<優先権>
本件特許出願は、以下の米国仮特許出願の優先権を主張する。
米国特許出願61/208,136号、2009年2月20日出願
米国特許出願61/209,908号、2009年3月11日出願
米国特許出願61/209,911号、2009年3月11日出願、および
米国特許出願61/209,912号、2009年3月11日出願。
<関連出願>
本出願は、以下の特許出願の主題に関連する主題を含んでいる。
米国特許出願10/865,707号、2004年6月10日出願、発明の名称「2サイクル対向ピストン内燃機関('Two Cycle, Opposed Piston Internal Combustion Engine")」、2005年12月15日にUS/2005/0274332号として公開、現在米国特許7,156,056号、2007年1月2日に特許付与。
PCT国際特許出願、US2005/020553号、2005年6月10日出願、発明の名称「改良2サイクル対向ピストン内燃機関("Improved Two Cycle, Opposed Piston Internal Combustion Engine")、2005年12年29日に国際公開WO2005/124124号パンフレットとして公開。
米国特許出願11/095,250号、2005年3月31日出願、発明の名称「対向ピストン均質チャージパイロット点火エンジン(Opposed Piston, Homogeneous Charge Pilot Ignition Engine")」、2006年10月5日にUS/2006/0219213号として公開、現在米国特許7,270,108号、2007年9月18日に特許付与。
PCT国際特許出願、US/2006/011886号、2006年3月30日出願、発明の名称「対向ピストン均質チャージパイロット点火エンジン(”Opposed Piston, Homogeneous Charge, Pilot Ignition Engine"),2006年10月5日に国際公開WO2006/105390号パンフレットとして公開。
米国特許出願11/097,909号、2005年4月1日出願、発明の名称「蓄圧式噴射部を備えたコモンレール燃料噴射システム("Common Rail Fuel Injection System With Accumulator Injectors")」、2006年10月5日にUS/2006/0219220号として公開、現在米国特許7,334,570号、2008年2月26日に特許付与。
PCT国際特許出願、US/2006/012353号、2006年3月30日出願、発明の名称「蓄圧式噴射部を備えたコモンレール燃料噴射システム("Common Rail Fuel Injection System With Accumulator Injectors"),2006年10月12日に国際公開WO2006/107892号パンフレットとして公開。
米国特許出願11/378,959号、2006年3月17日出願、発明の名称「対向ピストンエンジン(“Opposed Piston Engine")」、2006年7月20日にUS/2006/0157003号として公開、現在米国特許7,360,511号、2008年4月22日に特許付与。
PCT国際特許出願、PCT/US2007/006618号、2007年3月16日出願、発明の名称「対向ピストンエンジン(“Opposed Piston Engine"),2007年9月27日に国際公開WO2007/109122号パンフレットとして公開。
米国特許出願11/512,942号、2006年8月29日出願、発明の名称「2工程対向ピストン内燃機関(“Two Stroke, Opposed-Piston Internal Combustion Engine")」、2007年2月22日にUS/2007/0039572号として公開。
米国特許出願11/629,136号、2005年6月10日出願、発明の名称「2サイクル対向ピストン内燃機関(“Two−Cycle, Opposed−Piston Internal Combustion Engine”)」、2007年10月25日にUS/2007/0245892号として公開。
米国特許出願11/642,140号、2006年12月20日出願、発明の名称「2サイクル対向ピストン内燃機関("Two Cycle, Opposed Piston Internal Combustion Engine")」。
米国特許出願11/725,014号、2007年03月16日出願、発明の名称「ハイポサイクロイド駆動部および発電機装置を有する対向ピストン内燃機関("Opposed Piston Internal Combustion Engine With Hypocycloidal Drive and Generator Apparatus")」。
米国特許出願12/075,374号、2008年3月11日出願、発明の名称「ピストン整合性を備えた対向ピストン内燃機関("Opposed Piston Engine With Piston Compliance")」、2008年7月10日にUS/2008/0163848号として公開。
米国特許出願12/075,557号、2008年3月12日出願、発明の名称「ピストンに潤滑剤を差す設備を備えた内燃機関("Internal Combustion Engine With Provision for Lubricating Pistons")」。
本分野は、内燃機関を含む。特に、本分野は、対向ピストンエンジンを含む。より特に、本分野は、複数のシリンダーを備えた対向ピストンエンジン、または、複数シリンダー対向ピストンエンジンを含む。
複数シリンダー対向ピストンエンジンの構成を説明し、図解する。このエンジンの構成は4つのシリンダーを有するが、この構成は、代表的な実施形態を図解することを意図しており、本明細書に示す原理を、4つのシリンダーを有する対向ピストンエンジンのみに限定すべきではない。
図1Aでは、複数シリンダーの対向ピストンエンジン10を第1端部の方向から見た全体図である。このエンジンは、吸気アダプター12と、2つのクランクシャフト14・16とを有し、この2つのクランクシャフトには、その対応する各端部に取り付けられた緩衝器18・20が備えられている。エンジン排気は、エンジン10の第1の側31に沿って回収され、加圧された吸気は、第2の側32に沿って分配される。
図1Bおよび図1Cよりわかるように、エンジン10の筐体は、上カバー35と下カバー36とを有する。エンジン10は、縦軸Al(図1B)に沿って、概して長手方向にあり、細長部材(ないし桁)50を有する。この細長部材(ないし桁)50は、クランクシャフト14・16、出力駆動系40、フライホイール41、様々な補助的な装備(燃料ポンプ42を含む)、および、シリンダーライナー70(「スリーブ」とも称される)などのエンジン部品を支持する。シリンダーライナー70は、並んで配置され、概して縦軸Alを横断する方向で、間隔を開けて平行に配置されている。2つの対向するピストン80は、各シリンダーライナー70の孔中、往復方向で、かつ互いの方向および互いの方向から離れて移動するように支持されている。各ピストン80は、ピストンロッド82を有する。このピストンロッド82は、一方の端部でピストンクラウンの背面に固定され、他方の端部で連結ピン84により、接続ロッド100・110に結合されている。各ピストンは、2つの接続ロッド100により1つのクランクシャフトに結合または連結されていて、1つの接続ロッド110により、他方のクランクシャフトに結合または連結されている。接続ロッド100・110はエンジン筐体内に収められていて、この筐体内で往復運動をする。クランクシャフト14・16は、桁50の対向する上面および下面に沿って縦方向に位置合わせされて取り付けられた主ベアリング60により、間隔を開けて、平行に、回転可能に配置されている。クランクシャフト14・16がこのように取り付けられることにより、クランクシャフト14・16の縦軸は、シリンダーライナー70と交差しかつシリンダーライナー70の孔の軸に垂直である平面中に置かれている。被覆部35・36は、エンジンカバーを形成し、このエンジンカバー内で、エンジンの部品を動かすことによって、潤滑剤が投げ入れられ、飛び散らされる。エンジン10の底部にある排液だめ129が、潤滑オイルを回収し、エンジンに再循環させる。この説明では、クランクシャフト14を上方クランクシャフトと称し、クランクシャフト16を下方クランクシャフトと称する。
次に図1Cを参照する。4つのシリンダーライナー70は、桁50中で支持される。同様に、4つの燃料噴射器も桁50中に支持されるが、これらの噴射器は、それぞれ、下方向に角度が付けられた噴射器孔131中で、桁の上面を通って、各貫通孔54に取り付けられている。各シリンダーライナー70の側面を貫通する噴射ポート71は、燃料噴射器130のノズル先端を受容する。好ましくは、噴射ポート71は、シリンダーライナー70の縦方向のほぼ中央点に位置づけられ、ピストンがエンジン作動時に上死点にまたはその付近にある際に、加圧された燃料を、シリンダーライナーの孔中の燃焼空間中に提供する。図1Dにあるように、ピストン冷却剤マニホルド150は、エンジン被覆部の内側に支持されていて、1つのマニホルドがエンジンに沿って第1の側31内で伸張し、他方のマニホルドがエンジンに沿って第2の側32内で伸張している。各ピストン冷却剤マニホルド150は、4つのピストン冷却剤噴射部152を有し、これらの噴射部のそれぞれが、マニホルドから、スライド結合部を通って各連結ピン84中に横方向で伸張し、関連するピストン80を冷却するために、関連するピストンロッド82の孔中に冷却剤を供給する。ピストンの移動を妨げないように、各噴射部152は、これが伸張し始めるピストン冷却剤マニホルド150にのみ固定され、この噴射部は冷却剤を与えるピストンには固定されない。
桁50は、図2Aから最もよくわかるが、エンジン10の主な支持部材である。好ましくは、この桁は、高強度の、軽量のアルミニウム合金からなる鋳造体である。通路およびギャラリーを設けるために、成形時に、予備成形された特定の部材(管など)が、桁構造中に組み込まれうる。一度成形されると、その後、桁は、その基本的な構造を満たし、これを完成させるために、機械加工されうる。この鋳造され、かつ機械加工された桁は、好ましくは複数の貫通孔を有し、これらの貫通孔が、シリンダーライナー、吸気プレナム、主ベアリング台、駆動系支持構造部、様々なギャラリー、通路および孔を支持する。
ここで、図2A、図2Bおよび図2Cを参照すると、桁50は、第1の側51および第2の側52、縦長寸法53、ならびに、この縦長方向に横断する方向での貫通孔54を有する。貫通孔54は、間隔を開けて平行に並んで配置されていて、その軸は、エンジンの第1の側と第2の側との間で伸張している。吸気アダプター12は、第2の側52に沿って、吸気(「入口」)プレナム56と流体接続して、桁50に取り付けられている。吸気プレナム56は、桁50の第2の側52中に形成された細長いトレンチから構成され、この中に、貫通孔54の入口端部が突出している。2セットの主ベアリング組み立て部60は、桁50の対向する上面と下面(これは、それぞれエンジンの上方と下方とに対応する)と接する長手方向に沿って取り付けられている。各セットの主ベアリング60は、これらの各面上で互いに長手方向に位置あわせされている。各主ベアリング組み立て部は、台座61(これは、好ましくは桁鋳造体の一部分として形成される)と、取り外し可能な外側ベアリング片62(これは、各ベアリング台座61に、ネジ山付きネジまたはボルトにより付けられている)とを有する。
図2Bにあるように、シリンダーライナー70は、桁50の各貫通孔54中に支持されている。シリンダーライナー70は、この貫通孔から取り外し可能であることが好ましいが、この貫通孔中にプレス嵌めされうる構成もある。好ましくは、各シリンダーライナー70が、各貫通孔54中に取り付けられて、この貫通孔と共に、シリンダーライナーの外側面に沿った流体の移動に対して密閉が行われるが、しかし、この貫通孔から取り外し可能でもある。各シリンダーライナー70は、排出ポート73(これは、複数の開口からなる円周の輪から構成される)を備えた排出端部72と、入口ポート75(これも、複数の開口からなる円周の輪から構成される)を備えた入口端部74と、外側円周周囲面76と、縦軸78を有する内側孔77を有する。シリンダーライナー70は、貫通孔54中に配置され、その排出端部72は、桁50の第1の側51に沿って貫通孔から外側へ伸張し、その入口端部74は、桁50の第2の側52に沿って貫通孔54から外側へ伸張する。図2Cから最もよくわかるように、細長い吸気被覆部57が、ネジ山付きネジまたはボルトにより、吸気プレナム56を覆うようにして桁50に付けられ、この吸気プレナムを覆い、密閉し、かつ単一のプレナム室を形成する。ここで、陽圧がかけられた空気が、シリンダーの全ての入口ポート75に提供される。シリンダーライナー70は、その内側孔77の縦軸78が互いに対して平行に、かつ、吸気プレナム室と交差する共通の平面中に置かれているように配置される。さらに、全ての入口ポート75はプレナム室内に位置づけられる。複数の円錐体58が、吸気被覆部57の内側に形成されるが、これにより、この被覆部が取り付けられた際には、全ての円錐体が入口プレナム56に直面するように形成されている。各入口円錐体58は、吸気被覆部57を通る開口部58oを有する。各開口部58oは、溝58gに着座する円周方向の密閉部を有する。図2Dからわかるように、各シリンダーライナー70の入口端部74は、各入口円錐体58の開口部58oを通って伸張している。各入口円錐体58は、羽根58vを少なくも1つ好ましくは複数個有することが好ましく、この羽根58vは、プレナム室内で、開口58oを通って伸張しているシリンダーライナー70の入口ポート75の周囲で円状のアレイで置かれている。各入口円錐体の羽根58vは、加圧空気を、プレナム室から、入口ポート75の開口部へと偏向させる。このプレナムシステムが、従来技術の構成(この場合、複数の管および/またはマニホルドがエンジンブロックの外側に付けられ、各入口ポートに個々に空気を供給する)に置き換わっているので有用である。従来技術に代えることにより、この構成では、単一のプレナム室を有し、これが桁構造に統合されていて、加圧空気を、全ての入口ポートに分配する。さらに、プレナム室中に配置された羽根58vは、入口ポート75を通ってシリンダーライナー70に入る加圧空気中に渦を引き起こす。
図2Eを参照すると、潤滑剤分配ギャラリー180・190は、それぞれ桁50の上方部分および下方部分中で、概して縦方向に、ないし、貫通孔54の対向する側で伸張している。供給通路は、桁50中で、潤滑剤分配ギャラリー180から、桁の上部に沿って上方主ベアリング台61に伸張している。この種の供給通路のうちの1つの供給通路182は図2Gよりわかる。図2Eおよび図2Gよりわかるように、各潤滑剤供給通路182は、各上方主ベアリング台61の円筒状の内側面にある、円周方向の潤滑剤供給溝64中へと開いている。
図2Fおよび図2Gを参照すると、潤滑剤供給通路(そのうちの1つは、参照符号192で示されている)は、桁50中で、潤滑剤分配ギャラリー190から、エンジンの底部に沿って下方主ベアリング台61に下方向に伸張している。好ましくは、各潤滑剤供給通路192が、各下方主ベアリング台61の円筒状の内側面にある円周方向の潤滑剤供給溝64中へと開いている。冷却剤供給通路194は、桁50の下方部分中で、潤滑剤分配ギャラリー190から貫通孔54へと上方に傾斜して伸張している。各冷却剤供給通路194は、冷却剤供給溝195中に開かれているが、この冷却剤供給溝195は、各貫通孔54の内側面にあり、燃料噴射部孔131の軸と直径方向で位置合わせされた位置にある。後述する方法でシリンダーライナー70を挿入すると、各冷却剤供給溝195が、関連する貫通孔54とシリンダーライナー70の外側面との間で冷却剤通路を形成する。図3Dにあるように、冷却剤排水通路196が、桁50の上方部分中で、各貫通孔54から上方向に伸張している。好ましくは、各貫通孔54のために、少なくとも1つの、好ましくは2つのこの種の排水通路が役に立っている。図3Cおよび図3Dにあるように、各排水通路196は、そのひとつの端部では、貫通孔54の各円周方向の回収部溝中に開かれ、他方の端部では(図2Fよりわかるように)、桁50の上部を通って、好ましくは桁の上面を通って開かれていて、この位置に、主ベアリング組み立て部60が取り付けられている。
全てのシリンダーライナー70は、図3Aおよび図3Bに示されているように構成され、組み立てられうる。ここで、シリンダーライナー70は、ライナー管300を有し、その排出ポート73と入口ポート75とは、ライナー管300の端部リム302・304付近に形成されている。円周方向のフランジ305が、ライナー管の外側面上に形成され、これが、排出ポート73の内側縁に隣接していて、排出ポート73が、フランジ305と排出端部72との間に位置づけられるようになっている。位置合わせノッチ306が、フランジ305中に設けられている。排出端部72は、端部キャップ307から構成され、この端部キャップは、ピン308/孔309によりリム304と位置合わせされ、ネジ山付きネジまたはボルトによりリム304に付けられている。排出端部72では、ライナー管300の内側孔の内径が大きくなり、排出端部72からライナー中へ縦方向に変位する、隆起した肩部310を形成している。端部キャップ307の外径は内側端部311の周囲でより小さくなっていて、内側端部311のリムは、ライナー管のリム302を通って受容されている。端部キャップ307がリム302に付けられると、内側端部311は、隆起した肩部310より少し足りなくなるように位置づけられ、環状ワイパー溝312を形成し(図3B)、この環状ワイパー溝312に、環状ワイパー313が受容され、保持される。図3Bを参照すると、溝312とワイパー313とは、排出端部72と排出ポート73との間のライナーの内側孔77中に位置づけられている。溝312とポート73との間の変位により、エンジン作動においてピストンがBDCに位置づけられている際に、ピストンのクラウンに取り付けられている圧縮リング(後述)が位置づけられる環状領域が規定される。本書面で説明する構成のある態様では、縦方向のオイル放出溝314が、端部キャップの孔の内側面に形成されうる。もしこれが設けられる場合には、溝は、オイル放出溝314から、端部キャップ307の外側リムへと伸張することが好ましい。入口端部74も同様に構成することができ、環状ワイパー溝312とワイパー313とが、シリンダーライナー70の内側孔中で、入口ポートとライナー70の入口端部との間に位置づけられる。この放出溝は、ワイパー溝312の端部キャップを通る孔が付けられた放出通路に置き換えられうる態様もある。これに代わる実施形態では、端部キャップの孔は、図3Eよりわかるように、放出溝または放出通路を有さなくてもよい。
図3Aから最も良くわかるように、浅くて、好ましくは平坦である円周方向のトレンチ315が、シリンダーライナー70の外側面76の中央部分中に形成されている。この円周方向のトレンチ315は、支持領域(この領域を通って、噴射ポート71の孔が設けられている)を設けるために、中断または分割されている。狭い円周方向の中央溝317が、トレンチ315の概して中央に形成されている。この中央溝317から端部72・74方向に向かって伸張する縦方向の溝318・319が、外側面76に形成されている。排出端部72方向に向かって伸張している縦方向の溝318の長さは均一で、これにより、それらの端部320が、外側面76において円周方向で位置合わせられている。入口端部74方向に向かって伸張している溝319の長さは均一で、これにより、その端部321が、外側面76において円周方向で位置合わせられている。参考文献である米国特許出願2007/0245892号(この文献では、シリンダーライナー70の排出側に対して、入口側よりも冷却能力を高くしている)に記載されているように、シリンダーライナーを非対称に冷却するために、図3Aにあるように、溝318の長さは、溝319の長さよりも長くすることができる。図3Bからわかるように、分割されたカラー部または平坦なリング327を、トレンチ315および溝317に適合させ、このトレンチ315および溝317を覆うが、縦方向の溝318・319は覆わないままにする。一列の穴328が、カラー部327の円周の半分に沿って、リング中で、分割部の各端部から、この分割部329に対向する開口のない部分330にまで延在している。各円周の半分の周囲で、穴328の直径は、部分330から分割部329に向かって徐々に大きくなる。
図3Eにあるように、シリンダーライナー70を非対称に冷却する構成は、参考文献米国特許出願2007/0245892号で教示されているように、シリンダーライナー中に縦方向にドリルで開けた孔を有しうる。これに関して、複数の縦方向の溝318のうちの溝318aは、排出ポート73の橋73bと位置合わせされ、他の溝318より長い。溝318eは、フランジ305にまで達しないとしても、その方向に伸張しうる。各溝318eの端部は、排出ポートの橋73bを通ってシリンダーライナー70の排出端部72にまで孔が開けられた縦方向通路318bと流体接続している。さらに、噴射ポート71の双方の側の溝318の端部320は、縦方向通路318bと流体接続する共通の溝へとまとめられることができる。孔が開けられた縦方向の通路318bそれぞれが端部キャップ307中の穴318h中に開かれる。延長した溝318eと関連する縦長方向の孔318bとの流体接続は、溝318eの端部と孔318bとの間で、シリンダーライナー70に対して放射状方向でドリルで開けられた孔により行われる。この構成により、冷却剤は、延長した溝318eと、排出ポートの橋73bとを通って流れ、その後、シリンダーライナーの排出端部72から外に流れることができる。
桁50中の全ての貫通孔54は、図3Cで示すような構成を有する。貫通孔54は、排出端部54eおよび入口端部54iと、冷却剤回収部溝342・344を備えた内側孔面340と、これらの回収部溝の間にある冷却剤供給溝195と、入口端部54中にある台座溝346と、排出端部54e中に台座溝347とを有する。図3Cおよび図3Dを参照すると、シリンダーライナー70が貫通孔54中に組み立てられる際には、環状密閉部349(例えば、エラストマー・オーリング)が、孔面340中の溝346中に着座している。その後、シリンダーライナー70に、貫通孔54の排出端部54eを通って、まず入口端部74が挿入され、ノッチ306(図3A)が貫通孔ピン348と位置合わせされ、これにより、シリンダーライナー70の噴射ポート71が、桁50中の噴射部孔(不図示)に対して方向付けられる。シリンダーライナー70がこのように方向付けられることにより、フランジ305が、台座溝347の端部に対して接触し、これに対して着座するまで、このシリンダーライナー70が押し入れられる。図3Dにあるように、シリンダーライナー70が貫通孔54中で方向付けられ、着座することにより、冷却剤回収部溝342は、縦方向の溝318の端部320と位置合わせされ、冷却剤供給溝195がカラー部327中の孔328と位置合わせされ、冷却剤回収部溝344が縦方向溝319の端部321と位置合わせされ、噴射部ポート71が噴射部孔と位置合わせされる。シリンダーライナー70は、入口端部74において、吸気被覆部57により桁50に接する定位置に固定され、排出端部72において、排出物回収部400により貫通孔54の排出端部54eに固定される。環状密閉部351(例えば、エラストマー・オーリング)が、吸気被覆部の円錐体開口58o中の溝58g中に着座する。環状密閉部353(例えば、エラストマー・オーリング)が、排出物回収部400の溝中に着座している。
図3Dにあるように、シリンダーライナー70が貫通孔54中に対して方向付けられ、着座することにより、密閉部349が、シリンダーライナー70の外側面に寄りかかって、端部321と入口ポート75との間の位置に着座し、これにより、端部321から入口プレナム室へと外側面に沿って液体が漏れるのを遮断する流体密閉部が形成される。密閉部351は、シリンダーライナー70の外側面に寄りかかって、入口端部74と入口ポート75との間に着座し、これにより、流体がいずれの方向に漏れるのも遮断する流体密閉部を形成する。すなわち、密閉部351は、入口端部74から入口プレナム室および入口ポート75へと、ライナー70の外側面に沿って液体潤滑剤が通過するのを遮断する。密閉部351は、入口プレナム室の中へ、および、入口プレナム室の外へ空気が漏れるのも遮断する。密閉部353は、排出ポート73と排出端部72との間で、シリンダーライナー70の外側面に寄りかかって着座し、流体がいずれの方向に漏れるのも遮断する流体密閉部を形成する。すなわち、密閉部353は、排出端部72から排出物回収部400および排出ポート75へ、シリンダーライナー70の外側面に沿って液体潤滑剤が通過するのを遮断する。密閉部353は、空気が排出物回収部400の中へ漏れること、および、排出ガスが排出物回収部400から出て漏れることも遮断する。フランジ305は、外側面に沿って端部320から排出物回収部400および排出ポート73へと液体が漏れるのを遮断する。
このようにして、シリンダーライナー70が、貫通孔54中に支持されている一方で、排出物回収部400が貫通孔54に固定されている際には、貫通孔の排出端部に着座している溝中にライナーのフランジを保持することにより、シリンダーライナー70は、桁50中の移動に対して安定化され、固定される。シリンダーライナーのいずれの部品も、エンジンの他のいずれの部品とも一体形成されていない。各シリンダーライナーは、したがって、これらの区域から熱変形および機械的変形が導入されることから隔絶されている。好適な実施形態では、シリンダーライナー70はエンジンから取り外すことができ、これにより、修理および保守が容易になる。さらに、貫通孔に着座する際に、シリンダーライナー70は、その外側面と貫通孔(シリンダーライナーが着座している貫通孔)との間で、流体が通過することに対して密閉されている。エンジン作動時に、シリンダーライナー70が、燃焼熱に応じて膨張している間に、シリンダーライナー70は、貫通孔54中に着座し、固定され、より硬くこの中に密閉されている。もちろん、シリンダーライナー70が貫通孔54から取り外し可能であることが好ましいが、シリンダーライナーが、貫通孔中にプレス嵌めされ、この中に永続的に密閉されている場合もありえる。
図4よりわかるように、排出物回収部400のシステムは、第1の側に沿って桁50上で長手方向に伸張している。各排出物回収部400は、貫通孔54の排出端部54eに取り付けられている。図3Cおよび図3Dよりわかるように、排出物回収部は、各シリンダーライナー70の排出ポート73と流体接続している。全ての排出物回収部が、図2Bおよび図3Dに示されているように構成され、かつ組み立てられることができ、ここで、排出物回収部400は、概してドーナツ形状の室401を形成し、これが、シリンダーライナー70の排出ポート73を取り囲んでいる。図4よりわかるように、各排出物回収部400は、導管403を有する。各導管403は、この導管が取り付けられているシリンダーライナー70の排出端部72の垂直正中線からずれていて、これにより、接続ロッドの往復運動ができるようにしている。各導管は、エンジン筐体を通って導かれる排出ポート405に移行し、(不図示の)排出マニホルドへと移行する。図3Dにあるように、各排出物回収部400のドーナツ状の部分は、内側回収部410と外側回収部420とを有する。この内側回収部と外側回収部とは、平坦な前面および裏面を有する外側周囲の周囲で、ほぼ半円の円環状の切り込みを有する。図3Cから最もよくわかるように、ねじ山付き孔(図2Bに見られる)(これは、排出端部54eの周囲で間隔を開けている)中に受容されたネジ山付きネジまたはボルトにより、内側回収部410は貫通孔54の排出端部54eに固定されている。図3Cにあるように、内側回収部410と外側回収部420とは、フランジ424において、ネジ山付き開口で(これを通って、ネジまたはボルトが2つの部品を共に固定するために受容されている)合わせられている。図3Dにあるように、内側回収部の裏面の内側縁は、フランジ305の外側縁に隣接している。外側回収部420は、シリンダーライナーの排出端部に直面する内側孔中に環状溝425を有し、この中に、環状密閉部353が着座している。
ピストン80は全て、図5Aおよび図5Bに示すように構成され、組み立てられうる。ここで、ピストン80は、クラウン510、スカート520およびピストンロッド82を有する。ピストンロッド82は、管状の構成を有する。ピストンは、ピン84に対して組み立てられる。図5Cにあるように、クラウン510の裏には、楔形状の放射状の壁511が形成され、この壁は、ネジ付孔の内側リングおよび外側リングを有する。放射状の壁の薄い端部は、中央ドーム部分512で収束し、壁間で楔形状のノッチ513に向かって傾斜を付ける。スカート520は、管形状を有し、フランジ521を有する。このフランジは、クラウン510と一緒になるスカートの端部付近で、このスカート522の内側面に形成される。図5Aにあるように、形成されている。クラウン510は、スカート520の1つの端部上で受容され、これを閉じている。柔軟性を有するリング523(例えば、オーリング)が、クラウン510の後ろ側の下方挿入リムを把持し、クラウンの後ろ側に形成された円周方向の頂部と、フランジ521の一方の側との間で保持されている。もうひとつの柔軟性を有するリング524(例えば、オーリング)が、フランジの他方の側と、クラウンの後ろ側に取り付けられた保持リング525の外側縁との間で保持されている。これらの柔軟性を有するリングとフランジとにより、クラウン510とスカート520とを合わせる、環状で弾力性を有して変形可能である接合継手が形成され、この接合継手により、円錐体(これは、ロッドの軸で心出しされ、フランジ621からピストンスカートの開かれた端部へと広がっている)内で、スカート520が、クラウン510上で、ピストンロッド82に対してわずかに揺動することができる。
図5Aおよび図5Bにあるように、ピストンロッド82は、その外側面にフランジ531・532を有する。フランジ531は、ロッドの一端から後退した位置にあり、フランジ532は、ロッドのねじ山付き端部から少し戻った位置にあり、フランジ532の径は、フランジ531の径よりも小さい。ピストン80の構成は、さらに、クラウン510の後ろ側に、ネジ山付きネジまたはボルト(これは、ネジ孔のついた内側リング中に受容される)により付けられた挿入部550を有し、上述の挿入部は、楔形状のノッチ551を有し、このノッチ551は、クラウン510中の対応するノッチと位置合わせされている。図5Cにあるように、柔軟性を有するリング524は、挿入部550の外側周囲を把持している。ピストンロッド82は、挿入部550に固定され、そのピストンロッド82の一端は挿入部の中央開口部552に心出しされ、円周方向のフランジ531は、挿入部550と、フランジ532を通り過ぎるロッド保持部560との間に挟まれている。ネジ山付きネジまたはボルトは、保持部560を挿入部550に固定する。保持リング525は、挿入部550の後ろ側で、挿入部の回りに取り付けられ、ネジ山付きネジまたはボルト(これは、挿入部を通って伸張し、クラウン510の後ろ側にあるネジ山付き孔の外側リング中で受容される)により、クラウン510に固定されている。側面断面図である図5Aと図5Cとを参照すると、クラウン510の後ろ側および挿入部550の後ろ側にある楔形状の空間は、互いに位置合わせされ、心出しされ、管状のピストンロッド82に対して放射状方向で対称となっている。さらに、図5Aよりわかるように、ピストンロッド82の外側端部は、分割されたカラー部565の下半分(これは、ピン84に付けられている)にプレス嵌めされている。米国特許7,360,511号にさらに記載されているように、ピストン冷却剤噴射部152が、ピン84を通って、管状のピストンロッド82の孔中に伸張している。エンジン作動時に、このピン84はピストン冷却剤噴射部(これは、ピストン冷却剤マニホルドに固定されている)に沿ってスライドして往復運動する。
図5Dからわかるように、各接続ロッド100・110は、湾曲梁であり、外側周囲枠120により枠付けされた、細長い透かし構造部を有する。少なくとも1つの筋交い121が、周囲枠の対向する縦方向側の間で伸張しており、これは、ピン84に結合される各接続ロッドの端部付近に設けられている。また、少なくとも1つの別の筋交い122は、周囲枠の対向する縦方向側の間で伸張しておりこれは、クランクシャフトに接続される端部付近に設けられている。参照される米国特許7,360,511号で記載されているように、ピン84上を揺動する3つの接続ロッドが、各ピストン80を双方のクランクシャフト14・16に結合する。これに関して、分割されたカラー部565の周囲で、ピン84上に受容された分割された端部110eを備えた単一の接続ロッド110は、ピストンを1つのクランクシャフトに連結させ、2つの接続棒100(これが有する1つの端部100eが、分割端部110eの各外側にあるピン84上に受容される)は、ピストンを別のクランクシャフトに連結する。
図5Aを参照すると、1つまたは複数の円周方向の溝515が、クラウン510の周囲の上方部分中に形成されうる。例えば、2つの溝がここに形成されることができ、この中に、1つまたは複数の分割された、環状の圧縮リング516が取り付けられうる。好ましくは、1つの鋼鉄製圧縮リングが、2つの溝のそれぞれに取り付けられ、その割れ目が、例えば180°ずれている。圧縮密閉部は、クラウン510とシリンダーの孔との間の狭い環状空間を、燃焼ガスが通過(「ブローバイ(吹き抜け)」とも称される)に対して密閉するために設けられる。好ましくは、圧縮リング516は、従来の鋼鉄製のリングで、その公称直径はシリンダーライナーの内側孔の公称直径よりも大きく、これにより、この密閉が、シリンダーライナーの孔に対して負荷をかけるようになっている。
あるいは、圧縮リングの代わりに、摩擦の小さい圧縮密閉部を用いてもよい。エンジン作動時に、各ピストン工程の上死点付近で燃焼により発生させられる燃焼ガス圧力が、圧縮密閉部の内側縁に作用する。加圧されたガスは、1つまたは複数の溝に入るが、この位置に、圧縮密閉部が取り付けられ、密閉部の内側面に対して外側向きの力を作用させ、これにより、外側縁を、孔と密閉噛合させる。燃焼にしたがって、ピストンが上死点から離れる方向に動くと、燃焼圧力は周囲圧力にまで下がり、圧縮密閉部は、溝中で緩み、入口ポートまたは排出ポートを通過する際に、孔に対して再び軽く負荷をかけるだけとなる。好ましくは、シリンダー中に圧縮される際に、例えば、約0.015″の円周方向の割れ目を有する円状の周囲部を生じさせるように、圧縮密閉部が製造されうる。密閉部の機械加工された呼び外径を、ライナーの孔径よりも、例えば約0.010″大きくして、ポート領域に対してかかる負荷を、確実に軽くしうる。密閉部の厚さは、例えば、0.040″で、ガス圧力によりかけられる力を低い程度に維持することができる。このような密閉部を2つ、公称幅0.080″で、割れ目が180°離れている1つの溝中に取り付けることができる。密閉部は、鋼鉄を機械加工し、後に窒化物層でメッキすることにより製造することができる。
各主ベアリング60は、図6に示すように構成され、組み立てられうる。この主ベアリング60は、台61、外側片62、および、管状のベアリングスリーブ63を有する。外側片62が台61に固定されると、主ベアリング台61と外側片62とによって形成された円筒状の内側面中に、円周方向の潤滑剤供給溝64が規定される。潤滑剤供給通路192が、桁50を通って、潤滑剤分配ギャラリー190から、主ベアリング台中の潤滑剤供給溝64の部分へと伸張する。ベアリングスリーブ63が台61と外側片62との間で受容され、保持される際には、ベアリングスリーブ63中の開口部65は、溝64の上方で、桁50の上面に対向する場所に位置づけられている。各主ベアリング60は、クランクシャフトの主ジャーナルを回転可能に支持する。不図示であるが、各クランクシャフト中にドリルで穴を開けた潤滑剤供給通路は、主ジャーナルと、隣接するクランクジャーナルとの間で伸張し、各クランクジャーナルは、1つまたは複数の孔を有し、この孔から、流体力学的に潤滑剤を差されるジャーナルロッドベアリング(これによって、接続ロッドがジャーナルに結合されている)に、潤滑剤が流れる。このようにして、エンジン作動時に、潤滑剤が、主ベアリング60中に流れ込み、開口部65を通って、主ベアリングスリーブ63とクランクシャフト14・16の主ジャーナルとの間にあるベアリング境界に潤滑剤が差される。クランクシャフトが回転するのにしたがって、潤滑剤も、ベアリングスリーブの開口部65から、主ベアリングジャーナル中のドリルで穴が開けられた供給通路へと噴射され、これらの通路を通って、潤滑剤が流体力学的に潤滑剤を差されるジャーナルベアリングに流れる。
エンジンの全ての環状ワイパーは、図7Aに示すように構成され、組み立てられうる。環状ワイパー313は、円周方向の溝703を形成する壁を備えたエラストマー環702を有する。ワイパー313の内側壁は、傾斜がついた表面を有し、円周方向のノッチ705で終了する。外側壁は、少なくとも1つの突起部707を有する波状面を有する。組み立て時には、内側壁と外側壁とがばらばらに広げられ、環状リング709(例えば、鋼鉄製のバネまたはエラストマー・オーリング)が、溝703中に着座する。続いて、双方の壁が解放されると、これらの壁は環状リング709に向かって動き、このリングを締め付けて楕円形状にし、壁間の広がろうとする力を維持する。図3Bおよび図7Aを参照すると、環702の呼び外径は、入口端部および排出端部付近のシリンダーライナー70の孔の中にある環状ワイパー溝312の内径に等しい。端部キャップ307が、ライナーの管300の端部に固定されると、環は、端部キャップ307の内側端部311と、隆起した肩部310との間にあるワイパー溝中に留まる。平坦にされたリング709が、内側壁に対してバネ力をかけ、これにより、ノッチ705の下方縁が、ピストンスカート520の外側面に対して押される。突起部707が、ワイパー溝312の床と接触し、これにより、シリンダーライナーの孔の中の縦方向で、環702が変位するのに抗する。このようにワイパーリング313が着座することにより、ワイパーリング313は、ピストンスカート520の外側面を把持し、エンジン作動時にピストンが往復運動をするときに、スカートから余剰潤滑剤を拭いとる。例えば、図3Bおよび図7Aを参照すると、ピストンがその下死点位置を通過し、ピストンスカートがシリンダー孔から引き下がる際に、潤滑剤が飛び散らされる間に、ノッチ705の下方縁により、スカート520から余剰潤滑剤が取り出されることができ、この余剰潤滑剤は、リング709を越えて、端部キャップ307へと搬送される。この余剰潤滑剤は、端部キャップの内側孔を介して、シリンダーライナー70の排出端部から外へ流出し、排液だめ129中に移行し、ここで回収される(図1B)。
図7Bおよび図7Cを参照すると、ワイパー313は、シリンダーライナー70の孔中に位置づけられ、圧縮リング516との接触による損傷を避けつつ、一方では、潤滑剤が、ピストンスカート520の外側面で、入口ポートまたは排出ポート中に搬送されるのを防ぐ。好ましくは、各ワイパーは、排出ポートまたは入口ポートと、シリンダーライナーの対応する端部との間に位置づけられる。この関係は図7Bに示したが、ここで、ワイパー313は、シリンダーライナーの孔中で、排出ポート73と排出端部72との間に着座している。排出側のピストン80が、TDCを通って移動すると、排出ポート73は、圧縮リング516とワイパー313との間に位置づけられる。図7Cでは、ピストンがBDCを通過して動くとき、圧縮リング516が、排出ポート73とワイパー313との間に位置づけられる。このようにして、圧縮リングが各サイクルで2度排出ポート73を通過する間に、圧縮リングはワイパー溝312を全く通過しない。
ここまでに説明したエンジンの構成により、ポンプでくみ出される源によって加圧下で提供される液体の潤滑剤(例えば、オイル)が、ベアリングに潤滑剤を差す目的、シリンダーを冷却する目的、および、ピストンに潤滑剤を差しこれを冷却する目的で、複数シリンダーの対向ピストンエンジン全体に渡って分配されうる潤滑剤供給構造が提供される。好ましくは、ポンプでくみ出される源は、桁50に取り付けられた2つのポンプを有する。図2Aにあるように、桁50は、出力端部において、駆動系支持構造部800を有し、この構造部は、エンジン駆動系を取り付けるための設備および特定の補助部品を有する。例えば、図8Aよりわかるように、2つのポンプ802が、支持構造部800の2つの対向する側に統合されている。ここで、図8Aおよび図8Bを参照すると、2つのポンプにより、液体潤滑剤が、加圧下で、上方潤滑剤分配ギャラリー180および下方潤滑剤分配ギャラリー190に供給され、また、ピストン冷却剤マニホルド150に供給される。図8Bから最も良くわかるように、ポンプ802は、駆動系ギア803・804により駆動され、かつ排液だめ中に回収された潤滑剤を、排液だめからポンプでくみ出し、制御機構805に入れる。この制御機構から、ポンプでくみ出された潤滑剤が、結合部806を通って流れ、ピストン冷却剤マニホルド150に入る。各制御機構805は、ポンプでくみ出された潤滑剤を、結合部808を通って、桁50中に孔が開けられた供給通路811(これは、桁の縦方向を横切る方向にある)中にも提供する。下方潤滑剤分配ギャラリー190は横断通路811中に開かれていて、立ち上がり通路813(これは、桁中に開けられた孔である通路であり、上方潤滑剤分配ギャラリー180に伸張している)も、横断通路811中に開かれている。
図8Bおよび図5Cから最も良くわかるように、ポンプでくみ出された潤滑剤は、ピストン冷却剤マニホルド150を通って流れ、ピストン冷却剤噴射部152を通って、これから出て、ピストンロッド82中に流れ込む。各ピストンで、潤滑剤は乱流になり、放射状方向に対称的に分配されるが、これは、楔形状のノッチ551を通り、クラウン510の背面に衝突し、これを冷却する。米国特許7,360,511号で教示されているように、クラウン510の背面に向けて、液体の冷却剤流を回転対称に供給することにより、エンジン作動時に、確実にクラウンを均一に冷却することができ、これにより、エンジン作動時に、クラウンおよびクラウンに直接隣接するスカートの部分を膨張させない、または実質的にこの膨張を低減する。潤滑剤は、ノッチ551を通って、ピストンスカート520の内側面522に沿って流れ、スカートの開いた端部から外に流出する。スカートから出ると、潤滑剤は、ピストン80、ピストンに付いているピン84、および、ピン84に結合されている接続ロッド100・110の動きにより、周囲に投げられ、撒き散らされる。撒き散らされた潤滑剤は、ピストンスカート520の外側面上に、および、ベアリング(これにより、接続ロッド100・110がピン84と結合されている)上に飛び散らされる。図3Bを参照すると、スカート520の外側面上に搬送された余剰の潤滑剤が、この外側面からワイパー313により取り出され、排出溝314によりシリンダーライナー70の端部から外に導かれるが、この溝から、余剰潤滑剤は、飛び散らされるオイルの霧中に投げ入れられる。このようにして、ピストンに対してポンプでくみ出された潤滑剤は、ピストンのクラウンを冷却する目的と、ピストンのスカートの外側面および接続ロッドベアリングに潤滑剤を飛び散らす目的との両方の目的のために採用される。エンジン被覆部35・36は、潤滑剤の撒き散らし、および、飛び散らしを、クランクシャフトが占有するエンジン空間(エンジンクランク空間)中に限定する。
図2Eを参照すると、ポンプ802により加圧下で提供される加圧潤滑剤は、上方潤滑剤分配ギャラリー180および下方潤滑剤分配ギャラリー190を通って流れる。図2Fよりわかるように、上方ギャラリー180から、潤滑剤は、潤滑剤供給通路182を通って流れて、上方主ベアリング60の溝64に供給される。図6に図示されているように、各主ベアリング60中において、潤滑剤は、潤滑剤供給通路から、ベアリングのある部分(クランクシャフトによってかけられる張力に応答して、クランクシャフトが担う圧力が最大になる部分)で潤滑剤供給溝64に入る。この部分は、台61によって支持される半円の中心点に心出しされている。この部分から、潤滑剤は、供給溝64中を逆方向に移動し、クランクシャフトが担う圧力が最小になるる主ベアリング60の部分に到達するまで移動し続ける。この最小圧力の部分は、最大圧力の部分からベアリングの周囲の円周方向で180°回ったところにある。最大圧力の部分は、外側片62によって規定される半円の中心点に心出しされている。この部分から、潤滑剤は、開口部65を通ってベアリングスリーブ中を通過する。供給溝を出た潤滑剤の一部分はクランクシャフトの主ジャーナルとベアリングスリープの内側面との間の境界部分全体に渡って搬送され、ここに潤滑剤を差す。この潤滑剤の一部は、クランクシャフト中のドリルで穴を開けた通路中に受容され、これにより、この潤滑剤の一部は、クランクスローと接続ロッド100・110の端部との間にある流体力学的に潤滑剤を差されるベアリング境界に搬送される。潤滑剤は、これらの境界からさらに連続して流れ、エンジンクランク室中に、霧状の飛び散らされた潤滑剤中に投げ入れられる。
図2Fおよび図2Gよりわかるように、下方ギャラリー190からも、潤滑剤は潤滑剤供給通路192に流入し、下方主ベアリング60の溝64に供給され、ここから、上方主ベアリングに関連して説明した方法で、下方クランクシャフト16およびこれに結合されたベアリングに潤滑剤が差される。さらに、潤滑剤は、下方ギャラリー190から冷却剤供給通路194に流入し、その後、図3Cおよび図3Dよりわかるように、貫通孔54の円周方向の冷却剤供給溝195に流入する。潤滑剤は、貫通孔の供給溝195(図2F)(これは、カラー部327の開口のない部分330によりかかる位置にある(図3A))に入る。図3Aを参照すると、潤滑剤流は、2つの流れに分割され、分割部329の方向で、分割されたカラー部327の表面を時計回りと反時計回りの方向で流れる。参照符号330から参照符号329にかけて双方の方向で穴328の寸法が均一に大きくなることにより、潤滑剤が分割されたカラー部327を通ってトレンチ315に入り、その後円周方向の溝317に流れる割合を均一にしている。円周方向の溝317から、潤滑剤は縦方向の溝318に流入し、排出端部72に向かい、また、同様に縦方向の溝319に流入し、入口端部74の方向へ向かう。潤滑剤が、縦方向の溝318・319を流れることにより、シリンダーライナーを非対称的に冷却し、中心から、ライナーの排出側に対して、入口側よりも冷却能力を高くしている。米国特許7,360,511号で教示されているように、排出ポート73を備えたシリンダーライナー70の排出部分は、入口ポート75を備えた端部部分よりも、高い熱負荷がかけられるので、このようにして、シリンダーライナーの温度の非均一性を最小限にし、ライナー孔を円筒状方向で非均一にする。しかし、冷却剤供給部材315・317・318・319・327の構成により、米国特許7,360,511号で教示された対応するシステムよりも、シリンダーライナーをずっと容易に、かつより安価に作ることができる。さらに、シリンダーライナー70を特別仕様で非対称に冷却し、シリンダーライナーの中にあるピストン80を放射状方向で対称的に冷却することにより、シリンダーライナーの非均一な変形および、ピストンクラウンの膨張をなくし、これにより、エンジン作動時に、シリンダーの孔とピストンとの間の機械間隙をほぼ一定にし、円形で対称的にすることができる。
図3Aおよび図3Dを参照して、シリンダーの冷却剤の流れについての説明を続ける。潤滑剤は、縦方向の溝318の端部320から流れ出て、貫通孔の冷却剤回収部溝342中に入り、冷却剤排水通路196を通って、桁50から外へ流れ出る。また、潤滑剤は、縦方向の溝319(図3Cに見える)の端部321から流れ出て、貫通孔の冷却剤回収部溝344中に入り(図面3Cに見える)、もう1つの冷却剤排水通路196を通って、桁50から外へ流れ出る。潤滑剤は、冷却剤排水通路から出て、桁50の上部に沿って流れ続け、そこから、エンジン中に、霧状の飛び散らされた潤滑剤になって投げ入れられる。
エンジンクランク空間周辺で飛び散らされた潤滑剤は、エンジンの底部に雨のように落ち続け、排液だめ129中に流れこみ、ここから、この潤滑剤はポンプでくみ出され、上述したように、潤滑剤を差すおよび冷却する目的で供給される。説明したこのエンジン構成は、好ましくは、上述の潤滑剤分配ギャラリーおよびピストン冷却剤マニホルドを通って潤滑剤を差すおよび冷却するために、ポンプでくみ出される潤滑剤の供給を管理するための制御機構を有する(これについては、概略形態を図9に示す)。
図9にあるように、ポンプ802の潤滑剤出力の供給は、集積制御サブシステムにより制御されている。各制御サブシステムは、自動でもよいし、電子制御装置により作動されてもよい。例えば、図9中に図示されている自動制御サブシステム910は、温度自動調節弁911、ピストン冷却調節器弁912および圧力安全弁914を有する。ポンプ802の出力は、直列で冷却管916に接続され、ここで、潤滑剤が冷却される。好ましくは、冷却管916は、直列接続されたフィルター918、熱交換器920を有するが、これ以外の冷却部材を用いてもよい。冷却管916は、弁912・914と共に、1つのポンプ802を通って、桁50中の通路孔811に接続されている。通路孔811は、別のポンプ組み立て部802に、この組み立て部の弁912・914と共に接続されている。温度自動調節弁911が開かれると、流体力学ポンプ802の出力は、冷却管916を越えて通路孔811に分岐される。
図9の制御機構では、温度自動調節弁911が、潤滑剤の温度に応答し、弁912・914が潤滑剤の流体圧力に応答する。潤滑剤の温度Tが、所定の第1レベルT
L(すなわち、最低温度)未満である場合、温度自動調節弁911が開き、潤滑剤は冷却管916を越えて、通路孔811へと分岐される。潤滑剤の温度が、所定の第2レベルT
H(T
Lより高い、最高温度)に達すると、温度自動調節弁911が閉じ、潤滑剤を、冷却管916、フィルター918および熱交換器920を通って流す。熱交換器920からは、ろ過され、冷却された潤滑剤が、冷却管916を通って戻り、通路孔811中に流れ込む。弁912・914は、流体圧力Pが所定の第1レベルP
Lにまだ達していない場合は、閉じたままとなる。所定の第1(最低)レベルP
Lに達すると、ピストン冷却調節器弁912が開くが、圧力安全弁914は閉じたままである。流体圧力が、所定の安全レベルP
Hに達すると、圧力安全弁が開く。最後に、温度自動調節弁911も流体圧力に応答することができ、流体圧力が最大許容圧力レベルP
HH(これは、P
Hを上回るレベルである)に達すると、温度自動調節弁911が開きうる。これは下の表1の通りである。
表1中、Pは潤滑剤の流体圧力、Tは潤滑剤の温度、Sは桁50、Jはピストン冷却噴射部152、Bは弁914を介したバイパス、ならびに、Hは、冷却管916、熱交換器920およびフィルター918を通る潤滑剤の搬送を示す。
表1によれば、エンジン始動時で潤滑剤が比較的冷たく(T<TL)圧力が低い(P<PL)場合には、温度自動調節弁911が開き、潤滑剤は冷却管を越えて分岐され、桁50中の通路孔811に直接供給される。しかし、エンジンが始動時で、ポンプ910が十分準備されていず、潤滑剤の流れが不十分で、潤滑剤が確実に主ベアリングに適切に流れているとはいえず、その結果、主ベアリングにすぐに潤滑剤を差す必要があり、また、潤滑剤が確実にシリンダーライナーに適切に流れているとは言えず、その結果シリンダーライナーをすぐに冷却する必要があり、また、潤滑剤が確実にピストンにも適切に流れているとは言えない場合がありえうる。したがって、流体圧力が、確実に全ての潤滑剤を差すおよび冷却するための要求を満たすのに適切なレベルになる前に、主ベアリングおよびシリンダーライナーを確実に生かすために、ピストン冷却弁912を閉じたままにして、潤滑剤がピストン冷却剤マニホルド150へ流れるのを防ぐ。ポンプと潤滑剤通路との準備が完了し、流体圧力がPLに達したら、ピストン冷却調節器弁912が開き、潤滑剤はピストン冷却剤マニホルド150に流れることができる。流体圧力レベルの範囲PL<P<PH(この範囲はPLとPHとの正確な大きさを規定する)は、特定のエンジンの設計および構成に関する多くの因子に依存するであろう。例えば、これらの因子には、主ベアリングにわたっての温度を制御するための潤滑剤流動要件、クランクシャフト通路(これにより、潤滑剤が主ベアリングから供給される)中の空洞の形成を回避するために必要とされる圧力、ターボチャージャーなどの補助設備の潤滑要件、様々な動力荷重およびピストン加速のレベルのための十分な冷却剤の流動、様々な動力荷重のための十分なシリンダー冷却剤の流動、ポンプ入口における空洞形成を回避および/または軽減、ならびに、選択した潤滑剤の流体特性が含まれる。流体レベルがPHに達すると、圧力安全弁914が開き、流体圧力がPHより下に落ちるまで、潤滑剤をポートから出し、被覆したエンジン空間中へと分岐させる。
表1によれば、エンジン始動時で潤滑剤が比較的熱い(T>TH)という作動条件の下では、温度自動調節弁911は閉じられ、潤滑剤を冷却管916、フィルター918、熱交換器920を通って、桁50中の通過孔811に方向付ける。さもなければ、制御機構は、上で開示したような流動体圧力Pに応じて、潤滑剤を分配させる。
図9の制御機構には、予期され、生じうる、ある不具合モードまたは危険性がありうる。例えば、冷却管916、フィルター918および熱交換器920のうちの1つまたは複数が、高温条件の元で、妨害されあるいは機能しなくなることがありえ、圧力が上昇する。このような場合、表1から明らかなように、THを上回り、PがPHHに達すると、温度自動調節弁911が再び閉鎖し、ポンプでくみ出された潤滑剤が、冷却管916を通過し、直接通路811および圧力調節器弁916に達し、これにより、冷却管回路中の妨害を回避する。
図9および表1で図解した制御機構は、エンジン作動時のピストンへの非均一的な加熱効果の問題を解決するために、調節または適合させることができる。上述の適合方法は、シリンダーライナーの特別仕様の冷却であり、これにより、通常吸気端部よりも熱くなるライナーの排出端部で非均一的な加熱の問題を解決するための方法である。相関的な適用を、上述の制御機構中で行い、エンジン作動時にピストンが異なって加熱される問題を解決することができる。これに関して、シリンダーライナーの排出側のピストンは、吸気側のピストンよりも、より迅速に熱くなり、通常より熱くなる。したがって、図9を参照すると、ピストン冷却剤調節器弁912について、ずらした作動温度を有し、吸気側のピストンを冷却するために潤滑剤が提供される前に、排気側のピストン用に機能するピストン冷却剤マニホルドに潤滑剤を提供するように選択することができる。したがって、排気側のピストンのために機能するピストン冷却剤マニホルドを制御する弁912は、吸気側のマニホルドを制御する弁よりも、低い流体圧力において開くであろう。さらに、吸気側ピストンよりも排気側ピストンに、より高速の流速で潤滑剤を提供するように、流体流動限定をずらすよう、ピストン冷却剤調節器弁912を選択することができる。
本書中で教示される、対向ピストンエンジン構成に潤滑剤を差しこれを冷却する目的で、液体の潤滑剤の分配を、あるエンジン作動条件の範囲下で調整および管理する制御機構は、図9に図示したような自動構成には限定されない。例えば、制御機構は、電子エンジン制御装置(ECU)、電子センサーおよび電子的に制御される弁からなりうる。これに関して、潤滑剤の温度および圧力をECUに報告するセンサーが配備されうる。温度および圧力が変化すると、ECUは、要求される潤滑剤の供給に関する設定を決定し、電子的に作動される弁に対して制御信号を出すことにより、ポンプでくみ出され分配ギャラリーおよびピストン冷却剤マニホルドに送られる潤滑剤の流動を制御する。
図9で図示したような自動制御機構の代表的な実施形態は、図面を参照して理解されうる。実施形態は2つのポンプと、2つの物理的に分かれた制御体とを有するが、これは、単に基本的な原理を図示するためのものであり、原理を限定するという意味ではない。潤滑剤を差すおよび冷却するためにポンプでくみ出される潤滑剤の提供を管理する制御機構は、2つ未満または2つを上回るポンプ、および、2つ未満または2つを上回る制御体を備えて実現してもよく、これは特定の状況により決められると予想される。
ここで、特定の図を参照して理解される例を言及するが、ポンプでくみ出される潤滑剤を提供するポンプでくみ出される源は、2つのポンプを有することができ、それぞれのポンプが、支持構造部800の下方隅にある各切り欠き815(図2A)中に取り付けられている。図8Aに図示されるように、対向ピストンエンジンの部材に潤滑剤を差し、および冷却するために、ポンプでくみ出される潤滑剤の提供を制御する機構は、2つの制御機構805を有しえ、それぞれの制御機構は、ポンプ802のうちのそれぞれ1つの出力を制御するように構成されている。ポンプと関連する制御機構とは、図8A〜図8B中で示されるように構成され、組み立てられうる。ここで、図8Bは、エンジン作動時に、ポンプ(図8Cに示す)を駆動する駆動系ギア803を示す。一連の矢印で示すように、潤滑剤は、排液だめからポンプでくみ出され、吸入導管817を通って、ポンプ802へ流れ、ポンプ802を通過する。図8Cよりわかるように、ポンプ802は、ポンプでくみ出された潤滑剤を、吸入室819中に供給する。温度自動調節弁911が開いている際には、ポンプでくみ出された潤滑剤は、この弁911を通って、出力室820中へと流れ込む。温度自動調節弁911が閉じている際には、ポンプでくみ出された潤滑剤は、吸入室817から出て、冷却入力導管821を介して、冷却管916中へと流れ込み、ここで、この潤滑剤は、ろ過され(参照符号918)、冷却される(参照符号920)。ろ過および冷却後に、ポンプでくみ出された潤滑剤は、冷却管916から、冷却出力導管823中へ流れ込み、出力室820へと流れ込む。これは、出力室820から、通路孔811中へ流れ込み、ベアリングに潤滑剤を差し、シリンダーライナーを冷却するために分配される。図8Aを参照すると、出力室820中の潤滑剤の流体圧力が高まるにしたがって、出力室820からのピストン冷却マニホルドへの潤滑剤の提供が制御され、または弁912によりゲート制御される。出力室820中の流体圧力が、バイパスのために特定されたレベルを上回って高くなると、出力室820からバイパス開口(図8A中で参照符号825で示す)を通って潤滑剤の放出が制御され、または弁914によりゲート制御される。
本明細書で説明し図解したエンジン構成に適切な液体潤滑剤の選択は、多くの因子に依存するが、この因子には、ベアリング用の潤滑要件、シリンダーライナーおよびピストンの冷却要件が含まれる。ある態様では、SAE 10W−20、SAE15W−40、または、これ以外の潤滑剤が用いられうる。これらの等級であれば、通路811中の潤滑剤の圧力を、常に安定した状態レベルである3バール(45psi)に維持してポンプ802を構成することにより、動く部品に潤滑剤を差すために、および、4つのシリンダーと8つのピストンを冷却するために、潤滑剤をポンプでくみ出すためのマニホルドの要件を満たすことができる。
図10は、上述のエンジン構成と共に用いることができる空気チャージシステムを図示している。この図中、空気チャージシステムは、ターボチャージャー1000を有し、このターボチャージャー1000は圧縮機1010および変動ノズルタービン1012を有する。吸気は、圧縮機1010中に入れられ、圧縮される。熱い、圧縮された空気は、第1中間冷却器1013中で冷却され、その後、制御部1015によって制御されたバイパス弁1014を通過する。その後、空気は、加給機1016により圧縮され、結果として生じる熱い、圧縮された空気が、第2中間冷却器1018によって冷却される。加圧された空気は、第2中間冷却器1018から、吸気アダプター12を通って、プレナム室56・57へ入る。ここに、各シリンダーライナー70の入口ポート75が位置づけられている。プレナム室56・57中の加圧空気は、ほぼ均一の圧力で、全てのシリンダーライナー70の入口ポート75に与えられ、エンジン作動時全体に渡って、シリンダーライナー70での燃焼および掃気を確実にほぼ均一にする。好ましくは、各個々のシリンダーライナー70からの排出ガスが、排出物回収部400を通って、マニホルド1019中に供給される。排出ガスは、その後、制御部1015からの信号に応じて、ターボチャージャー1000の可変ノズルタービン1012を通過する。
対向ピストンエンジンの構成を、特定の実施形態を参照して詳細に説明してきたが、様々な修正を、これらの実施形態の基礎となる原理から離れることなく行うことができると理解されるべきである。したがって、これらの原理を包括する発明は、以下の請求項のみにより限定されるべきである。さらに、本書中に記載され、図示された新規のエンジンの構成の範囲は、ここで記載した部材より多くのまたは少ない部材を有する、これらからなる、または、実質的にこれらからなることが適切でありえる。さらに、本書中で開示され図示された新規のエンジン構成は、本明細書中で特定的に開示されていない、図面に図示されていない、および/または、本出願の実施形態中で例示されていないいずれの部材を欠いても実施することが可能である。