以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の説明では、同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、重複する説明を省略することがある。
図1は本発明に係る電気泳動表示素子の構成例を示す側断面図である。
図1に示す電気泳動表示素子1は、第1基板2、第2基板3、及び電気泳動層4を備えている。第1基板2は、第2基板3に対向して配置されている。電気泳動層4は、第1基板2と第2基板3との間に配置されている。電気泳動表示素子1は、例えば、第1基板2と第2基板3のうちの一方の基板の上に電気泳動層4を形成した後に、電気泳動層4の上に他方の基板を貼り合せることによって、製造される。
第1基板2は、積層フィルム5、素子層6、及び複数の画素電極7を備えている。画素電極7は、後述する共通電極15と一対の電極をなしている。積層フィルム5は、基材8及びバリア膜9を備えている。基材8は、薄板状又はフィルム状である。バリア膜9は、基材8の片面に形成されている。素子層6は、基材8の上に形成されたバリア膜9の上に積層されている。複数の画素電極7は、素子層6の上に形成されている。
電気泳動層4は、複数のマイクロカプセル10を有している。複数のマイクロカプセル10は、第1基板2から第2基板3へ向かう方向の交差方向に並んでいる。マイクロカプセル10は、分散媒11、電気泳動粒子12、及び電気泳動粒子13を内包している。
第2基板3は、積層フィルム14、及び共通電極15を備えている。積層フィルム14は、基材16及びバリア膜17を備えている。基材16は、薄板状又はフィルム状である。バリア膜17は、基材16の片面に形成されている。共通電極15は、基材16に形成されたバリア膜17の上に積層されている。
第1基板2と第2基板3は、画素電極7と共通電極15とが向き合うように対向して配置されて電気泳動層4を挟んだ状態で、互いに貼り合わされている。電気泳動層4は、第1基板2と第2基板3との間に気密に封止されている。
電気泳動表示素子1は、概略すると以下のように動作する。電気泳動表示素子1は、複数の画素を有している。電気泳動表示素子1は、画素電極7と共通電極15との間に画素ごとに独立して、画像信号に応じた電界を印加可能である。各画素において、電気泳動粒子12は、印加された電界に応じて、画素電極7側又は共通電極15側に偏在するようにマイクロカプセル10の内部を電気泳動する。電気泳動粒子13は、印加された電界に応じて、電気泳動粒子12とは反対側に偏るように電気泳動する。電気泳動表示素子1の表示側に電気泳動粒子12、13のいずれを偏在させるかによって、画素ごとに明表示と暗表示とを切替えることが可能である。このように、電気泳動表示素子1は、画素ごとに画像信号に応じた表示を行うことが可能である。
次に、電気泳動表示素子1の各構成要素について説明する。
画素電極7は、電気泳動表示素子1の画素ごとに独立して設けられている。共通電極15は、電気泳動表示素子1の複数の画素にまたがって設けられている。画素電極7と共通電極15は、それぞれ、公知の導電材料から選択される材料で形成可能である。画素電極7と共通電極15とのうちで、電気泳動層4に対して表示側と同じ側に配置される電極は、透光性を有する材料で形成される。画素電極7と共通電極15とのうちで、電気泳動層4に対して表示側と反対側に配置される電極は、透光性を有する材料で形成されていてもよいし、反射や吸収により光を遮光する遮光性の材料で形成されていてもよい。本実施形態では、電気泳動層4に対して画素電極7と同じ側が表示側であるとする。
上記の透光性を有する材料としては、インジウム錫酸化物やインジウム亜鉛酸化物、スズ酸化物等が挙げられる。画素電極7として、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。本例の画素電極7は、積層フィルム5を基材(基板)として、積層フィルム5の上に形成されている。画素電極7の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。上記の遮光性の材料としては、金、銀、クロム、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属材料が挙げられる。
素子層6は、その詳細な構造の図示を省略するが、層間絶縁膜等を介して形成されたスイッチング素子及び各種配線を含んでいる。素子層6のスイッチング素子は、画素ごとに設けられている。素子層6のスイッチング素子は、画素電極7と電気的に接続されている。素子層6のスイッチング素子は、画素電極7への電圧(画像信号)の印加をスイッチングする。素子層6のスイッチング素子は、上記の各種配線と電気的に接続されている。素子層6の各種配線は、スイッチング素子の制御や画像信号の供給などを行うドライバー等と電気的に接続されている。
電気泳動層4は、例えば、第1基板2の上に多数のマイクロカプセル10を含んだ液状体(インク)をスクリーン印刷などで印刷することによって、形成可能である。電気泳動表示素子1において、第1基板2と第2基板3との間のマイクロカプセル10の周辺は、実際にはバインダー等で満たされているが、図1ではバインダーの図示を省略している。
マイクロカプセル10は、電気泳動粒子12及び電気泳動粒子13を分散媒11に分散させた分散液を、カプセル内に封入したものである。電気泳動粒子12、13は、分散媒中で電位差による電気泳動により移動する性質を有する有機あるいは無機の粒子(高分子あるいはコロイド)である。電気泳動粒子12は、可視光に対する反射率又は吸収率が電気泳動粒子13と異なっている。本実施形態では、電気泳動粒子12が黒色粒子であり、電気泳動粒子13が白色粒子である。また、電気泳動粒子12と電気泳動粒子13の一方の粒子は正に帯電しており、他方の粒子は負に帯電している。
電気泳動粒子12及び電気泳動粒子13は、顔料の粒子であってもよいし、コア材の外側に樹脂などの被膜を設けた粒子であってもよい。分散媒11の種類と、電気泳動粒子12、13の種類との組み合わせには特に限定はない。分散媒11の種類や電気泳動粒子12、13の種類については、重力による電気泳動粒子12、13の偏在を抑制する等の観点で、分散媒11の比重と、電気泳動粒子12、13の比重とを考慮して選択することができる。
分散媒11としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブ等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等の各種エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等の長鎖アルキル基を有するベンゼン類等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、カルボン酸塩又はその他の種々の油類等の単独又はこれらの混合物に界面活性剤等を配合したものを用いることができる。
積層フィルム5、14は、基材の片面にバリア膜を形成したものである。このバリア膜は、水蒸気及び酸素ガスに対してガスバリア性を有している。積層フィルム5は、バリア膜9を電気泳動層4に向けて配置されている。積層フィルム14は、バリア膜17を電気泳動層4に向けて配置されている。積層フィルム5は、その構造や特性が積層フィルム14と同様である。すなわち、基材8は、その構造や特性が基材16と同様である。また、バリア膜9は、その構造や特性がバリア膜17と同様である
なお、基材8と基材16とで厚みが同じでもよいし、異なっていてもよい。また、バリア膜9とバリア膜17とで厚みが同じでもよいし、異なっていてもよい。積層フィルム5と積層フィルム14の少なくとも一方について、その両面にバリア膜が設けられていてもよい。積層フィルムの両面にガスバリア性を有するバリア膜を設けることにより、ガスバリア性を高めることができる。
積層フィルム5は、基材8にプラズマ化学気相成長法(以下、プラズマCVD法という)でバリア膜9を形成したものである。バリア膜8における第1電極2側の表面の粗度は、最大表面高さをRmaxとしたときに、Rmax<200nmである。バリア膜8の表面の粗度が上記の条件を満たすことにより、バリア膜8上にデバイスを構成する膜を形成するときに、この膜の形成不良の発生を抑制することができる。これにより、例えば、第1電極2の断線や破壊が発生することを抑制することができる。バリア膜8における第1電極2側の表面の粗度は、好ましくはRmax<150nm、より好ましくはRmax<100nmを満たし、さらに好ましくはRmax<50nmを満たし、特に好ましくはRmax<25nmを満たすとよい。上記のRmaxが小さくなるほど、デバイスを構成する上記の膜の形成不良の発生を抑制する効果が高くなる。
基材8は、無色透明な樹脂からなるフィルム又はシートである。基材8に用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリイミド系樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中で、耐熱性及び線膨張率が高く、製造コストが低いという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、PET、PENが特に好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
基材8の厚みは、バリア膜9を形成するときの安定性等を考慮して、適宜設定可能である。基材8の厚みは、例えば5μm以上500μm以下の範囲内に設定されていてもよい。これにより、基材8を、例えばバリア膜9を形成するときの真空雰囲気中で、安定して搬送することができる。プラズマCVD法によりバリア膜9を形成する場合には、基材8の厚みが10μm以上200μm以下の範囲内に設定されているとよく、50μm以上100μm以下の範囲内に設定されているとさらによい。これにより、プラズマCVD法による成膜中に、基材8を通してプラズマ発生用の放電を安定して行うことができる。
ところで、電気泳動表示素子における一対の電極や電気泳動層等の構成要素が酸素ガスや水蒸気等に触れると、これら構成要素が劣化すること等によって電気泳動表示素子の性能低下や短寿命化を招くことがある。本実施形態の電気泳動表示素子は、次に説明するように、酸素ガスや水蒸気に対して十分なガスバリア性を有している。
本実施形態に係るバリア膜9、14は、それぞれ、1層以上の薄膜層を有しており、薄膜層のうちの少なくとも1層は、後に説明する所定の条件を満たすように形成されている。本実施形態に係るバリア膜9、14は、所定の条件を満たすように形成されていることによって、屈曲によるガスバリア性の低下が抑制されている。これにより、本実施形態に係るバリア膜9、14は、バリア膜9、14が屈曲した状態を経た後であっても、一般的に電気泳動表示素子に要求されるガスバリア性を発現することが可能である。
薄膜層の膜厚は、5nm以上3000nm以下の範囲内に設定されていることが好ましく、10nm以上2000nm以下の範囲内に設定されていることがより好ましく、100nm以上1000nm以下の範囲内に設定されていることが特に好ましい。薄膜層の膜厚が上記の範囲の下限値以上であれば、一般的に電気泳動表示素子に要求されるガスバリア性を確保することが容易になる。薄膜層の膜厚が上記範囲の上限値以下であれば、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が高くなる。
なお、積層フィルム5に複数の薄膜層が設けられていてもよい。複数の薄膜層の総厚は、例えば10nm以上10000nm以下の範囲内に設定される。複数のバリア膜の総厚は、10nm以上5000nm以下の範囲内に設定されていることが好ましく、100nm以上3000nm以下の範囲内に設定されていることがより好ましく、200nm以上2000nm以下の範囲内に設定されていることが特に好ましい。複数のバリア膜の総厚が上記範囲の下限値以上であれば、一般に電気泳動表示素子に要求されるガスバリア性(酸素透過率、水蒸気透過率)を確保することが容易になる。複数のバリア膜の総厚が上記範囲の上限値以下であれば、複数のバリア膜の屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が高くなる。
なお、積層フィルム5は、基材8及びバリア膜9の他に、プライマーコート層、ヒートシール性樹脂層、接着剤層の1以上を有していてもよい。プライマーコート層は、基材8とバリア膜9との接着性を向上させるのに用いられる。プライマーコート層は、公知のプライマーコート剤等を適宜用いて、形成することができる。ヒートシール性樹脂層は、公知のヒートシール性樹脂等を適宜用いて、形成することができる。接着剤層は、複数の積層フィルム5を互いに接着することや、積層フィルム5を他の部材と接着すること等に用いられる。接着剤層は、公知の接着剤等を適宜用いて、形成することができる。
次に、本実施形態に係るバリア膜について詳しく説明する。以下の説明では、薄膜層の表面を膜表面と称することがある。薄膜層の膜厚方向を単に膜厚方向と称し、薄膜層の表面に平行な方向を膜面方向と称することがある。膜厚方向と膜面方向は、実質的に直交する方向である。
本実施形態に係る第1態様のバリア膜は、珪素、酸素及び炭素を含有する薄膜層(以下、第1薄膜層という)を有している。第1薄膜層は、珪素原子の原子比、酸素原子の原子比、及び炭素原子の原子比が所定の条件を満たすように、形成されている。各原子の原子比は、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する、対象の原子の量の比率である。原子比の単位は、at%である。例えば、珪素原子の原子比は、上記の合計量に対する珪素原子の量の比率である。上記の所定の条件は、下記の第1条件、第2条件、及び第3条件をいずれも満たす条件である。
本実施形態では、膜厚方向における膜表面からの距離と、各距離の位置での局所的な珪素原子の原子比との関係を示す曲線を珪素分布曲線という。同様に、膜厚方向における膜表面からの距離と、各距離の位置での局所的な酸素原子の原子比との関係を示す曲線を酸素分布曲線という。また、膜厚方向における膜表面からの距離と、各距離の位置での局所的な炭素原子の原子比との関係を示す曲線を炭素分布曲線という。また、膜厚方向における膜表面からの距離と、各距離の位置での局所的な酸素原子の原子比及び炭素原子の原子比の合計との関係を示す曲線を酸素炭素分布曲線という。
上記の第1条件は、炭素分布曲線は、実質的に連続である条件である。炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことである。具体的には、膜厚方向における膜表面からの距離をx[nm]、炭素の原子比をC[at%]としたときに、下記の式(1)を満たすことが好ましい。
|dC/dx|≦ 1 ・・・(1)
上記の第2条件は、炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有する条件である。ここでいう極値は、膜厚方向における膜表面からの距離に対する各元素の原子比の極大値又は極小値である。極値は、膜厚方向における膜表面からの距離を変化させたときに、元素の原子比が増加から減少に転じる点、又は元素の原子比が減少から増加に転じる点での原子比の値である。極値は、例えば、膜厚方向において複数の測定位置のそれぞれで原子比を測定した測定結果に基づいて、求めることができる。原子比の測定位置は、膜厚方向の間隔が例えば20nm以下に設定される。極値をとる位置は、各測定位置での測定結果を含んだ離散的なデータ群について、例えば互いに異なる3以上の測定位置での測定結果の差分を求めることによって比較し、測定結果が増加から減少に転じる位置又は減少から増加に転じる位置を求めることによって、得ることができる。極値をとる位置は、例えば、上記の離散的なデータ群から求めた近似曲線を微分することによって、得ることもできる。極値をとる位置から原子比が単調増加又は単調減少する区間が例えば20nm以上である場合に、極値をとる位置から膜厚方向に20nmだけ移動した位置での原子比と、極値との差の絶対値は例えば3at%以上である。
第2条件を満たすように形成された第1薄膜層は、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、第2条件を満たさない場合と比較して少なくなる。すなわち、第2条件を満たすことにより、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が得られる。炭素分布曲線の極値の数が2つ以上になるように第1薄膜層を形成すると、炭素分布曲線の極値の数が1つである場合と比較して、上記の増加量が少なくなる。また、炭素分布曲線の極値の数が3つ以上になるように第1薄膜層を形成すると、炭素分布曲線の極値の数が2つである場合と比較して、上記の増加量が少なくなる。炭素分布曲線が2つ以上の極値を有する場合に、第1の極値をとる位置の膜厚方向における膜表面からの距離と、第1の極値と隣接する第2の極値をとる位置の膜厚方向における膜表面からの距離との差の絶対値が、1nm以上200nm以下の範囲内であることが好ましく、1nm以上100nm以下の範囲内であることがさらに好ましい。
上記の第3条件は、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上である条件である。第3条件を満たすように形成された第1薄膜層は、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、第3条件を満たさない場合と比較して少なくなる。すなわち、第3条件を満たすことにより、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が得られる。炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が6at%以上であると上記の効果が高くなり、7at%以上であると上記の効果がさらに高くなる。
珪素分布曲線における珪素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が低くなるほど、第1薄膜層のガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点で、上記の絶対値は、5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。
また、酸素炭素分布曲線において、各距離の位置での局所的な酸素原子の原子比及び炭素原子の原子比の合計を「合計原子比」としたときに、合計原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が低くなるほど、第1薄膜層のガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点で、上記の合計原子比は、5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。
膜面方向において、第1薄膜層を実質的に一様な組成にすると、第1薄膜層のガスバリア性を均一にするとともに向上させることができる。実質的に一様な組成であるとは、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線において、膜表面の任意の2箇所で極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
また、第1薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線、及び炭素分布曲線は、下記の第4条件を満たすことが好ましい。第4条件は、珪素分布曲線、酸素分布曲線、及び炭素分布曲線において第1薄膜層の膜厚の90%以上の領域で、第5条件又は第6条件を択一的に満たす条件である。
第5条件は、酸素の原子比が珪素の原子比よりも大きく、かつ、珪素の原子が炭素の原子比よりも大きい条件である。第4条件は、下記の式(2)で表される。
(酸素の原子比)>(珪素の原子比)>(炭素の原子比)・・・(2)
第6条件は、炭素の原子比が珪素の原子比よりも大きく、かつ、珪素の原子が酸素の原子比よりも大きい条件である。第5条件は、下記の式(3)で表される。
(炭素の原子比)>(珪素の原子比)>(酸素の原子比)・・・(3)
第4条件を満たすように形成された第1薄膜層は、一般的に電気泳動表示素子に要求されるガスバリア性を発現することが可能である。第1薄膜層の膜厚のうちで第5条件又は第6条件を択一的に満たす範囲が増加するほど、第1薄膜層のガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点で、第1薄膜層の膜厚のうちで第5条件又は第6条件を択一的に満たす範囲は、第1薄膜層の膜厚の95%以上であることが好ましく、第1薄膜層の膜厚の略100%であることがさらに好ましい。
上記の第5条件を満たす場合に、第1薄膜層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、25at%以上45at%以下であることが好ましく、30at%以上40at%以下であることがより好ましい。上記の第4条件を満たす場合に、第1薄膜層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率は、33at%以上67at%以下であることが好ましく、45at%以上67at%以下であることがより好ましい。上記の第4条件を満たす場合に、第1薄膜層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率は、3at%以上33at%以下であることが好ましく、3at%以上25at%以下であることがより好ましい。
上記の第6条件を満たす場合に、第1薄膜層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、25at%以上45at%以下であることが好ましく、30at%以上40at%以下であることがより好ましい。上記の第5条件を満たす場合に、第1薄膜層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率は、1at%以上33at%以下であることが好ましく、10at%以上27at%以下であることがより好ましい。上記の第5条件を満たす場合に、第1薄膜層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率は、33at%以上66at%以下であることが好ましく、40at%以上57at%以下であることがより好ましい。
第1態様のバリア膜は、2以上の第1薄膜層を有していてもよい。第1態様のバリア膜は、第1薄膜層の他に、構成元素の種類、各構成元素の原子の量の比率(原子比)、及び原子比の分布のうちの1以上の項目が第1薄膜層とは異なる薄膜層(以下、他の薄膜層という)を有していてもよい。他の薄膜層は、窒素とアルミニウムの少なくとも一方を含有していてもよい。他の薄膜層は、珪素、酸素、及び炭素に加えて、窒素とアルミニウムの少なくとも一方を含有していてもよい。他の薄膜層は、ガスバリア性を有していなくても構わない。
本実施形態に係る第2態様のバリア膜は、下記の第7条件を満たす薄膜層(以下、第2薄膜層という)を有する。第7条件は、膜厚方向における膜表面からの距離と電子線透過度との関係を示す電子線透過度曲線が少なくとも1つの極値を有する条件である。電子線透過度は、膜厚方向の各位置において、第2薄膜層の材料を電子線が透過する度合いを表す指標である。電子線透過度の測定方法としては各種の公知の方法を採用することができ、例えば透過型電子顕微鏡を用いた測定方法、走査型電子顕微鏡を用いて2次電子や反射電子を測定することにより電子線透過度を測定する測定方法等を採用することができる。
上記の極値は、膜厚方向における膜表面からの距離に対する電子線透過度の極大値又は極小値である。極値は、膜厚方向における膜表面からの距離を変化させたときに、電子線透過度が増加から減少に転じる点、又は電子線透過度が減少から増加に転じる点での電子線透過度の値である。極値は、例えば膜厚方向において複数の測定位置のそれぞれで電子線透過度を測定した測定結果に基づいて、求めることができる。電子線透過度の測定位置は、膜厚方向の間隔が例えば20nm以下に設定される。極値をとる位置は、各測定位置での測定結果を含んだ離散的なデータ群について、例えば互いに異なる3以上の測定位置での測定結果を比較し、測定結果が増加から減少に転じる位置又は減少から増加に転じる位置を求めることによって、得ることができる。極値をとる位置は、例えば、上記の離散的なデータ群から求めた近似曲線を微分することによって、得ることもできる。極値の有無の判定方法の具体例については、後述する。
第7条件を満たすように形成された第2薄膜層は、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、第7条件を満たさない場合と比較して少なくなる。すなわち、第7条件を満たすことにより、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が得られる。電子線透過度曲線の極値の数が2つ以上になるように第2薄膜層を形成すると、電子線透過度曲線の極値の数が1つである場合と比較して、上記の増加量が少なくなる。また、電子線透過度曲線の極値の数が3つ以上になるように第2薄膜層を形成すると、電子線透過度曲線の極値の数が2つである場合と比較して、上記の増加量が少なくなる。電子線透過度曲線が2つ以上の極値を有する場合に、第1の極値をとる位置の膜厚方向における膜表面からの距離と、膜厚方向で第1の極値の次に第2の極値をとる位置の膜厚方向における膜表面からの距離との差の絶対値が、1nm以上200nm以下の範囲内であることが好ましく、1nm以上100nm以下の範囲内であることがさらに好ましい。
第2薄膜層は、第2薄膜層の透明性及びガスバリア性を両立する観点では、酸化珪素が主成分であること好ましい。主成分とは、材質の全成分の質量に対してその成分の含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上であることをいう。上記の酸化珪素は、一般式がSiOXで表される酸化珪素について、Xが1.0以上2.0以下であることが好ましく、Xが1.5以上2.0以下であることがさらに好ましい。上記の一般式におけるXは、膜厚方向で一定の値でもよいし、膜厚方向で変化していてもよい。
第2薄膜層は、珪素、酸素、及び炭素を含有していてもよい。この場合に、第2薄膜層は、一般式がSiOXCYで表される化合物が主成分であることが好ましい。この一般式において、Xは2未満の正数から選択され、Yは2未満の正数から選択される。上記の一般式におけるX、Y及びZの1つ以上が、膜厚方向で一定の値でもよいし、膜厚方向で変化していてもよい。
第2薄膜層は、珪素、酸素、炭素、及び水素を含有していてもよい。この場合に、第2薄膜層は、一般式がSiOXCYHZで表される化合物が主成分であることが好ましい。この一般式において、Xは2未満の正数、Yは2未満の正数、Zは6未満の正数からそれぞれ選択される。上記の一般式におけるX、Y、Z、及びHの1つ以上が、膜厚方向で一定の値でもよいし、膜厚方向で変化していてもよい。第2薄膜層は、珪素、酸素、炭素、水素以外の元素、例えば窒素、ホウ素、アルミニウム、リン、イオウ、フッ素、塩素のうちの1以上を含有していてもよい。第2薄膜層は、上記の第1態様のバリア膜に関して説明した第1条件、第2条件、及び第3条件のうちの1以上を満たしていてもよい。すなわち、第2薄膜層は、第1薄膜層と同一の構造をとりえる。
次に、本実施形態に係る積層フィルムの製造方法及び特性について説明する。
本実施形態の積層フィルムは、基材上にバリア膜を形成することにより製造される。本実施形態のバリア膜を基材上に形成する方法としては、例えばプラズマCVD法が挙げられる。プラズマCVD法でバリア膜を形成すれば、緻密な膜質のバリア膜を形成することができ、ガスバリア性を向上させる上で有利である。なお、プラズマ化学気相成長法は、ペニング放電プラズマ方式のプラズマ化学気相成長法であってもよい。また、バリア膜を形成する前に、形成後のバリア膜と基材との密着性が向上するように、基材の表面を清浄するための表面活性処理を施してもよい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
図2は、積層フィルムの製造装置の一例を示す図である。
図2に示す製造装置50は、送り出しロール51、巻き取りロール52、搬送ロール53〜56、成膜ロール57、58、ガス供給管59、プラズマ発生用電源60、電極61、62、及び磁場発生装置63、64を備えている。製造装置50の構成要素のうちで少なくとも成膜ロール57、58、ガス供給管59、及び磁場発生装置63、64は、積層フィルムを製造するときに、図示略の真空チャンバー内に配置される。この真空チャンバーは、図示略の真空ポンプに接続される。真空チャンバーの内部の圧力は、真空ポンプの動作により調整される。
送り出しロール51には、フィルムFが巻き取られている。本例において、フィルムFは、基材8の母材である。製造装置50は、フィルムFにプラズマCVD法で薄膜層を形成可能である。なお、製造装置50を用いて、2層以上の薄膜層を含んだバリア膜を形成することもできる。例えば、フィルムFとして、1層の薄膜層が母材上に形成されたフィルムを用いると、母材上に2層目の薄膜層を積層することができる。以下同様に、必要な回数だけ薄膜層の積層を繰り返すことによって、複数層の薄膜層を含んだバリア膜を形成することができる。
フィルムFは、送り出しロール51から搬送ロール53を経由して、成膜ロール57へ搬送される。フィルムFは、成膜ロール57から、搬送ロール54及び搬送ロール55を経由して、成膜ロール58へ搬送される。フィルムFは、成膜ロール58から搬送ロール56を経由して巻き取りロール52へ搬送され、巻き取りロール52に巻き取られる。
成膜ロール57と成膜ロール58は、互いに対向するように配置されている。本例の成膜ロール57の軸は、成膜ロール58の軸と実質的に平行である。本例の成膜ロール57の直径は、成膜ロール58の直径と実質的に同じである。本例では、フィルムFが成膜ロール57上を搬送されているとき、及びフィルムFが成膜ロール58上を搬送されているときに、フィルムFに薄膜層が形成される。
製造装置50は、成膜ロール57と成膜ロール58とに挟まれる空間SPに、プラズマを発生可能である。プラズマ発生用電源60は、電極61及び電極62と電気的に接続されている。電極61と電極62は、空間SPを挟むように、配置されている。電極61及び電極62は、プラズマ発生用電源60と電気的に接続されている。本例では、電極61が成膜ロール57の一部であり、電極62が成膜ロール58の一部である。
製造装置50は、プラズマ発生用電源60から電極61及び電極62に供給される電力によって、プラズマを発生可能である。プラズマ発生用電源60としては、公知の電源等を適宜用いることができる。本例のプラズマ発生用電源60は、電極61及び電極62の極性を交互に反転可能な交流電源である。プラズマ発生用電源60は、効率よく成膜可能にする観点で、その印加電力が例えば100W以上10kW以下に設定され、かつ交流の周波数が例えば50Hz以上500kHz以下に設定される。
磁場発生装置63及び磁場発生装置64は、空間SPに磁場を発生可能である。磁場発生装置63及び磁場発生装置64は、成膜ロール57上での搬送方向及び成膜ロール58上での搬送方向で磁束密度が変化するように、磁場を発生させてもよい。本例の磁場発生装置63は、成膜ロール57の内部に配置されている。本例の磁場発生装置64は、成膜ロール58の内部に配置されている。本例の磁場発生装置63、64は、成膜ロール57、58の回転に伴って姿勢が変化しないように、取付けられている。
ガス供給管59は、薄膜層の形成に用いる供給ガスGを空間SPに供給可能である。供給ガスGは、薄膜層の原料ガスを含む。ガス供給管59から供給された原料ガスは、空間SPに発生するプラズマによって分解される。原料ガスの分解を経て、薄膜層の膜成分が生成される。薄膜層の膜成分は、成膜ロール57上を搬送されているフィルムF上、及び成膜ロール58上を搬送されているフィルムF上に堆積する。
原料ガスとしては、例えば珪素を含有する有機珪素化合物を用いることができる。このような有機珪素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機珪素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られる薄膜層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機珪素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、原料ガスとして、上述の有機ケイ素化合物の他にモノシランを含有させ、形成するバリア膜のケイ素源として使用することとしてもよい。
供給ガスGは、原料ガスの他に反応ガスを含んでいてもよい。反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
供給ガスGは、キャリアガスと放電用ガスの少なくとも一方を含んでいてもよい。キャリアガスとしては、原料ガスの真空チャンバー内への供給を促進するガスを適宜選択して用いることができる。放電用ガスとしては、空間SPでのプラズマ放電の発生を促進するガスを適宜選択して用いることができる。キャリアガス及び放電用ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
本例では、珪素−酸素系の薄膜層を製造する場合を例に挙げて説明する。本例の供給ガスGは、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機珪素化合物:HMDSO:(CH3)6Si2O:)と、反応ガスとしての酸素(O2)とを含有している。
プラズマCVD法において、ヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有する供給ガスGを反応させると、下記の式(4)に示す反応により、二酸化珪素が生成される。
(CH3)6Si2O+12O2→6CO2+9H2O+2SiO2 ・・・(4)
供給ガスG中の原料ガスの量に対する反応ガスの量の比率は、例えば、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために化学量論的に必要な反応ガスの量の比率(化学量論比)に対して、過剰に高くなり過ぎないように設定される。例えば、式(4)に示す反応において、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに化学量論的に必要な酸素量は12モルである。すなわち、供給ガスGがヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有している場合に、理論上は、薄膜層として均一な二酸化珪素膜が形成されることになる。実際には、供給された反応ガスの一部が反応に寄与しないことがある。そこで、原料ガスを完全に反応させるには、通常は化学量論比よりも高い比率で反応ガスを含むガスが供給される。実際に原料ガスを完全に反応させうる反応ガスの原料ガスに対するモル比(以下、実効比率という)は、実験等によって調べることができる。例えば、プラズマCVD法でヘキサメチルジシロキサンを完全酸化するには、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍(実効比率が20)以上にする場合もある。このような観点で、供給ガスG中の原料ガスの量に対する反応ガスの量の比率は、実効比率(例えば20)未満でもよいし、化学量論比(例えば12)以下でもよく、化学量論比よりも低い値(例えば10)でもよい。また、薄膜層の透明性を確保する観点では、原料ガスの量に対する反応ガスの量の比率が0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。
以上のように、原料ガスを完全に反応させる上で反応ガスが不足する条件に設定すると、完全酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子が薄膜層中に取り込まれる。これにより、薄膜層において、膜厚方向における膜表面からの距離に対する原子比の分布、又は膜厚方向における膜表面からの距離に対する電子線透過度の分布が所定の条件を満たすように、薄膜層を形成することができる。例えば、製造装置50において、原料ガスの種類、供給ガスG中の原料ガスのモル量に対する反応ガスのモル量の比率、電極61、62に供給する電力、真空チャンバー内の圧力、成膜ロール57、58の直径、フィルムFの搬送速度等のパラメータの1以上を適宜調整することによって所定の条件を満たすように、薄膜層を形成することができる。なお、上記のパラメータの1以上について、フィルムFが空間SPに面する成膜エリアを通過する期間内に時間的に変化させてもよいし、成膜エリア内で空間的に変化させてもよい。
上記の電極61、62に供給する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができる。電極61、62に供給する電力は、例えば0.1kW以上10kW以下の範囲内に設定される。電極61、62に供給する電力が0.1kW以上であれば、パーティクルの発生が抑制される。電極61、62に供給する電力が10kW以下であれば、電極61、62からフィルムFが受ける熱によってフィルムFにシワや損傷を生じることが抑制される。また、フィルムFの損傷に伴って成膜ロール57、58間に異常放電が発生することが回避され、成膜ロール57、58が異常放電によって損傷することも回避される。上記の真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができる。真空チャンバー内の圧力は、例えば0.1Pa以上50Pa以下の範囲内に設定される。フィルムFの搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができる。フィルムFの搬送速度は、例えば0.1m/min以上100m/min以下の範囲内に設定されていてもよいし、0.5m/min以上20m/min以下の範囲に設定されていてもよい。搬送速度が、上記の範囲の下限以上であれば、フィルムFに熱等によって皺が発生することが抑制される。搬送速度が、上記の範囲の上限以下であれば、形成される薄膜層の膜厚を増すことが容易になる。
次に、実施例及び比較例に基づいて、本実施形態に係る積層フィルムを具体的に説明するが、本発明の適用範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図3(a)は、実施例1におけるバリア膜の断面を示す画像、図3(b)は実施例1のバリア膜の膜厚方向における基準面からの距離に対する電子線透過度を示すグラフ、図4は実施例1のバリア膜における原子比の分布を示すグラフである。なお、バリア膜の膜厚方向は、薄膜層の膜厚方向と実質的に同じである。
実施例1では、図2に示した製造装置50を用いて積層フィルムを製造した。フィルムFとして、2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を用いた。このフィルムFは、厚みが100μm、幅が350mmである。積層フィルムの製造に際して、フィルムFを送り出しロール51に装着した。そして、磁場発生装置63、64により空間SPに磁場を発生させるとともに、プラズマ発生用電源60から電極61及び電極62に電力を供給して空間SPに放電を行って、空間SPにプラズマを発生させた。そして、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と、反応ガス及び放電ガスとして機能する酸素ガスとを含んだ供給ガスGを、プラズマの発生とともに空間SPに供給して、下記の成膜条件にてプラズマCVD法によりフィルムFに薄膜層を形成し、この薄膜層をバリア膜とする積層フィルムを得た。実施例1の成膜条件において、原料ガスの供給量は0℃の1気圧換算で50sccm、酸素ガスの供給量は0℃の1気圧換算で500sccm、真空チャンバー内の真空度は3Pa、プラズマ発生用電源60からの印加電力は0.8kW、プラズマ発生用電源の周波数は70kHz、フィルムFの搬送速度は0.5m/minである。得られた積層フィルムにおける薄膜層の厚みは0.3μmであった。得られた積層フィルムにおけるバリア膜の表面の粗度を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、面積が1μm2の領域内で最大表面高さRmaxは、13nmであった。
実施例1の積層フィルムについて、膜厚方向における基準面からの距離と電子線透過度との関係を示す電子線透過度曲線を作成した。上記の基準面は、薄膜層の表面と平行な所定の面である。本実施例では、基材と薄膜層との界面近傍に基準面を設定した。本実施例では、下記のようにして電子線透過度曲線を作成した。
まず、積層フィルムの薄膜層の表面上に保護層を設けた。そして、集束イオンビームを用いて、積層フィルムを切断して試料を作製した。試料の表面の法線方向は、膜厚方向に直交する方向である。試料の表面の法線方向における、試料の寸法は100nmに設定した。そして、透過型電子顕微鏡(TEM、日立製作所(株)製、型番「FE−SEM HF−2000」)を用いて、試料の表面を10万倍の倍率にて観察し、図2(a)に示す画像を得た。観察条件において、加速電圧が200KVであり、対物絞りが160μmである。図2の(a)に示すように、TEMの画像には縞状の模様が観察された。この画像において、膜厚方向は、縞状の模様の延在方向に直交する方向(画像の横方向)である。
次に、画像処理ソフト(アドビシステム社製、商品名「Adobe PhotoShop Elements7」)を用いて、上記のTEMの画像をパーソナルコンピュータで解析した。具体的には、画像の一部分を切り出して濃淡像を得た。そして、切り出した濃淡像を格子状に区画し、膜厚方向にて700個、膜面方向にて500個の単位領域に分割した。濃淡像において、200nmが202個の単位領域分に相当する長さであった。そして、得られた濃淡像の各単位領域に対して、濃淡の程度を示す断面濃淡変数を求めた。具体的には、TEMの画像を8ビットのグレイ画像とし、各単位領域に対して単位領域に含まれる画素の階調値を用いて、断面濃淡変数を求めた。8ビットのグレイ画像における階調値は、黒に相当する0から白に相当する255までの256段階である。測定対象の領域を単位領域に区画する操作、及び断面濃淡変数を求める操作は、画像解析ソフト(リガク社製、商品名「Rigaku R−AXIS Display Software Ver.1.18」)を用いて行った。
次に、膜厚方向における基準面からの距離が所定の値となる単位領域の断面濃淡変数の平均値を算出して、算出した平均値を膜厚方向濃淡変数とした。断面濃淡変数の平均値は、基準面からの距離が所定の値となる任意の100点以上の単位領域の断面濃淡変数の平均値であることが好ましい。本実施例では、膜厚方向の各位置において、膜面方向に並んだ500個の単位領域の断面濃淡変数の平均値を計算して、膜厚方向濃淡変数を求めた。
次に、膜厚方向濃淡変数のノイズ除去作業を行った。ノイズ除去作業には、移動平均法、補間法等を利用することができる。移動平均法としては、単純移動平均法、加重移動平均法、指数平滑移動平均法等が挙げられる。本実施例では、単純移動平均法を用いてノイズを除去した。単純移動平均法を用いてノイズを除去する場合に平均をとる範囲は、膜厚方向の薄膜層の構造の典型的な寸法、例えば薄膜層の膜厚よりも十分に小さく、ノイズ除去後のデータが十分に滑らかになるように、適宜選択することが好ましい。データの補間法としては、スプライン補間法、ラグランジュ補間法、線形補間法等が挙げられるが、スプライン補間法、ラグランジュ補間法を採用することがより好ましい。
なお、薄膜層の両界面付近では、膜厚方向における膜表面からの距離の変化に対する膜厚方向濃淡変数の変化が緩やかになる領域(以下、遷移領域という)が発生することある。遷移領域が発生する要因として、薄膜界面の非平面性や、上記のノイズ除去作業でのデータの丸めなどが考えられる。遷移領域は、電子線透過度曲線の極値の有無を判定する基準を明確にするという観点から、極値の有無の判定に用いる判定領域から除去することが望ましい。
本実施例では、以下の方法により、電子線透過度曲線において極値の有無の判定に用いる判定領域から遷移領域を除去した。まず、膜厚方向において、薄膜層の両界面付近で電子線透過度曲線の傾きの絶対値が最大になる位置を、仮界面位置として設定する。次に、仮界面位置の外側から内側(薄膜層側)に向かって、電子線透過度曲線の傾きの絶対値を順次確認する。この絶対値が、閾値となる膜厚方向における基準面からの距離を求め、この距離に相当する位置を薄膜層の界面の位置として設定する。上記の閾値は、画像解析の対象となる画像の階調値が256段階である場合に、例えば0.1nm−1である。そして、薄膜層の界面の外側の領域を遷移領域として、判定領域から除去する。
次に、薄膜層に相当する範囲の膜厚方向濃淡変数の平均値が1となるように、膜厚方向濃淡変数を規格化した。そして、積層フィルムにおいて、膜厚方向における基準面からの距離に対する膜厚方向濃淡変数の関係を示すグラフを作成した。膜厚方向濃淡変数は、電子線透過率と比例関係にあるので、規格化した膜厚方向濃淡変数を、規格化した電子線透過率として扱うことができる。
本実施例では、以下のようにして極値の有無を判定した。電子線透過度曲線が極値を有しないことは、電子線透過曲線が単調増加又は単調減少であることに相当する。電子線透過曲線が単調増加である場合には、膜厚方向の電子線透過曲線の傾きの最小値が正の値となる。電子線透過曲線が単調減少である場合には、膜厚方向の電子線透過曲線の傾きの最大値が負の値となる。すなわち、理論上は、膜厚方向の電子線透過度曲線の傾きが正の値及び負の値を含んでいれば、電子線透過度曲線が極値を有することになる。実際には、極値を有しない電子線透過度曲線であっても、電子線透過率の測定誤差等のノイズに起因して、極値があると判断される可能性がある。
本実施例では、以下の基準によりノイズによる変動と極値とを区別した。まず、膜厚方向濃淡変数の傾きが0をはさんで符号が逆転する点を仮極値点とする。そして、仮極値点における膜厚方向濃淡変数と、この仮極値点に隣接する他の仮極値点での膜厚方向濃淡変数との差の絶対値が閾値以上である場合に、仮極値点は極値を持つ点であると判定する。なお、隣接する仮極値点が2つある場合には、差の絶対値が大きい方を選択する。画像解析の対象となる画像の階調値が256段階であって、膜厚方向濃淡変数の平均値を1として規格化した膜厚方向濃淡変数に基づく電子線透過曲線である場合に、上記の閾値は例えば0.03である。
図3(b)のグラフにおいて、横軸は膜厚方向における基準面からの距離を示し、縦軸は規格化した電子線透過率である。図3(b)に示すように、実施例1における電子線透過度曲線は、複数の明確な極値を有している。電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲は、膜厚方向における基準面からの距離が210nm以上520nm以下となる範囲である。電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲において、膜厚方向の基準面からの距離で電子線透過度曲線を微分した傾きを算出した。傾きの最大値及び最小値を求めたところ、傾きの最大値は3.79×10−3nm−1であり、傾きの最小値は−4.75×10−3nm−1であった。傾きの最大値及び最小値の差の絶対値は8.54×10−3nm−1であった。電子線透過度曲線において、隣接する極大値と極小値の電子線透過度の差の絶対値が0.03以上となる部位が散見された。このように、実施例1では、上述した極値の有無の判定方法にしたがってノイズとは区別された極値が検出された。すなわち、実施例1の積層フィルムにおける薄膜層は、所定の条件として第7条件を満たすことが確認された。
また、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を求めた。膜表面からの各距離における原子比は、例えばXPSデプスプロファイル測定によって得られる。XPSデプスプロファイル測定では、イオンスパッタ等で試料をエッチングすることにより、エッチング前の試料表面からの各距離(深さ)における試料内部を順に露出させる。そして、露出した試料内部の各深さでの表面組成分析を、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)等によって行う。これにより、膜厚方向の膜表面からの各距離における原子比が得られる。
実施例1では、下記の測定条件でXPSデプスプロファイル測定を行った。XPSデプスプロファイル測定に使用したX線光電子分光装置は、Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」である。測定に際して、X線光電子分光装置の照射X線は単結晶分光AlKαに設定し、X線のスポット及びそのサイズは800×400μmの楕円形に設定した。測定条件において、エッチングイオン種はアルゴン(Ar+)、エッチングレートはSiO2熱酸化膜換算値で0.05nm/sec、エッチング間隔はSiO2換算値で10nmにそれぞれ設定した。
図4に示すグラフにおいて、縦軸は原子比であり、横軸は膜厚方向における膜表面からの距離を示す値である。XPSデプスプロファイル測定において、膜厚方向における膜表面からの距離は、エッチング速度及びエッチング時間を用いて算出可能であり、エッチング速度が実質的に一定である場合にエッチング時間に比例する。図4のグラフでは、第1横軸にエッチング時間を示し、第2横軸に膜厚方向における膜表面からの距離の算出値を示している。
図4に示すように、実施例1における薄膜層は、炭素分布曲線が実質的に連続であること(第1条件)、炭素分布曲線が複数の明確な極値を有すること(第2条件)、炭素分布曲線において炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること(第3条件)が確認された。このように、実施例1の積層フィルムにおける薄膜層は、所定の条件として第1条件〜第3条件を全て満たすことが確認された。
また、実施例1の積層フィルムに対して、屈曲させる前の水蒸気透過度、及び屈曲させた後の水蒸気透過度を測定し、積層フィルムのガスバリア性を評価した。
屈曲させる前の水蒸気透過度は、2種類の測定条件で測定した。第1の測定条件では、水蒸気透過度測定機(GTRテック社製、機種名「GTRテック−30XASC」)を用いて測定した。第1の測定条件において、測定環境の温度は40℃、積層フィルムの片面側(低湿度側)の湿度は0%RH、積層フィルムのもう片面側(高湿度側)の湿度は90%RHに設定した。第1の測定条件で水蒸気透過度は、3.1×10−4g/(m2・day)であった。第2の測定条件では、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて測定した。第2の測定条件において、測定環境の温度は40℃、低湿度側の湿度は10%RH、高湿度側の湿度は100%RHに設定した。第2の測定条件で水蒸気透過度は、検出限界以下の値であった。以上のように、積層フィルムは、電気泳動表示素子における一対の電極及び電気泳動層への水蒸気の侵入を抑制するのに十分なガスバリア性を発現可能であることが確認された。
屈曲させた後の水蒸気透過度は、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて測定した。測定に際して、測定環境の温度は40℃、低湿度側の湿度は10%RH、高湿度側の湿度は100%RHに設定した。また、水蒸気透過度の測定に先立ち、金属製の棒に積層フィルムを巻き付けて1分放置した後に、積層フィルムを平らに戻して試料とした。なお、金属製の棒に積層フィルムを1回転だけ巻き付けたときの積層フィルムの曲率半径は、金属製の棒の直径の1/2とほぼ同じになる。金属製の棒に積層フィルムを複数回巻き付けたときの積層フィルムの曲率半径は、金属製の棒の径方向で外側の積層フィルムであるほど、積層フィルムの厚み及び巻き数の分だけ金属製の棒の直径の1/2よりも大きくなる。ここでは、金属製の棒に積層フィルムを複数回巻き付けたときの積層フィルムの曲率半径は、巻き付けられたフィルムの外周の直径の1/2を曲率半径とする。曲率半径8mmで屈曲後に平面に戻した状態での積層フィルムの水蒸気透過度は、検出限界以下の値であった。このように、実施例1の積層フィルムは、屈曲によるガスバリア性の低下が十分に抑制されていることが確認された。
(実施例2)
図5(a)は、実施例2におけるバリア膜の断面を示す画像、図5(b)は実施例2のバリア膜の膜厚方向における基準面からの距離に対する電子線透過度を示すグラフ、図6は実施例2のバリア膜における原子比の分布を示すグラフである。
実施例2では、実施例1と同様の薄膜層を3層積層してバリア膜を形成した。具体的には、実施例1と同様にして、フィルムFに厚みが0.3μmの薄膜層を形成した。そして、1層目の薄膜層が形成されたフィルムFを送り出しロール51に装着し、1層目の薄膜層の上に2層目の薄膜層を0.3μmの厚みで形成した。そして、2層目の薄膜層が形成されたフィルムFを送り出しロール51に装着し、2層目の薄膜層の上に3層目の薄膜層を0.3μmの厚みで形成した。得られた積層フィルムにおいて、複数の薄膜層の総厚は、0.9μmであった。得られた積層フィルムにおけるバリア膜の表面の粗度を原子間力顕微鏡で測定したところ、面積が1μm2の領域内で最大表面高さRmaxは、13nmであった。
実施例2の積層フィルムに対して、実施例1と同様にして、膜厚方向における基準面からの距離と電子線透過度との関係を示す電子線透過度曲線を作成した。図5(b)に示すように、実施例2における電子線透過度曲線は、複数の明確な極値を有している。電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲は、膜厚方向における基準面からの距離が50nm以上920nm以下となる範囲である。電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲において、膜厚方向の基準面からの距離で電子線透過度曲線を微分した傾きを算出した。傾きの最大値及び最小値を求めたところ、傾きの最大値は1.59×10−3nm−1であり、傾きの最小値は−1.82×10−3nm−1であった。傾きの最大値及び最小値の差の絶対値は3.41×10−3nm−1であった。電子線透過度曲線において、隣接する極大値と極小値の電子線透過度の差の絶対値が0.03以上となる部位が散見された。このように、実施例2では、上述した極値の有無の判定方法にしたがってノイズとは区別された極値が検出された。すなわち、実施例2の積層フィルムにおける薄膜層は、所定の条件として第7条件を満たすことが確認された。
また、実施例2の積層フィルムに対して、実施例1と同様にして、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を求めた。図6に示すように、3層の薄膜層のいずれについても、炭素分布曲線が実質的に連続であること(第1条件)、炭素分布曲線が複数の明確な極値を有すること(第2条件)、炭素分布曲線において炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること(第3条件)が確認された。このように、実施例2の積層フィルムにおける薄膜層は、所定の条件として第1条件〜第3条件を全て満たすことが確認された。
また、実施例2の積層フィルムに対して、実施例1と同様にしてガスバリア性を評価した。屈曲させる前の水蒸気透過度は、2種類の測定条件で測定した。第1の測定条件では、水蒸気透過度測定機(GTRテック社製、機種名「GTRテック−30XASC」)を用いて測定した。第1の測定条件において、測定環境の温度は40℃、積層フィルムの片面側(低湿度側)の湿度は0%RH、積層フィルムのもう片面側(高湿度側)の湿度は90%RHに設定した。第1の測定条件で水蒸気透過度は、6.9×10−4g/(m2・day)であった。第2の測定条件では、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて測定した。第2の測定条件において、測定環境の温度は40℃、低湿度側の湿度は10%RH、高湿度側の湿度は100%RHに設定した。第2の測定条件で水蒸気透過度は、検出限界以下の値であった。以上のように、積層フィルムは、電気泳動表示素子の一対の電極及び電気泳動層側への水蒸気の侵入を抑制するのに十分なガスバリア性を発現可能であることが確認された。
屈曲させた後の水蒸気透過度は、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて測定した。測定に際して、測定環境の温度は40℃、低湿度側の湿度は10%RH、高湿度側の湿度は100%RHに設定した。曲率半径8mmで屈曲後に平面に戻した状態での積層フィルムの水蒸気透過度は、検出限界以下の値であった。このことから、実施例2の積層フィルムは、屈曲によるガスバリア性の低下が十分に抑制されていることが確認された。
(実施例3)
図7は実施例3のバリア膜における原子比の分布を示すグラフである。
実施例3では、原料ガスの供給量を0℃の1気圧換算で100sccmとした以外は実施例1と同様にして薄膜層を形成し、この薄膜層をバリア膜とする積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムにおける薄膜層の厚みは0.6μmであった。得られた積層フィルムにおけるバリア膜の表面の粗度を原子間力顕微鏡で測定したところ、面積が1μm2の領域内で最大表面高さRmaxは、12nmであった。
また、実施例3の積層フィルムに対して、実施例1と同様にして、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を求めた。図7に示すように、薄膜層は、炭素分布曲線が実質的に連続であること(第1条件)、炭素分布曲線が複数の明確な極値を有すること(第2条件)、炭素分布曲線において炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること(第3条件)が確認された。このように、実施例3の積層フィルムにおける薄膜層は、所定の条件として第1条件〜第3条件を全て満たすことが確認された。
また、実施例3の積層フィルムに対して、実施例1と同様にしてガスバリア性を評価した。屈曲させる前の水蒸気透過度は、2種類の測定条件で測定した。第1の測定条件では、水蒸気透過度測定機(GTRテック社製、機種名「GTRテック−30XASC」)を用いて測定した。第1の測定条件において、測定環境の温度は40℃、積層フィルムの片面側(低湿度側)の湿度は0%RH、積層フィルムのもう片面側(高湿度側)の湿度は90%RHに設定した。第1の測定条件で水蒸気透過度は、3.2×10−4g/(m2・day)であった。第2の測定条件では、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて測定した。第2の測定条件において、測定環境の温度は40℃、低湿度側の湿度は10%RH、高湿度側の湿度は100%RHに設定した。第2の測定条件で水蒸気透過度は、検出限界以下の値であった。以上のように、積層フィルムは、電気泳動表示素子の一対の電極及び電気泳動層側への水蒸気の侵入を抑制するのに十分なガスバリア性を発現可能であることが確認された。
屈曲させた後の水蒸気透過度は、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて測定した。測定に際して、測定環境の温度は40℃、低湿度側の湿度は10%RH、高湿度側の湿度は100%RHに設定した。曲率半径8mmで屈曲後に平面に戻した状態での積層フィルムの水蒸気透過度は、検出限界以下の値であった。このことから、実施例3の積層フィルムは、屈曲によるガスバリア性の低下が十分に抑制されていることが確認された。
(比較例1)
図8(a)は、比較例1におけるバリア膜の断面を示す画像、図8(b)は比較例1のバリア膜の膜厚方向における基準面からの距離に対する電子線透過度を示すグラフ、図9は比較例1のバリア膜における原子比の分布を示すグラフである。
比較例1では、基材の上に酸化珪素からなる薄膜層を形成して、この薄膜層をバリア膜とする比較用の積層フィルムを得た。上記のフィルムとしては、実施例1〜実施例3と同様の軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を用いた。このフィルムFは、厚みが100μm、幅が350mmである。比較例1では、上記のフィルムに、酸素含有ガス雰囲気中で、シリコンターゲットを用いた反応スパッタ法によって薄膜層を形成した。
比較例1の積層フィルムについて、実施例1と同様にして、膜厚方向における基準面からの距離と電子線透過度との関係を示す電子線透過度曲線を作成した。比較例1では、試料に形成された上記の保護膜の表面を膜厚方向における基準面とした。図8(b)に示すように、比較例1における電子線透過度曲線は、明確な極値を有していない。電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲は、膜厚方向における基準面からの距離が640nm以上690nm以下となる範囲である。電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲において、膜厚方向の基準面からの距離で電子線透過度曲線を微分した傾きを算出した。傾きの最大値及び最小値を求めたところ、傾きの最大値は0.477×10−3nm−1であり、傾きの最小値は0.158×10−3nm−1であった。このように、傾きの最大値及び最小値がともに正の値であることからも、極値を有していないことが分かる。傾きの最大値及び最小値の差の絶対値は0.319×10−3nm−1であった。比較例1では、上述した極値の有無の判定方法にしたがって、ノイズとは区別された極値が検出されなかった。このように、比較例1の積層フィルムにおける薄膜層は、第7条件を満たしていないことが確認された。
また、比較例1の積層フィルムについて、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を実施例1における方法と同様の方法により作成した。図9に示すように、比較例1において炭素分布曲線は極値を有していないことが確認された。このように、比較例1の積層フィルムにおける薄膜層は、第1条件〜第3条件に関する所定の条件を満たしていないことが確認された。
また、比較例1の積層フィルムに対して、実施例1と同様にしてガスバリア性を評価した。水蒸気透過度は、水蒸気透過度測定機(GTRテック社製、機種名「GTRテック−30XASC」)を用いて測定した。測定環境の温度は40℃、積層フィルムの片面側(低湿度側)の湿度は0%RH、積層フィルムのもう片面側(高湿度側)の湿度は90%RHに設定した。比較例1の積層フィルムにおいて、上記の測定条件での水蒸気透過度は1.3g/(m2・day)であった。比較例1の積層フィルムは、一般的に電気泳動表示素子に求められるガスバリア性と比較して、ガスバリア性が不十分であった。
(比較例2)
図10(a)は、比較例2におけるバリア膜の断面を示す画像、図10(b)は比較例2のバリア膜の膜厚方向における基準面からの距離に対する電子線透過度を示すグラフ、図11は比較例2のバリア膜における原子比の分布を示すグラフである。
比較例2では、原料ガスの供給量を0℃の1気圧換算で25sccmとした以外は実施例1と同様にして薄膜層を形成し、この薄膜層をバリア膜とする比較用の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいて、薄膜層の厚みは190nmであった。
比較例2の積層フィルムについて、実施例1と同様にして、膜厚方向における基準面からの距離と電子線透過度との関係を示す電子線透過度曲線を作成した。比較例2では、試料に形成された上記の保護膜の表面を膜厚方向における基準面とした。図10(b)に示すように、比較例2における電子線透過度曲線は、明確な極値を有していない。電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲は、膜厚方向における基準面からの距離が40nm以上160nm以下となる範囲である。電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲において、膜厚方向の基準面からの距離で電子線透過度曲線を微分した傾きを算出した。傾きの最大値及び最小値を求めたところ、傾きの最大値は0.406×10−3nm−1であり、傾きの最小値は−0.548×10−3nm−1であった。傾きの最大値及び最小値の差の絶対値は0.954×10−3nm−1であった。比較例2において、上述した極値の有無の判定方法で傾きの値の正負の変動を調べたところ、隣接する極大値と極小値の膜厚方向濃淡変数の差の絶対値が0.03以上となる部位はなく、傾きの値の正負の変動はノイズによるものであることが分かった。すなわち、比較例2では、ノイズとは区別された極値が検出されなかった。このように、比較例2の積層フィルムにおける薄膜層は、第7条件を満たしていないことが確認された。
また、比較例2の積層フィルムについて、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を実施例1における方法と同様の方法により作成した。図11に示すように、比較例2では、電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲において、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%未満であることが確認された。このように、比較例2の積層フィルムにおける薄膜層は、第1条件〜第3条件に関する所定の条件を満たしていないことが確認された。
また、比較例2の積層フィルムに対して、実施例1と同様にしてガスバリア性を評価した。屈曲させる前の水蒸気透過度は、2種類の測定条件で測定した。第1の測定条件では、水蒸気透過度測定機(GTRテック社製、機種名「GTRテック−30XASC」)を用いて測定した。第1の測定条件において、測定環境の温度は40℃、積層フィルムの片面側(低湿度側)の湿度は0%RH、積層フィルムのもう片面側(高湿度側)の湿度は90%RHに設定した。第1の測定条件で水蒸気透過度は、7.5×10−3g/(m2・day)であった。第2の測定条件では、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて測定した。第2の測定条件において、測定環境の温度は40℃、低湿度側の湿度は10%RH、高湿度側の湿度は100%RHに設定した。第2の測定条件で水蒸気透過度は、検出限界以下の値であった。
屈曲させた後の水蒸気透過度は、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて測定した。測定に際して、測定環境の温度は40℃、低湿度側の湿度は10%RH、高湿度側の湿度は100%RHに設定した。曲率半径8mmで屈曲後に平面に戻した状態での積層フィルムの水蒸気透過度は、0.27g/(m2・day)であった。このように、比較例2の積層フィルムは、屈曲させた状態を経た後に、ガスバリア性が著しく低下した。比較例2の積層フィルムは、一般的に電気泳動表示素子に要求されるガスバリア性と比較して、屈曲後のガスバリア性が不十分であった。
(比較例3)
図12(a)は、比較例3におけるバリア膜の断面を示す画像、図12(b)は比較例3のバリア膜の膜厚方向における基準面からの距離に対する電子線透過度を示すグラフである。
比較例3では、原料ガスの供給量を0℃の1気圧換算で25sccmとし、反応ガスの供給量を0℃の1気圧換算で1000sccmとした以外は実施例1と同様にして薄膜層を形成して、この薄膜層をバリア膜とする比較用の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいて、薄膜層の厚みは180nmであった。
比較例3の積層フィルムについて、実施例1と同様にして、膜厚方向における基準面からの距離と電子線透過度との関係を示す電子線透過度曲線を作成した。比較例3では、試料に形成された上記の保護膜の表面を膜厚方向における基準面とした。図12(b)に示すように、比較例2における電子線透過度曲線は、明確な極値を有していない。電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲は、膜厚方向における基準面からの距離が40nm以上140nm以下となる範囲である。電子線透過率曲線の極値の有無を判定する範囲において、膜厚方向の基準面からの距離で電子線透過度曲線を微分した傾きを算出した。傾きの最大値及び最小値を求めたところ、傾きの最大値は0.342×10−3nm−1であり、傾きの最小値は−0.887×10−3nm−1であった。傾きの最大値及び最小値の差の絶対値は1.23×10−3nm−1であった。比較例3において、上述した極値の有無の判定方法で傾きの値の正負の変動を調べたところ、隣接する極大値と極小値の膜厚方向濃淡変数の差の絶対値が0.03以上となる部位はなく、傾きの値の正負の変動はノイズによるものであることが分かった。すなわち、比較例3では、ノイズとは区別された極値が検出されなかった。このように、比較例3の積層フィルムにおける薄膜層は、第7条件を満たしていないことが確認された。
また、比較例3の積層フィルムに対して、実施例1と同様にしてガスバリア性を評価した。屈曲させる前の水蒸気透過度は、2種類の測定条件で測定した。第1の測定条件では、水蒸気透過度測定機(GTRテック社製、機種名「GTRテック−30XASC」)を用いて測定した。第1の測定条件において、測定環境の温度は40℃、積層フィルムの片面側(低湿度側)の湿度は0%RH、積層フィルムのもう片面側(高湿度側)の湿度は90%RHに設定した。第1の測定条件で水蒸気透過度は、0.022g/(m2・day)であった。比較例3の積層フィルムは、第1の測定条件では、一般的に電気泳動表示素子に要求されるガスバリア性と比較して、ガスバリア性が不十分であった。
第2の測定条件では、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて測定した。第2の測定条件において、測定環境の温度は40℃、低湿度側の湿度は10%RH、高湿度側の湿度は100%RHに設定した。第2の測定条件で水蒸気透過度は、検出限界以下の値であった。
屈曲させた後の水蒸気透過度は、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて測定した。測定に際して、測定環境の温度は40℃、低湿度側の湿度は10%RH、高湿度側の湿度は100%RHに設定した。曲率半径8mmで屈曲後に平面に戻した状態での積層フィルムの水蒸気透過度は、0.12g/(m2・day)であった。このように、比較例3の積層フィルムは、屈曲させた状態を経た後に、ガスバリア性が著しく低下した。比較例3の積層フィルムは、一般的に電気泳動表示素子に要求されるガスバリア性と比較して、屈曲後のガスバリア性が不十分であった。
以上のような実施例1〜3と比較例1〜3との比較からも分かるように、上記実施形態で説明した積層フィルムのバリア膜は、屈曲させる前後のいずれにおいても電気泳動表示素子に要求されるガスバリア性を発現可能である。したがって、上記実施形態の電気泳動表示素子は、屈曲させた後においても電極や電気泳動層が酸素ガスや水蒸気との接触によって劣化することが抑制され、電気泳動表示素子の性能低下や短寿命化が抑制される。このように、本発明によれば、電気泳動表示素子において高フレキシビリティと高ガスバリア性を両立することができる。
次に、図13を参照しつつ、本発明に係る電気泳動表示素子を備えたデバイスの例について説明する。
図13(a)に示すデバイス100Aは、電子ペーパー等の各種表示装置や表示部を含んだ電子機器等として利用可能である。デバイス100Aは、表示部101、蓄電部102、発電部103、及び制御部104を備えている。表示部101は、上記の実施形態で説明した電気泳動表示素子を有している。
本例では、表示部101、蓄電部102、及び発電部103のそれぞれが、フィルム状又は板状である。蓄電部102は、表示部101と発電部103との間に配置されている。表示部101の片面は、蓄電部102の片面と貼り合わされている。発電部103の片面は、蓄電部102に対して表示部101の反対側において、蓄電部102のもう片面と貼り合わされている。制御部104は、蓄電部102と発電部103と表示部101とが積層された積層方向に対して側方の、デバイス100Aの端面に設けられている。
発電部103は、電力を発生させることが可能である。発電部103で発生した電力は、表示部101と蓄電部102の少なくとも一方に供給可能である。蓄電部102は、発電部103で発生した電力によって充電可能である。蓄電部102は、充電された状態で、表示部101に電力を供給可能である。表示部101は、供給された電力によって、蓄電部102と貼り合わされている面の反対面側に画像を表示可能である。制御部104は、蓄電部102と発電部103の少なくとも一方から供給される電力を用いて、表示部101、蓄電部102、及び発電部103を制御する。
蓄電部102は、リチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池等の二次電池を有している。本例の蓄電部102は、一対の電極、電解液、及び一対の積層フィルムを有している。一対の電極の一方は正極であり、他方は負極である。一対の電極は、それぞれ、極性に応じた電極活物質の膜がフィルム状の集電材の上に形成された構造である。一対の電極及び電解液は、一対の積層フィルムの間に封止されている。一対の積層フィルムは、上記実施形態に係る積層フィルムによって構成されており、高フレキシビリティ及び高ガスバリア性を兼ね備えている。
発電部103は、光電変換素子や熱電変換素子、燃料電池等の発電要素を有している。本例の発電部103は、有機薄膜太陽電池を含んでいる。発電部103は、蓄電部102と貼り合わされている面の反対面から入射する光を有機薄膜太陽電池が受けて、電力を発生するように構成されている。本例の有機薄膜太陽電池は、透明電極、反射電極、活性層、及び一対の積層フィルムを有している。活性層は、透明電極と反射電極との間に配置されている。有機薄膜太陽電池は、透明電極を通って活性層に入射した光によって活性層にキャリアを発生するように、構成されている。透明電極、反射電極、及び活性層は、一対の積層フィルムの間に封止されている。一対の積層フィルムは、上記実施形態に係る積層フィルムによって構成されており、高フレキシビリティ及び高ガスバリア性を兼ね備えている。
制御部104は、揮発性又は不揮発性のメモリー素子、処理回路等を有している。制御部104は、外部から供給される画像データ、又はメモリー素子に記憶されている画像データに対して必要に応じて画像処理を施し、画像データを表示部101に供給する。
デバイス100Aにあっては、本発明に係る電気泳動表示素子を適用した表示部101を備えているので、高フレキシブル性を確保することができるとともに、デバイス100Aの性能低下や短寿命化等を抑制することができる。また、蓄電部102及び発電部103は、上記実施形態に係る積層フィルムを適用して構成されており、高フレキシビリティ及び高ガスバリア性を兼ね備えているので、デバイス100Aの性能低下や短寿命化等を格段に抑制することができる。
格段に抑制することができる。
図13(b)に示すデバイス100Bは、表示装置等として利用可能である。デバイス100Bは、表示部101、蓄電部102、発電部103、及び制御部104を備えている。本例では、発電部103及び表示部101が、フィルム状又は板状である。表示部101の片面は、発電部103の片面と貼り合わされている。表示部101は、発電部103と貼り合わされている面の反対面側に、画像を表示可能である。発電部103は、表示部101と貼り合わされている面の反対面から入射する光を受けて、電力を発生する。蓄電部102及び制御部104は、発電部103と表示部101とが互い向かい合う方向に対する側方の、デバイス100Bの端面に設けられている。
デバイス100Bにあっては、本発明に係る電気泳動表示素子を適用した表示部101を備えているので、高フレキシブル性を確保することができるとともに、デバイス100Bの性能低下や短寿命化等を格段に抑制することができる。