以下、本発明のコンデンサの状態推定システムの一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、状態の1つとしての残存寿命を推定するコンデンサ用寿命推定システムを例にして説明する。また、コンデンサの状態推定ユニット、コンデンサの状態推定方法およびコンデンサ装置については、コンデンサ用状態推定システムの説明とあわせて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るコンデンサの状態推定システム1の構成を示す回路図である。
コンデンサの状態推定システム1は、コンデンサ装置2を有する。コンデンサ装置2は、第1のコンデンサ3と第2のコンデンサ4とを主に有する。第1のコンデンサ3には、外部から電力が供給されている。また、第1のコンデンサ3は、たとえば、インバータ装置等に搭載され、ユーザ等がその残存寿命を知りたいと希望するコンデンサである。第2のコンデンサ4は、第1のコンデンサの状態、たとえば残存寿命を推定するために必要な情報を得るための測定用のコンデンサである。第2のコンデンサ4には、充電用抵抗体5とスイッチ6とが直列に接続されている。また、第2のコンデンサ4と並列に、スイッチ7と放電用抵抗体8とが直列に接続されている。
スイッチ7と放電用抵抗体8との間には、アンプ9を介して制御部10が接続されている。制御部10は、主制御部10aと、この主制御部10aに接続される記憶部11とを有する。制御部10には、通信部12および報知部13が接続され、通信部12には、情報処理部14が接続できるようになっている。制御部10に加わる電圧は、この実施の形態では、5Vとし、この電圧は、スイッチ6、充電用抵抗体5および第2のコンデンサ4の直列回路にも印加される。さらに、制御部10には、温度検出部15が接続され、第1のコンデンサ3または/および第2のコンデンサ4の温度を検出している。この温度検出部15は、第1のコンデンサ3の温度を検出してもよく、さらには、両者の温度を検出するようにしてもよい。また、コンデンサの状態推定システム1のうち、第1のコンデンサ3および情報処理部14を除いた構成要素によって、コンデンサの状態推定ユニット1Aが構成されている。なお、各部の機能および動作については後述する。
(コンデンサ装置の構成)
まず、コンデンサ装置2の構成要素について説明する。図2は、コンデンサ装置2の外観を示す斜視図である。なお、コンデンサ装置2の紙面における左右方向をそれぞれX1、X2方向とし、紙面奥側、手前側をそれぞれY1、Y2方向とし、上下方向をそれぞれZ1、Z2方向として、以下では説明する。
第1の実施の形態において、コンデンサ装置2は、中心軸がZ方向に延びる円柱型のコンデンサである。このコンデンサ装置2の側面およびZ2方向の面は、ケース部材としてのケース21に覆われている。一方、コンデンサ装置2のケース21のZ1方向は、開口状態とされ、基板22がその開口をふさぐように嵌められており、その基板22が外部に露出している。また、コンデンサ装置2のZ1方向の面、すなわち、基板22のZ1方向の面からは、端子23a、端子23b、端子24aおよび端子24bがZ1方向へ延びている。また、基板22には、貫通孔25が形成されている。各端子23a〜24bの詳細については後述する。
また、ケース21の側面には、コンデンサ装置2の半径方向内側へ凹む、かしめ部26が形成されている。なお、図2以外の図においては、図の簡略化のため、かしめ部26の図示を省略している。
図3は、図2のコンデンサ装置2の分解斜視図である。図4は、図2のコンデンサ装置2を、図2のA−A線で切断した断面図である。図3に示すように、コンデンサ装置2は、第1のコンデンサ3と、第2のコンデンサ4と、基板22から主に構成されている。
第1のコンデンサ3は、外部の回路に接続され、通常のコンデンサとして機能する部分である。たとえば、第1のコンデンサ3は、電圧平滑用コンデンサとして用いられる。また、第1のコンデンサ3は、Z1方向側が開口するコップ状のケース21、コンデンサ素子27、およびケース21の内周と略同径の外径を有する封口栓28から主に構成されている。
コンデンサ素子27は、ケース21の内方に配置される。また、コンデンサ素子27のZ1方向端面側には、封口栓28が配置される。なお、コンデンサ素子27が備える端子23aおよび端子23b(以後、端子23aおよび端子23bの両方を指す場合には、「端子23」と言う。)は、封口栓28が備える2つの貫通孔29,29を貫通してZ1方向へ突出する。
(コンデンサ装置の各構成部品について)
まず、ケース部材の構成部品の1つであるケース21について説明する。
ケース21は、図3および図4に示すように、コンデンサ素子27を収納し、電解液等が揮発あるいは漏洩しないように密閉する役割を有する。本実施の形態では、ケース21は、底面30を有する円筒型であって、円形の底面30の端部から、側面31が底面30に対して略垂直に設けられている。また、底面30と対向する面には、開口部32が形成されている。このようなケース21の材料としては、気密性の高いものを用いることが好ましく、たとえば、耐熱性、気密性および耐腐食性が高いアルミニウム製のケース21を採用できる。
また、ケース21は、底面30の中心部分に、図3および図4に示すようなZ1方向へ突出する凸部33を有する。Z1方向へ突出する凸部33は、後述の凸部37と共に、コンデンサ素子27が、ケース21の内方で動かないように押さえる役割を有する。
次に、コンデンサ素子27について説明する。
図5は、コンデンサ素子27の分解斜視図である。コンデンサ素子27は、巻回部34と端子23とを主に有する。また、巻回部34は、陽極箔35、陰極箔36および隔離紙37から主に構成される。
巻回部34は、陽極箔35と陰極箔36との間に隔離紙37が介在されてなる積層体が、巻回されることで構成されている。また、巻回部34の隔離紙37には、電解液が浸透されている。巻回部34の陽極箔35および陰極箔36は、巻回軸方向の幅が略同一であり、隔離紙37のその幅よりも狭い。すなわち、図5に示すように、陽極箔35および陰極箔36は、隔離紙37に比べZ1方向側で幅L1だけ狭く、Z2方向側で幅L2だけ狭くなっている。なお、この幅L1およびL2は、同じとしてもよい。陽極箔35および陰極箔36には、タブ45aおよびタブ45bがそれぞれ接続されている。
陽極箔35としては、弁金属(いわゆる、バルブメタル)を用いることが好ましいが、弁金属以外の材料を用いてもよい。たとえば、陽極箔35として、酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム箔を用いることができる。陽極箔35の純粋なアルミニウムの地金部分は、コンデンサ素子27の陽極として機能する。一方、陽極箔35の酸化アルミニウム部分は、コンデンサ素子27の誘電体として機能するものとなる。
陰極箔36としては、エッチングによって拡面処理したアルミニウム箔を用いることが好ましい。なお、陽極箔35と同様に、陽極酸化により形成された酸化アルミニウム皮膜を陰極箔36の表面に設けたものを陰極箔36として用いてもよい。
隔離紙37は、陽極箔35と陰極箔36とが物理的に接触しないようにするためのセパレータとして機能する。また、隔離紙37に浸透している電解液が、陰極箔36のエッチングにより形成された微細な凹凸に行き渡るので、電解液が浸透した隔離紙37は、コンデンサ素子27の陰極として機能する。隔離紙37の幅は、上述したように、陽極箔35および陰極箔36の幅よりも大きい。本実施の形態では、陽極箔35および陰極箔36のZ軸方向端部は、隔離紙37のZ軸方向端部よりも、幅L1と幅L2の長さだけそれぞれ内側に位置している。隔離紙37としては、合成繊維より生産されるものではなく、天然に産出するセルロース材料、たとえばマニラ麻や草木のパルプなどを原料として製造された紙を用いることがより好ましい。
隔離紙37に浸透させるための導電性の電解液としては、エチレングリコール,グリセリン等の多価アルコール類を主溶媒とし、これにホウ酸アンモニウム,有機酸アンモニウム等を溶質とした溶剤等を用いることができる。
巻回部34のZ1方向の面、すなわち、封口栓40に対向する面からは、タブ45aおよびタブ45b(以下、タブ45aおよびタブ45bの両者をまとめて表す場合は、「タブ45」という。)がZ1方向へ延出している。また、封口栓40のタブ45aおよびタブ45bが当接する部分には、回路の端末をネジ込みにより接続できる端子23aおよび端子23bが、それぞれ配置される。タブ45は、端子23を陽極箔35あるいは陰極箔36と電気的に接続するための部材である。タブ45のZ2方向側の端部は、陽極箔35および陰極箔36に、溶接あるいはかしめ等でそれぞれ接続されている。陽極箔35および陰極箔36に接続されたタブ45は、Z1方向に互いに平行または略平行に突出し、そのタブ45のZ1側端部が端子23のZ2方向側に溶接あるいはかしめ等で接続されている。なお、タブ45と端子23とが電気的に接続できる手段であれば、溶接あるいはかしめ以外の手段で接続されていてもよい。タブ45としては、陽極箔35および陰極箔36と、端子23とを電気的に接続するために、導電性の材料が使用される。タブ45は、たとえば金属箔から構成される。
次に、ケース部材の構成部品の1つである封口栓28の構成について説明する。
封口栓28は、ケース21の開口部32を封口するために用いる。したがって、封口栓28としては、適度な強度を有し、かつ、用いる電解液に対して不透過性の材料からなることが好ましい。そのような封口栓28の材料としては、ゴム弾性体、樹脂体あるいは金属体等を用いることができる。特に、熱伝導率の高い封口栓28を用いた場合には、第2のコンデンサ4の温度が、第1のコンデンサ4の内部の温度により近くなるため好ましい。
封口栓28は、コンデンサ素子27の端子23を通すための2つの貫通孔29を有する。各貫通孔29は、封口栓28をZ軸方向に貫通する穴である。また、封口栓28は、そのZ1方向側の面に、Z2方向に凹む円柱型の凹部38を有する。凹部38の内方には、第2のコンデンサ4が収納される。したがって、凹部38の内径は、第2のコンデンサ4の外径と同じあるいはそれよりも少し大きいものである。また、封口栓28が、ケース21の開口部32に挿入された状態において、封口栓28のZ2方向の面は、コンデンサ素子27のZ1方向の端面と対向する。さらに、封口栓28のZ2方向の面には、Z2方向に突出する凸部39が設けられている。
なお、図4に示すように凸部39のコンデンサ素子27への突出量は、上述した幅L1より小さく、陽極箔35および陰極箔36のZ1方向端部と凸部39の先端との間には、隙間M1が形成される。同様に、陽極箔35および陰極箔36のZ2方向端部と底面30に設けられる凸部33の先端との間には、隙間M2が形成される。この隙間はM1,M2は、それぞれ「0」よりも大きい値とするのが好ましいが、「0」であったり、「0」以下でもよい。しかし、図4の一点鎖線で示すように、コンデンサ素子27が巻回部34の巻軸部分をZ軸方向に貫通する貫通孔を有するような形状とする場合には、凸部33および凸部39をその貫通孔と略同一の径とすることで、コンデンサ素子27がXY平面方向へ移動を防ぐことができる。その場合には、凸部33および凸部39の高さが、上述の幅L1およびL2よりも大きくてもよい。
次に、基板22について説明する。図6は、基板22をZ1方向側から見た場合の上面図である。
基板22は、封口栓28と略同一の外周を有する円盤状の部材である。基板22は、封口栓28のZ1方向の面に対向して配置される。また、基板22のうち、端子23とZ方向で重なる位置には、端子23が貫通するための貫通孔42,42が配置されている。また、基板22のうち、第2のコンデンサ4の端子24a,24bとZ軸方向で重なる領域には、貫通孔43,43が配置されている。さらに、基板22は、貫通孔42,42,43,43と重ならない位置に、貫通孔25を有する。貫通孔25は、第1のコンデンサ3に圧力弁が設けられた場合に、その圧力弁から噴出する電解液等を逃がすための孔である。また、基板22には、それぞれ図3には不図示のスイッチ7、放電用抵抗体8、アンプ9、制御部10、および報知部13等が配置されている。この基板22は、コンデンサの状態推定ユニット1Aの回路基板を構成することとなる。スイッチ7等の部材および各部材を結ぶ配線が、基板22の上面、すなわち、外部への露出面側に配置され、各部材等を結ぶ配線の一部が下面、すなわち、内部側に配置されている。
次に、第2のコンデンサ4について説明する。
第2のコンデンサ4は、第1のコンデンサ3と同様に、円柱状のコンデンサであり、その外径は、凹部38の内径と略同一あるいはそれよりも小さい。また、第2のコンデンサ4のZ方向の長さは、凹部38のZ方向の深さと同じかまたは小さい。なお、第2のコンデンサ4については、以下の説明において、第1のコンデンサ3と類似の構成についての説明を省略し、主に相違する点について述べる。
図7は、第2のコンデンサ4の分解斜視図である。第2のコンデンサ4は、第1のコンデンサの寿命などを推定するためのものである。第2のコンデンサ4は、第1のコンデンサ3と同様に、ケース50、コンデンサ素子51および封口栓52を有する。封口栓52の封口栓本体53には、端子24a,24bを通すための貫通孔54が配置される。第2のコンデンサ4は、第1のコンデンサ3とは異なり、その封口栓52には、貫通孔54以外の穴部や貫通孔が配置されていない。
第2のコンデンサ4は、いわゆるリードタイプあるいはチップタイプの端子24を有する。端子24のZ2方向側端部は、端子24のZ1方向よりも径が小さくなるあるいは扁平となり、第2のコンデンサ4の陽極箔および陰極箔に、溶接あるいはかしめ等でそれぞれ接続されている。第2のコンデンサ4の陽極箔および陰極箔に接続された2つの端子24は、Z1方向に互いに平行または略平行に突出している。
また、第2のコンデンサ4のコンデンサ素子51に浸透させる電解液は、第1のコンデンサ3に用いた電解液から完全に隔離されている。なお、第2のコンデンサ4の電解液と、第1のコンデンサ3の電解液とは、同じ溶媒を採用してもよいし、同じ溶質のものを採用してもよい。また、異なる溶媒としたり、異なる溶質のものとしてもよい。第1のコンデンサ3の電解液と第2のコンデンサの電解液とが完全に隔離されていたり、異なる種類の溶媒としたり、異なる種類の溶質を含むものとする場合には、電解液を介して電気的な相互作用が生じない。すなわち、他方のコンデンサにノイズを生じさせることがないため好ましい。第2のコンデンサ4の電解液としては、非水系の溶媒を用いることが好ましい。特に、γブチルラクトン等の溶媒を用いることで、第2のコンデンサ4の容量の変化が、第2のコンデンサ4の使用時間に対して、変化率の急激な変化がなく、比較的単調に減少することとなるため、後で詳細するように、コンデンサ3の残余寿命を精度よく算出できるものとなるため好ましい。
次に、コンデンサの状態推定システム1のコンデンサ装置2以外の構成について図1を用いて説明する。
充電用抵抗体5は、第2のコンデンサ4に流れる電流の大きさを制御するために設けられる。一方、放電用抵抗体8は、第2のコンデンサ4から放電された電流値の大きさを制御するために設けられる。また、第2のコンデンサ4の放電時の電流が実質的に放電用抵抗体8の直列回路だけを経由して流れるように、充電用抵抗体5の抵抗値が放電用抵抗体8の抵抗値よりもかなり大きな抵抗値を有するものとされている。また、スイッチ6は、オンオフすることでコンデンサ4を充電するための電流の供給を制御する。スイッチ7は、通常OFF(いわゆる、回路を切断する状態)になっている。
スイッチ7と放電用抵抗体8との間には、アンプ9が接続される。アンプ9は、第2のコンデンサ4から放電された電流の電圧を増幅して、制御部10に送出するデバイスである。
制御部10は、コンデンサの状態推定システム1の各部の制御を行う。また、制御部10は、第2のコンデンサ4の温度情報を得るための温度検出部15と接続されている。また、制御部10は、第2のコンデンサ4の測定を行うことで測定情報を得るための測定情報取得部としても機能する。たとえば、第1の実施の形態では、測定情報として第2のコンデンサ4の電圧値を、制御部10が取得する。制御部10は、また、アンプ9から入力されたアナログの電圧信号を、デジタルの電圧データに変換するアナログ/デジタル変換器としても機能する。また、制御部10内の主制御部10aは、得られた電圧データを記憶部11bおよび通信部12等に送出する。また、制御部10は、得られた電圧データに基づき、報知部13の制御を行う。
制御部10内の記憶部11は、コンデンサの状態推定システム1を主制御部10aが制御するためのプログラム等を格納する。また、記憶部11は、主制御部10aが取得した温度および端子間電圧値を一時的に記憶したり、主制御部10aが算出したそれらの値の平均値あるいは残存寿命等を記憶する。第1の実施の形態において、記憶部11は、第1のコンデンサ3の特性値と第2のコンデンサ4の特性値を相関させた推定用相関情報を有している。推定用相関情報としては、所定の数式あるいはその数式へ代入するためのパラメータ等が対象となる。具体的な推定用相関情報としては、たとえば、第2のコンデンサ4の静電容量と温度との相関関係のデータ、第1のコンデンサ3および第2のコンデンサ4の静電容量の減少量の相関関係のデータ、および、第1のコンデンサ3の静電容量値の減少量と定格温度における第1のコンデンサ3の使用経過時間との相関関係のデータなどがある。なお、この第1の実施の形態では、少なくとも上述の3つの相関関係データと、第1のコンデンサ3の定格温度(たとえば85℃)における寿命のデータが記憶部11に保存されているが、使用形態によっては、これらのうち1つまたは複数を有しないものとしてもよい。
通信部12は、情報処理部14と通信を行うためのインターフェースである。情報処理部14は、通信部12を介して、制御部10により変換された電圧データ等のデータを得ることができる。情報処理部14としては、たとえば、第1のコンデンサ3を使用する装置(たとえば、インバータ装置等)を制御するためのCPU(Central Processing Unit)等、あるいはPC(Personal Computer)を採用することができる。第1のコンデンサ3を使用する装置を制御するためのCPUを情報処理部14として用い、情報処理部14が通信部12を介して制御部10からデータを得るようなコンデンサの状態推定システム1とした場合には、第1のコンデンサ3を使用する装置が、第1のコンデンサ3の状態を把握できることとなる。そのため、たとえば、第1のコンデンサ3の残余寿命が少なくなった場合に、自動的に第1のコンデンサ3を予備のコンデンサに切替える等の制御が可能となる。
報知部13は、主制御部10aの制御に基づき、色、光、音、振動あるいは画像等の1つまたは複数を出力する出力デバイスである。報知部13は、ユーザに第1のコンデンサ3の残存寿命または/および第1のコンデンサ3の状況を報知できる。報知部13としては、スピーカ、LED(Light Emitting Diode)あるいはディスプレイ等、ユーザに報知できるデバイスであればどのようなものであってもよい。なお、この実施の形態では、文字が表示されるディスプレイを使用している。なお、第1の実施の形態において、報知部13は、制御部10に接続されているものとしているが、報知部13は、情報処理部14に接続されているような形態としてもよい。
上述のようなコンデンサ装置2を用いることで、第1のコンデンサ3を使用したままの状態で、第1のコンデンサ3の残存寿命等を正確に得ることができる。なぜなら、第2のコンデンサ4は、第1のコンデンサ3の一部に収納されているため、第1のコンデンサ3と実質的に同一環境下、すなわち温度で言えば同じ温度下に晒されるからである。
また、封口栓28が凹部38を有し、その凹部38に第2のコンデンサ4を配置する形態であるため、第2のコンデンサ4を第1のコンデンサ3の一部として配置するのが容易である。
次に、第1の実施の形態におけるコンデンサの状態推定システム1の寿命推定方法について説明する。図8は、コンデンサの状態推定システム1において、初期測定情報の測定を行うための動作の流れを説明するフローチャートである。
第1の実施の形態に係るコンデンサの状態推定システム1では、第1のコンデンサ3の寿命を推定するために、第2のコンデンサ4についての温度情報(=温度)と、測定情報(=温度情報を除く)としての端子間電圧値等とを測定する。なお、測定情報としては、端子間電圧値に限らず、充電状態から放電状態までに要する時間や、電流値であってもよい。しかし、電圧値を測定情報とした場合には、測定が容易であるため、より好ましい。また、測定情報とはここでは第1のコンデンサ3または/および第2のコンデンサ4に関する測定値であり、温度情報を含まないものとする。
コンデンサの状態推定システム1を使用する前に、第1のコンデンサ3および第2のコンデンサ4の温度および端子間電圧値を取得し、記憶部11に記憶させる必要がある。しかし、コンデンサの状態推定システム1の使用を開始する際に、それらを測定するような形態であってもよい。なお、本明細書において、コンデンサ装置2の使用を開始する際の温度を「初期温度」という。また、コンデンサ装置2の使用を開始する際の測定情報を「初期測定情報」という。そして、初期温度および初期測定情報の両方を指す場合には、「初期値」という。
まず、第2のコンデンサ4の初期値の測定を行う初期値測定命令を受信したか否かを制御部10が判定する(ステップS101;初期値測定命令受信ステップ)。たとえば、出荷前に初期値測定命令を制御部10に入力しても良いし、コンデンサ装置2が交換されたことを、なんらかの手段により検出して、初期値測定命令を制御部10に入力するようにしてもよい。あるいは、ユーザが、コンデンサ装置2を交換した場合等に、ボタン等を介して初期値測定命令を制御部10に入力してもよい。
第2のコンデンサ4の初期値の測定を行う初期値測定命令を主制御部10aが受信した場合(ステップS101においてYES)には、主制御部10aは、第2のコンデンサ4の温度、放電後の端子間電圧値および放電後所定時間経過後の端子間電圧値の平均値を、初期値として後述の図10に示すフローで取得する(ステップS102;初期値取得ステップ)。
次に、後述の図10のフローで取得された各初期値を、主制御部10aは、記憶部11に記憶させる(ステップS103初期値記憶ステップ)。一方、初期値測定命令を制御部10が受信していない場合(ステップS101においてNO)には、そのまま終了する。
次に、主制御部10aが初期値を取得した後の、コンデンサの状態推定システム1の動作を説明する。図9は、コンデンサの状態推定システム1の動作を説明するフローチャートである。このフローチャートは、コンデンサ装置2の使用中における残存寿命推定フローを示すものである。
コンデンサの状態推定システム1が搭載された装置の電源をオンにすると、制御部10は、その電源オンを検出し、初期化を始める。すなわち、主制御部10aは、各部を制御するためのプログラムを記憶部11より読み出し、各部が使用可能な状態になるよう初期化を行う(ステップS111;初期化ステップ)。
次に、主制御部10aは、その時刻が測定時刻か否かを判定する(ステップS112;測定時刻判定ステップ)。なお、測定時刻として、ユーザが、第2のコンデンサ4の測定を行う頻度を設定できるようにしてもよい。主制御部10aが、その時刻は測定時刻でないと判定した場合には(ステップS112においてNO)、主制御部10aは、算出した残存寿命のうち最新の残存寿命を、報知部13を介して出力(本実施の形態では、ディスプレイに表示)する(ステップS113;推定状態情報出力ステップ)。そして、ステップS112に戻り、測定時刻になるまでステップS112とステップS113を、たとえば一定時間間隔で繰り返す。なお、このステップS112とステップS113とを繰り返さなくてもよい。たとえば、ステップS115を経ない場合には、ステップS113の後、次の測定時刻までの間は、ステップS113を行うことなく同じ表示をそのまま継続させるようにしてもよい。
その時刻が測定時刻であると主制御部10aが判定した場合には(ステップS112においてYES)、主制御部10aは、第2のコンデンサ4の温度情報および測定情報の取得を開始する。すなわち測定を開始する(ステップS114;測定情報取得ステップおよび温度情報取得ステップ)。なお、測定方法の流れは、後で詳述する。
主制御部10aが第2のコンデンサ4の測定情報を取得すると、その得られた測定情報を、記憶部11に記憶されている数式に代入することで、主制御部10aは、第1のコンデンサ3の残存寿命値を推定する(ステップS115;推定状態情報取得ステップ)。なお、算出された残存寿命値は、最新の残存寿命値として報知部13から出力される(ステップS113)。なお、残存寿命値の推定方法は、後で詳述する。
次に、コンデンサの状態推定システム1において、ステップS102およびステップS114に相当する、第2のコンデンサ4の測定情報を取得する際の動作を以下に説明する。
図10は、第2のコンデンサ4の測定情報を取得するための動作の流れを説明するフローチャートである。また、図11は、第2のコンデンサ4の充放電による端子間電圧の変化を縦軸に、時間を横軸に示すグラフである。
本実施の形態において、第2のコンデンサ4は、測定情報の取得時以外の時間は、電圧が印加されていないものとしている。第2のコンデンサ4の測定情報を取得する場合には、まず、主制御部10aは、図1に示すスイッチ6を閉じ、第2のコンデンサ4に電圧を印加することで、第2のコンデンサ4の充電を開始する(ステップS201;充電ステップ)。たとえば、ステップS201では、第2のコンデンサ4を含む直列回路に5Vの電圧を印加する。なお、このとき、図1に示すスイッチ7は、閉じた常態であれば開き、開いた状態であれば開いた状態を維持する。
次に、図11に示すように、所定の充電時間であるs秒(たとえば、4.9秒)の間、充電状態を維持する。次に、主制御部10aは、端子24aと端子24bとの間の電圧値(以下、「Vcc」と表記し、得られた電圧値を「V1」と表す。)を測定し、その測定値を、測定情報として取得する。さらに、温度検出部15により、温度(以下、得られた温度を「T」と表す。)を測定し、温度情報として取得する(ステップS202;V1・T取得ステップ)。
次に、主制御部10aは、スイッチ6を開く一方、スイッチ7を閉じ、第2のコンデンサ4の放電を開始する(ステップS203;放電ステップ)。第2のコンデンサ4の放電開始から所定の時間であるu秒後、たとえば、0.01秒後(図11参照)に、主制御部10aは、第2のコンデンサ4の端子24aと端子24bとの間の端子間電圧値を取得する(ステップS204;端子間電圧測定ステップ)。なお、第2のコンデンサ4における放電過程の端子間電圧は、アンプ9に入力され、その電圧が増幅されて、主制御部10aに入力される。以後、ステップS204において取得された端子間電圧値をV2と表す。
次に、所定の時間であるn秒間(たとえば、0.09秒間)、第2のコンデンサ4は、放電状態で放置される(ステップS205;待機ステップ)。
なお、ステップS201からステップS205までを1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返す。主制御部10aは、所定の繰り返し回数に達したか否かを判定する(ステップS206;繰り返し回数判定ステップ)。なお、所定の繰り返し回数に達していないと、主制御部10aが判定した場合(ステップS206においてNO)、ステップS201に戻る。一方、所定の繰り返し回数に達したと主制御部10aが判定した場合(ステップS206においてYES)、記憶部11に記憶させた所定回数分の各サイクルのデータのうち、最初の1回または複数回数分のデータを除く、残りのデータの平均値を、主制御部10aが算出する(ステップS207;平均値算出ステップ)。たとえば、所定回数を7回として、除く回数を3回とした場合、最初から7回目までが終了したら、ステップS207へ移行する。そして平均値処理では、最初から3回分のデータを捨てて、後半の4回分のデータによって平均値を算出することとなる。
上述のステップS201〜S207の方法で、温度Tの平均値に加えて、測定情報として端子間電圧値V1,V2の平均値を得ることができる。なお、第1の実施の形態において、まず、第2のコンデンサ4をステップS201において充電し、その後、ステップS203において放電しながら、完全に放電する前の端子間電圧値V2を得るものとしたが、充電と放電が逆であっても良い。すなわち、まず放電を行った後に、充電を開始し、完全に充電される前に端子間電圧値を得るような形態であってもよい。また、所定時間のs,u,およびnは、それぞれ各コンデンサの種類等により個々に定められる値であり、充電周期を一定とする値である。充放電周期を一定とすることで、充放電特性が安定するようになるため、より正確な測定値を取得できる。なお、一般に、充電時間sは、放電時間「n+u」よりも十分に大きい数値である。さらに、放電開始から測定するまでの時間uは、測定時刻から次の充電時刻までの時間nよりも小さい数値とするのが好ましい。すなわち、各値は、s>n>uとするのがよい。
次に、第1の実施の形態の残存寿命推定方法において、ステップS115の残存寿命の推定方法について説明する。この残存寿命の推定処理は、すべて主制御部10aが行うものとしているが、全部または一部を外部の情報処理装置14が行うようにしてもよい。
図12は、ステップS115の処理を説明するフローチャートである。すなわち、図12は、ステップS114において得られた第2のコンデンサ4の測定情報から、第1のコンデンサ3の残存寿命を推定するための流れを説明するフローチャートである。
まず、主制御部10aは、ステップS202において取得した温度Tの平均値、第2のコンデンサ4の端子間電圧V1の平均値、放電開始後の所定の時間sの平均値、ステップS204で取得した第2のコンデンサ4の端子間電圧値V2の平均値そして、放電用抵抗体8の抵抗値R2を次の式1に代入する。そして、第2のコンデンサ4の静電容量値Ctを得る(ステップS301;第2のコンデンサの容量取得ステップ)。
なお、まず放電してその後に充電する場合には、次の式2を利用する。式2のR1は、充電用抵抗体6の抵抗値で、VAは、放電前の端子間電圧値で、VBは、充電開始から所定時間m秒後の端子間電圧値である。
次に、第2のコンデンサ4の静電容量値と温度特性から、第2のコンデンサ4の25℃における静電容量値C25を得る(ステップS302;第2のコンデンサの25℃における容量取得ステップ)。第2のコンデンサ4の静電容量の温度に対する特性は、推定用相関情報として記憶部11が記憶している。
次に、記憶部11がステップS103で記憶した初期特性値から得た第2のコンデンサ4の初期の静電容量値C0と、ステップS302で得られた静電容量値C25を、次の式3に代入することにより、第2のコンデンサ4の静電容量の減少量ΔC25を計算する(ステップS303;第2のコンデンサの25℃における容量値減少量算出ステップ)。
次に、第2のコンデンサ4の静電容量の減少量ΔC25に基づき、第1のコンデンサ3の初期の静電容量値からの減少量ΔCM25を推定する(ステップS304;第1のコンデンサの25℃における減少量推定ステップ)。この推定は、減少量ΔCM25と、ステップS303において得られた減少量ΔC25との相関関係を示す推定用相関情報より、第1のコンデンサ3の静電容量値の減少量ΔCM25を推定できる。なお、この推定用相関情報は、記憶部11に記憶されている。この推定用相関情報は、一方が大きくなれば他方も大きくなる正比例関係の式であってもよいし、正比例関係ではなく、相関関係が曲線となるような式としてもよい。
次に、定格温度(たとえば、85℃)における第1のコンデンサ3の使用経過時間(以後、経過寿命という。)と、ステップS304において得られた静電容量の減少量ΔCM25との関係を示す推定用相関情報より、第1のコンデンサ3の定格温度における経過寿命trを取得する(ステップS305;第1のコンデンサの定格温度における経過寿命推定ステップ)。なお、ステップS305にて用いる上述の推定用相関情報も記憶部11に保存されている。なお、この推定用相関情報は、一方が大きくなれば他方も大きくなる正比例関係のものとされているが、正比例関係ではなく、相関関係が曲線となるものとしてもよい。
さらに、記憶部11が有する第1のコンデンサ3の定格温度(たとえば、85℃)における寿命と、ステップS305において得られた経過寿命trより、第1のコンデンサ3の定格温度における残存寿命taを算出により推定する(ステップS306;定格温度における残存寿命推定ステップ)。
次に、ステップS307に移行し、動作温度における残存寿命tbを算出により推定する。具体的には、第2のコンデンサ4の温度Tの平均値を第1のコンデンサ3の動作温度と同じであるとして、次の式4に示すアレニウスの式に代入することで、動作温度における第1のコンデンサ3の残存寿命tbを算出により推定できる。なお、Tcは、定格温度を表す。
以上のようにして、まず、第2のコンデンサ4の温度および電圧値等を測定することで温度情報および測定情報を取得する。そして、その温度情報および測定情報を、推定用相関情報としての式およびパラメータ等で処理することにより、第1のコンデンサ3の残存寿命tbをより正確に推定できる。すなわち、第1のコンデンサ3を停止させることなく、第1のコンデンサ3の残存寿命tbを正確に推定することができる。また、第1のコンデンサ3が使用不可能になる前に第1のコンデンサ3を交換できる。さらに、第1のコンデンサ3の残存寿命tbが正確に推定できるため、第1のコンデンサ3の寿命が尽きる直前まで第1のコンデンサ3を使用することができる。
また、上述のような寿命推定方法を用いると、第1のコンデンサ3の残存寿命をより正確に推定することができる。なぜなら、第2のコンデンサ4は、第1のコンデンサ3と実質的に同じ温度下に晒されているため、第2のコンデンサ4の測定情報と、記憶部11に保存されている推定用相関情報とから推定される第1のコンデンサ3の特性値は、第1のコンデンサ3の実際の特性値からのずれが小さいものとなるためである。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係るコンデンサの状態推定システム1について図面を参照して説明する。第2の実施の形態に係るコンデンサの状態推定システム1は、第1の実施の形態に係るコンデンサの状態推定システム1とは、主にコンデンサ装置の形状において異なる。以下の説明においては、その異なる部分を中心に説明すると共に、第1の実施の形態と同一または同種の部材については、同一の符号をなし、その説明を省略または簡略化する。
図13は、第2の実施の形態のコンデンサ装置60の外観図である。このコンデンサ装置60は、第1の実施の形態のコンデンサ装置2に相当するものである。
コンデンサ装置60は、第1の実施の形態の第1のコンデンサ3と異なる第1のコンデンサ61および第2のコンデンサ63を有する。コンデンサ装置60において、第1のコンデンサ61から伸びる端子62a,62bは、第1の実施の形態におけるコンデンサ装置2の端子23a,23bと同様である。しかし、コンデンサ装置60において、第2のコンデンサ63と接続される端子64a,64bは、コンデンサ装置60の外周に沿ってZ1方向に立設している。また、コンデンサ装置60の有する封口栓(不図示)は、その中央部分に凹部38を有さない。しかし、コンデンサ装置60の有する封口栓(不図示)は、端子64a,64bとZ方向に重なる位置に2つの貫通孔(不図示)を有する。
図14は、コンデンサ装置60が有する第2のコンデンサ63の斜視図である。図15は、第2のコンデンサ63の各層の状態を説明するための平面図である。なお、図を見やすくする目的で、図15は図14と縮尺を変えている。
第2のコンデンサ63は、折曲部71と2つのタブ72a,72bを主に有する。第2のコンデンサ63は、折り曲げられない陽極箔73を挟みこむようにして、折曲部71を配置している。すなわち、折曲部71は、隔離紙74、陰極箔75および隔離紙76がこの順で重ねられ、Z軸方向に伸びる折り目により、長辺を2分割するように、隔離紙74を内側にして折りたたまれている。また、その対向する隔離紙74の面の間には、略長方形の陽極箔73が配置されている。また、陽極用のタブ72aは、陽極箔73に接するように陽極箔73と隔離紙74との間に配置されて、Z1方向に伸びている。さらに、陽極箔73とY方向に重ならない位置で、陰極用のタブ72bは、陰極箔75に接するように陰極箔75と隔離紙74との間に挟まれて配置され、Z1方向に伸びている。
図16は、コンデンサ装置60が有するコンデンサ素子80を説明する分解斜視図である。
コンデンサ素子80は、第1のコンデンサ61を構成する巻回部81、2つのタブ82,82、および第2のコンデンサ63から主に構成される。巻回部81は、陽極箔83と陰極箔84との間に隔離紙85が介在されてなる積層体が、巻回されることで構成されている。陽極箔83および陰極箔84は、巻回部81の外側に位置するその長手方向の端部から離れて配置されている。
また、巻回部81の陽極箔83および陰極箔84は、隔離紙85よりも、巻回部81の巻回方向の長さが短い。したがって、巻回部81の巻回方向の端部は、陽極箔83および陰極箔84が配置されていない。その陽極箔83および陰極箔84が配置されていない領域には、第2のコンデンサ63が配置されている。したがって、第2のコンデンサ63は、巻回部81の内部に一緒に巻回され、巻回部81と同じ電解液が浸透している。なお、第1のコンデンサ61は、第2のコンデンサ63以外の部分となる。
上述のような巻回部81をケース21に収納し、タブ72a,72bを端子64a,64bに電気的に接続することで、タブ72a,72bを介して端子64a,64bは、第2のコンデンサ63の端子として機能する。同様に、タブ82,82を端子62a,62bに電気的に接続することで、タブ82,82を介して陽極箔83および陰極箔84と端子62a,62bをそれぞれ電気的に接続できる。すなわち、端子62a,62bは、第1のコンデンサ61の端子として機能する。
上述のようなコンデンサ装置60を用いることで、第1のコンデンサ61の残存寿命をより正確に推定できる。なぜなら、第1のコンデンサ61の中で最も高温になりやすい巻回部81の内部に状態検出用の第2のコンデンサ63が配置されているためである。また、第1のコンデンサ61と第2のコンデンサ63とで、電解液を共有しているため、第1のコンデンサ61と第2のコンデンサ63との温度をより近いものとすることができる。
以上の第1の実施の形態および第2の実施の形態の残存寿命の測定方法の概略を図17にまとめて示す。ここで、推定用相関情報とした数式等は、テーブルとしてもよい。テーブルとしては、後述の、図18に示す残存寿命テーブル90等が挙げられる。図18の参照方法および作成方法の一例は、第3の実施の形態において説明する。
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態に係るコンデンサの状態推定方法について図面を参照して説明する。第3の実施の形態に係るコンデンサの状態推定方法で用いるコンデンサの状態システムは、図1に示す構成とほぼ同様である。また、第3の実施の形態において、第1の実施の形態に係るコンデンサ装置2ではなく、コンデンサ装置60を採用しても良い。
第3の実施の形態に係るコンデンサの状態推定方法において、ステップS111〜S114については、第1の実施の形態に係るコンデンサの状態推定方法と同様であるが、推定残存寿命を求めるステップS115が異なる。すなわち、第3の実施の形態に係るコンデンサの状態推定方法においては、推定用相関情報として第2のコンデンサ4の測定情報(端子間電圧値)および温度情報と、第1のコンデンサの推定残存寿命と、の相関関係について予め算出したもの(残存寿命テーブル90)を用いて第1のコンデンサの推定残存寿命値を求めることとしている。
図18は、第3の実施の形態に係るコンデンサの状態推定方法における推定用相関情報としての残存寿命テーブル90の概念図である。
残存寿命テーブル90は、第2のコンデンサ4における所定間隔の端子間電圧毎、所定間隔の温度毎に対応して、第1のコンデンサの推定残存寿命値が相関付けられている。そのため、ステップS114で得られる測定情報および温度情報を、残存寿命テーブル90にあてはめると、それに対応する情報が第1のコンデンサ3の推定残存寿命として抽出される。
図19は、第3の実施の形態に係るコンデンサの情報推定方法における、残存寿命テーブル90の作成方法を示す概念図である。
残存寿命テーブル90各マトリックスは、以下のようにして求められる。まず、ステップS101〜S103を実行し、主制御部10aが予め初期値を測定する。次に、予め、ステップS301〜S307を所定間隔の端子間電圧毎、所定間隔の温度毎に行って、各端子間電圧、各温度について第1のコンデンサの推定残存寿命値を計算する。すなわち、端子間電圧値V2が図18の「V2値」となり、かつ、動作温度が図18の「T値」となる条件で動作させたときの、第1のコンデンサ3の推定残存寿命値を予め計算し、図18のマトリックスの1点とする。これを、所定間隔の端子間電圧毎、および所定間隔の温度毎に繰り返すことで図18のマトリックスが得られる。
たとえば、情報処理部14が、初期値、所定間隔の端子間電圧および所定間隔の温度を、基本相関情報(たとえば、前述の式1〜4の情報等から成る。)に代入することで、各端子間電圧および各温度について、第1のコンデンサの推定残存寿命値が求められる。このように作成された残存寿命テーブル90は、記憶部11に記憶される。なお、図18の残存寿命テーブル90は、V1の値が3Vの場合の一例であり、表中の数値は時間を示す。
残存寿命テーブル90を作成するために、主制御部10aが残存寿命テーブル90を算出するようにしてもよいが、通信部12を介して外部の情報処理部14にて行うことも可能である。外部の情報処理部14にて残存寿命テーブル90の作成を行う場合には、基板22の主制御部10a(たとえば、CPU等の演算デバイス等)を処理能力の低いものにできる。
コンデンサの状態推定システム1が搭載された装置が稼動する際には、ステップS114において、たとえば、温度Tの平均値として30℃および端子間電圧V2の平均値として2.3Vが得られた場合、主制御部10aが残存寿命テーブル90を参照することで、残存時間は、1868時間というデータを第1のコンデンサの推定残存寿命値として得ることができる。この残存寿命テーブル90を利用して、各測定情報における残存寿命をすばやく得ることができる。また、たとえば、取得した測定情報が、各値の間にくる場合は、周囲の値のうち一番小さい値としてもよいし、その周囲の値の平均をとるようにしてもよい。平均値を求める場合は、たとえば、V2が2.35Vで、Tが57℃の場合、残存寿命テーブル90上の位置は、図18の黒点Kの位置となる。したがって、その黒点の周囲の4つの値である1517,1575,2006,2068の4つの平均値を求めると、1791となる。このため、V2が2.35Vで、Tが57℃の場合、残存寿命は、1791時間と算出できる。
なお、図18は、縦軸を温度Tとし、横軸を端子間電圧値V2としているがこのような形態に限らない。また、ENDと表示されているのは、その条件では、残存寿命時間が既にないことを示している。たとえば、図18において、Tが85℃、V2が1.9Vの場合には、既に残存寿命時間はない旨の情報を主制御部10aが得る。さらに、ERRORと表示されているのは、その条件では、ありえないことを示している。この例では、3000時間が最大残存時間であり、sの値を越える値となるようなところは、ERRORと表示されている。なお、図18の残存寿命テーブル90は、V1の値が3Vの場合であり、表中の数値は時間を示す。
第3の実施の形態に係る残存寿命の推定方法を採用すると、主制御部10aの演算のための負担が軽いものとなる。なぜなら、ステップS301〜S307を予め行って残存寿命テーブル90を作成しているため、主制御部10aは、ステップS115において、残存寿命テーブル90を参照すれば、残存寿命を容易に得ることができるからである。
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は、上述の各形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。たとえば、上述の実施の形態においては、制御部10は、第2のコンデンサ4の温度を示す温度情報および電圧値を示す測定情報を取得すると共に、その温度情報および測定情報を処理し推定状態情報として第1のコンデンサ3の残存寿命を出力するものとしたが、このような形態に限らない。推定状態情報としては、残存寿命に関係ある他の情報を出力しても良い。
また、上述の各実施の形態では、制御部10は、温度検出部15から得た温度を、寿命推定の際に用いているが、温度情報は、必須ではない。変形例を示す概略図である図20のように、温度検出部15を有さない形態であってもよい。同様に、温度情報取得ステップは、必須ではない。たとえば、常に一定の範囲内の温度に第1のコンデンサ3が保たれている場合等には、その温度を温度Tとして用いればよいため、温度検出部15から温度情報を得る必要がない。さらに、温度情報を得ない場合には、残存寿命を推定するための処理が簡単なものとなる。
また、上述の各実施の形態では、制御部10は、記憶部11を有すると共に、その記憶部11には、推定用相関情報を記憶するものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、別の変形例を示す概略図である図21のように、記憶部11を有さないものであってもよい。
また、第1の実施の形態等において、第2のコンデンサ4の測定情報を取得する間、すなわち測定時以外は、第2のコンデンサ4に電圧を印加しないものとしたが、このような形態に限らない。第2のコンデンサ4の測定時以外は、常に所定の電圧を第2のコンデンサ4に印加するような形態としてもよい。常に所定の電圧を第2のコンデンサ4に印加することにより、電解液と接している陽極箔35あるいは陰極箔36の酸化皮膜が常に修復されるためその点では好ましいものとなる。
また、上述の各実施の形態では、各部品に係る寸法あるいは形状を例示しているが、例示された寸法あるいは形状等に限定されるものではない。たとえば、上述の各実施の形態において、ケース21,50は、円柱形状であるものとしているが、このような形状に限らない。たとえば、コンデンサ素子27,51,81が円柱形状でない場合には、そのコンデンサ素子27,51,81の形状に合わせた形状として、四角柱あるいは球等様々な形状を採用できる。また、コンデンサ素子27,51,81と異なる形状のケース21,50を採用してもよい。たとえば、コンデンサ素子27,51,81が円柱形状であっても、ケース21,50を直方体形状とすることもできる。しかし、ケース21,50の形状をコンデンサ素子27,51,81に沿った形状とすることで、第1のコンデンサ3,61,第2のコンデンサ4,63およびコンデンサ装置2,60をより小型化できる。
また、第1の実施の形態では、第2のコンデンサ4は、第1のコンデンサ3の封口栓28の一部である凹部38に配置されているが、このような形態に限らない。第2の形態のように、ケース21の内方に配置されていてもよい。あるいは、第2のコンデンサ4が第1のコンデンサ3のケース21の一部等であってもよい。
また、第2の実施の形態では、第2のコンデンサ63の端子64は端子64a,64bを有する形態としているが、このような形態に限らない。第2のコンデンサ63の折り曲げ部は、陰極箔を有さない場合には、陽極側の端子64aのみを有するような形態としてもよい。その場合には、端子64aと、第1のコンデンサ61の陰極側の端子62bの間の端子間電圧を測定することで、第2のコンデンサ63の測定情報を得ることができる。
また、寿命を推定したいコンデンサが複数存在し、それらのコンデンサが互いに隣接して稼動している場合等に、すべてのコンデンサを上述の実施の形態のコンデンサ装置2,60とするのが最も望ましい。しかし、複数のコンデンサのうち、最も高温になることが予想されるコンデンサに本発明のコンデンサの状態推定システム1を設けてもよい。たとえば、複数のコンデンサが配置されている場合に、略中央に位置するコンデンサは、周囲のコンデンサの熱により、比較的高温になりやすい傾向があるため、略中央に位置する所にコンデンサ用寿命推定システム1を設けるのが好ましい。
また、第2のコンデンサ4が、第1のコンデンサ3から接離可能に配置されていてもよい。あるいは、コンデンサの状態推定システム1のうち、第1のコンデンサ3および情報処理部14を除いた構成要素から構成されるコンデンサの状態推定ユニット1Aが、第1のコンデンサ3や第1のコンデンサ3の周囲に配置できるようにしてもよい。このような場合には、コンデンサの状態推定ユニット1Aを、所望のコンデンサにのみ取り付けたり、すでに設置してあるコンデンサに対して後付けしたりすることができる。また、交換された新たな第1のコンデンサ4の状態を推定するために、新たなコンデンサの状態推定ユニット1Aではなく、第2のコンデンサ4のみを交換したコンデンサの状態推定ユニットを再利用することができる。
また、第1の実施の形態において、ステップS102では、主制御部10aは、第2のコンデンサ4のある温度に対する初期測定情報を取得するものとしているが、このような形態に限らない。たとえば、温度条件等のパラメータを変化させて測定することで、パラメータ毎の初期測定情報を取得してもよい。このように測定条件を変化させた測定情報を得ることで、より信頼性の高い初期値を得ることができる。
また、各実施の形態において、推定状態情報として残存寿命を出力するものとしているが、残存寿命以外の推定状態情報を出力しても良い。たとえば、経過時間や、定格温度における寿命を出力してもよく、それらのうち複数を出力するようなものとしてもよい。
また、各実施の形態において、報知部13は、コンデンサ装置2,60に設けられているものとしているが、このような形態に限らない。たとえば、報知部13は、外部にあってもよいし、ネットワーク等を通じて他の場所からアクセスできるようなシステムとしてもよい。
また、上述の各実施の形態のコンデンサの状態推定システム1が有する各構成ブロックの機能は、全てまたはその一部をソフトウェアによって実現しても、あるいはその少なくとも一部をハードウェアで実現しても良い。たとえば、制御部10における処理の全部またはその一部は、1または複数のプログラムによりコンピュータ上で実現しても良く、その少なくとも一部をハードウェアで実現しても良い。