JP5792203B2 - イオンを抑制させたプラズマ質量分析器 - Google Patents

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Description

本出願は、2010年2月26日に出願された米国仮出願第61/308,676号に対して優先権およびその利益を主張するものとし、その全開示は、全ての目的において、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の実施形態は、概して、質量分析計システムおよびその操作方法、より具体的には、望ましくないイオンを抑制するための二重モードの質量分析計システムを操作する方法に関する。
質量分析法(MS)は、定量的および定性的用途の両方を有する未知の試料物質の元素組成を決定するための分析技法である。例えば、MSは、未知の化合物を同定する、分子の元素の同位体組成を決定する、およびその断片化を観察することにより特定の化合物の構造を決定する、ならびに試料中の特定の化合物の量を定量化するのに有用であり得る。質量分析法は、正の電荷粒子の流れ、すなわちイオン流を形成するために、多くの異なる利用可能な方法のうちの1つを使用して、試験試料をイオン化することにより操作することができる。その後、イオン流は、質量対電荷(m/z)比によりイオン流中の異なる粒子集団を分離するために、質量分化(時間および空間において)を受けることができる。その後、下流の質量分析器は、対象とする分析データ、例えば、異なる粒子の集団の相対的濃度、生成物または断片イオンの質量対電荷比だけでなく、他の潜在的に有用な分析データを算出するために、質量分化粒子集団の強度を検出することができる。
質量分析法において、対象とするイオン(「分析物イオン」)は、イオン流中で、実質的に分析物イオンと同じ基準m/z比を有する他の望ましくないイオン集団(「干渉イオン」)と共存することができる。他の場合において、干渉イオンのm/z比は、同一ではないが、分析物イオンのm/z比に十分近く、質量分析器の解析度内に入り、それによって、質量分析器に2種類のイオンを区別させることができない。質量分析器の解析度の向上は、この種類の干渉物(一般に、「同重体」または「スペクトル干渉物」と称される)に対処するためのアプローチの1つである。しかしながら、高解析度の質量分析器は、抽出速度が遅く、イオン信号の損失が高い傾向があり、より精度が高い検出器を必要とする。達成可能な解析度の制限にも直面する。
スペクトル干渉を超えた、さらなる非スペクトル干渉も、一般に質量分析法において直面する。これらは、粒子の中性準安定種に由来し、質量の範囲に対して上昇した背景を生成する(そのため、非スペクトルである)。この上昇した背景は、機器の検出限度に悪影響を及ぼす。イオン流中のいくつかの一般的な非スペクトル干渉物は、光子、中性粒子、およびガス分子を含む。
本発明の実施形態の態様によると、加圧セルを備える質量分析計システムの操作方法が説明される。本方法は、a)イオン源からイオン流であって、第1の種類の第1のイオン群と、第2の種類の第2のイオン群とを含む、複数の異なる種類の複数のイオン群を含むイオン流を放出することであって、各それぞれのイオン群が、i)複数の異なる種類中の対応する種類であり、かつii)そのそれぞれのイオン群の対応するエネルギー分布を画定するエネルギーである個々のイオンを含み、第1のイオン群中の個々のイオンが、平均して、第2のイオン群の個々のイオンより大きい衝突断面を有する、イオン流を放出するステップと、b)四重極ロッドセットを備える四重極加圧セルである加圧セルの入口端に、イオン流を送り、その中に収容するステップと、c)b)中、イオン流中の各それぞれのイオン群について、選択された最大範囲内にあるように対応するエネルギー分布の範囲を制御するステップと、d)RF電圧を四重極ロッドセットに供給し、入口端から入口端の下流の加圧セルの出口端に送られるイオンの放射状閉じ込めのためにその中に四重極場を形成するステップと、e)イオン流の大半を四重極ロッドセットの許容楕円内に方向付けるために、四重極ロッドセットの上流の位置でイオン流を集束させるステップと、f)加圧セル内に、第1および第2の種類のイオンと実質的に非反応性である不活性ガスを提供して、第1の割合が第2の割合より実質的に大きい、第1の割合の第1のイオン群と第2の割合の第2のイオン群とを衝突させて、第1のイオン群の個々のイオンのエネルギーを第2のイオン群より大幅に減少させるステップと、g)第2のイオン群より大きい割合の第1のイオン群の減少したエネルギーイオンが、出口障壁を貫通するのを防止するように選択される強度の出口障壁を、加圧セルの出口端に提供するステップと、を含む。
本発明の実施形態の別の態様によると、質量分析計システムが説明される。質量分析計は、第1の種類の第1のイオン群と、第2の種類の第2のイオン群とを含む、複数の異なる種類の複数のイオン群を含むイオン流を放出することであって、各それぞれのイオン群が、i)複数の異なる種類中の対応する種類であり、かつii)そのそれぞれのイオン群の対応するエネルギー分布を画定するエネルギーである個々のイオンを含み、第1のイオン群中の個々のイオンが、平均して、第2のイオン群の個々のイオンより大きい衝突断面を有する、イオン流を放出するように操作可能な、イオン源と、i)イオン流を加圧セルの中に受容するために、加圧セルの入口端にイオン入口、およびii)四重極ロッドセットを備える、加圧セルと、四重極ロッドセットに連結される電圧源であって、加圧セルが四重極加圧セルとして操作可能であるように、RF電圧を四重極ロッドセットに供給し、入口端から入口端の下流の加圧セルの出口端に送られるイオンの放射状閉じ込めのためにその中に四重極場を形成するように操作可能な、電圧源と、イオン流中の各それぞれのイオン群について、イオン流を加圧セルに送る間中選択された最大範囲内にあるように対応するエネルギー分布の範囲を制御するために、かつイオン流の大半を四重極ロッドセットの許容楕円内にさらに方向付けるために、四重極ロッドセットの上流の位置で含まれるイオン光学と、加圧セルに流体結合されて、その中に第1および第2の種類のイオンと実質的に非反応性である不活性ガスを提供して、第1の割合が第2の割合より実質的に大きい、第1の割合の第1のイオン群と第2の割合の第2のイオン群とを衝突させて、第1のイオン群の個々のイオンのエネルギーを第2のイオン群より大幅に減少させる、不活性ガス源と、加圧セルの出口端に形成され、第2のイオン群より大きい割合の第1のイオン群の減少したエネルギーイオンが、出口障壁を貫通するのを防止するように選択される強度である、出口障壁とを備える。
別の態様によると、衝突モードと反応モードとを備える少なくとも2つのモードの間でのセルの切り替えを可能にするように構成されるシステムが提供される。ある実施例において、本システムは、セルを加圧するために衝突モードで衝突ガスを受容するように構成され、セルを加圧するために反応モードで反応性ガスを受容するように構成されるセルを備える。いくつかの実施例において、本システムは、セルに電気的に結合される制御器を含むことができ、制御器は、選択される障壁エネルギーより大きいエネルギーを備えるイオンを選択するために、衝突モードで第1の実効電圧を加圧セルに提供するように構成され、制御器は、質量フィルタリングを使用してイオンを選択するために、反応モードで第2の実効電圧を加圧セルに提供するようにさらに構成される。
ある実施形態において、システムは、通気モードに切り替えが可能であるようにさらに構成され得る。いくつかの実施形態において、本システムは、セルのガス入口に流体結合されるガスマニホールドを含むことができる。さらなる実施形態において、セルは四重極を備える。ある実施例において、セルは、セルの出口開口部に隣接し、電圧源に電気的に結合される出口部材を含むことができ、出口部材は、加圧セル中の分析物イオンをセルの出口開口部に向かって方向付けるように構成される。いくつかの実施例において、出口部材は、衝突モードにおいて、−60ボルト〜−18ボルトの電位を備える。他の実施例において、出口部材は、反応モードにおいて、−20ボルト〜0ボルトの電位を備える。さらなる実施例において、セルは、セルの入口開口部に隣接し、電圧源に電気的に結合される入口部材を備え、入口部材は、分析物イオンを加圧セルの中に、かつセルの出口開口部に向かって方向付けるように構成される。いくつかの実施形態において、入口部材は、衝突モードにおいて、−10ボルト〜+2ボルトの電位を備える。さらなる実施形態において、入口部材は、反応モードにおいて、出口部材の電位と実質的に同じ電位を備える。
いくつかの実施形態において、セル(またはシステム)は、反応性ガスをセルの中に導入する前にセルを枯渇させることにより、衝突モードから反応モードに切り替わるように構成され得る。他の実施形態において、セル(またはシステム)は、衝突ガスをセルの中に導入する前にセルを枯渇させることにより、反応モードから衝突モードに切り替わるように構成され得る。
さらなる実施形態において、本システムは、セルに結合される追加のセルを含むことができ、追加のセルは、追加のセルを加圧するために衝突モードで衝突ガスを、および追加のセルを加圧するために反応モードで反応性ガスを受容するように構成される。いくつかの実施例において、セルおよび追加のセルで使用される衝突ガスは、同じまたは異なってもよい。他の実施例において、セルおよび追加のセルで使用される反応性ガスは、同じまたは異なってもよい。
他の実施形態において、制御器は、反応モードでセルおよび追加のセルのうちの少なくとも1つを操作し、標準モードでもう一方のセルを操作するように構成され得る。さらなる実施形態において、制御器は、衝突モードでセルおよび追加のセルのうちの少なくとも1つを操作し、標準モードでもう一方のセルを操作するように構成され得る。いくつかの実施形態において、制御器は、衝突モードでセルおよび追加のセルのうちの少なくとも1つを操作し、反応モードでもう一方のセルを操作するように構成され得る。さらなる実施形態において、制御器は、衝突モードでセルおよび追加のセルの両方を操作するように構成され得る。いくつかの実施形態において、制御器は、反応モードでセルおよび追加のセルの両方を操作するように構成され得る。他の実施例において、制御器は、標準モードでセルおよび追加のセルの両方を操作するように構成され得る。
いくつかの実施形態において、システムは、電圧源に電気的に結合され、セルの出口開口部に向かってイオンを方向付けるために軸方向の電場を提供するように構成される、軸方向の電極を含むことができる。さらなる実施形態において、軸方向の電場は、0.1V/cm〜0.5V/cmの電場勾配を含むことができる。いくつかの実施形態において、制御器は、セルにオフセット電圧を提供するようにさらに構成され得る。さらなる実施形態において、本システムは、オフセット電圧を備えるセルに結合される質量分析器を含むことができる。ある実施例において、質量分析器のオフセット電圧は、セルが衝突モードで操作される時、セルのオフセット電圧より正であり得る。いくつかの実施例において、質量分析器のオフセット電圧は、セルが反応モードで操作される時、セルのオフセット電圧より負であり得る。さらなる実施形態において、本システムは、加圧セルに結合されるイオン化源を含むことができる。いくつかの実施形態において、イオン化源は誘導結合プラズマである。いくつかの実施例において、本システムは、セルに結合される質量分析器を含むことができる。さらなる実施形態において、セルは、誘導結合プラズマと質量分析器との間に位置することができる。他の実施形態において、セルは、質量分析器から下流に位置することができる。
別の態様において、イオン源、セル、質量分析器、および制御器を備えるシステムが説明される。いくつかの実施形態において、セルは、イオン源に結合され、衝突モード、反応モード、および標準モードを含む少なくとも3つの異なるモードで操作されるように構成され得る。3つの異なるモードは、それぞれ、イオン源からセルの中に導入される複数のイオンから分析物イオンを選択するように構成され、セルは、イオン源からの複数のイオンの、セルの中への導入を可能にするために、入口開口部でイオン源に結合されるように構成され、セルは、衝突モードでセルを加圧するために実質的に不活性のガスを受容し、反応モードでセルを加圧するために反応性ガスを受容するように構成されるガス入口をさらに備え、加圧セルは、セルから分析物イオンを提供するように構成される出口開口部をさらに備える。さらなる実施形態において、質量分析器は、セルに結合され得る。さらなる実施形態において、制御器は、セルに電気的に結合され、衝突モードでセルを加圧するために実質的に不活性のガスを提供するように構成され、反応モードでセルを加圧するために反応性ガスを提供するように構成され、および標準モードで真空下セルを維持するように構成され得る。
ある実施形態において、制御器は、加圧セルの中に導入される複数の分析物イオンおよび非分析物イオンから分析物イオンを選択するように加圧セルに電圧を提供することができる。他の実施形態において、加圧セルは四重極を備える。さらなる実施形態において、電圧は、衝突モードで非分析物イオンを実質的に不活性のガスと衝突させることにより、複数の導入したイオンの非分析物イオンの相当量を閉じ込めるのに十分な四重極場を提供するように四重極に提供され得る。さらなる実施例において、本システムは、加圧セルの入口開口部から出口開口部に向かって分析物イオンを方向付けるために、軸方向の電場を提供するように構成される軸方向の電極を含むことができる。いくつかの実施例において、軸方向の電場強度は、0.1V/c〜0.5V/cmの軸方向の電場勾配を有することができる。
ある実施例において、本システムは、加圧セルの出口開口部に隣接する出口部材も含むことができ、出口部材は、分析物イオンを加圧セルの出口開口部に向かって引き寄せるための出口電位を備える。他の実施例において、出口電位は、衝突モードにおいて、約−60ボルト〜−18ボルトであり得る。いくつかの実施例において、出口電位は、反応モードにおいて、約−20ボルト〜0ボルトであり得る。他の実施例において、本システムは、加圧セルの入口開口部に隣接する入口部材を含むことができ、入口部材は、衝突モードにおいて出口電位より正の入口電位を備える。さらなる実施例において、入口電位は、−10ボルト〜+2ボルトであり得る。いくつかの実施形態において、本システムは、加圧セルの入口開口部に隣接する入口部材を含むことができ、入口部材は、反応モードにおいて出口電位と実質的に同じ入口電位を備える。ある実施形態において、出口部材は、衝突モードにおいて、−60ボルト〜−18ボルトの電位を含むことができる。他の実施例において、出口部材は、反応モードにおいて、−20ボルト〜0ボルトの電位を備える。
いくつかの実施形態において、質量分析器は、イオン源とセルとの間に位置することができる。さらなる実施形態において、質量分析器は、セルから下流に位置することができる。さらなる実施形態において、本システムは、セルに結合される検出器を含むことができる。さらなる実施形態において、イオン源は、誘導結合プラズマとして構成され得る。
さらなる実施形態において、本システムは、セルに結合される追加のセルを含むことができ、追加のセルは、衝突モード、反応モード、および標準モードを含む少なくとも3つの異なるモードで操作されるように構成される。いくつかの実施形態において、追加のセルは、セルが衝突ガスモードまたは反応モードで操作される時、標準モードで操作されるように構成され得る。
さらなる実施形態において、制御器は、オフセット電圧を質量分析器に提供するようにさらに構成される。いくつかの実施例において、制御器は、セルが衝突モードで操作される時、セルのオフセット電圧より正である質量分析器のオフセット電圧を提供するように構成され得、制御器は、セルが反応モードで操作される時、セルのオフセット電圧より負である質量分析器のオフセット電圧を提供するように構成される。
別の態様において、衝突モードと反応モードとを含む少なくとも2つの異なるモードでの質量分析計の操作を容易にするためのキットが提供される。いくつかの実施例において、本キットは、衝突モード、反応モード、および標準モードを含む少なくとも2つの異なるモードでの質量分析計の操作を容易にすることができる。ある実施形態において、本キットは、セルを加圧するために衝突モードで衝突ガスを受容するように構成され、セルを加圧するために反応モードで反応性ガスを受容するように構成されるセルを備え、セルは、エネルギー障壁を使用して衝突モードでセルからのイオンの選択を可能にし、質量フィルタリングを使用して反応モードでセルからのイオンの選択を可能にするために、セルに電気的に結合される制御器から実効電圧を受電するようにさらに構成される。
ある実施例において、本キットは、セルに流体結合するように構成されるガスマニホールドを含むことができる。いくつかの実施例において、本キットは、種々のモード間での切り替えを制御する方法を含む記憶媒体を含むことができる。さらなる実施例において、本キットは制御器を含むことができる。他の実施例において、本キットは、追加のセルを加圧するために衝突モードで衝突ガスを受容するように構成され、追加のセルを加圧するために反応モードで反応性ガスを受容するように構成される追加セルを含むことができ、追加のセルは、エネルギー障壁を使用して衝突モードで追加のセルからのイオンの選択を可能にし、質量フィルタリングを使用して反応モードで追加のセルからのイオンの選択を可能にするために、追加のセルに電気的に結合される制御器から実効電圧を受電するようにさらに構成される。
さらなる態様において、衝突モードと反応モード(および任意に標準モード)とを含む少なくとも2つの異なるモードにおける質量分析計の操作を容易にする方法が提供される。ある実施例において、本方法は、セルに電気的に結合されるように構成される制御器を提供することを含み、制御器は、選択される障壁エネルギーより大きいエネルギーを備えるイオンの選択を可能にするために衝突モードで第1の実効電圧をセルに提供するように構成され、制御器は、質量フィルタリングを使用してイオンの選択を可能にするために反応モードで第2の実効電圧をセルに提供するようにさらに構成される。
別の態様において、衝突モードと反応モード(および任意に標準モード)とを含む少なくとも2つの異なるモードにおける質量分析計の操作を容易にする方法が説明される。ある実施例において、本方法は、セルを加圧するために衝突モードで衝突ガスを受容するように構成され、セルを加圧するために反応モードで反応性ガスを受容するように構成されるセルを提供することを含み、セルは、エネルギー障壁を使用して衝突モードでセルからのイオンの選択を可能にし、質量フィルタリングを使用して反応モードでセルからのイオンの選択を可能にするために、セルに電気的に結合される制御器から実効電圧を受電するようにさらに構成される。
当然のことながら、実施形態のこれらおよび他の特色は、本明細書に記載され、説明される。
種々の実施形態の詳細な説明は、例として以下の図面を参照に本明細書に以下に提供される。
本発明の実施形態の態様による質量分析計システムを概略図で図示し、これは、望ましくないイオンを抑制するために、誘導結合プラズマMSにおいて使用され得る。 本発明の別の実施形態において、図1に示される質量分析計システムに含まれ得る補助電極一式を前方断面図で図示する。 図2aに示される補助電極一式を後方断面図で図示する。 図面は単に例示であり、それらに対するいかなる参照は単に図示の目的のためになされ、本明細書で以下に説明される実施形態の範囲を制限することを決して意図しないことを理解されたい。便宜上、参照番号は、また、類似する構成要素または特徴を示すために、図面を通して(補正されて、または補正されずに)繰り返されてもよい。
明確化のために、以下の説明は、本発明の実施形態の種々の態様に関連する具体的な詳細を含むが、都合のよいところで、またはそうすることが適切であるところで、他の詳細を省くこともあることを理解されたい。例えば、別の実施形態における同様のまたは類似する特色の説明は、ある程度省略されてもよい。周知の見解または概念も、簡潔さのために、非常に詳細に説明されなくてもよい。当業者は、本発明の実施形態の実施が、あらゆる場合において、単に実施形態の十分な理解を提供するために本明細書に含まれる、具体的に記載される詳細の一部を必要としない場合があることを認識するだろう。同様に、記載される実施形態は本開示の範囲から逸脱することなく公知の一般知識により容易にわずかに変更または変形されてもよいことが明らかになるだろう。以下の実施形態の詳細な説明は、どのような形においても、本発明の範囲を制限するものとして見なされるべきではない。
ある質量分析計用途、例えば、金属および他の無機分析物の分析を伴うものは、ICP−MSで達成され得る比較的高いイオン感応性により、質量分析計において誘導結合プラズマ(ICP)イオン源を使用して有利に実行され得る。例えば、10億分の1以下のイオン濃度は、ICPイオン源を用いて達成可能である。誘導結合プラズマイオン源において、3つの同心管からなる放電管の端、典型的には石英が、高周波電流を供給される誘導コイル中に設置され得る。その後、アルゴンガス流を放電管の最も外側の2つの管の間に導入することができ、ここで、アルゴン原子は誘導コイルの高周波磁場と相互作用して、アルゴン原子から電子を遊離することができる。この作用は、微量のアルゴンイオンおよび遊離電子を伴う主にアルゴン原子を含む非常に高温(おそらく10,000K)のプラズマを生成することができる。その後、分析物試料は、例えば、霧状にした液体の蒸気として、アルゴンプラズマを通過することができる。霧状にした試料の液滴は、原子に分解される液体に溶解されるあらゆる固体とともに蒸発することができ、プラズマの極高温により、それらの最も緩い結合の電子を剥離して、単一電荷イオンを形成する。
したがって、ICPイオン源により生成されたイオン流は、対象とする分析物イオンに加え、高濃度のアルゴンおよびアルゴン系スペクトル干渉イオンを含有できることが多い。より一般的なスペクトル干渉物のいくつかは、Ar、ArO、Ar 、ArCI、ArH、及びMAr(Mは、試料がイオン化のために懸濁されたマトリクス金属を表す)を含むが、CIO、MO等の他のスペクトル干渉物を含む場合もある。グロー放電および電気スプレーを含む他の種類のイオン源も、無視できない濃度のスペクトル干渉物を生成する場合があることを理解する。スペクトル干渉物は、例えば、源からのイオン抽出中、MSにおいて他の源から生成され得る(例えば、ICPの外部の真空圧を受けると、プラズマが冷却されることにより、またはおそらく試料採取器もしくはスキマーの開口部との相互作用により)ことをさらに理解する。試料採取器もしくはスキマーの端部に存在する運動量境界線は、スペクトル干渉物の別の可能性のある源を表す。
分析物イオンと干渉イオンとを区別するための高解析質量分析器の使用とは別に、イオン流中のスペクトル干渉物の作用を軽減する別の方法は、質量分析段階の上流で干渉イオンを選択的に排除することである。アプローチの1つによると、イオン流は、分析物イオンに対してほぼ不活性を維持しながら、望ましくない干渉イオンと反応性である選択されたガスで充填され得る、時折ダイナミックリアクションセル(DRC)と称されるセルを通過することができる。イオン流がDRC中で反応性ガスと衝突すると、干渉イオンは、もはや分析物イオンと実質的に同じまたは類似するm/z比を有さない生成物イオンを形成することができる。生成物イオンのm/z比が分析物のそれと実質的に異なる場合、従来の質量フィルタリングをセルに適用して、分析物イオンの流れを大幅に断絶することなく、生成物干渉イオンを排除することができる。換言すれば、イオン流は、有意な割合で分析物イオンのみを質量分析段階に送るために、帯域質量フィルタにかけられ得る。干渉イオンを排除するためのDRCの使用は、米国特許第6,140,638号および同第6,627,912号により完全に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
一般に、DRCは、非常に低い検出限界、おそらく対象とする分析物により約1兆分の1または低1兆分の1さえも提供することができる。同じ同位体元素で、一定の限界または制限もDRCに課される。1つには、反応性ガスは、干渉イオンのみと反応性であり、分析物と非反応性でなければならないため、DRCは対象とする分析物イオンに敏感である。異なる反応性ガスが、異なる分析物について利用される必要がある場合がある。他の場合において、特定の分析物について公知の適切な反応性ガスが存在しない場合がある。一般に、全てのスペクトル干渉物に対処するために、単一の反応性ガスを使用することは不可能であるかもしれない。
使用され得るセルの種類の形で、別の潜在的な制限がDRCに課される。より完全に以下に説明されるように、イオンの放射状閉じ込めは、細長いロッドセット内に放射状のRF電場を形成することによりセル内に提供される。この性質の閉じ込め電場は、一般に異なる次数であるが、一般に四重極場または六重極場もしくは八重極場等の多少高次電場のいずれかであり得る。しかしながら、DRCは、質量フィルタリングが生成物干渉イオンを排除するために衝突セルに適用されなければならない場合、四重極の放射状閉じ込め電場の使用に制限され得る。公知のように、印加した四重極RFと同時に微小のdc電圧の四重極ロッドセットへの印加は、小幅で調整可能な範囲から外れるm/z比のイオンを不安定化し、それによってイオンについての質量フィルタの形成を引き起こす。他の高次極についての比較技法は、四重極ロッドセットを用いたときほど効果的ではないかもしれない。よって、少なくとも事実上、DRCは四重極場を用いたセルに限定され得る。
時折運動エネルギー識別(KED)と称される別のアプローチによると、イオン流は、衝突セルの内部で実質的に不活性のガスと衝突し得る。分析物イオンと干渉イオンの両方は、イオンの運動エネルギーの平均損失を生じる不活性ガスと衝突し得る。衝突による運動エネルギーの損失量は、一般に、イオンの元素組成に関連し得るイオンの衝突断面に関係し得る。2つ以上の結合原子からなる多原子イオン(分子イオンとしても知られる)は、単一電荷原子のみからなる一原子イオンより大きい衝突断面を有する傾向がある。これは、多原子イオンにおける2つ以上の結合原子間の原子間隔によりそうである。したがって、不活性ガスは、優先的に多原子の原子と衝突し、平均して、同じm/z比の一原子の原子に見られるより大きい運動エネルギーの損失を引き起こすことができる。その後、衝突セルの下流端に確立される適切なエネルギー障壁は、多原子干渉物の有意な部分を捕捉し、下流の質量分析器への伝送を防止することができる。
DRCに対して、KEDは、不活性ガスの選択が対象とする特定の干渉イオンおよび/または分析物イオンに実質的に依存しない限り、一般に、操作がより汎用的で簡単であるという利点を有する。ヘリウムである場合が多い単一の不活性ガスは、干渉イオンおよび分析物イオンの相対的衝突断面が上述のようである限り、異なるm/z比の多くの異なる多原子干渉物を取り除くのに効果的であり得る。同時に、ある欠点もKEDと関連付けられる場合がある。特に、KEDは、減少したエネルギー分析物イオンの一部が干渉イオンとともに捕捉され、質量分析段階に達成するのを防止するため、DRCより低いイオン感応性を有する可能性がある。したがって、同じ低レベルのイオン(例えば、1兆分の1または低1兆分の1)は、KEDを使用して検出することができない。例えば、検出限界は、KEDを使用することにより、DRCと比較して10〜1000倍劣る場合がある。
ある程度、KEDは、衝突セル内で使用され得る放射状閉じ込め電場の範囲においても制限され得る。不活性ガスとの衝突は、ロッドセット内でイオンの放射状散乱を引き起こす。六極および八極電場を含む高次閉じ込め電場は、四重極場より深い放射状電位井戸を提供することができ、したがって、より良い放射状閉じ込めを提供する場合があるため、好ましい場合がある。DRCと違い、質量フィルタは、通常、生成物干渉イオンを識別するために利用されないため、四重極場は、厳密には、KEDに必要ではない。KEDにおいて、下流のエネルギー障壁は、分析物イオンと比較したその平均運動エネルギーの観点から干渉イオンを識別する。利用可能な高次極の使用も、ビームの幅およびビーム中のそれぞれのイオン集団のエネルギー分布等の、イオン流の質に対する必要条件を緩和する傾向にあり、同時に、質量分析計における他のイオン光学素子に対する必要条件を緩和し、全体的により多くの汎用性を提供することができる。
本発明の実施形態は、質量分析計システム、ならびに望ましくない干渉イオンを抑制するために、DRCおよびKEDモードの両方の操作に設定可能である、その操作方法を提供する。衝突セルの上流に位置するイオン源および他のイオン光学素子を制御することにより、ならびに適切なエネルギー障壁を確立するために、質量分析器等の下流の構成要素を制御することにより、四重極衝突セルをKEDに操作可能にさせることができる。よって、質量分析計システムにおける単一衝突セルは、DRCおよびKEDモードの両方で操作することができる。質量分析計に結合されるモード制御器は、2つの記載されるモードで質量分析計の選択可能で、交互操作を可能にするように、衝突セルおよび下流の質量分析器に連結されるガス源および電圧源を制御することができる。よって、単一の質量分析計システムにおいて、各種類の操作の相対的利点を実現することができ、それぞれの相対的欠点を回避することができる。
最初に図1を参照すると、望ましくないイオンを抑制するためにICP−MSに使用され得る、本発明の実施形態の態様による質量分析計システム10が図示される。質量分析計システム10は、ICPイオン源であってもよいが、種々の公知の無機スペクトル干渉物を含む実質的なスペクトル干渉物を生成する他のある種類のイオン源であってもよい、イオン源12を備えることができる。イオン源12は、例えば、プラズマ放電管中の分析物試料を気化させて、イオンを生成することができる。イオン源12から放出されると、イオンは、試料採取器プレート14およびスキマー16の開口部を連続的に通過することにより、イオン流の中に抽出され得る。試料採取器プレート14およびスキマー16により提供されるイオン抽出物は、狭くて高度に集束されたイオン流をもたらすことができる。スキマー16は、機械的なポンプ22により、例えば約3トールの気圧に排気される真空槽20に格納され得る。いくつかの実施形態において、スキマー16を通過する時、イオンは、二次的なスキマー18を格納する第2の真空槽24の中に入ることができる。第2の機械的なポンプ26は、第2の真空槽24を真空槽20より低い気圧に排気することができる。例えば、第2の真空槽は、1〜100ミリトールで、または約1〜100ミリトールで維持され得る。
イオン源12が誘導結合プラズマ源である場合、スキマー16および18を通過するイオン流は、スペクトル干渉物に悩まされる可能性がある。つまり、イオン流は、試験試料からイオン化された1つ以上の種類の分析物イオンを含む、異なる種類のイオンの集団で構成され得る。しかしながら、イオン流は、ICPにおけるイオン化中にイオン流の中に回避できずに導入された、1つ以上の種類の干渉イオンの集団も含有する場合がある。上述のように、試験試料を非常に高温の典型的にはアルゴンプラズマにさらす誘導結合プラズマ源について、上に列挙した無機スペクトル干渉物(すなわち、Ar、ArO、Ar 、ArCI、ArH、およびMAr)が、特にイオン流中に存在し得る。当然ながら、当業者は、他の種類または源のスペクトル干渉物がイオン流中に存在し得るという点で、リストは制限されるものではないことを理解するであろう。干渉イオンの種類は、質量分析計10に含まれるイオン源12の種類、および選択された分析物イオンの種類に依存する場合がある。さらに、上述のように、光の光子、中性粒子、および他のガス分子を含む、他の非スペクトル干渉物もイオン流中に存在し得る。
イオン流中のイオンのそれぞれの集団(または群)は、それぞれの集団を構成する同じ種類の個々のイオンを含むことができる。異なる種類のイオンの種々の異なる集団は、他の可能性のある干渉物とともにイオン流を構成することができる。干渉型イオンは分析物イオンと同様の、または類似するm/z比を有するため、イオン流内で固有である必要はないが、イオン流中に存在するイオンのそれぞれの特定の種類は、対応するm/z比を有する。例えば、イオン流は、ICPにより生成された40Ar16干渉イオンの集団とともに、56Fe分析物イオンの集団を含む場合がある。それら2つのイオン種のそれぞれは、56のm/z比を有する。別の非限定的な実施例として、分析物イオン種は、80Seであり得、この場合、40Ar は、それぞれm/zが80である干渉物イオン種を構成するだろう。
いくつかの実施形態において、干渉物イオン種は、多原子のイオン種であり得る。例えば、40Ar16および40Ar イオンは、多原子干渉イオンの2つの例であるだろう。分析物イオン種は、一方では、単一のイオン化原子のみを含む一原子イオン種であり得る。上記の例において、56Feおよび80Seイオンは、2つの対応する一原子分析物イオンの例であるだろう。干渉型イオンは多原子種のものであり、分析物イオンは一原子種のものであり得るため、いくつかの実施形態において、干渉型イオンは、分析物イオンより大きい平均衝突断面を有することもできる。
イオン源12から放出されたイオン流中のそれぞれのイオン集団は、集団を構成する個々のイオンのエネルギーに関して、対応するエネルギー分布も画定することができる。換言すれば、それぞれの集団中の各個々のイオンは、一定の運動エネルギーを有するイオン源12から放出され得る。イオン集団の個々のイオンエネルギーは、その集団についてのエネルギー分布を提供することができる。これらのエネルギー分布は、例えば、平均イオンエネルギーおよび平均イオンエネルギーからのエネルギー偏差の基準を提供する適切な測定基準の観点から、あらゆる方式で画定され得る。適切な測定基準の1つは、半値全幅(FWHM)で測定されるエネルギー分布の範囲であり得る。
イオン流がイオン源12から放出される時、イオン流中のイオンのそれぞれの集団は、一部、対応する初期範囲により画定されるそれぞれの初期エネルギー分布を有することができる。当然ながら、イオン流として保存される必要がないこれらの初期エネルギー分布は、イオン源12から質量分析計10に含まれる下流の構成要素に送られる。イオン集団におけるいくらかのエネルギー分離が、例えば、他の粒子との衝突、電場の相互作用等により予期され得る。質量分析計10を通る異なる位置での、その構成イオン集団のそれぞれのエネルギー分布の観点から、イオン流を説明することが都合よいかもしれない。いくつかの実施形態において、各イオン集団は、イオン源12から放出される時、実質的に同じ初期範囲のエネルギー分布を有する。
いくつかの実施形態において、予備のスキマー18を通過するイオンは、インターフェースゲート28を超えて、図1に見られる四重極イオン偏向器等の、イオン偏向器32を含む第3の真空槽30の中に送られ得る。第3の真空槽30の気圧は、機械的ポンプ34により、第2の真空槽24よりも低いレベルで維持され得る。入口軌道に沿ってイオン偏向器32に直面するイオン流は、偏向角を通して偏向され得るため、イオン流は、追加の下流の質量分析構成要素で処理するために、入口軌道と異なる出口軌道に沿ってイオン偏向器32から出る。
図1に見られるように、イオン偏向器32は、長手方向軸線がイオン流の入口および出口軌道にほぼ垂直である方向(図1の平面に垂直の方向である)に延在する四重極ロッドセットを備える、四重極イオン偏向器として構成され得る。イオン偏向器32中の四重極ロッドは、電源(電圧源42であり得る)から適切な電圧を供給され、イオン偏向器の四重極に偏向電場を作り出すことができる。四重極ロッドの構成および印加される電圧により、得られる偏向電場は、ほぼ90度の角度を通って入ってくるイオン流中の電荷粒子を偏向するのに効果的であり得る。よって、イオン流の出口軌道は、入口軌道(ならびに四重極の長手方向の軸線)とほぼ直交し得る。
理解されるように、示される四重極構成に配置されるイオン偏向器32は、他の中性に電荷された非スペクトル干渉物が識別される一方で、出口までイオン流中の種々のイオン集団(分析物イオンおよび干渉型イオンの両方)を選択的に偏向することができる。よって、イオン偏向器32は、その中性変化により四重極に形成される偏向電場とほとんど、またはあまり相互作用しない光の光子、中性粒子(中性子または他の中性原子もしくは分子)、ならびにイオン流からの他のガス分子を選択的に取り除くことができる。イオン偏向器32は、イオン流から非スペクトル干渉物を排除する可能性のある手段の1つとして、および同じ結果を達成する他の手段が便利でないかもしれない質量分析計10の実施形態において、質量分析計10に含まれ得る。当業者に公知のように、イオンビームをセルの中に導入する前に、イオン流から非スペクトル干渉物を排除する、または減少させるための他の技法がある。
出口軌道に沿ってイオン偏向器32を一度出たイオン流は、加圧セル36の入口端に送られ、それによって加圧セル36の入口端に位置する入口レンズ38等の、加圧セル36の適切な入口部材を通って加圧セル36の中に収容され得る。したがって、入口レンズ38は、イオン流を加圧セルの中に受容するためのイオン入口を提供することができる。イオン偏向器32が質量分析計10に含まれない場合、イオン流は、スキマー16(または含まれる場合、二次的なスキマー18)のいずれかから入口レンズ38に直接送られ得る。加圧セル36の出口端の入口レンズ38の下流に、出口レンズ46等の適切な出口部材も提供され得る。出口レンズ46は、加圧セル36を移動するイオンが質量分析計10の下流の質量分析構成要素に排出され得る開口部を提供してもよい。他の大きさの開口部も加圧セル36からのイオン流を受容し、排出することが可能であり得るが、入口レンズ38は、出口レンズ46の3mmの出口レンズ開口部と比較して、4.2mmの入口レンズ開口部を有することができる。また、加圧セル36は、一般に、真空槽30から切り離され、以下により詳細に説明されるように、ある量の衝突(反応性または不活性のいずれか)ガスを格納するのに適切な内部空間を画定することができる。
加圧セル36は、その内部空間内に四重極ロッドセット40を含む四重極加圧セルであり得る。従来のように、四重極ロッドセット40は、流入するイオン流の通路と同一線上である共通の長手方向の軸線の周囲に均一に配置される4つの円筒形のロッドを備えることができる。四重極ロッドセット40は、例えば、電力用接続44を使用して、電圧源42に連結されて、そこから四重極ロッドセット40内に四重極場を作り出すのに適したRF電圧を受電することができる。理解されるように、四重極ロッドセット40に形成される電場は、加圧セル36の入口端から出口端に向かうその長さに沿って送られるイオンについて放射状閉じ込めを提供することができる。図2A〜2Bにより良く図示されるように、四重極ロッドセット40中の対角線上に対向するロッドは、一緒に結合されて、それぞれ、電圧源42から位相外れのRF電圧を受電することができる。dcバイアス電圧も、場合によっては、四重極ロッドセット40に提供され得る。電圧源42は、加圧セル36にセルオフセット(dcバイアス)電圧も供給することができる。
四重極ロッドセット40は、さらに、その長手方向軸線に沿って入口レンズ38および出口レンズ46と同一線上に整合され、それによって、イオン流中のイオンに加圧セル36を通る完全な横断通路を提供することができる。よって、四重極ロッドセット40の入口の楕円は、入口レンズ38と整合されて、流入するイオン流を受容することができる。入口レンズ38は、完全に、または少なくとも実質的に入口の楕円内にイオン流を方向付け、例えば、限定されないが2mm〜3mmの範囲の選択された最大空間幅を有するイオン流を提供するように適切に寸法決定(例えば、4.2mm)され得る。よって、入口レンズ38は、イオン流の大半または全て、しかし最小で相当の部分が四重極ロッドセット40の許容楕円の中に方向付けされるように寸法決定され得る。スキマー16および18も、イオン流の空間幅に影響を及ぼすように寸法決定され得る。このようにして、イオン流は、四重極ロッドセット40の上流で集束されて、イオンの損失を減少させ、四重極ロッドセット40を通して効率的な伝送を提供することができる。
ガス入口47も、加圧セル36に含まれ、ガスの源48と加圧セル36の内部空間との間に流体連通を提供することができる。ガスの源48は、ある量の選択されたガスを加圧セル36の中に注入して、イオン流中のイオンと衝突するように操作可能であり得る。ガスの源48は、本発明の実施形態により、複数の異なる種類のガス間で選択可能であり得る。そのため、例えば、ガスの源48は、ある量の不活性ガス、例えば、ヘリウムまたはネオン等を加圧セル36内に所定の圧力まで提供することができる。より一般的には、不活性ガスは、イオン流中の分析物イオン種および干渉イオン種の両方に対して実質的に不活性であるあらゆるガスであり得る。さらに、イオン流中の第1のイオン群が第1の多原子干渉種、およびイオン流中の第2のイオン群が第2の一原子分析物種と仮定すれば、選択された不活性衝突ガスは、第2のイオン群より実質的に大きい割合の第1のイオン群と衝突して、第1の群の個々のイオンのエネルギーを第2の群の個々のイオンより平均して大幅に減少させることができる。したがって、不活性ガスは、KEDについて、加圧セル36を操作するのに適した種類のものであり得る。
さらに、ガスの源48は、複数の異なる反応性ガス種から選択されたある量の反応性ガスで加圧セル36を提供することもできる。反応性ガスは、同時に1つ以上の分析物イオン種に対して不活性である一方で、例えば、干渉イオン種と反応性であるように選択され得る。あるいは、選択された反応性ガスは、干渉イオン種に対して不活性であり、分析物イオンの1つ以上と反応性であってもよい。本発明の実施形態は、いずれかのシナリオを対象とすることができる。例えば、限定されないが、ガスの源48は、米国特許6,140,638号および同第6,627,912号に記載される様式で、加圧セル36内に選択された反応性ガスを提供することができる。したがって、反応性ガスが干渉イオン種と反応性であるように選択される場合、分析物イオン種のみを送るように、その後、質量フィルタリングが加圧セル36において実施され得る。あるいは、反応性ガスは、対象とする分析生成物イオンを生成するために、スペクトル干渉種以外のイオンの集団と反応性であるように選択され得る。選択され得る反応性ガス種の1つは、アンモニア(NH)である。反応性ガスは、不活性ガスと同じ所定圧力であり得るが、異なる所定の圧力でもあり得る、所定の圧力まで加圧セル36内に提供され得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、不活性ガスおよび反応性ガスの両方が、1ミリトール〜40ミリトールの範囲内の所定の圧力まで加圧セル36内に提供され得る。
ポンプ22、26、および34等の機械的なポンプであり得るポンプ(示さず)も、加圧セル36に流体結合することができ、加圧セル36内に格納されるガスを排気するように操作可能であり得る。ポンプおよびガスの源48の同時操作を通して、加圧セル36は、質量分析計10の操作中、適切な衝突ガスで反復的かつ選択的に充填された後、空にされ得る。例えば、加圧セル36は、ある量の不活性ガスで充填された後、空にされ得、ガスの源48により提供される選択されたある量の反応性ガスを充填することと空にすることが交互に行われる。このように、加圧セル36は、DRCおよびKEDモードにおいて、交互のかつ選択的な操作に適し得る。しかしながら、理解されるように、かつ以下により詳細に説明されるように、質量分析計10の他の構成要素の他のパラメータも、操作のモードに基づき調整され得る。
質量分析計10中の四重極ロッドセット40の上流に位置するイオン光学要素も、例えば、イオン流中の種々のイオン集団の対応する範囲の観点から、各それぞれのエネルギー分布を制御し、イオン源12から四重極ロッドセット40への伝送中のエネルギー分離を最小にするように構成され得る。この制御の一態様は、地電位で、またはわずかに低い地電位で入口レンズ38を維持し、それによって、イオン集団におけるエネルギー分離を引き起こす可能性がある入口レンズ38でのあらゆるイオン電場の相互作用を最小にすることを伴う。例えば、入口レンズ38は、−5V〜+2Vの範囲にある入口電位を有する電源42により供給され得る。あるいは、入口レンズ38に供給される入口電位は、−3V〜0(地電位)の範囲であり得る。比較的低いレベルで入口電位の規模を維持することにより、イオン流中の異なるイオン群の対応するエネルギー分布を比較的小さい範囲内に保つように補助することができる。
いくつかの実施形態において、イオン流中の各それぞれのイオン集団についての対応するエネルギー分布の範囲は、ICPイオン源20から加圧セル36への伝送中、対応する初期範囲の5%内にあるように制御され、維持され得る。あるいは、各イオン集団のそれぞれのエネルギー分布は、その中の不活性ガスとの衝突を通して、加圧セル36に良好な運動エネルギー識別を提供するように選択された最大範囲内にあるように制御され、維持され得る。対応するエネルギー分布のこの最大範囲は、半値全幅で測定される約2eVに等しくてもよい。
出口レンズ46も、選択された出口電位で維持されるように、電圧源42によりdc電圧を供給され得る。いくつかの実施形態において、出口レンズ46は、加圧セル36の出口端に向かって加圧セル36中の正電荷イオンを引き寄せるように、入口レンズ38に提供される入口電位より低い(すなわち、より負の)出口電位を受電することができる。さらに、出口電位の絶対規模は、供給される入口電位より大きい、おそらくさらに有意に大きくてもよい。出口レンズ46が維持され得る出口電位は、いくつかの実施形態において、−40V〜−18Vに画定される範囲内であり得る。出口電位は、より具体的には、およそ−35V〜−25Vの範囲内であり得る。出口レンズ46および入口レンズ38が同じ電圧源、この場合電圧源42によって供給される厳密な必要性はないことを理解するべきである。1つ以上の異なる電圧源は、電圧を提供するために、これらの構成要素(またはシステム10中の他のあらゆる構成要素)に連結され得る。
質量分析器50は、加圧セル36の下流に位置し、任意に、その間に置かれる前置フィルタスタビロッド52を備える。質量分析器50は、一般に、分離四重極質量分析器、六重極質量分析器、飛行時間型(TOF)質量分析器、線形イオントラップ分析器、またはこれらの要素のいくつかの組み合わせを含むがこれらに限定されない、あらゆる種類の適切な質量分析器であり得る。図1に示されるように、質量分析器50は四重極を備え、米国特許第6,177,668号に説明される質量選択軸方向射出(MSAE)用に構成され得、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。したがって、電圧源56は、下流の質量分析器50に連結されて、適切なRF/DC電圧、および任意に米国特許第6,177,668号に説明されるMSAEに使用するための補助電圧を供給することができる。質量分析器50の中に受容されたイオンは、質量分化され(MSAEの場合、空間であって、時間ではない)、検出のために、理解されるようにあらゆる適切な検出器であり得る検出器54に送られ得る。電圧源56は、下流オフセット(dc)バイアス電圧を質量分析器50に供給することもできる。質量分析器50は、機械的なポンプ58によって排気される真空槽に格納され得る。
前置フィルタ52は、加圧セル36と下流の質量分析器50との間に置くことができ、これらの2つの構成要素間の移動要素として使用される。したがって、前置フィルタ52は、加圧セル36と下流の質量分析器50との間のイオン流の放射状閉じ込めを提供し、生じる可能性がある縞電界の作用を減少させるために、RFのみのモードで操作され得る。他の実施形態において、前置フィルタ52は、例えば、空間電荷の問題等に対処するために、四重極分析器50の中に送られる前にイオンのさらなる質量フィルタリングを提供するようにdc電圧を受電することもできる。
本明細書に上述されるように、加圧セル36はセルオフセット電圧が供給され、質量分析器50は下流オフセット電圧が供給され得、これは対応する構成要素に連結された単一または複数の異なる電圧源により供給されるdc電圧であり得る。各印加されたオフセット電圧の振幅は、完全に制御可能であり得る。したがって、間接的に、またはおそらく直接的に、セルオフセット電圧と下流電圧との間の差異も制御することができる。
ある場合において、下流オフセット電圧は、セルオフセット電圧より正であり、それによって、質量分析器50を加圧セル36の上の電位で維持することができる。加圧セル36から質量分析器50に送る正イオンについて、この電位差は、イオンが克服すべき正電位障壁を提示することができる。換言すれば、相対的な正の差異は、イオンが貫通する加圧セル36の下流端で出口障壁を作り出すことができる。したがって、少なくとも一定の最小運動エネルギーを有するイオンは、出口障壁を貫通することができ、一方で、十分な運動エネルギーを有さない遅いイオンは、加圧セル36内に捕捉され得る。出口障壁の強度が、例えば、質量分析器50と加圧セル36との間の電位差の大きさの制御を通して適切に選択される場合、出口障壁は、もう1つと比較したイオンの一集団または一群に対して選択的に識別することができるため、もう一方と比較したより大きな割合の1つのイオン群が、障壁によって捕捉され、加圧セル36から出るのを防止することができる。下流オフセット電圧をセルオフセット電圧より正であるように制御することにより、質量分析計10をKED操作に適するようにさせることができる。
しかしながら、別の場合において、下流およびセルオフセット電圧(よって、その間の差異も)は、セルオフセット電圧を下流オフセット電圧より正にするように制御され得る。よって、オフセット電圧がこのように制御されることにより、質量分析計10はDRC操作に適し得る。上述の場合のように出口障壁を提供するよりも、加圧セル36より低い電位で質量分析器50を維持することにより、イオンを加速させて加圧セル36から質量分析器50の中に入れ、それらの2つの段階の間で分析物イオンのより効率的な伝送を提供することができる。上述のように、干渉イオンは、反応性ガスと反応して、後に加圧セル36を調節して、狭い帯域フィルタを分析物イオンのm/zの周囲に適用することにより、不安定化され、排出され得る生成物イオンを形成することができる。このように、分析物イオンのみが加速され、質量分析器50の中に入ることができる。捕捉要素が加圧セル36の下流に提供される場合、電位低下により提供される加速力も、時折、例えば、断片化が望まれる場合には、分析物イオンの捕捉したイオン断片化を誘発するのに有効な方式であり得る。
モード制御器60は、二重KED/DRC操作のために質量分析計10の操作を制御し、協調させることができる。この目的について、モード制御器60は、ガス源48、ポンプ、加圧セル36用の電圧源42、および下流の質量分析器50用の電圧源56、ならびに図1に示されない質量分析計10に含まれる他のあらゆる電圧源またはガス源のそれぞれに連結され得る。したがって、モード制御器60は、質量分析計10を、KEDからDRCモードへの操作、さらにDRCからKEDモードに戻る操作に切り替えるように操作可能であり得る。より一般的には、モード制御器60は、これら2つのモードの操作間で選択的に切り替えることができる。より詳細に説明されるように、1つのモード操作からもう一方のモード操作に切り替えるために、モード制御器60は、必要に応じて、1つ以上の他の設定またはパラメータに基づき、質量分析計システム10の1つ以上の設定またはパラメータを設定、調整、再設定、または別の方法で制御することができる。
モード制御器60は、プロセッサおよびプロセッサに連結されるメモリを含むハードウェアまたはソフトウェア構成要素の両方を備えることができる。公知のように、プロセッサは、中央演算処理装置(CPU)、マイクロコントローラ、またはマイクロプロセッサ、汎用コンピュータ、特定用途演算処理装置等の形態で提供され得る。メモリは、プロセッサが実行可能な命令ならびに他のシステムデータが持続形態で記憶され得る、揮発性および不揮発性記憶媒体の両方を備えることができる。モード制御器60は、それらの異なる化合物のm/z比、イオン化エネルギー、および他の共通情報を含むことができる、原子、分子、イオン等についての情報のデータベースも含むことができる。データベースは、2つの化合物が分子を形成するかどうか、または別の方法で相互に対して不活性であるかどうか等の、異なる化合物の他の化合物との反応性に関するさらなるデータを含むことができる。メモリに記憶される命令は、事実上システムの制御可能なモデルを提供できる質量分析計10用のソフトウェアモジュールまたは制御ルーチンを実行することができる。以下により詳細に説明されるように、モード制御器60は、プロセッサで実行される1つまたは複数のソフトウェアモジュールと一緒にデータベースからアクセスされる情報を使用して、KEDおよびDRCモードの操作を含む質量分析計10用の異なるモードの操作についての制御パラメータまたは値を決定することができる。質量分析計10において制御命令を受信するための入力インターフェースおよび異なるシステム構成要素に連結される出力インターフェースを使用することにより、モード制御器は、システムに対して能動的制御を実行することができる。
KEDモードの操作において、モード制御器60は、ヘリウム等の不活性ガスの源がガス源48に入るのを可能にし、次いで、ガス源48を駆動して、所定の圧力まである量の不活性ガスで加圧セル36を充填することができる。モード制御器60は、セルオフセット電圧より正であるように下流オフセット電圧を設定することもでき、それによって、加圧セル36の出口端で出口障壁を形成する。例えば、モード制御器60は、KEDモードで操作される時、セルオフセット電圧より2V〜5V正であるように下流電圧を制御することができる。
加圧セル36の中に収容されたイオンは、不活性衝突ガスと衝突し、それらのそれぞれの運動エネルギーの減少を受ける。運動エネルギーの平均減少は、イオン種の平均衝突断面に依存し、衝突断面がより大きいイオンは、2種のイオンが実質的に同じまたは類似するm/z比を有しても、断面がより小さいイオンと比較して、運動エネルギーのより大きな減少を受ける傾向がある。よって、不活性ガスとの衝突により、多原子干渉イオン群は、一原子分析イオン群より大幅に減少したその平均運動エネルギーを有することができる。これらの2つのイオン群の対応するエネルギー分布が、イオン源12から加圧セル36への伝送中に質量分析計10用に選択された最大範囲内にあるように制御される場合、不活性ガスとの衝突は、2つの群の間にエネルギー分離をもたらす可能性がある。よって、より大きな割合の干渉イオン群は、出口障壁の大きさを制御するモード制御器60を通して、より大きな割合の干渉イオンが分析物イオンより出口障壁を貫通することができないという作用により、分析物イオン群と比較してエネルギーが減少する可能性がある。
必要な出口障壁の振幅は、一般に、干渉イオン種および分析物イオン種に依存することができ、したがって、モード制御器60は、干渉イオン種および分析物イオン種のうちの1つまたはその両方に基づき、下流とセルオフセットの電圧との間の差異を制御してもよい。例えば、モード制御器60は、干渉イオン種および/または分析物イオン種に基づき、上に列挙した2V〜5Vの範囲で電圧差を決定することができる。加えて、モード制御器60は、それぞれ、入口レンズ38および出口レンズ46に印加される入口または出口電位等の、他のシステムパラメータに基づき、差異を制御してもよい。モード制御器60は、出口障壁を形成する下流およびセルオフセット電圧を調整または調節するようにも構成され、干渉イオンと分析物イオンとの間の運動エネルギーの識別を向上することができる。さらに、モード制御器60は、加圧セル36の中に入る構成イオン集団のエネルギー分布の範囲を制御するために、入口レンズ38に印加される入口電位を調整するようにも構成され得る。モード制御器60は、四重極閉じ込め電場の強度を設定または調節するために、電圧源42により四重極ロッドセット40に供給されるRF電圧も制御してもよい。このように、モード制御器60は、不活性ガスとの衝突により散乱する時、分析物イオンの少なくとも実質的な部分を四重極ロッドセット40内に閉じ込めるために十分な強度に、四重極ロッドセット40内に四重極閉じ込め電場を設定することができる。モード制御器60による上記決定のいずれも、干渉イオン種および/または分析物イオン種に基づいてもよい。
KEDモードの操作からDRCモードの操作に切り替えるために、モード制御器60は、加圧セル36から不活性ガスを排気するようにポンプに命令することができ、ガス源48中の選択された反応性ガスを、例えば所定の圧力まで加圧セル36の中に送り込むことができる。選択された反応性ガスは、分析物イオンに対して実質的に不活性であるが、干渉イオンと反応性であるもの(またはその逆)であり得る。モード制御器60は、例えば、連結されたデータベースにアクセスすることにより、1つ以上の同定された対象とする分析物イオンに基づき、1つ以上の種類の可能性のある干渉イオンを決定することもできる。モード制御器60により決定された干渉イオン種は、分析物イオン種と実質的に同じまたは類似するm/z比を有してもよい。モード制御器60は、類似する方式で適切な反応性ガスを選択することもできる。適切な反応性ガスが選択され、ガス源48に入れることができると、モード制御器は、ガス源48を制御して、ある量の反応性ガスを加圧セル36の中に注入することができる。
DRCモードで操作するために、モード制御器60は、実質的に米国特許第6,140,638号および同第6,627,912号に記載されるように、質量分析計10の操作を制御してもよい。加えて、モード制御器60は、セルオフセット電圧より負である下流オフセット電圧を供給するために、電圧源42に命令するように構成され得る。これらの2つの電圧の差異は、例えば、4V〜6Vの範囲内にあるように、モード制御器60によって制御されてもよいため、質量分析器50は、加圧セル36より4V〜6V負である電位である。差異の決定は、同様に、干渉イオン種および/または分析物イオン種に基づき行われ得る。モード制御器60は、オフセット電圧差を調整または調節するようにも構成され得る。
DRCモードの操作からKEDモードの操作に戻す切り替えのために、モード制御器60は、選択された反応性ガスを加圧セルから排気するようにポンプに命令し、続いてガス源48を制御して、ある量の不活性ガスを加圧セル内に提供することができる。下流およびセルオフセット電圧ならびに他のシステムパラメータも、KED操作に適するように上述のようにモード制御器60によって調整され得る。
ここで図2A〜2Bを参照すると、本発明の別の実施形態に含まれ得る補助電極62が、それぞれ前方および後方断面図でそこに図示される。これらの図は、四重極ロッドセット40および電圧源42ならびにその間の接続を図示する。ロッド40aの組は、ロッド40bの組(図2b)のように、一緒に結合され得(図2a)、四重極閉じ込め電場を提供する。例えば、ロッド40aの組は、V+A cosωtに等しい電圧で供給され得、ここで、Aは供給されるRFの振幅であり、Vはdcバイアス電圧である。 四重極操作について、ロッド40bの組は、その後、−V−A cosωtに等しい電圧で供給され得る。
補助電極62は、軸方向の電場で四重極閉じ込め電場、すなわち、四重極ロッドセット内の軸方向の位置に依存する電場を補うために、加圧セル36に含まれ得る。図2A〜2Bに図示されるように、補助電極は、一般に、上部分および四重極ロッドセットの長手方向の軸線に向かって半径方向内側に延在するステム部分を含む、T字形の断面を有することができる。ステムブレード部分の半径方向の深度は、補助電極62の長さに沿って先細りのプロファイルを提供するように長手方向の軸線に沿って変動することができる。図2Aは、加圧セル36の下流端から入口端に向かって上流を見る補助電極を示し、図2Bは、入口端から出口端への下流を見る逆の視点を示す。よって、ステム部分の半径方向内側への延在は、補助電極62に沿って下流に移動すると小さくなる。
各個々の電極は、dc電圧を受電するために、電圧源42に一緒に結合され得る。理解されるように、補助電極62のこの幾何学形状および正のdc電圧の印加は、正電荷イオンを加圧セル36の出口端に向かって押す極性の軸方向の電場を作り出すことができる。分割補助電極、発散ロッド、傾斜ロッド、ならびに他の幾何学形状である先細りロッドおよび縮長ロッドを含むが、これらに限定されない、他の補助電極の幾何学形状が同等の作用に使用され得ることも理解するべきである。ロッドの端でのフリンジ作用および他の特定の制限を無視することにより、補助電極により作りだされた軸方向の電場は、実質的に線形のプロファイルを有することができる。線形電場の勾配も、印加されるdc電圧および電極の構成に基づき制御可能であり得る。例えば、印加されるdc電圧は、0.1V/cm〜0.5V/cmの範囲の軸方向の電場勾配を提供するように制御され得る。いくつかの実施形態において、軸方向の電場勾配は、軸方向の電場勾配が0.15V/cm〜0.25V/cmの範囲であるように制御され得る。所与の電極の幾何学形状について、所望の軸方向の電場勾配を達成するために必要なdc電圧をどのように決定するかは、良く理解されている。しかし、これに限定されないが、例として、dc電圧は0〜475Vの範囲である。
モード制御器60は、補助電極62に供給されたdc電圧が、例えば、その軸方向の勾配の観点から画定される、選択された電場強度の軸方向の電場を形成するように、電圧源42を制御することもできる。補助電極62は、異なる電場強度であるが、KEDおよびDRCモードの操作のそれぞれについて電圧を付加され得る。モード制御器60は、それぞれのモードの操作について、相対的な電場強度を制御してもよい。いずれのモードの操作において、補助電極62は、加圧セル36の出口端に向かってイオンを押すことにより減少したエネルギーのイオンを四重極の外に一掃するのに有効であり得る。印加された軸方向の電場強度の規模は、イオン流中の干渉イオン種および分析物イオン種ならびに本明細書に記載される他のシステムパラメータに基づきモード制御器60によって決定され得る。
上記の説明は、実施例および種々の実施形態の具体的な詳細を提供するが、記載される実施形態のいくつかの特色および/または機能が記載される実施形態の範囲から逸脱することなく、修正を認めることを理解するであろう。上記の説明は、本発明の例示であることが意図され、その範囲は、ここに添付の請求項の用語によってのみ限定される。

Claims (28)

  1. 衝突モードと反応モードとを含む少なくとも2つのモードの間でセルの切り替えを可能にするように構成されるシステムであって、
    前記セルを加圧するために前記衝突モードで衝突ガスを受容するように構成され、かつ前記セルを加圧するために前記反応モードで反応性ガスを受容するように構成される、四重極ロッドセットを含むセルと、
    前記セルの前記四重極ロッドセットに電気的に結合され、且つ前記セル内の四重極場を提供するために前記四重極ロッドセットに電圧源から波形を供給するために構成される制御器であって、選択される障壁エネルギーより大きいエネルギーを備えるイオンを選択するために、前記衝突モードで前記セルの前記四重極ロッドセットへ前記電圧源から電圧を提供するように構成され、質量フィルタリングを使用してイオンを選択するために、前記反応モードで前記セルの前記電圧源から電圧を提供するようにさらに構成される、制御器と、
    を備える、システム。
  2. 前記衝突モードと前記反応モードとで前記セルの前記四重極ロッドセットに供給された前記電圧はオフセット電圧であるように構成される、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記システムは、前記セルによって前記イオンの伝送を可能にする通気モードへの切り替えを可能にするようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
  4. 前記システムは、前記セルに結合されるガスマニホールドをさらに備え、且つ前記衝突モードで前記衝突ガスと前記反応モードで前記反応ガスを供給するように構成される、請求項1に記載のシステム。
  5. 前記セルは、前記制御器に電気的に結合される出口開口部を含むように構成される、請求項1に記載のシステム。
  6. 前記セルは、前記制御器に電気的に結合される入口開口部を含むように構成される、請求項5に記載のシステム。
  7. 前記制御器は、前記反応性ガスを前記セルの中に導入する前に前記セルを枯渇させ、前記衝突モードと前記反応モードとの間で前記セルを切り替えるように構成される、請求項1に記載のシステム。
  8. 前記制御器は、前記衝突ガスを前記セルの中に導入する前に前記セルを枯渇させ、前記反応モードと前記衝突モードとの間で前記セルを切り替えるように構成される、請求項1に記載のシステム。
  9. 前記セルに結合される質量分析器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
  10. 前記質量分析器のオフセット電圧は、前記セルが前記衝突モードで操作される時、前記セルの前記四重極ロッドセットのオフセット電圧より正である、請求項9に記載のシステム。
  11. 前記質量分析器のオフセット電圧は、前記セルが前記反応モードで操作される時、前記セルの前記四重極ロッドセットのオフセット電圧より負である、請求項10に記載のシステム。
  12. 圧セルに結合されるイオン化源をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
  13. 前記イオン化源は、誘導結合プラズマである、請求項12に記載のシステム。
  14. 前記セルに結合される追加のセルであって、前記追加のセルを加圧するために前記衝突モードで前記衝突ガスを受容し、前記追加のセルを加圧するために前記反応モードで前記反応性ガスを受容するように構成され、前記四重極ロッドセットを備える、前記追加のセルをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
  15. 前記制御器は、前記反応モードで前記セルおよび前記追加のセルのうちの少なくとも1つを操作し、通気モードで前記もう一方のセルを操作するように構成される、請求項14に記載のシステム。
  16. 前記制御器は、前記衝突モードで前記セルおよび前記追加のセルのうちの少なくとも1つを操作し、通気モードで前記もう一方のセルを操作するように構成される、請求項14に記載のシステム。
  17. 前記制御器は、前記衝突モードで前記セルおよび前記追加のセルのうちの少なくとも1つを操作し、前記反応モードで前記もう一方のセルを操作するように構成される、請求項14に記載のシステム。
  18. 衝突モードと反応モードとの間で四重極セルを切り替える方法であって、
    前記セルを加圧するために前記衝突モードで衝突ガスを受容するように構成され、且つ前記セルを加圧するために前記反応モードで反応性ガスを受容するように構成される、前記セルは、前記セル内の四重極場を供給するために有効な四重極ロッドセットを含み、前記四重極セル内に第1のイオン流を導入することと、
    選択される障壁エネルギーより大きいエネルギーを構成するイオンの選択を可能にするために第1の電圧を構成する前記セルにおいて、前記衝突モードで前記セル内の前記衝突ガスを導入することによって導入された前記第1のイオン流から前記選択される障壁エネルギーより大きい前記エネルギーを構成する前記イオンを選択することと、
    前記セルから導入された前記第1のイオン流と導入された前記衝突ガスを
    枯渇することと、
    前記セル内に第2のイオン流を導入することと、
    質量フィルタリングを使用してイオンの選択を可能にするために第2の電圧を構成する前記セルにおいて、前記反応モードで前記反応性ガスを導入することによって導入された前記第2のイオン流から前記質量フィルタリングを使用して前記イオンを選択することと、
    を備える、方法。
  19. 前記セルから導入された前記第2のイオン流と導入された前記反応性ガスとを枯渇することと、
    前記セル内に追加のイオン流を導入することと、
    前記選択される障壁エネルギーより大きい前記エネルギーを構成する前記イオンの選択を可能にするために第3の電圧を構成する前記セルにおいて、前記衝突モードで前記セル内の前記衝突ガスを導入することによって導入された前記追加のイオン流から前記選択される障壁エネルギーより大きい前記エネルギーを構成する前記イオンを選択することと、
    をさらに備える、請求項18に記載の方法。
  20. オフセット電圧として前記選択される障壁エネルギーより大きい前記エネルギーを構成する前記イオンの選択を可能にするために前記第1の電圧を構成することをさらに備える、請求項19に記載の方法。
  21. フセット電圧を備える質量分析器に結合するために前記オフセット電圧を備える前記セルから前記イオンを供給することをさらに備える、請求項20に記載の方法。
  22. 前記セルが前記衝突モードのとき、前記セルの前記オフセット電圧より正になるように、前記質量分析器の前記オフセット電圧を構成することをさらに備える、請求項21に記載の方法。
  23. 前記セルが前記反応モードのとき、前記セルの前記オフセット電圧より負になるように、前記質量分析器の前記オフセット電圧を構成することをさらに備える、請求項21に記載の方法。
  24. 反応モードと衝突モードとの間で四重極セルを切り替える方法であって、
    前記セルを加圧するために前記衝突モードで衝突ガスを受容するように構成され、かつ前記セルを加圧するために前記反応モードで反応性ガスを受容するように構成される、前記セルは、前記セル内の四重極場を供給するために有効な四重極ロッドセットを含み、前記四重極セル内に第1のイオン流を導入することと、
    質量フィルタリングを使用して前記イオンの選択を可能にするために第1の電圧を構成する前記セルにおいて、前記反応モードで前記セル内に前記反応性ガスを導入することによって導入された前記第1のイオン流から前記質量フィルタリングを使用して前記イオンを選択することと、
    前記セルから導入された前記第1のイオン流と導入された前記反応性ガスを枯渇することと、
    前記セル内に第2のイオン流を導入することと、
    選択される障壁エネルギーより大きいエネルギーを構成する前記イオンの選択を可能にするために第2の電圧を構成する前記セルにおいて、前記衝突モードで前記セル内の前記衝突ガスを導入することによって導入された前記第2のイオン流から前記選択される障壁エネルギーより大きい前記エネルギーを構成する前記イオンを選択することと、
    を備える、方法。
  25. 前記セルから導入された前記第2のイオン流と導入された前記衝突ガスとを枯渇することと、
    前記セル内に追加のイオン流を導入することと、
    前記質量フィルタリングを使用して前記イオンの選択を可能にするために第3の電圧を構成する前記セルにおいて、前記反応モードで前記反応性ガスを導入することによって導入された前記追加のイオン流から前記質量フィルタリングを使用して前記イオンを選択することと、
    をさらに備える、請求項24に記載の方法。
  26. オフセット電圧を備える質量分析器に結合するために前記セルから前記イオンを供給することをさらに備える、請求項24に記載の方法。
  27. 前記セルが前記衝突モードのとき、前記セルの前記オフセット電圧より正になるように、前記質量分析器の前記オフセット電圧を構成することをさらに備える、請求項26に記載の方法。
  28. 前記セルが前記反応モードのとき、前記セルの前記オフセット電圧より負になるように、前記質量分析器の前記オフセット電圧を構成することをさらに備える、請求項26に記載の方法。
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