結合グリコシル化部位のもの)が作製又は除去されるように変化させることによって、簡便に達成される。該変化は、元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
抗体がFc領域を含む場合、そこに結合する炭水化物が改変されうる。哺乳動物細胞により産生される天然抗体は、Fc領域のCH2ドメインのAsn297に対するN-結合により一般的に結合した、分枝状、二分岐のオリゴ糖を含む。例えば、Wright等 (1997) TIBTECH 15:26-32を参照。オリゴ糖は種々の炭水化物、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びにフコースで、二分岐オリゴ糖構造の「幹」におけるGlcNAcに結合しているものが含まれる。いくつかの実施態様では、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾が、ある種の改善された特性を有する抗体変異体を生じせしめるために、実施されうる。
例えば、Fc領域に(直接又は間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。このような変異体は改善されたADCC機能を有しうる。例えば、米国特許公開第2003/0157108号(Presta, L.);米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd)を参照。「脱フコシル化された」又は「フコース欠損」抗体変異体に関連した刊行物の例には、米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;国際公開第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;米国特許出願公開第2002/0164328号;米国特許出願公開第2004/0093621号;米国特許出願公開第2004/0132140号;米国特許出願公開第2004/0110704号;米国特許出願公開第2004/0110282号;米国特許出願公開第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;国際公開第2003/084570号;国際公開第2005/035586号;国際公開第2005/035778号;国際公開第2005/053742号;国際公開第2002/031140号;Okazaki等 J. Mol. Biol. 336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki等 Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を生産可能な細胞株の例には、タンパク質のフコシル化におけるLec13 CHO細胞欠損が含まれる(Ripka等 Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108A1号, Presta, L; 及び国際公開第2004/056312A1号, Adams等, 特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞が含まれる(例えば、Yamane-Ohnuki等 Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda, Y等, Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照)。
抗体変異体にはさらに二分オリゴ糖が設けられ、例えば、抗体のFc領域に結合した二分オリゴ糖がGlcNAcにより二分される。そのような抗体変異体は、フコシル化が低減され、及び/又はADCC機能が改善されている場合がある。このような抗体変異体の例は、例えば、国際公開第2003/011878号(Jean-Mairet等);米国特許第6602684号(Umana等);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana等)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖に少なくとも一のガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。このような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有している場合がある。このような抗体変異体は、例えば国際公開第1997/30087号(Patel等);国際公開第1998/58964号(Raju, S.);及び国際公開第1999/22764号(Raju, S.)に記載されている。
ある実施態様では、抗体変異体は、例えばFc領域の位置298、333、及び/又は334(残基のEu番号付け)の置換のように、ADCCをさらに改善する一又は複数のアミノ酸置換を持つFc領域を含む。このような置換は、上述した変異のいずれかと組合せて生じうる。
ある実施態様では、抗VEGF-C抗体変異体は、位置297でアミノ置換を有するFc領域を有する。
ある実施態様では、本発明は、インビボにおける抗体の半減期が重要であるが、ある種のエフェクター機能(例えば補体及びADCC)が不必要であるか又は有害である多くの用途に対して望ましい候補とする、全てではないが、いくつかのエフェクター機能を有する。ある実施態様では、抗体のFc活性は、所望の特性のみが維持されるように担保して測定される。インビトロ及び/又はインビボ細胞傷害アッセイは、CDC及び/又はADCC活性の低減/枯渇を確認するために実施することができる。例えば、Fcレセプター(FcR)結合アッセイは、抗体が、FcγR結合を欠く(よって、ADCC活性を欠くと思われる)が、FcRn結合活性は保持していることを確認するために実施することができる。ADCCを媒介する初代細胞、NK細胞は、FcRIIIのみを発現するが、単球はFcRI、FcRII及びFcRIIIを発現する。造血性細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu.Rev.Immunol., 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。関心ある分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的例は、米国特許第5500362号(例えば、Hellstrom, I等 Proc. Nat'l Acad. Sci. USA83:7059-7063 (1986))、及びHellstrom, I等, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);同5821337号 (Bruggemann, M等, J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照)に記載されている。また、非放射アッセイ法を使用することもできる(例えば、フローサイトメトリー用のACTITM非放射活性細胞傷害アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射活性細胞傷害アッセイ(Promega, Madison, WI)を参照)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は付加的に、関心ある分子のADCC活性は、例えばClynes等 Proc. Nat. Acad. Sci. USA 95:652-656(1998)に開示されたような動物モデルにおいて、インビボで評価されうる。C1q結合アッセイも、抗体がC1qに結合できず、よってCDC活性を欠くことを確認するために実施することができる。補体活性を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M.S等, Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg, M.S. 及びM.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期測定も、当該分野で既知の方法を使用して実施することができる(例えば、Petkova, S.B等, Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006)を参照)。
一又は複数のアミノ酸置換を有する他の抗体変異体が提供される。置換突然変異誘発のために関心ある部位は高頻度可変領域を含むが、FR変化もまた考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表1に示す。「例示的置換」と示されたより実質的な変化が表1に提供され、又はアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換は関心ある抗体に導入され、生成物が、例えば所望の活性、例えば改善された抗原結合性、低減した免疫原性、改善されたADCC又はCDC等について、スクリーニングされる。
抗体の生物学的性質における修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩に影響を及ぼす置換を選択することにより、達成されうる。アミノ酸は、その側鎖の性質の類似性に従ってグループ分けすることができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, 第2版, pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
別法では、天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを他のクラスに交換することを必要とするであろう。また、このような置換された残基は保存的置換部位又は残存する(非保存的)部位に導入することができる。
一タイプの置換変異体は、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の高頻度可変領域残基を置換することを含む。一般的に、さらなる開発のために選択され、得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して修飾(例えば改善)された生物学的特性を有しているであろう。例示的な置換変異体は、親和性成熟抗体であり、これは、ファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して簡便に産生せしめることができる。簡潔に言えば、いくつかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて、各部位に全ての可能なアミノ酸置換を生成せしめる。このようにして産生された抗体は、糸状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたファージコートタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)の少なくとも一部への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、それらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、スキャンニング突然変異誘発(例えば、アラニンスキャンニング)を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と抗原の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べたものを含む、当該分野で既知の技術に従う置換の候補である。そのような変異体が産生されると、変異体のパネルに、ここに記載するものを含む当該分野で既知の技術を使用するスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ変異体を、さらなる開発のために選択することができる。
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は当該分野で知られている様々な方法により調製される。これらの方法は、限定されるものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又はオリゴヌクレオチド媒介性(又は部位指向性)突然変異誘発による調製、PCR突然変異誘発、及び前もって調製された変異体又は抗体の非変異型のカセット突然変異誘発を含む。
本発明の抗体のFc領域に、一又は複数のアミノ酸修飾を導入し、よってFc領域変異体を生じせしめることが所望される場合がある。Fc領域変異体は、ヒンジシステインのものを含む、一又は複数のアミノ酸位置に、アミノ酸修飾(例えば置換)を有するヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含む。
この明細書及び当該分野の教示に従い、いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、例えばFc領域において、野生型の対応抗体と比較して、一又は複数の変更を含み得る。それにもかかわらず、これらの抗体は、それらの野生型の対応物と比較して、治療的有用性に必要とされる実質的に同様の特徴を保持している。例えば、国際公開第99/51642号に記載されたように、変化した(すなわち、改善又は低減した)C1q結合性及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を生じるある種の改変をFc領域に作製することができることが、例えば考えられる。また、Fc領域変異体の他の例に関連して、Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5648260号;米国特許第5624821号;及び国際公開第94/29351号を参照。国際公開第00/42072号(Presta)及び国際公開第2004/056312号(Lowman)には、FcRsに対する改善された又は低減した結合性を有する抗体変異体が記載されている。これらの特許文献の内容は、特に出典明示によりここに援用される。また、Shields等 J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照。胎児への母性Igの移動の原因である(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976) 及びKim等, J. Immunol. 24:249 (1994))、半減期が増加し、新生児Fcレセプター(FcRn)に対する結合性が改善された抗体は、米国特許第2005/0014934A1号(Hinton等)に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合性が改善された、一又は複数の置換を有するFc領域を含む。改変されたFc領域アミノ酸配列、及び増加又は減少したC1q結合力を有するポリペプチド変異体は、米国特許第6194551B1号、国際公開第99/51642号に記載されている。それらの特許文献の内容は、特に出典明示によりここに援用される。また、Idusogie等 J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)を参照。
他の態様では、本発明は、Fc領域を含むFcポリペプチドの界面に修飾を有する抗体を提供し、ここで、該修飾がヘテロ二量体化を容易にし及び/又は促進する。これらの修飾は、第1のFcポリペプチドに隆起部を、第2のFcポリペプチドにキャビティを導入することを含み、ここで、第1及び第2のFcポリペプチドの複合体化が促進されるように、隆起部はキャビティに配される。これらの修飾を有する抗体を産生する方法は、例えば米国特許第5731168号に記載されているように、当該分野で知られている。
さらなる他の態様においては、抗体の一又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば「チオMAbs」を作製することが所望される場合がある。特定の実施態様では、置換された残基は抗体の到達可能な部位で生じる。システインでその残基を置換することにより、反応性チオール基が抗体の到達可能な部位に配され、他の部分、例えばここにさらに記載されるような、薬剤部分又はリンカー-薬剤部分に抗体をコンジュゲートさせるのに使用されうる。ある実施態様では、次の残基のいずれか一又は複数がシステインで置換されうる:軽鎖のV205(カバット番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。
抗体誘導体
本発明の抗体は、当該分野で知られ、直ぐに利用できる付加的な非タンパク質部分を含むようにさらに修飾することができる。好ましくは、抗体の誘導体化に適切な部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的例には、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸のコポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマー)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリルプロピレンオキシド/エチレンオキシドのコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中におけるその安定性のために、製造においては有利でありうる。ポリマーは任意の分子量であってよく、分枝状又は非分枝状でありうる。抗体に結合するポリマーの数は変化し得、1を越えるポリマーが結合されるならば、それらは同じ又は異なる分子でありうる。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定されるものではないが、抗体誘導体が定められた条件下で治療に使用されるかどうか等に関わらず、改善される抗体の特定の特性又は機能を含む考慮に基づき、決定することができる。
他の実施態様では、放射線に暴露されることにより選択的に加熱されうる非タンパク質性部分と抗体とのコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kam等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線は任意の波長のものであり得、限定されるものではないが、通常の細胞に害を与えないが、抗体-非タンパク質性部分に近接する細胞が死滅する温度まで、非タンパク質性部分を加熱する波長が含まれる。
イムノコンジュゲート
本発明は、また、一又は複数の細胞傷害剤、例えば化学療法剤、薬剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、又は動物由来の酵素的に活性な毒素、その断片)、又は放射性同位元素(すなわち、放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした抗体を含むイムノコンジュゲート(「抗体-薬剤コンジュゲート」又は「ADC」と交換可能に称される)を提供する。
イムノコンジュゲートは、細胞傷害剤、すなわち癌の治療において、細胞の成長又は増殖を阻害し又は殺す薬剤の局所送達に使用されている(Lambert, J. (2005) Curr. Opinion in Pharmacology 5:543-549;Wu等 (2005) Nature Biotechnology 23(9):1137-1146;Payne, G. (2003) i 3:207-212;Syrigos 及び Epenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614;Niculescu-Duvaz及びSpringer (1997) Adv. Drug Deliv. Rev. 26:151-172;米国特許第4975278号)。コンジュゲートしていない薬剤の全身投与により、正常な細胞、並びに除外しようと探索している腫瘍細胞に、許容できないレベルの毒性が付与される箇所に、イムノコンジュゲートでは、腫瘍、及び細胞内のそれらの蓄積部への薬剤部分の標的送達が可能となる(Baldwin等, Lancet (Mar. 15, 1986) pp. 603-05; Thorpe (1985) 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」, Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications (A. Pincheraら編) pp. 475-506。ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の双方は、これらの方法で有用であると報告されている(Rowland等, (1986) Cancer Immunol. Immunother. 21:183-87)。これらの方法に使用されている薬剤には、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、及びビンデシンが含まれる(Rowland等, (1986) 上掲)。抗体-毒素コンジュゲートに使用される毒素には、細菌毒素、例えばジフテリア毒素、植物性毒素、例えばリシン、小分子毒素、例えばゲルダナマイシン(Mandlerら (2000) J. Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581;Mandler等 (2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028;Mandler等 (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(欧州特許出願公開第1391213号;Liu等,(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lode等 (1998)Cancer Res. 58:2928;Hinman等 (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)が含まれる。毒素は、チューブリン結合、DNA結合、又はトポイソメラーゼ阻害を含むメカニズムにより、その細胞傷害効果を奏する。幾つかの細胞傷害剤は、大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドにコンジュゲートした場合に、不活性になるか又は活性が少なくなる傾向がある。
ゼバリンTM(イブリツモマブチウキセタン、Biogen/Idec)は、正常及び悪性のBリンパ球の表面に見出されるCD20抗原に対して産生されるマウスIgG1カッパモノクローナル抗体及びチオウレアリンカー-キレート剤により結合した111In又は90Y放射性同位元素からなる抗体-放射性同位元素コンジュゲートである(Wiseman等 (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77;Wiseman等 (2002) Blood 99(12):4336-42;Witzig等 (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63;Witzig等 (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69)。ゼバリンは、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)に対して活性を有しているが、投与により、殆どの患者において、重度の長期にわたる血球減少が生じる。マイロターグTM(ゲムツズマブオゾガマイシン、Wyeth Pharmaceuticals)は、カリケアマイシンに結合したhuCD33抗体からなる抗体-薬剤コンジュゲーであり、注射による急性骨髄性白血病の治療について、2000年に承認された(Drugs of the Future (2000) 25(7):686;米国特許第4970198号;同5079233号;同5585089号;同5606040号;同5693762号;同5739116号;同5767285号;同5773001号)。カンツズマブメルタンシン(Immunogen, Inc.)は、メイタンシノイド薬剤部分、DM1にジスルフィドリンカーSPPを介して結合したhuC242抗体からなる抗体-薬剤コンジュゲートであり、CanAgを発現する癌、例えば結腸、膵臓、胃、及び他の癌の治療のための第II相試験に進んでいる。MLN-2704(Millennium Pharm., BZL Biologics, Immunogen Inc.)は、メイタンシノイド薬剤部分、DM1に結合した抗前立腺特異性膜抗原(PSMA)からなる抗体-薬剤コンジュゲートであり、前立腺腫瘍の潜在的な治療法としての開発下にある。オーリスタチン(auristatin)ペプチド、オーリスタチンE(AE)及びモノメチルオーリスタチン(MMAE)、ドラスタチンの合成アナログは、キメラモノクローナル抗体cBR96(細胞腫においてルイスYに特異的)及びcAC10(血液液腫瘍においてCD30に特異的)(Doronina等 (2003) Nature Biotechnol. 21(7):778-784)は、治療開発下にある。
ある実施態様では、イムノコンジュゲートは、抗体及び化学療法剤又は他の毒素を含む。イムノコンジュゲートの生産に有用な化学療法剤は、ここに記載されている(例えば上述)。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、α-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria oficinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)を含む。例えば、1993年10月28日に公開された国際公開第93/21232号を参照。様々な放射性ヌクレオチドが放射性コンジュゲート抗体の生成に利用可能である。例として、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reを含む。抗体と細胞傷害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアナート(トリエン2,6-ジイソシアナート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されたように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への結合のためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照。
抗体と、一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、オーロスタチン、トリコテシン、及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体とのコンジュゲートが、ここで考察される。
メイタンシン及びメイタンシノイド
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のメイタンシノイド分子がコンジュゲートした抗体(全長又は断片)を含む。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することによって作用する有糸分裂インヒビターである。メイタンシンは、最初、東アフリカの低木であるMaytenus serrataから単離された(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド、例えばメイタンシノール、及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成のメイタンシノール及びその誘導体及びアナログは、例えば米国特許第4137230号;同4248870号;同4256746号;同4260608号;同4265814号;同4294757号;同4307016号;同4308268号;同4308269号;同4309428号;同4313946号;同4315929号;同4317821号;同4322348号;同4331598号;同4361650号;同4364866号;同4424219号;同4450254号;同4362663号;及び同4371533号に開示されている。
メイタンシノイド薬剤部分は、それらが、(i)発酵又は化学的修飾、発酵産物の誘導体化による調製に比較的到達可能であり、(ii)抗体への非ジスルフィドリンカーを介してのコンジュゲーションに適した官能基での誘導体化が受け入れられ、(iii)血漿中で安定しており、(iv)多様な腫瘍細胞株に対して効果的であるので、抗体薬剤コンジュゲートにおける魅力的な薬剤部分である。
メイタンシノイドを含むイムノコンジュゲート、それらの作製方法、及びその治療的使用は、例えば、その開示が出典明示により明確にここに援用される米国特許第5208020号、同5416064号、及び欧州特許第0425235B1号に開示されている。Liu等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623 (1996)は、ヒト結腸直腸癌に対して産生されたモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含むイムノコンジュゲートを記載している。コンジュゲートは、培養された結腸癌細胞に対して高度に細胞傷害性であることが見出されており、インビボ腫瘍増殖アッセイにおいて抗癌活性を示した。Chari等, Cancer Research 52:127-131 (1992)には、メイタンシノイドが、ヒト結腸癌細胞株における抗原に結合するマウス抗体A7に、又はHER-2/neu癌遺伝子に結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に、ジスルフィドリンカーを介してコンジュゲートしているイムノコンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞傷害性は、細胞当たり、3×105のHER-2表面抗原を発現するヒト乳癌細胞株SK-BR-3においてインビトロで試験される。薬剤コンジュゲートは、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることによって増加可能な、遊離のメイタンシノイド剤と同様の度合いの細胞傷害性を達成した。A7-メイタンシノイドコンジュゲートは、マウスにおいて低い全身性の細胞傷害性を示した。
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子のいずれの生物活性も有意に低減させることなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることによって、調製される。例えば、米国特許第5208020号(その開示は、出典明示により明示的にここに援用される)。抗体分子当たりのコンジュゲートした平均3−4のメイタンシノイド分子は、抗体の機能又は溶解度に負の影響を与えることなく、標的細胞の細胞傷害性を高める効果を示すが、毒素/抗体の一分子でさえ、ネイキッド抗体の使用に対して細胞傷害性を亢進することが予期されている。メイタンシノイドは当該分野でよく知られており、既知の技術で合成可能であり、又は天然源から単離することができる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5208020号及び上述した他の特許及び非特許文献に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール、及び芳香環又はメイタンシノール分子の他の位置が修飾されたメイタンシノールアナログ、例えば様々なメイタンシノールエステルである。
その開示が出典明示によりここに明示的に援用される米国特許第5208020号、又は欧州特許第0425235B1号、Chari等, Cancer Research 52:127-131 (1992)、及び2004年10月8日に出願された米国特許出願第10/960602号に開示されているものを含み、抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するための、多くの連結基が当該分野で知られている。リンカー成分SMCCを含む抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、2004年10月8日に出願された米国特許出願第10/960602号に開示されている。連結基には、上述した特許に開示されているような、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基を含み、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。付加的な連結基がここに開示され、例証されている。
抗体とメイタンシノイドのコンジュゲートは、様々な二官能性のタンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアナート)、及びビス-活性化フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。特に好ましいカップリング剤には、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson等, Biochem. J. 173:723-737 (1978))、及びN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)が含まれ、ジスルフィド結合が得られる。
リンカーは、リンカーのタイプに応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合されうる。例えば、エステル結合は、一般的なカップリング技術を使用して、ヒドロキシル基と反応させることにより形成させることができる。反応は、ヒドロキシル基を有するC-3位置、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位置、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位置、ヒドロキシル基を有するC-20位置で生じうる。好ましい実施態様では、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールアナログのC-3位置に形成される。
オーリスタチン及びドラスタチン
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチン(dolostatin)ペプチドアナログ及び誘導体、オーリスタチン(米国特許第5635483号;米国特許第5780588号)にコンジュゲートした抗体を含む。ドラスタチン及びオーリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解、及び核及び細胞分割に干渉することが示されており(Woyke等 (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12):3580-3584)、また抗癌性(米国特許第5663149号)及び抗真菌活性(Pettitら (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有している。ドラスタチン又はオーリスタチンの薬剤部分は、ペプチド薬剤部分のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端を介して、抗体に結合されうる(国際公開第02/088172号)。
オーリスタチンの例示的な実施態様には、その開示が出典明示によりここに明示的に援用される"Monomethlvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、2004年11月5日に出願の米国特許第10/983340号に開示されたN末端結合モノメチルオーリスタチン薬剤部分を含む。
典型的には、ペプチドベースの薬剤部分は、2又はそれ以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片の間に、ペプチド結合を形成させることによって調製することができる。このようなペプチド結合は、例えばペプチド化学の分野でよく知られている液相合成法(E.Schroder及びK. Lubke, "The Peptides", volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Pressを参照)に従い調製することができる。オーリスタチン/ドラスタチン薬剤部分は、米国特許第5635483号;米国特許第5780588号;Pettit等 (1989) J. Am. Chem. Soc. 111:5463-5465; Pettitら (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277;Pettit, G.R等 Synthesis, 1996, 719-725;及び Pettit等 (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 5:859-863の方法に従い調製することができる。また、その全体が出典明示によりここに援用されるDoronina (2003) Nat Biotechnol 21(7):778-78;"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、2004年11月5日に出願された米国特許出願第10/983340号(例えば、リンカーに対してコンジュゲートしたMMAE及びMMAF等の、モノメチルバリン化合物を調製する方法、及びリンカーが開示されている)を参照のこと。
カリケアマイシン
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子にコンジュゲートした抗体を含む。カリケアマイシンファミリーの抗生物質は、サブ-ピコモル濃度での二本鎖DNAを破壊可能である。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全てAmerican Cyanamid Company)を参照。使用可能なカリケアマイシンの構造的アナログには、限定されるものではないが、γ1I、α2I、α3I、N-アセチル-γ1I、PSAG及びθI1(Hinman等, Cancer Research 53:3336-3342 (1993), Lode等, Cancer Research 58:2925-2928 (1998)、及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体がコンジュゲート可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗剤であるQFAである。カリケアマイシンとQFAの双方は、細胞内作用部位を有しており、細胞膜を容易に通過できない。よって、抗体媒介性の内部移行を介したこれらの薬剤の細胞取り込みは、その細胞傷害効果を大きく亢進する。
他の細胞傷害剤
抗体にコンジュゲート可能な他の抗腫瘍剤は、BCNU、ストレプトゾシン、ビンクリスチン、及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載された集合的にLL-E33288複合体として知られている薬剤のファミリー、並びにエスペラミシン(米国特許第5877296号)を含む。
使用されうる酵素的に活性な毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α-サルシン、アレウリテス・フォーディタンパク質、ジアンチンタンパク質、フィトラカ・アメリカーナタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチアインヒビター、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンが含まれる。例えば、1993年10月28日に公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、核酸分解性活性(例えば、リボムクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNA分解酵素)を有する化合物と抗体との間で形成されるイムノコンジュゲートをさらに考慮する。
腫瘍の選択的破壊のために、抗体は高度に放射性のある原子を含みうる。様々な放射性同位元素が、放射性コンジュゲート抗体の生産に有用である。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が含まれる。コンジュゲートが検出のために使用される場合、それは、例えばtc99m又はI123のようなシンチグラフィー検査のための放射活性原子、又は核磁気共鳴(NMR)画像(磁気共鳴画像、mriとしても知られている)のためのスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含みうる。
放射性-又は他の標識は、既知の方法でコンジュゲートに導入することができる。例えば、ペプチドは、水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用して、化学的アミノ酸合成法により合成することができる。標識、例えばtc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドにシステイン残基を介して結合させることができる。イットリウム-90はリジン残基を介して結合されうる。IODOGEN法(Fraker等 (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57)は、ヨウ素-123を導入するために使用することができる。「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」 (Chatal,CRC Press 1989)には、他の方法が詳細に記載されている。
抗体と細胞傷害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアナート)、及びビス-活性化フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されたように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への結合のためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号参照。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチターゼに敏感なリンカー、光に不安定なリンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari等, Cancer Research 52:127-131 (1992); 米国特許第5208020号)を使用することができる。
化合物は、限定しないが、架橋剤:BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾアート)で、商業的に入手可能なものを用いて調製されるADCを明示的に考慮する(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aからのもの)。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467−498頁を参照。
抗体薬剤コンジュゲートの調製
抗体薬剤コンジュゲート(ADC)では、抗体(Ab)は、リンカー(L)を介して、一又は複数の薬剤部分(D)、例えば抗体当たり約1から約20の薬剤部分にコンジュゲートされる。式IのADCは、(1)二価のリンカー試薬と抗体の求核基とを反応させ、共有結合を介してAb-Lを形成させ、続いて薬剤部分と反応させ;(2)二価のリンカー試薬と薬剤部分の求核基とを反応させ、共有結合を介してD-Lを形成させ、続いて抗体の求核基と反応させることを含む、当業者に知られている有機化学反応、条件、及び試薬を使用し、いくつかの経路により調製することができる。ADCを調製するためのさらなる方法を、ここに記載する。
Ab-(L-D)p I
リンカーは、一又は複数のリンカー成分からなりうる。例示的なリンカー成分には、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N-スクシンイミジル 4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(「SPP」)、N-スクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエート(「SIAB」)が含まれる。さらなるリンカー成分が当該分野で知られており、そのいくつかはここに記載される。また、その内容の全体が出典明示によりここに援用される2004年11月5日に出願された米国特許第10/983340号「Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands」を参照。
いくつかの実施態様では、リンカーはアミノ酸残基を含みうる。例示的なアミノ酸リンカー成分には、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドが含まれる。例示的なジペプチドには、バリン-シトルリン(vc又はval-cit)、アラニン-フェニルアラニン(af又はala-phe)が含まれる。例示的なトリペプチドには:グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)及びグリシン-グリシン-グリシン(gly-gly-gly)が含まれる。アミノ酸リンカー成分に含有されるアミノ酸残基には、天然に生じたもの、並びに微量アミノ酸、及び天然に生じないアミノ酸アナログ、例えばシトルリンが含まれる。アミノ酸リンカー成分は、特定の酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD、又はプラスミンプロテアーゼにより酵素的切断されるように設計され、その選択性が最適化される。
抗体上の求核基は、限定されるものではないが、(i)N末端アミノ基、(ii)側鎖アミン基、例えばリジン、(iii)側鎖チオール基、システイン、及び(iv)抗体がグリコシル化されている場合、糖ヒドロキシル又はアミノ基を含む。アミン、チオール、及びヒドロキシル基は求核性であり、反応して、(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、及びハロホルマート及び酸ハロゲン化物、(ii)アルキル及びベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド類;(iii)アルデヒド類、ケトン類、カルボキシル、及びマレイミド基を含むリンカー部分及びリンカー試薬上の求電子基と共有結合を形成することができる。ある種の抗体は、還元性鎖間ジスルイド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、還元剤、例えばDTT(ジチオスレイトール)での処理によるリンカー試薬とのコンジュゲートのために反応性にさせられうる。よって、各システイン架橋は、理論的に2つの反応性チオール求核剤を形成するであろう。付加的な求核基は、アミンをチオールに転換させる2-イミノチオラン(トラウト試薬)を用いたリジンの反応を介して、抗体に導入することができる。反応性チオール基は、1、2、3、4、又はそれ以上のシステイン残基を導入(例えば、一又は複数の非天然システインアミノ酸残基を含む変異抗体を調製)することにより、抗体(又はその断片)に導入することができる。
また、抗体薬剤コンジュゲートは、リンカー試薬又は薬剤において、求核置換基と反応可能な求電子部分を導入するために、抗体を修飾することにより産生することができる。グリコシル化抗体の糖類は、例えば、過ヨウ素酸化試薬を用いて酸化させ、リンカー試薬又は薬剤部分のアミン基と反応可能なアルデヒト又はケトン基を形成させることができる。得られたイミンシッフ塩基基は、安定した結合を形成でき、又はホウ化水素試薬により還元されて、安定したアミン結合を形成することができる。一実施態様では、ガラクトースオキシダーゼ又は過ヨウ素酸ナトリウムのいずれかと、グリコシル化抗体の炭水化物部分とを反応させることによって、薬剤の適切な基と反応可能なタンパク質において、カルボニル(アルデヒド又はケトン)基が生じる(Hermanson, Bioconjugate Techniques)。他の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を有するタンパク質は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応可能で、第1のアミノ酸の代わりにアルデヒドが産生される(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146; US 5362852)。このようなアルデヒドは薬剤部分又はリンカー求核剤と反応させることができる。
同様に、薬剤部分の求核基は、限定されるものではないが、反応して、(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルマート及び酸ハロゲン化物、(ii)アルキル及びベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド類;(iii)アルデヒド類、ケトン類、カルボキシル、及びマレイミド基を含むリンカー部分及びリンカー試薬上の求電子基と共有結合を形成することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシラート、及びアリールヒドラジド基を含む。
あるいは、抗体と細胞傷害剤を含む融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により、作製することができる。DNAの長さは、コンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間するか又は互いに隣接した2つのコンジュゲート部分をコードする各領域を含みうる。
また他の実施態様では、抗体は、腫瘍の事前標的に利用される「レセプター」(例えば、ストレプトアビジン)にコンジュゲートすることができ、ここで、抗体-レセプターコンジュゲートが患者に投与され、続いて洗浄剤を使用し、循環から未結合のコンジュゲートが除去され、ついで、細胞傷害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートした「リガンド」(例えばアビジン)が投与される。
抗体作製方法
ハイブリドーマベース法
本発明のモノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記述され、更に例えばHongo等, Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995), Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2版 1988); Hammerling等, Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981)、及びNi, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)でヒト-ヒトハイブリドーマに関するものた記載されたハイブリドーマ法を使用して作製することができる。更なる方法には、例えばハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒト天然IgM抗体の生産に関する米国特許第7189826号に記載されているものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はVollmers及びBrandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005)並びに Vollmers及びBrandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
様々な他のハイブリドーマ技術については、例えば、米国特許出願公開第2006/258841号;米国特許出願公開第2006/183887号(完全なヒト抗体)、米国特許出願公開第2006/059575号;米国特許出願公開第2005/287149号;米国特許出願公開第2005/100546号;米国特許出願公開第2005/026229号、及び米国特許第7078492号及び第7153507号を参照のこと。 ハイブリドーマ法を使用するモノクローナル抗体を製造するための例示的プロトコルは次のように記載されている。一実施態様では、マウス又は他の適切な宿主動物、例えばハムスターを免疫して、免疫化に使用されたタンパク質に特異的に結合する抗体を製造するか又は製造できるリンパ球を誘発する。VEGF-C又はその断片を含んでなるポリペプチドとアジュバント、例えばモノホスホリル脂質A(MPL)/ジクリノミコール酸トレハロース(TDM)(Ribi Immunochem. Research, Inc., Hamilton, MT)の複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって抗体を動物中に産生させる。VEGF-C又はその断片を含んでなるポリペプチドは、当該分野で知られている方法、例えばその幾らかがここに更に記載されている組換え法を使用して調製することができる。免疫化した動物からの血清を抗VEGF-C抗体についてアッセイし、追加免疫を場合によっては行う。抗VEGF-C抗体を生産する動物からのリンパ球が単離される。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化してもよい。
ついで、リンパ球は、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を使用してハイブリドーマ細胞と融合されてハイブリドーマ細胞が形成される。例えば、Goding,Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,pp.59-103 (Academic Press,1986)を参照のこと。効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高水準の抗体発現を支持し、かつHAT培地等の培地に感受性のミエローマ細胞を使用することができる。例示的なミエローマ細胞には、限定されないが、マウスミエローマ株、例えば
ソークインスティチュート細胞分譲センター(Salk Institute Cell Distribution Center)、San Diego,California,USAから入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍から誘導されるもの、及びアメリカンタイプカルチャーコレクション、Rockville,Maryland USAから入手可能なSP-2又はX63-Ag8-65細胞等が含まれる。ヒトミエローマ及びマウス-ヒト異種ミエローマ細胞株もまたヒトモノクローナル抗体の産生に関して記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
このようにして調製されたハイブリドーマは、例えば非融合の親ミエローマ細胞の成長又は生存を妨げる一又は複数の物質を含む培地のような適切な培地に播種され増殖される。例えば、親ミエローマ細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合には、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的にはHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含む。好ましくは、無血清ハイブリドーマ細胞培養法を用いて、例えばEven等, Trends in Biotechnology, 24(3), 105-108 (2006)に記載されているように、仔ウシ血清のような動物由来血清の使用を減じる。
ハイブリドーマ細胞培養の生産性を改善するためのツールとしてオリゴペプチドがFranek, Trends in Monoclonal Antibody Research, 111-122 (2005)に記載されている。すなわち、標準培養培地にある種のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)を富ませ、又はタンパク加水分解産物画分を富ませ、3から6のアミノ酸残基からなる合成オリゴヌクレオチドによってアポトーシスを有意に抑制することができる。ペプチドはミリモル以上の濃度で存在する。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地について、VEGF-Cに結合するモノクローナル抗体の生産をアッセイできる。ハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降により、あるいはラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)等のインビトロ結合アッセイにより測定することができる。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばスキャッチャード分析により決定することができる。例えば、Munson等, Anal. Biochem., 107:220 (1980)を参照のこと。
所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後に、クローンが制限希釈法によりサブクローニングされ、標準的方法で増殖されうる。例えば上掲のGodingを参照。この目的のために好適な培養培地は、例えばD-MEM又はRPMI-1640培地を含む。また、ハイブリドーマ細胞は、動物の腹水腫瘍としてインビボで増殖されうる。サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、培養培地、腹水、又は血清から、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティクロマトグラフィー等の慣用の免疫グロブリン精製方法により好適に分離される。ハイブリドーマ細胞からのタンパク質の単離のための一手順は米国特許出願公開第2005/176122号及び米国特許第6919436号に記載されている。該方法は、結合法においてリオトロピックな塩のような最小の塩を用いること、また好ましくは溶離法において少量の有機溶媒を用いることを含む。
ある種のライブラリースクリーニング方法
本発明の抗体は、所望の活性又は活性群を持つ抗体をスクリーニングするためにコンビナトリアルライブラリーを使用することによって作製されうる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望される結合特性を有する抗体のためにかかるライブラリーをスクリーニングするために様々な方法が知られている。かかる方法は一般にHoogenboom等 Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien等編, Human Press, Totowa, NJ, 2001)に記載されている。例えば、興味ある抗体を生産する一方法は、Lee等, J. Mol. Biol. (2004), 340(5):1073-93に記載されたファージ抗体ライブラリーを使用することによる。
原理的には、合成クローンが、ファージコートタンパク質に融合した抗体可変領域(Fv)の様々な断片を表示するファージを含むファージライブラリーをスクリーニングすることによって選択される。かかるファージライブラリーは、所望の抗原に対するアフィニティクロマトグラフィーによってパニングされる。所望の抗原に結合可能なFv断片を発現するクローンを抗原に吸着させ、よってライブラリー中の非結合クローンから分離させる。ついで、結合クローンを抗原から溶離させ、抗原吸着/溶離の更なるサイクルによって更に濃縮されうる。本発明の抗体の何れも、興味あるファージクローンを選択するために適切な抗原スクリーニング手法を設計し、続いて、興味あるファージクローンからのFv配列、及びKabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), 1-3巻に記載の適切な定常領域(Fc)配列を用いての完全長抗体クローンの構築によって得ることができる。
ある実施態様では、抗体の抗原結合ドメインは、各一が軽(VL)鎖及び重(VH)鎖由来で双方が3つの超可変ループ又は相補鎖決定領域(CDRs)を提示する約110アミノ酸の2つの可変(V)領域から形成される。可変ドメインは、Winter等,Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455(1994)に記載のように、VH及びVLが短く可動性のペプチドを介して共有結合している一本鎖Fv(scFv)断片として、又はそれぞれ定常ドメインと融合して非共有的に相互作用しているFab断片として、ファージ上に機能的にディスプレイされ得る。ここで使用される場合、scFvをコードするファージクローン及びFabをコードするファージクローンは、総称して「Fvファージクローン」又は「Fvクローン」と呼ぶ。
VH及びVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングし、ファージライブラリーにおいてランダムに組換えることができ、これを、Winter等,Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455(1994)に記載のように抗原結合クローンについて探索することができる。免疫化源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要がなく、免疫原に対して高親和性抗体を提供する。あるいは、ナイーブレパートリーをクローニングして、Griffiths等,EMBO J, 12: 725-734(1993)に記載のように如何なる免疫化もせずに、幅広い非自己抗原及び自己抗原に対するヒト抗体の単一源を提供することが可能である。最終的には、ナイーブライブラリーは、また、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)に記載のように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを利用して高度可変CDR3領域をコードせしめ、インビトロでの再配列を達成させることによって合成的に作製することができる。
ある実施態様では、繊維状ファージは、マイナーコートタンパク質pIIIへの融合によって、抗体断片をディスプレイするのに用いられる。該抗体断片は、例えば、Marks等,J. Mol. Biol. 222: 581-597(1991)に記載のように、VH及びVLドメインが可動性ポリペプチドスペーサーによって同じポリペプチド鎖上に連結されている一本鎖Fv断片として、あるいは、例えば、Hoogenboom等,Nucl. Acids. Res., 19: 4133-4137(1991)に記載のように、一つの鎖がpIIIと融合し、他方の鎖が、幾つかの野生型コートタンパク質を置換することによってファージ表面上にFabコートタンパク質構造のアセンブリがディスプレイされるようになる細菌宿主細胞のペリプラズムへ分泌されるFab断片として、ディスプレイされうる。
一般に、抗体遺伝子断片をコードする核酸は、ヒト又は動物から収集した免疫細胞から得られる。抗VEGF-Cクローンに有利になるように偏ったライブラリーが望ましい場合には、検体をVEGF-Cで免疫化して抗体応答を生じさせ、脾臓細胞及び/又は他の末梢血リンパ球(PBLs)である循環B細胞を、ライブラリー構築のために回収する。好ましい実施態様では、VEGF-C免疫化により、VEGF-Cに対するヒト抗体を産生するB細胞が生じるように、抗VEGF-Cクローンに好ましいヒト抗体遺伝子断片ライブラリーは、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを有する(及び機能的な内因性抗体産生系を欠く)トランスジェニックマウス中で抗ヒトVEGF-C抗体応答を生じせしめることによって得られる。ヒト抗体産生トランスジェニックマウスの作製は以下に記載する。
抗VEGF-C反応性細胞集団の更なる濃縮は、適切なスクリーニング手法を使用してVEGF-C特異的膜結合抗体を発現するB細胞を単離すること、例えば、VEGF-Cアフィニティクロマトグラフィーによる細胞分離、又は蛍光色素標識VEGF-Cへの細胞の吸着とその後の蛍光標示式細胞分取器(FACS)によって得ることができる。
あるいは、非免疫化ドナーからの脾臓細胞及び/又はB細胞又は他のPBLの利用によって可能な抗体レパートリーのより良い提示が得られ、またVEGF-Cが免疫原性ではない任意の動物(ヒト又は非ヒト)種を利用した抗体ライブラリーの構築が可能となる。インビトロの抗体遺伝子構築を取り込むライブラリーに関しては、幹細胞を被検体から収集して非再配列の抗体遺伝子セグメントをコードする核酸を提供する。興味ある免疫細胞は、様々な動物種、例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ目、オオカミ、犬科、ネコ科、ブタ、ウシ、ウマ、及びトリ種等から得ることができる。
抗体可変遺伝子セグメント(VH及びVLセグメントを含む)をコードする核酸を、興味ある細胞から回収して増幅する。再配列したVH及びVL遺伝子ライブラリーの場合、所望されるDNAは、Orlandi等,Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 86: 3833-3837 (1989)に記載されているように、リンパ球からのゲノムDNA又はmRNAを単離し、再配列したVH及びVL遺伝子の5’及び3’末端と一致するプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって得ることが可能であり、これによって発現のための多様なV遺伝子レパートリーを作製することができる。該V遺伝子は、Orlandi等, (1989)及びWard等,Nature, 341: 544-546(1989)に記載のように、成熟Vドメインをコードするエクソンの5’末端のバックプライマーとJセグメントに基づいた順方向プライマーにより、cDNA及びゲノムDNAから増幅することが可能である。しかしながら、cDNAからの増幅のためには、バックプライマーは、また、Jones等,Biotechnol., 9:88-89(1991)に記載のようにリーダーエクソンに、順方向プライマーは、Sastry等,Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 86:5728-5732(1989)に記載のように定常領域内に基づくことが可能である。相補性を最大にするために、Orlandi等(1989)又はSastry等(1989)に記載のように、縮重をプライマーへ取り込むことが可能である。ある実施態様では、例えば、Marks等,J. Mol. Biol., 222: 581-597(1991)の方法に記載のように、又はOrum等,Nucleic Acids Res., 21: 4491-4498(1993)の方法に記載のように、免疫細胞の核酸試料に存在する全ての入手可能なVH及びVL配置を増幅するために、各V遺伝子ファミリーを標的にしたPCRプライマーを用いて、そのライブラリーの多様性を最大にする。発現ベクターへの増幅DNAのクローニングに関しては、希な制限部位を、Orlandi等(1989)に記載のようにPCRプライマー内の一端へタグとして導入することができ、又はClackson等,Nature, 352: 624-628(1991)に記載のようにタグプライマーを用いて更なるPCR増幅を行う。
合成的に再配列したV遺伝子のレパートリーは、V遺伝子セグメントからインビボで誘導することができる。殆どのヒトVH遺伝子セグメントはクローニングされ配列決定され(Tomlinson等, J. Mol. Biol. 227: 776-798(1992)に報告されている)、マッピングがされている(Matsuda等,Nature Genet., 3: 88-94(1993));これらクローニングされたセグメント(H1及びH2ループの全ての主要なコンホメーションを含む)は、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)に記載のように、多様な配列と長さのH3ループをコードするPCRプライマーによる多様なVH遺伝子レパートリーを作製するのに用いられる。VHレパートリーは、また、Barbas等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457-4461(1992)に記載されているように、単一の長さの長いH3ループに焦点を合わせた全ての配列多様性をともなって作製することができる。ヒトVκ及びVλセグメントはクローニング及び配列決定がなされており(Williams及びWinter, Eur. J. Immunol., 23: 1456-1461(1993))、合成軽鎖レパートリーを作製するのに利用することができる。VH及びVLフォールドの範囲及びL3及びH3の長さに基づく合成的V遺伝子レパートリーは、かなりの構造的多様性を有する抗体をコードする。DNAをコードするV遺伝子の増幅に続いて、生殖系のV遺伝子セグメントを、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)の方法に従ってインビトロで再配列することができる。
抗体断片のレパートリーは、幾つかの方法でVH及びVL遺伝子レパートリーを共に組み合わせることによって構築することができる。各レパートリーを異なるベクターで作製し、そのベクターを、例えばHogrefe等, Gene, 128: 119-126(1993)に記載のようにインビトロで、又はコンビナトリアル・インフェクション、例えばWaterhouse等, Nucl. Acids Res., 21: 2265-2266(1993)に記載のloxP系によってインビボで作製することが可能である。このインビボの組換え手法では、大腸菌の形質転換効率によって強いられるライブラリーの大きさの限界を克服するために、二本鎖種のFabフラグメントが利用される。ナイーブVH及びVLレパートリーは、1つはファージミドへ、他方はファージベクターへと個別にクローニングされる。この2つのライブラリーは、その後、各細胞が異なる組み合わせを有し、そのライブラリーの大きさが、存在する細胞の数(約1012クローン)によってのみ限定されるように、ファージミド含有細菌のファージ感染によって組み合わせられる。双方のベクターは、VH及びVL遺伝子が単一のレプリコンへ組換えられ、ファージビリオンへ共にパッケージされるように、インビボの組換えシグナルを有する。これら巨大なライブラリーは、良好な親和性(約10−8MのKd −1)の多くの多様な抗体を提供する。
別法として、該レパートリーは、例えばBarbas等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 7978-7982(1991)に記載のように同じベクターへ連続してクローニングし、又はClakson等, Nature, 352: 624-628(1991)に記載のようにPCRによってアセンブリした後にクローニングすることができる。PCRアセンブリは、また、可動ペプチドスペーサーをコードしているDNAとVH及びVL DNAを連結させて、単鎖のFv(scFv)レパートリーを形成することに利用することができる。更に他の技術では、「細胞内でのPCRアセンブリ」は、Embleton等, Nucl. Acids Res., 20: 3831-3837(1992)に記載のように、PCRによってリンパ球内のVH及びVL遺伝子を組み合わせて、その後、連結した遺伝子のレパートリーをクローニングするのに利用される。
ナイーブライブラリー(天然又は合成のいずれか)によって産生された抗体は中程度の親和性(約106〜107M−1のKd−1)である可能性があるが、上掲のWinter等(1994)に記載のように二次ライブラリーから構築して再選択することによって、親和性成熟をもインビトロで模倣することが可能である。例えば、Hawkins等, J. Mol. Biol. 226: 889-896(1992)の方法、又はGram等, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89: 3576-3580(1992)の方法においてエラー・プローンポリメラーゼ(Leung等, Technique, 1:11-15(1989)で報告されている)を利用することによって、突然変異をインビトロでランダムに導入することができる。更には、一又は複数のCDRをランダムに変異させることによって、例えば、選択した個々のFvクローンにおいて、対象のCDRまで及ぶランダム配列を有するプライマーによるPCRを利用して、より高い親和性クローンをスクリーニングすることで親和性成熟を行うことが可能である。国際公開第9607754号(1996年3月14日に公開)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域へ突然変異生成を誘導して軽鎖遺伝子のライブラリーを作製する方法を記載している。その他の有効な手法は、Marks等, Biotechnol. 10: 779-783(1992)に記載のように、非免疫化ドナーから得られた天然に生じるVドメイン変異体のレパートリーによるファージディスプレイによって選択されたVH又はVLドメインを組換えること、及び数回のチェーン・リシャッフリングにおいてより高い親和性についてスクリーニングすることである。この技術は、約10−9M又はそれ未満の親和性の抗体及び抗体断片の産生を可能にする。
ライブラリーのスクリーニングは当該分野で知られている様々な技術によって達成することができる。例えば、VEGF-Cを使用して吸着プレートのウェルをコーティングし、吸着プレートへ付着させた宿主細胞上で発現させるか又はセルソーティングで利用し、又はストレプトアビジンでコーティングしたビーズでの捕獲のためにビオチンにコンジュゲートさせ、又はファージディスプレイライブラリーをパニングするための任意の他の当該分野の方法において利用することが可能である。
ファージ粒子の少なくとも一部分を吸着剤に結合させるのに適した条件下で、ファージライブラリーの試料を固定化VEGF-Cと接触させる。通常は、pH、イオン強度、温度等を含む条件を選択して、生理学的条件を模倣する。固相と結合したファージを洗浄し、その後、例えばBarbas等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 7978-7982(1991)に記載されているように酸で、又は例えばMarks等, J. Mol. Biol. 222: 581-597(1991)に記載にされているようにアルカリで、又は例えばClackson等, Nature, 352: 624-628(1991)の抗原競合法に類似の手法であるVEGF-C抗原競合によって溶出させる。ファージは、1回目の選択で20〜1000倍に濃縮することが可能である。更に、この濃縮されたファージを細菌培養液で増殖させ、更なる回の選択に供することが可能である。
選択の効率は、洗浄の間の解離の動力学、及び単一のファージ上の複数の抗体断片が同時に抗原と関われるかどうかを含む多くの要因に依存する。速い解離動態(及び弱い結合親和性)を有する抗体は、短い洗浄、多価ファージディスプレイ及び固相の抗原の高いコーティング密度の利用によって保持することが可能である。高い密度は、多価相互作用を介してファージを安定化するだけでなく、解離したファージの再結合に有利に作用する。遅い解離動態(及び良好な結合親和性)を有する抗体の選択は、Bass等, Proteins, 8: 309-314(1990)及び国際公開第92/09690号に記載されているような長い洗浄と一価ファージディスプレイの利用、及びMarks等, Biotechnol., 10: 779-783(1992)に記載されているような抗原の低コーティング密度によって促進することが可能である。
親和性に僅かな違いがあったとしても、VEGF-Cに対する異なる親和性のファージ抗体の中で選択することは可能である。しかしながら、選択した抗体のランダム変異(例えば、幾つかの親和性成熟の技術で行われているような)は、多くの変異体を生じやすく、その殆どが抗原と結合し、僅かがより高い親和性である。VEGF-Cを限定すると、希な高い親和性のファージが競合して除かれることが可能である。全てのより高い親和性の変異体を保持するため、ファージを、過剰のビオチン化VEGF-Cとインキュベートすることが可能であるが、VEGF-Cの標的モル濃度親和定数よりも低いモル濃度のビオチン化VEGF-Cと共にインキュベーションできる。ついで、高親和性結合ファージをストレプトアビジンでコーティングした常磁性体ビーズによって捕獲することが可能である。そのような「平衡捕獲」は、結合の親和性に従い、親和性の低い大過剰のファージから、僅かに2倍高い親和性の変異体クローンの単離を可能にする感度で抗体を選択することを可能にする。固相と結合したファージを洗浄するのに用いる条件を操作して、解離定数に基づいて識別することも可能である。
抗VEGF-Cクローンは活性に基づいて選択されうる。ある実施態様では、本発明はVEGF-Cを天然に発現する生きている細胞に結合する抗VEGF-C抗体を提供する。一実施態様では、本発明は、VEGF-CリガンドとVEGF-Cとの結合をブロックするが、VEGF-Cリガンドと第二タンパク質との結合をブロックしない抗VEGF-C抗体を提供する。このような抗VEGF-C抗体に対応するFvクローンは、(1)上述のようなファージライブラリーから抗VEGF-Cクローンを単離して、場合によって、好適な細菌宿主中で集団を増殖させることによって、ファージクローンの単離した集団を増幅する;(2)ブロック活性及び非ブロック活性がそれぞれ望まれる第二タンパク質とVEGF-Cを選択する;(3)固定されたVEGF-Cに抗VEGF-Cファージクローンを吸着する;(4)過剰の第二タンパク質を用いて、第二タンパク質の結合決定基と共有するかオーバーラップするVEGF-C-結合決定基を認識する任意の望ましくないクローンを溶出する;そして、(5)工程(4)の後に吸着されたまま残ったクローンを溶出する、ことによって、選別できる。場合によっては、所望のブロック/非ブロック特性を有するクローンを、ここに記載の選別手順を一又は複数回繰り返すことによって、更に濃縮できる。
ハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体をコードするDNA又は本発明のファージディスプレイFvクローンは、常法を用いて(例えば、ハイブリドーマの対象の領域をコードする重鎖及び軽鎖又はファージDNA鋳型を特異的に増幅するように設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより)即座に分離されて、配列決定される。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、この状況以外では抗体タンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はミエローマ細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌での組換え発現に関する概説論文には、Skerra等, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130: 151-188(1992)が含まれる。
本発明のFvクローンをコードするDNAは、重鎖及び/又は軽鎖定常領域をコードする既知のDNA配列(例えば好適なDNA配列は上掲のカバット等から得ることができる)と組み合わせて、完全長ないし部分長の重鎖及び/又は軽鎖をコードするクローンを形成できる。このために、何れかのアイソタイプの定常領域、例えばIgG、IgM、IgA、IgD及びIgE定常領域を用いることができ、このような定常領域は任意のヒト又は動物種から得ることができることが理解されるであろう。ある動物(例えばヒト)種の可変ドメインDNAから得て、ついで「ハイブリッド」である完全長重鎖及び/又は軽鎖のコード配列を形成するために他の動物種の定常領域DNAに融合したFvクローンは、ここで用いられる「キメラ」及び「ハイブリッド」抗体の定義に含まれる。ある実施態様では、ヒト可変DNAから得たFvクローンをヒト定常領域DNAに融合して、完全長又は部分長のヒト重鎖及び/又は軽鎖のコード配列を形成する。
また、本発明のハイブリドーマ由来の抗VEGF-C抗体をコードするDNAは、例えば、ハイブリドーマクローン由来の相同的マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を置換すること(例えばMorrison等, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81:6851(1984)の方法)によって修飾することができる。ハイブリドーマ又はFvクローン由来の抗体又は断片をコードするDNAは、免疫グロブリンコード化配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード化配列の全て又は一部を共有結合させることによってさらに修飾することができる。このようにして、本発明のFvクローン又はハイブリドーマクローン由来の抗体の結合特異性を有する「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体が調製される。
ベクター、宿主細胞及び組換え方法
抗体はまた組換え法を使用して生産することができる。抗VEGF-C抗体の組換え生産のために、抗体をコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは直ぐに単離され、常套的な手法を用いて(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドを使用することによって)配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分には、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列である。
シグナル配列成分
本発明の抗体は直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然抗体シグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物宿主細胞に対して、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。酵母での分泌に対して、天然シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含む)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、又は国際公開第90/13646号に記載されているシグナルにより置換されうる。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。
複製起点成分
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターにおいて、この配列は宿主染色体DNAとは独立にベクターが複製することを可能にするものであり、複製開始点又は自律的複製配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である(SV40開始点が典型的にはただ初期プロモーターを有しているために用いられる)。
選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択方法の一例では、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、抗体核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することを可能にするもの、例えばDHFR、グルタミンシンテターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等々である。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物を培養することで同定される。これらの条件下で、DHFR遺伝子は任意の他の同時形質転換された核酸と共に増幅される。内因性DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞(例えばATCC CRL-9096)を使用することができる。
あるいは、GS遺伝子で形質転換された細胞は、GSの阻害剤であるL-メチオニンスルホキシイミン(Msx)を含む培養培地中で形質転換体を培養することによって同定される。これらの条件下で、GS遺伝子は任意の他の同時形質転換された核酸と共に増幅される。GS選択/増幅系は、上述のDHFR選択/増幅系と組み合わせて使用することができる。
あるいは、興味ある抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR遺伝子、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーと共に形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4965199号を参照のこと。
酵母中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979))。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で増殖する能力に欠ける酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977)。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1破壊が存在することは、ついでトリプトファンの不存在下における増殖による形質転換を検出するための有効な環境を提供する。同様に、Leu2欠陥酵母株(ATCC20622あるいは38626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドによって補完される。
また、1.6μmの円形プラスミドpKD1由来のベクターは、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)酵母の形質転換に用いることができる。あるいは、組換え仔ウシのキモシンの大規模生産のための発現系がK.ラクティス(lactis)に対して報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。クルイヴェロマイシスの工業的な菌株による、組換え体成熟ヒト血清アルブミンの分泌のための安定した複数コピー発現ベクターもまた開示されている。Fleer 等, Bio/Technology,9:968-975 (1991)。
プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは一般に宿主生物体によって認識され抗体核酸に作用可能に結合しているプロモーターを含む。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターは、phoAプロモーター、βラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターを含む。しかし、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用するプロモータもまた抗体をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を含むであろう。
真核生物に対してもプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25から30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有している。多数の遺伝子の転写開始位置から70から80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターは、増殖条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域である。酵母の発現に好適に用いられるベクターとプロモータは欧州特許出願公開第73657号に更に記載されている。また酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に好適に用いられる。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗体の転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス、サルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、又は異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節されうる。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点を更に含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主中でDNAを発現させる系が、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は米国特許第4601978号に開示されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞中でのヒトβインターフェロンcDNAの発現について、Reyes等, Nature, 297:598-601(1982)を参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物によるこの発明の抗体をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体コード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされうるが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、また転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びバシリ・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266710に開示されたバシリ・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。一つの好適な大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31446)であるが、他の大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような株も好適である。これらの例は限定するものではなく例示的なものである。
完全長抗体、抗体融合タンパク質、及び抗体断片は、治療用の抗体が細胞傷害剤(例えば、毒素)と結合し、それ自身が腫瘍細胞の破壊において効果を示す場合など、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ない場合に、細菌で産生させることができる。完全長抗体は、循環中でより長い半減期を有する。大腸菌での産生が、より迅速でより費用効率的である。細菌での抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5648237号(Carter等)、米国特許第5789199号(Joly等)、及び翻訳開始部位(TIR)及び発現と分泌を最適化するシグナル配列を記載している米国特許第5840523号(Simmons等)を参照のこと。また大腸菌中での抗体断片の発現について記載しているCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo編, Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp. 245-254を参照のこと。発現の後、抗体は、大腸菌細胞ペーストから可溶性分画へ分離し、例えば、アイソタイプに応じてプロテインA又はGカラムを介して精製することができる。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現させた抗体を精製するための工程と同じようにして行うことができる。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、抗体をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用でき、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(EP402226);ピチアパストリス(EP183070);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(EP244234);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属宿主、例えば偽巣性コウジ菌及びクロカビが使用できる。治療用タンパク質の生産のための酵母及び糸状真菌の使用を検討している概説には、例えばGerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)を参照のこと。
グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的又は完全なヒトグリコシル化パターンを持つ抗体の生産を生じるある種の真菌及び酵母株を選択することができる。例えば、Li等., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) (ピキア・パストリスにおけるグリコシル化経路のヒト化を記載);及び上掲のGerngross等を参照のこと。
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞はまた多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリが同定されている。トランスフェクションのための種々のウィルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリ NPVのBm-5株が公に利用でき、そのようなウィルスは本発明においてここに記載したウィルスとして使用でき、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞の形質転換に使用できる。
綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、ウキクサ(Lemnaceae)、アルファルファ(M. truncatula)、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として利用することもできる。例えば米国特許第5959177号、第6040498号、第6420548号、第7125978号及び第6417429号(トランスジェニック植物中で抗体を生産するためのPLANTIBODIESTMを記載)を参照のこと。
脊椎動物細胞を宿主として使用することができ、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2);イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC CRL1442);ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065);マウス乳房腫瘍細胞 (MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR−CHO細胞(Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;及びNS0及びSp2/0のようなミエローマ細胞株が含まれる。抗体生産に適したある種の哺乳動物宿主細胞株については、例えば、Yazaki及びWu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo編, Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp. 255-268を参照のこと。
宿主細胞を抗体生産のための上述の発現又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅させるために適切に変性された常套的な栄養培地中で培養する。
宿主細胞の培養
この発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
抗体の精製
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内、細胞膜周辺腔に生産され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生産された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。Carter等, Bio/Technology 10: 163-167 (1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌された抗体の単離方法を記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間解凍する。細胞細片は遠心分離で除去できる。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はPelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の増殖を防止してもよい。
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが典型的には好ましい精製工程である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 16571575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流量及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上でのSEPHAROSETMクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される抗体に応じて利用可能である。
予備的精製工程に続いて、目的の抗体及び混入物を含む混合液に、pH約2.5−4.5、好ましくは低塩濃度(例として、約0−0.25M塩)の溶出緩衝液を用いて低pH疎水性作用クロマトグラフィーを施すことができる。
一般に、研究、試験及び臨床に使用される抗体を調製するための様々な方法は、当該分野で十分に確立されており、上述の方法と一致し、及び/又は対象の特定の抗体に対して当業者が適切と考えるものである。
薬学的製剤及び投薬量
抗体組成物は、良好な医療実務に合致した形で製剤され、用量決定され、投与される。この点で考慮される要因には、限定するものではないが、治療されている特定の疾患、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療実務家に既知の他の要因が含まれる。疾患の予防又は治療に対し、本発明の抗体の適切な用量は(単独で又は一又は複数の他の更なる治療剤と組み合わせて使用される場合)、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度及び経過、抗体が予防又は治療目的のために投与されるかどうか、治療歴、患者の臨床歴及び抗体に対する反応、及び主治医の判断に依存するだろう。抗体は、一回で、又は一連の治療にわたって適宜投与される。
ここの薬学的製剤は、治療される特定の適応に対して必要に応じて一以上の活性化合物を含み得、好ましくは互いに悪影響を与えない相補活性を有するものである。かかる分子は、意図される目的に効果的な量の組合せにおいて適切に存在する。
投与される抗体の「治療的に有効な量」は上で検討されたかかる考慮によって支配され、疾病又は疾患を予防し、寛解させ、又は治療するのに必要な最少量である。抗体は、必要ではないが、場合によっては、問題の疾患を防止又は治療するために現在使用されている一又は複数の薬剤と共に製剤される。そのような他の薬剤の有効量は製剤中に存在する抗体の量、疾患又は治療のタイプ、及び上で検討した他の因子に依存する。これらは一般に又上述のものと同じ用量及び投与経路で、あるいはこれまで用いられた用量の約1ないし99%で使用される。一般に、疾患又は疾病の寛解又は治療は、疾患又は疾病と関連する一つ以上の症状又は医学的な問題を少なくすることを伴う。癌の場合、薬剤の治療上の有効量により、以下の一つ又は組合せを達成することができる:癌細胞の数を減少する;腫瘍サイズを減少する;末梢器官への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度減退させ及び/又は停止する);腫瘍転移を阻害する;ある程度腫瘍増殖を阻害する;及び/又は、ある程度、癌と関連する一以上の症状を取り除く。薬剤が、既存の癌細胞の成長を予防したり、及び/又は殺すのであれば、細胞増殖抑止剤及び/又は細胞障害能がありうる。ある態様では、この発明の組成物は、患者又は哺乳動物の疾患又は疾病の発症又は再発を予防するために用いることができる。
ある実施態様では、疾患のタイプ及び重症度に応じて、約1μg/kg〜50mg/kg(例えば0.1〜20mg/kg)の抗体が、例えば一以上の分割投与又は連続注入による患者投与の初期候補用量である。他の実施態様では、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば0.1mg/kg〜10mg/kg)の抗体が、患者投与の初期候補用量である。ある典型的な1日量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg〜約100mg/kg以上の範囲であろう。症状に応じて、数日間以上にわたる繰り返し投与は、所望の疾患症状の抑制が得られるまで持続する。
抗体の例示的な一投薬量は、約0.05mg/kgから約15mg/kgの範囲であろう。よって、約0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6.0mg/kg、7.50mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、9.0mg/kg、10mg/kg又は15mg/kg(又は任意のその組合せ)を患者に投与することができる。このような用量は、間欠的に、例えば毎日、3日ごと、毎週又は2週又は3週ごとに投与してもよい(例えば患者に約2から約20、例えば約6用量の抗体が投与される)。一実施態様では、約10mg/kgの用量が3日毎に投与される。初期のより高い負荷投与量の後、一以上のより低い用量を投与してもよい。一実施態様では、例示的用量療法は、約4mg/kgの初期負荷投与量の後、約2mg/kgの毎週の維持用量抗体を投与することを含む。しかしながら、他の投与計画も有用であり得る。
ある実施態様では、ここで検討した投薬計画は、転移性結腸直腸癌を治療するための第一線療法として、抗VEGF抗体及び/又は化学療法投薬計画と組み合わせて使われる。ある態様では、化学療法投薬計画は、従来の高用量間欠投与が含まれる。幾つかの他の態様では、化学療法剤は、定期的に中断することなく、よりわずかでより頻繁な用量を用いて投与される(「メトロノーム的化学療法」)。
本発明の治療法の経過は、常套的な技術及びアッセイによって容易にモニターされる。
本発明の抗体(及び任意の更なる治療剤又はアジュバント)は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、及び鼻腔内を含む任意の適した手段によって、所望されるならば局所治療、病巣内投与のために投与することができる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。また、抗体は、特に減少用量で、抗体をパルス注入することによって好適に投与される。投薬量は、任意の適した経路、例えば投与が一時的か又は慢性かに部分的に応じて、例えば、静脈内又は皮下注射のような注射によってなされうる。
抗体の結合標的が脳に位置する場合、本発明の特定の実施態様は、血液脳関門を横切る抗体を提供する。血液脳関門を越えて分子を搬送するためには複数の従来技術に既知の手法が存在し、それらには、限定するものではないが、物理的方法、脂質に基づく方法、幹細胞に基づく方法、及びレセプターとチャネルに基づく方法が含まれる。
血液脳関門に抗体を搬送する物理的方法には、限定するものではないが、血液脳関門を完全に包囲すること、又は血液脳関門に開口部を形成することが含まれる。包囲法には、限定するものではないが、脳への直接注入(例えば、Papanastassiou等, Gene Therapy 9: 398-406 (2002))、間質性注入/対流強化送達(例えば、Bobo等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 2076-2080 (1994)参照)、及び脳への送達装置の移植(例えば、Gill等, Nature Med. 9: 589-595 (2003);及びGliadel WafersTM, Guildford Pharmaceutical参照)が含まれる。関門に開口を形成する方法には、限定するものではないが、超音波(例えば、米国特許出願公開第2004/0038086号参照)、浸透圧(例えば、高浸透圧性マンニトールの投与による(Neuwelt, E. A., Implication of the Blood-Brain Barrier and its Manipulation, Vols 1 & 2, Plenum Press, N.Y. (1989)))、例えば、ブラジキニン又はパーミアライザーA-7による透過性化(例えば、米国特許第5112596号、同第5268164号、同第5506206号、及び同第5686416号参照)、及び抗体をコードする遺伝子を含むベクターによる血液脳関門にまたがるニューロンの形質移入(例えば、米国特許出願公開第2003/0083299号)が含まれる。
血液脳関門を越えて抗体を搬送する脂質に基づく方法には、限定されるものではないが、血液脳関門の血液内皮上のレセプターに結合する抗体結合断片に連結されるリポソームに抗体を封入すること(例えば、米国特許出願公開第2002/0025313号参照)、及び低密度リポプロテイン粒子(例えば、米国特許出願公開第2004/0204354号参照)、又はアポリポタンパク質E(例えば、米国特許出願公開第2004/0131692号参照)中の抗体をコーティングすることが含まれる。
血液脳関門を越えて抗体を搬送する幹細胞に基づく方法は、対象の抗体を発現するように神経前駆細胞(NPC)を遺伝的に操作し、次いで、治療する個体の脳に幹細胞を移植することを伴う。詳細なオンライン文献であるBehrstock等 (2005) Gene Ther. 15 Dec. 2005(神経栄養因子GDNFを発現するように遺伝子操作したNPCが齧歯類及び霊長類のモデルの脳に移植した場合にパーキンソン病の症状を低減したことを報告している)を参照。
血液脳関門を越えて抗体を搬送するレセプター及びチャネルに基づく方法には、限定するものではないが、グリココルチコイド遮断薬を用いて血液脳関門の透過性を増大させること(例えば、米国特許出願公開第2002/0065259号、同第2003/0162695号、及び同第2005/0124533号参照)、カリウムチャネルを活性化させること(例えば、米国特許出願公開第2005/0089473号参照)、ABC薬の搬送を抑制すること(例えば、米国特許出願公開第2003/0073713号参照)、抗体をトランスフェリンでコーティングし、一以上のトランスフェリンレセプターの活性を調節すること(例えば、米国特許出願公開第2003/0129186号参照)、及び抗体のカチオン化(例えば、米国特許第5004697号参照)が含まれる。
本発明の抗体を含有する薬学的製剤は、所望の純度を持つ抗体と、任意成分の生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤を混合することにより(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20版(2000))、水溶液製剤、凍結乾燥又は他の乾燥製剤の形態に調製されて保存される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、ヒスチジン及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
また活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリー系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20版(2000)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
徐放性調合物を調製してもよい。徐放性調合物の好ましい例は、本発明の免疫グロブリンを含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは、分子を100日以上かけて放出することを可能にするが、ある種のヒドロゲルはタンパク質をより短い時間で放出する。カプセル化された抗体が体内に長時間残ると、37℃の水分に暴露された結果として変性又は凝集し、生物活性を喪失させ免疫原性を変化させるおそれがある。合理的な戦略を、関与するメカニズムに応じて安定化のために案出することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合の形成であることが見いだされた場合、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含有量を制御し、適当な添加剤を使用し、また特定のポリマーマトリクス組成物を開発することによって達成されうる。
方法
本発明は、リンパ管新生及び血管新生に関与するプロセスの調節(例えば阻害する)、及び癌等のリンパ管新生及び血管新生に伴う病態を標的とすることにおける使用のための、方法、キット及び製造品を更に提供する。癌との関連における抗血管新生療法は、腫瘍増殖を補助するために栄養を提供するのに必要な腫瘍血管の形成を阻害することを目的とする癌治療ストラテジーである。血管新生は、原発腫瘍増殖及び転移双方に関与するため、本発明によって提供される抗血管新生治療は、原発部位で腫瘍の新生物性増殖を阻害、並びに二次部位での腫瘍の転移を防止することが可能であり、これにより他の療法による腫瘍の攻撃を可能にする。
従って、発明は、VEGF-C受容体(VEGFR3及びVEGFR2等)のVEGF-C活性化を阻害するために、有効量のVEGF-Cアンタゴニスト(抗VEGF-C抗体又はVEGF-Cイムノアドヘシン等)を使用して血管新生を阻害する方法を包含する。別の態様では、本発明は、かかる治療が必要な被験体に有効量のVEGF-Cアンタゴニストを投与することを含んでなる、リンパ管形成を阻害する方法を提供する。幾つかの実施態様では、VEGF-Cアンタゴニストは、LEC内皮細胞遊走、増殖及び/又はLEC出芽を阻害することが可能である。他の実施態様では、本発明は、かかる治療が必要な被験体に有効量のVEGF-Cアンタゴニスト及びVEGF-Aアンタゴニストを投与することを含んでなる、LEC内皮細胞増殖を阻害する及び/又はLEC内皮細胞遊走を阻害する方法を提供する。一実施態様では、VEGF-Cアンタゴニストは抗VEGF-C抗体であり、VEGF-Aアンタゴニストは抗VEGF-A抗体である。更に別の実施態様では、抗VEGF-A抗体はベバシズマブである。
治療方法
本発明の抗体は、例えばインビトロ、エキソビボ、及びインビボの治療方法で使用することができる。
一態様では、本発明は、有効量の抗VEGF-C抗体を、治療を必要とする患者に投与することを含む、腫瘍、癌、及び/又は細胞増殖性疾患(例えば、VEGF-Cの発現及び/又は活性の増加に関連した疾患)を治療又は予防する方法を提供する。
一態様では、本発明は、腫瘍又は癌の増殖を減少させ、阻害し、ブロックし、又は予防する方法であって、有効量の抗VEGF-C抗体をかかる治療を必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。
一態様では、本発明は、有効量の抗VEGF-C抗体を、治療を必要とする患者に投与することを含む血管新生を阻害するための方法を提供する。
一態様では、本発明は有効量の抗VEGF-C抗体を、治療を必要とする患者に投与することを含む、血管新生に関連する病理状態を治療するための方法を提供する。あす実施態様では、血管新生に関連する病理状態は、腫瘍、癌、及び/又は細胞増殖性疾患である。
本発明の抗体は治療目的でヒトに投与することができる。一実施態様では、本発明の抗体は、VEGF-Cの発現及び/又は活性の増加に関連した疾患に罹患している個体においてVEGF-Cを結合させる方法に使用され、該方法は、個体中のVEGF-Cが結合するように個体に抗体を投与することを含む。一実施態様では、VEGF-CはヒトVEGF-Cであり、個体はヒト個体である。あるいは、個体は、本発明の抗体が結合するVEGF-Cを発現する哺乳動物でありうる。また更に、個体はVEGF-Cが導入された(例えばVEGF-Cの投与により、又はVEGF-Cをコードする導入遺伝子の発現により)哺乳動物でありうる。
一態様では、本発明の抗体の少なくとも幾つかはヒト以外の種由来のVEGF-Cに結合しうる。従って、本発明の抗体は、ヒト患者又は本発明の抗体が交差反応する抗原を有する他の哺乳動物患者(例えば、チンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザル、及びアカゲザル、ブタ又はマウス)において、例えば抗原を含む細胞培養において特異的抗癌活性を結合させるために使用できる。一実施態様では、本発明の抗体は、抗原活性が阻害されるように抗原に抗体を接触させることによって抗原活性を阻害するために使用することができる。好ましくは、抗原はヒトタンパク質分子である。
更に、本発明の抗体は、獣医目的又はヒト疾患の動物モデルとして、抗体が交差反応するVEGF-Cを発現する非ヒト哺乳動物(例えば、霊長類、ブタ、ラット、又はマウス)に投与できる。後者に関して、かかる動物モデルは本発明の抗体の治療的効能(例えば、投薬量及び投与の時間過程の試験)を評価するために有用でありうる。
本発明の抗体は、一又は複数の抗原分子の発現及び/又は活性に関連した疾病、疾患又は症状を治療し、阻害し、その進行を遅らせ、その再発を予防/遅延させ、寛解し、又は予防するために使用することができる。
本発明はまた、腫瘍リンパ管形成の防止及び治療、腫瘍転移の予防及び治療及び抗血管新生癌療法、腫瘍増殖を支援するための栄養分を提供するために必要とされる腫瘍血管の発生を阻害することを狙った新規な癌治療方策を包含する。
本発明は特に原発部位での腫瘍の新生物増殖の阻害、並びに続発部位での腫瘍の転移の予防及び/又は治療を含み、よって他の治療薬による腫瘍の攻撃を可能にする。治療される(予防を含む)癌の例には、限定するものではないが「定義」の下ここに提供される癌、例えば癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、限定するものではないが、扁平細胞癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、消化管間質性癌を含む胃(gastric)又は腹部(stomach)癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌及び癌腫、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子由来黒色腫、末端黒子型黒色腫、結節性黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫(低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中級/濾胞性NHL;中級びまん性NHL;高級免疫芽細胞性NHL;高級リンパ芽球性NHL;高級小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;外套細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに母斑症に関連した異常な血管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍に関連したもの)、メイグス症候群、脳、並びに頭頸部癌及び関連した転移が含まれる。ある実施態様では、本発明の抗体による治療に受け入れられる癌には、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞癌、、グリオブラストーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫、頭頸部癌、卵巣癌、 中皮腫、及び多発性骨髄腫が含まれる。ある実施態様では、癌は小細胞肺癌、グリオブラストーマ、神経芽細胞腫、黒色腫、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、及び肝細胞癌からなる群から選択される。また、ある実施態様では、癌は、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、腎癌、卵巣癌、グリオブラストーマ、及び乳癌で、これら癌の転移型を含むものからなる群から選択される。
本発明は非腫瘍性状態を防止及び/又は治療することを具体的には更に含む。本発明で有用なアンタゴニストによる治療に反応する非腫瘍性状態には、例えば、望ましくない又は異常な肥大、関節炎、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬のプラーク、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化、アテローム硬化性プラーク、心筋梗塞からの浮腫、糖尿病および他の増殖性網膜症、例えば未熟児の網膜症、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、年齢関連性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、角膜血管新生、角膜移植片血管新生、角膜移植片拒絶、網膜/脈絡叢血管新生、アングルの血管新生(ルベオーシス)、眼性新生血管疾患、血管性再狭窄、動静脈奇形(AVM)、髄膜腫、血管腫、血管線維腫、甲状腺の過形成(グレイブス疾患を含む)、角膜及び他の組織移植、慢性炎症、肺炎症、急性の肺損傷/ARDS、敗血症、原発性肺高血圧症、悪性の肺滲出、大脳浮腫(例えば急性の脳卒中/非開放性頭部損傷/外傷と関係する)、滑液炎症、RAのパンヌス形成、骨化性筋炎、肥大性骨形成、骨関節炎(OA)、抵抗性腹水、多嚢胞性卵巣疾患、子宮内膜症、サードスペースの体液疾患(膵炎、区画症候群、熱傷、腸疾患)、子宮類線維腫、早産、IBDのような慢性炎症(クローン病および潰瘍性大腸炎)、腎臓同種異系移植片拒絶反応、炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群、望ましくない又は異常な組織塊増殖(非癌性)、肥満、脂肪組織質量増殖、血友病関節、肥大した瘢痕、体毛成長の阻害、オスラーウェバー症候群、化膿肉芽腫水晶体後線維増殖症、強皮症、トラコーマ、血管性接着、関節滑膜炎、皮膚炎、子癇前症、腹水、心嚢貯留液(心外膜炎と関係するものなど)および胸水が含まれるがこれらに限定されるものではない。
VEGF-Cアンタゴニスト(抗VEGF-C抗体等)で治療される疾患の更なる例は、上皮性又は心障害を含む。
ここに記載される治療法は、抗VEGF-C抗体の代わりに又はに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを使用して実行されうる。ある実施態様では、それが結合する免疫コンジュゲート及び/又は抗原は細胞によってインターナライズされ、それが結合する標的細胞を死滅させる細胞傷害剤の治療効果を増大させる。一実施態様では、細胞傷害剤が標的細胞における核酸を標的とし又はそれに干渉する。一実施態様では、細胞傷害剤は微小管重合を標的とし又はそれに干渉する。そのような細胞傷害剤の例には、ここに記載された化学療法剤(例えばメイタンシノイド、オーリスタチン、ドラスタチン、又はカリケアマイシン)、放射性同位元素、又はリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼの何れかが含まれる。
併用療法
本発明の抗体は単独で又は治療において他の組成物との併用で使用することができる。ある実施態様では、本発明の抗体は少なくとも一つの更なる治療薬及び/又はアジュバントと共投与されうる。例えば、本発明の抗VEGF-C抗体は、他の抗体(例えば、抗VEGF抗体)、化学療法剤(化学療法剤のカクテル剤を含む)、他の細胞傷害剤、抗血管新生剤、サイトカイン、及び/又は増殖阻害剤と同時投与されうる。
本発明の抗体が腫瘍増殖を阻害する場合、腫瘍増殖をまた阻害する一又は複数の治療剤、例えば抗血管新生剤及び/又は化学療法剤とそれを組み合わせることが特に望ましい。典型的には、抗VEGF-C抗体及び抗癌剤は、同じ又は類似の疾患に適し、腫瘍、癌又は細胞増殖性障害等の病理学的障害を遮断又は低減する。一実施態様では、抗VEGF-C抗体は、様々な腫瘍性又は非腫瘍性状態を治療するために、抗癌治療又は抗新血管形成治療と組み合わせて使用されうる。あるいは、又は加えて、抗VEGF-C抗体はVEGF-Cの他の阻害剤と併用して使用されうる。一実施態様では、腫瘍性又は非腫瘍性状態とは、異常な又は所望されない血管新生に伴う病理学的障害によって特徴付けられる。別の実施態様では、抗癌剤は抗血管新生剤である。
多くの抗血管新生剤及び化学療法剤が同定され、当分野において知られている。考えられる抗血管新生剤及び化学療法剤の例示的及び非限定的なリストは、「定義」の下ここに提供される。例えば、Carmeliet and Jain, Nature 407:249-257 (2000); Ferrara等, Nature Reviews:Drug Discovery, 3:391-400 (2004); and Sato Int. J. Clin. Oncol., 8:200-206 (2003)及び米国特許公開第US20030055006号を参照のこと。
ある実施態様では、本発明の抗VEGF-C抗体は、付加又は相乗効果を生じさせるために抗VEGF抗体と併用して使用される。一実施態様では、ここに記載される同じ又は二以上のことなる抗原に結合する二以上の抗体が、患者に同時投与されてもよい。別の実施態様では、抗VEGF抗体は、抗hVEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するものを含む。また別の実施態様では、抗VEGF抗体は、ベバシズマブ又はラニビズマブである。場合によっては、患者に一又は複数のサイトカインを投与することも有益でありうる。
一実施態様では、VEGF-Cアンタゴニストは、抗VEGF中和抗体(又は断片)等の抗血管新生剤、及び/又は別のVEGFアンタゴニスト、及び/又はVEGF受容体アンタゴニストと併用され、限定するものではないが、例えば可溶性VEGF受容体(例えばVEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、ニューロピリン(例えばNRP1、NRP2))断片、VEGF又はVEGFRを遮断可能なアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼ(RTK)の低分子量インヒビター、VEGFに対するアンチセンスストラテジー、VEGF又はVEGF受容体に対するリボザイム、VEGFのアンタゴニスト変異体;及びその任意の組合せを含む。一実施態様では、抗血管新生剤はVEGFアンタゴニストである。更に別の実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。更に別の実施態様では、抗VEGF抗体はベバシズマブ(AVASTIN(登録商標), Genentech, Inc., South San Francisco, CA)である。別の実施態様では、抗VEGF抗体は、米国特許公開番号2009/0142343に記載されるB20-4.1.1である。更に別の実施態様では、抗血管新生剤は、PCT公開番号WO2007056470に記載される抗NRP1抗体であり、その全開示を出典明記によりここに援用する。更に別の実施態様では、抗血管新生剤は、PCT出願番号PCT/US2007/069179に記載される抗NRP2抗体であり、その全開示を出典明記によりここに援用する。更に別の実施態様では、抗血管新生剤は、PCT出願番号PCT/US2007/069185に記載される抗体であり、その全開示を出典明記によりここに援用する。
ある実施態様では、本発明の抗VEGF抗体は、VEGFレセプター、FGFレセプター、EGFレセプター及びPDGFレセプターなどの一又は複数のチロシンキナーゼレセプターを標的とする小分子レセプターチロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)と組み合わせて使用されうる。多くの治療用小分子RTKIが当該分野で知られており、限定するものではないが、バタラニブ(vatalanib)(PTK787)、エルロチニブ(erlotinib)(TARCEVA(登録商標))、OSI-7904、ZD6474(ZACTIMA(登録商標))、ZD6126(ANG453)、ZD1839、スニチニブ(sunitinib)(SUTENT(登録商標))、セマキサニブ(semaxanib)(SU5416)、AMG706、AG013736、イマチニブ(Imatinib)(GLEEVEC(登録商標))、MLN-518、CEP-701、PKC-412、ラパチニブ(Lapatinib)(GSK572016)、VELCADE(登録商標)、AZD2171、ソラフェニブ(sorafenib)(NEXAVAR(登録商標))、XL880及びCHIR-265が含まれる。本発明の抗体を用いた併用腫瘍治療に対して有用な他の治療剤には、EGFR、ErbB2(またHer2としても知られている)、ErbB3、ErbB4、又はTNFのような、腫瘍増殖に関与する他の因子のアンタゴニストが含まれる。
ある実施態様では、VEGF-Cアンタゴニスト及び他の薬剤に加えて、二以上の血管新生阻害剤が場合によっては患者に同時投与されうる。一実施態様では、一又は複数の更なる治療剤、例えば、抗癌剤が、VEGF-Cアンタゴニスト、VEGFアンタゴニスト、及び抗血管新生剤と併用されて投与されうる。
本発明のある態様では、抗VEGF-C抗体との併用腫瘍療法に有用な他の治療剤は他の癌療法を含み、例えば手術及び放射線治療(例えば、体外照射療法又は抗体等の放射性標識薬剤を用いた療法)である。一実施態様では、患者は放射線療法と組み合わせて本発明の抗体を受けうる。
VEGF-Cアンタゴニスト及び他の治療剤(例えば抗癌剤、抗血管新生剤)の投与は同時に実施されてもよく、例えば単一組成物として、又は二以上の異なる組成物として、同じ又は異なる投与経路を使用して投与される。あるいは又は加えて、投与は、任意の順で順次行われてもよい。例えば、抗癌剤が最初に、次にVEGF-Cアンタゴニストが投与されうる。あるいは又は加えて、工程は、任意の順において、順次及び同時双方の組合せとして実施されてもよい。ある実施態様では、2以上の組成物の投与の間には、数分から数日、数週間、数ヶ月の範囲の間隔が存在してもよい。
VEGF-Cアンタゴニストとの併用で投与される治療剤の有効量は、医師又は獣医の裁量による。投薬量の管理及び調節が、治療される症状の最大の管理を達成するためになされる。用量はまた使用される治療剤のタイプ及び治療される特定の患者のような因子に依存する。抗癌剤の適切な用量は現在使用されているものであり、抗癌剤とVEGF-Cアンタゴニストの併用作用(相乗効果)のために低減させることができる。ある実施態様では、阻害剤の併用は単一の阻害剤の効能を増強する。「増強する」なる用語は、その通用の又は承認された用量での治療剤の効果の改善を意味する。またここで薬学的製剤及び投薬量と題したセクションを参照のこと。
化学療法剤
一態様では、本発明は、有効量のVEGF-Cのアンタゴニスト抗体及び/又は血管新生阻害剤及び一又は複数の化学療法剤を投与することにより疾患(例えば腫瘍、癌又は細胞増殖性疾患)を治療する方法を提供する。様々な化学療法剤を本発明の併用治療法において使用することができる。考えられる化学療法剤の例示的な非限定的リストは「定義」の元でここに提供される。VEGF-Cアンタゴニスト及び化学療法剤の投与は、例えば単一組成物として、又は同じ又は異なった投与経路を使用して二以上の区別される組成物として、同時になすことができる。あるいは、又は加えて、投与は、任意の順序で連続的に行うことができる。あるいは、又は加えて、工程は、任意の順序での、連続的と同時の組合せで実施することができる。ある実施態様では、分から日数、週から月の範囲の間隔が、二以上の組成物の投与間に存在しうる。例えば、化学療法剤を最初に、VEGF-Cアンタゴニストをその後に投与することができる。しかしながら、同時投与又は最初のVEGF-Cアンタゴニストの投与もまた考えられる。従って、一態様では、本発明は、VEGF-Cアンタゴニスト(例えば抗VEGF-C抗体)の投与の後に化学療法剤の投与を含む方法を提供する。ある実施態様では、分から日数、週から月の範囲の間隔が、二以上の組成物の投与間に存在しうる。
当業者によって理解されるように、化学療法剤の適切な用量は、化学療法剤が単独で又は他の化学療法剤との併用で投与される臨床治療において既に用いられているものと略同量である。投薬量における変動は治療される症状に応じて生じる可能性がある。治療を管理する医師が個々の患者に対して適した用量を決定することができるであろう。
再発腫瘍増殖
本発明はまた再発腫瘍増殖又は再発癌細胞増殖を阻害し又は予防するための方法及び組成物を提供する。再発腫瘍増殖又は再発癌細胞増殖は、一又は複数の現在利用可能な治療法(例えば、癌療法、例えば化学療法、放射線療法、外科手術、ホルモン療法及び/又は生物学的療法/免疫療法、抗VEGF抗体療法、特に特定の癌に対する標準的な治療計画)を受けるか又はそれで治療される患者が、患者を治療するのに臨床的に十分ではないか、又は患者が有益な効果をもはや受けずこれらの患者が更なる効果的な治療を必要とする症状を記載するために使用される。ここで使用される場合、該語句は、例えば、治療に応答するが、副作用を被る、耐性を発現する、治療に応答しない、治療には満足に応答しない等の患者を記述する「非反応性/難治性」の患者の症状をまた意味する。様々な実施態様では、癌は、癌細胞の数が有意には減少しないか、又は増加したか、又は腫瘍サイズが有意には減少しないか、又は増加し、又は癌細胞のサイズ又は数において更なる低減に失敗した再発腫瘍増殖又は再発癌細胞増殖である。癌細胞が再発腫瘍増殖か又は再発癌細胞増殖であるかどうかの決定は、「再発」又は「難治性」又は「非反応性」の当該分野で受け入れられている意味を使用して、癌細胞についての治療効果をアッセイするための当該分野で知られている任意の方法によってインビボ又はインビトロの何れかで行うことができる。抗VEGF治療に対して耐性の腫瘍は再発腫瘍増殖の例である。
本発明は、一又は複数のVEGF-Cアンタゴニストを投与して患者においてブロックし又は減少させることにより、患者における再発腫瘍増殖又は再発癌細胞増殖をブロックし又は減少させるために方法を提供する。ある実施態様では、アンタゴニストは癌治療に続いて投与されうる。ある実施態様では、VEGF-Cアンタゴニストは癌治療と同時に投与される。あるいは、又は加えて、VEGF-Cアンタゴニスト体療法は、他の癌療法と交互になされ、これは任意の順で実施されうる。本発明は癌になりやすい患者における癌の発症又は再発を防止するために一又は複数の阻害抗体を投与するための方法をまた包含する。一般に、患者は癌療法を同時に受けたか受けている。一実施態様では、癌療法は、抗血管新生剤、例えばVEGFアンタゴニストでの治療である。抗血管新生剤には、当該分野で知られているものとここでの「定義」の元に見出されるものが含まれる。一実施態様では、抗血管新生剤は抗VEGF中和抗体又は断片(例えば、ヒト化A4.6.1,AVASTIN(登録商標)(Genentech, South San Francisco, CA)、Y0317、M4、G6、B20、2C3等)である。例えば、米国特許第6582959号、第6884879号、第6703020号;国際公開第98/45332号;国際公開第96/30046号;国際公開第94/10202号;欧州特許第0666868B1号;米国特許出願公開第20030206899号、第20030190317号、第20030203409号、及び第20050112126号;Popkov等, Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004);及び国際公開第2005012359号を参照のこと。更なる薬剤は、再発腫瘍増殖又は再発癌細胞増殖をブロックし又は減少させるために更なる薬剤をVEGFアンタゴニスト及びVEGF-Cアンタゴニストとの併用で投与することができ、例えば、ここで併用療法と題された項を参照のこと。
診断方法及び検出方法
一態様では、本発明はVEGF-Cの発現増加に関係した疾患を診断する方法を提供する。ある実施態様では、該方法は、試験細胞を抗VEGF-C抗体に接触させ;VEGF-Cに対する抗VEGF-C抗体の結合を検出することによって試験細胞によるVEGF-Cの発現レベルを決定(定量的にか定性的に)し;試験細胞によるVEGF-Cの発現レベルをコントロール細胞(例えば、試験細胞と同じ組織由来の正常細胞又はそのような正常細胞に匹敵するレベルでVEGF-Cを発現する細胞)によるVEGF-Cの発現レベルと比較することを含み、コントロール細胞と比較した試験細胞によるVEGF-Cのより高い発現レベルがVEGF-Cの発現増加に関係した疾患の存在を示している。ある実施態様では、試験細胞は、VEGF-Cの発現増加に関係した疾患を有することが疑われる個体から得られる。ある実施態様では、疾患は腫瘍、癌、及び/又は細胞増殖性疾患である。
本発明の抗体を使用して診断されうる例示的な疾患は、限定するものではないが、「定義」の下ここに提供される疾患、腫瘍及び癌のリストを含む。
別の態様では、本発明は、生物学的試料においてVEGF-Cの存在を検出する方法を提供する。「検出」なる用語は、ここで使用される場合、定量的又は定性的検出を包含する。
ある実施態様では、方法は、VEGFへの抗VEGF-C抗体の結合を可能にする条件下で、生物学的試料を抗VEGF-C抗体と接触させること、及び複合体が抗VEGF-C抗体及びVEGF-C間で形成されているか検出することを含む。幾つかの実施態様では、複合体は、インビボ又はインビトロである。幾つかの実施態様では、複合体は癌細胞を有する。
VEGF-Cについての分析法では、全て、次の試薬の一又は複数を使用する:標識VEGF-Cアナログ、固定化VEGF-Cアナログ、標識抗VEGF-C抗体、固定化抗VEGF-C抗体及び/又は立体コンジュゲート。標識試薬は「トレーサー」としても知られている。
ある実施態様では、抗VEGF-C抗体は検出可能に標識される。利用される標識は、VEGF-Cと抗VEGF-C抗体の結合を妨害しない任意の検出可能な官能性である。標識には、限定されるものではないが、直接検出される標識又は部分(例えば蛍光色素、発色団、電子密度、化学発光剤、及び放射性標識)、並びに例えば酵素反応又は分子相互作用を通して間接的に検出される酵素又はリガンドのような部分が含まれる。標識の例には、限定されるものではないが、放射性同位体32P、14C、125I、3H、及び131I、フルオロフォア、例えば希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシェフェラーゼ、例えばホタルルシェフェラーゼ及び細菌ルシェフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシェフェリン、2,3-ジヒドロフタルジネジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘテロサイクリックオキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼであり、色素前駆体、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカルなどを酸化する過酸化水素を利用する酵素とカップリングさせたものを含む。
これら標識を共有的にタンパク質又はポリペプチドと結合させるために、常套的方法が利用可能である。例えば、カップリング剤、例えばジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス-イミデート、ビス-ジアゾ化ベンジジン等が、上記の蛍光剤、化学発光剤、及び酵素標識で抗体をタグ化するのに利用することが可能である。例えば、米国特許第3940475号(蛍光定量)及び第3645090号(酵素);Hunter等, Nature, 144: 945(1962); David等, Biochemistry, 13: 1014-1021(1974);Pain等, J. Immunol. Methods, 40: 219-230(1981);及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30: 407-412(1982)を参照のこと。ここでの好ましい標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼ及びアルカリフォスファターゼ等の酵素である。抗体への酵素を含むそのような標識のコンジュゲーションは、免疫アッセイ技術において当業者に標準的な操作法である。例えば、O'Sullivan等, "Methods for Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay," Methods in Enzymology, J. J. Langone及びH. Van Vunakis編, 73巻(Academic Press, ニューヨーク, ニューヨーク, 1981), 147-166頁を参照のこと。
ある実施態様では、抗体は不溶性基質に固定される。固定化は、溶液で遊離に存在するあらゆるVEGF-Cから抗VEGF-C抗体を分離することを伴う。これは、常套的には、水不溶性基質又は表面への吸着による(Bennich等, 米国特許第3720760号)か、又は共有結合により(例えば、グルタルアルデヒド架橋を利用して)アッセイ手順前に抗VEGF-C抗体を不溶化するか、あるいは例えば免疫沈降による抗VEGF-C抗体とVEGF-Cの間の複合体の形成後に抗VEGF-C抗体を不溶化することによって、達成される。
抗VEGF-C抗体は、多くのよく知られる検出アッセイ法においてVEGF-Cの検出のために使用されることが可能である。例えば、生物学的試料は、所望の供給源から試料を得て、試料を抗VEGF-C抗体と混合して、抗体に混合物に存在する何れかのVEGF-Cと抗体/VEGF-C複合体を形成させ、混合物に存在する何れかの抗体/VEGF-C複合体を検出することによって、VEGF-Cについて検定されうる。生物学的試料は、特定の試料について適切な当技術分野で知られる方法によって、アッセイに対して調製されうる。試料と抗体を混合する方法、及び抗体/VEGF-C複合体を検出する方法は、使用されるアッセイのタイプに従って選択される。
VEGF-Cへの抗VEGF-C抗体の結合を検出するため使用されるアッセイには、限定するものではないが、当該分野でよく知られている抗原結合アッセイ、例えばウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、競合及び「サンドウイッチ」アッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイ、免疫組織化学(IHC)及び立体阻害アッセイが含まれる。
一実施態様では、試料におけるVEGF-Cの発現は、免疫組織化学及び染色プロトコールを用いて試験しうる。組織切片の免疫組織化学染色は、試料中のタンパク質の存在を評価ないしは検出するための確実な方法であることが示されている。免疫組織学法技術は、抗体を用いて、一般的には発色性又は蛍光性方法によって、インサイツで細胞性抗原を探索して視覚化する。試料の調製では、哺乳動物(典型的にはヒト患者)の組織又は細胞試料を用いることができる。試料の例として、大腸、乳房、前立腺、卵巣、肺、胃、膵臓、リンパ系及び白血球などの癌細胞が含まれるが、これらに限定するものではない。該試料は、限定するものではないが、外科的切除、吸引又は生検を含む当該分野で知られている様々な手順によって得ることができる。組織は新鮮なものでも凍結したものでもよい。一実施態様では、試料は固定され、パラフィンなどに包埋される。組織試料は常套的な方法によって固定(すなわち保存)されうる。当業者であれば、組織学的染色ないしは他の分析に供する試料の目的に応じて固定液の選択をなすことは分かるであろう。また、当業者であれば、組織試料の大きさ及び用いる固定液に応じて固定の長さを決定することも理解するであろう。
IHCは、形態学的染色及び/又は蛍光発光インサイツハイブリダイゼーションなどの付加的な技術と組み合わせて実施されうる。IHCの直接アッセイ及び間接アッセイの2つの一般的な方法が利用できる。第一のアッセイでは、標的抗原(例えばVEGF-C)に対する抗体の結合は、直接的に測定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用を必要とせずに可視化されうる蛍光タグ又は酵素標識一次抗体などの標識された試薬を用いる。典型的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原と結合し、ついで標識された二次抗体が一次抗体と結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートされる場合、抗原を視覚化させるために発色性又は蛍光発生基質が加えられる。二次抗体の中には一次抗体上の異なるエピトープと反応するものもあるので、シグナルの増幅が起こる。典型的には、免疫組織化学に使用する一次及び/又は二次抗体は、検出可能な部分で標識される。
上で検討した試料調製手順以外に、IHC前、IHCの間又はIHC後に組織切片の更なる処置が所望されうる。例えば、クエン酸塩バッファー中で組織サンプルを加熱するなどのエピトープ検索方法が実施されうる(例として、Leong 等 Appl. Immunohistochem. 4(3): 201 (1996)を参照)。
場合によって行うブロック処置の後に、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原と結合するような好適な条件下と十分な時間、組織切片を一次抗体に曝露させる。これを達成するための好適な条件は常套的な実験によって決定できる。試料に対する抗体の結合の度合いは、上で検討した検出可能な標識の何れか一つを用いて決定される。好ましくは、標識は、3,3’-ジアミノベンジジンクロモゲンなどの発色性基質の化学変化を触媒する酵素標識(例えばHRPO)である。好ましくは、酵素標識は、一次抗体に特異的に結合する抗体にコンジュゲートさせる(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)。
このようにして調製される検査材料をマウントし、カバーグラスをかけてもよい。その後、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を行い、当該分野で常套的に使用されている染色強度判定基準を用いることができる。染色強度判定基準は以下の通りに評価されうる:
典型的には、IHCアッセイの約2+以上の染色パターンスコアは診断及び/又は予後を予測するものである。ある実施態様では、約1+以上の染色パターンスコアは診断及び/又は予後を予測するものである。他の実施態様では、約3以上の染色パターンスコアは診断及び/又は予後を予測するものである。腫瘍又は結腸腺腫の細胞及び/又は組織をIHCを用いて試験する場合、一般的に、染色は(試料中に存在しうる間質性又は周辺組織とは対照的に)腫瘍細胞及び/又は組織内で決定され又は評価されることが理解される。
競合アッセイ又はサンドイッチアッセイとして知られている他のアッセイ方法も十分に確立されており、市販の診断法産業において広く使われている。一実施態様では、関心のある抗原上の特定のエピトープに結合する抗体についてスクリーニングするために、常套的なクロスブロッキングアッセイ、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されるものを実施することができる。あるいは、例えばChampe等 (1995) J. Biol. Chem. 270:1388-1394に記載されているようなエピトープマッピングを実施して、抗体が対象とするエピトープに結合するかどうか決定してもよい。また、抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法が、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。2つの抗体は、各々が他方の結合を50%以上ブロックする場合に、同じエピトープに結合すると言われる。
競合アッセイは、限られた数の抗VEGF-C抗体抗原結合部位について試験試料VEGF-Cと競合するトレーサーVEGF-C類似体の能力に依存する。一般的に、抗VEGF-C抗体は、競合の前又は競合の後に不溶化し、ついで抗VEGF-C抗体に結合したトレーサーとVEGF-Cを結合していないトレーサーとVEGF-Cから分離する。この分離は、デカント(結合パートナーが予め不溶化された場合)か、又は遠心分離する(結合パートナーが競合反応の後で沈殿した場合)ことにより達成される。試験試料VEGF-Cの量は、マーカー物質の量で測定される結合トレーサーの量に反比例する。VEGF-Cの既知量による用量反応曲線を作成して、試験結果と比較して、試験試料に存在するVEGF-Cの量を定量的に決定する。検出可能なマーカーとして酵素が用いられる場合、これらのアッセイはELISA系と呼ばれる。
「均質な」アッセイと呼ばれる競合アッセイの他の種類は、相分離を必要としない。ここで、VEGF-Cと酵素とのコンジュゲートが調製され、抗VEGF-C抗体がVEGF-Cに結合する場合に抗VEGF-C抗体の存在により酵素活性が修飾されるように用いられる。この場合、VEGF-C又はその免疫学的に活性な断片が、二官能性有機架橋によって、ペルオキシダーゼなどの酵素にコンジュゲートされる。抗VEGF-C抗体の結合が標識の酵素活性を阻害するか又は強化するために、抗VEGF-C抗体との使用のためにコンジュゲートが選別される。この方法自体は、EMITという名前で広く実施されている。
立体的コンジュゲートは、均質なアッセイの立体障害方法で用いられる。ハプテンに対する抗体は抗VEGF-C抗体と同時にコンジュゲートを結合することが実質的にできないので、これらのコンジュゲートは低分子量のハプテンを小さいVEGF-C断片に共有的に結合させることにより合成される。このアッセイ手順で、試験試料に存在するVEGF-Cが抗VEGF-C抗体を結合し、それによって、抗ハプテンがコンジュゲートを結合でき、その結果、コンジュゲートハプテンの性質の変化、例えばハプテンが蛍光体である場合の蛍光の変化が生じる。
サンドイッチアッセイは、VEGF-C又は抗VEGF-C抗体の測定のために特に有用である。一連のサンドイッチアッセイでは、固定された抗VEGF-C抗体を用いて、試験試料VEGF-Cを吸着し、洗浄によって試験試料を除去し、結合したVEGF-Cを用いて第二の標識した抗VEGF-C抗体を吸着して、結合した材料をついで残留するトレーサーから分離する。結合したトレーサーの量は、試験試料VEGF-Cに正比例する。「同時の」サンドイッチアッセイでは、試験試料は、標識した抗VEGF-Cを加える前には分離されない。一抗体として抗VEGF-Cモノクローナル抗体を、他方の抗体としてポリクローナル抗VEGF-C抗体を用いる一連のサンドイッチアッセイは、試料をVEGF-Cについて試験する際に有用である。
前記のものはVEGF-Cのための単に例示的な検出アッセイである。VEGF-Cの決定のために抗VEGF-C抗体を使用するこれから開発される他の方法もこの範囲内に含められる。
診断又は検出の上記実施態様の何れかは、抗VEGF-C抗体の代わりに又はそれに加えて本発明の免疫コンジュゲートを使用して実施することができる。
製造品
本発明の他の態様では、上記の疾患の治療、予防及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。該製造品は容器と該容器上又は該容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物を具備する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等々が含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成されうる。容器は、症状を治療、予防及び/又は診断するために有効な組成物単独又は他の組成物と組み合わせる組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアル又は静脈内投与溶液バッグでありうる)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は本発明の抗体ないしイムノコンジュゲートである。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が選択された症状の治療に使用されることを示す。更に、製造品は、(a)本発明の抗体ないしイムノコンジュゲートを含有する組成物を中に収容する第一の容器;と(b)更なる細胞障害剤又はそれ以外の治療薬を含有する組成物を中に収容する第二の容器とを含みうる。本発明のこの実施態様における製造品は、組成物を特定の症状の治療に使用することができることを示しているパッケージ挿入物を更に含む。あるいは、もしくは付加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二の(又は第三の)容器を更に具備してもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
前述において、本発明は、特定の実施態様を参照して説明されたが、そのように限定されるものではない。実際、ここに示され記述されたものに加え、本発明の様々な変更が前述から当業者に明瞭となり、添付の請求の範囲に含まれる。明細書中に引用した全ての引用、及びそこに引用される引用を、出典明記により本明細書中に援用する。本出願を通して、請求の範囲を含め、「含んでなる(comprising)」なる用語は、包括的、非限定的移行句として使用され、付加的、非記述要素又は方法工程を除外しない。