JP5725323B2 - 保護粘着フィルム - Google Patents
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粘着剤層がアクリル系共重合体を含有するアクリル系粘着剤組成物からなり、
粘着剤層表面に、厚さ25μmのPETフィルムを、2kgローラーを用いて5mm/sの圧着速さで圧着回数1往復にて圧着し、温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中に1時間静置した後、180°方向へ剥離した際の剥離力を剥離速度毎に測定し、下式(1)により剥離速度−剥離力曲線を相関させた際の特性速度(V*)が、3μm/s以上である。
粘着剤層表面に、厚さ25μmのPETフィルムを、2kgローラーを用いて5mm/sの圧着速さで圧着回数1往復にて圧着し、温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中に1時間静置した後、180°方向へ剥離した際の剥離力を剥離速度毎に測定し、下式(1)により剥離速度−剥離力曲線を相関させた際の特性速度(V*)が、3μm/s以上である。
本発明の保護粘着フィルムに用いる基材としては、特に限定されないが、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ナイロンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、セルロースフィルム(例えば、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)等が挙げられる。前記フィルムは、単層のフィルムでも良く、複数層積層したフィルムを使用しても良い。また、前記フィルムの樹脂成分は、単独でも良く、複数混合したものでも良い。
本発明に使用する粘着剤層は、アクリル系共重合体を含有するアクリル系粘着剤組成物から形成される粘着剤層であり、式(1)における剥離速度−剥離力曲線の特性速度(V*)が、3μm/s以上の粘着剤層である。V*は5μm/s以上であることが好ましく、10μm/s以上であることがより好ましい。また、保護粘着フィルムを剥離した際に被着体に曇りや貼付け跡が生じにくく、優れた耐汚染性を実現できることから、V*を40以下とすることが好ましく、35以下とすることが特に好ましい。
本発明においては、式(1)における剥離速度−剥離力曲線の特性速度(V*)を下記にて得ることができる。
剥離速度−剥離力曲線の作成においては、剥離速度は0.1mm/sから100mm/sの範囲において少なくとも15点取ることが好ましい。剥離速度を低速から高速まで幅広く測定することが好ましく、23℃を基準とし、より低温の環境下、もしくはより高温の環境下で、剥離速度を変化させた剥離力測定を行い、いわゆる時間−温度換算則を利用し23℃を基準温度とするマスターカーブを作成しても良い。
本発明の保護粘着フィルムを構成する粘着剤層の動的粘弾性は、損失正接(tanδ)のピーク温度は−30〜−70℃にあることが好ましい。動的粘弾性の測定は、粘弾性試験機(TA Instruments社製RSA−III)を用いて、周波数1Hzで−70℃から100℃までの損失正接(tanδ)を測定する。なお損失正接(tanδ)は、貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E'')を用いて、tanδ=E''/E’と表される。粘着剤層の損失正接が本範囲にある場合、前記V*を目的の範囲に制御し易くなる。
粘着剤層の厚みは特に限定されるものではないが、5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましく、10〜25μmであることが一層好ましい。
粘着剤層に用いるアクリル系粘着剤組成物は、主成分としてアクリル系共重合体を含有する。アクリル系共重合体は、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、紫外線照射法、電子線照射法によって共重合させることができる。
粘着剤層に使用するアクリル系共重合体の重量平均分子量Mwは30万〜140万であることが好ましい。当該アクリル系共重合体の重量平均分子量Mwが上記範囲内であると、好適な接着力を確保しやすい。
(GPCの測定条件)
・サンプル濃度:0.5重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR−H」
・検出器:示差屈折
さらに粘着剤層の凝集力をあげるために、前記アクリル系共重合体組成物に架橋剤を添加するのが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤等が挙げられる。架橋剤の添加量としては、粘着剤層のゲル分率を80〜100%になるよう調整するのが好ましい。さらに好ましいゲル分率は、90〜100%である。ゲル分率を上記範囲に収めることで、前記V*を目的の範囲に制御し易くなることを発明者らは見出している。尚、ゲル分率は、養生後の粘着剤層をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。
添加剤として、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤、顔料・染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを粘着剤組成物に任意で添加することができる。
前記V*をより高速側に制御するために、アクリル系共重合体組成物に可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤の種類としては、前記V*が目的の範囲に入るものであれば、特に限定されないが、被着体に貼付した保護粘着フィルムを剥離した際に、いわゆる可塑剤のブリードアウトによる被着体の汚染を抑制するために、small式により計算されるSP値が8.5以下の可塑剤を使用することが好ましく、SP値が7.5〜8.5の可塑剤がより好ましい。
本発明の保護粘着フィルムは、少なくとも上記基材と上記粘着剤層とが積層された保護粘着フィルムである。
本発明の保護粘着フィルムの粘着力は、0.01〜3N/25mmであることが好ましく、0.01〜1N/25mmであることがより好ましい。該180度引き剥がし粘着力は、JIS−Z−0237(2000年版)に準拠した測定において、2kgローラーを用いて、圧着速さ5mm/s、圧着回数1往復で、ヘアライン状に研磨したステンレス板に貼付した保護粘着フィルムを、温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中に1時間放置した後、引張り速さ300mm/minの条件下で測定される値である。
基材と粘着剤層を積層するには、粘着剤溶液をロールコーターやダイコーター等で直接基材に塗布する方法や、セパレーター上にいったん粘着剤層を形成後、基材に転写する方法を用いる。基材と粘着剤との積層後は、必要に応じて加温環境下で熟成することもできる。
溶液重合法や乳化重合法等によって重合されるアクリル系共重合体の場合は、溶媒を含有するアクリル系粘着剤組成物を乾燥させることによって、粘着剤層を形成させる。一方、紫外線照射法や電子線照射法ではアクリル系粘着剤組成物を紫外線や電子線によって共重合されることによって、粘着剤層を形成させる。
[実施例1]
(アクリル系共重合体Aの合成)
冷却管、攪拌機、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に2−エチルヘキシルアクリレート96.9部、アクリル酸0.1部、4−ヒドロキシブチルアクリレート3.0部と、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル150部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して固形分40%のアクリル系共重合体Aを得た。
前記アクリル系共重合体Aの固形分100重量部に対して、セバシン酸エステル系可塑剤W−280(DIC(株)社製、SP値8.4)を10重量部配合し、アクリル系粘着剤組成物Aを得た。
アクリル系粘着剤組成物Aにイソシアネート系架橋剤コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製)を1.5部、およびキレート系架橋剤M−5A(綜研化学社製)を1.0部添加し、15分間撹拌した後、離型処理した厚さ75μmのポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、80℃で90秒間乾燥して粘着剤層を得た。これを50μmのPETフィルムに貼付し、40℃で7日間熟成して、保護粘着フィルムを得た。
可塑剤として、エポキシ化脂肪酸エステル系可塑剤W−121(DIC(株)社製、SP値8.1)を1.5部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、保護粘着フィルムを得た。
可塑剤として、エポキシ化脂肪酸エステル系可塑剤W−121(DIC(株)社製、SP値8.1)を2.2部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、保護粘着フィルムを得た。
(アクリル系共重合体Bの合成)
冷却管、攪拌機、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器にn−ブチルアクリレート96.9部、アクリル酸0.1部、4−ヒドロキシブチルアクリレート3.0部と、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル150部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して固形分40%のアクリル系共重合体Bを得た。
前記アクリル系共重合体Bの固形分100重量部に対して、エポキシ化脂肪酸エステル系可塑剤W−121(DIC(株)社製)を7.0重量部配合し、アクリル系粘着剤組成物Bを得た。
アクリル系粘着剤組成物Bにイソシアネート系架橋剤コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製)を1.5部、およびキレート系架橋剤M−5A(綜研化学社製)を1.0部添加し、15分間撹拌した後、離型処理した厚さ75μmのポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、80℃で90秒間乾燥して粘着剤層を得た。これを50μmのPETフィルムに貼付し、40℃で7日間熟成して、保護粘着フィルムを得た。
可塑剤として、エポキシ化脂肪酸エステル系可塑剤W−128−S(DIC(株)社製、8.0〜8.1)を10.0部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、保護粘着フィルムを得た。
可塑剤として、エポキシ化脂肪酸エステル系可塑剤W−128−S(DIC(株)社製、8.0〜8.1)を20.0部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、保護粘着フィルムを得た。
可塑剤として、エポキシ化脂肪酸エステル系可塑剤W−128−S(DIC(株)社製、8.0〜8.1)を25.0部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、保護粘着フィルムを得た。
可塑剤として、アジピン酸モノエステル系可塑剤W−242(DIC(株)社製、8.5)を10.0部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、保護粘着フィルムを得た。
可塑剤として、アジピン酸ポリエステル系可塑剤W−230−H(DIC(株)社製、SP値9.2)を10.0部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、保護粘着フィルムを得た。
可塑剤として、安息香酸モノエステル系可塑剤PB−3A(DIC(株)社製、SP値9.9)を10.0部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、保護粘着フィルムを得た。
前記アクリル系共重合体Aに可塑剤を配合しないこと以外は、実施例1と同様にして保護粘着フィルムを得た。
前記アクリル系共重合体Aに、可塑剤としてエポキシ化脂肪酸エステル系可塑剤W−121(DIC(株)社製、SP値8.1)を1.0部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、保護粘着フィルムを得た。
2cm幅、7cm長に切断した保護粘着フィルムの非粘着面を、両面テープを用いて平滑なガラス板に固定した。次いで、JIS−Z−0237(2000年版)の180度引き剥がし粘着力の測定方法に準拠し、2cm幅、25μm厚の表面処理が施されていないPETフィルムを、圧着速さ5mm/s、圧着回数1往復、2kgローラーを用いて圧着し、温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中に1時間放置した。小型引っ張り試験機(Stable Micro Systems社製 TA.XTplus Texture Analyser)の基盤上に、当該試料をL型ブラケットにより垂直に固定し、所定の温度(23℃、50℃、75℃)に到達した後剥離試験を開始した。各温度でPETフィルムの剥離速度を変化させることによって剥離速度−剥離力曲線を作成し、さらに時間−温度換算則により23℃を基準温度とするマスターカーブを作成した。最後に、(1)式を用いてフィッティングを行い、V*を決定した。
5cm幅、10cm長に切断した保護粘着フィルムサンプルを用意した。温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中にて、粘着面を表にして10cm長の両末端を重ね合わせて手で摘み、湾曲した粘着面の頂点を平滑なガラス板に接触させ、瞬時に手を離し、粘着剤層がガラス板に濡れていく速度、ならびに気泡の巻き込みを目視観察した。評価基準は以下の通りとした。
◎:濡れていく速度が速く、気泡の巻き込みがなかった。
○:気泡の巻き込みはほとんどなく実用上問題無いものであった。
×:濡れていく速度が遅く、多くの気泡の巻き込みが見られた。
幅25mm、長さ80mmの試験片を準備する。ヘアライン状に研磨したステンレス板に対して、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境でJIS−Z−0237(2000年版)に規定された貼付方法で貼付した。貼付から1時間後に300mm/minの引張速度で180°方向に引き剥がし、剥離強さ(単位:N/25mm)を測定した。測定機器として、エー・アンド・ディ社製テンシロン万能試験機「RTA−100」を使用した。
上記実施例1〜10の保護粘着フィルムをポリメチルメタクリレート(PMMA)板、ポリカーボネート(PC)板へ故意に気泡を入れた状態で貼付け、高温高湿環境下(温度60±2℃、相対湿度90±5%RH)に2週間放置した。取り出してから温度23±2℃、相対湿度50±5%RH環境下にて1時間放冷後、保護粘着フィルムを剥がし、PMMA板、PC板の表面を目視観察したところ、実施例1〜6及び実施例8の保護粘着フィルムは被着体表面に曇りや貼付跡が見られず耐汚染性に優れるものであった。一方、実施例7、実施例9〜10の保護粘着フィルムは被着体表面に若干の曇りや貼付跡が見られた。
Claims (5)
- 基材と粘着剤層とを有する保護粘着フィルムであって、
前記粘着剤層がアクリル系共重合体を含有するアクリル系粘着剤組成物からなり、前記アクリル系粘着剤組成物がSP値7.5〜8.5である脂肪酸エステルからなる可塑剤を含有するものであり、
前記脂肪酸エステルからなる可塑剤がセバシン酸エステル系可塑剤、エポキシ化脂肪酸エステル系可塑剤、または、アジピン酸モノエステル系可塑剤であり、
前記粘着剤層表面に、厚さ25μmのPETフィルムを、2kgローラーを用いて5mm/sの圧着速さで圧着回数1往復にて圧着し、温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中に1時間静置した後、180°方向へ剥離した際の剥離力を剥離速度毎に測定して、下式(1)により剥離速度−剥離力曲線を相関させた際の特性速度(V*)が、3μm/s以上であることを特徴とするディスプレイ用保護粘着フィルム。
[G:剥離仕事(J/m2)、G0;0.1(J/m2)、F;剥離力(N)、l;引き剥がすPETフィルムの幅(m)、V;剥離速度(m/s)、α;剥離力の速度勾配を表す定数(0.6)] - 粘着剤層の厚さが5〜50μmであり、基材の厚さが5〜200μmである請求項1に記載のディスプレイ用保護粘着フィルム。
- 前記可塑剤の粘度が、2500mPa・s以下である請求項1または2に記載のディスプレイ用保護粘着フィルム。
- 前記アクリル系共重合体が単量体成分を重合して得られるものであり、2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの少なくとも一種を前記単量体成分として80〜99質量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載の保護粘着フィルム。
- 粘着剤層を有する粘着フィルムを被着対象に貼り付ける際の気泡の巻き込み難さの評価方法であって、
前記粘着剤層表面に、厚さ25μmのPETフィルムを、2kgローラーを用いて5mm/sの圧着速さで圧着回数1往復にて圧着し、温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中に1時間静置した後、180°方向へ剥離した際の剥離力を剥離速度毎に測定して剥離速度−剥離力曲線を作成し、下式(1)により剥離速度−剥離力曲線を相関させた際の特性速度(V*)により気泡の巻き込み難さを評価する方法。
[G:剥離仕事(J/m2)、G0;接着仕事(0.1J/m2)、F;剥離力(N)、l;引き剥がすPETフィルムの幅(m)、V;剥離速度(m/s)、α;剥離力の速度勾配を表す定数(0.6)]
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