以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1に示すハイブリッド車両(以下、単に「車両」という)Vは、4つの車輪W(左右の前輪WFL、WFR及び左右の後輪WRL、WRR)を有する四輪車両である。車両Vには、前輪WFL、WFRを駆動するための前輪駆動装置DFSと、後輪WRL、WRRを駆動するための後輪駆動装置DRSが搭載されている。
前輪駆動装置DFSは、例えば、本出願人による特許第5362792号に開示されたものと同じものであるので、以下、その構成及び動作について簡単に説明する。前輪駆動装置DFSは、動力源としての内燃機関(以下「エンジン」という)3と、発電可能な電動機で構成されたフロントモータ4と、エンジン3及びフロントモータ4の動力を変速し、前輪WFL、WFRに伝達する変速装置5を有している。
エンジン3は、例えばガソリンエンジンであり、その吸入空気量、燃料噴射量及び点火時期などを後述するECU2(図3参照)で制御することによって、エンジン3の動力が制御される。
フロントモータ4は、例えばブラシレスDCモータで構成され、ステータ及びロータ(いずれも図示せず)を有している。ステータは、パワードライブユニット(以下「PDU」という)6を介して、充放電可能なバッテリ7に電気的に接続されている。PDU6は、インバータなどの電気回路で構成されており、PDU6をECU2で制御することによって、フロントモータ4の動作が制御される。
具体的には、ECU2によるPDU6の制御により、バッテリ7からフロントモータ4のステータに電力が供給されると、その電力が動力に変換され、ロータが回転する(力行)。また、ステータへの電力供給が停止され、動力の入力によりロータが回転した状態で、その動力が電力に変換され、発電が行われる(回生)。発電した電力は、バッテリ7に充電されるか、又は後輪駆動装置DRSの後述する第1及び第2リヤモータ41、61に供給され、後輪WRL、WRRを駆動するのに用いられる。
また、車両Vには、エアコンのコンプレッサなどから成る補機8と、12Vバッテリ(図示せず)が搭載されており、補機8はPDU6を介して、12VバッテリはDC/DCコンバータ(図示せず)を介して、バッテリ7に電気的に接続されている。
変速装置5は、いわゆるデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)で構成されている。図示しないが、変速装置5は、第1クラッチを介してエンジン3に接続された第1入力軸と、フロントモータ4と第1入力軸の間に配置された遊星歯車装置と、第2クラッチを介してエンジン3に接続された第2入力軸と、第1及び第2入力軸と平行な出力軸と、第1及び第2入力軸に回転自在に設けられた複数の入力ギヤと、出力軸に一体に設けられ、複数の入力ギヤに噛み合う複数の出力ギヤと、複数の入力ギヤの1つを第1又は第2入力軸に選択的に連結し、その入力ギヤとそれに噛み合う出力ギヤによるギヤ段を設定するシンクロ装置などを有している。
以上の構成により、第1及び第2クラッチ及びシンクロ装置などをECU2で制御することにより、第1及び第2クラッチの接続/遮断状態に応じて、エンジン3の動力及び/又はフロントモータ4の動力が第1入力軸に、又はエンジン3の動力が第2入力軸に、選択的に入力される。入力された動力は、シンクロ装置によって設定されたギヤ段による所定の変速比で変速された状態で、出力軸に出力され、さらに、ディファレンシャル9及び左右の前駆動軸SFL、SFRを介して、左右の前輪WFL、WFRに伝達される。
図2に示すように、後輪駆動装置DRSは、第1リヤモータ41、第1遊星歯車装置51、第2リヤモータ61及び第2遊星歯車装置71を有している。これらの構成要素は、左右の後輪WRL、WRRの間に、41、51、71及び61の順に並んで配置され、左右の後駆動軸SRL、SRRと同軸状に設けられている。後駆動軸SRL、SRRの一端部は、それぞれ左右の後輪WRL、WRRに連結されている。
第1リヤモータ41は、フロントモータ4と同様、発電可能な電動機で構成されたブラシレスDCモータであり、ステータ42と、回転自在のロータ43を有している。ステータ42は、ケーシングCAに固定されており、PDU6を介して、フロントモータ4のステータ及びバッテリ7に電気的に接続されている。ロータ43は、中空の回転軸44に一体に設けられ、この回転軸44は、左後駆動軸SRLの外側に相対的に回転自在に設けられている。
第1リヤモータ41では、ECU2によるPDU6の制御により、バッテリ7の電力や、フロントモータ4で発電した電力が、ステータ42に供給されると、その電力が動力に変換され、ロータ43が回転する(力行)。この場合、ロータ43の動力は、ステータ42に供給される電力に応じて制御される。また、ステータ42への電力供給が停止され、動力の入力によりロータ43が回転した状態で、その動力が電力に変換され、発電が行われる(回生)とともに、発電した電力がバッテリ7に充電される。
第1遊星歯車装置51は、第1リヤモータ41の動力を減速し、左後輪WRLに伝達するためのものであり、第1サンギヤ52、第1リングギヤ53、2連ピニオンギヤ54及び第1キャリヤ55を有している。第1サンギヤ52は、上述した回転軸44に一体に設けられており、第1リヤモータ41のロータ43と一体に回転する。第1リングギヤ53は、中空の回転軸81に一体に設けられている。2連ピニオンギヤ54は、第1ピニオンギヤ54a及び第2ピニオンギヤ54bを一体に有しており、その数が3つ(2つのみ図示)である。また、2連ピニオンギヤ54は、第1キャリヤ55に回転自在に支持されており、その第1ピニオンギヤ54aが第1サンギヤ52に、第2ピニオンギヤ54bが第1リングギヤ53に、それぞれ噛み合っている。第1キャリヤ55は、左後駆動軸SRLの他端部に一体に設けられており、それと一体に回転する。
第2リヤモータ61及び第2遊星歯車装置71は、上述した第1リヤモータ41及び第1遊星歯車装置51と同様に構成されているので、以下、その構成について簡単に説明する。第2リヤモータ61及び第2遊星歯車装置71は、後述するワンウェイクラッチ83を中心として、第1リヤモータ41及び第1遊星歯車装置51と対称に配置されている。第2リヤモータ61のステータ62は、ケーシングCAに固定されるとともに、PDU6を介して、フロントモータ4のステータ、バッテリ7及び第1リヤモータ41のステータ42に電気的に接続されている。また、第2リヤモータ61のロータ63は、中空の回転軸64に一体に設けられ、この回転軸64は、右後駆動軸SRRの外側に相対的に回転自在に設けられている。
第2リヤモータ61では、ECU2によるPDU6の制御により、バッテリ7の電力や、フロントモータ4で発電した電力が、ステータ62に供給されると、その電力が動力に変換され、ロータ63が回転する(力行)。この場合、ロータ63の動力は、ステータ62に供給される電力に応じて制御される。また、ステータ62への電力供給が停止され、動力の入力によりロータ63が回転した状態で、その動力が電力に変換され、発電が行われる(回生)とともに、発電した電力がバッテリ7に充電される。
第2遊星歯車装置71は、第2リヤモータ61の動力を減速し、右後輪WRRに伝達するためのものであり、第2サンギヤ72、第2リングギヤ73、2連ピニオンギヤ74及び第2キャリヤ75を有している。第2サンギヤ72、第2リングギヤ73及び2連ピニオンギヤ74の歯数は、第1サンギヤ52、第1リングギヤ53及び2連ピニオンギヤ54の歯数とそれぞれ同じに設定されている。
第2サンギヤ72は、上述した回転軸64に一体に設けられており、第2リヤモータ61のロータ63と一体に回転する。第2リングギヤ73は、中空の回転軸82に一体に設けられている。回転軸82は、前述した回転軸81と若干の隙間を存した状態で軸線方向に対向している。2連ピニオンギヤ74は、第2キャリヤ75に回転自在に支持されており、その第1ピニオンギヤ74aが第2サンギヤ72に、第2ピニオンギヤ74bが第2リングギヤ73に、それぞれ噛み合っている。第2キャリヤ75は、右後駆動軸SRRの他端部に一体に設けられており、それと一体に回転する。
後輪駆動装置DRSはさらに、ワンウェイクラッチ83及び油圧ブレーキ84を有している。ワンウェイクラッチ83は、インナーレース83a及びアウターレース83bを有しており、第1及び第2遊星歯車装置51、71の間に配置されている。なお、図2のスケルトン図では、図示の関係上、インナーレース83aとアウターレース83bは、実際の配置とは内外逆に描かれている。インナーレース83aは、前述した回転軸81、82にスプライン結合されており、それにより、インナーレース83a、回転軸81、82、第1及び第2リングギヤ53、73は、一体に回転する。また、アウターレース83bは、ケーシングCAに固定されている。
以上の構成により、ワンウェイクラッチ83は、回転軸81、82にそれらを逆転させる方向の動力が伝達されたときには、回転軸81、82をケーシングCAに接続することによって、回転軸81、82、第1及び第2リングギヤ53、73の逆転を阻止する一方、回転軸81、82にそれらを正転させる方向の動力が伝達されたときには、回転軸81、82とケーシングCAの間を遮断することによって、回転軸81、82、第1及び第2リングギヤ53、73の正転を許容する。
油圧ブレーキ84は、多板式のクラッチで構成され、ケーシングCA及び回転軸81、82に取り付けられており、第1及び第2遊星歯車装置51、71の径方向外側に配置されている。油圧ブレーキ84は、ECU2で制御されることにより、第1及び第2リングギヤ53、73を制動する制動動作と、第1及び第2リングギヤ53、73の回転を許容する回転許容動作とを、選択的に実行する。油圧ブレーキ84の制動力は、ECU2によって制御される。
また、左右の前駆動軸SFL、SFR及び左右の後駆動軸SRL、SRRには、駆動軸回転数センサ101a〜101dがそれぞれ設けられている(図3参照)。駆動軸回転数センサ101a〜101dは、それぞれの駆動軸の回転数NWFL、NWFR、NWRL及びNWRRを表す検出信号を、ECU2に出力する。ECU2は、これらの検出信号と車輪の径に基づいて、左右の前輪WFL、WFRの速度である左前輪速VFL、右前輪速VFR、及び左右の後輪WRL、WRRの速度である左後輪速VRL、右後輪速VRRを算出するとともに、車両Vの速度(車速)VPを算出する。
さらに、ECU2には、アクセル開度センサ102から、車両Vのアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度APを表す検出信号が、ヨーレートセンサ103から、車両VのヨーレートRYを表す検出信号が入力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAM及びROMなどから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、上述した各種のセンサ101〜103からの検出信号などに応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、車両Vに要求される要求制駆動力を算出し、この要求制駆動力に基づき、前輪駆動装置DFS及び後輪駆動装置DRSの動作モードと各車輪Wに要求される要求トルクを算出する。そして、算出された要求トルクに基づき、エンジン3、フロントモータ4、第1及び第2リヤモータ41、61の各目標トルクを設定し、設定された目標トルクに基づき、これらの構成要素などの動作を制御することによって、各車輪Wを制駆動し、車両Vの動作を制御する。なお、本実施形態では、ECU2が、しきい値設定手段、スリップ判定手段、条件判定手段及び動力調整手段に相当する。
上記の前輪駆動装置DFSの動作モードには、エンジン3のみを車両Vの動力源として用いるENG走行モードと、フロントモータ4のみを動力源として用いるEV走行モードと、エンジン3をフロントモータ4でアシストするアシスト走行モードと、エンジン3の動力の一部を用いてフロントモータ4でバッテリ7を充電する充電走行モードと、車両Vの減速走行中の走行エネルギを用いてフロントモータ4でバッテリ7を充電する減速回生モードなどが含まれる。
また、後輪駆動装置DRSの動作モードには、駆動モード、回生モード及び左右逆駆動モードなどが含まれる。以下、これらの動作モードについて順に説明する。
[駆動モード]
この駆動モードは、車両Vの加速走行中などに、バッテリ7の電力を用いて第1及び第2リヤモータ41、61で力行を行い、それらの動力で左右の後輪WRL、WRRを駆動する動作モードである。この駆動モードでは、第1及び第2リヤモータ41、61の目標トルク(以下、それぞれ「第1目標トルクTRLOBJ」「第2目標トルクTRROBJ」という)が正値に設定される。そして、第1及び第2目標トルクTRLOBJ、TRROBJに応じた電力を第1及び第2リヤモータ41、61に供給し、ロータ43、63を正転させるとともに、油圧ブレーキ84で第1及び第2リングギヤ53、73を制動する。
前述した後輪駆動装置DRSにおける各種の回転要素の間の連結関係から明らかなように、第1サンギヤ52の回転数は、第1リヤモータ41(ロータ43)の回転数と等しく、第1キャリヤ55の回転数は、左後輪WRLの回転数と、第1リングギヤ53の回転数は、第2リングギヤ73の回転数と、それぞれ等しい。また、第2サンギヤ72の回転数は、第2リヤモータ61(ロータ63)の回転数と等しく、第2キャリヤ75の回転数は、右後輪WRRの回転数と等しい。また、周知のように、第1サンギヤ52の回転数、第1キャリヤ55の回転数及び第1リングギヤ53の回転数は、共線図において、1つの直線上に位置する共線関係にあり、第1サンギヤ52及び第1リングギヤ53は、第1キャリヤ55の両側に位置する。以上の関係は、第2サンギヤ72、第2キャリヤ75及び第2リングギヤ73についても、同様に当てはまる。
以上から、各種の回転要素の間の回転数の関係は、図4に示す共線図のように表される。なお、同図および後述する他の共線図では、値0を示す横軸から縦軸上の白丸までの距離が、各回転要素の回転数に相当する。また、図4において、TM1は、力行に伴って発生する第1リヤモータ41の出力トルク(以下「第1リヤモータ力行トルク」という)であり、TM2は、力行に伴って発生する第2リヤモータ61の出力トルク(以下「第2リヤモータ力行トルク」という)である。また、RRLは、左後輪の反力トルクであり、RRRは、右後輪WRRの反力トルク、ROWは、ワンウェイクラッチ83の反力トルクである。
前述したように、ワンウェイクラッチ83は、第1及び第2リングギヤ53、73の逆転を阻止するように構成されている。また、図4から明らかなように、第1リヤモータ力行トルクTM1は、第1サンギヤ52を正転させるとともに、第1リングギヤ53を逆転させるように作用する。以上により、第1リヤモータ力行トルクTM1は、第1リングギヤ53に作用するワンウェイクラッチ83の反力トルクROWを反力とし、第1キャリヤ55及び左後駆動軸SRLを介して、左後輪WRLに伝達され、その結果、左後輪WRLが駆動される。同様に、第2リヤモータ力行トルクTM2は、第2リングギヤ73に作用するワンウェイクラッチ83の反力トルクROWを反力とし、第2キャリヤ75及び右後駆動軸SRRを介して、右後輪WRRに伝達され、その結果、右後輪WRRが正転する。
[回生モード]
この回生モードは、車両Vの減速走行中などに、車両Vの走行エネルギを用いて第1及び第2リヤモータ41、61で回生を行い、発電した電力をバッテリ7に充電する動作モードである。この回生モードでは、第1及び第2目標トルクTRLOBJ、TRROBJは負値に設定され、それらの値に応じて、第1及び第2リヤモータ41、61で回生される電力を制御するとともに、油圧ブレーキ84で第1及び第2リングギヤ53、73を制動する。
図5は、回生モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。同図において、BM1は、回生に伴って発生する第1リヤモータ41の出力(制動)トルク(以下「第1リヤモータ回生トルク」という)であり、BM2は、回生に伴って発生する第2リヤモータ61の出力(制動)トルク(以下「第2リヤモータ回生トルク」という)である。また、TRLは、左駆動輪WRLの慣性トルクであり、TRRは、右駆動輪WRRの慣性トルク、RBRは、油圧ブレーキ84の反力トルクである。
図5から明らかなように、第1及び第2サンギヤ52、53にそれぞれ伝達された第1及び第2リヤモータ回生トルクBM1、BM2は、油圧ブレーキ84の反力トルクRBRを反力として、第1及び第2キャリヤ55、75にそれぞれ伝達され、さらに、左右の後駆動軸SRL、SRRを介して、左右の後輪WRL、WRRに伝達される。その結果、左右の後輪WRL、WRRが制動される。
[左右逆駆動モード]
この左右逆駆動モードは、車両Vの旋回時などに、第1及び第2リヤモータ41、61の一方で力行を行うと同時に、他方で回生を行う動作モードである。この左右逆駆動モードでは、第1及び第2目標トルクTRLOBJ、TRROBJの一方が正値に、他方が負値に設定され、それらの値に応じて、一方に供給される電力及び他方で回生される電力を制御するとともに、油圧ブレーキ84で第1及び第2リングギヤ53、73を制動する。図6は、第1リヤモータ41で力行を、第2リヤモータ61で回生を行ったときの、各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。同図における各種のパラメータは、図4及び図5を参照して説明したとおりである。
図6と、これまでの説明から明らかなように、第1リヤモータ力行トルクTM1が、第1遊星歯車装置51を介して左後輪WRLに伝達されることにより、左後輪WRLが駆動されるとともに、第2リヤモータ回生トルクBM2が、第2遊星歯車装置71を介して右後輪WRRに伝達されることにより、右後輪WRRが制動される。図示しないが、上記とは逆に、第1リヤモータ41で回生を、第2リヤモータ61で力行を行った場合には、トルクなどの関係が図6の場合と逆になる。
次に、図7〜図11を参照しながら、ECU2で実行される、後輪WRL、WRRのスリップを制御するためのスリップ制御処理について説明する。本処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。図7はそのメインフローを示す。まず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、基準車輪速の算出処理を実行する。後述するように、この基準車輪速は、後輪WRL、WRRに、所定以上のスリップである超過スリップが発生しているか否かを判定するためのしきい値として用いられるものである。
次に、第1及び第2リヤモータ41、61の動力(以下「リヤモータ動力」という)の調整処理を行い(ステップ2)、図7の処理を終了する。この調整処理は、検出された後輪速VRL、VRRをステップ1で算出された基準車輪速と比較することによって、後輪WRL、WRRにおける超過スリップの発生を判定するとともに、その判定結果に応じて、リヤモータ動力を調整するものである。
図8は、上述した基準車輪速の算出処理のサブルーチンを示す。本処理では、まずステップ11において、検出された前輪速VFL、VFRに対する転舵補正を実行する。具体的には、検出された左右の前輪速VFL、VFR及び左右の後輪速VRL、VRRを用い、次式(1)(2)によって、補正後前輪速VFLC、VFRCを算出する。
VFLC=VFL・max{(VRL/VFL), (VRR/VFR)} ・・・(1)
VFRC=VFR・max{(VRL/VFL), (VRR/VFR)} ・・・(2)
この転舵補正は、以下の理由に基づくものである。図10に示すように、車両Vの旋回時には、前輪の車軸が後輪の車軸に対して傾くため、車軸に直交するx方向の車輪速VVの成分VVxは、後輪(=VVx_R)よりも前輪(=VVx_F)の方が大きくなる。また、車輪速センサの構成上、その検出値はx方向成分に相関する。このため、車両Vの旋回時には、検出された前輪速VFL、VFRは、後輪速VRL、VRRよりも高めになる。上記の式(1)(2)から明らかなように、補正後前輪速VFLC、VFRCは、検出された前輪速VFL、VFRを、後輪速VRL、VRRを基準とする後輪速相当値に換算し、補正したものである。
図8に戻り、前記ステップ11に続くステップ12では、第1目標トルクTRLOBJ(第1リヤモータ41の目標トルク)と第2目標トルクTRROBJ(第2リヤモータ61の目標トルク)との和(=TRLOBJ+TRROBJ)が、0以上であるか否かを判別する。この答えがYESのときには、車両Vが加速状態にあると判定し、そのことを表すために、加速フラグF_ACCを「1」にセットする(ステップ13)とともに、ステップ14〜21において、加速時用の基準車輪速を算出する。一方、上記ステップ12の答えがNOのときには、車両Vが減速状態にあると判定し、加速フラグF_ACCを「0」にセットする(ステップ22)とともに、ステップ23〜30において、減速時用の基準車輪速を算出する。
加速時用の基準車輪速を算出する場合には、まずステップ14において、第1目標トルクTRLOBJと第2目標トルクTRROBJとの差の絶対値(=|TRLOBJ−TRROBJ|)が、所定値ΔTR以上であるか否かを判別する。この答えがNOで、第1及び第2目標トルクTRLOBJ、TRROBJの差が小さいときには、ステップ15に進み、ステップ11で算出された補正後前輪速VFLC、VFRCと検出された後輪速VRL、VRRのうちの最小のものを、基準車輪速の基本値VRBASEとして算出する。
一方、前記ステップ14の答えがYESのときには、第1目標トルクTRLOBJと第2目標トルクTRROBJとの積(=TRLOBJ・TRROBJ)が、0未満(負値)であるか否かを判別する(ステップ16)。この答えがNOで、第1及び第2目標トルクTRLOBJ、TRROBJの正負の符号が互いに同じときには、車両Vのリヤ側において前述した左右逆駆動モードが設定されていないとして、前記ステップ15に進み、補正後前輪速VFLC、VFRC及び後輪速VRL、VRRのうちの最小のものを、基準車輪速の基本値VRBASEとして算出する。
一方、上記ステップ16の答えがYESで、第1及び第2目標トルクTRLOBJ、TRROBJの正負の符号が互いに異なるときには、車両Vのリヤ側において左右逆駆動モードが設定されているとして、第1目標トルクTRLOBJが0未満(負値)であるか否かを判別する(ステップ17)。この答えがYESのとき、すなわち、左右逆駆動モードにおいて、第1リヤモータ41が回生、第2リヤモータ61が力行のときには、ステップ18に進み、回生中の第1リヤモータ41に対応する左後輪速VRLを除く残りの3つの車輪速である、補正後前輪速VFLC、VFRC及び右後輪速VRRのうちの最小のものを、基準車輪速の基本値VRBASEとして算出する。
一方、上記ステップ17の答えがNOで、左右逆駆動モードにおいて、第1リヤモータ41が力行、第2リヤモータ61が回生のときには、ステップ19に進み、回生中の第2リヤモータ61に対応する右後輪速VRRを除く残りの3つの車輪速である、補正後前輪速VFLC、VFRC及び左後輪速VRLのうちの最小のものを、基準車輪速の基本値VRBASEとして算出する。
前記ステップ15、18又は19に続くステップ20では、算出された基準車輪速の基本値VRBASEに対する旋回補正を実行する。具体的には、車両Vが左旋回中の場合には、内輪側に相当する左後輪WRL用の基本値VRLBASE、及び外輪側に相当する右後輪WRR用の基本値VRRBASEを、次式(3)(4)によって算出する。
VRLBASE=VRBASE ・・・(3)
VRRBASE=VRBASE+|RY・TRR| ・・・(4)
ここで、式(4)中のRYは、ヨーレートセンサ103で検出されたヨーレート、TRRは、所定の後輪トレッドである(図11参照)。上記の式(3)(4)及び図11から明らかなように、この旋回補正は、旋回中における外輪側の車輪速Vhighと内輪側の車輪速Vlowとの速度差を反映させるためのものである。
したがって、車両Vが右旋回中の場合には、左右の基本値VRLBASE、VRRBASEは、式(3)(4)と左右逆の関係の次式(5)(6)によって算出される。
VRLBASE=VRBASE+|RY・TRR| ・・・(5)
VRRBASE=VRBASE ・・・(6)
図8に戻り、前記ステップ20に続くステップ21では、上記のように算出した左右の基本値VRLBASE、VRRBASEに基づき、次式(7)(8)によって、左後輪WRLの基準車輪速(以下「左基準車輪速」という)VRLREF、及び右後輪WRRの基準車輪速(以下「右基準車輪速」という)VRRREFを最終的に算出し、本処理を終了する。
VRLREF=VRLBASE・(1+K1) ・・・(7)
VRRREF=VRRBASE・(1+K1) ・・・(8)
ここで、K1は、値0よりも大きな加速時用の所定のマージン係数である。したがって、左右の基準車輪速VRLREF、VRRREFは、それぞれの基本値VRLBASE、VRRBASEに対して、マージン係数K1に相当する分だけ割増した、より大きな値に設定される。
一方、上記ステップ12の答えがNOのときには、ステップ23〜30において、車両Vの減速時用の基準車輪速を、上述した加速時用の基準車輪速の場合と基本的に同様の手法で算出する。まずステップ23において、前記ステップ14と同様、第1及び第目標トルクTRLOBJ、TRROBJの差の絶対値が、所定値ΔTR以上であるか否かを判別する。この答えがNOで、第1及び第2目標トルクTRLOBJ、TRROBJの差が小さいときには、ステップ24に進み、ステップ11で算出された補正後前輪速VFLC、VFRCと検出された後輪速VRL、VRRのうちの最大のものを、基準車輪速の基本値VRBASEとして算出する。
一方、前記ステップ23の答えがYESのときには、第1目標トルクTRLOBJと第2目標トルクTRROBJとの積が、0未満(負値)であるか否かを判別する(ステップ25)。この答えがNOのときには、車両Vのリヤ側において左右逆駆動モードが設定されていないとして、前記ステップ24に進み、補正後前輪速VFLC、VFRC及び後輪速VRL、VRRのうちの最大のものを、基準車輪速の基本値VRBASEとして算出する。
一方、上記ステップ25の答えがYESで、第1及び第2目標トルクTRLOBJ、TRROBJの正負の符号が互いに異なるときには、車両Vのリヤ側において左右逆駆動モードが設定されているとして、第1目標トルクTRLOBJが0よりも大きい(正値)か否かを判別する(ステップ26)。この答えがYESのとき、すなわち、左右逆駆動モードにおいて、第1リヤモータ41が力行、第2リヤモータ61が回生のときには、ステップ27に進み、力行中の第1リヤモータ41に対応する左後輪速VRLを除く残りの3つの車輪速である、補正後前輪速VFLC、VFRC及び右後輪速VRRのうちの最大のものを、基準車輪速の基本値VRBASEとして算出する。
一方、上記ステップ26の答えがNOで、左右逆駆動モードにおいて、第1リヤモータ41が回生、第2リヤモータ61が力行のときには、ステップ28に進み、力行中の第2リヤモータ61に対応する右後輪速VRRを除く残りの3つの車輪速である、補正後前輪速VFLC、VFRC及び左後輪速VRLのうちの最大のものを、基準車輪速の基本値VRBASEとして算出する。
前記ステップ24、27又は28に続くステップ29では、前記ステップ20と同様にして、基準車輪速の基本値VRBASEに対する旋回補正を実行し、左後輪WRL用の基本値VRLBASE及び右後輪WRR用の基本値VRRBASEを算出する。
次に、ステップ30において、算出した左右の基本値VRLBASE、VRRBASEに基づき、次式(9)(10)によって、左基準車輪速VRLREF及び右基準車輪速VRRREFを最終的に算出し、本処理を終了する。
VRLREF=VRLBASE・(1−K2) ・・・(9)
VRRREF=VRRBASE・(1−K2) ・・・(10)
ここで、K2は、値0よりも大きな減速時用の所定のマージン係数である。したがって、左右の基準車輪速VRLREF、VRRREFは、それぞれの基本値VRLBASE、VRRBASEに対して、マージン係数K2に相当する分だけ割り引いた、より小さな値に設定される。
次に、図7のステップ2で実行されるリヤモータ動力の調整処理について説明する。図9は、そのサブルーチンを示す。本処理では、まずステップ41において、加速フラグF_ACCが「1」であるか否かを判別する。この答えがYESで、車両Vが加速状態にあるときには、検出された左後輪速VRLが、図9のステップ21で設定された加速時用の左基準車輪速VRLREFよりも大きいか否かを判別する(ステップ42)。
このステップ42の答えがNOで、左後輪速VRLが左基準車輪速VRLREFを上回っていないときには、左後輪WRLに加速スリップ(加速時における超過スリップ)が発生していないと判定し、ステップ43において、第1目標トルクTRLOBJを、左後輪WRLへの要求トルクである左後輪要求トルクTRLREQに設定する。
一方、上記ステップ42の答えがYESで、左後輪速VRLが左基準車輪速VRLREFを上回ったときには、左後輪WRLに加速スリップが発生していると判定し、トルク減少量ΔTRL1を算出する(ステップ44)。このトルク減少量ΔTRL1は、例えば、左後輪速VRLと左基準車輪速VRLREFとの差に応じ、それに比例するように算出される。次に、第1目標トルクTRLOBJを、左後輪要求トルクTRLREQからトルク減少量ΔTRL1を差し引いた値に設定する(ステップ45)。
上記ステップ43又は45に続くステップ46では、右後輪速VRRが右基準車輪速VRRREFよりも大きいか否かを判別する。この答えがNOで、右後輪速VRRが右基準車輪速VRRREFを上回っていないときには、右後輪WRRに加速スリップが発生していないと判定し、ステップ47において、第2目標トルクTRROBJを、右後輪WRRへの要求トルクである右後輪要求トルクTRRREQに設定する。
一方、上記ステップ46の答えがYESで、右後輪速VRRが右基準車輪速VRRREFを上回ったときには、右後輪WRRに加速スリップが発生していると判定し、トルク減少量ΔTRR1を算出する(ステップ48)。このトルク減少量ΔTRR1は、例えば、右後輪速VRRと右基準車輪速VRRREFとの差に応じ、それに比例するように算出される。次に、第2目標トルクTRROBJを、右後輪要求トルクTRRREQからトルク減少量ΔTRR1を減算した値に設定し(ステップ49)、本処理を終了する。
一方、前記ステップ41の答えがNOで、車両Vが減速状態にあるときには、左後輪速VRLが、図9のステップ30で設定された減速時用の左基準車輪速VRLREFよりも小さいか否かを判別する(ステップ50)。
このステップ50の答えがNOで、左後輪速VRLが左基準車輪速VRLREFを下回っていないときには、左後輪WRLに減速スリップ(減速時における超過スリップ)が発生していないと判定し、ステップ51において、第1目標トルクTRLOBJを左後輪要求トルクTRLREQに設定する。
一方、上記ステップ50の答えがYESで、左後輪速VRLが左基準車輪速VRLREFを下回ったときには、左後輪WRLに減速スリップが発生していると判定し、トルク増加量ΔTRL2を算出する(ステップ52)。このトルク増加量ΔTRL2は、例えば、左基準車輪速VRLREFと左後輪速VRLとの差に応じ、それに比例するように算出される。次に、第1目標トルクTRLOBJを、左後輪要求トルクTRLREQにトルク増加量ΔTRL2を加算した値に設定する(ステップ53)。
上記ステップ51又は53に続くステップ54では、右後輪速VRRが右基準車輪速VRRREFよりも小さいか否かを判別する。この答えがNOで、右後輪速VRRが右基準車輪速VRRREFを下回っていないときには、右後輪WRRに減速スリップが発生していないと判定し、ステップ55において、第2目標トルクTRROBJを右後輪要求トルクTRRREQに設定する。
一方、上記ステップ54の答えがYESで、右後輪速VRRが右基準車輪速VRRREFを下回ったときには、右後輪WRRに減速スリップが発生していると判定し、トルク増加量ΔTRR2を算出する(ステップ56)。このトルク増加量ΔTRR2は、例えば、右基準車輪速VRRREFと右後輪速VRRとの差に応じ、それに比例するように算出される。次に、第2目標トルクTRROBJを、右後輪要求トルクTRRREQにトルク増加量ΔTRR2を加算した値に設定し(ステップ57)、本処理を終了する。
以上のように、本実施形態によれば、車両Vの加速状態において(図8のステップ12:YES)、第1及び第2リヤモータ41、61の一方で力行を行い、他方で回生を行う左右逆駆動モードのときには(ステップ16:YES)、回生中である両リヤモータ41、61の他方に連結された左後輪WRL又は右後輪WRRを除外し、残りの3つの車輪速(補正後前輪速VFLC、VFRCと右後輪速VRR又は左後輪速VRL)のうちの、最も小さな車輪速を基準車輪速の基本値VRBASEとして設定する(ステップ17〜19)。そして、この基本値VRBASEに基づいて、左基準車輪速VRLREF及び右基準車輪速VRRREFを算出する(ステップ21)。
これにより、加速時の回生中であることで大きく低下する傾向にある左後輪速VRL又は右後輪速VRRの影響を排除し、加速時用の基準車輪速VRLREF、VRRREFを適切に設定できる。また、左後輪速WRL又は右後輪速WRLが左基準車輪速VRLREF又は右基準車輪速VRRREFを上回ったときに、左後輪WRL又は右後輪WRRに加速スリップが発生していると判定する(図9のステップ42、46:YES)ので、この加速スリップの判定を適切に行うことができる。その結果、車両Vの加速時における過剰なトルク制限による減速感を回避し、良好な走行性能を確保することができる。
さらに、加速スリップが発生していると判定された左後輪WRL又は右後輪WRRに連結された第1又は第2リヤモータ41、61の動力を減少方向に調整する(ステップ45、49)ので、発生した加速スリップを適切に解消することができる。
一方、車両Vの減速状態において(ステップ12:NO)、第1及び第2リヤモータ41、61が左右逆駆動モードのときには(ステップ25:YES)、力行中である両リヤモータ41、61の一方に連結された左後輪WRL又は右後輪WRRを除外し、残りの3つの車輪速(補正後前輪速VFLC、VFRCと右後輪速VRR又は左後輪速VRL)のうちの、最も大きな車輪速を基準車輪速の基本値VRBASEとして設定する(ステップ26〜28)。そして、この基本値VRBASEに基づいて、左基準車輪速VRLREF及び右基準車輪速VRRREFを算出する(ステップ30)。
これにより、減速時の力行中であることで大きく増加する傾向にある左後輪速VRL又は右後輪速VRRの影響を排除し、減速時用の基準車輪速VRLREF、VRRREFを適切に設定できる。また、左後輪速WRL又は右後輪速WRLが左基準車輪速VRLREF又は右基準車輪速VRRREFを下回ったときに、左後輪WRL又は右後輪WRRに減速スリップが発生していると判定する(図9のステップ50、54:YES)ので、この減速スリップの判定を適切に行うことができる。その結果、車両Vの減速時における過剰なトルク制限による減速抜け感を回避し、良好な走行性能を確保することができる。
さらに、減速スリップが発生していると判定された左後輪WRL又は右後輪WRRに連結された第1又は第2リヤモータ41、61の動力を増加方向に調整する(ステップ52、56)ので、発生した減速スリップを適切に解消することができる。
また、本実施形態では、検出された前輪速VFL、VFRに対して転舵補正を実行する(図8のステップ11)ことによって、前輪速VFL、VFRを後輪速VRL、VRRを基準とする後輪速相当値に換算した補正後前輪速VFLC、VFRCを算出し、基準車輪速の基本値VRBASEの算出に用いる(ステップ15、18、19、24、27、28)。これにより、旋回時における、後輪速VRL、VRRの検出値に対する前輪速VFL、VFRのずれを修正しながら、基本値VRBASE、ひいては基準車輪速VRLREF、VRRREFの算出を適切に行うことができる。
さらに、基本値VRBASEに対して旋回補正を実行する(図8のステップ20、29)ので、旋回中における外輪側の車輪速と内輪側の車輪速との速度差を反映させながら、最終的な基準車輪速VRLREF、VRRREFを適切に算出することができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態の車両Vは、前輪駆動装置DFSとして、エンジン3及びフロントモータ4を有し、後輪駆動装置DRSとして、左後輪WRL及び右後輪WRRをそれぞれ駆動する左右の第1及び第2リヤモータ41、61を有するタイプのものである。本発明は、これに限らず、左右一対の車輪を互いに独立して駆動する左右一対のモータを有する車両である限り、適用できる。
したがって、例えば、実施形態とは前後逆の関係で、エンジン及びモータを後輪側に配置し、一対のモータを前輪側に配置した車両や、一対のモータを配置した以外の左右の車輪を駆動する他の車輪駆動装置を、エンジンのみ、モータのみ又は一対のモータで構成した車両にも、本発明を適用でき、あるいは、他の車輪駆動装置をもたず、一対のモータのみで駆動するように構成された車両でもよい。
また、実施形態では、本発明における車輪速パラメータとして、車輪の速度(左右の前輪速VFL、VFR及び後輪速VRL、VRR)を用いているが、これに代えて、車輪の速度を表す他の適当なパラメータ、例えば、これらの車輪に連結された前駆動軸SFL、SFR及び後駆動軸SRL、SRRの回転数NWFL、NWFR、NWRL及びNWRRを用いてもよい。
さらに、実施形態では、車両Vの加速/減速状態や左右逆駆動モードの設定を判定するためのパラメータとして、第1及び第2リヤモータ41、61の目標トルクTRLOBJ、TRROBJを用いているが、これに代えて、他の適当なパラメータ、例えば、左右の後輪WRL、WRR又は後駆動軸SRL、SRRに作用する実際のトルクを検出し、用いてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
また、図8の処理のステップ9の前輪速VFL、VFRの転舵補正や、ステップ20、29の基準車輪速の基本値BRBASEの旋回補正を適用する上では、リヤモータは必ずしも左右一対である必要はなく、単一のモータでもよい。