以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる加工装置1を示すものである。この加工装置1は、自動車のドアAを製造する際に用いられるものである。
加工装置1で加工されるドア(被加工物)Aは、車室側に位置するインナパネルP1と、車外側に位置するアウタパネルP2とを備えている。インナパネルP1及びアウタパネルP2は、それぞれ、鋼板をプレス加工してなるものである。インナパネルP1及びアウタパネルP2にはサッシュ部分を形成するための枠部が設けられている。また、インナパネルP1の周縁部は、アウタパネルP2の周縁部近傍に板厚方向に重ね合わされている。この状態で、アウタパネルP2の周縁部は、インナパネルP1の周縁部を挟持するようにインナパネルP1側へ折り曲げられ、ヘミング加工が施されている。このヘミング加工を施す際に本発明の加工装置1が用いられる。また、詳細は後述するが、アウタパネルP2の周縁部は、予備曲げ加工(予備加工)と、予備曲げ加工後の本曲げ加工(本加工)とを施して最終形状となる。
加工装置1は、上記ヘミング加工を施すためのヘミング加工装置である。加工装置1は、工場の床面に固定される固定型としての下型(第2型)11と、本曲げ装置50と、予備曲げ装置51と、ロボット(搬送装置)Rとを備えている。ロボットRにより、本曲げ装置50及び予備曲げ装置51の搬送と、ドアAの搬送とが行えるようになっている。また、本曲げ装置50と下型11とでドアAに本曲げ加工を施し、また、予備曲げ装置51と下型11とでドアAに予備曲げ加工を施すことができるようになっている。
下型11は枠状に形成されている。下型11の周囲には、脚21,21,…が設けられている。各脚21は、上下方向に延びている。下型11は、ドアAを成形するための成形面が上に向くように配置されている。この成形面にドアAのアウタパネルP2が載置されて支持されるようになっている。
下型11の上面の周縁部近傍には、本曲げ装置50及び予備曲げ装置51を位置決めするための複数のガイドピン11a,11a,…が設けられている。ガイドピン11a,11a,…は、本曲げ装置50及び予備曲げ装置51を案内して下型11の所定位置に導くためのものであり、下型11の周方向に間隔をあけて配置されている。各ガイドピン11aは上方へ突出しており、上部は先細形状となっている。
下型11の周縁部近傍には、上下方向に貫通する複数の貫通孔11b,11b,…が設けられている。貫通孔11b,11b,…は、下型11の周方向に間隔をあけて配置されている。
下型11には、複数の型駆動装置13,13,…が設けられている。型駆動装置13は、油圧シリンダ装置で構成されており、ロッド13aと、シリンダ13bと、ロッド13aを中心軸周りに回動させる回動装置13cとを備えている。型駆動装置13のロッド13aのストローク量は例えば5mm〜10mm程度あればよいので、ストローク量の少ないタイプの油圧シリンダ装置が用いられている。型駆動装置13,13,…は、下型11の周縁部に、下型11の周方向に互いに間隔をあけて、かつ、貫通孔11bに対応するように配置されている。尚、型駆動装置13は、小型であるため、下型11の中央部にも配設することも可能である。
型駆動装置13は、ロッド13aが略鉛直に延びるように、かつ、シリンダ13bがロッド13aの下に位置するように配置されている。シリンダ13bは、下型11の下面において下方へ突出するように固定されている。
ロッド13aは、下型11の貫通孔11bに挿通され、貫通孔11b内を上下方向に移動するようになっている。ロッド13aの先端部(上端部)には、係合部材13dが固定されている。この係合部材13dは、ロッド13aの径方向に延びる略矩形板状に形成されている。係合部材13dの長手方向両端部は、ロッド13aの外周面よりも径方向両側にそれぞれ突出している。
本曲げ装置50は、ドアAを保持することができるように構成されており、全体として、アウタパネルP2の被加工部分に対応した枠状に形成されている。本曲げ装置50には、互いに離れた部位同士を連結するように延びるフレーム部54が設けられている。フレーム部54には、本曲げ装置50の中心部近傍に、ロボットRのアームが着脱される着脱部55が設けられている。着脱部55は、周知のオートツールチェンジャである。着脱部55とロボットRのアームとは、図示しないアクチュエータによって装着状態と離脱可能状態とに自動的に切り替えられるようになっている。
本曲げ装置50は、図9及び図10に示すように、下型11の上面に載置可能となっている。本曲げ装置50には、型駆動装置13のロッド13aと対向する部分に、ロッド13aが挿通するロッド挿通孔50a,50a,…が形成されている。ロッド挿通孔50aは、係合部材13dが挿通可能な略矩形状とされている。ロッド挿通孔50aの長手方向の内寸は、係合部材13dの長手方向の寸法よりも若干長めに設定されている。ロッド挿通孔50aの短径方向の内寸は、平面視における係合部材13dの長手方向に直交する方向の寸法よりも若干長く、かつ、係合部材13dの長手方向の寸法よりも短く設定されている。
従って、係合部材13dの長手方向とロッド挿通孔50aの長手方向とを略一致させるように、ロッド13aを回動装置13cで回動させると、係合部材13dがロッド挿通孔50aを通過可能となる。一方、係合部材13dの長手方向とロッド挿通孔50aの長手方向とが交差するように、ロッド13aを回動装置13cで回動させると、係合部材13dがロッド挿通孔50aの周縁部に接触して係合する。
係合部材13dをロッド挿通孔50aに挿通して上板15の上方へ突出させた状態で、ロッド挿通孔50aの周縁部に係合させると、型駆動装置13によって、下型11と本曲げ装置50とが互いに離脱不能に結合される。一方、係合部材13dをロッド挿通孔50aの周縁部に係合させない状態では、下型11と本曲げ装置50とが互いに離脱可能な非結合状態とされる。
型駆動装置13,13,…には、図示しない油圧回路から延びる油圧配管が接続されている。油圧回路には制御装置が接続されており、この制御装置により、型駆動装置13の動作タイミングやストローク量が制御されるようになっている。
また、型駆動装置13の回動装置13cは、電動モーター等で構成されている。回動装置13cも制御装置によって制御される。
図1に示すように、本曲げ装置50には、ガイドピン11aが挿通するガイドピン挿通孔50bが形成されている。
さらに、図8に示すように、本曲げ装置50は、ドアAを吸着するための複数の吸着装置(保持部)56,56と、プレッサー装置57,57と、本曲げパンチ(第1型)58,58と、位置決めピン59,59とを備えている。これら吸着装置56,56と、プレッサー装置57,57と、本曲げパンチ58,58とは本曲げ装置50の本体部分に固定されて一体化されている。尚、プレッサー装置57は、別体としてもよい。
吸着装置56には、負圧配管が弁装置(共に図示せず)を介して接続されている。吸着装置56は、弁装置の開閉動作により、ドアAとの接触部分に負圧力を作用させる状態と作用させない状態とに切替可能となっている。吸着装置56のドアAとの接触部分に負圧力を作用させると、ドアAを吸着して保持し、一方、負圧力を作用させないと、ドアAが吸着装置56から離脱可能となる。
プレッサー装置57は、ドアAのインナパネルP1を上方から押さえてアウタパネルP2に押し付け、固定しておくためのものである。プレッサー装置57は、インナパネルP1に接するパッド57aを備えている。プレッサー装置57は、パッド57aを下方へ付勢するためのバネ等からなる付勢部を備えている。この付勢部によってパッド57aをインナパネルP1に所定の力で押し付けることができるようになっている。
本曲げパンチ58は、ドアAの被加工部分に本曲げ加工を施すためのものである。本曲げ加工とは、後述する予備曲げ加工が施された被加工部分に施して該被加工部分を最終形状に仕上げるための加工である。本曲げパンチ58は、ドアAの被加工部分に対応して、平面視で環状に配置されている。
また、位置決めピン59は、下方へ突出している。位置決めピン59は、ドアAの所定部位に形成された孔部(図示せず)に挿入され、ドアAの位置を本曲げ装置50に対し所定位置とするためのものである。
上記のように本曲げ装置50は、ドアAを保持する機能と、ドアAを成形する機能とを有している。
図1に示すように、本曲げ装置50は、ブロックB1上に載置されている。このブロックB1上に載置された状態が加工準備状態である。
予備曲げ装置51も、ドアAを保持することができるように構成されており、基本的な構造は、本曲げ装置50と同じである。すなわち、図5及び図6に示すように、予備曲げ装置51は、フレーム部60及び着脱部61を備えている。予備曲げ装置51には、ロッド挿通孔51a及びガイドピン挿通孔51b(図1に示す)が形成されている。また、予備曲げ装置51には、予備曲げパンチ70が設けられている。予備曲げパンチ70は、予備曲げ専用の形状となっている。本曲げ装置50のものと同様な吸着装置56、プレッサー装置57及び位置決めピン59が予備曲げ装置51にも設けられている。
予備曲げ装置51は、ブロックB2上に載置されている。この予備曲げ装置51も、ドアAを保持する機能と、ドアAを成形する機能とを有している。
予備曲げとは、アウタパネルP2の被加工部分を倒すように曲げることであり、完全なヘミング加工を施す前工程である。
尚、図 中の符号Cは、加工前のドアAを載置しておくための載置台である。ドアAは、インナパネルP1側が上となる姿勢で載置台Cに載置されている。
次に、上記のように構成された加工装置1を用いてドアAのアウタパネルP2にヘミング加工を施す場合について説明する。
尚、型駆動装置13のロッド13aの係合部材13dは、予備曲げ装置51のロッド挿通孔51a及び本曲げ装置50のロッド挿通孔50aの周縁部と係合しないように、回動装置13cにより回動させておく。
まず、ロボットRが予備曲げ装置51を取る。すなわち、ロボットRがアームを動かして、アームの先端に設けられた固定部R1を予備曲げ装置51の着脱部61に重ね、着脱部61を固定部R1に装着する。
その後、ロボットRが予備曲げ装置51を動かして載置台Cに載置されているドアAを保持する。このとき、図2に示すように、予備曲げ装置51をドアAに上方から重ね、図5に示すように、位置決めピン59をドアAの位置決め孔に挿入し、さらに吸着装置56を作動させてドアAを吸着し、保持する。尚、図2では、便宜上、ロボットRを静止した状態としているが、実際にはアームが動いている。
そして、図3に示すように、ロボットRは、ドアAを保持した予備曲げ装置51を下型11の上に載置する。予備曲げ装置51を下型11の上に載置する際、ガイドピン11aが予備曲げ装置51のガイドピン挿通孔51bに挿通し、予備曲げ装置51がガイドピン11aによって案内されて下型11の所定位置に載置される。また、図6に示すように、型駆動装置13のロッド13aが予備曲げ装置51のロッド挿通孔51aに挿通して係合部材13dがロッド挿通孔51aから上方へ突出する。
係合部材13dがロッド挿通孔51aから上方へ突出した状態で、型駆動装置13の回動装置13cを作動させてロッド13aを回動させ、図7に示すように係合部材13dの長手方向をロッド挿通孔51aの長手方向と交差させる。これにより、係合部材13dが予備曲げ装置51のロッド挿通孔51aの周縁部に係合して、下型11と予備曲げ装置51とが結合する。
しかる後、型駆動装置13のロッド13aを縮めると、予備曲げ装置51の予備曲げパンチ70が下型11に接近する方向に駆動される。予備曲げ装置51の予備曲げパンチ70が駆動されると、アウタパネルP2の被加工部分に、予備曲げ加工が施される。
つまり、ドアAを搬送した予備曲げ装置51を用いて被加工部分に直ちに予備曲げ加工を施すことが可能になる。
アウタパネルP2の被加工部分の予備曲げが完了すると、型駆動装置13の回動装置13cを作動させてロッド13aを回動させ、係合部材13dの長手方向を予備曲げ装置51のロッド挿通孔51bの長手方向と一致させる。
次いで、予備曲げ装置51の吸着装置56に吸着力が発生しないようにし、ドアAを下型11に残したまま、予備曲げ装置51のみをロボットRにより保持して台B2まで搬送し、台B2に置く(図4に示す)。
予備曲げ装置51を台B2に置いた後、ロボットRは、本曲げ装置50を取る。すなわち、図8に示すように、ロボットRがアームを動かして、アームの固定部R1を本曲げ装置50の着脱部55に重ね、着脱部55を固定部R1に装着する。
そして、図9及び図10に示すように、ロボットRは、本曲げ装置50を下型11の上に載置する。本曲げ装置50を下型11の上に載置する際、ガイドピン11aが本曲げ装置50のガイドピン挿通孔50bに挿通し、本曲げ装置50がガイドピン11aによって案内されて下型11の所定位置に載置される。また、型駆動装置13のロッド13aが本曲げ装置50のロッド挿通孔50aに挿通して係合部材13dがロッド挿通孔50aから上方へ突出する。
係合部材13dがロッド挿通孔50aから上方へ突出した状態で、型駆動装置13の回動装置13cを作動させてロッド13aを回動させ、係合部材13dの長手方向をロッド挿通孔50aの長手方向と交差させる。これにより、係合部材13dが本曲げ装置50のロッド挿通孔50aの周縁部に係合して、下型11と本曲げ装置50とが結合する。
しかる後、型駆動装置13のロッド13aを縮めると、本曲げ装置50の本曲げパンチ58が下型11に接近する方向に駆動される。本曲げ装置50の本曲げパンチ58が駆動されると、アウタパネルP2の被加工部分に、本曲げ加工が施される。これにより、アウタパネルP2の被加工部分が最終形状となる。
アウタパネルP2の被加工部分の本曲げ加工が完了すると、型駆動装置13の回動装置13cを作動させてロッド13aを回動させ、係合部材13dの長手方向を本曲げ装置50のロッド挿通孔50aの長手方向と一致させる。
そして、本曲げ装置50の吸着装置56を作動させて吸着装置56にドアAを吸着させ、ドアAを本曲げ装置50に保持する。この本曲げ装置50をロボットRで保持し、ドアAと共に持ち上げてドアAを所定場所まで搬送する。
つまり、ドアAの被加工部分に本曲げ加工を施した本曲げ装置50を用いてドアAを直ちに搬送することが可能になる。
ドアAを搬送した後、ロボットRは、本曲げ装置50を台B1まで搬送し、台B1に置く。
以上説明したように、この実施形態1にかかる加工装置1によれば、予備曲げ装置51に予備曲げパンチ58及び吸着装置56を設けたので、予備曲げ装置51に成形機能だけでなく、保持機能も持たせることができる。本曲げ装置50も同様である。これにより、従来例のように型とは別に保持ハンドを設ける場合に比べて加工装置1がコンパクトにまとまり、設置に要するスペースを縮小できる。
また、加工前のドアAを加工場所にある下型11まで搬送した後、ドアAの加工工程に移る場合には、ドアAを搬送してきた予備曲げ装置51の予備曲げパンチ58を用いてドアAの加工が直ちに行える。また、ドアAの加工工程の後、加工後のドアAを搬送する場合には、加工後、直ちに本曲げ装置50の吸着装置56によりドアAを保持して搬送することができる。よって、ドアAの搬入、加工、搬出の一連の工程で待ち時間を短縮して製造工数を削減でき、生産効率を向上できる。
特に、本実施形態では、本曲げ装置50及び予備曲げ装置51のそれぞれに吸着装置56を設けているので、これら本曲げ装置50及び予備曲げ装置51を用いてドアAを搬送できる。よって、予備曲げ加工と本曲げ加工とを施す場合に製造工数を削減できる。
また、本曲げ装置50及び予備曲げ装置51にプレッサー装置57を設けたので、プレッサー装置57を含む加工装置1をより一層コンパクトにできる。
また、本曲げパンチ58を有する本曲げ装置50をロボットRにより移動させて下型11上に置き、この状態にある本曲げ装置50を型駆動装置13により駆動してアウタパネルP2に加工力を作用させるようにしたので、型駆動装置13をストローク量の少ない小型なものとすることができ、これにより、加工装置1を小型化することができる。
尚、図11に示す実施形態1の変形例1のように、加工装置1は、下型11、本曲げ装置50及び予備曲げ装置51の他に、第1ロボットRaと第2ロボットRbとを備えたものであってもよい。
以下、この変形例1にかかる加工装置1を用いてドアAを加工する場合について説明する。
第1ロボットRaは、本曲げ装置50を取り、本曲げ装置50を動かして載置台Cに載置されているドアAを保持する。そして、ドアAを保持した本曲げ装置50を下型11の上に置き、吸着装置56に吸着力を発生させないようにして、ドアAを下型11に残したまま、本曲げ装置50のみを第1ロボットRaにより保持させて待機させる。
次いで、第2ロボットRbが予備曲げ装置51を取り、下型11上に置く。そして、上述のようにして型駆動装置13により予備曲げ加工を施す。このとき、予備曲げ装置51の自重を利用して予備曲げを行ってもよいし、第2ロボットRbによって予備曲げ装置51を下方へ押さえることによって予備曲げを行ってもよい。
予備曲げが終了すると、第2ロボットRbが下型11上の予備曲げ装置51を取り、下型11から外す。
しかる後、第1ロボットRaが保持している本曲げ装置50を下型11上に置く。そして、上述のようして型駆動装置13により本曲げ加工を施す。
本曲げが終了すると、本曲げ装置50にドアAを吸着させ、第1ロボットRaが本曲げ装置50とドアAを下型11から外し、ドアAを所定場所まで搬送する。
変形例1において、第1ロボットRaに予備曲げ装置51を保持させて待機させるようにしてもよい。この場合は、載置台Cに置いてあるドアAを予備曲げ装置51によって取り、下型11上に置くようにする。また、本曲げ加工後のドアは、予備曲げ装置51で搬送する。
上記実施形態1では、予備曲げ加工を行う際に型駆動装置13の動力を利用しているが、これに限らず、予備曲げ装置51の重さを、該予備曲げ装置51をドアAに置くだけで予備曲げ加工を施すことができるように、予備曲げ加工可能な重さとして、予備曲げ装置51の重量で予備曲げ加工を行うようにしてもよい。
また、ロボットRによって予備曲げ装置51を下型11に押し付けて予備曲げを行ってもよい。
また、予備曲げ加工中にロボットRのアームを予備曲げ装置51から離してもよいし、装着したままにしておいてもよい。また、本曲げ中にロボットRのアームを本曲げ装置50から離してもよいし、装着したままにしてもおいてもよい。
また、上記実施形態1では、下型11を床面に固定しているが、これに限らず、例えば、下型11を別のロボット(図示せず)に持たせるようにしてもよい。これにより、下型11を任意の場所に移動することができ、予備曲げ加工及び本曲げ加工を施すのに要する時間を短縮することができる。
すなわち、図12に示す変形例2のように、予備曲げ装置51を第1ロボットRaで移動させ、下型11を第2ロボットRbで移動させる。下型11には、フレーム100が設けられている。フレーム100には、第2ロボットRbのアームが着脱される着脱部101が設けられている。着脱部101は、周知のオートツールチェンジャである。
また、第1ロボットRaには、予備曲げ装置51の代わりに、本曲げ装置50を装着することも可能となっている。
この変形例2にかかる加工装置1を使用する場合には、まず、第1ロボットRaのアームに予備曲げ装置51を装着する。一方、第2ロボットRbのアームには、下型11を装着する。そして、予備曲げ装置51の吸着装置57にドアAを吸着させて保持した後、同図に示すように、第1及び第2ロボットRa,Rbによって予備曲げ装置51と下型11とを水平方向に対向させ、そのまま水平方向に移動させて接近させ、型駆動装置13のロッド13aを予備曲げ装置51のロッド挿通孔51aに挿通する。
その後、ロッド13aを回動させて予備曲げ装置51と下型11とを結合し、型駆動装置13を作動させて予備曲げ装置51と下型11をお互いに引き付ける。このとき、予備曲げ装置51と下型11がお互いに接近する方向に移動していくことになるが、この移動力を第1ロボットRaあるいは第2ロボットRbが検出すると、第1ロボットRaあるいは第2ロボットRbはその移動力に抗しないように、予備曲げ装置51と下型11をお互いに接近する方向に移動させる。これにより、2台のロボットRa,Rbを用いても予備曲げが行える。また、予備曲げが終わると、第1ロボットRaのアームから予備曲げ装置51を外し、該アームに本曲げ装置50を装着する。そして、同様にして本曲げ加工を施す。2台のロボットRa,Rbを用いる場合に、ロボットRa,Rbの力によって予備曲げ加工や本曲げ加工を施すようにしてもよい。
また、図13に示す変形例3のように、加工装置1には、第1〜3予備曲げパンチ111〜113を設けるようにしてもよい。すなわち、加工装置1は、第1予備曲げパンチ111を有する第1予備曲げ装置(図示せず)、第2予備曲げパンチ112を有する第2予備曲げ装置(図示せず)、及び第3予備曲げパンチ113を有する第3予備曲げ装置(図示せず)を備えている。図13における(a)及び(b)は、第1予備曲げパンチ111による予備曲げ加工を説明するものである。第1予備曲げパンチ111は、最初に使用されるものであり、アウタパネルP2の被加工部分をドアA内方へ少し折り曲げるためのものである。図13における(c)及び(d)は、第2予備曲げパンチ112による予備曲げ加工を説明するものである。第2予備曲げパンチ112は、第1予備曲げパンチ111による予備曲げ後に使用されるものであり、アウタパネルP2をドアA内方へ折り曲げるためのものである。図13における(e)及び(f)は、第3予備曲げパンチ113による予備曲げ加工を説明するものである。第3予備曲げパンチ113は、第2予備曲げパンチ112による予備曲げ後に使用されるものであり、アウタパネルP2をドアA内方へさらに折り曲げるためのものである。このように、予備曲げを複数工程に分けることで、同図(a)に示すように、アウタパネルP2の被加工部分が型の移動方向に延びるような形状であっても、予備曲げ加工を施すことが可能になる。第1〜3予備曲げ装置の交換はロボットで行うことが可能である。
(実施形態2)
図14及び図15は、本発明の実施形態2にかかる加工装置1を示すものである。この実施形態2では、予備曲げパンチ81を可動タイプにした点と、ドアAの保持装置(保持部)92を可動タイプにした点とで実施形態1のものと異なっており、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
実施形態2の加工装置1は、本曲げパンチ(第2型)80及び予備曲げパンチ81が取り付けられる基板20を備えている。基板20は、略水平に延びており、周縁部に脚21,21,…が設けられている。
基板20には、実施形態1と同様の型駆動装置13が取り付けられている。基板20の型駆動装置13に対応する部位には、ロッド13aが挿通する貫通孔20aが形成されている。
予備曲げパンチ81は、可動機構82に支持されている。可動機構82は、予備曲げパンチ81の位置を、予備曲げ加工を行う加工位置と、予備曲げ加工を行わない退避位置とに切り替えるためのものである。可動機構82は、予備曲げパンチ81が固定されたパンチ取付板83と、パンチ取付板83を水平軸周りに回動可能に支持するブラケット84と、パンチ取付板83を回動させるためのシリンダ装置85とを備えている。図14に示すように、シリンダ装置85のロッドを伸ばすと、予備曲げパンチ81が基板20の内方へ移動して加工位置となる。一方、図15に示すように、シリンダ装置85のロッドを縮めると、予備曲げパンチ81が基板20の外方へ移動して退避位置となる。
また、この加工装置1には、プレッサー装置89が下側に設けられている。プレッサー装置89は、インナパネルP1に接触するパッド89aと、パッド89aを下方から支持するガスシリンダ89bとを備えている。ガスシリンダ89bは、上下方向に伸縮するようになっている。
また、基板20には、パネルプッシャー103が設けられている。パネルプッシャー103は、揺動部材93がドアAを保持しない姿勢となったときに、インナパネルP1を上方へ押し、これによってインナパネルP1及びアウタパネルP2を上型12に押し付けて落下を防止するためのものである。パネルプッシャー103は、基板20に固定されたエアシリンダ等からなるシリンダ装置103aと、シリンダ装置103aのロッドの先端に設けられた当接部材103bとを備えている。シリンダ装置103aは、ロッドが上方へ突出するように配置されている。当接部材103bには、インナパネルP1が当接するようになっている。
加工装置1は、上型(第1型)12が取り付けられるフレーム部材90を備えている。フレーム部材90には、ロボットRのアームの固定部R1が着脱される着脱部91が設けられている。また、フレーム部材90の着脱部91が設けられた側と反対側には、上記上型12が下方へ突出するように取り付けられている。この上型12の下面に、ドアAのアウタパネルP2が接するようになっている。
フレーム部材90には、型駆動装置13のロッド13aと対向する部分に、ロッド13aが挿通するロッド挿通孔90aが形成されている。このロッド挿通孔90aは、実施形態1のロッド挿通孔50aと同様な形状である。
フレーム部材90の周縁部近傍には、ドアAを保持するための保持装置92が設けられている。保持装置92は、揺動部材93と、揺動部材93を揺動させるシリンダ装置94とを備えている。符号95は、揺動部材93の揺動軸である。シリンダ装置94のロッドを伸ばすと、揺動部材93がドアAを保持する姿勢となり(図14に示す姿勢)、一方、シリンダ装置94のロッドを縮めると、揺動部材93がドアAを保持しない姿勢(図14の下へ揺動した姿勢)となる。尚、フレーム部材90は、図示しない台上に置かれるようになっている。
また、この実施形態2では、ドアAをフレーム部材90に保持する際には、アウタパネルP2が上に向いた状態で保持する。
次に、上記のように構成された加工装置1を用いてドアAを加工する場合について説明する。予備曲げパンチ81は加工位置としておく。
まず、ロボットRの固定部R1に、フレーム部材90に設けられた着脱部91を装着し、フレーム部材90をロボットRに固定する。その後、フレーム部材90を移動させて、所定場所に載置してあるドアAを保持する。すなわち、シリンダ装置94のロッドを伸ばして揺動部材93を下方へ揺動させた状態でフレーム部材90をドアAに重ねていき、ドアAに重なったときに、シリンダ装置94のロッドを縮めて揺動部材93を図14に示すように揺動させ、ドアAを保持する姿勢とする。
ドアAを保持したフレーム部材90をロボットRにより動かして基板20上に載置する。その際、揺動部材93がドアAを保持した姿勢のままでは、予備曲げパンチ81或いは下型11に干渉するため、揺動部材93がそれらに干渉しないように揺動させて、ドアAを保持しない姿勢とし、回避させる必要がある。揺動部材93を揺動させて回避させると、インナパネルP1及びアウタパネルP2が落下することになるが、基板20には、上記したパネルプッシャー103が設けられており、このパネルプッシャー103によりインナパネルP1及びアウタパネルP2の落下が防止され、インナパネルP1及びアウタパネルP2を上型12に押し付けたまま、下型11に載置することが可能になる。
インナパネルP1及びアウタパネルP2を下型11に載置すると、型駆動装置13のロッド13aがフレーム部材90のロッド挿通孔90aに挿通する。
その後、型駆動装置13のロッド13aを回動させて、係合部材13dの長手方向をフレーム部材90のロッド挿通孔90aの長手方向と交差させる。これにより、係合部材13dがフレーム部材90のロッド挿通孔90aの周縁部に係合して、フレーム部材90と基板20とが結合する。
しかる後、型駆動装置13のロッド13aを縮めると、フレーム部材90が基板20に接近する方向に駆動される。このとき、プレッサー装置89のパッド89aがインナパネルP1に押し付けられ、これにより、ドアAが固定される。
フレーム部材90が型駆動装置13により駆動されると、予備曲げパンチ81が加工位置にあるので、上型12と予備曲げパンチ81とでアウタパネルP2の被加工部分に予備曲げ加工が施される。
アウタパネルP2の被加工部分の予備曲げ加工が完了すると、型駆動装置13の回動装置13cを作動させてロッド13aを回動させ、係合部材13dの長手方向をフレーム部材90のロッド挿通孔90bの長手方向と一致させる。
そして、ドアAを保持装置92によりフレーム部材90に保持した状態でロボットRにより持ち上げ、予備曲げパンチ81を退避位置に切り替える。
その後、図15に示すように、ドアAを保持したフレーム部材90をロボットRにより動かして再び基板20に載置し、型駆動装置13のロッド13aをフレーム部材90のロッド挿通孔90aに挿通する。型駆動装置13のロッド13aを回動させて、係合部材13dの長手方向をフレーム部材90のロッド挿通孔90aの長手方向と交差させる。
次いで、型駆動装置13のロッド13aを縮めると、上型12と本曲げパンチ80とでアウタパネルP2の被加工部分に本曲げ加工が施される。
アウタパネルP2の被加工部分の本曲げ加工が完了すると、型駆動装置13の回動装置13cを作動させてロッド13aを回動させ、係合部材13dの長手方向をフレーム部材90のロッド挿通孔90bの長手方向と一致させる。
そして、フレーム部材90をロボットRで保持し、ドアAと共に持ち上げてドアAを所定場所まで搬送する。
以上説明したように、この実施形態2にかかる加工装置1によれば、上型12と保持装置92とをフレーム部材90に組み付けて一体化したので、フレーム部材90に、成形機能だけでなく、保持機能も持たせることができる。これにより、従来例のように型とは別に保持ハンドを設ける場合に比べて加工装置1がコンパクトにまとまり、設置に要するスペースを縮小できる。
また、加工前のドアAを加工場所にある基板20まで搬送した後、ドアAの加工工程に移る場合には、ドアAを搬送してきた上型12を用いてドアAの加工が直ちに行える。また、ドアAの加工工程の後、加工後のドアAを搬送する場合には、加工後、直ちに保持装置92によりドアAを保持して搬送することができる。よって、ドアAの搬入、加工、搬出の一連の工程で待ち時間を短縮して製造工数を削減でき、生産効率を向上できる。
また、この実施形態2では、予備曲げパンチ81の位置を変えるだけで、予備曲げ加工と本曲げ加工を行うことができるので、実施形態1のものに比べて加工装置1をより一層コンパクトなものにできる。
尚、図示しないが、上型12に保持装置92を直接取り付けて一体化してもよい。
また、上記実施形態2では、予備曲げ加工を行う際に型駆動装置13の動力を利用しているが、これに限らず、フレーム部材90の重さを、該フレーム部材90をドアAに置くだけで予備曲げ加工を施すことができるように、予備曲げ加工可能な重さとして、フレーム部材90の重量で予備曲げ加工を行うようにしてもよい。
また、実施形態2において、型駆動装置13をフレーム部材90側に設けてもよい。この場合、ロッド挿通孔を基板20に形成すればよい。
また、実施形態2において、予備曲げ加工中や本曲げ加工中にロボットRのアームをフレーム装置90から離してもよいし、装着したままにしてもおいてもよい。
図16及び図17に示す変形例1のように、加工装置1のフレーム部材90には、予備曲げ時にロッド13aの係合部材13dを係合させるための下側部材120を設けてもよい。この下側部材120は、フレーム部材90の下面に、ロッド挿通孔90aの形成部位に対応するように、かつ、下方(駆動装置13に接近する方向)へ突出するように取り付けられている。下側部材120の内部は中空状に形成されている。下側部材120の底部には、フレーム部材90のロッド挿通孔90aと同形状のロッド挿通孔120aが、ロッド挿通孔90aに対応するように形成されている。2つのロッド挿通孔90a、120aの長手方向は一致しており、上方から見ると、2つのロッド挿通孔90a、120aの周縁部は互いに重なる位置関係にある。
そして、この変形例では、予備曲げ時には、本曲げ時に比べてフレーム部材90が上方に位置しているので、このときロッド13aの係合部材13dが下側部材120の内部に位置することになる。この状態で、図16に示すように、係合部材13dの長手方向とロッド挿通孔120aの長手方向とが交差するように、ロッド13aを回動させると、係合部材13dがロッド挿通孔120aの周縁部に接触して係合する。よって、型駆動装置13により予備曲げが可能となる。
一方、予備曲げが終わって本曲げ加工を施す際には、まず、ロッド13aを回動させて係合部材13dの長手方向とロッド挿通孔90aの長手方向とを一致させる。そして、フレーム部材90を下降させ、ロッド13aをフレーム部材90のロッド挿通孔90aに挿通させる。この状態で、図17に示すように、係合部材13dの長手方向とロッド挿通孔90aの長手方向とが交差するように、ロッド13aを回動させると、係合部材13dがロッド挿通孔90aの周縁部に接触して係合する。よって、型駆動装置13により本曲げが可能となる。つまり、この変形例1では、予備曲げ時にロッド13aの係合部材13dが係合する部分と、本曲げ時にロッド13aの係合部材13dが係合する部分とがロッド13aの移動方向に離れており、予備曲げ時に係合する部分の方がロッド13aの基端に近い側に位置している。従って、駆動装置13のロッド13aのストローク量が少なくても、予備曲げ及び本曲げの両方でフレーム部材90を駆動することができる。尚、型を水平方向に移動させる場合にも本変形例の構造を適用することが可能である。
また、上記実施形態2では、本曲げパンチ80及び予備曲げパンチ81を床面から動かないようにしているが、これに限らず、例えば、本曲げパンチ80及び予備曲げパンチ81を別のロボット(図示せず)に持たせるようにしてもよい。これにより、本曲げパンチ80及び予備曲げパンチ81を任意の場所に移動することができ、予備曲げ加工及び本曲げ加工を施すのに要する時間を短縮することができる。
また、上記実施形態1、2では、搬送装置としてロボットRを用いた場合について説明したが、搬送装置はロボットRに限られるものではなく、例えば、クレーン、ホイスト等のように、物を搬送できる装置であればよく、例えばチェーンブロックと、クレーンやホイストとを組み合わせて搬送装置としてもよい。
また、上記各実施形態では、型駆動装置13を油圧シリンダ装置で構成しているが、これに限らず、例えば、空気圧シリンダ装置で構成してもよいし、電磁石を用いて構成してもよい。実施形態1で電磁石を用いる場合には、本曲げ装置50及び予備曲げ装置51と、下型11との一方に電磁石を固定し、他方を磁性体で構成する。そして、電磁石に通電することで、磁力による吸引力を発生させ、ヘミング加工を施すことができる。実施形態2で電磁石を用いる場合には、フレーム部材90と基板20との一方に電磁石を固定し、他方を磁性体で構成すればよい。
また、実施形態1において、真空圧を利用して本曲げ装置50及び予備曲げ装置51を駆動し、下型11に吸着させるようにしてもよい。また、実施形態2において、真空圧を利用してフレーム部材90を基板20に吸着させるようにしてもよい。
また、型駆動装置13のロッド13aを回動させることによって結合状態と非結合状態とを切り替えるようにしているが、これに限らず、例えば、型駆動装置13の全体を移動させて結合状態と非結合状態とを切り替えるようにしてもよい。
また、予備加工と本加工とに分かれていない加工を施す場合には、実施形態1では予備曲げ装置51を省略し、実施形態2では予備曲げパンチ81を省略すればよい。
また、本発明は、ヘミング加工以外にも、例えば、トリム加工、ピアス加工、バーリング加工等の各種プレス加工を施す場合に適用することができ、また、プレス加工以外にも、拡管加工、ベローズ加工等、被加工物に加工力を作用させて加工する場合に広く適用できる。