JP5796169B2 - 圧電スピーカ - Google Patents
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Description
本発明の第1の実施形態に係る圧電スピーカについて図1乃至図5を参照して説明する。圧電スピーカ1は、圧電振動子2と、圧電振動子2の周囲に設けられ圧電振動子2を保持するプレート3と、プレート3の外周部を支持するフレーム4とを備える。圧電振動子2は、圧電素子よりなる圧電体21と圧電体21より大径で圧電体21の表面に同心状に取り付けられた金属板22とを有する。圧電体21は、例えば、厚みが0.05〜0.1mmのチタン酸ジルコン酸鉛(lead zirconium titanate)である。金属板22は、例えば、厚みが0.05〜0.1mmの42アロイ(ニッケルを42%含む鉄ニッケル系合金)であり、圧電体21と金属板22の厚みは同等にすることが望ましい。圧電体21と金属板22は、例えばエポキシ接着剤によって取り付けられている。圧電体21の表面には、銀電極が設けられリード線(図示せず)が接続されており、電極に信号電圧を加えることにより圧電体21が歪み、その振動を音(空気の振動)として放射する。
f=1/(2π)・(k/m)1/2
によって表される。従って、圧電スピーカ1の共振周波数f0は、プレート3のばね定数をk0、圧電振動子2の質量をm0とすると
f0=1/(2π)・(k0/m0)1/2
によって表される。そして、プレート3のばね定数k0は、プレート3のヤング率をE、プレート3の厚さをh、プレート3の径長さをLとすると、
k0=E・h3/L2/4
によって表される。
f2/f1=L1/L2=7/6
となる。従って、共振周波数f2は共振周波数f1の約1.2倍になり、210Hzや100Hz付近に大きな音圧のピークができている。このような圧電スピーカ1はプレート3の外径を大きくすれば音圧を大きくすることができるが、プレート3の外径が制約されている場合には、上述したように、プレート3のヤング率、厚さ、径長さを変えることによって共振周波数を変え、任意の周波数の領域の音圧を大きくすることができる。
以下、本実施形態の各種変形例について、図9乃至図15を参照して説明する。図9(a)乃至図9(c)は第1の変形例を示す。本変形例においては、蛇腹構造がプレート3のフレーム4近傍位置に設けられている。図10は、蛇腹構造がプレート3の径方向全てにある場合と、フレーム4の近傍のみにある場合の圧電スピーカ1の音圧を示す。この蛇腹構造は、第1の実施形態と同様に、図9(a)に示すように、山部と谷部が交互に構成されてもよいし、図9(b)に示すように、山部だけでもよいし、図9(c)に示すように、谷部だけでもよい。蛇腹構造がフレーム4の近傍のみにある場合には、プレート3の径方向全てにある場合と較べ、高域(3000Hz付近)において音圧がピークになっている範囲が広くなっている。このように、蛇腹構造がプレート3のフレーム4近傍位置に設けられることにより、特に高域での圧電振動子2の振幅が大きくなり、高域の音圧が大きくなる。
図11は第2の変形例を示す。本変形例においては、プレート3は圧電振動子2を保持する部分に段差形状部31を有している。段差形状部31の内径は、圧電振動子2を周囲から嵌合する大きさであり、プレート3は、圧電振動子2を嵌合した状態で圧電振動子2と接着される。このような構成にすることによって、圧電振動子2がプレート3に確実に取り付けられ、また、取り付けられる位置が一定になるので圧電スピーカ1が発する放射音の音圧や共振周波数が安定する。
図12は第3の変形例を示す。本変形例においては、フレーム4はプレート3を支持する部分に断面L字形状部41を有している。断面L字形状部41は、縦方向の断面がL字形状をしており、その部分にプレート3を載置させて嵌合し支持する。L字形状の垂直部分の内径は、プレート3を周囲から嵌合する大きさであり、フレーム4は、プレート3を嵌合した状態でプレート3と接着される。このような構成にすることによって、プレート3がフレーム4に確実に取り付けられ、また、取り付けられる位置が一定になるので圧電スピーカ1が発する放射音の音圧や共振周波数が安定する。
図13は第4の変形例を示す。本変形例においては、フレーム4は第3の変形例の構成に加えて、更にL字形状のプレート3を載置させる一面に切り欠き42を有しており、この切り欠き42に接着剤CがディスペンサDより充填される。塗布された接着剤Cは切り欠き42に堆積し、プレート3が浮き上がることなく貼着することができるので、プレート3がフレーム4に確実に取り付けられ、圧電スピーカ1が発する放射音の音圧や共振周波数が安定する。
図14(a)は、第5の変形例を示す。本変形例では、金属板22及び圧電体21を略円板形状とし、金属板22と圧電体21との半径の比を略10:7としている。図14(b)は、金属板22の直径を一定とし、圧電体21の直径を変えたときの共振周波数の変化を示す。圧電体21と金属板22は円形であり、金属板22の直径は50mmである。圧電体21の直径が35mm付近のときに共振周波数が最も低くなっており、このときの金属板22と圧電体21との半径の比が略10:7になる。金属板22と圧電体21との半径の比は10:6から10:8の間が好ましい。従って、本変形例のような構成にすることにより、圧電スピーカ1の共振周波数が小さくなるので、低域での音圧を大きくすることができる。
図15は第6の変形例を示す。本変形例においては、プレート3は圧電振動子2を覆い、プレート3と圧電振動子2の間に空気層Eを設けている。空気の音響インピーダンスは、金属板22の音響インピーダンスよりはるかに小さい。従って、プレート3によって空気層Eを圧電振動子2の前面に設けることにより、金属板22の音響インピーダンスを緩和することができる。このような構成によって、圧電振動子2が発する放射音を減衰させずに前方へ伝達することができるので、音圧を大きくすることができる。また、特定の周波数で音圧が急激に小さくなるディップを少なくすることができる。
本発明の第2の実施形態に係る圧電スピーカ1について図16(a)乃至(c)を参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態に係る圧電スピーカ1が圧電音響装置5に組み込まれている。以後、圧電スピーカ1を組み込んだ圧電音響装置5について説明する。本実施形態に係る圧電音響装置5は、圧電振動子2、プレート3及びフレーム4を有する圧電スピーカ1と、圧電スピーカ1が発した放射音と共鳴する共鳴器6と、放射音を前方に反射する反射板7と、それらを保持する筐体72とを備えている。フレーム4は、一方が開口した有底の筒体であり、プレート3の周囲を筒体の内壁に設けられた断面L字形状部41で支持し、プレート3と底面との間に後気室81を形成している。共鳴器6は、キャップ形状であって中央に音孔61を有し、フレーム4の開口を覆うように設けられ、プレート3との間に前気室82を形成している。後気室81と前気室82は、圧電振動子2が発する放射音を反響させて音圧を大きくする。反射板7は、外周縁部71が前方に立ち上がっている。
fcav=C/2π×(S/V(l+1.3a))1/2
=C/2π×(4na2/d2h(l+1.3a))1/2
となる。共鳴器6の構成を変えることにより、共鳴器6の共振周波数を調整することができる。図17のデータでは、共鳴器6有りの場合は、無しの場合に較べて、約1000〜4000Hzの範囲で音圧が大きくなっている。第1の実施形態での圧電スピーカ1が組み込まれているので、低域及び高域の音圧は大きいが、更にこのような構成にすることにより、共鳴器6によって任意の周波数の音圧を大きくすることができる。
以下、本実施形態の各種変形例について、図19乃至図23を参照して説明する。図19は第1の変形例を示す。本変形例においては、反射板7の外周縁部71が略エクスポーネンシャルカーブを持って前方に立ち上がった形状を成している。このエクスポーネンシャルカーブの部分では放射音が共鳴し難い。通常、反射板7が略長方形や略楕円形をしていると、反射板7の長手方向と短手方向とでの放射音の指向性が異なるが、上記の構成のように反射板7の外周縁部71を略エクスポーネンシャルカーブにすることによって、放射音が外周縁部で共鳴し難くなり反射板7の長手方向と短手方向とでの放射音の指向性の差を小さくすることができる。このとき、更に、共鳴器6の音孔61を、圧電音響装置5の前後方向において、フレーム4の開口位置と反射板7の外周縁部の上端位置との間に設けることにより、放射音の指向性の差を小さくすることができる。
図20は第2の変形例を示す。本変形例においては、圧電音響装置5は共鳴器6の前方に放射音の指向性を調整する板状のホーンキャップ91を備えている。ホーンキャップ91は共鳴器6の方向に湾曲しており、反射板7に設けられた支柱91aによって支持されている。図21は、ホーンキャップ91を付けたときの放射音の指向性を示す。圧電音響装置5の前方方向を90°、前方方向と垂直な方向を0°としたときの15°、45°及び90°の方向の音圧を示している。このように、ホーンキャップ91を付けることにより放射音の伝達方向が広くなるので、15°と90°の方向の音圧の差が小さくなり、指向性を鈍くすることができる。更に、支柱91aの長さを変えることによって、指向性を変えることができ、短くすると指向性が鈍くなり、長くすると指向性が鋭くなる。
図22は第3の変形例を示す。本変形例においては、圧電音響装置5は反射板7の前面空間と後気室81とを繋ぐダクト92を備え、このダクト92によって圧電音響装置5の共振周波数を調整する。ダクト92は、フレーム4の筒体の側面から反射板7の底面にかけて設けられており、複数設けてもよい。ダクト92は後気室81で反響している放射音を反射板7の前方に放出する。このダクト92の断面積と長さを変えることによってダクト92の共振周波数を変えることができる。ダクト92の共振周波数fdはダクト92の断面積をD、ダクトの長さをL、後気室81の容積をVc、とし、r=(D/π)1/2とすると、
fd=160(D/Vc/(L+r))1/2
となる。
2 圧電振動子
21 圧電体
22 金属板
3 プレート
31 段差形状部
4 フレーム
41 断面L字形状部
42 切り欠き
Claims (8)
- 圧電素子よりなる圧電体と、前記圧電体より大径で該圧電体の表面に同心状に取り付けられた金属板と、を有する圧電振動子と、
前記圧電振動子の周囲に設けられ該圧電振動子を保持するプレートと、
前記プレートの外周部を支持するフレームと、を備えた圧電スピーカにおいて、
前記圧電体と前記金属板とは、それぞれ略円板形状に形成されており、この圧電体と金属板との半径の比を、共振周波数が小さくなり、所望の低域での音圧を大きくするような比としてあり、
前記プレートは、前記圧電振動子を弾性的に保持する薄厚部材であり、PEI(ポリエーテルイミド)又はPEN(ポリエーテルナフタレード)の樹脂フィルムから成り、外周方向に山部又は谷部、若しくはその両方を有する蛇腹構造とされ、当該蛇腹構造は、加熱した金型で成形されていることを特徴とする圧電スピーカ。 - 前記蛇腹構造は、前記プレートのフレーム近傍位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧電スピーカ。
- 前記プレートは、段差形状部を有し、この段差形状部に前記圧電振動子が嵌合されることにより保持されることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の圧電スピーカ。
- 前記フレームは、断面L字形状部を有し、この断面L字形状部に前記プレートが嵌合されることにより支持されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の圧電スピーカ。
- 前記断面L字形状部の一面に切り欠きを有し、この切り欠きに接着剤が充填されることにより前記プレートが接着されていることを特徴とする請求項4に記載の圧電スピーカ。
- 前記金属板と圧電体との半径の比が略10:6から10:8の間となっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧電スピーカ。
- 前記金属板と圧電体との半径の比が略10:7となっていることを特徴とする請求項6に記載の圧電スピーカ。
- 前記プレートは前記圧電振動子を覆い、これらプレートと圧電振動子の間に空気層を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の圧電スピーカ。
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