JP5760638B2 - ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法 - Google Patents

ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法及びガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物に関する。
全固体型リチウム二次電池としては、固体電解質にリチウムランタンチタン複合酸化物を採用したもの(特許文献1)やLi2S−P25系組成物を採用したもの(特許文献2)が提案されているが、未だ実用化には至っていない。この原因の一つに固体電解質自体の問題がある。固体電解質に求められる主な特性として、リチウムイオン伝導度が高いこと、化学的安定性に優れていること、電位窓が広いことの3つが挙げられるが、これらの特性を十分満足する固体電解質は見いだされていない。
ガーネット型酸化物は、こうした特性のうち、化学的安定性に優れ、電位窓が広いという利点を持つため、固体電解質の候補の一つであるが、一般的に伝導度が低いという欠点がある。しかし、近年、ウェップナー(Weppner)は、固相反応法で合成したガーネット型酸化物Li7La3Zr212につき、伝導度が1.9〜2.3×10-4Scm-1(25℃)で活性化エネルギーが0.34eVであったと報告している(非特許文献1)。この伝導度の値は、従来のガーネット型酸化物に比べて二桁近く高い。
しかしながら、Li7La3Zr212の伝導度は従来のガーネット型酸化物に比べて高いものの、ガーネット型酸化物以外のリチウムイオン伝導性酸化物と比べると、さほど有意な差があるとはいえない。例えば、ガラスセラミックスLi1.5Al0.5Ge1.5(PO43(以下、LAGPという)の伝導度は7.0×10-4Scm-1程度であるため、これと同等に過ぎず、ガラスセラミックスLi1+XTi2SiX3-X12・AlPO4(以下、オハラ電解質という)の伝導度は1×10-3Scm-1であるため、これに比べるとまだ一桁ほど低い。このため、より高い伝導度を有するガーネット型酸化物の開発が望まれている。なお、LAGPは0.5V以下(対リチウムイオン)で還元性を示し、オハラ電解質は1.5V以下(対リチウムイオン)で還元性を示すため、いずれも二次電池の固体電解質に要求される電位窓を満たさない。
そこで、本発明者らは、化学的安定性に優れ、電位窓が広いガーネット型酸化物のうちLi7La3Zr212系のものにおいて、Zrサイトを適切な量のNbで置換することで、伝導度を高めることを提案している(特許文献3)。
特開2008−226639号公報 特開2008−84798号公報 特開2010−202499号公報
アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション(Angew.Chem.Int.Ed.),2007年、46巻、7778−7781頁
しかしながら、上述した特許文献3では、伝導度を高めることができるが、合成に際して、例えば950℃以上などの高温での焼成が必要であった。このため、焼成温度をより低下させることが望まれていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、化学的安定性に優れ、電位窓が広く、リチウムイオン伝導度が高く、より低温で得られるガーネット型酸化物を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、化学的安定性に優れ、電位窓が広く、リチウムイオン伝導度が高いガーネット型酸化物の合成に際して、共沈法により得られた前駆体を用いると、焼成温度を例えば600℃程度まで低減できることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法は、
基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12(式中、Aは、Sc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,GaおよびGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素,Xは1≦X<2)に基づく比率でLi塩とLa塩とZr塩とを溶解した原料塩水溶液と、アルカリ性水溶液と、を混合して前駆体を得る混合工程と、
前記前駆体を焼成して、前記基本組成で表されるガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得る焼成工程と、
を含むものである。
また、本発明のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は、
基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12(式中、Aは、Sc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,GaおよびGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素,Xは1≦X<2)に基づく比率でLi塩とLa塩とZr塩とを溶解した原料塩水溶液と、アルカリ性水溶液と、を混合して得られた前駆体を焼成して得られた、前記基本組成で表されるものである。
このガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法及びガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物では、化学的安定性に優れ、電位窓が広く、リチウムイオン伝導度が高く、より低温で得られるガーネット型酸化物を提供することができる。このような効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推察される。化学的安定性に優れ、電位窓が広く、リチウムイオン伝導度が高い基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12で表されるものを合成するに際し、本願では、Li塩などの原料塩を水溶液に溶解して混合する。これにより、固相同士で混合する場合と比較して、より微視的な観点において原料が均一に混合されるため、原子の移動に必要なエネルギーが低減され、焼成温度をより低減できると考えられる。なお、本発明のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は、全固体型リチウムイオン二次電池への適用が可能であり、特に高出力が要求される自動車搭載用の二次電池への適用が期待される。
伝導度のX値依存性を示すグラフである。 ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の結晶構造に含まれる部分構造の説明図である。 ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の結晶構造の説明図であり、(a)は全体像、(b)は六面体のLiO6(II)を露出させた様子を示す。 LiO4(I)結晶構造のX値依存性を示すグラフであり、(a)は酸素イオンが形成する三角形の辺a,bのX値依存性を示し、(b)は該三角形の面積のX値依存性を示す。 実施例1および比較例1,2のXRDパターンを示すグラフである。 実施例2〜7および比較例3,4のXRDパターンを示すグラフである。
本発明のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法は、(1)基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12に基づく比率でLi塩とLa塩とZr塩とを溶解した原料塩水溶液と、アルカリ性水溶液と、を混合して前駆体を得る混合工程と(2)混合工程で得られた前駆体を焼成して、上述した基本組成で表されるガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得る焼成工程と(3)焼成により得られたガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を、成形体へ成形し、焼成工程より高い温度で焼成する成形焼成工程とを含むものとしてもよい。
(1)混合工程
この工程では、原料塩水溶液とアルカリ性水溶液とを混合する。原料塩水溶液は、基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12に基づく比率でLi塩とLa塩とZr塩とを溶解したものである。基本組成において、元素Aは、Sc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,GaおよびGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素である。また、Xは1≦X<2を満たす数値である。原料塩水溶液は、さらに、上述した元素A(Sc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,GaおよびGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素)の塩を含むことが好ましい。ここで、「基本組成」は、目的とするガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の組成を示す。また、「基本組成」とは、その組成式で表される組成のものだけでなく、結晶構造におけるLi、La、Zr、A、Oの各サイトの一部を、他の元素で置換したものを含むことを意味する。さらに、化学量論組成のものだけでなく、一部の元素が欠損または過剰となる非化学量論組成のものをも含むことを意味する。
Li塩、La塩、Zr塩、元素Aの塩は、各々、Li5+XLa3ZrX2-X12のLi源、La源、Zr源、A源となるものである。基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12に基づく比率は、混合工程、焼成工程及び成形焼成工程の各条件に応じて経験的に定めるものとすることができる。例えば、焼成工程や成形焼成工程における焼成温度で揮発しやすい成分の比率を高めるものとしてもよい。このとき、揮発する温度が低いLiの量を多くすることが好ましく、原料塩水溶液におけるLiとLaとのモル比であるLi/La比が3.0以上5.0以下であるであることがより好ましい。このうち、Li/La比が3.15以上4.5以下であることがより好ましく、3.38以上3.94以下であることが更に好ましい。こうすれば、基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物が得られやすい。
Li塩、La塩、Zr塩及び元素Aの塩などの原料塩は、水に溶解し、アルカリ性水溶液と反応して沈殿を形成可能なものであれば特に限定されず、例えば、硝酸塩や硫酸塩、塩化物などが挙げられる。具体的には、Li塩としては、LiNO3、Li2SO4、LiClなどが挙げられ、このうち、加熱により分解しやすい硝酸イオンを含むLiNO3が好ましい。また、La塩としては、La(NO33、La2(SO43、LaCl3などが挙げられ、このうち、加熱により分解しやすい硝酸イオンを含むLa(NO33が好ましい。また、Zr塩としては、ZrO(NO32、ZrOSO4などが挙げられ、このうち、加熱により分解しやすい硝酸イオンを含むZrO(NO32が好ましい。元素Aの塩としては、例えば、元素AがNbである場合には、塩酸に溶解しやすい塩化物(NbCl5)が好ましい。なお、これらの原料塩は、水和物であってもよい。原料塩水溶液における原料塩の濃度は特に限定されないが、飽和濃度以下であることが好ましい。このとき、例えば、La塩の濃度がLa換算で0.01mol/l以上1mol/l以下であることが好ましく、0.025mol/l以上0.5mol/l以下であることが好ましく、0.05mol/l以上0.2mol/l以下であることが好ましい。La塩の濃度が0.01mol/l以上であれば前駆体の生成に十分であり、1mol/l以下であれば原料塩が全て水に溶解すると考えられるからである。Li塩、Zr塩、元素Aの塩などの濃度は、例えば、La塩の濃度に応じて、基本組成に基づいて定めることができる。
アルカリ性水溶液に使用するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩のほか、アンモニア、炭酸アンモニウム等が挙げられ、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。このうち、アンモニアであることが好ましい。アンモニアであれば、加熱により分解しやすいため、より好ましい。アルカリがアンモニアであるときは、アルカリ性水溶液におけるアンモニアの濃度が20質量%以上30質量%以下であることが好ましく、22.5質量%以上27.5質量%以下がより好ましい。また、アルカリ性水溶液を混合した後の溶液はpH9以上であることが好ましい。このような濃度であれば、前駆体の生成により適していると考えられるからである。
原料塩水溶液やアルカリ性水溶液の溶媒としての水は、特に限定されないが、不純物が少ないことが好ましい。例えば、蒸留水やイオン交換水などが好ましい。原料塩水溶液とアルカリ性水溶液との混合方法は特に限定されないが、攪拌を継続しながら混合を行うことが好ましい。こうすれば、LiとLaとZrと元素Aとがより均一に混合された前駆体を得ることができるからである。混合時の温度は、水溶液が液体として存在する温度であれば特に限定されないが、例えば20℃以上30℃以下などとすることができる。混合時間(攪拌時間)は、混合量にもよるが、例えば1分以上30分以下などとすることができる。
このように原料塩水溶液とアルカリ性水溶液とを混合することで、水溶液中に前駆体が生じる。なお、この前駆体は、通常、沈殿として得られることが多い。この前駆体は、沈殿を含む溶液ごと加熱して溶液を蒸発させて乾燥してもよいし、溶媒から分離し乾燥してもよい。前駆体を溶媒から分離する方法は、特に限定されないが、濾過や遠心分離などを採用することができる。乾燥の方法は、特に限定されないが、熱風乾燥炉などを用いて乾燥させることができる。乾燥時の温度は、特に限定されないが、後述する焼成工程の焼成温度より低温であることが好ましい。より具体的には、400℃未満が好ましく、300℃以下がより好ましく200℃以下がさらに好ましい。また、乾燥効率の観点から、50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
(2)焼成工程
この工程では、混合工程によって得られた前駆体を焼成する。焼成温度は、950℃以下であることが好ましい。950℃以下であれば、従来の固相混合の場合よりも焼成温度が低温であるため、本発明の適用の意義が高い。また、焼成温度は550℃以上が好ましい。550℃以上であれば、目的とするガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物がより安定して得られるからである。このうち、焼成温度は、600℃以上800℃以下であれば、目的とするガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物をより低温でより安定して得られる点で好ましい。また、800℃以上950℃以下であれば、伝導度をより高めることができる点で好ましい。焼成雰囲気は特に限定されないが、酸化性雰囲気であることが好ましく、例えば大気雰囲気などとすることができる。焼成時間は、特に限定されないが、目的とするガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物が得られる範囲に、経験的に定めることができる。具体的には、例えば、5時間以上30時間以下などすることができる。なお、焼成に際しては、前駆体を粉末状のまま焼成してもよいし、圧粉体としたものを焼成してもよい。
なお、この焼成工程では、上述した焼成を行う前に、焼成温度より低い温度である仮焼温度で仮焼を行うことが好ましい。仮焼温度は、300℃以上550℃未満が好ましく、350℃以上450℃以下がより好ましい。このような温度で仮焼することで、La,Zr(,Nb)を含む酸化物が生成すると考えられる。これにより、後の焼成工程で、酸化物の格子にLiが入るエネルギーを与えれば目的とするガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物が得られると考えられ、焼成温度をより低下させることができると考えられるからである。また、このような温度で仮焼を行うことで、後の焼成工程でのガスの発生などを抑制可能であり、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の密度の低下を抑制可能なため、伝導度をより高めることができると考えられるからである。
(3)成形焼成工程
この工程では、上述した混合工程と焼成工程を経て得られた、基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12で表されるガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を、成形体へ成形し、焼成工程より高い温度で焼成する。成形体への成形は、例えば得られたガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を用いて、冷間等方成形(CIP)や熱間等方成形(HIP)、金型成形、ホットプレスなどにより任意の形状に行うことができる。焼成温度は、特に限定されないが、例えば、950℃以上1300℃以下が好ましく、1000℃以上1200℃以下がより好ましい。焼成雰囲気は特に限定されないが、酸化性雰囲気であることが好ましく、例えば大気雰囲気などとすることができる。焼成時間は、特に限定されないが、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物が十分に焼結するような範囲に、経験的に定めることができる。具体的には、例えば、20時間以上50時間以下などとすることができる。なお、成形体への成形の前に、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を粉砕して用いてもよい。こうすれば、成形焼成体の密度をより高めることができる。粉砕に際しては、例えば、遊星ミル、アトライター、ボールミルなどを用いることができる。
本発明のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は、上述した製造方法により得られたものである。このガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は、基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12(式中、Aは、Sc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,GaおよびGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素,Xは1≦X<2)で表されるものである。ここで、Xは1≦X<2であるから、元素Aを含まないガーネット型酸化物Li7La3Zr212(つまりX=2)と比べて、伝導率が高くなり且つ活性化エネルギーも小さくなる。例えば、元素AがNbの場合、伝導度が2.5×10-4Scm-1以上、活性化エネルギーが0.34eV以下になる。したがって、この酸化物を全固体型リチウムイオン二次電池に用いた場合、リチウムイオンが伝導しやすくなるため、電池の出力が向上する。また、活性化エネルギーが小さい、つまり、温度に対する伝導度の変化の割合が小さいため、電池の出力が安定する。また、Xが1.4≦X<2を満たせば伝導度がより高く、活性化エネルギーがより低くなり、Xが1.6≦X≦1.95を満たせば、伝導度がさらに高く、活性化エネルギーがさらに低くなるため、より好ましい。更に、Xが1.65≦X≦1.9を満たせば、伝導度がほぼ極大、活性化エネルギーがほぼ極小となるため、一層好ましい。
このガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物において、元素Aは、Zrとはイオン半径の異なる元素であり、Zrサイトを置換するものであることが好ましい。また、XRDにおける(220)回折の強度を1に規格化したときの(024)回折の規格化後の強度が9.2を超えるものであることが好ましい。(024)回折の規格化後の強度が9.2を超えると、LiO4(I)の四面体の酸素イオンが形成する三角形が正三角形に近づき、その三角形の面積が大きくなるため、公知のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物Li7La3Zr212 (つまりX=2)と比べて、伝導度が高くなり且つ活性化エネルギーも小さくなる。例えば、元素AがNbの場合、伝導度が2.5×10-4Scm-1以上、活性化エネルギーが0.34eV以下になる。したがって、この酸化物を全固体型リチウムイオン二次電池に用いた場合、リチウムイオンが伝導しやすくなるため、電池の出力が向上する。また、活性化エネルギーが小さい、つまり温度に対する伝導度の変化の割合が小さいため、電池の出力が安定する。また、(024)回折の規格化後の強度が10.0以上であれば、伝導度がより高く、活性化エネルギーがより低くなるため、より好ましい。更に、(024)回折の規格化後の強度が10.2以上であれば、伝導度がほぼ極大、活性化エネルギーがほぼ極小となるため、一層好ましい。
このガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は、リチウム二次電池に利用可能である。こうしたリチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を有する負極との間に、本発明のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を介在させた構成とすることができる。正極に用いる正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、Li(1-Y)MnO2(0<Y<1など、以下同じ)、Li(1-Y)Mn24などのリチウムマンガン複合酸化物、Li(1-Y)CoO2などのリチウムコバルト複合酸化物、Li(1-Y)NiO2などのリチウムニッケル複合酸化物、LiV23などのリチウムバナジウム複合酸化物、V25などの遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV23などが好ましい。また、負極に用いる負極活物質としては、リチウム、リチウム合金、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、導電性ポリマーなどが挙げられるが、このうち炭素質材料が安全性の面から見て好ましい。この炭素質材料は、特に限定されるものではないが、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が、金属リチウムに近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電が可能であり電解質塩としてリチウム塩を使用した場合に自己放電を抑え、且つ充電時おける不可逆容量を少なくできるため、好ましい。
以上詳述した本発明のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法およびガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法では、原料塩水溶液とアルカリ性水溶液とを混合して前駆体を得て、この前駆体を焼成するため、固相で混合する場合と比較して、低い焼成温度で、目的とするガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物が得られる。また、固相で混合する場合には、焼成温度が高いため、Liが揮発しやすいが、低温で焼成する本願ではLiが揮発しにくいため、Liの使用量を削減できる。また、成形焼成により、成形焼成体となっているため、そのまま、リチウム二次電池の固体電解質として用いることができる。なお、この成形焼成体は、粉砕して用いてもよい。このガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は、モル比であるLi/La比が2以上2.25以下であることが好ましい。このようなものでは、Li量が少なくなりすぎず、イオン伝導度を高めることができるからである。このため、例えば、リチウムイオン伝導度を3.0×10-4S/cm以上などとすることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した製造方法は、(3)成形焼成工程を含むものとしたが、この工程を省略してもよい。こうしても、基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12(式中、Aは、Sc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,GaおよびGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素,Xは1≦X<2)で表されるガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得ることができる。
また、上述した製造方法は、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法としたが、固体電解質の製造方法としてもよい。すなわち、本発明のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は、固体電解質として用いることができる。
また、上述した実施形態では、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を固体電解質として用いる場合について説明したが、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を正極や負極、イオン伝導媒体に加えてもよい。また、正極と負極との間に介在するセパレーターとして用いてもよい。
以下では、本発明のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を具体的に合成した例を、実施例として説明する。
ここでは、固相反応によりLi5+XLa3ZrX2-X12(X=0〜2)を合成し、イオン伝導度をより高めることができるような組成を求めた。なお、ここでは、元素AはNbであるものとした。Li5+XLa3ZrX2-X12(X=0〜2)の合成では、Li2CO3、La(OH)3、ZrO2、およびNb25を出発原料に用い、出発原料を化学量論比になるように秤量し、エタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間、混合・粉砕を行った。出発原料の混合粉末をボールとエタノールから分離したのち、Al23製のるつぼ中にて、950℃、10時間大気雰囲気で仮焼を行った。その後、本焼結でのLiの欠損を補う目的で、仮焼した粉末に、Li5+XLa3ZrX2-X12(X=0〜2)の組成中のLi量に対してLi換算で10at%になるようにLi2CO3を過剰添加した。この混合粉末を、混合のためエタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間処理した。得られた粉末を再び950℃、10時間大気雰囲気の条件下で再度仮焼した。その後、成型したのち、1200℃、36時間大気中の条件下で本焼結を行い、試料を作製した。
図1は、このようにして作製したLi5+XLa3ZrX2-X12(X=0〜2)における、伝導度のX値依存性を示すグラフである。図1より、伝導度は、Xが1.4≦X<2のとき、公知のLi7La3Zr212(つまりX=2)に比べて高くなり、Xが1.6≦X≦1.95のとき、公知のLi7La3Zr212に比べて一段と高くなり、Xが1.65≦X≦1.9の範囲のとき、ほぼ極大値(5×10-4Scm-1以上)を取ることがわかった。
ニオブを適量添加することで、伝導度が向上した理由については、以下のように考察された。ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の結晶構造には、図2に示すように、リチウムイオンが酸素イオンと4配位してなる四面体のLiO4(I)と、リチウムイオンが酸素イオンと6配位してなる八面体のLiO6(II)と、ランタンイオンが酸素イオンと8配位してなる十二面体のLaO8と、ジルコニウムイオンが酸素イオンと6配位してなる八面体のZrO6とが含まれている。この結晶構造の全体像を図3(a)に示す。この図3(a)の結晶構造では、六面体のLiO6(II)は八面体のZrO6と十二面体のLaO8とによって囲まれているため見えない状態となっている。図3(b)は、図3(a)の結晶構造からLiO8を削除して六面体のLiO6(II)を露出させた様子を示す。このように、6配位しているリチウムイオンは、6個の酸素イオンと、3個のランタンイオンと、2個のジルコニウムイオンに囲まれた位置にあり、恐らく、伝導性にはほとんど寄与していないと考えられる。一方、4配位しているリチウムイオンは、酸素イオンを頂点とする四面体を形成している。リートベルド(Rietveld)構造解析より求めたLiO4(I)四面体構造の変化を図4に示す。LiO4(I)四面体を形成する酸素イオン間距離は二つの長さがある。ここでは長尺の二辺をa、短尺の一辺をbとする。図4(a)に示すように、長尺の辺aは、Nbの置換量によらずほとんど一定の値を示すのに対し、短尺の辺bは、Nbを適量置換することで長くなっている。つまり、酸素イオンが形成する三角形はNbを適量置換することで、正三角形に近付きつつ面積は増大している(図4(b)参照)。このことから、適量のNbをZrと置換すると、伝導するリチウムイオン周りの構造(酸素イオンが形成している四面体)が最適となり、リチウムイオンの移動を容易にする効果があると考えられる。なお、Zrと置換する元素は、Nb以外の元素、たとえばSc,Ti,V,Y,Hf,Taなどであっても、同様の構造変化が見込まれることから、同様の効果が得られる。なお、固相反応で得られたガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物について、相対密度や、相及び格子定数、伝導度、活性化エネルギー、化学安定性、電位窓などについて検討し、Li5+XLa3ZrX2-X12(X=0〜2)は、化学的安定性に優れ、電位窓が−0.5〜7V(対Li+)程度と広く、リチウムイオン伝導度が高いことを確認したが、詳細については特許文献3に記載したため、ここでは、記載を省略した。
上述のLi5+XLa3ZrX2-X12(X=0〜2)のうち最も伝導度が高かったのは、基本組成Li6.75La3Zr1.75Nb0.2512(X=1.75)で表されるガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物であった。このため、以下では、基本組成Li6.75La3Zr1.75Nb0.2512で表されるガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を本発明の製造方法で合成するものとした。
(1)ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の合成
ここでは、混合工程と焼成工程とを行い、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を合成した。
[実施例1]
まず、Li源としてのLiNO3(和光純薬製)を7.85gと、La源としてのLa(NO33・6H2O(和光純薬製)を14.6gと、Zr源としてのZrO(NO32 ・2H2O(ナカライテスク)を5.3gと、Nb源としてのNbCl5/HCl(シグマアルドリッチ)を0.76gと、を秤量した。なお、この配合比は、Li:La:Zr:Nbが、モル比で10.125(基本組成(6.75)の1.5倍):3:1.75:0.25であり、Li/La比が3.38となるような配合である。次に、秤量したLi源、La源、Zr源およびNb源を400mlのイオン交換水に溶解させて攪拌し、続いて、濃度が25質量%のアンモニア水を100g添加して沈殿を形成させ、更に10分間攪拌を行った。得られた沈殿を150℃で7時間乾燥し、400℃で5時間仮焼を行い、最後に600℃で24時間の焼成を行った。このようにして、実施例1のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物(焼成粉末)を得た。
[実施例2〜4]
焼成温度を700℃とした以外は、実施例1と同様の工程を経て、実施例2のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。また、焼成温度を800℃とした以外は、実施例1と同様の工程を経て、実施例3のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。また、焼成温度を950℃とし、焼成時間を10時間とした以外は、実施例1と同様の工程を経て、実施例4のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。
[実施例5,6]
Liが基本組成の1.75倍であり、Li/La比が3.94となるようにLiNO3の量を9.16gとした以外は実施例1と同様の工程を経て、実施例5のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。また、Liが基本組成の2倍であり、Li/La比が4.5となるようにLiNO3の量を10.47gとした以外は実施例1と同様の工程を経て、実施例6のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。
[実施例7]
Liが基本組成の1.4倍であり、Li/La比が3.15となるようにLiNO3の量を7.33gとした以外は実施例4と同様の工程を経て、実施例9のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。
[実施例8,9]
焼成温度を950℃とし、焼成時間を10時間とした以外は、実施例5と同様の工程を経て実施例8のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。また、焼成温度を950℃とし、焼成時間を10時間とした以外は、実施例6と同様の工程を経て実施例9のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。
[比較例1]
焼成温度を500℃とした以外は、実施例1と同様の工程を経て、比較例1のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。
[比較例2]
Li源としてのLi2CO3と、La源としてのLa(OH)3と、Zr源としてのZrO2と、Nb源としてのNb25とを、化学量論比になるように秤量し、エタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間混合・粉砕を行った。得られた混合粉末をボールとエタノールから分離したのち、Al23製のるつぼ中にて物理混合し、600℃24時間の焼成を行った。このようにして、比較例2のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。
[比較例3,4]
Liが基本組成の1.1倍であり、Li/La比が2.48となるようにLiNO3の量を5.76gとした以外は実施例1と同様の工程を経て、比較例3のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。また、Liが基本組成の2.5倍であり、Li/La比が5.63となるようにLiNO3の量を13.08gとした以外は実施例1と同様の工程を経て、比較例4のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。
[比較例5]
Li源としてのLi2CO3と、La源としてのLa(OH)3と、Zr源としてのZrO2と、Nb源としてのNb25とを、化学量論比になるように秤量し、エタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間混合・粉砕を行った。得られた混合粉末をボールとエタノールから分離したのち、Al23製のるつぼ中にて物理混合し、950℃、10時間、大気雰囲気の条件下で仮焼を行った。その後、後の焼結でのLiの欠損を補う目的で、仮焼した粉末にLi6.75La3Zr1.75Nb0.2512に対してLi換算で10at%となるようにLi2CO3を過剰添加した。この混合粉末を、混合のためエタノール中にて遊星ボールミル(300rpm/ジルコニアボール)で1時間処理した。得られた粉末を再び950度、10時間、大気雰囲気の条件下で焼成した。このようにして、比較例5のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。
[比較例6]
焼成温度を950℃とし、焼成時間を10時間とした以外は比較例4と同様の工程を経て比較例6のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得た。
上述した、実施例1〜9及び比較例1〜6の原料や焼成条件を、表1に示した。表1には、このほかに、後述するXRD測定の結果や、成形焼成体のLi/La比やイオン伝導度を示した。
(XRD測定)
各試料の相及び格子定数は、XRDの測定結果から求めた。XRDの測定は、XRD測定器(理学電気製、RINT2200)を用いて、焼成粉末をCuKα、2θ:10〜80°,0.01°step/1sec.の条件で測定した。結晶構造解析は、結晶構造解析用プログラム:Rietan−2000(Mater. Sci. Forum, p321-324(2000),198)を用いて解析を行った。図5は、実施例1及び比較例1,2のXRDスペクトルである。また、図6は実施例2〜7及び比較例3,4のXRDスペクトルである。実施例1と比較例1から、600℃以上でガーネット型結晶が形成されることが確認できた。また、実施例1と比較例2から、共沈法の適用により600℃という低温焼成でガーネット型結晶が形成されることがわかった。また、実施例1〜4より、600℃以上950℃以下でガーネット型結晶が形成されることが確認できた。また、実施例1,5,6,7と比較例3,4から、Li/La比(モル比)で3.0以上5.0以下のLiNO3を添加した場合に600℃で単相のガーネット型結晶が形成されることが確認できた。
(2)成形焼成体の作製
ここでは、合成したガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を、4MPaの圧力でφ15mmとなるように圧粉成形した後、1180℃、36時間、大気雰囲気の条件下で焼成し(成形焼成工程)、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物(成形焼成体)を得た。
(成分分析)
得られた成形焼成体について、成分分析を行った。成分分析は、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分析装置(リガク製CIROS120EOP)を用いて行った。成分分析によって求めたLi量とLa量から、成形焼成体におけるLi/La比を求めた。これによれば、XRDで単相のLi6.75La3Zr1.75Nb0.2512のピークが確認されなかった比較例4のものでは、成形焼成体においてLi/La比が2.25を上回っていた。このことから、成形焼成体は、Li/La比が2.25以下であることが好ましいことがわかった。
(インピーダンス測定)
得られた固体電解質について、インピーダンス測定を行った。まず、25℃の恒温槽中にてACインピーダンス測定器(Agilent製4294A)を用いて、100mVで40Hz〜110MHzの範囲でインピーダンス測定を行った。そして、ナイキストプロットの円弧より抵抗値を求め、この抵抗値からリチウムイオン伝導度を算出した。表1に示すように、実施例1〜9のものでは従来の固相で混合するもの(比較例5)と同等以上のリチウムイオン伝導度を示すことがわかった。また、表1においてガーネット型結晶が形成した条件であるLi/La比が2以上2.25以下の実施例のものでは、成形焼成体のLi/La比が2.25を上回る比較例4,6などと比較して、リチウムイオン伝導性が高かった。このことから、Li/La比は2.25以下が好ましいことがわかった。
(3)考察
従来のように、Li2CO3,La(OH)3,ZrO2,Nb25の粉末を物理混合し、固相反応によりガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得る場合、900℃以上の焼成が必要であった。これに対して、硝酸塩や塩化物である原料塩を含む水溶液にアンモニアを添加して水酸化物の沈殿を得る共沈法を用いた場合、600℃という低温下での焼成でガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得ることができた。このような効果が得られた理由は、以下のように推察された。
従来の固相反応による合成の場合、各成分粉末は二次粒子レベルで混合されているに過ぎず、反応の進行には、まず熱による各構成粒子の移動・拡散が必要である。その後、均一化したところで化合物への反応が進行するため、多大な反応エネルギーを必要とし、結果として高温での焼成が必要であると推察された。なお、ガーネット型酸化物の固相反応における解析では、まずLaZrOZ固溶体が形成し、その後Liが格子中に挿入していくことで、ガーネット型LiLaZrNbOZ酸化物が形成されることがわかっている。
これに対して、本願のように共沈法を用いた無機化合物の合成では、一次粒子からなるナノレベルでの構成微粒子の混合が可能であり、沈殿の形成条件を最適化することで、固溶体の形成や異種微粒子の近接が容易になる。このため化合物の合成を、より少ないエネルギーで進行させることができると推察された。なお、本願のガーネット型酸化物の合成では、共沈後の仮焼においてLaZrOZ固溶体が形成したものと推察され、この格子中へLiが入るエネルギーが与えられれば、ガーネット型LiLaZrNbOZ酸化物が形成すると推察された。このようなエネルギーを与える温度が従来の固相反応での焼成温度より大幅に低温下した600℃であり、600℃以上950℃以下の焼成温度で十分にガーネット型LiLaZrNbOZ酸化物の形成が行われると推察された。
また、固相反応法で求めたX値の最適範囲は1.4≦X<2.0であったが、本発明の製造方法で得られたガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は、例えば、Li/La比が2.03である実施例3でもイオン伝導度が高かった。このことから、Li5+XLa3ZrX2-X12におけるX値の最適範囲は1.4≦X<2.0に限られず、1.0≦X<2.0でもよいことが分かった。
なお、本発明の製造方法で得られたガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物のLiイオン伝導度は、固相反応により合成したものと同等以上の値であった。また、固相反応によるものと同様のXRD回折ピークが得られた。このことから、本発明の製造方法で得られたものは、固相反応によるものとほぼ同様の構造を有しているものと推定された。このため、固相反応によるものと同様に、化学的安定性に優れ、電位窓が広いものと推察された。
本発明は、全固体型リチウムイオン二次電池に利用可能である。

Claims (2)

  1. 基本組成Li5+XLa3ZrX2-X12(式中、Aは、Sc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,GaおよびGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素,Xは1≦X<2)に基づく比率でLi塩とLa塩とZr塩とを溶解した原料塩水溶液と、アルカリ性水溶液と、を混合して前駆体を得る混合工程と、
    前記前駆体を焼成して、前記基本組成で表されるガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得る焼成工程と、
    を含み、
    前記混合工程において、前記原料塩水溶液は、該原料塩水溶液に含まれるLiとLaとのモル比であるLi/La比が3.0以上5.0以下であり、
    前記焼成工程では、600℃以上950℃以下で前記焼成を行う、
    ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法。
  2. 請求項1に記載のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法であって、
    前記焼成により得られたガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を、成形体へ成形し、前記焼成工程より高い温度で焼成する成形焼成工程と、
    を含む、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の製造方法。
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