JP5814834B2 - 自動車のフードインナパネル用アルミニウム合金板 - Google Patents

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Description

本発明は自動車のフードインナパネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板に関するものである。
本発明で言うアルミニウム合金板とは、冷間圧延後に熱処理(調質処理)された板であって、プレス成形によって自動車のフードインナパネルとされる前のアルミニウム合金板を言う。更に、以下の記載では、アルミニウムをAlとも言う。
近年、自動車事故における歩行者保護が法規化され、歩行者保護性能が自動車用フード(ボンネットとも言う)のレーティングの指標ともされている。一方で、自動車は、エンジシの高出力化により、エンジンが大型化されると共に、多機能化によりエンジンルーム内の部品も増加するため、歩行者保護に必要なフード下のスペースも小さくなってきている。このため、好ましいスポーティなデザインと歩行者保護性能とを両立するためには、小スペースで効率よく衝突エネルギーを吸収できる自動車用フードの開発が重要となる。
自動車用フードへの歩行者の頭部衝突時のエネルギー吸収性能を高めて、歩行者保護性能を向上させるため、特にインナパネルの形状に関する検討が多くなされている(例えば特許文献1参照)。
また、インナパネルに部分的に低強度領域を設けて変形しやすくすることで、エネルギー吸収性能を高めて、歩行者保護性能を向上させる検討もなされている(例えば特許文献2参照)。
一方で、地球環境などへの配慮からの自動車車体の軽量化のために、この自動車パネルとして、フードのパネル材料としても、鋼板等の鉄鋼材料に替えて、成形性や焼付け塗装硬化性に優れた、より軽量なアルミニウム合金材の適用が増加しつつある。
この自動車フードパネルのアウタパネル (外板) やインナパネル(内板)に、薄肉でかつ高強度アルミニウム合金板として、Al−Mg−Si系のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に6000系とも言う) アルミニウム合金板(冷延板)の使用が従来から検討されている。この6000系アルミニウム合金板は、Si、Mgを必須として含み、特に過剰Si型の6000系アルミニウム合金は、これらSi/Mgが質量比で1以上である組成を有し、優れた時効硬化能を有している。このため、プレス成形後のパネルの塗装焼付処理などの比較的低温の人工時効( 硬化) 処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、自動車パネルとしての必要な強度を確保できる焼付け塗装硬化性(以下、ベークハード性=BH性、焼付硬化性とも言う) がある。
また、6000系アルミニウム合金板は、Mg量などの合金量が多い他の5000系アルミニウム合金などに比して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら6000系アルミニウム合金板のスクラップを、アルミニウム合金溶解材 (溶解原料) として再利用する際に、元の6000系アルミニウム合金鋳塊が得やすく、リサイクル性にも優れている。
ただ、これまで、このような自動車フードパネルの素材となる6000系アルミニウム合金板自体に、歩行者の頭部衝突時のエネルギー吸収性能を持たせるような提案は未だ知らない。もし、この6000系アルミニウム合金板自体のエネルギー吸収性能を高めることができれば、前記インナパネルの形状や構造の工夫との相乗効果で、自動車用フードの歩行者の頭部衝突時のエネルギー吸収性能を高め、歩行者保護性能を向上させることが可能となる。
特開2008−24185号公報 特表2010−515619公報
フードパネルなどの自動車パネル用として優れた特性を有する6000系アルミニウム合金板は、周知の通り、これまでも材料の組成や組織の面から歴史的に数多くの提案がなされてきた。
ただ、これらフードパネルなどの自動車パネル用の6000系アルミニウム合金板の従来技術に共通して言えることは、自動車パネル用として必要な前記BH性に優れることを目的として開発されてきた。これは、6000系アルミニウム合金板が、素材として、曲げ加工を含めてプレス成形される際には、板製造後からの室温時効硬化が抑制されて、低耐力(低強度)な特性を保持して、これらの成形性を確保するものである。そして、これら成形後に自動車車体に組み立てられ、塗装焼付処理された際の比較的低温の人工時効( 硬化) 処理時の加熱によって時効硬化して高耐力となるBH特性を合わせ有するものである。
しかし、このような比較的低温の塗装焼付処理時の加熱によって高耐力となっては、強度が高すぎて、歩行者の頭部が衝突した際の反力が大きくなって、頭部に損傷を与え、頭部衝突による衝撃(エネルギー)の吸収性能も大きくならないという問題がある。この結果、6000系アルミニウム合金からなる自動車フードインナパネル自体では、規格化された頭部傷害値(HIC値)を満足できないこととなる。
ただ、単に耐力を低下させただけでは、この頭部傷害値も満足できず、自動車のフードインナパネルとしての他の要求特性である、取り扱い性や成形性なども兼備できない、という問題もある。
このような課題に鑑み、本発明の目的は、歩行者(頭部)衝突時の衝撃吸収性能に優れ、自動車のフードインナパネルとしての他の要求特性も兼備できる、6000系アルミニウム合金板および、このアルミニウム合金板を用いた自動車フードを提供することである。
この目的を達成するために、本発明の自動車フードインナパネル用アルミニウム合金板の要旨は、質量%で、Si:0.4〜1.5%、Mg:0.2〜1.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板であって、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後のこのアルミニウム合金板の特性として、0.2%耐力が80〜160MPaであり、かつ、成形された自動車フードインナパネルとしての任意時間内の平均加速度の2.5乗と発生時間の積の最大値との関係式でFEM解析により与えられる頭部傷害値(HIC値)が1000以下であり、取り扱い性と成形性も兼備したこととする。
本発明で言う前記アルミニウム合金板とは、前記組成のアルミニウム合金鋳塊を、均質化熱処理、熱間圧延、冷間圧延を各々施して冷延板となし、この冷延板を後述する熱処理や冷間加工を施して調質したアルミニウム合金板のことを言う。そして、プレス成形によって自動車のフードインナパネルとされる前(当然ながら自動車車体の塗装焼き付け処理前=人工時効硬化処理前)のアルミニウム合金板のことを言う。
本発明では、自動車フードインナパネル用のアルミニウム合金板として、従来使用されていたか公知の、自動車車体の塗装焼付け処理後(BH後)の強度が高いAl−Mg−Si系アルミニウム合金板ではなく、このBH後の強度(0.2%耐力)が低いAl−Mg−Si系アルミニウム合金板を用いる。
これによって、頭部傷害値(HIC値)が1000以下である特性を、自動車フードインナパネルの素材である、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板に持たせる。この結果、自動車フードインナパネルの形状によらず、あるいは、自動車フードインナパネルの歩行者保護のための形状、構造との相乗効果で、歩行者(頭部)衝突時の衝撃吸収性能を優れさせることが可能となる。
ちなみに、未だ詳細に、その理由を解明してはいないが、機械的特性としての(引張試
験特性としての)前記BH後の強度(0.2%耐力)を低くするだけでは、HIC値が1000以下となるとは限らない。これは、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造履歴や条件の違いなどにより、機械的特性としての(引張試験特性としての)前記BH後の強度(0.2%耐力)が同じレベルであっても、前記頭部傷害値に大きく影響する微細組織の状態などが異なり、前記頭部傷害値が異なることによると推測される。
本発明によれば、歩行者(頭部)衝突時の衝撃吸収性能に優れ、頭部傷害値が低く、取り扱い性や成形性などの自動車のフードインナパネルとしての他の特性も兼備できる、アルミニウム合金板を提供できる。これによって、このアルミニウム合金板を用いた自動車フードを提供することができる。
本発明フードインナパネルの解析構造例を示す説明図である。 図1の解析条件を示す説明図である。 図1、2の解析結果を示す説明図である。 実施例の取り扱い性の評価試験の態様を模式的に示す説明図である。
以下に、本発明の実施の形態につき、要件ごとに具体的に説明する。
自動車フードインナパネル:
Al−Mg−Si系(以下、主として6000系と言う)アルミニウム合金製自動車フードインナパネルの、形状や構造自体は通常の汎用されるものが採用される。例えば、代表的には、後述する図1に例示するビーム型パネルとして、部分的にパネルをトリミング(除去)して軽量化し、車体長手方向や車体幅方向に延在する複数本のビームから構成されるインナパネルでも良い。また、アウタパネルに対向した内壁と、この内壁の外周側にて前記アウタパネル側へ屈曲された縦壁と、この縦壁周囲に亘って前記アウタパネルに対向して延在するフランジとを有する断面ハット状のインナパネルでも良い。更に、最近提案されている波形ビードなどの歩行者保護のために工夫された形状、構造をしていても良い。
本発明で規定する素材6000系アルミニウム合金板は、曲げ加工やトリミングなどを含む、通常のプレス成形によって、自動車フードインナパネルに成形される。そして、このインナパネルは、対向するアウタパネルの周縁部を折り返し、接着樹脂層を介して、インナパネルのフランジ周縁部を挟み込むヘム加工によって一体化され、自動車フードパネルとされる。
自動車フードインナパネルの必要特性:
歩行者保護のための自動車フードインナパネルの必要特性は、頭部傷害値(HIC値)が1000以下とすることである。自動車用フードインナパネルの歩行者保護性能は、周知の通り、一般には、この頭部傷害値(HIC値)により評価され、このHIC値は、後述するFEM解析によって、下式(1)により、任意時間内の平均加速度の2.5乗と発生時間の積の最大値で与えられる。このHIC値が小さいほど、歩行者保護性能が優れている。
ここで、aは頭部重心における3軸合成加速度(単位はG)、t1、t2は0<t1<t2となる時間tでHIC値が最大となる時間で、計算時間(t2−t1)は15msec以下と決められている。
このような自動車フードインナパネルのHIC値を1000以下とするために、この6000系アルミニウム合金製インナパネルの0.2%耐力を80〜160MPaとすることが必要となる。このHIC値には、勿論、インナパネルの形状要因なども大きく影響する。ただ、本発明では、前記した汎用されている自動車フードインナパネル形状の採用を前提としており、このような汎用されている形状や、特別に歩行者保護形状とされた自動車フードインナパネル形状やアウタパネル形状も含めて、自動車フードインナパネルの歩行者保護性能を、これら形状との相乗効果にてより向上させることを目的としている。
通常の自動車フードインナパネルの0.2%耐力が160MPaを越えた高耐力となっては、歩行者の頭部が衝突した際の反力が著しく大きくなる。このため、前記汎用されている自動車フードインナパネル形状や、特別に歩行者保護形状とされた自動車フードインナパネルであっても、衝突条件や自動車フードインナパネル形状によらず、頭部に損傷を与え、頭部衝突による衝撃エネルギーの吸収性能も大きくならない。この結果、前記した歩行者保護形状とされた自動車フードインナパネル形状であっても、衝突条件にもよるが、HIC値を1000以下にできなくなる。
HIC値の解析:
次に、この自動車用フードインナパネルを代表するHIC値を、再現性良く、しかも実際のフードインナパネルのHIC値によく相関するものとして、FEM解析によって、前記式(1)により求める方法を以下に説明する。
ちなみにFEM解析とは、周知の通り、有限要素法(Finite Element Method)の通称であって、微分方程式の近似解を数値的に得る汎用解析方法である。より具体的には、微分方程式が定義された領域を小領域(要素)に分割し、各小領域における微分方程式を比較的単純で共通な補間関数で近似するものである。
図1に解析した自動車フードの形状、構造と歩行者の頭部衝突を模擬した打撃点条件、図2に解析条件を示す。そして、図3に解析した自動車用フードに物体が衝突した場合における打撃子(インパクタ)のストローク(mm)と打撃子の衝突の加速度(=HIC値、mm/s)との関係を示す。
図1は、上側にアウタパネル(アウタと図には表示)、下側にインナパネル(インナと図には表示)の各々斜視図を個別に示した、自動車用フードの分解斜視図である。図1におけるインナパネルは、内側の8箇所がトリミング(除去)されて空間となり、車体長手方向に3本、車体幅方向に1本延在するビームから構成されるビーム型パネルである。ちなみに図1のアウタパネルのデザインは比較的平坦な単一Rで構成して、単純化している。
図1のインナパネルの、図示する車体前部側の部材中央部の○印で示す点が解析の前提となる、歩行者の頭部衝突を模擬した打撃点である。そして、この車体前部側のインナパネル部材中央部上に矩形の平板状に模式する補強部材がストライクリインフォースメント(図ではストライカと表示)であり、この中央部に打撃点がある。
自動車用フードインナパネルを代表するHIC値を解析、評価する際には、この図1で示した、インナパネルの車体前部側に存在するストライクリインフォースメント(ストライカ)上の中央部を打撃点とする。
このフードインナパネルのストライクリインフォースメント上には、図示はしないが、デントリインフォースと呼ばれる補強部材がインナパネルとアウタパネルとの間に設置される。このデントリインフォース直下である車体前部側のインナパネル上に、ロック機構を兼ねたフード支持部品として、前記ストライクリインフォースメントが、通常は車種によらず共通して、図1のように存在する。
自動車用フードインナパネルにおけるこのストライカ部位は、前記補強材によってフードインナパネル(の位置)が拘束されている。このため、他の拘束されないインナパネル部位に比して、歩行者の頭部が衝突する際に、インナパネルの材料強度(0.2%耐力)が歩行者保護性能に及ぼす影響が特に大きい。このため、フードインナパネルを代表するHIC値を解析、評価するためには、このストライクリインフォースメント上の中央部を打撃点として規定することが好ましい。
また、図1のインナパネルの車両後部側の部材の左右両側端部に各々矩形の平板状に2枚模式しているのが、別の補強部材であるヒンジリインフォースメント(図ではヒンジR/Fと表示)である。
歩行者保護性能であるHIC値は、図2に示す世界基準の条件にて、J−NCAP子供衝突条件を対象に、フード前部(前記インナパネル前部)の歩行者頭部(頭部衝突)を模擬した打撃点で評価した。この打撃子(インパクタ)の重量は3.5kg、衝突速度35km、衝突角度は65DEGである。
衝突解析には汎用の動的陽解法ソフトLS−DYNAを用い、インナパネル下の内蔵物(エンジンなど)を考慮した条件で検討を行った。このインナパネル下の内蔵物は、アウタパネル表面を打撃子のストローク方向に移動させて作成した剛体壁で模擬しており、打撃子のストローク方向への移動量を70mmとした。
解析されるHIC値の前提条件:
前記インナパネルの形状や打撃点の位置、あるいは解析条件によって、前記式1により解析されるHIC値は当然変わってくる。したがって、本発明のHIC値規定では、解析結果の再現性を得るために、前記図1、2で示した解析条件を前提とする。すなわち、前記図1、2で示した、インナパネルのビーム型形状、打撃点の位置(図1の車両前部側の部材中央部の○印で示す点)、重量:3.5kg、衝突速度:35km、衝突角度:65DEGとする。
図3に解析結果を示す。この図3において、太い実線が後述する実施例の表2おける比較例25(ベーク後の0.2%耐力が173MPa)、点線が発明例10(ベーク後の0.2%耐力が144MPa)、細い実線が発明例1(ベーク後の0.2%耐力が109MPa)である。すなわち、板厚が1mmの6000系アルミニウム合金板からなる前記図1のインナパネル形状での解析結果である。
ここで、図1の自動車フードアウタパネルや前記補強材は、上記インナパネルの6000系アルミニウム合金板と同じ組成とし、その0.2%耐力は230MPaとした。また、自動車フードアウタパネルの板厚は1mm、ストライクリインフォースメントやヒンジリインフォースメントの板厚は2.0mmとした。
耐力とHIC値との関係:
この図3の解析例から、発明例10(ベーク後の0.2%耐力145MPa)と比較例25(ベーク後の0.2%耐力179MPa)との中間である、本発明で規定する160MPa程度に、頭部傷害値(HIC値)を1000以下に低くできる臨界があることができることが分かる。この事実は、後述する実施例におけるベーク後の0.2%耐力とHIC値との関係を示した図4からも裏付けられる。
この図3において、インナパネルが低耐力となるほど、HIC値を低くすることができるのは、横軸の打撃子のストローク(mm)と、縦軸の衝突加速度(G)との関係から、インナパネルが低耐力となるほど、2次衝突によって発生する衝突加速度(二次ピーク)がより低減されるからである。すなわち、インナパネルが低耐力となるほど、インナパネルがインナパネル下の内蔵物(エンジンなどの剛体)に衝突するタイミングが遅れるので、前記2次衝突によって発生する衝突加速度(二次ピーク)が低くなる。また、インナパネルが低耐力となるほど、インナーパネルが変形するストロークをより増大させ得ることにもよる。これらの結果、インナパネルが低耐力となるほど、HIC値を1000以下に低くすることができる。
このため、自動車フードインナパネルの素材である6000系アルミニウム合金板の、自動車フードインナパネルとしての0.2%耐力、すなわち、このアルミニウム合金板を、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後の0.2%耐力を160MPa以下とする。このHIC値は低いにこしたことはないので、更に0.2%耐力を110MPa以下として、HIC値を900以下に低くすることが好ましい。
この2%予ひずみ与えた後の170℃×20分の人工時効硬化処理なる条件は、自動車フードインナパネルあるいは自動車車体の製造条件を汎用的に模擬している条件である。すなわち、2%の予ひずみは、本発明の6000系アルミニウム合金板の自動車フードインナパネルへのプレス成形の際に加わるひずみ条件を代表している。また、170℃×20分の人工時効硬化処理は、このプレス成形後(自動車フードパネルや車体に組み立てられた後)の塗装焼付け工程条件を代表している。勿論、これらの実際の条件は、規定する条件とは違う場合も多く存在するものの、この既定する条件を満足すれば、条件が多少ちがっても、実際の自動車フードインナパネル製造の多くの場合に汎用的に、歩行者(頭部)衝突時の衝撃吸収性能に優れ、頭部傷害値(HIC値)が低い、自動車のフードインナパネルを製造できる。
但し、自動車フードインナパネルとしては、張り剛性、耐デント性、曲げ剛性、ねじり剛性など、従来からフードインナパネルに求められる基本性能も満足しなければならない。前記張り剛性は、ワックスがけ時や自動車用フードをロックする際に押込む時の弾性変形を抑制するために必要である。具体的な張り剛性は、自動車フードパネルとして接合されるアウタパネルの、ヤング率と板厚、および、アウタパネルとインナパネルの接合位置により決定される。また、前記耐デント性も、飛石などにより残留する塑性変形を抑制するために必要で、前記アウタパネルの耐力と板厚に影響を受ける。更に、前記曲げ剛性は、自動車用フードをロックする際の引込み力と、クッションゴム、ダンパーステイ、シールゴムなどの反力により発生する自動車用フード周縁部の弾性変形を抑制するために必要である。具体的な曲げ剛性は、自動車用フード周縁部のインナパネルおよびレインフォースメントの形状(断面2次モーメント)、ヤング率などに影響される。また、前記ねじり剛性は、自動車用フード周縁部の曲げ剛性と、インナパネル中央部の板厚および形状に影響される。
このため、自動車フードインナパネルとしての、張り剛性、耐デント性、曲げ剛性、ねじり剛性などの基本性能を満足するためには、前記インナパネルの強度以外の形状や構造の要素の工夫で対応可能である。したがって、前記インナパネルの強度を低減しても、自動車フードインナパネルに従来から求められる基本性能を満足することが可能である。また、自動車フードインナパネルの軽量化を前提に前記基本性能を満足するためには、素材である6000系アルミニウム合金板の、あるいは成形された自動車フードインナパネルとしての板厚は0.7mmから2mm程度とする。
一方、あまりに自動車フードインナパネルや素材6000系アルミニウム合金板の耐力が低すぎると、プレス成形の際に、素材アルミニウム合金板を搬送する、プレス機に投入するなどのハンドリング時に変形を誘発する。あるいは成形後の自動車フードインナパネルを、プレス機から取り出す、搬送するなどのハンドリング時にも変形を誘発する。また、プレスライン内のプレス金型、コンベア、ゲージなどとの接触による変形、キズ付きが顕著に生じるため、自動車フードインナパネルとしての品質低下をもたらす恐れもある。また、インナパネルは、成形高さが高い(深い)など、一般的に、平板状のアウタパネルよりも、形状が複雑であり、優れた成形性が求められるが、あまりに耐力が低すぎるとプレス成形性が低下して成形できなくなる可能性もある。
これを防止するためには、自動車フードインナパネルの0.2%耐力の下限を50MPa以上とする。このために、この自動車フードインナパネルの素材である6000系アルミニウム合金板の、自動車フードインナパネルとしての0.2%耐力、すなわち、このアルミニウム合金板を、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後の0.2%耐力を80MPa以上とする。
以上の理由で、歩行者(頭部)衝突時の衝撃吸収性能に優れ、歩行者保護性に優れ、かつ自動車フードインナパネルとしての他の要求特性も満たすために、自動車フードインナパネルの0.2%耐力を80〜160MPaの範囲、好ましくは80〜120MPaの範囲とする。また、素材である6000系アルミニウム合金板の、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後の0.2%耐力を80〜160MPaの範囲、好ましくは80〜120MPaの範囲とする。
引張強さと耐力の差とHIC値との関係:
また、歩行者(頭部)衝突時には自動車フードインナパネルが変形することによって塑性変形が生じる。この塑性変形中にはアルミニウム合金板(インナパネル)の加工硬化を必然的に伴って、強度が高くなる強度変化を生じる。このような加工硬化は、自動車フードインナパネルの歩行者衝突時の衝撃吸収性能(エネルギー吸収性能)を低下させる原因となる。したがって、このような塑性変形に伴う加工硬化を抑制することが、自動車フードインナパネルの歩行者衝突時の衝撃吸収性能を高めるために好ましい。このため、自動車フードインナパネルの引張強さと0.2%耐力との差をできるだけ小さくすることが好ましい。この要因が、引張試験特性としての前記人工時効硬化処理後の強度(0.2%耐力)を低くするだけで、HIC値が1000以下となるとは限らない理由でもある。
したがって、HIC値を1000以下とするために、好ましくは、素材である前記調質処理後のアルミニウム合金板の引張強さと0.2%耐力の差を70MPa以下、より好ましくは50MPa以下とする。ちなみに、この素材である前記調質処理後のアルミニウム合金板の引張強さと0.2%耐力の差(値)は、前記人工時効硬化処理された後には一般的に小さくなる傾向があるが、両者には良い相関が認められることから、素材である前記調質処理後の値で規定する。
なお、素材である前記調質処理後のアルミニウム合金板の引張強さと0.2%耐力の差を70MPa以下、より好ましくは50MPa以下とすれば、自動車フードインナパネルへのプレス成形性も向上する。
自動車フードアウタパネル:
このような特性を持つインナパネルと組み合わされる自動車フードアウタパネルは、鋼板製か、インナパネルと同じアルミニウム合金で、より高強度なアルミニウム合金板製とする。鋼板を自動車フードアウタパネルに用いると、アルミニウム合金インナパネルとの異材接合による、電食(腐食)防止のために、樹脂をパネル間やボルトなどの接合手段や、補強材との間に介在させるなどの絶縁対策が余分に必要となる。また、自動車フード(パネル)のリサイクル(再利用)での選別や分別の手間を考慮すると、鋼板との異材同士の組み合わせよりは、インナパネルと同じアルミニウム合金系が好ましく、より好ましくは、後述する同じ6000系合金組成とする。
但し、インナパネルと同じ6000系アルミニウム合金組成であっても、アウタパネルとして必要な強度、張り剛性、耐デント性、曲げ剛性、ねじり剛性などの基本性能を満足するためには、インナパネル用の6000系アルミニウム合金板よりも高強度であることが必要で、その耐力が160以上であることが好ましい。すなわち、自動車フードアウタパネルとしては、具体的には、質量%で、Si:0.4〜1.5%、Mg:0.2〜1.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるとともに、0.2%耐力が160MPa以上の成形された6000系アルミニウム合金板からなることが好ましい。これを、この組成の素材6000系アルミニウム合金板から言うと、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後の0.2%耐力が160MPa以上であることが好ましい。これら0.2%耐力の上限は特に定めないが、板の製造限界から決まり、概ね280MPa程度である。
このような自動車フードアウタパネルの態様は自動車フードの歩行者保護方法としても好ましい。これら自動車フードアウタパネルの板厚は1mmから2mm程度とする。
補強部材:
自動車フードインナパネルに装着される(取り付けられる)補強材としては、前記図1で示した、ヒンジリインフォースメントとストライクリインフォースメントがあり、自動車フードインナパネルに所望の強度や剛性を持たせるための補強として必須である。また、他にデントリインフォースメントなども選択的に用いられ、本発明でも自動車フードあるいはインナパネルに種々汎用される補強部材の装着を許容する。
ただ、この補強部材も、前記自動車フードアウタパネルと同じ理由で、鋼板との異材同士の組み合わせよりは、インナパネルと同じアルミニウム合金系が好ましく、より好ましくは、後述する同じ6000系合金組成とする。
但し、インナパネルと同じ6000系合金組成であっても、補強部材として必要な強度、剛性などの基本性能を満足するためには、自動車フードインナパネル用の6000系アルミニウム合金板よりも高強度であることが必要で、その耐力が160以上であることが好ましい。すなわち、前記補強部材としては、具体的には、質量%で、Si:0.4〜1.5%、Mg:0.2〜1.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるとともに、0.2%耐力が160MPa以上の成形された6000系アルミニウム合金板からなることが好ましい。これを、この組成の素材6000系アルミニウム合金板から言うと、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後の0.2%耐力が160MPa以上であることが好ましい。これら0.2%耐力の上限は特に定めないが、板の製造限界から決まり、概ね280MPa程度である。
このような補強部材の態様は自動車フードの歩行者保護方法としても好ましい。これら補強部材の板厚は1mmから4mm程度とする。
アルミニウム合金板の組成:
自動車フードインナパネル用の6000系アルミニウム合金板の化学成分組成は、このインナパネルの特性を、0.2%耐力が80〜160MPaとし、かつ、HIC値を1000以下とするための前提条件である。言い換えると、素材である6000系アルミニウム合金板の、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後の0.2%耐力を80〜160MPaの範囲とし、かつ、HIC値を1000以下とするための前提条件である。また、前記調質処理後のアルミニウム合金板や自動車フードインナパネルの引張強さと0.2%耐力との差を70MPa以下、より好ましくは50MPa以下として、前記HIC値とするための前提条件でもある。
このため、自動車フードインナパネル用の6000系アルミニウム合金板の組成は、質量%で、Si:0.4〜1.5%、Mg:0.2〜1.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとする。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
また、この組成は、前記自動車フードアウタパネルや前記補強部材でも、これらの前記強度や剛性の要求特性を得るためにも必要である。すなわち、素材6000系アルミニウム合金板としては、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後の0.2%耐力を160MPa以上とするために必要である。なお、自動車フードのインナパネル、アウタパネル、補強部材亜としての強度の作り分けは、前記組成のうちのSiやMgの含有量を制御するとともに、後述する冷延後の板の熱処理条件(調質処理)によって行う。
本発明では、これらMg、Si以外のその他の元素は基本的には不可避的不純物であり、AA乃至JIS 規格などに沿った各元素レベルの含有量 (許容量) とする。すなわち、資源リサイクルの観点から、本発明でも、合金の溶解原料として、高純度Al地金だけではなく、Mg、Si以外のその他の元素を添加元素(合金元素)として多く含む6000系合金やその他のアルミニウム合金スクラップ材、低純度Al地金などを多量に使用した場合には、下記のような他の元素が必然的に実質量混入される。そして、これらの元素を敢えて低減することは、その精錬自体がコストアップとなり、ある程度含有する許容が必要となる。
このため、本発明では、不可避的不純物として、好ましくは、下記元素を各々以下に規定するAA乃至JIS 規格などに沿った上限量以下の範囲で規制し、その範囲での含有を許容する。具体的には、前記不可避的不純物のうち、Fe:0.5%以下(但し0%を含む)、Zn:0.5%以下(但し0%を含む)、Cu:1.0%以下(但し0%を含む)、Mn:0.5%以下(但し0%を含む)、Cr:0.5%以下(但し0%を含む)、Zr:0.3%以下(但し0%を含む)、Ti:0.1%以下(但し0%を含む)に規制する。
上記6000系アルミニウム合金における、各元素の含有範囲と意義、あるいは許容量について以下に説明する。但し、以下の説明は、必要なHIC値を得るための自動車フードインナパネル用の6000系アルミニウム合金板の場合について主として行う。ちなみに、前記自動車フードアウタパネルや前記補強部材でも、各元素の含有理由や含有量の意義は、低強度やHIC値などの自動車フードインナパネル特有の理由や意義を除き共通する。
Si:0.4〜1.5%
Siは必要強度(耐力)を得る必須の元素である。また、自動車フードインナパネルとしての基本特性を満足するための必須の元素であり、パネルへのプレス成形性に影響する全伸びなどの諸特性を兼備させるための重要元素である。自動車フードインナパネルの諸特性をより満足させるためには、Si/ Mgを質量比で1.0以上とし、SiをMgに対し過剰に含有させた、過剰Si型の6000系アルミニウム合金組成とすることが好ましい。
Si含有量が少なすぎると、Siの絶対量が不足するため、強度が著しく低下し、前記自動車インナパネルに要求される基本特性や全伸びなどの諸特性を兼備することができない。一方、Si含有量が多すぎると、アルミニウム合金板に2%予ひずみ与えた後に170℃×20分の人工時効硬化処理後の0.2%耐力が高くなりすぎて、自動車フードインナパネルとしての必要なHIC値を得るために160MPa以下とすることが難しくなる。また、粗大な晶出物および析出物が形成されて、曲げ加工性や全伸び等が著しく低下する。更に、溶接性も著しく阻害される。したがって、Siは0.4〜1.5%の範囲とする。
Mg:0.2〜1.0%
Mgも、Siとともに、必要強度(耐力)を得る必須の元素である。また、自動車フードインナパネルとしての基本特性を満足するための必須の元素であり、パネルへのプレス成形性に影響する全伸びなどの諸特性を兼備させるための重要元素である。
Mg含有量が少なすぎると、Mgの絶対量が不足するため、強度が著しく低下し、前記自動車インナパネルに要求される基本特性や全伸びなどの諸特性を兼備することができない。一方、Mg含有量が多すぎると、アルミニウム合金板に2%予ひずみ与えた後に170℃×20分の人工時効硬化処理後の0.2%耐力が高くなりすぎて、自動車フードインナパネルとしての必要なHIC値を得るために160MPa以下とすることが難しくなる。また、粗大な晶出物および析出物が形成されて、曲げ加工性や全伸び等が著しく低下する。更に、溶接性も著しく阻害される。したがって、Mgの含有量は0.2〜1.0%の範囲で、Si/ Mgが質量比で1.0以上となるような量とする。
(製造方法)
次ぎに、本発明アルミニウム合金板の製造方法について以下に説明する。本発明アルミニウム合金板は、製造工程自体は常法あるいは公知の方法であり、上記6000系成分組成のアルミニウム合金鋳塊を鋳造後に均質化熱処理し、熱間圧延、冷間圧延が施されて前記した所定の板厚とされる。
但し、必要なHIC値を得るための自動車フードインナパネル用の6000系アルミニウム合金板の場合は、冷間圧延の後には常法と異なる調質処理を施す。通常、6000系アルミニウム合金板では、前記BH性をより高くしようと、通常の溶体化および焼入れ処理や、その後の低温での再加熱処理などの調質処理が施されて製造される。しかし、本発明アルミニウム合金板の製造方法では、このような調質処理はBH性を高めすぎるために施さず、後述する通りの熱処理を施す。
すなわち、本発明で規定する、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後のアルミニウム合金冷延板の特性として、0.2%耐力を80〜160MPaとし、かつ、前記HIC値を1000以下とするために、前記組成のアルミニウム合金鋳塊を、均質化熱処理、熱間圧延、冷間圧延を各々施して冷延板となし、この冷延板を300〜450℃で1〜50時間保持する熱処理を施した後に、更に0.3〜5%の加工率で冷間加工を施すことが、本発明アルミニウム合金板を得るための好ましい製造方法である。
(溶解、鋳造冷却速度)
先ず、溶解、鋳造工程では、上記6000系成分組成範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。ここで、本発明の規定範囲内にクラスタを制御するために、鋳造時の平均冷却速度について、液相線温度から固相線温度までを30℃/分以上と、できるだけ大きく(速く)することが好ましい。
このような、鋳造時の高温領域での温度(冷却速度)制御を行わない場合、この高温領域での冷却速度は必然的に遅くなる。このように高温領域での平均冷却速度が遅くなった場合、この高温領域での温度範囲で粗大に生成する晶出物の量が多くなって、鋳塊の板幅方向,厚さ方向での晶出物のサイズや量のばらつきも大きくなる。
(均質化熱処理)
次いで、前記鋳造されたアルミニウム合金鋳塊に、熱間圧延に先立って、均質化熱処理を施す。この均質化熱処理(均熱処理)は、組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすことを目的とする。この目的を達成する条件であれば特に限定されない。
ただ、均質化熱処理温度は、500℃以上で融点未満、均質化時間は1時間以上の範囲から適宜選択される。この均質化温度が低いと結晶粒内の偏析を十分に無くすことができず、これが破壊の起点として作用するために、伸びフランジ性や曲げ加工性が低下する。この後、直ちに熱間圧延を開始又は、適当な温度まで冷却保持した後に熱間圧延を開始してもよい。
(熱間圧延)
熱間圧延は、圧延する板厚に応じて、鋳塊 (スラブ) の粗圧延工程と、仕上げ圧延工程とから構成される。これら粗圧延工程や仕上げ圧延工程では、リバース式あるいはタンデム式などの圧延機が適宜用いられる。
この際、熱延(粗圧延)開始温度が固相線温度を超える条件では、バーニングが起こるため熱延自体が困難となる。また、熱延開始温度が350℃未満では熱延時の荷重が高くなりすぎ、熱延自体が困難となる。したがって、熱延開始温度は350℃〜固相線温度、更に好ましくは400℃〜固相線温度の範囲とする。
(中間焼鈍)
この熱延板の冷間圧延前あるいは冷間圧延パス間の中間焼鈍は必ずしも必要ではないが、結晶粒の微細化や集合組織の適正化によって、成形性などの特性を更に向上させる為に実施しても良い。この場合は300〜450℃で1〜50時間にて行う。
(冷間圧延)
冷間圧延では、上記熱延板を圧延して、所望の最終板厚の冷延板 (コイルも含む) に製作する。但し、結晶粒をより微細化させるためには、冷間圧延率は60%以上であることが望ましい。
(熱処理)
この冷間圧延後に、本発明で規定する熱処理を行う。これによって、プレス2%予ひずみ与えた後に170℃×20分の人工時効硬化処理後の0.2%耐力を160MPa以下であり、かつ、前記HIC値が1000以下である、自動車フードインナパネル用アルミニウム合金板を得る。更に、前記調質処理後のアルミニウム合金板や、前記人工時効硬化処理後の自動車フードインナパネルの引張強さと0.2%耐力との差を70MPa以下、より好ましくは50MPa以下として、前記HIC値とすることを保障する。
この熱処理は、ケース1として、前記冷延板を300〜450℃の比較的低温で1〜50時間保持する熱処理後に更に0.3〜5%の冷間圧延を施して、自動車フードインナパネルの素材6000系アルミニウム合金板とする。または、ケース2として、前記冷延板を450〜500℃未満の比較的低温で0〜60秒保持する熱処理後を施し、冷間圧延は施さずに、そのまま自動車フードインナパネルの素材6000系アルミニウム合金板とする。
前記ケース1の300〜450℃の熱処理は、焼鈍処理とも言えるが、通常の溶体化処理の温度域(520〜570℃程度)と比較して極端に低温化されている。この条件の熱処理で、アルミニウム合金板を本発明で規定するBH性として、自動車フードインナパネルとして0.2%耐力が160MPa以下の所定の強度レベルに制御する。ケース1の熱処理温度が300℃未満と低すぎると、前記熱処理の効果が得られない。また、450℃を超える高温では前記熱処理の効果が飽和する。
そして、この熱処理(焼鈍)後に冷間加工を施すことで、耐力を50MPa以上とし、前記した素材板の成形性やハンドリング性、あるいは自動車フードインナパネルとしての成形性やハンドリング性、必要強度、剛性などを確保する。しかし、この場合でも前記条件でのベーク後耐力は160MPa以下となるように制御する。冷間加工率が低すぎると耐力が向上せず50MPa未満となる。冷間加工率の増加にともなって耐力は増加するが、冷間加工率が5%を超えると、その後の伸びおよび加工硬化能が劣化し、成形性が低下する。したがって、冷間加工率は0.3〜5%の範囲とする。このような所定の冷間加工率の加工を施すことができれば、冷間圧延、レベラー矯正等の汎用される冷間加工手段が選択可能である。
この冷間加工によって、自動車フードインナパネルの素材6000系アルミニウム合金板の組織中に転位が新たに導入され、歩行者(頭部)衝突時には自動車フードインナパネルの塑性変形に伴う加工硬化を抑制して、歩行者衝突時の衝撃吸収性能(エネルギー吸収性能)を高めることができる。この目安として、自動車フードインナパネルの引張強さと0.2%耐力との差を小さく、70MPa以下、より好ましくは50MPa以下とでき、前記HIC値とすることを保障できる。これが、引張試験特性としての前記BH後の強度(0.2%耐力)を低くするだけでは、HIC値が1000以下となるとは限らない理由でもある。
ケース2の450〜500℃未満の熱処理は、通常の溶体化処理温度よりも低い温度であり、この温度で前記冷延板を0〜60秒保持する熱処理後を施し、冷間圧延は施さずに、そのまま自動車フードインナパネルの素材6000系アルミニウム合金板とする。ケース2の熱処理温度が450℃未満と低すぎると、前記熱処理の効果が得られない。また、500℃以上の高温では、通常の溶体化処理と同じとなり、BH性が高くなりすぎ、塗装焼付け処理後のインナパネルの耐力が高くなりすぎてHIC値が高くなりすぎる。
これらの熱処理後の冷却速度は急冷とし、50℃/秒以上で行うことが望ましい。冷却速度が遅いと、粒界上にSi、Mg2Siなどが析出しやすくなり、プレス成形や曲げ加工時の割れの起点となり易く、これら成形性が低下する。この冷却速度を確保するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段や条件を各々選択して用いる。ただ、このケース2の熱処理は、前記ケース1の熱処理に比して、熱処理後の冷間加工が無く、素材6000系アルミニウム合金板の組織中に、この冷間加工による転位を新たに導入できない。したがって、歩行者(頭部)衝突時に自動車フードインナパネルの塑性変形に伴う加工硬化を抑制する効果が前記ケース1の熱処理に比して低く、目安としての、自動車フードインナパネルの引張強さと0.2%耐力との差も、後述する実施例の通り、相対的に高くなる。
前記自動車フードアウタパネルや前記補強部材の場合には、冷間圧延までは、自動車フードインナパネル用の6000系アルミニウム合金板の場合と同様の製造条件となる。しかし、前記自動車フードアウタパネルや前記補強部材の高強度化を図るために、各元素の十分な固溶量を得たり、結晶粒をより微細化するために、通常通り、520℃以上の溶体化処理温度に所定時間保持する条件で行うことが望ましい。また、成形性やヘム加工性を低下させる粗大な粒界化合物形成を抑制する観点から、焼入れ時の冷却速度は、前記した理由、手段で、50℃/秒以上で行うことが好ましい。そして、室温まで焼入れ冷却した後、1時間以内に冷延板を70〜250℃の温度域に保持する再加熱処理を行うことが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
次に本発明の実施例を説明する。本発明で規定する耐力条件が異なる6000系アルミニウム合金板を前記組成や冷延後の調質処理によってつくり分けて、室温に100日間保持(室温時効)後の機械的な特性およびインナパネルに要求される特性を測定、評価した。このインナパネルに要求される特性とは、ベークした後の0.2%耐力(BH性)や板の取り扱い性(表2では単に取扱性と表示)やプレス成形性である。また、これらベーク後の耐力値からHIC値を求めた。
前記板の耐力の作り分けは、表1に示す組成の6000系アルミニウム合金冷延板の表2に示すように熱処理条件(調質条件)を変えて行った。すなわち、表2に示すように、前記したケース1、2の熱処理のパターンの温度(℃)、時間(時間、h)の条件を種々変えて行った。ケース1の冷延板の熱処理はバッチ炉にて行い、熱処理後に更に冷間圧延を施して、自動車フードインナパネルの素材6000系アルミニウム合金板とした。ケース2の冷延板の熱処理は連続処理炉にて行い、熱処理後の冷間圧延は施さずに、そのまま自動車フードインナパネルの素材6000系アルミニウム合金板とした。
なお、表1中の各元素の含有量の表示において、各元素における数値を「―」としている表示は、その含有量が検出限界以下であることを示す。
アルミニウム合金冷延板の具体的な製造条件は各例とも共通して以下の通りとした。表1に示す各組成のアルミニウム合金鋳塊を、DC鋳造法により共通して溶製した。この際、各例とも共通して、鋳造時の平均冷却速度について、液相線温度から固相線温度までを50℃/分とした。続いて、鋳塊を、各例とも共通して、550℃×5時間均熱処理した後、熱間粗圧延を開始した。そして、各例とも共通して、続く仕上げ圧延にて、厚さ3.5mmまで熱延し、熱間圧延板(コイル)とした。熱間圧延後のアルミニウム合金板を、前記冷間圧延前あるいは冷間圧延パス間の中間焼鈍を実施せず、加工率70%の冷間圧延を行い、各例とも共通して、厚さ1.0mmの冷延板(コイル)とした。
各例とも共通して、この冷延板を室温に100日間保持(室温時効)してから、各々供試板 (ブランク) を切り出し、後述する条件にて機械的な特性を測定、評価した。また、前記室温時効後の各供試板に2%の予ひずみを付与した後に170℃×20分の人工時効硬化処理を施し、このベーク後の0.2%耐力(BH性)、板の取り扱い性、プレス成形性を、インナパネル要求特性として後述する条件にて各々測定、評価した。
また、フードインナパネルを代表するHIC値を解析、評価した。このため、これらのベーク後の耐力値から前記関係式1でFEM解析により与えられる頭部傷害値(HIC値)を、自動車フードアウタパネルや前記補強材の条件を含めて、前記した図1、2で説明した解析条件および解析方法にて、フードインナパネルの前記ストライクリインフォースメント上の中央部を打撃点として求めた。
機械的特性:
各供試板の7日間室温時効後の機械的特性としては、引張強さ(As引張強さ)、0.2%耐力(As耐力)と全伸び(As全伸び)を引張試験により求めた。また、これらの各供試板を各々共通して100日間の室温時効後の前記ベーク後の供試板の0.2%耐力(BH後耐力)も同じ引張試験により求めた。
前記引張試験は、前記各供試板から、各々JISZ2201の5号試験片(25mm×50mmGL×板厚)を採取し、室温にて引張り試験を行った。このときの試験片の引張り方向を圧延方向の直角方向とした。引張り速度は、0.2%耐力までは5mm/分、耐力以降は20mm/分とした。機械的特性測定のN数は5とし、各々平均値で算出した。なお、前記ベークハード後の耐力測定用の試験片への板のプレス成形を模擬した2%の予歪は、この引張試験機により与え、その後前記BH処理を行った。
取り扱い性:
取り扱い性は、板をプレス機に投入する際のハンドリング時を模擬した条件にて行った。すなわち、前記室温時効後の各供試板から500mm×500mmの試験片を切り出し、図4に示すように、上方に先端が向いた直径101.6mmの球状張出しポンチの上方の、ポンチ頂点からの距離が100mmの上方位置に、試験片の中心がくるように水平に保持した。そして、この位置から試験片を略水平に自由落下させてポンチに衝突させ、試験片に永久変形(歪)が生じるかどうかを試験した。3枚の試験片について同様の試験を行い、目視であきらかな永久変形が3枚とも生じたものを×、軽微な永久変形が1枚でも生じたものを△、3枚とも永久変形(歪)が生じていないものを○と評価した。
成形性:
前記供試板の成形性としては、張出し成形性評価のための割れ限界高さ(LDH)を試験した。この試験は、前記供試板を、長さ180mm 、幅110mmの試験片に切り、直径101.6mmの球状張出しパンチを用い、潤滑剤としてR-303Pを用いて、しわ押え圧力200kN、パンチ速度4mm/S で張出し成形し、試験片が割れるときの高さ(mm)を求めた。各サンプルに対して3回の試験を行い、その平均値を採用した。この割れ限界高さが大きい程、張出し成形性に優れていることを意味し、前記図1などの自動車フードインナパネルへの要求される張出し成形性を満足するためには25mm以上であればよい。
表1の合金番号1〜4を用いた表2の番号1〜10の各発明例は、本発明成分組成範囲内で、かつ好ましい条件範囲で製造、熱処理を行なっている。このため、これら各発明例は、表2に示す通り、低耐力でありながら、インナパネルとしての他の要求特性である、取り扱い性、成形性などを満たした上で、HIC値を満たしている。すなわち、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後の特性として、0.2%耐力が80〜160MPaであり、かつ、成形された動車フードインナパネルとしての前記FEM解析により与えられるHIC値が1000以下となっている。
特に、表2の番号1〜6の各発明例は前記ケース1の熱処理、冷間加工を施しており、0.2%耐力が更に110MPa以下と低く、引張強さと0.2%耐力との差も70MPa以下と低く、HIC値を900以下に低くできている。一方、前記ケース2の熱処理を施した、表2の番号7〜10の各発明例は、0.2%耐力が160MPa以下で、HIC値も1000以下ではあるが、発明例1〜6よりも高く、引張強さと0.2%耐力との差も100MPa以上と高くなっている。また、同程度のベーク後耐力である発明例同士を比較した場合(例えば発明例2と5同士あるいは発明例2と6同士など)、引張強さと耐力の差の大きい発明例の方が、この差が小さい発明例よりもHIC値の低減効果が大きいことが分かる。
これに対して、表2の比較例22〜25は、表1の発明合金例2を用いている。しかし、これら各比較例は、表2に示す通り、冷延後の熱処理が好ましい条件を外れている。その結果、比較例25は前記した図3のように、ベーク後の0.2%耐力が173MPaと高すぎ、前記FEM解析により与えられるHIC値が1000を超えている。また、比較例22〜24は0.2%耐力が110MPa以下であり、前記FEM解析により与えられるHIC値が1000以下であるものの、インナパネルとしての他の要求特性を満たしていない。
比較例22は熱処理後の冷延がなく、ベーク前の0.2%耐力が50MPa未満と低すぎ、取り扱い性が低すぎる。
比較例23は熱処理後の冷延率が高すぎ、成形性が低すぎる。
比較例24は熱処理後の冷延がなく、ベーク前の0.2%耐力が50MPa未満と低すぎ、取り扱い性が低すぎる。
比較例25は熱処理温度が高すぎ、通常の溶体化処理と同じとなって、ベーク後の0.2%耐力が高すぎ、前記FEM解析により与えられるHIC値が1000を超えている。
表2の比較例11〜21は、前記冷延後の熱処理条件を含めて好ましい範囲で製造しているものの、表1の合金番号5〜15を用いており、必須元素のMgあるいはSiの含有量が各々本発明範囲を外れているか、あるいは不純物元素量が多すぎる。このため、これら比較例11〜21は、表2に示す通り、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後の特性として、0.2%耐力が100MPa以下となっており、かつ、前記FEM解析により与えられるHIC値が1000以下となっている。しかし、インナパネルとしての他の要求特性である、取り扱い性、成形性などを満たしていない。
比較例11は表1の合金5であり、Siが少なすぎ、ベーク前の0.2%耐力が50MPa未満と低すぎ、取り扱い性が低すぎる。
比較例12は表1の合金6であり、Siが多すぎ、成形性が劣る。
比較例13は表1の合金7であり、Feが多すぎる。
比較例14は表1の合金8であり、Cuが多すぎる。
比較例15は表1の合金9であり、Mnが多すぎる。
このため、これら比較例12〜15は成形性が劣る。
比較例16は表1の合金10であり、Mgが少なすぎ、ベーク前の0.2%耐力が50MPa未満と低すぎ、取り扱い性が低すぎる。
比較例17は表1の合金11であり、Mgが多すぎ、成形性が劣る。
Cuが多すぎる。
比較例18は表1の合金12であり、Crが多すぎる。
比較例19は表1の合金13であり、Znが多すぎる。
比較例20は表1の合金14であり、Zrが多すぎる。
比較例21は表1の合金15であり、Tiが多すぎる。
このため、これら比較例18〜21は成形性が劣る。
したがって、以上の実施例の結果から、本発明で規定する組成、耐力、引張強さと0.2%耐力との差の、HIC値などのインナパネルとしての歩行者保護性と、成形性、取り扱い性などの要求特性を兼備させるための意義が裏付けられる。また、このHIC値を満足するための好ましい製造方法の意義も裏付けられる。
本発明によれば、歩行者(頭部)衝突時の衝撃吸収性能に優れ、自動車のフードインナパネルとしての他の要求特性も兼備できる、6000系アルミニウム合金板を提供できる。更には、このアルミニウム合金板の製造方法、このアルミニウム合金板を用いた自動車フード、歩行者保護方法なども併せて提供できる。この結果、自動車のフードに軽量な6000系アルミニウム合金板の適用を拡大できる。

Claims (3)

  1. 質量%で、Si:0.4〜1.5%、Mg:0.2〜1.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板であって、2%の予ひずみ付与後に170℃×20分の人工時効硬化処理した後のこのアルミニウム合金板の特性として、0.2%耐力が80〜160MPaであり、かつ、成形された自動車フードインナパネルとしての任意時間内の平均加速度の2.5乗と発生時間の積の最大値との関係式でFEM解析により与えられる頭部傷害値(HIC値)が1000以下であり、取り扱い性と成形性も兼備したことを特徴とする自動車フードインナパネル用アルミニウム合金板。
  2. 前記アルミニウム合金板の引張強さと0.2%耐力との差が70MPa以下である請求項1に記載の自動車フードインナパネル用アルミニウム合金板。
  3. 前記不可避的不純物のうち、Fe:0.5%以下(但し0%を含む)、Zn:0.5%以下(但し0%を含む)、Cu:1.0%以下(但し0%を含む)、Mn:0.5%以下(但し0%を含む)、Cr:0.5%以下(但し0%を含む)、Zr:0.3%以下(但し0%を含む)、Ti:0.1%以下(但し0%を含む)に各々規制した請求項1に記載の自動車フードインナパネル用アルミニウム合金板。
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