JP5800180B2 - 日焼けの原因遺伝子 - Google Patents
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Description
ヒトでは、NER機構の欠落は光線過敏症を招くことが知られている。未修復のDNA損傷はRNA転写を妨害し、また、調整された遺伝子発現を妨げ、色素性乾皮症(XP)やコケーン症候群(CS)等で観察されるような、発達異常や全身異常をもたらす。
一方、紫外線感受性症候群(UVSS)は、皮膚の光線過敏症及びしみ・そばかすによって特徴づけられる常染色体性劣性遺伝性皮膚疾患であるが、XPで報告されているような、皮膚がん等の酷い症状は認められない(非特許文献1、及び2)。
臨床的特徴が極めて軽度であるにも関わらず、UVSS由来の線維芽細胞は重度のUV感受性を示し、転写と共役したNER(TC−NER)を欠いている(非特許文献2〜4)。UVSS患者の細胞で見られるUV照射に対するこれらの応答は、TC−NER欠損したCS患者の細胞で見られるものと区別がつかない(非特許文献2〜4)。
UVSSは、臨床的徴候が軽度であるので、積極的な研究が為されておらず、信頼できる報告が極めて限られているのが現状である。従ってUVSSは過小診断されている傾向にある。1994年に初めて二人のUVSS患者が報告され、確固たる根拠を持って報告されたものは世界中で7例のみである。
本願発明は、以下に示す通りである。
[2]紫外線感受性症候群が日焼けである、上記[1]記載の原因遺伝子。
[3]配列番号2のアミノ酸配列からなる、紫外線感受性症候群の原因蛋白質。
[4]配列番号2の1〜163番目のアミノ酸配列を含む、紫外線感受性症候群の原因蛋白質。
[5]KIAA1530に対する抗体またはKIAA1530をコードする塩基配列もしくはその一部を含む核酸を含有してなる、ヌクレオチド除去修復欠損を伴う疾患の診断剤。
[6]ヌクレオチド除去修復欠損を伴う疾患が、紫外線感受性症候群である、上記[5]記載の診断剤。
[7]KIAA1530のVHS領域における変異を検出することを特徴とする、紫外線感受性症候群の検査方法。
[8]KIAA1530を産生する能力を有する細胞における該蛋白質及び/又は遺伝子の発現を、試験化合物の存在下と非存在下で比較することを特徴とする、ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質のスクリーニング方法。
[9]ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質が、紫外線感受性症候群を改善する物質である、上記[8]記載のスクリーニング方法。
[10]ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質が、日焼けを予防または改善する物質である、上記[8]記載のスクリーニング方法。
[11]下記(a)〜(c)の工程を含む、上記[8]〜[10]のいずれか1項に記載の方法:
(a)KIAA1530を産生する能力を有する細胞を試験化合物の存在下および非存在下に培養する工程、
(b)両条件下における該蛋白質をコードするmRNAの量を、本発明の核酸を用いて測定、比較する工程、
(c)試験化合物の存在下での該蛋白質をコードするmRNAの量が、試験化合物非存在下の場合と比較して有意に上昇した場合に、該試験化合物を、ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質として選択する工程。
[12]下記(a)〜(c)の工程を含む、上記[8]〜[10]のいずれか1項に記載の方法:
(a)KIAA1530を産生する能力を有する細胞を試験化合物の存在下および非存在下に培養する工程、
(b)両条件下における該蛋白質の量を、本発明の抗体を用いて測定、比較する工程、
(c)試験化合物の存在下での該蛋白質の量が、試験化合物非存在下の場合と比較して有意に上昇した場合に、該試験化合物を、ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質として選択する工程。
[13]KIAA1530の発現もしくは活性を賦活化する物質を含有してなる、ヌクレオチド除去修復欠損の改善剤。
[14]KIAA1530の発現もしくは活性を賦活化する物質が、下記(a)〜(c)から選ばれる、上記[13]記載の改善剤。
(a)KIAA1530蛋白質
(b)KIAA1530をコードする核酸
(c)KIAA1530に対してアゴニスト活性を示す低分子化合物
[15]ヌクレオチド除去修復欠損が転写と共役したタイプのものである、上記[13]または[14]記載の改善剤。
[16]上記[13]記載の改善剤を含む、ヌクレオチド除去修復欠損を伴う疾患の予防・治療剤。
[17]ヌクレオチド除去修復欠損を伴う疾患が、紫外線感受性症候群である、上記[16]記載の剤。
[18]ヌクレオチド除去修復欠損が、皮膚がんを後発しない、上記[13]記載の剤。
[19]上記[13]記載の改善剤を含む、紫外線防護用の化粧品。
本発明は、日焼けの原因遺伝子をKIAA1530遺伝子であると同定したことに基づく。KIAA1530遺伝子は、ヒトcDNA解析の過程で見出された遺伝子であり(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 202, 99(26): 16899-16903)、染色座4p16に位置し、709アミノ酸(NP_065945)をコードしている。N.muscules(NP_001074570)、E.caballus(XP_001488394)、B.taurus(XP_587703)、X.tropicalis(NP_001107306)、G.gallus(XP_420845)、C.elegans(NP_505012)等がオルソログとして知られている。配列は確認されているもののその機能は未知であり、他の遺伝子との相同性は全くない。
本発明におけるKIAA1530蛋白質は、配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質である。
KIAA1530は、例えば、温血動物(例:ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリ等)の細胞[例:肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例:マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞等]、あるいはそれらの細胞が存在するあらゆる組織もしくは臓器[例えば、脳、脳の各部位(例:嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例:大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織(例:褐色脂肪組織、白色脂肪組織)、骨格筋等]等から単離・精製される蛋白質であってもよい。また、化学合成もしくは無細胞翻訳系で生化学的に合成された蛋白質であってもよいし、あるいは上記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸を導入された形質転換体から産生される組換え蛋白質であってもよい。
本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている(Altschulら, Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Needlemanら, J. Mol. Biol., 48: 444-453 (1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller, CABIOS, 4: 11-17 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれている]、Pearsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらも同様に好ましく用いられ得る。
より好ましくは、配列番号2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号2で表されるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。
UDS活性の測定は、細胞周期に非依存的な微量のDNA合成を検出するもので、現在、UDS量を測定する種々の方法が確立されている。NER活性の評価においては、一般的に、DNA損傷を誘発するために波長254nmの紫外線(UV)照射を行い、ヌクレオチド取り込みレベルの測定のために、DNA損傷を誘導した細胞を放射性チミジン又はヌクレオシドアナログのいずれかの存在下で培養することによって行う。
RRS活性の測定は、NERのうちRNAの転写と共役したDNA修復(TCR)の活性のみを対象とした測定方法である。RRSの測定には、放射性ウリジン等が用いられ、DNA損傷処理後にRNA合成がどの程度回復したかを、液体シンチレーションカウンターを用いたバッチアッセイにより測定することができる。
UDS活性の測定やRRS活性の測定として、上記した従来の測定方法に加え、本発明者らが以前に開発した非放射性核酸を用いた測定方法(特許文献1)を用いることもできる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、蛋白質の活性が保持される限り特に限定されない。
具体的には、本発明の部分ペプチドとして、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列のうち、NER活性に重要と考えられる領域(例えばヒトKIAA1530の場合、配列番号2で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜163で示される、いわゆるVHS領域)を含む部分アミノ酸配列を有するもの等が用いられる。ここで、VHS領域とはVps−27/Hrs/STAMドメインの3D構造と顕著な相同性を有するモチーフを意図する。VHSは、ユビキチン結合及び一般的な細胞内膜輸送に関与していることが近年明らかになった。
本発明の部分ペプチドは、そのサイズに特に制限はないが、好ましくは上記のVHS領域を含む300個以上の部分アミノ酸配列を含むもの、より好ましくは500個以上の部分アミノ酸配列を含むものが挙げられる。該部分アミノ酸配列は一個の連続した部分アミノ酸配列であってもよく、あるいは不連続な複数の部分アミノ酸配列が連結されたものであってもよい。
ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。KIAA1530を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とする蛋白質を製造することができる。
ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の(1)および(2)に記載された方法に従って行われる。
(1) M. BodanszkyおよびM.A. Ondetti, Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York (1966年)
(2) SchroederおよびLuebke, The Peptide, Academic Press, New York (1965年)
上記方法で得られるKIAA1530が遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆にKIAA1530が塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
KIAA1530のエステル体は、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、上記KIAA1530のアミド体の場合と同様にして得ることができる。
KIAA1530またはその部分ペプチドをコードするDNAとしては、ゲノムDNA、温血動物(例:ヒト、ウシ、サル、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ハムスター、トリ等)のあらゆる細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例:マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞等]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例:嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例:大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織(例:褐色脂肪組織、白色脂肪組織)、骨格筋等]由来のcDNA、合成DNA等が挙げられる。
配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAと約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNA等が用いられる。
本明細書における塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
ハイストリンジェントな条件としては、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)中45℃でのハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0.1% SDS中65℃での一回以上の洗浄等が挙げられる。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができる。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例:pBR322、pBR325、pUC12、pUC13);枯草菌由来のプラスミド(例:pUB110、pTP5、pC194);酵母由来プラスミド(例:pSH19、pSH15);昆虫細胞発現プラスミド(例:pFast−Bac);動物細胞発現プラスミド(例:pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);λファージ等のバクテリオファージ;バキュロウイルス等の昆虫ウイルスベクター(例:BmNPV、AcNPV);レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス等の動物ウイルスベクター等が用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
例えば、宿主が動物細胞である場合、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV−TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーター等が用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーター等が好ましい。
宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーター等が好ましい。
宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等が好ましい。
宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が好ましい。
宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター等が好ましい。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列をコードする塩基配列(シグナルコドン)を、KIAA1530またはその部分ペプチドをコードするDNAの5’末端側に付加(またはネイティブなシグナルコドンと置換)してもよい。例えば、宿主がエシェリヒア属菌である場合、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列等が;宿主がバチルス属菌である場合、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列等が;宿主が酵母である場合、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列等が;宿主が動物細胞である場合、インスリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列等がそれぞれ用いられる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞等が用いられる。
エシェリヒア属菌としては、例えば、Escherichia coli K12・DH1、Escherichia coli JM103、Escherichia coli JA221、Escherichia coli HB101、Escherichia coli C600等が用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、Bacillus subtilis MI114、Bacillus subtilis 207-21等が用いられる。
酵母としては、例えば、Saccharomyces cerevisiae AH22、AH22R-、NA87-11A、DKD-5D、20B-12、Schizosaccharomyces pombe NCYC1913、NCYC2036、Pichia pastoris KM71等が用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫等が用いられる。
例えば、KIAA1530またはその部分ペプチドを培養菌体あるいは細胞の細胞質から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解等によって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性蛋白質の粗抽出液を得る方法等が適宜用いられる。該緩衝液は、尿素や塩酸グアニジン等の蛋白質変性剤や、トリトンX−100TM等の界面活性剤を含んでいてもよい。一方、膜画分からKIAA1530またはその部分ペプチドを抽出する場合は、上記と同様に菌体あるいは細胞を破壊した後、低速遠心で細胞デブリスを沈澱除去し、上清を高速遠心して細胞膜含有画分を沈澱させる(必要に応じて密度勾配遠心等により細胞膜画分を精製する)等の方法が用いられる。また、KIAA1530またはその部分ペプチドが菌体(細胞)外に分泌される場合には、培養物から遠心分離またはろ過等により培養上清を分取する等の方法が用いられる。
このようにして得られた可溶性画分、膜画分あるいは培養上清中に含まれるKIAA1530またはその部分ペプチドの単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法等の主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィー等の荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法等の等電点の差を利用する方法;等が用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
なお、形質転換体が産生するKIAA1530またはその部分ペプチドを、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去したりすることもできる。該蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼ等が用いられる。
かくして得られるKIAA1530またはその部分ペプチドの存在は、KIAA1530に対する抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウェスタンブロッティング等により確認することができる。
紫外線感受性症候群の原因遺伝子がKIAA1530遺伝子である、という本発明において得られた知見に基づいて、本発明は、NER欠損を伴う疾患の診断剤を提供する。
具体的には、本発明の診断剤は、KIAA1530に対する抗体、KIAA1530をコードする塩基配列もしくはその一部を含む核酸、またはKIAA1530をコードする塩基配列もしくはその一部に相補的な塩基配列を含む核酸を含有してなる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被験試料および標識化されたKIAA1530とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたKIAA1530の割合を測定することを特徴とする被験試料中のKIAA1530の検出・定量法、および
(ii)被験試料と、担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された別の本発明の抗体とを、同時あるいは連続的に反応させた後、不溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定することを特徴とする被験試料中のKIAA1530の検出・定量法を提供する。
本発明の抗体を用いるKIAA1530の検出・定量法は、特に制限されるべきものではなく、被験試料中の抗原量に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体を化学的または物理的手段により検出し得る方法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
サンドイッチ法によるKIAA1530の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明の抗体は、KIAA1530の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。例えば、上述のように、2次反応で用いられる抗体が、KIAA1530のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体としては、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
例えばKIAA1530が検出されない場合にはKIAA1530欠損であると認定され、UVSSを罹患しているか、あるいは将来罹患する可能性が高いか、さらには日焼けを起こしやすい体質であると判定され得る。
実施例にて後述するが、紫外線感受性症候群におけるTC−NER欠損の回復にはUVSSA遺伝子であるKIAA1530遺伝子のVHS領域が重要であるので、かかる領域に対応するDNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や機能欠損等を診断することがより好ましい。従って、本発明の診断剤において用いる核酸は、かかる部位を検出し得るものであることが好ましく、その設計は配列に基づき適宜行うことができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーション等によりKIAA1530の発現低下が検出された場合は、例えば、KIAA1530の機能不全が関与する疾患に罹患している可能性が高いか、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。KIAA1530の機能不全が関与する疾患としては、例えば、UVSS等が挙げられる。
本発明はまた、KIAA1530を産生する能力を有する細胞における該蛋白質(遺伝子)の発現を、試験化合物の存在下と非存在下で比較することを特徴とする、NER欠損を改善する物質のスクリーニング方法を提供する。
従って、より具体的には、本発明は、
(a)KIAA1530を産生する能力を有する細胞を試験化合物の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該蛋白質をコードするmRNAの量を、本発明の核酸を用いて測定、比較することを特徴とする、NER欠損を改善する物質のスクリーニング方法、および
(b)KIAA1530を産生する能力を有する細胞を試験化合物の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該蛋白質の量を、本発明の抗体を用いて測定、比較することを特徴とする、NER欠損を改善する物質のスクリーニング方法を提供する。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例:マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)から採取した細胞を紫外線又は変異原(好適には紫外線)で処理する。
処理後の細胞等に含まれるKIAA1530 mRNAは、例えば、通常の方法により該細胞等からmRNAを抽出し、例えば、TaqMan PCR等の手法を用いることにより定量することができ、自体公知の手段によりノーザンブロットを行なうことにより解析することもできる。一方、KIAA1530蛋白質量は、ウェスタンブロット解析や以下に詳述する各種イムノアッセイ法を用いて定量することができる。
(ii)KIAA1530またはその部分ペプチドを発現する形質転換体を前述の方法に従って作製し、該形質転換体に含まれるKIAA1530またはその部分ペプチドあるいはそれをコードするmRNAを同様にして定量、解析することができる。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、紫外線や変異原処理を施す一定時間前(30分前ないし24時間前、好ましくは30分前ないし12時間前、より好ましくは1時間前ないし6時間前)もしくは一定時間後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間後)、または紫外線や変異原処理を施すと同時に試験化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間後)、該動物から単離した細胞に含まれるKIAA1530をコードするmRNA量、あるいはKIAA1530蛋白質量を定量、解析することにより、あるいは
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に試験化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後ないし7日後、好ましくは1日後ないし3日後、より好ましくは2日後ないし3日後)、該形質転換体に含まれるKIAA1530をコードするmRNA量、あるいはKIAA1530蛋白質量を定量、解析することにより行うことができる。
(i)本発明の抗体と、被験試料および標識化されたKIAA1530蛋白質とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された蛋白質を検出することにより該試料中のKIAA1530蛋白質を定量する方法、
(ii)被験試料と、担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された別の本発明の抗体とを、同時あるいは連続的に反応させた後、不溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定することにより、該試料中のKIAA1530蛋白質を定量する方法等が挙げられる。
具体的な測定は、前記した本発明の抗体を用いた診断剤と同様にして行うことができる。
紫外線感受性症候群の原因遺伝子がKIAA1530遺伝子である、という本発明において得られた知見に基づいて、本発明は、NER欠損の改善剤を提供する。本発明の改善剤は、KIAA1530の発現もしくは活性を賦活化する物質を含有してなる。
前記siRNAは、KIAA1530の遺伝子発現抑制に使用するため、KIAA1530遺伝子から転写されるmRNAの分解(RNA干渉)を引き起こすようにその塩基配列に基づいて人工的に合成された二本鎖RNA、または当該二本鎖RNAを生体内で供給することのできるベクターをいう。本発明のsiRNAまたはsiRNA発現ベクターを使用することにより、KIAA1530の発現を低下させ、UV感受性を高めることができる。siRNAまたはsiRNA発現ベクターの構築方法については、公知の方法を使用することができる(Ui-Tei K, et al., Nucleic Acids Res. 2004; 32: 936-948 ; Miyagishi M, and Taira K, Nature biotechnology 2002; 20: 497-500)。siRNAの長さは、19〜27bpが好ましく、21〜25bpがより好ましい。
本発明の改善剤は日焼けが主たる症状となるUVSSの原因遺伝子であるKIAA1530の発現もしくは活性を賦活化する物質を含有するので、NER欠損を伴う疾患の予防・治療剤(以下、本発明の医薬とも称する)や日焼けを防ぐ、いわゆる紫外線防護用の化粧品等として提供され得る。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記核酸を単独またはリポソーム等の担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下等に投与してもよい。
1.ヒトでの研究
患者およびコントロール対象のサンプルは機関内での倫理認可を受けて得られたものである(長崎大学ELSI委員会)。
親族関係にない2名のUVSS−A患者(Kps3及びXP24KO)のゲノムDNAを断片化し(150〜200bp)、アダプターをライゲートした。次いで、断片をPCRで増幅し、SureSelect Human All Exon Kit (Agilent Technologies)を用いて濃縮した。捕捉されたゲノム断片についてIllumina GAII sequencerで配列解析した。各サンプルについて、1レーン、75bp pair-end readsで行った。
解読した配列をhg18リファレンスゲノムにMAQソフトウェア(version 0.7.1)(http://maq.sourceforge.net/)を用いてアラインした。一塩基変異(SNVs)及びsmall insertion deletions(indels)をNAQによって同定した。read coverage <8×及びphred-like consensus quality <20を有する全てのベースコールをフィルタリングアウトした。アラインしたデータをdbSNP130、1000 Genomes SNP calls (March 2010)、及び自家データベースと比較して、ANNOVARソフトウェア(http://www.openbioinformatics.org/annovar/)を用いて、新規なSNVs及びindelsを拾い出した。cSNPsにおける注釈は、NCBI及びUCSCデータベースに基づいたものであり、非同義SNPsについてのSIFT予測で補足した。
UVSS−A患者の全ゲノムSNP遺伝子型決定をGenome-Wide Human SNP Array 6.0 (Affymetrix)を用いて行った。遺伝子型データをGenotyping Console 4.0 (Affymetrix)から作成した。ホモ接合性マッピング及びコピー数の解析はPartek Genomics Suite v6.5 (Partek)を用いて行った。同定されたSNPのゲノム位置はヒトゲノム(hg18)に基づいている。
親族関係にない576人のコントロール対象(日本人)についてKIAA1530のエクソン2及びエクソン3のHRMAを行い、UVSS−A患者で同定されたstop-gain SNVである、p.K123X及びp.I31FfsX9のアレル頻度を求めた。HRMAプロファイルをLightCycler 480 Real-Time PCR system (Roche)により回収した。融解曲線はLightCycler 480 Gene Scanning software (Roche)により解析した。
既報に従って行った(特許文献1、非特許文献7参照)。細胞をプラスチック製の96ウェルプレートに播種した。siRNAトランスフェクション又はウイルス感染を行い、48時間後にアッセイを行った。細胞にUV照射(10J/m2、254nm UVC)し、RNA合成回復の為に12時間インキュベートした。RRSレベルは蛍光標識したエチニルウリジン(EU)取り込みアッセイによって測定した。回収した細胞を5−EU(100μM)含有培養液中で2時間インキュベートし、蛍光アジド(Alexa Fluor 488-azide)を用いてEUを検出した。蛍光像とそのデータ処理はIn-Cell-Analyzerシステム(GE)を用いて行った。
既報に従って行った(特許文献1、非特許文献7参照)。細胞をプラスチック製の96ウェルプレートに播種した。siRNAトランスフェクション又はウイルス感染を行い、72時間後にアッセイを行った。UDSレベルは蛍光標識したエチニルデオキシウリジン(EdU)取り込みアッセイによって測定した。細胞にUV照射(20J/m2、254nm UVC)し、4時間インキュベートした。回収した細胞を5−EdU(100μM)含有培養液中で2時間インキュベートし、蛍光アジド(Alexa Fluor 488-azide)を用いてEdUを検出した。蛍光像とそのデータ処理はIn-Cell-Analyzerシステム(GE)を用いて行った。
KIAA1530蛋白質とTC−NER要素との相互作用を調べる為に、V5タグされたKIAA1530cDNA発現プラスミド(野生型、W120A変異体、VHSドメインのトランケーション変異体)で293細胞をトランスフェクトし、次いで24時間インキュベートした。全細胞ライセートをCelLytic Nuclear Extraction Kit (Sigma)を用いて調製した。共免疫沈降を、ウサギ抗V5抗体をコンジュゲートしたアガロースビーズ(MBL)を用いて行った。
全細胞ライセート(CL)及び免疫沈降したサンプル(IP)をSDS−PAGE(5〜20%勾配ゲル)で展開した。展開した蛋白質サンプルをPVDF膜に転写して免疫検出した。
本実施例では以下の抗体を用いた。
・抗KIAA1530抗体(ウサギポリクローナル抗体):ヒトKIAA1530蛋白質のN末端VHSドメインに対する抗体
・抗KIAA1530抗体(マウスポリクローナル抗体):ヒトKIAA1530蛋白質の全長に対する抗体
・抗V5タグ抗体(マウスモノクローナル抗体):1H6(MBL)
・抗V5タグ抗体(ウサギポリクローナル抗体):PM003(MBL)
・抗p89/XPB抗体(マウスモノクローナル抗体):AB3(CRUK)
・抗p89/XPB抗体(ウサギポリクローナル抗体):S−19(Santa Cruz)
・抗XPD抗体(マウスモノクローナル抗体):2F6(CRUK)
・抗p62抗体(マウスモノクローナル抗体):G10(Santa Cruz)
・抗cdk7抗体(マウスモノクローナル抗体):MO1(MBL)
・抗MAT1抗体(ウサギポリクローナル抗体):FL−309(Santa Cruz)
・抗cyclin H抗体(マウスモノクローナル抗体):1B8(Abnova)
・抗CSB抗体(マウスモノクローナル抗体):553C5a(BMR)
・抗XAB2抗体(マウスモノクローナル抗体):5−17(Santa Cruz)
・抗XPG抗体(マウスモノクローナル抗体):8H7(CRUK)
・抗RNAポリメラーゼIIラージサブユニットC末端ドメイン(Ser−2リン酸化)(マウスモノクローナル抗体):H5(Covance)
細胞を100μMのシクロヘキシミド(CHX)を含有する培地中で1時間培養した後、UV照射した。細胞に10J/m2のUVCを照射し、次いで、CHX含有培地中で所定時間インキュベートした。全細胞ライセートを6%SDS−PAGEで展開しPVDF膜に転写した。伸長モードにあるRNAポリメラーゼIIは、H5抗体によって検出した。
本実施例では以下の細胞を用いた。
・48BR及び1BR:正常なヒトの初代線維芽細胞
・Kps2、Kps3、XP24KO、UVSS24TA:UVSS−A患者由来の初代線維芽細胞
・UVS1KO:UVSS/CS−B患者由来の初代線維芽細胞
・CS2AW:CS−A患者由来の初代線維芽細胞
・CS10LO:CS−B患者由来の初代線維芽細胞
・XP15BR:XP−A患者由来の初代線維芽細胞
・293T及び293FT:ヒト胚性腎HEK293T細胞系
特に断りのない限り、いずれの細胞も、10%ウシ胎児血清(FCS、Hyclone)及び抗生物質を補充したDMEM(WAKO)中で維持した。
KIAA1530及びXPAをターゲッティングするsiRNAオリゴ(Nippon EGTにて作製)を準備した。各遺伝子について3つの異なるsiRNAオリゴを設計した。特に断りのない限り、それら3つのsiRNAオリゴの混合物を実験には用いた。siRNAトランスフェクションはX-tremeGENE(Roche)トランスフェクション試薬を用い、マニュアルに従って行った。典型的な実験では、5nMのsiRNAオリゴを懸濁液中でトランスフェクトし、続いて最初のトランスフェクションの24時間後にもう一度トランスフェクトした。最初にsiRNAトランスフェクションをしてから72時間後に実験を行った。ノックダウン効率はウェスタンブロットによって行った。
ヒトKIAA1530cDNAをc末端にV5タグを有したフレームで、pLenti6/V5-D-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、pLenti6/KIAA1530-V5を作成した。同様にしてトランケーション変異体やアミノ酸置換変異体も作成した。レンチウイルスを産生させるには、293FT細胞をpLP1、pLP2及びPLP/VSVGを含有するViraPower Packaging Mix(Invitrogen)とともにKIAA1530プラスミドでリポフェクトアミン2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間でウイルス粒子を回収し、PEG-it Virus Precipitation Solution (System Biosciences)を用いて濃縮した。
親族関係にない2名のUVSS−A患者(Kps3及びXP24KO)の全エクソームの配列決定を、Agilent SureSelect Target Enrichment System及びIllumina GAIIx sequencerを用いて行った(Kps3及びXP24KOの両方において、平均54倍のカバレージを達成し、ターゲット塩基の95%を4回以上測定した)。各患者について6万を超えるSNVs及びIndelsが同定された。さらにフィルタリングを繰り返した結果、新規且つ機能的に顕著なSNVs及びIndelsを見出した。患者間で共通している、潜在的な機能欠損(loss-of-function)を有する12遺伝子を同定した(表1)。
Kps3及びXP24KOで共通している変異体は、dbSNP130、1000 Genomes SNP calls (March 2010)、及び6例(日本人)の自家エクソームデータには存在しなかった。
マッピングを精密化し、適当なフィルタリング方法と組み合わせてアッセンブリすることにより、染色体4p16に位置し、709アミノ酸をコードするKIAA1530(NM_020894)を同定した。かかる遺伝子のUVSSA遺伝子の第一候補としての機能は知られていない。両患者のゲノムはエクソン3にホモ接合c.367A>T変異を有し、中途終止となるp.Lys123Xをもたらした(図1a〜c)。
続いて、本発明者らは、4名のUVSS−A患者全てのKIAA1530遺伝子の全14エクソンについてPCRを用いたキャピラリー内でのサンガー配列決定法を実施した。結果、本発明者らは、さらに、Kps2とKps3の兄弟(姉妹)に同じホモ接合変異を認め、さらにエクソン2に別の新規なホモ接合c.87delGフレームシフト変異を認めた。かかる変異は親族関係にないイスラエル人の患者(UVS24TA)において中途終止となるp.Ile31PhefsX9をもたらした(図1b及びc)。UVS24TAは、UDS活性は正常であるが、生存レベル及びRRS活性は顕著に低下(減少)するという、UVSSの細胞に典型的な表現型を示す。直接的な配列決定又は高分解融解曲線解析(HRMA)によって評価したところ、ヘテロ接合p.Lys123X変異は、576名の親族関係にないコントロール対象のうち、一名に(アレル頻度0.09%)観察された。一方、p.Ile31PhefsX9変異はこれらのコントロール対象からは検出されなかった。Kps2及びKps3の両親には臨床的徴候は認められなかったので、KIAA1530に対するハプロ不全はほとんど問題にならないと考えられる。
KIAA1530遺伝子のゲノム構造及びUVSS−A患者における変異(p.Lys123X、p.Ile31PhefsX9)の位置を図1dに示す。
いずれの患者にも、2つの非同義一塩基多型(SNP)(R391H、rs2276904;P620L、rs77731309)以外のさらなる一塩基変異(SNV)も挿入も欠失(indel)も認められなかった。同定された変異及びエクソンをコードするKIAA1530遺伝子の残りの部分について全ての患者が同型であったので患者のうち何名かは近親結婚の末に生まれたものと推測した。本発明者らは、患者間で共通しているホモ接合領域(ROH)(>1.0Mbps)を同定するために全ゲノムSNP遺伝子型決定を行った。患者のエクソーム配列決定データの同型接合性と合致して、本発明者らは常染色体上に9つの重複するROHを同定し、そのうちの1つにKIAA1530遺伝子座が含まれていた(図1e、表2及び3)。
実施例1の結果はUVSS−A患者におけるKIAA1530遺伝子の停止変異がこの疾患の原因であることを強く示唆している。そこで、さらなる証拠を得るために、UVSS−A患者の細胞、KIAA1530が発現していない正常な細胞、及び異所性にKIAA1530cDNAを発現しているUVSS−A患者の細胞を用いてNER活性を調べた(図2)。
NERには2つのサブパスウェイが存在する。1つはゲノム全体の修復(GGR)であり、ダメージを受けたDNAの除去が比較的遅い工程である。もう1つは、転写共役修復(TCR)であり、活発に転写される遺伝子の転写された鎖上で排他的に排除される迅速な工程である。GGRはNER活性のおよそ90%を占め、非S期の修復DNA合成である「不定期DNA合成(UDS)」の程度を測定することによって評価することができる。XPやCSを併発しているXP(XP/CS)患者の多くはGGRを欠いている。対照的に、UVSS患者とCSのみの患者(CS−A、CS−B)では、GGR活性はほぼ正常であるが、TCRが著しく損なわれている。未修復のDNA損傷はRNAポリメラーゼの進行を妨害するので、DNA損傷後のRNA合成のレベルは低下する。TCR活性は、UV照射後の「RNA合成の回復(RRS)」率により評価することができる。UDS及びRRSを本発明者らが最近開発した迅速且つ非放射性のシステム(特許文献1参照)で測定した。結果、全てのUVSS−A患者の細胞及びRRSを欠いたコントロール対象となるCS患者の細胞では、UV照射後にRRS率の低下が認められ(図2a)、一方UDSレベルはかなり正常に維持されていた(図2b)。そこで、本発明者らは、正常なヒト初代線維芽細胞においてsiRNAを用いたノックダウンによりKIAA1530遺伝子発現の排除効果を調べた。KIAA1530ノックダウン細胞におけるRRSレベルはXPAノックダウン細胞と同程度に低かった(図2c、g)。一方、同じKIAA1530ノックダウン細胞でもUDSレベルの顕著な低減は観察されなかった(図2d)。ノックダウン効率はイムノブロットにより確認した(図2e)。UVSS−A患者の細胞においてKIAA1530cDNAの異所性に発現させると、RRSは正常な状態に戻った(図2f)。正常な細胞、あるいはCS細胞にKIAA1530を発現させてもそれらのRRSレベルに影響はなかった。以上の結果より、KIAA1530がUVSSAであり、UVSS−Aの原因遺伝子であることが示された。
KIAA1530蛋白質の役割を研究するため、まず、KIAA1530のTC−NERファクターとの関連性を調べた。V5−タグされたKIAA1530蛋白質を免疫沈降し、各ファクターとの相互作用をイムノブロットを用いて調べた。KIAA1530は、core−TFIIH複合体の幾つかのサブユニット(XPB、XPD、p62)、CAK複合体の幾つかのサブユニット(cdk7、cyclin H、MAT1)、コケーン症候群タンパク質(CSB)、及びXPA結合蛋白質(XAB2)と相互作用したが、XPGに対しては明確な相互作用は認められなかった(図3a)。UV照射によって相互作用に顕著な変化は生じなかった。以上の結果より、KIAA1530が、TFIIH/CAK複合体と関連した新規なTC−NERファクターであることが示唆された。さらに、免疫沈降物の質量分析によって多機能シャペロン/シャトルタンパク質(該タンパク質はまた、DNA修復の制御においても機能する)であるヌクレオフォスミン23を同定した。
ヒトKIAA1530のアミノ酸配列及びそのオルソログに、他のタンパク質ファミリーとの顕著な相同性はない。KIAA1530ファミリータンパク質に保存されている、機能が不明なドメインDUF2043(IPR018610, EMBL-EBI database)は、KIAA1530タンパク質のC末端に位置している。KIAA1530タンパク質の他の潜在的に機能性を有するモチーフを同定するために、PHYREプログラムを用いて3D構造データベースをスクリーニングすることによって3次元構造予測を行った。VHS(Vps−27、Hrs、and STAM)ドメインの3D構造と顕著な相同性を有する、KIAA1530タンパク質のN末端に位置する143〜163個のアミノ酸のモチーフを同定した。VHSは、ユビキチン結合及び一般的な細胞内膜輸送に関与していることが近年明らかになっている。同様のVHSドメインがRNAポリメラーゼIIラージサブユニットのC末端ドメイン(CTD)にも同定されている。これら2つのドメインのTC−NERにおける重要性を調べるために、トランケーション変異体をUVSS−A細胞に導入し、RRS相補性をアッセイした(図3b)。VHSドメインあるいはDUF2043のいずれかを欠いた切断変異体では、UVSS−A患者由来細胞のRRS活性を回復させることはできなかった(図3c)。次に、ヒト〜線虫で保存されている残基(CLUSTAL Wアラインメントにより予測)を変異させ(図3d)、UVSS−A細胞でRRS欠損を相補できない変異体をスクリーニングした。18ある変異体のうち、W120A及びR157K158R159EEEの2つ(両変異体とも変異位置がVHSドメイン中に存在する)のみが、RRS活性を回復することができなかった。一方、変異位置がDUF2043ドメイン中に存在する変異体や、潜在的な核局在シグナル(NLS)変異体(R376K377AA、R683R684AA、及びK695K696VA)等の他の全ての変異体はRRS活性を回復した(図3e)。これらの知見は、KIAA1530蛋白質のVHSドメインがTC−NER活性に極めて重要であるということを示している。本発明者らは、VHSドメイン変異体(W120A)についてcore−TFIIH構成要素(XPB、XPD)との相互作用における効果を調べた。変異体蛋白質はTFIIHとの相互作用を保持していた。このことは、VHSドメインの機能がTFIIH複合体との相互作用とは異なることを示唆している(図4)。
最近の研究で、コケーン症候群におけるUVSSの原因となる変異が同定された。CSB遺伝子において、2例(UVS1KO及びCS3AM)は、同じホモ接合性の停止変異(c.308C>T)を有していた。この変異により140KDaのCSBタンパク質のN末端付近で幾つかの切断が起こる(p.Arg77X)。このことは、CSB遺伝子における他の変異がより深刻なCSの特徴を引き起こし得るにもかかわらず、CSBタンパク質のヌル変異を有する個体は、UVSSの徴候を有し得ることを示している。CSA遺伝子にホモ接合性変異を有する別の例(c.1083X>X)では、40KDaのCSAタンパク質のC末端にミスセンスの変化(p.Trp361Cys)をもたらす。
これらの知見より、KIAA1530蛋白質の中ほど、あるいはC末端部分で起こる有害なアミノ酸置換、あるいは切断変異がUVSSよりもより深刻な臨床上の徴候を示す疾患を引き起こすかもしれないと考えた。この可能性を確かめる為に、本発明者らは、まだその相補群が割り当てられていない61名のコケーン症候群の患者のKIAA1530遺伝子のコーディングエキソンの配列決定を行った。
総合すれば、これらの結果は、KIAA1530蛋白質における変異がCSの臨床所見をもたらすわけではなさそうであり、CSA/CSB又はXPB/XPD/XPGの機能とは異なる(しかし重複する)機能を暗示している。重要なことは、61名のCS患者由来の細胞をスクリーニングしたところ、CSA遺伝子、CSB遺伝子、あるいはKIAA1530遺伝子に原因変異を有さない患者が5名いたことであり(データ示さず)、このことは、TCRにかかわるさらに1以上の遺伝子がまだ発見されずに残っている可能性を暗示している。
KIAA1530の、NER機構におけるRNAポリメラーゼII(RNApolII)の作用にどのような役割を有するのか調べた。NERの過程で、伸長型のRNApolIIがユビキチン化されることが知られているので、正常な細胞、CS患者由来の細胞、及びUVSS患者由来の細胞におけるUV照射後のRNAポリメラーゼIIの動態を比較した(図3g)。UV照射後は、新しいRNApolII分子が合成されるのを阻害するためにシクロヘキシミドを培地中に添加した。正常細胞とCSBに変異を有するUVSS細胞では、UV照射後、RNApolIIはユビキチン化され、ユビキチン化RNApolIIのバンドが次第に減少した。一方、KIA1530を欠損するUVSS細胞では、ユビキチン化RNApolIIは殆ど検出されず、ユビキチン化されていないRNApolII自体も6時間にわたって次第に減少していった(CS−B細胞ではこのような減少は観察されなかった)。
これらの結果よりKIAA1530は、UV損傷を受けた部位でのRNAポリメラーゼ分子の働きに重要な役割を担っていることが示唆された。
Claims (13)
- KIAA1530を特異的に認識する抗体、KIAA1530をコードする塩基配列もしくはKIAA1530を特異的に認識するその一部、またはそれらに相補的な塩基配列を含む核酸を含有してなる、ヌクレオチド除去修復欠損を伴う疾患の診断剤。
- ヌクレオチド除去修復欠損を伴う疾患が、紫外線感受性症候群である、請求項1記載の診断剤。
- KIAA1530のVHS領域における変異を検出することを特徴とする、紫外線感受性症候群の診断を補助するための検査方法。
- 下記(a)〜(c)の工程を含む、ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質のスクリーニング方法:
(a)KIAA1530を産生する能力を有する細胞を試験化合物の存在下および非存在下に培養する工程、
(b)両条件下における該蛋白質をコードするmRNAの量を、請求項1に記載される核酸を用いて測定、比較する工程、
(c)試験化合物の存在下での該蛋白質をコードするmRNAの量が、試験化合物非存在下の場合と比較して有意に上昇した場合に、該試験化合物を、ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質として選択する工程。 - 下記(a)〜(c)の工程を含む、ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質のスクリーニング方法:
(a)KIAA1530を産生する能力を有する細胞を試験化合物の存在下および非存在下に培養する工程、
(b)両条件下における該蛋白質の量を、請求項1に記載される抗体を用いて測定、比較する工程、
(c)試験化合物の存在下での該蛋白質の量が、試験化合物非存在下の場合と比較して有意に上昇した場合に、該試験化合物を、ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質として選択する工程。 - ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質が、紫外線感受性症候群を改善する物質である、請求項4又は5記載のスクリーニング方法。
- ヌクレオチド除去修復欠損を改善する物質が、日焼けを予防または改善する物質である、請求項4又は5記載のスクリーニング方法。
- KIAA1530の発現もしくは活性を賦活化する物質を含有してなる、ヌクレオチド除去修復欠損の改善剤であって、該物質が、下記(a)〜(b)から選ばれる、改善剤。
(a)KIAA1530蛋白質
(b)KIAA1530をコードする核酸 - ヌクレオチド除去修復欠損が転写と共役したタイプのものである、請求項8記載の改善剤。
- 請求項8記載の改善剤を含む、ヌクレオチド除去修復欠損を伴う疾患の予防・治療剤。
- ヌクレオチド除去修復欠損を伴う疾患が、紫外線感受性症候群である、請求項10記載の剤。
- ヌクレオチド除去修復欠損が、皮膚がんを後発しない、請求項8記載の剤。
- 請求項8記載の改善剤を含む、紫外線防護用の化粧品。
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