JP5725434B2 - コンクリート部材の劣化探知方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献3には、採取したコアの促進膨張試験における膨張率と水酸化アルカリ濃度の測定を併用したアルカリシリカ反応による劣化進行の予測方法が開示されている。また、特許文献4には、削孔粉を試料とした吸光光度法による全塩分量の測定方法が開示されている。
例えば、特許文献5には、セメント水和物の溶解挙動と溶解成分の移流拡散の関係から、セメント水和物の変質と細孔径分布変化を評価して行なうセメント系材料の劣化評価方法が開示されている。
〔1〕 水銀圧入法による細孔径分布の測定に基づくコンクリート部材の劣化探知方法であって、検査対象とするコンクリート部材より採取したコアから得られる測定試料につき、細孔径分布の測定を行うことで全空隙の容積と直径0.05〜2.2μmの毛細管空隙の容積とを求め、前記全空隙の容積に対する前記毛細管空隙の容積の割合を他の測定試料のものと比較することにより、前記検査対象とするコンクリート部材の劣化兆候若しくは進行を探知することを特徴とする、コンクリート部材の劣化探知方法。
〔2〕 水銀圧入法による細孔径分布の測定に基づくコンクリート部材の劣化探知方法であって、検査対象とするコンクリート部材より採取したコアから得られる測定試料につき、細孔径分布の測定を行うことで全空隙の容積、直径0.05〜2.2μmの毛細管空隙の容積、及びインクボトル空隙の容積をそれぞれ求め、前記全空隙の容積に対する前記毛細管空隙の容積の割合、及び前記インクボトル空隙の容積をそれぞれ他の測定試料のものと比較することにより、前記検査対象とするコンクリート部材の劣化兆候若しくは進行を探知することを特徴とする、コンクリート部材の劣化探知方法。
〔3〕 前記コンクリート部材が床版コンクリートであり、前記劣化は繰り返し荷重による疲労劣化を含むものであることを特徴とする、前記〔1〕、〔2〕のいずれかに記載のコンクリート部材の劣化探知方法。
〔4〕 前記他の測定試料が、検査対象とするコンクリート部材において健全と見られる部分、或いは健全と見られる時期に採取したコアから得られる測定試料であることを特徴とする、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のコンクリート部材の劣化探知方法。
なお、上記本発明のコンクリート部材としては、上記床版コンクリートの他、鉄道構造物に用いられるコンクリート床版やスラブ桁、海洋構造物では波力を受ける防波堤等が挙げられる。また、劣化の態様は特には限定されないが、繰り返し荷重による疲労劣化等の物理的要因による劣化の探知に、本発明は好適に用いられる。
d=−4γcosθ/P ・・・式(1)
ここで、d:細孔径(直径)
γ:水銀の表面張力
θ:水銀と試料との接触角(130°を用いる場合が多い)
P:圧入圧
そのため、測定試料を水銀に浸し、水銀への圧力を増していくと、次第に小さな細孔へと水銀が浸入していく。水銀圧入法において直接測定するのは、この水銀の浸入量と圧力の関係であり、上記Washburn式により細孔径と細孔容積の関係に換算することができ、細孔径分布を測定することができる。
(1) 全空隙の容積は、輪荷重走行疲労に対して変化が見られない。
(2) 毛細管空隙の容積は、輪荷重回数の増加にしたがって減少する。
(3) インクボトル空隙の容積は、輪荷重回数の増加にしたがって減少する。
より具体的には、検査対象とする例えば床版コンクリートより採取したコアから得られる最大で1cm3程度の小さな測定試料につき、従来通り水銀圧入法による細孔径分布の測定を行い、その後、該細孔径分布の測定結果から直径0.003〜400μmの全空隙の容積と直径0.05〜2.2μmの領域の毛細管空隙の容積を求め、前記全空隙の容積に対する前記毛細管空隙の容積の割合を基準とする他の測定試料の全空隙の容積に対する毛細管空隙の容積の割合と比較し、検査対象の測定試料における毛細管空隙の該割合が基準とする他の測定試料における毛細管空隙の該割合よりも少ない場合には、該検査対象のコンクリート部材は基準とする他の測定試料のものに比して劣化が進行していると判断することとした。
なお、上記において毛細管空隙を直径0.05〜2.2μmの領域に限定したのは、モルタルやコンクリートのようにセメントペーストと骨材との複合構造の場合、骨材周辺部の遷移帯の空隙構造が強度的に最弱部となると言われており、毛細管空隙の中で前記遷移帯の空隙に相当するのは概ね0.05〜2μmの領域であり、この範囲に着目することが変化を敏感に探知できると考えたためである。また、全空隙の容積に対する毛細管空隙の容積の割合で比較するとしたのは、コンクリートの配合等の違いによる密度の影響を排除するためである。
より具体的には、検査対象とする例えば床版コンクリートより採取したコアから得られる最大で1cm3程度の小さな測定試料につき、水銀圧入法による細孔径分布の測定を2回行うことでインクボトル空隙の容積を求め、該インクボトル空隙の容積を基準とする他の測定試料のインクボトル空隙の容積と比較し、検査対象のインクボトル空隙の容積が基準とする他の測定試料のインクボトル空隙の容積よりも少ない場合には、該検査対象のコンクリート部材は基準とする他の測定試料のものに比して劣化が進行していると判断することとした。
なお、本発明でいうインクボトル空隙とは、先に図1及び図2に基づき説明し、図7に具体的に示すように、1気圧に対応する細孔直径12.3μm未満での残存空隙をいう。
より具体的には、上記と同様、検査対象の測定試料と基準とする他の測定試料について、全空隙の容積に対する前記毛細管空隙の容積の割合とインクボトル空隙の容積をそれぞれ比較し、検査対象の測定試料における毛細管空隙の該割合が基準とする他の測定試料における毛細管空隙の該割合より少なく、且つ、検査対象の測定試料におけるインクボトル空隙の容積が基準とする他の測定試料におけるインクボトル空隙の容積より少ない場合には、該検査対象のコンクリート部材は基準とする他の測定試料のものに比して劣化が進行していると判断することとした。
コンクリート供試体の輪荷重走行による疲労試験において、コンクリート供試体から採取した小径コアを用いた細孔径分布測定を実施し、疲労の進展に伴うコンクリートの変状をモニタリングすることを目的とした。
健全なコンクリート供試体を用いて輪荷重載荷試験を行い、輪荷重回数の進捗に合わせて適宜小径コア(φ25mm)を採取し、該コアから得られる測定試料につき水銀圧入法による細孔径分布を測定し、コンクリート供試体の疲労劣化の定量化を試みた。
小径コアを採取したタイミングは、初期値(輪荷重回数0回)から輪荷重回数1万回、10万回、20万回、上載荷荷重を増加して21万回、25万回、30万回、及び31.5万回の合計8回実施した。
2.1.1 コンクリート供試体
輪荷重載荷試験に用いたコンクリート供試体の概要を、図3、図4に示す。コンクリート供試体の寸法は、長辺3000mm、短辺2000mm、版厚160mmである。引張側の主鉄筋にはSD296A,D16を160mm間隔で、配力鉄筋にはSD295A,D13を125mm間隔でそれぞれ用いた。打設したコンクリートの圧縮強度は、床版と同一環境下に静置したφ10×20cmのテストピースで管理し、材齢28日で34.1N/mm2であった。試験を開始したコンクリート供試体の材齢は、2か月経過のものであった。
輪荷重試験は、油圧ジャッキを取り付けた車輪の下方において、コンクリート供試体を載せた台車を前後に1m往復運動させる機構を備えた輪荷重試験装置を用いて行なった。輪荷重は98kNから開始し、20万回以降は約30kN荷重を増加して疲労試験を促進した。コンクリート供試体の支持条件は、走行方向の2辺(3000mm)を単純支持、他の2辺(2000mm)を弾性支持とした。弾性支持は、幅150mm×高さ150mm×厚さ8mmのI型鋼を用いた。
図5に採取した小径コアの位置と輪荷重回数を示す。小径コアの採取は、乾式コンクリートコアカッタを用いて実施した。軸方向と横方向との鉄筋に囲まれた領域およそ110×130mmを1区画とみなし、中心から概ね左右対称に採取位置を定めた。
3.1 小径コアの採取
小径コアは、乾式のコンクリートコアドリル(日本HILTI(株)製)と、コアビット(外径32mm、内径26mm)とを用いて、コンクリート供試体の上面側(輪荷重載荷側)から下面側へ全断面(約160mm長)を採取した。コアを採取したコア孔は直ちに補修用モルタルで充填した。補修用モルタルの配合は、材齢1日で36N/mm2程度発現するよう設計した。測定試料の採取に小径コアを用いることによって、鉄筋を切断することなくコアを採取でき、コンクリート供試体へのダメージを低く抑えることができた。
採取したコアは、図6に示すように断面方向に2分割(半割り)し、圧縮側・引張側にそれぞれ配置された主鉄筋位置近傍での変状に着目して、中立軸より上面側、下面側の各中心部分約40mmを測定区間とした。
測定試料はダイヤモンドカッタで5mm角の大きさに調製し、粗骨材部分はできるだけ取り除いた。アセトンに1時間程度浸漬し、試料内部の水分を除去した後、真空乾燥を3日間実施し、水蒸気圧5×10-4mmHg下でD−Dryに7日間静置して測定試料とした。
測定には水銀圧入式ポロシメータ(Micromeritics 社製、Auto PoreIV 9520)を用い、量り取った測定試料約2gに水銀を圧入し、細孔量を測定した。なお、水銀の圧入は、一度加圧した後大気圧まで減圧し、その後また加圧する2回加圧を行なった。また、細孔径と細孔容積の関係は、水銀の表面張力、試料との接触角等を下記のものとしたWashburn式である式(1)により算出した。
d=−4γcosθ/P ・・・・・・・式(1)
d:細孔径(直径)
γ:水銀の表面張力0.484N/m
θ:水銀と試料との接触角130°(cosθ=−0.643)
P:圧入圧MPa
なお、本発明では、例えば、輪荷重回数n回目で検査を行なう場合、検査対象の測定試料はn回目の小径コアから得られるものであり、基準となる他の測定試料(比較試料)は、輪荷重回数(0〜n−1)目までの小径コアから得られる測定試料の一つ以上、或いは、管理用供試体から得られる測定試料であるが、この試験例では輪荷重回数による変化を見ているので前者に該当する。この他、前述の通り、基準となる測定試料は、劣化因子の影響を受け難い位置から採取した健全と見られるものであってもよい。
図7に、試験結果の一例として試料No.20(輪荷重回数10万回、上部コア)の細孔径分布測定結果を示す。この測定結果については、図中に示した範囲のものが『全空隙』、『インクボトル空隙』のそれぞれの『容積』となる。
各測定試料についての細孔径分布測定結果からそれぞれ『全空隙の容積』を求め、横軸に輪荷重回数、縦軸に全空隙の容積をとり、求めた値をプロットしたものを図8に示す。
図8に示すように、全空隙の容積は、輪荷重回数に伴う顕著な変化は見られなかった。これから、全空隙の容積だけでは、疲労劣化の兆候若しくは進行を探知することは難しいことが分かった。
各測定試料についての細孔径分布測定結果からそれぞれ細孔径の範囲を『0.003〜0.008μm』,『0.008〜0.05μm』,『0.05〜0.1μm』,『0.1〜1μm』,『1〜30μm』そして『0.05〜2.2μm』に分け、『各細孔径範囲の容積』を求め、求めた各細孔径の容積の前記全空隙の容積に対する割合をそれぞれ算出し、横軸に輪荷重回数、縦軸に前記全空隙容積に対する各細孔径容積の割合をとり、算出した値をプロットしたものを図9(a),(b)に示す。なお、(a)は図6に示す小径コアの上部、(b)は図6に示す小径コアの下部の測定結果である。また、0.003〜0.008μmはゲル空隙、1〜30μmは毛細管空隙の一部と気泡(粗空隙)の一部、これ以外の各範囲は毛細管空隙の一部である。このような各範囲に分けたのは、目視では劣化が検知できないゲル空隙から毛細管空隙、およびそれ以上の粗大な空隙領域への連続的な変化に着目するためである。0.008〜0.05μmはゲル空隙から毛細管空隙への変化に着目した。0.05〜2.2μmの領域は前述の遷移帯空隙と呼ばれ、硬化体の強度に影響を及ぼす可能性が高いとされている領域であるため、領域を細分化し、詳細に変化を観察したからである。
図9に示すように、毛細管空隙の内、直径0.05〜2.2μmの領域における下部コアにおいて、輪荷重回数の増加に従って前記割合に減少傾向が見られた。なお、前記コアを採取したコンクリート供試体の下部を目視観察していたところ、輪荷重回数1000回位からひび割れが観察され、その数は輪荷重回数の増加に伴って増加していたことから、明らかに該コンクリート供試体は輪荷重回数の増加に伴って疲労劣化が進行していた。従って、本例では、上記範囲の毛細管空隙の容積割合の変化が、疲労劣化の兆候と進行を示す指標になり得るものと判断した。なお、本例では、毛細管空隙の他の範囲では細孔径容積の割合に変化が見られなかったので劣化の指標にはしなかったが、変化が探知できれば、そちらの範囲を用いても良い。
各測定試料についての細孔径分布測定結果からそれぞれ『インクボトル空隙の容積』を求め、横軸に輪荷重回数、縦軸にインクボトル空隙の容積をとり、求めた値をプロットしたものを図10に示す。また、横軸に等価繰り返し回数(21万回以降は、載荷荷重を98kNから127.4kNに増量して疲労試験を促進したため、その影響を等価に換算した回数。換算式は、N=(P/98)12.76 ×nとした。)、縦軸にインクボトル空隙容積変化率(輪荷重回数0回での上部と下部の平均を100とした場合の各インクボトル空隙容積の割合)とし、算出した値をプロットしたものを図11に示す。
図10及び図11に示すように、下部コアにおいて、輪荷重回数の増加に従ってインクボトル空隙の容積に減少傾向が見られた。従って、上記と同様の理由で、このインクボトル空隙容積の変化も、疲労劣化の兆候と進行を示す指標になり得るものと判断した。
一方、図12のグラフは学校法人日本大学工学部が本試験と同一の輪荷重試験装置を用いて行なった試験において、ひび割れ密度と等価繰り返し回数の関係を示したグラフである。なお、ひび割れ密度とは、目視で観察可能な,ひび割れ幅が約0.1mm以上のひび割れの単位面積当たりの総延長である。この図12から、健全供試体において、疲労限界(ひび割れ密度15mm/m2)に達するのは100万〜500万回の間であることが示されている。
図11に示したインクボトル空隙容積の変化を示した図(下部コア)において、上記疲労限界に達する100万〜500万回の輪荷重回数部分を囲ったものを図13に示す。
この図13から、ひび割れ密度から推定される疲労限界を、『インクボトル空隙容積変化率が、疲労を受けていない健全部より10〜20%低減したときには、疲労限界に到達している。』と言うように、インクボトル空隙容積の変化から推定できること、また、インクボトル空隙容積の変化から、疲労限界に達していない劣化の比較的早い段階で、劣化の兆候若しくは進行を探知できることが分かった。
下部コアの各測定試料についての2加圧目の細孔径分布測定結果からそれぞれ細孔径の範囲を『0.003〜0.008μm』,『0.008〜0.05μm』,『0.05〜0.1μm』,『0.1〜1μm』,『1〜7μm』そして『0.05〜2.2μm』に分け、『各細孔径範囲の容積』をそれぞれ求め、求めた各細孔径の容積の2加圧目の全空隙容積に対する割合をそれぞれ算出し、横軸に輪荷重回数、縦軸に各細孔径の容積割合をとり、算出した値をプロットしたものを図14に示す。なお、0.003〜0.008μmはゲル空隙、1〜7μmは毛細管空隙の一部と気泡(粗空隙)の一部、これ以外の各範囲は毛細管空隙の一部である。
この図14から、ゲル空隙(細孔直径0.003〜0.008μmの領域)において、輪荷重回数の増加に従って細孔容積割合に減少傾向が見られ、毛細管空隙から気泡領域(細孔直径1〜7μmの領域)において、輪荷重回数の増加に従って該割合に増加傾向が見られた。これも疲労劣化の兆候と進行を示す指標になり得るものと見られる。
Claims (4)
- 水銀圧入法による細孔径分布の測定に基づくコンクリート部材の劣化探知方法であって、検査対象とするコンクリート部材より採取したコアから得られる測定試料につき、細孔径分布の測定を行うことで全空隙の容積と直径0.05〜2.2μmの毛細管空隙の容積とを求め、前記全空隙の容積に対する前記毛細管空隙の容積の割合を他の測定試料のものと比較することにより、前記検査対象とするコンクリート部材の劣化兆候若しくは進行を探知することを特徴とする、コンクリート部材の劣化探知方法。
- 水銀圧入法による細孔径分布の測定に基づくコンクリート部材の劣化探知方法であって、検査対象とするコンクリート部材より採取したコアから得られる測定試料につき、細孔径分布の測定を行うことで全空隙の容積、直径0.05〜2.2μmの毛細管空隙の容積、及びインクボトル空隙の容積をそれぞれ求め、前記全空隙の容積に対する前記毛細管空隙の容積の割合、及び前記インクボトル空隙の容積をそれぞれ他の測定試料のものと比較することにより、前記検査対象とするコンクリート部材の劣化兆候若しくは進行を探知することを特徴とする、コンクリート部材の劣化探知方法。
- 前記コンクリート部材が床版コンクリートであり、前記劣化は繰り返し荷重による疲労劣化を含むものであることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載のコンクリート部材の劣化探知方法。
- 前記他の測定試料が、検査対象とするコンクリート部材において健全と見られる部分、或いは健全と見られる時期に採取したコアから得られる測定試料であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリート部材の劣化探知方法。
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