JP5700282B2 - アルカリ蓄電池 - Google Patents
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Description
で表され、酸素発生を伴って水酸化ニッケルへ還元されることによって、自己放電がおこる。
特許文献1には、水酸化ニッケルとその表面を被覆する2価より高次のコバルト化合物を有し、被覆層にカルシウム等の化合物を含むアルカリ蓄電池用ニッケル正極について、カルシウム等の化合物を含むことにより酸素発生過電圧が上昇することが記載されている。
また、導電補助層が二酸化セリウム相を含み、かつ電解液が水酸化ナトリウム水溶液を主成分とすることにより、充電状態で保存した場合にも、残存容量の減少を抑え、容量維持率を高くすることができる。
また、好ましくは、前記正極活物質粒子中に含まれるリチウムは0.01質量%未満であることを特徴とする。
これにより、本発明の効果を一層大きくすることができ、過放電後の容量回復率および充電時の残存容量維持率をより大きなものとすることができる。
活物質粒子は、水酸化ニッケルを含む芯層と、その表面を被覆する導電補助層からなる複合粒子である。
芯層は、水酸化ニッケルの改質のために、他の成分を含んでいてもよい。例えば、電極の膨潤を防ぐためにZnを含んでいてもよい。また、高温時の充電効率を改善するためにCoを含んでいることが好ましい。ただし、ZnとCoの濃度が高すぎると活物質の充填量が少なくなり、電池容量が低下するので、ZnとCoを合わせた濃度は5質量%以下とすることが好ましい。
また、活物質粒子中に含まれるリチウムは0.01質量%未満であることが好ましく、活物質粒子がリチウムを含まないことがさらに好ましい。
導電補助層が二酸化セリウム相を含むと、過放電や逆充電の状態となった場合に、オキシ水酸化コバルトが還元されることを抑制する効果が得られるからである。さらに、二酸化セリウム相の存在割合を上記好適な範囲とすることにより、導電補助層の抵抗値を低くすることができるからである。詳細は実施例に基づいて後述する。
従来よりコバルトの化合物として水酸化コバルト等が用いられることがあるが、その場合には、水酸化コバルト等が電解液に溶解し、初回充電時に酸化されて、導電性の高いオキシ水酸化コバルトとして再析出することによって導電助剤としての機能を発揮できることとなる。したがって、水酸化コバルト相内に二酸化セリウム相が存在したとしてもコバルト化合物の溶解・再析出の過程でオキシ水酸化コバルト相と二酸化セリウム相の分離が進行する。これに対して本発明では、オキシ水酸化コバルトの場合は溶解・再析出の過程を経ず、オキシ水酸化コバルト相と二酸化セリウム相がミクロに混在した状態であるので、二酸化セリウム相によるオキシ水酸化コバルトの還元抑制効果が十分に発揮される。
コバルトの酸化数は、3.28価以上であることが好ましい。3.28価以上とすることで、還元を抑制する効果と導電補助層の抵抗値を低くする効果の両立ができる。なお、コバルトの酸化数は放射光XANES測定により求めた。また、0価のCoフォイル、2価のCo(OH)2および2.666価のCo3O4の測定値を検量線に用いて酸化数を算出した。
また、望ましくは実質的に水酸化リチウムを含まないことが好ましい。電解液が水酸化リチウムを含まないことによって、充電状態で保存したときの電池容量維持率をより高くすることができるからである。
ここで、「実質的に含まない」とは、電池材料および工程の設計上は水酸化リチウムを含まないが、意図しない不純物として含まれることは排除しないという意味である。特に、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムは不純物として微量のリチウムを含むことがある。電解液中のリチウムの濃度が0.05質量%未満であれば、実質的に含まないといえる。
NaOH水溶液をpHを9、温度を45℃で一定に制御し、激しく撹拌しながら、その中に上記CoCe水溶液を滴下して、コバルトとセリウムを含む水酸化物を析出させた。滴下浴となるNaOH水溶液のpH調整は、18質量%のNaOH水溶液を適宜加えることによって行った。析出物をろ過によって回収、水洗、乾燥して、コバルトとセリウムを含む水酸化物の粒子を得た。
コバルトとセリウムを含む水酸化物粒子50gに対して、48質量%のNaOH水溶液40gを添加して、120℃で1時間、大気中で加熱し、次いでこれをろ過、水洗、乾燥して、目的のコバルトセリウム化合物粒子が得られた。
試料であるコバルトセリウム化合物粒子を発泡ニッケルに充填した作用極101と、参照極(Hg/HgO)102と、通常のニッケル水素電池の負極と同様の水素吸蔵合金極である対極103とを電解液(6.8モル/LのKOH水溶液)中に配置し、制御装置104によって参照極102を基準に作用極101の電位を設定した状態で、流れる電流を測定する。作用極101の電位はコバルトセリウム化合物粒子が還元反応を起こしやすい1V(対極103とほぼ同電位)に設定しておくことで、流れた電流は還元反応によって発生していることになり、その還元反応により流れる電流の積算値を求めることにより還元反応の起こりやすさを定量的に評価することができる。
オキシ水酸化コバルト相は、図8に結晶構造モデルを示すように、菱面体構造で空間群R3m構造の結晶構造を有しており、少なくともコバルト原子、酸素原子および水素原子を構成元素として含んでいる。そして、本発明のコバルトセリウム化合物においては、オキシ水酸化コバルト相はセリウム原子を含むことができる。これらの原子は、図8で示す所定のサイトに配置されている。具体的には、3al,3a2サイトにCoまたはCe、3a3,9bサイトに酸素原子(水分子、水酸イオンを構成する酸素原子を含む)が配置されている。このようにセリウムが含まれる場合には3al,3a2サイトに配置される。なお、3a4サイトには、原子が配置されていなくても良いが、同図のようにNaを配置することが好ましい。3a4サイトへのNaの配置は、コバルトとセリウムとを含む水酸化物を加熱処理する際に水酸化ナトリウムを共存させることによっておこなうことができる。このようにNaを含むことで、製造工程における酸化処理において、酸化を容易に進行させることができる。
表中「セリウムの含有割合」とは、コバルトセリウム化合物の製造過程におけるコバルトイオンとセリウムイオンを含む水溶液中の、CoイオンとCeイオンとの合計に対するCeイオンの含有割合を原子%で表したものである。比抵抗値とは、上記の粉体抵抗測定により得た値である。還元電流量とは、上記の方法によって測定したもので、1時間の積算電流量である。結晶相の含有割合とは、リートベルト解析によって求めた値で、コバルトセリウム化合物中のオキシ水酸化コバルト相、二酸化セリウム相および四酸化三コバルト相の含有割合を質量%で表したものである。また、二酸化セリウム相の存在割合とは、コバルトセリウム化合物中における、オキシ水酸化コバルト相と二酸化セリウム相との合計に対する二酸化セリウム相の存在割合を、各相の含有割合から算出したものである。
図3のデータから、セリウムの含有割合が1原子%であっても、還元電流量が急激に小さくなっている。すなわち、セリウムの含有割合が1原子%以上であると、急激に還元反応が起こりにくくなっていることを示している。還元電流量は、セリウムの含有割合が10原子%以上になるとさらに小さくなり、30原子%以上ではさらに小さく、データのある70原子%に至るまで低い値を維持している。
図4のデータから、比抵抗値は、セリウムの含有割合が1〜40原子%のときは、セリウムを全く添加していない状態とほとんど変わらない低い値を維持している。セリウムイオンの含有割合が50原子%以上になると比抵抗値が上昇するが、実用的には十分に小さい値である。
図5のデータでも、図3のデータと対応して、二酸化セリウム相の存在によって、還元電流量が急激に小さくなっていることが分かる。すなわち、二酸化セリウム相の存在によって、還元反応が起こりにくくなっていることが分かる。二酸化セリウム相の存在割合が6.5質量%であっても還元電流量が急激に小さくなっている。還元電流量は、二酸化セリウム相の存在割合が13.4質量%以上になるとさらに小さくなり、40.0質量%以上ではさらに小さく、データのある88.2質量%に至るまで低い値を維持している。
図6のデータでも図4のデータと対応して、比抵抗値は、セリウムの含有割合が40原子%に対応する二酸化セリウムの存在割合が48.6質量%以下のときは、セリウムを全く添加していない状態とほとんど変わらない低い値を維持している。セリウムイオンの含有割合が50原子%に対応する二酸化セリウムの存在割合が88.2質量%では比抵抗値が上昇しているが、実用的には十分に小さい値である。
表2に示すように、アルミニウムについては添加元素の含有割合を3段階に変化させており、他の元素については30原子%で代表させておおよその特性を把握した。
コバルトセリウム化合物とコバルトアルミニウム化合物とを比較すると、還元電流量に関しては、コバルトセリウム化合物よりもかなり高い値であるものの、アルミニウムの増加に対して一応の減少傾向を示している。従って、アルミニウムの含有割合を更に大きくすると還元電流量を更に小さくできることが期待される。
コバルトセリウム化合物をこのような種々の元素を添加したコバルト化合物と比較すると、還元電流量及び比抵抗値の双方で極めて良好な値を示している点でコバルトセリウム化合物は特異な存在であると言える。
また、上記好ましい二酸化セリウムの存在割合を実現するには、コバルトイオンとセリウムイオンを含む水溶液中のセリウムの含有割合(Ce/(Co+Ce)の原子%)を、5原子%以上70原子%以下とすればよく、10原子%以上40原子%以下とすればさらに好ましいことが分かった。
まず、活物質粒子は、図2に示すように、水酸化ニッケル粒子の作製、その表面へのコバルトとセリウムを含む水酸化物層の析出、コバルトとセリウムを含む水酸化物被覆層の酸化処理を行うことによって、作製することができる。
Ni水溶液を滴下する方法の具体的な例としては、硫酸ニッケルが溶解した水溶液を、激しく撹拌しながら、pHを12、温度を45℃で一定に制御した1モル/Lの濃度の硫酸アンモニウム水溶液中に滴下することによって、水酸化ニッケルの粒子を析出させることができる。pHの調整は、例えば18質量%のNaOH水溶液を適宜添加することによって行うことができる。
Ni水溶液にアルカリ水溶液を添加する方法の具体的な例としては、Ni水溶液に、硫酸アンモニウムとNaOH水溶液を添加してアンミン錯体を生成させ、反応系を激しく撹拌しながら、さらにNaOH水溶液を滴下し、反応浴の温度を45±2℃、pHを12±0.2に制御することによって、水酸化ニッケルの粒子を析出させることができる。
使用する水酸化ナトリウムの量は,Na/(Co+Ce+Ni)がモル比で0.5以上となるように混合することが好ましい。
加熱温度は、60℃以上で水酸化ナトリウム水溶液の沸点以下、好ましくは100℃以上で水酸化ナトリウム水溶液の沸点以下とすることができる。
これを用いて本実施形態の電池を製造する方法は、水酸化ナトリウム水溶液を主成分とする電解液を用いる以外は、公知の方法を用いることができる。概略以下の通りである。
硫酸ニッケル、硫酸亜鉛および硫酸コバルトを溶解した水溶液を、激しく撹拌しながらpH12、温度45℃で一定に制御した1モル/Lの硫酸アンモニウム水溶液中に滴下した。pHの調整は18質量%のNaOH水溶液を用いて行った。ついで、析出物をろ過によって回収、水洗、乾燥した、球状の水酸化ニッケル粒子を得た。水酸化ニッケルはZnを3質量%、Coを0.6質量%固溶していた。
電解液に7モル/LのKOH水溶液を使用した以外は、上記実施例1と同じ方法により作製した。
硫酸コバルトと硝酸セリウムを溶解した水溶液の代わりに硫酸コバルトのみを溶解した水溶液を用いて、導電補助層に二酸化セリウム層を含まない活物質粒子を作製し、これを使用した以外は、実施例1と同じ方法により作製した。
比較例2と同じ方法で導電補助層に二酸化セリウム層を含まない活物質粒子を作製して使用したことと、電解液に7モル/LのKOH水溶液を使用した以外は、実施例1と同じ方法により作製した。
上記の通り作製した電池について、以下の手順で初期化成を行った。充電を20℃で0.1ItA(200mA)で12時間、次いで放電を0.2ItA(400mA)で1Vとなるまで行い、これを2サイクル繰り返した。その後、40℃で48時間保存した。そして、充電を20℃で0.1ItA(200mA)で16時間、休止1時間、放電を0.2ItA(400mA)で1Vとなるまで行い、これを3サイクル繰り返し、化成を終了した。
充電を20℃で0.1ItA(200mA)で16時間、休止1時間、放電を0.2ItA(400mA)で1Vとなるまでおこない、保存前の放電容量を測定した。そして、0.1ItA(200mA)で16時間充電した後、45℃で14日間保存した。その後、環境温度を20℃にし、放電を0.2ItA(400mA)で1Vとなるまでおこない、残存放電容量をもとめた。
残存容量維持率(%)=(残存放電容量/保存前の放電容量)×100 とした。
充電を20℃で0.1ItA(200mA)で16時間、休止1時間、放電を0.2ItA(400mA)で1Vとなるまでおこない、過放電前の放電容量を測定した。そして、60℃で3Ωの抵抗を6時間接続し、過放電をおこなった。その後、充電を20℃で0.1ItA(200mA)で16時間、休止1時間、放電を0.2ItA(400mA)で1Vとなるまでおこない、回復放電容量をもとめた。
放電容量回復率(%)=(回復放電容量/過放電前の放電容量)×100 とした。
活物質中のLi濃度は、電池を解体して正極活物質を取り出し、高周波プラズマ発光分校分析装置(Thermo Jarrell Ash社、IRIS/AP)を用いてICP発光分光分析で定量した。
後述する実施例および比較例と併せて、測定結果の一覧を図1に示す。
表中、導電補助層の欄に「Co」とあるのは水酸化ニッケルの芯層の表面にオキシ水酸化コバルトのみを被覆し、「Co,Ce]とあるのは、コバルトセリウム化合物を被覆し、CoCe水溶液中のCe含有割合が20原子%である試料を示す。Li濃度、放電容量回復率および残存容量維持率は、それぞれ前記の方法で測定したものである。
比較例3と比較例2との比較により、電解液をKOHからNaOHに変えることによって、残存容量維持率が84.8%から87.3%へと2.5%大きくなっている。これは、NaOHを用いることによって酸素発生過電圧が大きくなった(酸素発生電位が貴にシフトした)ことによると考えられる。
比較例3と比較例1との比較により、導電補助層をオキシ水酸化コバルトからオキシ水酸化コバルト相と二酸化セリウム相を含むコバルトセリウム化合物に変えることによって、残存容量維持率は84.8%から86.7%へと1.9%大きくなっている。この理由も、酸素発生過電圧が大きくなったことによると思われる。
実施例1では、残存容量維持率は90.5%と、比較例2、3よりも一段と大きくなっており、比較例1に上記NaOHと二酸化セリウム相の効果を単純に加えたものよりも大きい。この結果から、二酸化セリウムとNaOHの相乗効果があったものと判断できる。
実施例1の放電容量回復率は99.9%で、過放電を経てもほぼ初期の容量を回復している。この結果から、過放電状態においてもCoOOHの還元がほとんど進行していないことが示唆される。
この放電容量回復率は、比較例3の96.5%のみならず、比較例1(実施例1と同様に二酸化セリウムを含む)の97.3%と比べても高く、二酸化セリウムとNaOHによる顕著な相乗効果を示している。
電解液に8モル/LのNaOH水溶液を使用した以外は、実施例1と同じ方法により作製した。
電解液に、7モル/LのNaOHと1モル/LのLiOHを含む水溶液を使用した以外は、実施例1と同じ方法により作製した。
電解液に、7モル/LのKOHと1モル/LのLiOHを含む水溶液を使用した以外は、実施例1と同じ方法により作製した。
比較例2と同じ方法で導電補助層に二酸化セリウム層を含まない活物質粒子を作製して使用したことと、電解液に7モル/LのNaOH水溶液と0.25モル/LのLiOHを含む水溶液を使用した以外は、実施例1と同じ方法により作製した。
比較例2と同じ方法で導電補助層に二酸化セリウム層を含まない活物質粒子を作製して使用したことと、電解液に7モル/LのKOHと1モル/LのLiOHを含む水溶液を使用した以外は、実施例1と同じ方法により作製した。
実施例1〜3および比較例1〜6について、適当な組み合わせで比較を行うことによって、正極活物質中のLiおよび電解液中のLiOHの影響を確認することができる。
102 参照極
103 対極
104 制御装置
Claims (3)
- 水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質粒子を有する正極と、負極と、電解液とを備えるアルカリ蓄電池であって、
前記正極活物質粒子は、水酸化ニッケルを含む芯層と、前記芯層の表面を被覆する導電補助層とを有し、
前記導電補助層は、菱面体構造で空間群R3m構造の結晶構造を有するオキシ水酸化コバルト相とホタル石構造で空間群Fm3m構造の結晶構造を有する二酸化セリウム相を含み、
前記オキシ水酸化コバルト相は、コバルト原子及びセリウム原子を含み、
前記オキシ水酸化コバルト相の3al,3a2サイトに前記コバルト原子及び前記セリウム原子が配置され、
前記二酸化セリウム相は、コバルト原子及びセリウム原子を含み、
前記二酸化セリウム相の4aサイトにコバルト原子及びセリウム原子が配置され、
前記電解液は、水酸化ナトリウム水溶液を主成分とする
ことを特徴とするアルカリ蓄電池。 - 前記電解液は、実質的に水酸化リチウムを含まない
ことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池。 - 前記正極活物質粒子中に含まれるリチウムは0.01質量%未満である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のアルカリ蓄電池。
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