JP5773354B2 - 透明導電膜の製造方法及び透明導電膜 - Google Patents
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<1> 気相蒸着法により基板上に酸化亜鉛を含む多結晶膜を形成する多結晶膜形成工程と、前記多結晶膜に通電してジュール加熱を行うことにより前記多結晶膜を結晶成長させた透明導電膜を形成する透明導電膜形成工程と、を含み、前記透明導電膜形成工程における前記通電が、前記多結晶膜に20V/cm〜1,000V/cmの電場を印加して行われることを特徴とする透明導電膜の製造方法。
<2> 多結晶膜形成工程において、酸化亜鉛に不純物元素をドープして多結晶膜を形成する前記<1>に記載の透明導電膜の製造方法。
<3> 気相蒸着法が、レーザーアブレーション法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法のいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
<4> 多結晶膜形成工程における多結晶膜形成開始直後に、透明導電膜形成工程における通電のための電場印加を開始し、前記多結晶膜の膜厚が少なくとも10nm以上になるまで前記電場印加を行う前記<1>から<3>のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
本発明の透明導電膜は、多結晶膜形成工程と、透明導電膜形成工程とを含み、必要に応じて、その他の工程を含み得る。
前記多結晶膜形成工程は、気相蒸着法により基板上に酸化亜鉛を含む多結晶膜を形成する工程である。
中でも、気孔などのない連続で透明な多結晶膜が得られる観点から、レーザーアブレーション法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が好ましい。
例えば、前記レーザーアブレーション法では、不純物をドープした酸化亜鉛バルクターゲットにレーザーを集光照射し、その結果放出されるアブレーション粒子を前記基板に堆積させる。この際、前記アブレーション粒子は、電子励起状態のZn中性粒子等からなる。前記アブレーション粒子のエネルギーは、前記基板にダメージを及ぼすおそれのある数百eVには達することはないが、膜を充分に緻密化し、また時には低温結晶成長を促進するのには十分といえる、数十eV程度のエネルギーを有しており、したがって、前記レーザーアブレーション法によれば、透明性及び導電性の点で有利な緻密で連続な膜を形成することができる。
一方、前記スパッタリング法と前記イオンプレーティング法についても、均質な連続膜を大面積で形成することできる点で、好適に適用することができる。
例えば、前記基板加熱法による透明導電膜の成膜時に耐熱性の低いことが問題となるポリマーフィルムや、チオール等を表面塗布した有機分子塗布基板についても、適用することができる。
また、こうした問題のない基板として、例えば、ガラス基板、サファイヤ等の無機単結晶基板、セラミックス基板、Siウエハー基板も、当然に適用することができる。
中でも、前記透明導電膜の成膜中に効率的に通電を行うため、通電の対象となる前記多結晶膜と比較して充分に高い電気抵抗を有する基板が好ましく、前記透明導電膜の主たる応用先である太陽電池やフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板は、これを充分満足し、前記基板として好適に用いることができる。
前記不純物元素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Znサイトを置換し、キャリア電子を生成するIII族元素のガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)が好ましい。
前記不純物元素は、公知の方法により、前記酸化亜鉛に対して微量ドーピングして用いることができる。
中でも、前記酸化亜鉛は、酸素欠損が生成しやすい物質であり、酸素欠損量が多すぎると、結晶性が損なわれてキャリア移動度の低下が起きるほか、キャリア密度が増加しすぎて透明性が損なわれることがあり、酸素ガス雰囲気とすることが好ましい。
ただし、酸素分圧が高すぎると、蒸着量が著しく低下するとともに、前記蒸着粒子の酸素分子との頻回な衝突により、前記基板への堆積時に緻密化及び結晶化に充分なエネルギーが得られなくなり、良質な連続膜の成膜が難しくなる。
そのため、前記酸素ガス雰囲気中で前記気相蒸着を行う場合の酸素分圧としては、0.1Pa〜10Paが特に好ましい。
前記透明導電膜形成工程は、前記多結晶膜に通電してジュール加熱を行うことにより前記多結晶膜を結晶成長させた透明導電膜を形成する工程である。
この際、前記多結晶膜と前記電極との接触抵抗を低減し通電をより安定的に行う観点から、前記基板の一部にあらかじめ良導電性の金属膜電極を形成しておくことが好ましい。
この様子を図1に示す。即ち、図1の断面図に示すように、基板1表面の両端部には、あらかじめ金属膜電極(陽極)2と、金属膜電極(陰極)2’とが形成されていることが好ましい。この場合、金属膜電極2−2’間における基板1の領域Aに対して、端部が金属膜電極2、2’と接触するように多結晶膜を形成した後、金属膜電極2、2’に電場を印加することにより、前記多結晶膜に対する通電を行う。
なお、このような金属膜電極の形成材料としては、良電気伝導性の部材であれば問題なく、例えば白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などが挙げられる。
好適な態様としては、前記多結晶膜の形成開始直後に前記通電のための電場印加を開始し、前記多結晶膜の膜厚が少なくとも10nm以上になるまで前記電場印加を行うことが挙げられる。
ここで、前記多結晶膜の形成開始直後とは、遅くとも前記基板上の前記電極間に連続膜が形成される時点までには、前記通電を開始することを意味する。
前記多結晶膜の成膜において、堆積初期過程での膜の結晶性は、その後の堆積膜の膜質を左右するので重要である。これは、秩序正しく原子配列した高品位な結晶構造の上には、アモルファス構造上への積層と比べて、より低いエネルギーで結晶構造が形成できることによる。例えば、高価で大面積の基板が入手し難いにもかかわらず、単結晶性基板が結晶膜の成膜に積極的に使用されるのは、このためである。したがって、本発明においても、成膜初期過程で、即ち、少なくとも前記多結晶膜の膜厚が10nm以上になるまで、前記多結晶膜に通電し、ジュール加熱を継続することが好ましい。
即ち、膜の抵抗は、膜厚に反比例するため、成膜初期過程の膜厚が非常に薄い場合、前記膜の抵抗が大きくなる。そこで、成膜初期過程から結晶化促進に十分なジュール加熱を可能にするためには、印加電場をある程度大きくする必要があり、1V/cm以上が好ましい。一方、印加電場が1,000V/cmを超えると、前記蒸着粒子中の荷電粒子成分のうち、正イオンが前記基板の陰極側に、電子が前記基板の陽極側に加速衝突し易くなり、均質な成膜が困難となる場合がある。
本発明の透明導電膜は、前記本発明の透明導電膜の製造方法により製造されてなる。
前記透明導電膜は、前記本発明の透明導電膜の製造方法により製造されることで、結晶粒子内の原子配列の長距離秩序の向上による高品位化、30nmを超える粒子径を有する結晶粒子への成長、粒界での原子配列の短距離秩序向上による欠陥量低減などの多結晶構造体の高品質な結晶化が期待でき、低い比抵抗を有する透明導電膜を実現可能とされる。
成膜中にZnO系膜に通電しジュール加熱するため、成膜操作前に、図1に示すようにガラス基板表面の両端にPtの金属膜電極を形成した。図1中、符号1は、ガラス基板を示し、符号2、2’のそれぞれは、金属膜電極を示す。電極2−2’間の距離は1cmとした。
ここで、レーザーアブレーション装置100は、KrFエキシマレーザー15から設定繰り返し周波数で出射されるパルスレーザー光をマスク16、アッテネータ17、集光レンズ18を介して真空チャンバ12内に配置されたターゲット10に導き、該レーザー光の照射によりターゲット10から生成されるレーザーアブレーションプルーム19をガラス基板1の表面に照射するように構成されている。
ガラス基板1に形成される金属膜電極2、2’は、ソースメジャーユニット20に接続され、トリガー21の操作により、ガラス基板1の表面に堆積されるZnO系膜11に対して、直流電流を通電可能とされている。また、通電によるジュール加熱時のZnO系膜11の温度は、真空チャンバ12に配設されたBaF2窓22を介して、赤外線放射式センサ23で測定可能とされる。金属膜電極2、2’に供給される直流電流は、赤外線放射式センサ23に表示される温度と、ソースメジャーユニット20に表示される電流値とをモニタリングしながら、適宜調整することができる。
なお、真空チャンバ12内では、真空ポンプ13により圧力調整されるとともに、酸素ガス14の導入により、ターゲット10周囲のガス雰囲気を適宜調整することができる。
レーザーフルエンスを1Jcm−2とし、真空チャンバ12内の圧力を4×10−4Pa以下に排気後、酸素ガス14を微量導入し、真空チャンバ12内を1Paの酸素雰囲気下とした。生成したアブレーションプルーム19を、ターゲット10から50mmの位置に対向配置したガラス基板1の表面に10Hz、45分間照射することで、GaドープZnO薄膜を堆積させた。
成膜中の膜への通電によるジュール加熱のため、成膜開始後ただちに、金属膜電極2−2’間に一定の直流電圧を印加し、電流値も同時モニタリングした。印加電場は、30V/cm及び60V/cmとした。電流値が使用電源の許容電流値域を超えないように、30V/cmの場合は、成膜終了後までの電圧印加とし、60V/cmの場合は、成膜開始後7.5分(膜厚約100nm)までの電圧印加とし、その後は電圧印加を行わず成膜を続けた。
これにより、実施例1における透明導電膜を製造した。なお、比較用として、GaドープZnO薄膜の堆積後、電場印加を行わない(0V/cm)膜も製造した。
実施例1における透明導電膜の膜厚方向の結晶性を薄膜X線回折装置(Rigaku、Ultima IV/PSK、λ=0.154056nm)を用いて薄膜X線回折測定により評価した。その結果を図3に示す。図3に示すように、電場印加の無い(0V/cm;電圧0V)膜からもZnO(100)と(002)に帰属されるX線回折ピークが観察され、室温でのZnOの多結晶化が確認された。一方、30V/cm、60V/cmの電場印加(印加電圧;30V、60V)により膜自体をジュール加熱した場合、ZnO(002)及び(103)に帰属される二つの回折ピークが現れ、特に主ピークであるZnO(002)強度は大幅に増大した。よって、ジュール加熱成膜によるZnO多結晶の結晶成長の促進が確認された。
なお、GaドープZnO膜上のPt層及びアモルファスタングステン(W)層のそれぞれは、観察時にZnO膜がガラス基板により帯電するのを防止するため堆積させたものである。
図4(a)は、ジュール加熱により成膜した場合(印加電場60V/cm)の試料断面を示し、図4(b)は、電場印加を行わない場合の試料断面を示している。
前者(a)では、膜表面と垂直方向に成長した柱状結晶が明瞭に観察されたのに対し、後者(b)では、より小さい微結晶の点在が観察されるにとどまった。
各々のSIMイメージの任意10箇所の粒径から求めた膜の面内方向における結晶の平均粒子径は、前者(a)で約57nm、後者(b)で約21nmであり、ジュール加熱による成膜に基づき、ZnO多結晶の粒成長効果が認められた。
得られた膜は、全て優れた可視光透過性を示し、可視域では平均透過率85%以上であった。よって、ジュール加熱により成膜された膜についても、高い可視光透過性を維持することができている。
その結果、電場印加を行わない場合の抵抗率は、5.2×10−4Ω・cmであり、60V/cmの電場を印加してジュール加熱した場合の抵抗率は、2.8×10−4Ω・cmであり、電場印加がない場合に比べ、約半分に低抵抗化することができた。
この低抵抗化は、電場印加がない場合に比べ、電場を印加してジュール加熱を行った場合のキャリア移動度が、5.7cm2・V−1・s−1から15.5cm2・V−1・s−1と3倍近くに向上したことによる。
実施例1の透明導電膜の製造において、印加する電場条件を20V/cm及び60V/cmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における透明導電膜を製造した。なお、比較用として、GaドープZnO薄膜の堆積後、電場印加を行わない(0V)膜も製造した。
図5(a)は、印加電場が20V/cmの場合の特性を示し、図5(b)は、印加電場が60V/cmの場合の特性を示している。ZnO系膜11内を流れる電流値は、成膜時間、即ち膜厚とともに増加しており、膜温度も上昇する結果、図5(a)に示す系では、膜温度の最高が約465℃に達し、図5(b)に示す系では、膜温度の最高が約485℃に達した。
この結果から、本実験における電場印加によるZnO結晶化の駆動力が、基板1表面の電界の存在ではなく、膜中を流れる電流によるジュール加熱であることわかる。なお、電場を印加しない場合(即ち、印加電圧0Vの場合)、膜温度の上昇は観測されない。また、図5(b)における挿入図に示すが、成膜開始後タイムラグをおいて、電流値が検出され始める。これは、膜が不連続から連続膜に変化する時間に相当する。
2 金属膜電極(陽極)
2’ 金属膜電極(陰極)
10 ターゲット
11 ZnO系膜
12 真空チャンバ
13 真空ポンプ
14 O2ガス導入
15 KrFエキシマレーザー
16 マスク
17 アッテネータ
18 集光レンズ
19 レーザーアブレーションプルーム
20 ソースメジャーユニット(直流供給電源)
21 トリガー
22 BaF2窓
23 赤外線放射式温度センサ
100 レーザーアブレーション装置
A 多結晶膜を形成する領域
Claims (4)
- 気相蒸着法により基板上に酸化亜鉛を含む多結晶膜を形成する多結晶膜形成工程と、
前記多結晶膜に通電してジュール加熱を行うことにより前記多結晶膜を結晶成長させた透明導電膜を形成する透明導電膜形成工程と、
を含み、前記透明導電膜形成工程における前記通電が、前記多結晶膜に20V/cm〜1,000V/cmの電場を印加して行われることを特徴とする透明導電膜の製造方法。 - 多結晶膜形成工程において、酸化亜鉛に不純物元素をドープして多結晶膜を形成する請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
- 気相蒸着法が、レーザーアブレーション法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法のいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
- 多結晶膜形成工程における多結晶膜形成開始直後に、透明導電膜形成工程における通電のための電場印加を開始し、前記多結晶膜の膜厚が少なくとも10nm以上になるまで前記電場印加を行う請求項1から3のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
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