次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図1を参照すると、画像表示装置は、制御手段1、光検出手段2、蛍光スクリーン3、走査手段4、励起光源5および駆動部6を有する。
蛍光スクリーン3は、面内方向に周期的に配置された複数の蛍光体領域を備える。
図2に、蛍光スクリーン3の一部の構成を示す。図2に示すように、蛍光スクリーン3は、ブラックストライプ34により区画された複数の蛍光体領域31〜33を有する。
蛍光体領域31は、例えば赤色の蛍光を発光する蛍光体が形成された領域である。蛍光体領域32は、例えば緑色の蛍光を発光する蛍光体が形成された領域である。蛍光体領域33は、例えば青色の蛍光を発光する蛍光体が形成された領域である。蛍光体領域31、32、33はこの順番で一定方向に周期的に形成されている。
蛍光スクリーン3の蛍光体領域31〜33が形成された面は、複数の画素30に区画されている。便宜上、図2には1つの画素30(点線で示した矩形の領域)しか示されていないが、実際は、画素30はマトリクス状に配置され、それぞれの画素30は、蛍光体領域31〜33を含む。
再び図1を参照する。励起光源5は、蛍光スクリーン3上に形成された蛍光体を励起するための励起光(例えば紫外線)を出力する。励起光源5は、例えばレーザダイオード(LD)に代表されるレーザ光源であって、供給される電力の量に応じて出力される励起光の強度が変化する。
駆動部6は、制御手段1からの制御信号に従って励起光源5に電力を供給する。駆動部6から励起光源5に供給される電力量は制御手段1によって決定される。すなわち、励起光源5から出力される励起光の輝度は、制御手段1によって制御される。なお、駆動部6は、励起光源5内に設けられてもよい。
走査手段4は、励起光源5からの励起光で蛍光スクリーン3を波線状の走査軌跡1aのように走査する。走査軌跡1aによれば、水平方向(図面に向かって左右方向)に往復走査しながら、垂直方向(図面に向かって上下方向)への走査を行うことで、蛍光スクリーン6全体が励起光で走査される。
走査手段4は、水平方向の走査を行う水平走査ミラーと垂直方向の走査を行う垂直走査ミラーで構成されてもよいし、水平および垂直の両方向の走査を行う2次元走査ミラーで構成されてもよい。水平走査ミラーや垂直走査ミラーとして、例えばポリゴンミラーやガルバノミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等を用いることができる。2次元走査ミラーとしては、例えば二次元の走査が可能なMEMSミラーを用いることができる。
図3に、走査手段4の一例を示す。
図3に示す走査手段4は、水平方向の走査を行うMEMSミラー4aと、垂直方向の走査を行うガルバノミラー4bとを有する。励起光源5からの励起光は、コリメートレンズ5aを介してMEMSミラー4aに入射する。MEMSミラー4aで反射された励起光は、ガルバノミラー4bに入射する。ガルバノミラー4bで反射された励起光は、蛍光スクリーン3上に照射される。
図4に、走査手段4の別の例を示す。
図4に示す走査手段4は、水平方向の走査を行う走査ミラーとして、MEMSミラー4aに代えてポリゴンミラー4cを用いたものである。励起光源5からの励起光は、コリメートレンズ5aを介してポリゴンミラー4cに入射する。ポリゴンミラー4cで反射された励起光は、ガルバノミラー4bに入射する。ガルバノミラー4bで反射された励起光は、蛍光スクリーン3上に照射される。
再び図1を参照する。光検出手段2は、蛍光スクリーン3の蛍光体領域31〜33が形成された面と対向するように配置されており、蛍光体領域31〜33から放出される各色の蛍光を検出する。光検出手段2は、波長選択フィルタ2a、集光レンズ2bおよびフォトダイオード2cを有する。
波長選択フィルタ2aは、各色の蛍光を透過し、これら蛍光の波長域以外の光を反射または吸収する特性を有する。集光レンズ2bは、波長選択フィルタ2aを透過した蛍光をフォトダイオード2cの受光面上に集光する。フォトダイオード2cは入射光量に応じて出力値が変化するものであって、その出力信号(光検出手段2の出力信号)は、制御手段1に供給されている。
制御手段1は、映像信号に基づいて走査手段4および駆動部6を制御することで画像を蛍光スクリーン3に表示させる。映像信号は、不図示の外部装置から制御手段1に供給される。外部装置は、例えばパーソナルコンピュータや映像再生装置等である。
制御手段1は、走査手段4で蛍光スクリーン3を走査した場合の、励起光のスポットが各画素30を通過するタイミングを示す照射タイミング制御用データを予め保持し、この照射タイミング制御用データを参照して、励起光源5の発光タイミングを制御する。
また、初期設定として走査手段4による1画素当たりの走査回数はn回とし、画素毎に、n回の走査のうちの2回目以降の走査で、当該画素から放出される蛍光の積算輝度値が最終目標輝度値となるように励起光源5から出力される励起光の輝度(これは電力供給量に対応する)を調整する。ここで、最終目標輝度値は各画素30について個別に設定される。具体的には、制御手段1は、映像信号から各画素30の輝度データを取得し、その輝度データに基づいて各画素30の最終目標輝度値を決定する。
図5に、制御手段1の輝度調整に係わる処理を行う部分の具体的な構成を示す。
図5を参照すると、制御手段1は、輝度調整部10、輝度値算出部11および輝度値記憶部12を有する。
光検出手段2の出力信号は、輝度値算出部11に供給されている。輝度値算出部11は、蛍光スクリーン3の各画素30のそれぞれについて、n回の各走査において、光検出手段2の出力信号に基づいて当該画素から放出された蛍光の輝度値を取得し、取得した輝度値を、当該画素を識別する識別情報および走査回数の情報と対応付けて輝度値記憶部12に格納する。このように、n回の各走査における輝度値が、画素30別に輝度値記憶部12に格納される。
輝度調整部10は、蛍光スクリーン3の画素30のそれぞれについて、映像信号から対応する画素の輝度データを取得し、その輝度データに基づいて、対応する画素の最終目標輝度値を決定する。
輝度調整部10は、励起光源5に供給される電力値p(これは励起光の輝度に対応する)と、励起光源5からの励起光で蛍光体領域を走査した場合にその蛍光体領域から放出される蛍光の輝度値P0(光検出手段2の出力値)との対応関係を示す特性データ(電力値pの変化に対する輝度値P0の変化を表すデータ)を保持している。
輝度調整部10は、1回目から(n−1)回目までの各走査において、光検出手段2の出力信号に基づいて画素30から放出された蛍光の輝度値Pを取得するととともに、保持した特性データを参照し、励起光源5に供給した電力値に対応する蛍光の輝度値P0を求める。そして、輝度調整部10は、各走査において、輝度値Pおよび輝度値P0に基づいて、輝度効率η(η=P/P0)を算出する。
また、輝度調整部10は、1回目から(n−1)回目までの各走査において、次回の走査時の目標輝度値Ptを算出する。
例えば、k+1回目の走査時の目標輝度値Pt(k+1)は、k回目の走査までの積算輝度値をS(k)、画素に対して設定された最終目標輝度値をStとしたとき、次式で表される。
Pt(k+1)=(St−S(k))/(n−k)/η(k)
このとき、
S(k)=S(k−1)+P(k)
S(0)=0
積算輝度値S(k)は、輝度値記憶部12に格納された、1回目からk回目までの走査において得られた輝度値の積算値(累積値)である。η(k)は、k回目の走査時に得られた輝度効率である。S(k−1)は、1回目から(k−1)回目の走査において得られた輝度値の積算値(累積値)である。
輝度調整部10は、上記の式から求めた目標輝度値Pt(k+1)を、保持している特性データにおける輝度値P0と見做し、k+1回目の走査時の電力値pを取得する。そして、輝度調整部10は、その取得した電力値pを励起光源5に供給するための制御信号を駆動部6に供給する。
次に、本実施形態の画像表示装置の動作を具体的に説明する。
本実施形態の画像表示装置では、1画素当たりn回の走査が行われ、2回目以降の走査時に輝度調整が行われる。
図6は、1画素をn回走査する場合の輝度調整処理の一手順を示すフローチャートである。以下、図5および図6を参照して輝度調整処理を説明する。
輝度調整部10は、現在の走査回数を示すkを保持しており、そのkの値を0に設定する(ステップS10)。
次に、輝度調整部10は、映像信号が入力されると、その入力映像信号に基づいて、対応する画素の最終目標輝度値を決定する(ステップS11)。そして、輝度調整部10は、保持している特性データを参照して、最終目標輝度値のn分の1の輝度値に対応する電力値を取得する(ステップS12)。
次に、輝度調整部10は、現在保持しているkの値に1を加える(ステップS13)。その後、輝度調整部10は、ステップS12で取得した電力値に対応する電力が励起光源5に供給されるように駆動部6を制御するとともに、対応する画素が励起光源5からの励起光で走査されるように走査手段4を制御する(ステップS14)。そして、輝度値算出部11が、光検出手段2の出力信号に基づいて、対応する画素から放出された蛍光の輝度値を取得し、その取得した輝度値を、対応する画素を識別する識別情報および走査回数の情報と対応付けて輝度値記憶部12に格納する(ステップS15)。
次に、輝度調整部10は、保持しているkの値がnに達したか否かを判定する(ステップS16)。
kの値がnに達していない場合は、輝度調整部10は、保持している特性データを参照し、ステップS12で取得した電力値から輝度値(P0)を算出し、この輝度値(P0)とステップS15で取得した輝度値(P)とに基づいて、今回の走査における輝度効率ηを算出する。さらに、輝度調整部10は、輝度値記憶部12から今回の走査までの積算輝度値を取得する(ステップS17)。そして、輝度調整部10は、最終目標輝度値、輝度効率ηおよび積算輝度値に基づいて、次回の走査の目標輝度値を算出し、その目標輝度値から、保持している特性データを参照して次回の走査時の電力値を決定する(ステップS18)。
ステップS18を実行後は、ステップS13に戻る。これ以降は、kの値がnに達するまでステップS13〜S18の処理が繰り返される。この繰り返しにおいて、ステップS14では、ステップS12で取得した電力値に対応する電力を励起光源5に供給する処理に代えて、ステップS18で取得した電力値に対応する電力を励起光源5に供給する処理が行われ、ステップS17では、ステップS12で取得した電力値に基づいて輝度値(P0)を取得する処理に代えて、ステップS18で取得した電力値に基づいて輝度値(P0)を取得する処理が行われる。
以上の輝度調整処理によれば、各画素30において、n回の走査のうちの2回目以降の走査で輝度調整が行われ、これにより、n回の走査のそれぞれにおいて検出された輝度値の合計(積算輝度値)が最終目標輝度値となる。よって、映像信号に対応した正確な輝度を有する蛍光画像を適切な色純度で蛍光スクリーン3上に表示することができる。
また、本実施形態の画像表示装置によれば、走査手段4として、MEMSミラーに代表される共振型ミラーが用いられた場合(例えば、図3に示した構成)に、以下のような効果を奏する。
共振型ミラーは、ミラー部とこのミラー部を回転可能に支持する捩じりバネ部とからなる振動体と、この振動体が固定される固定部と、捩じりバネ部をその共振周波数で変形させることでミラー部を往復振動させる駆動部とを有する。
上記の共振ミラーにおいては、励起光の一部がミラー部分で吸収されることで、ミラー部分の温度が急激に上昇する。ミラー部の温度上昇によって捩じりバネ部の剛性が変化し、それにより捩じりバネ部の共振周波数が変化する。捩じりバネ部の共振周波数が変化すると、それに伴って偏向角が変化する。この場合、励起光を適切なタイミングで照射することができなくなり、その結果、蛍光体領域への励起光の照射時間が変化して、映像信号に対応した正確な輝度を有する蛍光体領域を適切な色純度で表示することが困難となる。
上記のようなミラー部の温度上昇による捩じりバネ部の共振周波数の変化は非常に短い期間において生じる。本実施形態では、1フレームの期間内において、画素毎に輝度調整を行うので、そのような短い期間で生じる輝度変化に対しても、上記の効果(映像信号に対応する正確な輝度を有する蛍光画像を適切な色純度で表示する効果)を得ることができる。
また、本実施形態の画像表示装置では、1画素当たりn回の走査を行うが、画素内の蛍光体領域を励起光のスポットが通過する領域は、各走査で同じであっても、異なっていてもよい。画素内の蛍光体領域を励起光のスポットが通過する領域が各走査で異なる場合は、画素内の蛍光体領域を励起光のスポットが通過する領域が各走査で同じである場合に比較して、励起光の照射による蛍光体へのダメージを少なくすることができる。
図7に、1画素当たり3回の走査を行う場合の励起光のスポットの移動経路を模式的に示す。画素30は、ブラックストライプ34により区画された蛍光体領域31〜33を含む。1回目の走査において、励起光のスポット35は、画素30内の領域を左から右へ向かって進む。2回目の走査において、励起光のスポット35は、画素30内の領域を右から左へ向かって進む。3回目の走査において、励起光のスポット35は、画素30内の領域を左から右へ向かって進む。各走査の励起光のスポット35が通過する領域は互いに異なる。
上記の場合、各走査において、励起光のスポット35が通過する領域では蛍光体にダメージを受けるが、そのダメージの大きさは、励起光のスポット35が毎回同じ領域を通過する場合に比較して小さい。
また、本実施形態の画像表示装置において、蛍光スクリーン3の一方の面(観察側の面)から放出される蛍光量は、蛍光スクリーン3の他方の面(励起光源5側の面)から放出される蛍光量とほぼ同じである。すなわち、蛍光スクリーン3の一方の面の面内における蛍光量の変化は、蛍光スクリーン3の他方の面の面内における蛍光量の変化と一致する。したがって、光検出手段2は、蛍光スクリーン3の一方の面および他方の面のいずれに配置されてもよいが、光検出手段2が蛍光スクリーン3の一方の面(観察側の面)側に配置した場合は、外乱光などの影響により、蛍光量を正確に検出することが困難となる場合がある。本実施形態では、光検出手段2は蛍光スクリーン3の他方の面(励起光源5側の面)に配置されている。これにより、光検出手段2を筐体内部に収容することができるため、そのような外乱光の影響を抑制することができる。
また、本実施形態の画像表示装置によれば、特許文献1に記載のような1画素当たりの走査回数が1回であるもの(以下、比較例)と比較して、以下のような効果も奏する。
蛍光体領域から放出される蛍光の輝度は、蛍光体領域に照射される励起光の強度およびその励起光が蛍光体領域に照射されている時間に依存する。励起光の強度が大きなほど、蛍光の輝度は大きくなり、また、照射時間が長いほど、蛍光の輝度は大きくなる。
本実施形態および比較例ともに、励起光の強度および走査速度が同じであると仮定する。例えば、強度Imaxの励起光で蛍光体領域を走査した場合に最大輝度Lmaxを得る場合、本実施形態では、仮に2回目以降の輝度調整が不要であると仮定すると、n回の走査のそれぞれにおける励起光の強度は、Imaxのn分の1とされる。この場合、励起光のパワーPに対するマージンは、ImaxとImax/nとの差分のパワーPに対する割合で与えられる。
一方、比較例では、最大輝度Lmaxを得る場合、強度Imaxの励起光で蛍光体領域を走査することになる。この場合の励起光のパワーPに対するマージンは、ImaxのパワーPに対する割合で与えられ、この値は、本実施形態よりも小さい。
このように、本実施形態によれば、励起光のパワーPに対して大きなマージをとることができる。
(第2の実施形態)
蛍光スクリーン上を励起光で走査して蛍光画像を表示する画像表示装置においては、振動や歪み、温度や湿度などの環境変化、重力の影響、経年変化といった様々な要因によって、蛍光スクリーンの蛍光量の面内均一性が低下することに加えて、走査系と蛍光スクリーンとの相対的な位置関係も変化する。
走査系と蛍光スクリーンとの相対的な位置関係が変化すると、各画素の蛍光体領域に対して、励起光を適切なタイミングで照射することができなくなる。その結果、各色の蛍光体領域からの蛍光の輝度が変化して、蛍光画像の色純度が低下するといった問題を生じる。
映像信号に基づく正確な輝度を有する画像をより適切な色純度で蛍光スクリーン3上に表示するためには、第1の実施形態で説明した輝度調整に加えて、各画素30に対して励起光を適切なタイミングで照射するための制御を行う必要がある。
以下、本発明の第2の実施形態として、そのような制御を行う画像表示装置について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態である画像表示装置の構成を示すブロックである。
図8に示す画像表示装置は、第1の実施形態の画像表示装置と同じ構成を有するが、ブラックストライプが再帰反射性を有する点およびブラックストライプからの再帰反射光を検出する光検出手段7を備える点が、第1の実施形態の画像表示装置と異なる。図8中、第1の実施形態の画像表示装置と同じ構成には同じ符号を付している。
蛍光スクリーン3は、図2に示したブラックストライプ34に代えて、再帰反射性ブラックストライプ64を有する。すなわち、蛍光スクリーン3は、面内方向に周期的に配置された蛍光体領域31〜33を有し、これら蛍光体領域31〜33の間の領域が、入射した光をその入射方向と反対の方向に折り返す反射領域である再帰反射性ブラックストライプ64とされている。
図9Aに、再帰反射性ブラックストライプ64の一例を示す。
図9Aを参照すると、再帰反射性ブラックストライプ64は、複数のガラスビーズ64aがブラックストライプ60上に設けられた構成を有する。ガラスビーズ64aは、球状であって、大凡その半球部分がブラックストライプ60の表面に埋め込まれている。ガラスビーズ64aの残りの半球部分は、ブラックストライプ60の表面から露出している。
励起光源5からの励起光のスポットがブラックストライプ60上を通過する際、励起光がガラスビーズ64aの露出した表面に入射する。入射光は、表面側の境界面(ガラスビーズ64aの表面と空気との境界)で屈折する。ガラスビーズ64a内に入射した光は、ガラスビーズ64aとブラックストライプ60との境界面で反射され、その反射光が表面側の境界面から出射される。反射光が表面側の境界面を通過する際に屈折し、その境界面からの出射光は、再帰反射光として、入射光とは反対の方向に進行する。
ガラスビーズ64a内に入射した光をガラスビーズ64aとブラックストライプ60との境界面で反射させるために、例えば、ブラックストライプ60に反射性の材料が含まれていてもよい。あるいは、ガラスビーズ64aの球面全体が半透過・半反射性の膜で覆われていてもよい。
ガラスビーズ64aとブラックストライプ60との境界面の一点において、焦点を結ぶように、ガラスビーズ64aを設計することで、確実に入射光とは反対の方向に、再帰反射光を進行させることができる。
このようなガラスビーズ64aよりなる再帰反射領域64は、スクリーン印刷を用いて形成することができる。
図9Bに、再帰反射性を有するブラックストライプの他の例を示す。
図9Bを参照すると、再帰反射性ブラックストライプ64は、マイクロプリズム64bがブラックストライプ60上に一様に設けられた構成を有する。マイクロプリズム64bは、断面形状が三角形状の複数のプリズムからなり、それぞれのプリズムの頂角は90°である。マイクロプリズム64bは、各プリズムの頂角側がブラックストライプ60に埋め込まれるように形成されており、各プリズムの底部によって平面(入出射面)が形成されている。
励起光源5からの励起光のスポットがブラックストライプ60上を通過する際、励起光がマイクロプリズム64bの入出射面に入射する。マイクロプリズム64bの頂角を構成する2つの面には反射膜が形成されている。マイクロプリズム64b内に入射した光は、頂角を構成する2つの面のうちの一方の面で反射された後、他方の面で反射される。他方の面からの反射光は、入出射面から出射される。入出射面からの出射光は、再帰反射光として、入射光とは反対の方向に進行する。
図9Bに示したマイクロプリズム64bによる再帰反射領域は、図9Aに示したガラスビーズ64aによる再帰反射領域に比較して、高い再帰反射率を得ることができる。
図8に示すように、光検出手段7は、蛍光スクリーン3の励起光源5側の面と対向するように配置されており、再帰反射性ブラックストライプ64からの再帰反射光を検出する。光検出手段7は、波長選択フィルタ7a、集光レンズ7bおよびフォトダイオード7cを有する。
波長選択フィルタ7aは、再帰反射性ブラックストライプ64からの再帰反射光が透過し、この再帰反射光の波長域以外の光を反射または吸収する特性を有する。集光レンズ7bは、波長選択フィルタ7aを透過した再帰反射光をフォトダイオード7cの受光面上に集光する。フォトダイオード7cは入射光量に応じて出力値が変化するものであって、その出力信号(光検出手段7の出力信号)は、制御手段1に供給されている。
制御手段1は、第1の実施形態で説明した輝度調整の制御に加えて、励起光源5の発光タイミングを調整するための制御を行う。
図10に、制御手段1の輝度調整および発光タイミング調整に係わる処理を行う部分の具体的な構成を示す。
図10を参照すると、制御手段1は、輝度値算出部11、輝度値記憶部12、境界検出部13、境界データ記憶部14、および輝度/発光タイミング調整部15を有する。輝度値算出部11および輝度値記憶部12は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
光検出手段7の出力信号は、境界検出部13に供給されている。境界検出部13は、光検出手段7の出力信号に基づいて、蛍光スクリーン3上の蛍光体領域31、32、33と再帰反射性ブラックストライプ64との境界を検出する。
蛍光体領域31、32、33と再帰反射性ブラックストライプ64との境界は、例えば、光検出手段7の出力信号レベルが閾値を超えるタイミングと、出力信号レベルが閾値を下回るタイミングとから求めることができる。ここで、出力信号レベルが閾値を超えるタイミングは、蛍光スクリーン3上において、励起光のスポットが蛍光体領域から再帰反射性ブラックストライプ64へ移動した場合の、蛍光体領域と再帰反射性ブラックストライプ64の境界の通過タイミングに対応する。また、出力信号レベルが閾値を下回るタイミングは、蛍光スクリーン3上において、励起光のスポットが再帰反射性ブラックストライプ64から蛍光体領域へ移動した場合の、再帰反射性ブラックストライプ64と蛍光体領域の境界の通過タイミングに対応する。このような通過タイミングに基づいて、次回の走査時の蛍光体領域への照射タイミング(すなわち、励起光源5の発光タイミング)を得ることができる。
境界検出部13は、画素毎に、蛍光体領域31、32、33と再帰反射性ブラックストライプ64との境界を検出し、その境界検出タイミング情報を、画素を識別する情報と対応付けて、境界位置データとして境界位置データ記憶部14に格納する。
画像表示装置の起動時(キャリブレーション実行時)において、輝度/発光タイミング調整部15は、一定強度の励起光で蛍光スクリーン3を走査するように励起光源5および走査手段4を制御する。そして、境界検出部13が、各画素について境界位置データを作成し、それを境界位置データ記憶部14に格納する。
輝度調整時において、輝度/発光タイミング調整部15は、入力映像信号に基づいて、第1の実施形態で説明した輝度調整を行うとともに、n回の走査のそれぞれにおいて、境界位置データ記憶部14に格納された境界位置データを参照して励起光源5の発光タイミングを制御する。また、各画素におけるn回の走査のうちの少なくとも1つの走査において、境界検出部13が、再帰反射性ブラックストライプ64と蛍光体領域の境界を検出し、その検出結果に基づいて境界位置データ記憶部14に格納されている境界位置データを更新する。
次に、本実施形態の画像表示装置において行われる輝度調整および発光タイミング制御の動作を具体的に説明する。
図11は、輝度調整および発光タイミング制御が実行されるまでの動作の一手順を示すフローチャートである。
まず、輝度/発光タイミング調整部15は、画像表示装置が起動されたか否かを判定する(ステップS20)。画像表示装置は、電源投入用のボタン(不図示)を備えており、輝度/発光タイミング調整部15は、そのボタンが押下された否かによりステップS20の判定を行う。
画像表示装置が起動されると、輝度/発光タイミング調整部15が、一定強度の励起光で蛍光スクリーン3を走査するように励起光源5および走査手段4を制御する。そして、境界検出部13が、各画素について境界位置データを作成し、それを境界位置データ記憶部14に格納する(ステップS21)。
次に、輝度/発光タイミング調整部15は、映像信号が入力されたか否かを判定する(ステップS22)。映像信号が入力された場合は、輝度/発光タイミング調整部15は、輝度調整および発光タイミング制御を実行する(ステップS23)。
図12は、輝度調整および発光タイミング制御の具体的な手順を示すフローチャートである。輝度調整についての動作は、図6に示した手順と同じであり、1画素当たりn回の走査が行われ、2回目以降の走査時に輝度調整が行われる。
輝度/発光タイミング調整部15は、現在の走査回数を示すkの値を0に設定する(ステップS30)。
次に、輝度/発光タイミング調整部15は、入力映像信号に基づいて、対応する画素の最終目標輝度値を決定し、境界位置データ記憶部14から境界位置データを読み込む(ステップS31)。そして、輝度/発光タイミング調整部15は、保持している特性データを参照して、最終目標輝度値のn分の1の輝度値に対応する電力値を取得する(ステップS32)。
次に、輝度/発光タイミング調整部15は、現在保持しているkの値に1を加える(ステップS33)。その後、輝度/発光タイミング調整部15は、ステップS32で取得した電力値に対応する電力が励起光源5に供給されるように駆動部6を制御するとともに、対応する画素が励起光源5からの励起光で走査されるように走査手段4を制御する。この走査において、輝度/発光タイミング調整部15は、ステップS31で読み込んだ境界位置データを参照して励起光源5の発光タイミングを制御する(ステップS34)。
次に、輝度値算出部11が、光検出手段2の出力信号に基づいて、対応する画素から放出された蛍光の輝度値を取得し、その取得した輝度値を、対応する画素を識別する識別情報および走査回数の情報と対応付けて輝度値記憶部12に格納する。さらに、境界検出部13が、光検出手段7の出力信号に基づいて、対応する画素内の再帰反射性ブラックストライプと蛍光体領域との境界を検出し、その境界の検出結果に基づいて、境界位置データ記憶部14に格納されている境界位置データを更新する(ステップS35)。
次に、輝度/発光タイミング調整部15が、保持しているkの値がnに達したか否かを判定する(ステップS36)。
kの値がnに達していない場合は、輝度/発光タイミング調整部15は、保持している特性データを参照し、ステップS32で取得した電力値から輝度値(P0)を算出し、この輝度値(P0)とステップS35で取得した輝度値(P)とに基づいて、今回の走査における輝度効率ηを算出する。さらに、輝度/発光タイミング調整部15は、輝度値記憶部12から今回の走査までの積算輝度値を取得する(ステップS37)。
次に、輝度/発光タイミング調整部15は、最終目標輝度値、輝度効率ηおよび積算輝度値に基づいて、次回の走査の目標輝度値を算出し、その目標輝度値から、保持している特性データを参照して次回の走査時の電力値を決定する。さらに、輝度/発光タイミング調整部15は、ステップS35で更新された境界位置データを記憶部14から読み込む(ステップS38)。
ステップS38を実行後は、ステップS33に戻る。これ以降は、kの値がnに達するまでステップS33〜S38の処理が繰り返される。この繰り返しにおいて、ステップS34では、ステップS32で取得した電力値に対応する電力を励起光源5に供給する処理に代えて、ステップS38で取得した電力値に対応する電力を励起光源5に供給する処理が行われ、ステップS31で読み込んだ境界位置データに代えて、ステップS38で読み込んだ更新された境界位置データが用いられる。また、ステップS37では、ステップS32で取得した電力値に基づいて輝度値(P0)を取得する処理に代えて、ステップS38で取得した電力値に基づいて輝度値(P0)を取得する処理が行われる。
以上の輝度調整および発光タイミング制御によれば、各画素30において、n回の走査のそれぞれにおいて検出された輝度値の合計(積算輝度値)が最終目標輝度値となり、しかも、各画素30の蛍光体領域に対して、励起光を適切なタイミングで照射することができる。よって、第1の実施形態のものよりも、蛍光画像の色純度の改善効果がさらに大きなものとなる。
本実施形態の画像表示装置においても、輝度調整の動作および構成について、第1の実施形態のものと同様の変形を採用することができる。
また、本実施形態の画像表示装置において、再帰反射性ブラックストライプと蛍光体領域との境界の検出および境界位置データの更新は、n回の走査のうちの1回目の走査においてのみ行われてもよい。
さらに、本実施形態の画像表示装置において、再帰反射性ブラックストライプに代えて、第1の実施形態で説明した、再帰反射性を有していないブラックストライプを用いてもよい。ただし、この場合は、境界の検出精度が低下する。
以上説明した第1および第2の実施形態の画像表示装置は、本発明の一例であり、その構成および動作に関し、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者が理解し得る変更を加えることができる。
例えば、第1または第2の実施形態の画像表示装置において、蛍光スクリーン3のブラックストライプ34または再帰反射性ブラックストライプ64はブラックマトリクスまたは再帰反射性ブラックマトリクスであってもよい。
また、第1または第2の実施形態の画像表示装置において、光検出手段2は、赤色の蛍光を検出する第1の光検出手段と、緑色の蛍光を検出する第2の光検出手段と、青色の蛍光を検出する第3の光検出手段とから構成されてもよい。
第1の光検出手段は、フォトダイオードと、赤色の蛍光を透過し、この赤色の波長域以外の光を反射または吸収する特性を有する波長選択フィルタと、この波長選択フィルタを透過した赤色の蛍光をフォトダイオードの受光面上に集光する集光レンズとを有する。
第2の光検出手段は、フォトダイオードと、緑色の蛍光を透過し、この緑色の波長域以外の光を反射または吸収する特性を有する波長選択フィルタと、この波長選択フィルタを透過した緑色の蛍光をフォトダイオードの受光面上に集光する集光レンズとを有する。
第3の光検出手段は、フォトダイオードと、青色の蛍光を透過し、この青色の波長域以外の光を反射または吸収する特性を有する波長選択フィルタと、この波長選択フィルタを透過した青色の蛍光をフォトダイオードの受光面上に集光する集光レンズとを有する。
また、第1および第2の実施形態の画像表示装置において、走査の開始位置によっては、水平に並ぶ画素で走査回数が異なる場合がある。
以下、走査方法によって、左右の画素で走査回数が異なる点および適切な走査回数について具体的に説明する。
図13から図15に、蛍光スクリーン3の一部をビームが走査した場合の走査軌跡(図中の曲線)を示す。
図13Aに示すように、水平方向(紙面内の横方向)に帯状の水平ブラックストライプ34bにより区画された水平方向に延伸する各領域がそれぞれ、水平方向の蛍光体ライン(水平蛍光体ライン36)を形成している。水平蛍光体ライン36は、垂直方向(紙面内の縦方向)に延伸する帯状の蛍光体領域31、32、33を有し、これら蛍光体領域31、32、33は垂直ブラックストライプ34aで区画されている。
ここで、蛍光体領域31、32、33の水平方向の幅と垂直ブラックストライプ34aの水平方向の幅との比を1:1とし、蛍光体領域31、32、33の垂直方向の幅と水平ブラックストライプ34bの垂直方向の幅との比を5:1とし、ビームスポット35の直径と垂直ブラックストライプ34aの水平方向の幅との比を1:1とする。
このとき、水平蛍光体ライン36と、垂直方向に隣接した2つの水平ブラックストライプ34bにおける垂直方向の幅の半分で区切られた部分とで構成される領域を水平画素ライン37とする。
また、水平画素ライン37において、蛍光体領域31、32、33と、2つの垂直ブラックストライプ34aと、蛍光体領域31の左側と蛍光体領域33の右側の垂直ブラックストライプ34aの水平方向の幅の半分で区切られた部分とで構成される領域を画素30とする。
なお、ブラックマトリクスは、水平ブラックストライプ34bと垂直ブラックストライプ34aで構成されている。
走査回数が最も少ない画素に対するビーム有効率に関し、1水平画素ライン37当たりの走査回数として適切な回数を設定することで、ビーム有効率を大きくすることができる。ビーム有効率は、1水平画素ライン37当たりn回の走査を行った場合、画素を通過する走査数をnで割った値である。
図13Aおよび図13Bに、ブラックマトリクスにより区画された領域が蛍光体領域とされた蛍光スクリーン3に対して、1水平画素ライン37当たり3回の走査を行った場合の走査軌跡を模式的に示す。
図13Aの例では、水平画素ライン37の上辺の中心から走査が開始される。
1回目の走査において、ビームスポットは、水平ブラックストライプの領域内を左方向に移動し、蛍光スクリーン3の横幅(水平方向の幅)の1/4の長さ分を進んだところで水平蛍光体ライン36の領域に入り、蛍光スクリーン3の左側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に向かって移動する。水平蛍光体ライン36の領域の、水平方向の中心線(基準線)をビームスポットが通過する点が、1回目の走査の終点である。
2回目の走査において、ビームスポットは、1回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動し、蛍光スクリーン3の右側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に向かって移動する。水平蛍光体ライン36の領域の上記基準線をビームスポットが通過する点が、2回目の走査の終点である。
3回目の走査において、ビームスポットは、2回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動し、蛍光スクリーン3の左側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域を右方向に蛍光スクリーン3の横幅の1/4の長さ分進んだところで、水平ブラックストライプ34bの領域に入り引き続き右方向に移動する。水平ブラックストライプの領域における上記基準線をビームスポットが通過する点が、3回目の走査の終点である。なお、この終点が水平画素ライン37の下辺の中心となる。
図13Aの例から明らかなように、1つの水平画素ライン37に3回の走査を行った場合、各画素30内の蛍光体(31,32,33)領域をビームスポット35が通過する回数(有効走査数)は蛍光スクリーン3の左端から蛍光スクリーン3の横幅の1/4の領域では4回であり、その他の領域の画素は2回である。この場合、ビームの有効率は、左端から1/4の領域の画素30では133%、その他の領域の画素30では67%となる。
一方、図13Bの例では、1つの水平画素ライン37当たり3回の走査が行われるが、その走査の開始点を図13Aの例と異なり、水平画素ライン37の上辺の右側の端部付近とする。
1回目の走査において、ビームスポットは、上記の開始点から水平ブラックストライプ34bの領域内を左方向に移動する。水平ブラックストライプ34bの領域を蛍光スクリーンの横幅の1/4の長さ分進んだところで、水平蛍光体ライン36の領域に入り、引き続き左方向に移動する。水平蛍光体ライン36の領域の左側端部近傍が1回目の走査の終点である。
2回目の走査において、ビームスポットは、1回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動する。水平蛍光体ライン36の領域の右側端部近傍が2回目の走査の終点である。
3回目の走査において、ビームスポットは、2回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動する。水平蛍光体ライン36を蛍光スクリーン3の横幅の3/4の長さ分進んだところで、水平ブラックストライプ34bの領域に入り引き続き水平ブラックストライプ34bの領域を左方向に直進する。水平ブラックストライプの領域の左側端部近傍が3回目の走査の終点である。なお、この終点が水平画素ライン37の下辺の左側端部近傍となる。
図13Bの例において、1つの水平画素ライン37当たり3回の走査を行った場合、各画素30の蛍光体(31,32,33)内をビームスポットが通過する回数(有効走査数)は蛍光スクリーン3の左端および右端から蛍光スクリーン3の横幅の1/4の領域では2回、その他中央部分の領域の画素は3回である。この場合、ビームの有効率は左端から1/4の領域と右端から1/4の領域の画素では67%、その他の領域の画素では100%となる。
図14Aおよび図14Bに、ブラックマトリクスにより区画された領域が蛍光体領域とされた蛍光スクリーンに対して、1水平画素ライン37当たり4回の走査を行った場合の走査軌跡を模式的に示す。
図14Aの例では、水平画素ライン37の上辺の中心から走査が開始される。
1回目の走査において、ビームスポットは、水平ブラックストライプの領域内を左方向に移動し、蛍光スクリーン3の横幅の1/3の長さ分を進んだところで水平蛍光体ライン36の領域に入り、蛍光スクリーン3の左側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に向かって移動する。水平蛍光体ライン36の領域の、水平方向の中心線(基準線)をビームスポットが通過する点が、1回目の走査の終点である。
2回目の走査において、ビームスポットは、1回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動し、蛍光スクリーン3の右側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に向かって移動する。水平蛍光体ライン36の領域の上記基準線をビームスポットが通過する点が、2回目の走査の終点である。
3回目の走査において、ビームスポットは、2回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動し、蛍光スクリーン3の左側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に向かって移動する。水平蛍光体ライン36の領域の上記基準線をビームスポットが通過する点が、3回目の走査の終点である。
4回目の走査において、ビームスポットは、3回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動し、蛍光スクリーン3の右側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36を左方向に蛍光スクリーン3の横幅の1/6の長さ分を進んだところで水平ブラックストライプ34bの領域に入り、引き続き左方向に移動する。水平ブラックストライプ34bの領域における上記基準線をビームスポットが通過する点が、4回目の走査の終点である。なお、この終点が水平画素ライン37の下辺の中心になる。
図14Aの例から明らかなように、1つの水平画素ライン37当たり4回の走査を行った場合の、各画素30内の蛍光体(31,32,33)領域をビームスポットが通過する回数(有効走査数)は蛍光スクリーン3の左端から蛍光スクリーン3の横幅の1/6の領域と右端から1/6の領域の画素では4回、その他中央部分の領域の画素では3回である。この場合、ビームの有効率は左端から1/6の領域と右端から1/6の領域の画素では100%、その他の領域の画素では75%となる。
一方、図14Bの例では、1水平画素ライン37当たり4回の走査が行われるが、その走査の開始点を図14Aの例と異なり、水平画素ライン37の上辺の右側の端部付近とする。
1回目の走査において、ビームスポットは、上記の開始点から水平ブラックストライプ34bの領域を左方向に移動し、水平ブラックストライプ34bの領域を蛍光スクリーン3の横幅の1/3の長さ分進んだところで、水平蛍光体ライン36の領域に入り、引き続き左方向に移動する。水平蛍光体ライン36の領域の左側端部近傍が1回目の走査の終点である。
2回目の走査において、ビームスポットは、1回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動する。水平蛍光体ライン37の右側端部近傍が2回目の走査の終点である。
3回目の走査において、ビームスポットは、2回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動する。水平蛍光体ライン36の左側端部近傍が3回目の走査の終点である。
4回目の走査において、ビームスポットは、3回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動し、水平蛍光体ライン36を水平スクリーン幅の2/3の長さ分進んだところで、水平ブラックストライプ34bの領域内に入り、その後、水平ブラックストライプ34bの領域内を右方向に移動する。水平ブラックストライプ34bの右側端部近傍が4回目の走査の終点である。なお、この終点が水平画素ライン37の下辺の左側端部近傍となる。
図14Bの例において、1つの水平画素ライン37当たり4回の走査を行った場合、各画素30の蛍光体(31,32,33)領域内をビームスポットが通過する回数(有効走査数)は蛍光スクリーン3の左端から1/3の領域の画素では2回、その他の領域の画素では4回である。この場合、ビームの有効率は左端から1/3の領域の画素では50%、その他の領域の画素は100%となる。
図15Aおよび図15Bに、ブラックマトリクスにより区画された領域が蛍光体領域とされた蛍光スクリーンに対して、1水平画素ライン37当たり6回の走査を行った場合の走査軌跡を模式的に示す。
図15Aの例では、水平画素ライン37の上辺の中心から走査が開始される。
1回目の走査において、ビームスポットは、水平ブラックストライプ34bの領域内を右方向に移動し、水平ブラックストライプ34bと水平蛍光体ライン36の境界付近にあたる蛍光スクリーン3の右側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に向かって移動する。水平蛍光体ライン36の領域の、水平方向の中心線(基準線)をビームスポットが通過する点が、1回目の走査の終点である。
2回目の走査において、ビームスポットは、1回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動し、蛍光スクリーン3の左側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に向かって移動する。水平蛍光体ライン36の領域の上記基準線をビームスポットが通過する点が、2回目の走査の終点である。
3回目の走査において、ビームスポットは、2回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動し、蛍光スクリーン3の右側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動する。水平蛍光体ライン36の領域の上記基準線をビームスポットが通過する点が、3回目の走査の終点である。
4回目の走査において、ビームスポットは、3回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動し、蛍光スクリーン3の左側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動する。水平蛍光体ライン36の領域の上記基準線をビームスポットが通過する点が、4回目の走査の終点である。
5回目の走査において、ビームスポットは、4回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動し、蛍光スクリーン3の右側端部において折り返され、その後、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動する。水平蛍光体ライン36の領域の上記基準線をビームスポットが通過する点が、5回目の走査の終点である。
6回目の走査において、ビームスポットは、5回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動し、水平蛍光体ライン36と水平ブラックストライプ34bの境界付近にあたる蛍光スクリーン3の左側端部において折り返され、その後、水平ブラックストライプ34bの領域内を右方向に移動する。水平ブラックストライプ34bの領域の上記基準線をビームスポットが通過する点が、6回目の走査の終点である。
図15Aの例から明らかなように、1水平画素ライン37当たり6回の走査を行った場合の、各画素30の蛍光体(31,32,33)領域内をビームスポットが通過する回数(有効走査数)はいずれの画素も5回である。この場合、各画素のビーム有効率は約83%となる。
一方、図15Bの例では、1つの水平画素ライン37当たり6回の走査が行われるが、その走査の開始点が図15Aの例と異なり、水平画素ライン37の上辺の右側の端部付近とする。
1回目の走査において、ビームスポットは、上記の開始点から水平ブラックストライプ34bの領域内を左方向に移動し、蛍光スクリーン3の横幅の1/2の長さ分を進んだところで水平蛍光体ライン36の領域に入り、引き続き水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動する。水平蛍光体ライン36の左側端部近傍が1回目の走査の終点である。
2回目の走査において、ビームスポットは、1回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動する。水平蛍光体ライン36の右側端部近傍が2回目の走査の終点である。
3回目の走査において、ビームスポットは、2回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動する。水平蛍光体ライン36の左側端部近傍が3回目の走査の終点である。
4回目の走査において、ビームスポットは、3回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動する。水平蛍光体ライン36の右側端部近傍が4回目の走査の終点である。
5回目の走査において、ビームスポットは、4回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を左方向に移動する。水平蛍光体ライン36の左側端部近傍が5回目の走査の終点である。
6回目の走査において、ビームスポットは、5回目の走査の終点を開始点として、水平蛍光体ライン36の領域内を右方向に移動し、蛍光スクリーン3の横幅の1/2の長さ分を進んだところで水平蛍光体ライン36の領域に入り、水平ブラックストライプ34bの領域内に入り、引き続き水平ブラックストライプ34bの領域内を右方向に移動する。水平ブラックストライプ34bの右側端部近傍が6回目の走査の終点である。なお、この終点が水平画素ライン37の下辺の右側端部近傍となる。
図15Bの例において、1つの水平画素ライン37当たり6回の走査を行った場合、各画素30の蛍光体(31,32,33)内をビームスポットが通過する回数(有効走査数)はスクリーンの左側半分の領域の画素では6回、右側半分の領域の画素は4回である。この場合、ビームの有効率は左側半分の領域の画素では100%、右側半分の領域の画素は67%となる。
このように、走査の開始位置によっては、1つの水平画素ライン37の左右の画素におけるビーム有効率が異なる場合がある。このような場合を考慮し、制御手段1が、各画素の有効走査回数を予め保持し、画素毎に、対応する有効走査回数に応じた輝度調整を行う。この有効走査回数に応じた輝度調整は、輝度調整の回数が多くなるが、スクリーン上の各画素の輝度の精度を高めることができる。
また、制御手段1は、走査開始位置が水平画素ライン37の上辺の端部、中央部に関わらず、画素の最小有効走査回数分のみビームを出力させ、画素上を最小有効回数分以上の走査では出力させないという輝度調整を行ってもよい。このように全ての画素におけるビームの出力回数を最小値で一定にすることで、上述した手法よりも出力処理時間を抑えることができる。
また、図13B、図14Bおよび図15Bに示した、走査開始位置を水平画素ライン37の上辺の端部とする例から分かるように、水平画素ライン37の、有効走査回数が最も少ない画素に着目すると、ビーム有効率に関して、1水平画素ライン37当たりの走査回数には、最適な回数が存在することが分かる。
図16に、有効走査回数が最も少ない画素に着目した場合の、1水平画素ライン37当たりの走査回数とビーム有効率の関係を示す。ここでも、蛍光体領域(31、32、33)の水平方向の幅と垂直ブラックストライプ34aの水平方向の幅との比は1:1であり、蛍光体領域の垂直方向の幅と水平ブラックストライプ34bの垂直方向の幅との比は5:1であり、ビームスポット径と垂直ブラックストライプ34aの水平方向の幅との比は1:1である。
図16から分かるように、1水平画素ライン37当たりの走査回数を3回または6回以上とすることで、1水平画素ライン37の各画素のビーム有効率の最小値を67%程度以上にすることができる。
また、第1および第2の実施形態において、制御手段1は、励起光源5から出力される励起光の強度を調整するために、励起光源5に供給される電力量を調整するが、これに代えて、励起光源5から出力された励起光の光路中に、その強度を調整できるような強度変調手段(例えば液晶デバイスを用いたもの)を設け、制御手段1が、その強度変調手段を制御するようにしてもよい。
また、第1および第2の実施形態において、2番目以降のフレームにおいて、各画素における最初の輝度値を算出する際に、1回前のフレームを描画した際の輝度値の積算値を参照してもよい。
さらに、第1および第2の実施形態において、画素30は1つまたは複数の蛍光体領域を有していてもよい。