JP5626545B2 - 加熱コイルとワークとの位置関係を判定する方法 - Google Patents
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Description
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態に係る高周波焼入れ監視装置は、高周波インバータからの出力電流と加熱コイルの両端に生じる電圧を監視することで高周波焼入れの品質を保証するものである。図1は、第1の実施形態に係る高周波焼入れ監視装置を組み込んだ高周波焼入れシステムの構成を示す図である。高周波焼入れシステム1は、高周波焼入れ装置10と高周波焼入れ監視装置20とで構成される。
電圧測定回路30は、第1の演算増幅器31と第2の演算増幅器32が縦続接続され、出力側にフィルター回路33が接続されている。第1の演算増幅器31には、入力抵抗34と、入力端子と出力端子に接続される第1のダイオード35と、出力端子に一端が接続される第2のダイオード36と、入力端子に一端が接続され他端が第2のダイオード36の他端に接続される抵抗37と、が接続されている。この第1の演算増幅器31は、所謂理想ダイオードであり、入力信号電圧の半波整流を行う。第1の演算増幅器31と第2の演算増幅器32とは、抵抗38で接続されている。第2の演算増幅器32は、入力端子と出力端子との間に抵抗39が接続された反転増幅器である。第2の演算増幅器32の入力端子は、抵抗40を介して、入力抵抗34の入力信号側と接続されている。第2の演算増幅器32の出力は、入力電圧信号の両波整流波形となる。この両波整流波形が、抵抗41及びコンデンサ42からなるローパス型のフィルター回路33に入力され、両波整流波のリップルが除去されて直流電圧に変換される。フィルター回路33の抵抗41及びコンデンサ42の値を設定することで、第2の演算増幅器32から出力される両波整流波の実効値が得られる。
高周波焼入れ装置10において、高周波インバータ11から整合用のコンデンサ12及び電流変成器13を介して加熱コイル14に高周波電力を投入する。これにより、加熱コイル14内に配置されたワーク15が加熱され、高周波焼入れされる。その際、高周波焼入れ監視装置20において、電流センサ21が高周波インバータ11の出力電流Ioを検出し、電圧センサ22が加熱コイル14の電圧Vcoilを検出する。
第2の実施形態では、高周波焼入れの際、加熱コイル電圧を高周波インバータから出力された出力電流で加熱コイル電圧を割って求めた値、即ち負荷インピーダンスを監視することで、高周波焼入れ処理の正常性を監視する。第2の実施形態に係る焼入れ監視装置を組み込んだ高周波焼入れシステムの構成は、第1の実施形態を示す図1の場合と同様である。すなわち、第2の実施形態に係る高周波焼入れ監視装置具体的にはインピーダンス監視装置を組み込んだ高周波焼入れシステムは、図1に示すように、高周波焼入れ装置10と焼入れ監視装置20とで構成される。
高周波焼入れ装置10において、高周波インバータ11から整合用のコンデンサ12及び電流変成器13を介して加熱コイル14に高周波電力を投入する。これにより、加熱コイル14内に配置されたワーク15が加熱され、高周波焼入れされる。その際、高周波焼入れ監視装置10において、電流センサ21が高周波インバータ11の出力電流Ioを検出し、電圧センサ22が加熱コイル14の電圧Vcoilを検出する。
よって、ギャップが増加すると、Leが増加し、Reが減少する。
Ye=Gp+jBp
但し、Gp、Bpは次式の通りである。
Gp=Re/(Re2+(ωLe)2)
Bp=ωLe/(Re2+(ωLe)2)
ここで、Rp=1/Gp、|Xp|=1/|Bp|であり、Rp、|Xp|は次式で表される。
Rp=(Re2+(ωLe)2)/Re
|Xp|=(Re2+(ωLe)2)/(ωLe)
焼入れ応用ではωLe2>>Re2であるため、次式が成り立つ。
Rp=(ωLe)2/Re
|Xp|≒ωLe
なお、ωが高周波インバータ11から出力される高周波の角周波数である。
高周波インバータの周波数が負荷共振回路のそれと一致して同期している場合には、負荷インピーダンスZoは、
Zo=Rp=(ωLe)2/Re
となる。
つまり、上記の近似式から、ワーク15と加熱コイル14とのギャップdが増加すると、負荷の結合が弱くなり、Leが増加し、Reが減少し、負荷インピーダンスZoが大きくなる。しかも、負荷インピーダンスZoの変化率は、Le、Reそれぞれの変化率と比べて大きい。
図5は、本発明の変形例を説明するための模式図である。なお、図24と同一の部材には同一の符号を付してある。図5に示すように、コイル電圧としてコイルの半円周部61aの両端部22c,22dの電圧を検出するように配置する。これにより、コイルギャップdの変動を効率的に負荷インピーダンスに反映させることができる。
高周波インバータ11として、直流電圧で一定制御されることで、周波数25kHzの高周波を出力するものを用いた。並列共振タイプの負荷回路として、10μFの整合用のコンデンサ12、巻線比6:1の電流変成器13を用いた。加熱コイル14が内蔵されてワーク15を受ける鞍型受け部には、内径40mmで幅4mmのものを用いた。ワーク15には外形33mm、肉厚5.5mmの丸パイプを用いた。実施例1では、ワーク15を、鞍型受け部の端面とワークの外形とのギャップが標準値の4mmとなるよう設置した。高周波インバータ11の出力電力を設置ボリュームの50%とし、1秒間出力するように高周波インバータ11の出力を設定した。判定部23dに対し、予めコイル電圧Vcoilと電流Ioの基準範囲を設定した。具体的には、予め、ワーク15を鞍型受け部に対して標準状態で配置後ワーク15の焼入れを行い、電流センサ21及び電圧センサ22により電流信号Si及び電圧信号Svの各波形を取り込んだ。そして、品質が所定の範囲であることを確認し、取り込んだ波形をそれぞれ基準波形として、各基準波形に沿って縦軸電圧値及び横軸時間について上限と下限を設定した。本実施例では、電圧Vcoilにおける上下限の設定値を±4.3%(±50mV)とし、時間軸設定値を±4.8%(±48ms)とし、電流Ioにおける上下限の設定値を±3.8%(±20mV)とし、時間軸設定値を±4.8%(±48ms)とした。
比較例について説明する。
比較例では、高周波焼入れシステム1において高周波インバータ11と整合用のコンデンサ12との間の配線に結合されていた電流センサ21を、図1に破線で示すように、電流変成器13の一次側に接続することで、電流センサ21で変成器の一次電流Ictrl−1を検出するようにした。
比較例1では、鞍型受け部とワークとのギャップを、実施例1と同様、4mmとした。
比較例1では、ギャップが基準値の4mmであるので、図9から分かるように、電流、電圧の各信号波形は、何れもしきい値の上限と下限のほぼ中央であり、判定部23dの判定はOKであった。なお、高周波インバータ11における出力電力、出力電圧は、それぞれ18kW、290Vであった。加熱コイル14の電圧Vcoilの信号は1.170V(1.170×200/5VのVcoilに相当)であり、一次電流Icrtl−1の信号は、3.287V(3.287×500/5AのIcrtl−1に相当)であった。
比較例2では、鞍型受け部とワークとのギャップを7mmとした以外は比較例2と同様に焼入れを行った。
比較例2では、ギャップが基準の4mmより広いにも拘らず、図10から分かるように、電圧の信号波形、電流変成器13の一次側電流の信号波形は、何れもしきい値の上限と下限のほぼ中央でしきい値の範囲内であった。よって、判定部23dでは、「OK」の判定となってしまう。なお、高周波インバータ11における出力電力、出力電圧は、それぞれ17kW、290Vであった。加熱コイル14の電圧Vcoilの信号は1.166V(1.166×200/5VのVcoilに相当)であり、一次電流Icrtl−1の信号は、3.281V(3.281×500/5AのIcrtl−1に相当)であった。
次に比較例3を示す。
比較例3では、実施例4とは異なり負荷インピーダンスにより監視を行わず、コイル電圧と高周波インバータからの出力電流とを計測して監視する点で異なる。その他の条件は実施例4と同一である。
10:高周波焼入れ装置
11:高周波インバータ
12:整合用のコンデンサ
13:電流変成器
13a:一次電流側コイル
13b:二次電流側コイル
14:加熱コイル
15:ワーク(被加熱材)
20:高周波焼入れ監視装置(インピーダンス監視装置)
21:電流センサ
22:電圧センサ
22a,22b,22c,22d:端部
23:制御部
23a:電流検出部
23b:電圧検出部
23c:信号処理部
23d:判定部
23e:表示部
24:警告部
30:電圧測定回路
31:第1の演算増幅器
32:第2の演算増幅器
33:フィルター回路
34:入力抵抗
35:第1のダイオード
36:第2のダイオード
37,38,39,40,41:抵抗
42:コンデンサ
50:ワーク
51:棒状基部
52:張出し部
53:上面
61:加熱コイル
61a:半円周部
61b:直線部
Claims (5)
- 高周波インバータにコンデンサを介在して電流変成器の一次側が接続され、上記電流変成器の二次側に加熱コイルが接続された装置を用いて、上記加熱コイルによりワークを加熱するに当たり、
上記高周波インバータからの出力電流と上記加熱コイルに生じる電圧とを検出し、検出された電圧を検出された出力電流で割って負荷インピーダンスを求め、負荷インピーダンスの値が閾値の上限及び下限の範囲に収まっているか否かに応じて、上記ワークと上記加熱コイルとのギャップが許容範囲内か否かを判定する、加熱コイルとワークとの位置関係を判定する方法。 - 前記負荷インピーダンスの値が閾値の上限及び下限の範囲に収まっているか否かは、前記高周波インバータから出力が開始されてから停止するまでの間に亘って判断する、請求項1に記載の加熱コイルとワークとの位置関係を判定する方法。
- 前記ワークが、軸部と、該軸部から張り出した張出部とを同軸状に有しており、
前記ワークの張出部に対して鞍型の前記加熱コイルを対向するように配置し、
前記ワークの張出部と前記加熱コイルとの対向する部分の距離が前記ギャップとして許容範囲内か否かを判定する、請求項1に記載の加熱コイルとワークとの位置関係を判定する方法。 - 前記負荷インピーダンスの値についての閾値の上限及び下限は、ワークを標準状態に配置して前記高周波インバータから電力を前記加熱コイルに投入し前記高周波インバータからの出力電流と前記加熱コイルに生じる電圧とを検出して負荷インピーダンスに関する基準波形を求め、この求めた基準波形に沿って設定する、請求項1に記載の加熱コイルとワークとの位置関係を判定する方法。
- 前記高周波インバータの出力は高周波電力が一定となるよう制御する、請求項1に記載の加熱コイルとワークとの位置関係を判定する方法。
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