JP5646106B1 - ポリエチレン被覆鋼管 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は、外面に入熱量が高い溶接等を施しても、内面から発生するミスト等の生成量が極めて少ないポリエチレン被覆鋼管を提供することを目的とする。
本発明は次の(1)〜(6)である。
(1)外面にポリエチレン樹脂からなる被覆層を有し、内面に塗膜を有するポリエチレン被覆鋼管であって、
前記被覆層を除去して現れた鋼管の外面に下記のアーク溶接条件にて溶接ビードを形成したときに、前記鋼管の内面に発生する塵状固形物および糸状固形物の合計質量が0.2g以下となることを特徴とする、溶接または溶断時において内面にミスト、塵状固形物または糸状固形物が発生し難いポリエチレン被覆鋼管。
アーク溶接条件:
溶接棒:JIS Z 3211に規定される低水素系溶接棒E4316に相当する溶接棒
溶接電流:120A
溶接速度:0.06m/min
溶接距離:200mm
(2)亜鉛末を40〜70質量%、
モリブデン酸化合物を1〜10質量%、
溶剤膠漆シリカを10〜20質量%、および
アルキルシリケート重縮合反応物を10〜40質量%含有する塗膜を内面に有する、上記(1)に記載のポリエチレン被覆鋼管。
(3)前記モリブデン酸化合物がモリブデン酸亜鉛である上記(1)または(2)に記載のポリエチレン被覆鋼管。
(4)前記塗膜がさらに酸化チタンを5〜20質量%含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエチレン被覆鋼管。
(5)前記鋼管の外面に前記アーク溶接条件にて溶接ビードを形成したときに前記鋼管の内面に発生する塵状固形物および糸状固形物が、カーボンまたは酸化亜鉛を含むことを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエチレン被覆鋼管。
(6)ガス管として用いる、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリエチレン被覆鋼管。
本発明は、外面にポリエチレン樹脂からなる被覆層を有するポリエチレン被覆鋼管であって、亜鉛末を40〜70質量%、モリブデン酸化合物を1〜10質量%、溶剤膠漆シリカを10〜20質量%、およびアルキルシリケート重縮合反応物を10〜40質量%含有する塗膜を内面に有するポリエチレン被覆鋼管である。
このようなポリエチレン被覆鋼管を、以下では「本発明の鋼管」ともいう。
また、本発明の鋼管が内面に有する塗膜を、以下では「本発明の塗膜」ともいう。
亜鉛末は亜鉛からなる粉体であり、通常、その平均粒子径は1〜20μm程度が好ましく、3.5〜10μmがより好ましい。
本発明の塗膜における亜鉛末の含有率は40〜70質量%であり、40〜65質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。亜鉛末の含有率がこのような範囲であると、高い防食能を有し、かつ外面を溶接等した場合の酸化亜鉛に由来するミスト発生量を抑制することができる。
本発明の塗膜における溶剤膠漆シリカの含有率は10〜20質量%であり、10〜17質量%であることが好ましく、10〜15質量%であることがより好ましい。溶剤膠漆シリカの含有率がこのような範囲であると、本発明の塗膜が密になり、より高い強度を得ることができる。本発明の塗膜の強度が向上すると、本発明の鋼管の外面に溶接等を施した場合に、本発明の塗膜が熱分解し難くなり、ミスト等の生成が抑制されるものと、本発明者は推定している。
本発明の塗膜におけるモリブデン酸化合物の含有率は1〜10質量%であり、1〜7質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。モリブデン酸化合物の含有率がこのような範囲であると、本発明の鋼管の外面に溶接等を施した場合に、本発明の塗膜が熱分解し難くなり、ミスト等の生成が抑制される。この要因について本発明者は、特定量のモリブデン酸化合物を含むと、本発明の塗膜中における溶剤膠漆シリカの分散性が均一化し、その結果、本発明の塗膜の強度が向上するためと推定している。
本発明の塗膜におけるアルキルシリケート重縮合反応物の含有率は10〜40質量%であり、10〜37質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましい。アルキルシリケート重縮合反応物の含有率がこのような範囲であると、本発明の塗膜の強度がより高くなる。
本発明の塗膜の厚さは特に限定されないが、5〜100μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。なお、この塗膜の厚さは、電磁膜厚計を用いて測定する。
本発明の鋼管は、溶媒に、亜鉛末、モリブデン酸化合物、溶剤膠漆シリカおよびアルキルシリケートを特定比率(本発明の塗膜が得られる比率)で添加した塗料をポリエチレン被覆鋼管の内面に塗装し、乾燥させることで溶媒を分離除去して製造することができる。
例えば従来公知の方法を適用することができ、エアレススプレー方法を適用することが好ましい。
また、均一な塗膜を形成するため塗装には、鋼管を一定方向に回転させる装置(例えばターニングロール)を用いることが好ましい。
以下に、ターニングロールを用いたエアレススプレー方法を例に、鋼管内面の塗装について説明する。
まず、鋼管をターニングロールのロール対上に載置し、鋼管の管軸を中心として、一定速度で回転駆動させる。この回転する鋼管の一方の管端部より、エアレススプレー装置のアームを鋼管内へ挿入して、他方の管端部までアームを移動させてからノズルの先を下方に向ける。そして、アームを他方の管端部から一方の管端部へ一定速度で移動させながら、圧力5〜15MPa、噴出量300〜1500g/minにて塗料を鋼管内面へ吹き付け、鋼管内面が完全に被覆し、かつ塗膜が均一となるように塗布する。この際、塗料を吹き付ける際の鋼管内面とノズル先端との距離(吹き付け距離)は150〜600mmとする。
なお、塗料は、溶剤として、エチルベンゼン、キシレン、イソブタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、メタノール、エタノールの有機溶媒を混合したものを用いた。また、塗料中の塗膜成分は約50質量%とした。
また、塗料は、その他添加剤として、酸化亜鉛、レベリング剤、たれ防止剤を、20:1:7の質量比率で混合したものを用いた。レベリング剤としてポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを、たれ防止剤としてヒドロキシステアリン酸アミドを用いた。
第1表に示すように、比較例2では溶剤膠漆シリカの代わりに水性膠漆シリカを用い、溶媒として有機溶媒の代わりに水を用いた。また、比較例3ではタルクを用いた。また、比較例4では、酸化第二鉄およびマンガン化合物を用いた。比較例5,6では、エチルシリケートの代わりにエポキシ樹脂を用いた。また、比較例6では硫酸バリウムおよびホウ酸亜鉛を用いた。
初めに、JIS G 3452の規格に規定される配管用鋼管(新日鐵住金株式会社製、SGP200A×1m)を用いたポリエチレン被覆鋼管を用意した。
次に、この鋼管の内面にスチールグリット(粒径0.7mm)を0.5MPa程度の圧力で吹き付けて、グリットブラスト処理を行った。この処理により、鋼管の内面表面に付着した油脂や汚れ、スケール等を除去した。
ターニングロールの回転速度 :140m/min
エアレススプレーの圧力 :11MPa
エアレススプレーの噴出量 :600g/min
エアレススプレーの吹き付け距離:200mm
上記の方法で得られた塗膜の厚さを電磁膜厚計(株式会社サンコウ電子研究所製、機種:SL−5P)を用いて測定した。また、塗膜の厚さが40μm未満であるものを「○」、40μm以上であるものを「△」として、各塗料の塗膜性を評価した。
結果を第1表に示す。
上記のようにして得た実施例および比較例の内面塗装鋼管について、各々、鋼管外面の表面に溶接ビードを形成した。この溶接ビードの形成方法を、図1を用いて説明する。
初めに、ジェットヒーターで鋼管1の内面を95℃を超えない温度に予熱し、ポリエチレン被覆を貫通する切断線をカッターで入れた。チゼル、ジェットタガネ、金ヘラにてポリエチレンを剥離し、ベルトサンダー、ワイヤーブラシで鋼面の残渣樹脂を除去した。
次に、2本のターニングロール(3aおよび3b、ならびに4aおよび4b)同士が平行に配置されたロール対(3および4)上に鋼管1を載置した。そして、この4本のターニングロールを同方向に軸回転させて、鋼管1を矢印方向に回転駆動させた。この際の回転速度は0.28m/minとした。次に、鋼管1の外面における長手方向の中央部に溶接棒7を向け、溶接機5を操作し、被覆アーク溶接(手溶接)にて、長さ200mmの溶接ビード9を形成した。この際の溶接電流は120Aとした。なお、ターニングロールの回転速度は溶接速度と一致する。
次に、ターニングロールの回転速度を0.28m/minから0.06m/minへ変更し、同様の方法で溶接ビードを形成した。
なお、溶接棒7は、JIS Z 3211に規定される低水素系溶接棒E4316に相当する溶接棒(株式会社神戸製鋼所製、LB−52U、棒径3.2mm、棒長400mm)を用いた。また、溶接ビードの形成前に、被覆剤の再乾燥のため、溶接棒7を350℃で60分間加熱した。
溶接速度0.28m/minで溶接ビードを形成する際、熱によって鋼管内面の塗膜が、鋼管外面の溶接ビードに沿って黒色または白色に変色した。この変色部分の幅、つまり変色部の短手方向の長さを熱影響幅として、ノギスを用いて測定した。
測定値を第1表に示す。
溶接ビードの形成時に、鋼管の管端部より鋼管内を目視し、白色や淡黄色の煙(ミスト)の発生の有無を「あり」または「なし」で評価した。
また、塗膜が加熱分解されて生じる塵状固形物または糸状固形物の有無を次のような方法で評価した。ここで、塵状固形物とは、加熱により塗膜から飛沫した細かい塵状の加熱分解物を指す。また、糸状固形物とは、加熱により塗膜成分が溶融して下垂し、糸状に凝固した加熱分解物を指す。この塵状固形物および糸状固形物の発生の有無を、溶接ビードの形成時に目視で確認した。また、これら固形物が発生した場合、鋼管内面から薬さじでこれら固形物を丁寧にこそぎ取り、薬包紙上に集め、精密天秤を用いてその質量を測定した。この結果を基に、これら固形物の質量が0.01g以下の場合を「○」、0.01gよりも多く0.1g以下の場合を「△」、0.1gよりも多い場合を「×」と評価した。
なお、0.28m/min(低入熱量)の溶接速度においてミストの発生が確認されたものについては、0.06m/min(高入熱量)の溶接速度における上記の試験は行わなかった。
比較例4、比較例5および比較例6について、溶接速度0.28m/minで溶接ビードを形成する時に塗膜から生じるミストを採取し、その成分分析を行った。まず、鋼管の一方の管端部にろ紙(アドバンテック株式会社製、5A、直径216mm)を感圧接着剤で固定した。また、溶接ビードを形成する時に発生するミストがろ紙に吸着されるよう、他方の管端部には送風機を設置し、一方の管端部に向かって0.5m/minの風速で送風した。この状態で、上記の方法により溶接ビードを形成した後、ろ紙に吸着した煤を採取し、これを試料とした。
採取した試料について、FT−IR分析および走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(以下、SEM−EDXという。)により、ミストの成分分析を行った。
FT−IR分析は、機種スポットライト(パーキンエルマ社製)を用いた。
また、SEM−EDX分析は、機種JSM−6010LA(日本電子社製)を用いた。
また、同じくFT−IR分析により、比較例4の塗膜から生じたミストには、カーボンが含まれることが確認された。さらに、SEM−EDX分析により、比較例4および比較例5におけるミストには酸化亜鉛が含まれることが確認された。
実施例4、実施例7、比較例1、比較例2および比較例3について、溶接ビードの形成時に、塗膜から生じる上記の2種類の固形物を採取し、その成分分析を行った。分析は、上記のミストの成分分析と同様の機種を用いて、FT−IR分析およびSEM−EDX分析を用いた。なお、溶接速度は0.06m/minであった。
また、SEM−EDX分析により、塵状固形物は酸化亜鉛を含むことが確認された。
3、4 ロール対
3a、3b、4a、4b ターニングロール
5 溶接機
7 溶接棒
9 溶接ビード
Claims (4)
- 外面にポリエチレン樹脂からなる被覆層を有し、内面に塗膜を有するポリエチレン被覆鋼管であって、
アルキルシリケート重縮合反応物を10〜40質量%、亜鉛末を40〜70質量%含有し、さらにモリブデン酸化合物、溶剤膠漆シリカを含有する塗膜を内面に有し、
前記被覆層を除去して現れた鋼管の外面に下記のアーク溶接条件にて溶接ビードを形成したときに、前記鋼管の内面に発生する塵状固形物および糸状固形物の合計質量が0.2g以下となることを特徴とする、溶接または溶断時において内面にミスト、塵状固形物または糸状固形物が発生し難いポリエチレン被覆鋼管。
アーク溶接条件:
溶接棒:JIS Z 3211に規定される低水素系溶接棒E4316に相当する溶接棒
溶接電流:120A
溶接速度:0.06m/min
溶接距離:200mm - モリブデン酸化合物を1〜10質量%、および
溶剤膠漆シリカを10〜20質量%含有する塗膜を内面に有する、請求項1に記載のポリエチレン被覆鋼管。 - 前記鋼管の外面に前記アーク溶接条件にて溶接ビードを形成したときに前記鋼管の内面に発生する塵状固形物および糸状固形物が、カーボンまたは酸化亜鉛を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリエチレン被覆鋼管。
- ガス管として用いる、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン被覆鋼管。
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