JP5707700B2 - 金型装置 - Google Patents
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Description
<電動パワーステアリング装置の概略構成>
まず、電動パワーステアリング装置の概略的な構成について説明する。図1に示すように、電動パワーステアリング装置において、ステアリングホイール10と一体回転するステアリングシャフト11は、ステアリングホイール10側からコラムシャフト12、インターミディエイトシャフト13及びピニオンシャフト14の順に連結されてなる。ピニオンシャフト14はこれに直交して設けられるラックハウジング15に収容されたラック軸16のラック部分16aに噛合されている。ステアリング操作に伴うステアリングシャフト11の回転は、ピニオンシャフト14とラック部分16aとの噛み合いを通じてラック軸16の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動を通じて転舵輪18の舵角が変更される。また、電動パワーステアリング装置は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するモータ19を備えてなる。当該モータ19は、歯車等からなる減速機構20を介してステアリングシャフト11に作動連結されている。モータ19の回転力は減速機構20により減速されてこれがアシスト力として操舵系、正確にはステアリングシャフト11に伝達される。
次に、ダイカストマシンの概略的な構成を説明する。図2に示すように、ダイカストマシン31は、溶解炉32、2つのアキュムレータ(ACC)33,34、射出装置35、スプレー装置36、金型装置37、型締め装置38、及び制御装置39を備え、これらが同図において左から順に並設されている。2つのアキュムレータ33,34、射出装置35、スプレー装置36、金型装置37、及び型締め装置38は基台40上に、溶解炉32及び制御装置39は床の上に設けられている。
2つのアキュムレータ33,34のうち、一方のアキュムレータ33は射出用の圧力を、他方のアキュムレータ34は増圧用の圧力を生成する。これらアキュムレータ33,34は、いずれも窒素等の不活性ガスの圧縮エネルギを利用するものである。
金型装置37は、固定盤41に固定された固定型42、及び可動盤43に固定された可動型44を備えてなる。可動盤43は図示しないボール螺子装置あるいはシリンダ機構等の移動機構の作動を通じて、基台40の上面を固定盤41に対して接近又は離間する方向(図2の左右方向)へ移動可能とされている。可動型44は、可動盤43と一体的に変位する。可動型44が固定型42に接触された状態において、これらの間には成型品を形成するための空間(キャビティ)が形成される。固定型42及び可動型44は、SKD61(JIS)等の合金工具鋼鋼材により形成される。なお、この金型装置37については後に詳述する。
<金型装置>
次に、金型装置について詳細に説明する。図3(a)に示すように、固定型42は、母型51及び入子52を備えてなる。この入子52は、母型51の可動型44側に形成された凹部53に嵌め込まれ固定されている。入子52の可動型44側の側面には、成型品P(ここでは、ラックハウジング15)の外形形状を形成する成型凹部54が形成されている。同様に、可動型44も母型55及び入子56を備えてなる。この入子56は、母型55の固定型42側の側面に形成された凹部57に嵌め込まれ固定されている。入子56の固定型42側の側面には、固定側の成型凹部54とともに成型品の外形形状を形成する成型凹部58が形成されている。これら固定側の成型凹部54及び可動側の成型凹部58は、図3(a)の紙面手前方向へ延びるように形成されている。図3(b)に示されるように、固定型42に対して可動型44が合わせられることにより、これらの間に成型品Pの外形形状に対応する空間部Sが形成される。
ここで、金型装置37の給湯経路について説明する。図3(a)に示すように、可動側の入子56において、その固定型42側の側面には溝61が形成されている。この溝61の一端は成型凹部58に連通し、同じく他端は外部に開放されている。そして、固定型42に対して可動型44が合わせられることにより、当該入子52と溝61とから湯口62が形成される。
次に、金型装置の可動中子について詳細に説明する。図4に示すように、金型装置37は、固定型42及び可動型44を閉じたときにこれらの間に形成される空間部Sに挿入される第1の可動中子71、第2の可動中子72、及び第3の可動中子73を備えてなる。第1及び第2の可動中子71,72は第1の筒部21の内形形状を、第3の可動中子73は第3の筒部23の内形形状を形成するためのものである。これら第1〜第3の可動中子71〜73は、SKD等の合金工具鋼鋼材により形成される。
図4の左上に拡大して示されるように、スライダ81は、シリンダ機構82のプランジャ82aに連結される第1のスライダ91、及び当該第1のスライダ91のプランジャ82aと反対側の側面に連結される第2のスライダ92を備えてなる。
次に、第1の可動中子71の構造について詳細に説明する。図5(a),(b)に示すように、第1の可動中子71は、外径の異なる複数の段付き部を有する多段の円柱状に形成されている。
次に、カム溝101について詳細に説明する。図6に示すように、カム溝101は、第1の溝部121と第2の溝部122とが滑らかに連続されてなる。第1の溝部121は第1の可動中子71の第3の部分113側(図中の右側)に、第2の溝部122は同じく第1の部分111側(図中の左側)に配設されている。第1の溝部121は、第1の可動中子71の軸線に対して平行に延びる軸線AXに対して鋭角である第1の角度θ1を有して交わる第1の軸線O1に沿って延びている。また、第2の溝部122は、先の軸線AXに対して鋭角である第2の角度θ2を有して交わる第2の軸線O2に沿って延びている。第2の角度θ2は、第1の角度θ1よりも大きな値に設定される。
次に、第1の可動中子71とスライダ81との相対的な位置関係について説明する。
<挿入状態>
まず、第1の可動中子71が固定型42と可動型44との間の開口部115(図5(a)参照。)に挿入されて、スライダ81及び第1の可動中子71の段差面113aが2つの入子52,56に当接し、かつ第1の可動中子が第2の可動中子72に当接した状態について説明する。この状態において、図9に示すように、第2の部分112のシリンダ機構82と反対側(図中の下側)の側面と、第1の挿通孔94の内底面(図中の下側の内側面)との間には、隙間δが形成されている。当該隙間δの距離は、先の図5(a)に示されるように、第2の部分112の軸方向長L1と、第1のスライダ91の内端面と第2のスライダ92の内底面との間の距離L3との差の値に等しい。また、この状態において、ピン99は第1の係合位置P1に保持されている。
第1の可動中子71が前述した挿入状態に保持されている状態において、シリンダ機構82の作動を通じて、第1の可動中子71のキャビティCに対する引き抜き方向(図中の上方)への外力Fがスライダ81に印加された場合、当該スライダ81は第1の可動中子71に対してその軸方向へ相対的に変位する。このとき、第1の可動中子71が上方へ変位することはない。一方で、スライダ81の上方への変位に伴い、ピン99はカム溝101に案内されて第2の係合位置P2へ向けて相対的に変位する。当該変位に伴い第1の可動中子71は回転する。詳述すると、ピン99がカム溝101における第1の溝部121内を相対変位する間においては、先の図6に併せ示されるように、第1の可動中子71は、自身の軸線(正確には、これを平行をなす軸線AX)と第1の溝部121の軸線(第1の軸線O1)とのなす角度である第1の角度θ1に応じて、緩やかに回転する。
そして、図10に示されるように、スライダ81がさらに上方へ変位すると、第1の挿通孔94の内底面が第1の可動中子71における第2の部分112のシリンダ機構82と反対側(図中の下側)の側面に当接する。この状態になってはじめて第1の可動中子71を上方へ変位させることが可能となる(引き抜き可能状態)。そして、これ以降は、スライダ81と第1の第1の可動中子71は、一体的に上方へ変位する。また、スライダ81と第1の可動中子71との相対変位がないので、当該第1の可動中子71が回転することはない。このときには、第1の可動中子71における第2の部分112の上面と、スライダ81における第1の挿通孔94の内頂面との間に、隙間δが形成される。なお、第2のスライダ92の底壁(下側の壁)は、スライダ81の抜き方向への変位を規制する規制部として機能する。
図10に示される状態において、シリンダ機構82の作動を通じて、第1の可動中子71の引き抜き方向と反対方向(図中の下方)への外力Fがスライダ81に印加された場合、スライダ81は第1の可動中子71と一体的に下方へ変位する(図9参照。)。スライダ81が下方へ変位する途中で、第1の可動中子71の段差面113aが入子52,56に当接すると(図5(a)参照。)、スライダ81は、前述の隙間δの分だけ、第1の可動中子71に対して下方へ相対変位する。この際、ピン99がカム溝101内を、第2の係合位置P2から第1の係合位置P1へ向けて変位することにより、第1の可動中子71は前述した挿入時と逆方向へ回転する。その後、スライダ81の端面が入子52,56に当接して、スライダ81の下方向への変位が停止する。
次に、前述のように構成したダイカストマシン31の動作を説明する。
さて、ダイカストマシン31によりラックハウジング15を製造する際にはまず、固定型42、可動型44、及び第1〜第3の可動中子71〜73が組み合わせられることにより、金型装置37の内部にキャビティCが形成される。次に、型締め装置38による型締めが行われる。すなわち、可動型44が固定型42に対して圧接される。この状態を維持しつつ、射出装置35の作動を通じて、金型装置37内のキャビティCに溶湯が高圧で射出される。この際、型締め装置38によって、可動型44が固定型42に圧接されているため、溶湯の射出圧力によって可動型44が固定型42から離間することはない。そして、キャビティCの内部に充填された溶湯は、冷却及び固化されることにより、当該キャビティCの内部において所望の成型品P(ラックハウジング15)が成形される。ちなみに、キャビティCの内部に充填された溶湯によって、キャビティCを構成する固定型42、可動型44、及び第1〜第3の可動中子71〜73が昇温するが、これらの内部に設けられる図示しない水冷式の冷却機構により昇温が抑えられる。
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)第1の可動中子71は、成型品Pの取り出しの際におけるシリンダ機構82の抜き動作、すなわちプランジャ82aの往復運動に連動して、当該第1の可動中子71を回転させる回転機構を備えてなる。
ラックハウジング15のような長物を成型する際には、その長さが大きくなるほど、抜き勾配を十分に確保することが困難となる。これは、抜き長さが長くなる等の理由による。また、成型品の中空部分が長くなるほど、これを形成する可動中子と成型品とが凝着する範囲、ひいては当該凝着による可動中子の抜き抵抗の増大が懸念される。この点、本例の金型装置37によれば、可動中子(第1の可動中子71)と成型品Pとの間の凝着による抜き抵抗が緩和されるため、ラックハウジング15のような長物の成型品を製造する場合に好適である。また、アルミニウム合金等のように、成型収縮率の大きな材料を成型材料とする場合には、特に有効である。さらに、抜き勾配を確保しにくい成型品を製造する場合にも有効である。
(7)第1の可動中子71には、ピン99及びカム溝101を一組とする二組のカム機構を、これらが互いに反対側に位置するように設けた。このため、第1の可動中子71の引き抜き動作時において、安定した回転を発生させることができる。
なお、本実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・図11(a)に示すように、ピン99の先端にラジアル軸受131を設け、当該ラジアル軸受131とカム溝101の内側面との摺接を通じて、ピン99がカム溝101に案内されるようにしてもよい。このようにすれば、ピン99は滑らかにカム溝101に案内される。また、図11(b)に示すように、ピン99の先端に合成樹脂材料により形成された滑り軸受132を装着するようにしてもよい。さらに、図12(a),(b)に示されるように、カム溝101の内周面及び内底面のすべてを合成樹脂材料により覆うようにしてもよい。このようにしても、カム溝101とピン99とを直接的に摺動させる場合に比べて、それらの間の摩擦を低減することができる。ピン99はカム溝101に円滑に案内される。
・本例では、成型材料(溶湯)としてアルミニウム合金を採用したが、マグネシウム合金等の他の材料を使用してもよい。成型材料は製品に応じて適宜選択される。
・本例では、ピン99及びカム溝101からなるカム機構(回転機構)を、第1の可動中子71のみに設けたが、第2及び第3の可動中子72,73に設けるようにしてもよい。
・本例では、スライダ81を介して第1の可動中子71をその軸線方向へ変位させるようにしたが、このスライダ81を省略してもよい。この場合には、第1の可動中子71を、シリンダ機構82のプランジャ82aに回転可能に連結する。そして、固定型42及び可動型44(あるいは両入子52,56)及び第1の可動中子71の一方にカム溝101を、他方にピン99を設ける。このようにしても、シリンダ機構82の抜き動作に連動して、第1の可動中子71は引き抜きと同時に回転する。なお、プランジャ82aと第1の可動中子71とは、直接的に連結してもよいし、何らかの連結部材を介して連結してもよい。このようにすれば、第1の可動中子71は、その軸線方向への引き抜きと同時に回転する。そしてこの回転を通じて、第1の可動中子71と成型品Pとの凝着を緩和することが可能となる。
次に、前記実施の形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)固定型と可動型とを互いに接し合わせることにより形成される空間部に対し、駆動装置の作動を通じて抜き差し可能とされた可動中子が外方から挿入されることにより、円筒状の中空部を有する成型品の形状に対応するキャビティが形成される金型装置において、前記両型と前記可動中子との間には、前記成型品の取り出しの際における前記駆動装置の抜き動作を利用して当該可動中子を回転させる回転機構を備え、前記回転機構は、前記可動中子の外周面及び前記可動中子が挿入される前記両型間の開口部における内周面の一方に設けられて当該可動中子の抜き差し方向に対して交わる方向へ延びる溝と、同じく他方に設けられて前記溝に案内される突部とを備えてなる金型装置。
(ハ)請求項1に記載の金型装置において、前記カム溝は、前記可動中子の抜き差し方向に沿って延びる当該可動中子の中心軸に対して鋭角である第1の角度を有して交わる第1の軸線に沿って延びる第1の溝と、前記第1の溝よりも前記可動中子の前記空間部に対する挿入側の端部と反対側に設けられて当該可動中子の中心軸に対して前記第1の角度よりも大きく設定される第2の角度を有して交わる第2の軸線に沿って延びる第2の溝と、が滑らかに連続されてなる金型装置。
Claims (2)
- 固定型と可動型とを互いに接し合わせることにより形成される空間部に対し、駆動装置の作動を通じて抜き差し可能とされた可動中子が外方から挿入されることにより、円筒状の中空部を有する成型品の形状に対応するキャビティが形成される金型装置において、
前記成型品の取り出しの際における前記駆動装置の抜き動作を利用して当該可動中子を回転させる回転機構を備え、
前記回転機構は、前記可動中子の前記キャビティと反対側の端部が相対回転可能に挿入されるとともに、前記駆動装置の抜き動作を通じて、前記可動中子に対してその抜き差し方向に沿って相対的に変位可能なスライダと、
前記スライダの前記抜き差し方向における直線運動を前記可動中子の回転運動に変換する変換機構と、を備え、
前記スライダは、
当該スライダが前記可動中子に対してその抜き方向へ変位したときに当該可動中子の一部と係合することにより、前記可動中子に対して前記スライダがそれ以上に前記抜き方向へ変位することを規制する第1規制部と、
前記スライダが前記可動中子に対してその差し方向へ変位したときに当該可動中子の一部と係合することにより、前記可動中子に対して前記スライダがそれ以上に前記差し方向へ変位することを規制する第2規制部とを備え、
前記第1規制部は、前記可動中子が前記空間部に挿入されて前記キャビティを形成する状態で、前記可動中子に対して当該スライダが前記抜き方向へ一定距離だけ変位したときに前記可動中子の一部と係合するように設けられ、
前記可動中子は、前記スライダを介して前記駆動装置に連結されるとともに、前記スライダと係合した状態において、前記スライダと一体的に前記抜き差し方向に沿って変位するように設けられ、
前記変換機構は、前記可動中子の外周面及び前記スライダの内周面の一方に設けられて当該可動中子の抜き差し方向に対して交わる方向へ延びるカム溝と、同じく他方に設けられて前記カム溝に案内されるピンとからなるカム機構として構成されてなる金型装置。 - 請求項1に記載の金型装置において、
前記成型品は、パワーステアリング装置のラックハウジングである金型装置。
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