本開示の特徴および利点は、例として挙げた以下の説明からより明らかにすることができる。
図面に示す各要素は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せといった様々な形態で実施することができることを理解されたい。これらの要素は、プロセッサ、メモリ、および入出力インタフェースを含むことができる1つまたは複数の適当にプログラムされた汎用デバイスに、ハードウェアとソフトウェアの組合せとして実装されることが好ましい。本明細書では、「結合する」という用語は、1つまたは複数の中間構成要素を介して直接的または間接的に接続することを意味するものとして定義される。このような中間構成要素としては、ハードウェア型構成要素およびソフトウェア型構成要素の両方が含まれる。
本明細書は、本開示の原理を例示するものである。従って、本明細書に明示的には記述または図示していなくても、本開示の範囲に含まれる本開示の原理を実現する様々な構成を、当業者なら考案することができることを理解されたい。
本明細書に記載する全ての例および条件に関する表現は、本開示の原理と、当技術分野をさらに進歩させるために発明者が与える概念とを、読者が理解するのを助けるという教育的な目的を有するものであって、本発明がこれらの具体的に列挙した例および条件に限定されるわけではないものと解釈されたい。
さらに、本開示の原理、特徴および実施例ならびに本開示の具体的な例について本明細書で述べる全ての記述は、その構造的均等物および機能的均等物の両方を含むものとする。さらに、これらの均等物には、現在既知の均等物だけでなく、将来開発されるであろう均等物も含まれる、すなわち、その構造に関わらず、同じ機能を実行する将来開発される任意の要素も含まれるものとする。
従って、例えば、当業者なら、本明細書に示すブロック図が本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表していることを理解するであろう。同様に、任意のフローチャート、流れ図、状態遷移図、擬似コードなどが、コンピュータ可読媒体中に実質的に表現され、明示してある場合もしていない場合もあるコンピュータまたはプロセッサによって実質的に実行される様々なプロセスを表すことも理解されたい。
図面に示す様々な要素の機能は、専用のハードウェアを使用することによって、またソフトウェアを実行することができるハードウェアを適当なソフトウェアと関連付けて使用することによって、実現することができる。プロセッサによってそれらの機能を実現するときには、単一の専用プロセッサで実現することも、単一の共用プロセッサで実現することも、あるいはその一部を共用することもできる複数の個別プロセッサで実現することもできる。さらに、「プロセッサ」または「制御装置」という用語を明示的に用いていても、ソフトウェアを実行することができるハードウェアのみを指していると解釈すべきではなく、ディジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ソフトウェアを記憶するための読取り専用メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)および不揮発性記憶装置(ただしこれらに限定されない)を暗に含むことがある。
従来の、且つ/または特注のその他ハードウェアも含まれることがある。同様に、図面に示す任意のスイッチも、概念的なものに過ぎない。それらの機能は、プログラム論理の動作によっても、専用論理によっても、プログラム制御と専用論理の相互作用によっても、あるいは手作業でも実施することができ、インプリメンタ(implementer)が、前後関係から適宜判断して特定の技術を選択することができる。
本明細書の特許請求の範囲において、特定の機能を実行する手段として表現されている任意の要素は、当該機能を実行する任意の方法を含むものとする。例えば、(a)当該機能を実行する回路素子の組合せや、(b)ファームウェアやマイクロコードなども含めた任意の形態のソフトウェアを、当該ソフトウェアを実行して当該機能を実行する適当な回路と組み合わせたものなども含むものとする。特許請求の範囲によって定義される本開示は、記載した様々な手段が実施する機能を、特許請求の範囲が要求する形式で組み合わせ、まとめることにある。従って、これらの機能を実施することができる任意の手段を、本明細書に示す手段の均等物とみなすものとする。
本開示の1つまたは複数の具体的な実施例について、以下で述べる。これらの実施例の説明を簡潔にするために、本明細書では、実際の実施態様の全ての特徴について述べるわけではない。こうした任意の実際の実施態様の開発においては、任意のエンジニアリングまたは設計のプロジェクトにおける場合と同様に、システム面の制約およびビジネス面の制約のコンプライアンスなど、実施態様によって異なる可能性のある開発者の特定の目標を達成するために、実施態様に特有の決定を多数下さなければならないことを理解されたい。さらに、それでも、このような開発努力は、本開示の利益を有する当業者にとっては、手慣れた設計、制作および製造作業であることも理解されたい。
以下、テレビジョン放送信号、さらに詳細には米国で使用するように定義された放送信号に関するシステムについて述べる。記載する実施例は、一般には、信号伝送側施設において、ユーザの構内で使用される。ユーザの構内装置の例としては、セット・トップ・ボックス、ラップトップまたはデスクトップ・コンピュータ、モニタ、およびテレビジョンなどがあるが、これらに限定されるわけではない。そのほかのタイプの信号を伝送および受信するために利用されるそのほかのシステムも、同様の構造およびプロセスを含むことができる。当業者なら、本明細書に記載する回路およびプロセスの実施例は、可能性として挙げた一組の実施例に過ぎないことを理解するであろう。A/53規格およびA/153規格以外の放送規格および無線規格に準拠する信号を、一般に、本明細書に記載の方法と同様の方法で伝送および受信することもできることに留意することが重要である。従って、代替の実施例では、このシステムの構成要素を再構成または省略することもできるし、あるいは、追加の構成要素を付加することもできる。例えば、小さな修正を加えて、記載のシステムを、世界のその他の場所で使用されているDVB−T(digital video broadcasting−terrestrial)放送サービスで使用されるように構成することもできる。
以下に述べる実施例は、主に、信号の伝送に関し、特に、ATSC M/H放送信号を含む、レガシーATSC放送信号を用いて符号化された放送信号の伝送に関する。いくつかの制御信号および電源接続など(ただしこれらに限定されない)、実施例の特徴のいくつかについては、記述せず、また図面にも示していないが、当業者なら容易に確認することができる。これらの実施例は、マイクロプロセッサとプログラム・コードまたは特注の集積回路を使用するなど、ハードウェア、ソフトウェア、または両者の任意の組合せを用いて実施することができることに留意されたい。また、これらの実施例の多くは、当該実施例の様々な要素間で動作および接続を繰り返すことにも留意されたい。本明細書に記載の動作を繰り返す実施例の代わりに、またはそれに加えて、直接に接続された同じ要素の繰り返しを利用したパイプライン・アーキテクチャを用いた代替の実施例が可能である可能性もある。
これらの実施例は、RSエンコーダのアーキテクチャ、ならびにATSC M/Hの符号化および信号伝送と関連付けて使用されるRS符号化を行う方法について記載したものである。これらの実施例では、消失訂正を行うRSデコーダを実施する符号化について記載し、さらに、M/Hグループの構造の特徴およびその設計を簡略にする信号の特性を認識する。
次に図1を参照すると、本開示の特徴による信号伝送システム100のブロック図が示してある。伝送システム100は、ATSC M/HまたはA/153放送規格に従って信号を符号化し、伝送する。伝送システム100は、2組の入力ストリームを受信する。メイン・サービス・データのMPEGトランスポート・ストリーム(TS)パケットと、M/Hサービス・データである。メイン・サービス・データは、パケット・タイミング/調整ブロック130に送られる。M/Hサービス・データ・ストリームは、プリプロセッサ110に送られる。パケット・タイミング/調整ブロック130およびプリプロセッサ110の出力は、パケット・マルチプレクサ140に接続される。パケット・マルチプレクサ140は、ポストプロセッサ150に接続される。ポストプロセッサ150の出力は、同期マルチプレクサ170に接続される。フィールド同期信号およびセグメント同期信号は、ともに同期マルチプレクサ170への入力として提供される。同期マルチプレクサ170は、パイロット・インサータ172に接続される。パイロット・インサータ172は、前置等化フィルタ174に接続される。前置等化フィルタ174は、8レベル残留側波帯(8−VSB)変調器178に接続される。8−VSB変調器178は、アップコンバータ180に接続される。アップコンバータ180は、アンテナ190に接続される。アンテナ190は、結合され処理されたストリーム、すなわちメイン・サービス・データおよびM/Hサービス・データを、1つまたは複数のATSC A153放送信号として伝送する。
プリプロセッサ110は、M/Hサービス・データ・ストリームの符号化に関連するいくつかのブロックをさらに含む。入力信号は、M/Hフレーム・エンコーダ112に入力される。M/Hフレーム・エンコーダは、ブロック・プロセッサ114に接続される。ブロック・プロセッサ114は、グループ・フォーマッタ116に接続される。シグナリング・エンコーダ118も、グループ・フォーマッタ116への入力を提供する。グループ・フォーマッタは、パケット・フォーマッタ120に接続される。パケット・フォーマッタは、プリプロセッサ110の出力信号を提供する。
ポストプロセッサ150は、結合データ・ストリームの符号化に関連するいくつかのブロックをさらに含む。入力信号は、修正データ・ランダマイザ152に入力される。データ・ランダマイザ152は、系統的/非系統的RSエンコーダ154に接続される。系統的/非系統的RSエンコーダ154は、データ・インタリーバ156に接続される。データ・インタリーバ156は、パリティ・リプレイサ(parity replacer)158に接続される。データ・インタリーバ156は、非系統的RSエンコーダ160にも接続される。パリティ・リプレイサ158は、修正トレリス・エンコーダ162に接続される。修正トレリス・エンコーダ162の出力の1つは、フィードバック入力として非系統的RSエンコーダ160に接続される。非系統的RSエンコーダ160は、第2の入力としてパリティ・リプレイサ158に接続される。修正トレリス・エンコーダ162は、ポストプロセッサ150の出力信号も提供する。ポストプロセッサ150のこれらのブロックの多くは、ATSC A53放送信号の信号符号化システムに見られる機能と同様の機能を実行することに留意することは重要である。これらのブロックの一部の機能は、追加のATSC M/Hサービス・データ・ストリームが存在することによる変化を含むように修正または適合されている。
高いレベルでは、伝送システム100の機能は、メイン・サービス・データおよびM/Hサービス・データという2つのタイプのストリームを結合してMPEGトランスポート・ストリーム・パケットの1つのストリームにし、これらをA53規格に従って通常のATSCトレリス符号化8−VSB信号に変調することである。レガシー8−VSB受信器との互換性を確保するために、プリプロセッサ110において、M/Hサービス・データを特殊なMPEG−2トランスポート・ストリーム・パケットにカプセル化する。これを、M/Hカプセル化(MHE)パケットと呼ぶ。プリプロセッサ110は、任意の所望のフォーマットのカプセル化サービス・データに対応することができる。例えば、MPEG−2映像/音声やMPEG−4映像/音声などMPEGトランスポート・ストリームで搬送されるサービスまたはIPパケットによって搬送されるほかのデータまたはサービスを処理することができる。
プリプロセッサ110は、M/Hサービス・データを、M/Hサービス・データのロバスト性を高めるM/Hデータ構造に再構成する。MHフレーム・エンコーダ112およびブロック・プロセッサ114において、順方向誤り訂正を実行する。シグナリング・エンコーダ118およびグループ・フォーマッタ116により、トレーニング・シーケンスを付加する。その後、パケット・フォーマッタ120が、このように処理されたエンハンスト・データを、MHEトランスポート・ストリーム・パケットにカプセル化し、このMHEパケットを、メイン・サービス・データ・ストリームに挿入される207バイト(またはセグメント)の118個の連続したパケットのグループとしてフォーマット化する。
このメイン・サービス多重データは、パケット・タイミング/調整ブロック130に提供される。パケット・タイミング/調整ブロック130は、放出される信号がレガシー受信器を保護するMPEGおよびATSCの規格に準拠するように結合点における時間的変位を補償するように、このメイン・サービス多重データを調整する。メイン・データとM/Hデータとを時分割多重することにより、M/Hストリームが存在しない場合のタイミングと比較して、メイン・サービス・ストリーム・パケットの放出タイミングが変化する。パケット・タイミング/調整ブロック130からの時間調整されたメイン・サービス多重データとプリプロセッサ110からの処理済みMHサービス・データとは、パケット・マルチプレクサ140で多重化または結合される。パケット・マルチプレクサ140では、各M/Hグループが、156個のデータ・パケットからなる、すなわちATSCデータ・フィールドの半分のサイズの、M/Hスロットに挿入される。M/Hスロットは、M/Hグループを含む場合もあれば、含まない場合もある。M/Hグループが特定のスロットに挿入される場合には、118個のパケットがM/Hパケットであり、38個のパケットがメイン・サービス・データ・パケットである。M/Hグループがスロットに挿入されない場合には、156個のパケット全てが、メイン・サービス・データ・パケットである。M/Hスロットに対するM/Hグループの割当ては、M/Hデータとメイン・サービス・データの比によって決まるものとする。
結合データ・ストリームは、ポストプロセッサ150に提供される。ポストプロセッサ150は、この結合データ・ストリームをさらに符号化して処理する。ポストプロセッサ150は、結合データ・ストリームのメイン・サービス・データ部分とMHサービス・データ部分を認識し、分離して、別々に処理および符号化することができる。ポストプロセッサ150は、A53規格に基づく8−VSB符号化を用いてメイン・サービス・データを処理および符号化する。この符号化は、修正データ・ランダマイザ152におけるデータ・ランダム化、系統的/非系統的RSエンコーダ154におけるRS符号化、データ・インタリーバ156におけるデータ・インタリーブ、および修正トレリス・エンコーダ162におけるトレリス符号化を含む。
また、ポストプロセッサ150は、ATSC 8−VSB受信器との互換性を保証するために、結合ストリーム中の前処理済みのM/Hサービス・データの操作も行う。結合ストリーム中のM/Hサービス・データは、ポストプロセッサ150において、メイン・サービス・データとは異なる処理を受ける。M/Hサービス・データは、修正データ・ランダマイザ152を迂回し、ランダム化されない。前処理済みのM/Hサービス・データは、系統的/非系統的RSエンコーダ154において非系統的データとして符号化され、データ・インタリーバ156において52バイトのデータのブロックとしてインタリーブされる。データ・インタリーバ156は、A/53 ATSC畳込みインタリーバに対応し、M/Hサービス・データおよびメイン・サービス・データに等しく適用される。前処理済みM/Hサービス・データに含まれる各トレーニング・シーケンスの開始時にトレリス・エンコーダのメモリを適切に初期化するために、前処理済みM/Hサービス・データに対して追加の動作も行われる。以下では、系統的/非系統的RSエンコーダ154の動作について、さらに詳細に述べる。
系統的/非系統的RSエンコーダ154は、修正データ・ランダマイザ152のデータ出力において(N、K、t)=(207、187、10)符号のRS符号化プロセスを実行するために使用される。非系統的RSエンコーダ154は、同じRS符号用の標準的なATSC RSエンコーダを修正したものであるが、A153規格の一部として含まれるMHグループ・データ・フォーマット表が示す修正を反映したものである。MHサービス・データの非系統的RS符号化により、レガシー受信器による受信を中断することなく、一定間隔の長いトレーニング・シーケンスを挿入することが可能になる。
ATSC M/H規格A153に記載されているように、系統的/非系統的RSエンコーダは、データ・ランダマイザから出力される、データ・ランダマイザによってランダム化または迂回されているデータに対して、(N、K、t)=(207、187、10)符号を用いたRS符号化プロセスを実行するものとする。RSパリティ生成多項式およびプリミティブ・フィールド生成元は、レガシーATSC 8−VSBシステムのそれと同じである。
系統的/非系統的RSエンコーダ154の動作時に、入力データがメイン・サービス・データ・パケットに対応する場合には、RSエンコーダは、レガシーATSC 8−VSBシステムの場合と同じ系統的RS符号化を実行して、187情報バイト(information−byte)のパケットの各セットの末尾に20バイトのRS FECパリティ・データを付加し、それにより207符号化バイト(coded byte)のパケットまたはセグメントを生成する。ただし、入力データがM/Hサービス・データ・パケットに対応する場合には、RSエンコーダは、非系統的RS符号化プロセスを実行するものする。
修正トレリス・エンコーダ162は、ATSC A/53放送規格で使用される従来のトレリス・エンコーダと同様に動作する。動作時には、事前符号化の異なる12個のインタリーブ2/3レート・トレリス・エンコーダが、符号化を実行する。しかし、M/Hデータを含むことにより、ATSC M/H信号を受信するために使用される既知のトレーニング・シーケンスを得るために、各M/Hトレーニング・シーケンスの直前にエンコーダのメモリを初期化するという追加的な必要性が生じる。さらに、M/H信号のトレリス初期化の前に計算されるRSパリティ・データは、伝送前に誤りを含むことになる。従って、トレリス・エンコーダ162は、非系統的RSエンコーダ160に、変更済み初期化バイトを供給する。非系統的RSエンコーダ160は、データ・インタリーバ156から提供される事前にインタリーブされたデータおよび制御信号を用いて、新たなパリティ・バイトを計算し、トレリス初期化による誤ったパリティ・バイトと置換する。これらの計算されたパリティ・バイトがパリティ・リプレイサ158に提供されて系統的/非系統的RSエンコーダが計算した元のパリティ・バイトと置換され、修正トレリス・エンコーダ162に戻される。
修正トレリス・エンコーダ162の最終的な出力は、同期マルチプレクサ170および図1の残りのブロックに提供される。これらの図1の残りのブロックは、ATSC A/53規格を用いて信号を放送する信号伝送システムで使用されるブロックと同じである。同期マルチプレクサ170は、データ・ストリームに対して、フィールドおよびセグメント同期信号と呼ばれるATSC A/53同期を付加する。パイロット・インサータ172は、抑圧搬送波の周波数と同じ周波数を有するデータ信号に小さな同期パイロットを挿入する。任意選択の事前等化フィルタ174は、この信号をフィルタリングして、既知のシステム歪みを事前に補償し、受信しやすくする。8−VSB変調器178は、残留側波帯変調、連接伝送器/受信器における線形位相二乗余弦ナイキスト・フィルタ応答、および中間周波数(IF)周波数44MHzに基づき、A/53の仕様に従って8レベル・トレリス符号化複合データ信号(パイロットおよび同期を含む)を変調する。最後に、RFアップコンバータ180が、8−VSB信号を、アンテナ190を介して放送される適当なRFチャネル周波数にアップコンバートする。
系統的/非系統的RSエンコーダ154と非系統的RSエンコーダ160を結合して、別個の符号化ブロックを解消することができる場合もあることに留意することは重要である。一実施例では、非系統的RSエンコーダ160は、メモリと、記憶した重み値でトレリス符号化データを多重化し、MHサービス・データ部分の間にトレリス符号化データ・ストリームを初期化するために結合データ・ストリームのMHサービス・データ部分のデータ・バイトを置換する処理ブロックとで置換することができる。
図2を参照すると、本開示の特徴によるRSエンコーダ200の一実施例を示すブロック図が示してある。RSエンコーダ200は、系統的RSエンコーダのアーキテクチャを表している。RSエンコーダ200は、図1に示す系統的/非系統的RSエンコーダ154の一部として使用することができる。パリティは生成多項式で生成することができるので、RSエンコーダ200は、ガロア体GF(256)上で乗算および加算が実行される、線形フィードバック・シフト・レジスタ(LFSR)として設計することができる。一般的な系統的RSエンコーダでは、K個の情報シンボルがLFSRに入力され、スイッチを介して出力に送られる。K個の情報シンボルが出力された後で、スイッチはLSFRに接続され、N−K個のRSパリティ・シンボルを出力する。
RSエンコーダ200では、187データ・バイトからなる入力信号が、スイッチ205の1つの入力に提供される。スイッチ205の出力は、RSエンコーダ200の出力である。入力信号は、LSFRの一部である加算器210aにも接続される。加算器210aの出力は、ゲート220に接続される。ゲート220の出力は、直列の乗算器230a〜230tのそれぞれに接続される。乗算器230tの出力は、遅延ブロック240tに直接接続され、乗算器230a〜230sの出力は、加算器210b〜210tの一方の入力に接続される。加算器210b〜210tの出力は、それぞれ、遅延ブロック240a〜240tに直列に接続される。遅延ブロック240a〜240tの出力は、それぞれ、加算器210a〜210tの他方の入力に直接に接続され、LSFRを構成する。遅延ブロック240aの出力は、スイッチ205の他方の入力にも接続され、20パリティ・データ・バイトを出力信号として提供する。
非2値ブロック符号は、1つの符号語の元がq個のシンボルのアルファベットから選択される、一組の固定長符号語からなる。通常は、m情報ビットがq個のシンボルのうちの1つにマッピングされ、上記のアルファベットがガロア体GF(q)となる、すなわちq個の元{0、1、α、…、αq−2}の有限体(αは当該体の原始元)となるように、q=2mである。さらに、原始元は、原始多項式P(X)の根であり、αq−1=1である。
リード・ソロモン(RS)符号は、様々なタイプの非2値線形ブロック符号の中でも実際の適用分野で最も重要なもののうちの1つである。RS符号は、パラメータがN−K=2×tとなる巡回BCH(Bose Chaudhuri Hocquenghem)符号である。ここで、Nは符号語長、Kは情報シンボルの数、tは訂正可能な誤りの数である。RS符号では、その生成多項式は、次のように定義される。
G(X)=(X−α)×(X−α2)×…×(X−α2t) (1)
数式1は、RSエンコーダ200のLSFR部分として示す直列の加算器210a〜210t、乗算器230a〜230t、および遅延ブロック240a〜240tによって実施される。加算器210a〜210tは、2バイトまたは2つの体元の256を法とする加算関数として実施される。同様に、乗算器230a〜230tも、2バイトまたは2つの体元の256を法とする乗算関数として実施される。遅延ブロック240a〜240tは、シンボルまたはデータ・クロックなどの処理クロックに基づいて、これらのバイトまたは体元を記憶し、取り出すように動作する。ゲート220は、スイッチ205と連動して動作して、パリティ・バイトがスイッチ205を介して出力されるときに、加算器230aの出力を乗算器230a〜230tの入力から切断する。最も基本的な定義の組は上述のようにN=q−1=2m−1を表すが、RS符号を短縮して、Nがさらに小さな数になるようにすることもできることに留意することは重要である。
上述のように、ATSC規格で使用される系統的RS符号は、(N、K、t)=(207、187、10)符号である。ここで、各RSシンボルは、GF(256)の要素である1バイト(m=8、q=256)である。データ・セグメントごとに、全体でN=207バイトのサイズのRSブロックが伝送され、このとき、データ・セグメントの末尾でN−K=20のRSパリティ・バイトが送信される。これはつまり、ATSC RS符号は系統的符号である、すなわち、K個の情報シンボルのコピーが符号語に含まれ、最も一般的には、符号語の先頭に含まれるということを意味する。シリアル・ビット・ストリームからバイトを生成する際には、MSBは、最初のシリアル・ビットである。
RS符号が重要であること、およびそれらが広く使用されていることの2つの主な理由は、それらの距離特性が優れていることと、比較的長い符号を実施することを可能にする効率的な代数的復号アルゴリズムが存在することである。これにより、RS符号は、バースト誤り訂正に利用されるようになり、その際には、図1に示すデータ・インタリーバ156および修正トレリス・エンコーダ162などのインタリーバを介して畳込み符号としばしば連接される。
図3を参照すると、本開示の原理による信号エンコーダ300の一実施例を示すブロック図が示してある。信号エンコーダ300は、図1に示す系統的/非系統的RSエンコーダ154の動作と同様に、結合データのメイン・サービス・データ部分およびMHサービス・データ部分の両方を符号化する。
信号エンコーダ300では、図1の修正データ・ランダマイザ152など、それより前の処理ブロックからの入力信号は、系統的RSエンコーダ310および非系統的エンコーダ320にも入力される。系統的RSエンコーダ310および非系統的エンコーダ320は、ともにRSマルチプレクサ330に接続される。制御信号MH_controlも、RSマルチプレクサ330に提供される。RSマルチプレクサ330は、データ・インタリーバ156など後続の処理ブロックに提供することができる符号化信号を出力する。
動作時には、信号エンコーダ300は、系統的RSエンコーダ310のメイン・サービス・データ、および非系統的RSエンコーダ320のMHサービス・データを符号化し、MH_controlとして与えられる制御情報に基づいて、RSマルチプレクサ330中のどちらのデータを出力するかを選ぶ。MH_control信号は、当該データがメイン・サービス・データ(レガシーATSCデータ)であるかMHサービス・データ(M/Hデータ)であるかを示す指標として、プリプロセッサからポストプロセッサに送ることができる。
MH_control信号が論理値「0」である場合には、信号エンコーダ300は、系統的符号化モードで動作する。系統的モードにあるときには、メイン・サービス・データを含む入来信号は、系統的RSエンコーダ310を通る。系統的RSエンコーダ310は、207バイトのパケットの末尾に20パリティ・バイトを付加する。系統的RSエンコーダ310の動作が、図2に示すRSエンコーダ200と同様の動作であってもよいことに留意することは重要である。
MH_control信号が論理値「1」である場合には、信号エンコーダ300は、非系統的符号化モードで動作する。非系統的モードにあるときには、MHサービス・データを含む入来信号は、非系統的RSエンコーダ320を通る。非系統的RSエンコーダ320において、グループの、ATSC規格の場合のセグメントと等価な118個の各パケットごとに、所定の位置にパリティ・バイトが付加される。非系統的RSエンコーダは、系統的RSエンコーダ310と同じ生成多項式および原始生成元を有しており、レガシー受信器で有効なレガシーATSC符号語を生成し、エミュレートして、受信器における固有の受信誤りを防止する。
図4aを参照すると、本開示の特徴による例示的なデータ伝送パターン・マップを示す図が示してある。図4bは、さらに見やすいように、図4aを拡大した図である。この図は、図1に示すプリプロセッサ110内で生成されるM/Hグループ内のデータ・パケットの構成を示している。図4aおよび図4bに示すデータ伝送パターンは、ATSC A153またはATSC M/H規格に従ってデータ伝送の一部として使用されるデータ位置パターンを表している。非系統的RS符号化プロセスで得られるデータは、M/Hデータ・パケット420内の所定のパリティ・バイト位置410に位置する。上述のように、新たなMHサービス・データの挿入は、レガシーATSC受信器のRS復号要件も満たしていなければならない。これらのM/Hデータ・パケットのパリティ・バイトの所定の位置は、M/Hグループの118個のセグメントのそれぞれについて一意的であり、ATSCレガシー・データ・パケットまたはA/53放送データ・パケットのパリティ・バイト(すなわちパケットの最後の20バイト)の位置とは異なる。
以下の表は、図4aおよび図4bに示すデータ伝送パターン・マップに基づくM/Hグループ(118パケット)の1つのパケットにおける事前にインタリーブされたRSパリティ・バイトの所定のパリティ・バイト位置と、レガシーATSCの所定のパリティ・バイト位置(表の最終行)とを示している。バイト位置には、0から206までの番号が振られており、0は当該パケットの最初のバイトを表している。例えば、M/Hグループの最初のパケットは、特にバイト位置15、16、67、68、119、120、171および172にRSパリティ・バイトを有する。図4aおよび図4bでは、M/Hグループの第1の水平行上のこれらの位置は、「RSパリティ・データ」という凡例でマークされ、要素410として示されている。
信号エンコーダ300などの信号エンコーダを、図4aおよび図4bに示すようなデータ伝送マップを有する信号データ構造に適用すると、信号エンコーダ300が、上記の表に示すデータ位置に基づき、そのうちの20バイトが消失である可能性がある207バイトのパケット全体を受信することになる可能性もあるということに留意することが重要である。消失訂正を行うRSデコーダをこのパケットに適用すると、20というのはこのRSデコーダが復号することができる消失の最大数であるので、残りの20バイトが、所定の消失位置で計算されることになる。
図5を参照すると、本開示の特徴による信号エンコーダ500の別の実施例を示すブロック図が示してある。信号エンコーダ500は、図3に示す信号エンコーダ300および図1の系統的/非系統的RSエンコーダ154について述べたのと同様に動作する。信号エンコーダ500は、メイン・サービス・データすなわちATSCレガシー・データとMHサービス・データとを含む全てのパケットに対して、消失訂正を行うRSデコーダとして実施される単一のエンコーダを使用する。
信号エンコーダ500では、入力信号は、消失訂正を行うRSデコーダ510に入力される。消失訂正を行うRSデコーダ510は、符号化した出力信号を後続の処理に提供する。制御信号MH_controlは、消失位置マップ・メモリ520に入力される。消失位置マップ・メモリ520は、消失訂正を行うRSデコーダ510に接続される。
動作時には、MH_controlは、消失位置マップ・メモリ520中のアドレス位置を特定するカウンタ信号を含む。各アドレス位置は、上記に示す表における行に相当する。カウンタ信号は、表中の各行を表す0から118までの値と連動し、メモリもこれらの値にマッピングされる。その結果、メイン・サービス・データ部分またはレガシーATSCデータ部分の間は、MH_control=118であり、MHサービス・データ部分の間は、MH_controlは、MHグループの118個のMHパケットのそれぞれと関連する値0から117を順々にとる。
消失位置は、図4aおよび図4bに示すデータ伝送パターンおよび上記に示す表によって指定されるものだけであり、消失の数は常に20に等しいので、図5に示す消失訂正を行うRSデコーダなど、消失訂正を行うRSデコーダの設計をさらに簡略化することができることに留意することが重要である。こうした簡略化について、以下でさらに詳細に述べる。
図6を参照すると、本開示の特徴による信号符号化回路で使用される消失訂正を行うRSデコーダ600の一実施例を示すブロック図が示してある。消失訂正を行うRSデコーダ600は、誤りおよび消失をRS復号するためのユークリッド・アルゴリズムの実施態様を表している。消失訂正を行うRSデコーダ600は、図5に示す消失訂正を行うRSデコーダ510について述べたのと同様に動作することができる。
消失訂正を行うRSデコーダ600では、1つまたは複数の誤りまたは消失を含む例えば207バイト・パケットなどの符号語を通常は表すそれより前の処理ブロックからの入力信号は、シンドローム計算機610に入力される。シンドローム計算機610は、キー方程式ソルバ(key equation solver)620に接続される。キー方程式ソルバ620の第1の出力は、誤り/消失マグニチュード計算機630に接続される。キー方程式ソルバの第2の別の出力も、誤り/消失マグニチュード計算機630に接続され、またチェン探索ブロック640にも接続される。誤り/消失マグニチュード計算機630およびチェン探索ブロック640の両方の出力は、ゲート650に接続される。入力信号は、バッファ660にも入力される。バッファ660は、加算器670の正の入力に接続される。ゲート650の出力は、加算器670の負の入力に接続される。加算器670の出力は、消失訂正を行うRSデコーダ600の、誤りの訂正または除去後の出力符号語を表す。
消失訂正を行うRSデコーダ600の動作時には、受信符号語は、以下の多項式で表すことができる。
ここで、R
iは受信シンボルであり、最上位のシンボルが最高の次数を有し、C
iは符号語または伝送シンボルであり、E
iは付加的なチャネル・ノイズによって生じる等価な誤り/消失シンボルであり、加算および乗算の演算は、GF(256)上で実行される。
シンドローム計算機610は、以下の数式で定義される受信符号語のシンドローム多項式S(x)を計算する。
ここで、α
jは、ガロア体GF(q)の元である。数式(4)で計算されるシンドロームが全てゼロである場合には、アルゴリズムを停止して、受信符号語R(X)をRSデコーダの出力に送ることに留意することが重要である。換言すれば、誤り/消失がない場合、すなわちE
i=0(0≦i<N)である場合には、S
j=0(0≦j<2×t)であり、受信符号が復号符号語である。
キー方程式ソルバ620は、いくつかの計算を実行して、受信符号語中の誤り/消失の位置およびマグニチュードを処理し、決定する。キー方程式ソルバ620は、次のようにして、受信器から提供された消失情報を用いて消失多項式Γ(X)を計算する。
ここで、Y
i=α
j(l)は消失ロケータであり、j(l)は符号語中の消失座標(0≦l<f)であり、fは消失の数である。多くの場合には、図示しない追加の誤り検出器を復号プロセスの一部として追加することができ、この誤り検出器が符号語中の可能な消失位置を特定することができることに留意することは重要である。
また、キー方程式ソルバ620は、次式で与えられる、シンドローム計算機610の出力(数式3および4)ならびに計算した消失多項式(数式5)を用いたフォーニー(Forney)の修正シンドローム多項式T(X)を決定する。
T(X)=S(X)×Γ(X)modX2×t (6)
ここで、modは、モジュロ演算を意味する。
上記の計算に基づいて、キー方程式ソルバ620は、次式で定義されるキー方程式を解く。
T(X)×Λ(X)=Ω(X)modX2×t (7)
ここで、Λ(X)は、誤りロケータ多項式であり、Ω(X)は、誤りマグニチュード多項式である。
誤りロケータ多項式Λ(X)は、数式(5)と同様に、次式で与えられる。
ここで、X
k=α
i(k)は誤りロケータであり、i(k)は符号語中の誤り座標(0≦k<ν)であり、νは誤りの数である。
誤りマグニチュード多項式Ω(X)は、次式で与えられる。
Ω(X)=1+Ω2×X2+Ω4×X4+…+Ω2×t×X2×t (9)
ここで、奇数で示される係数は、常にゼロである。
キー方程式ソルバ620は、ユークリッド・アルゴリズムに基づいて数式(7)を解き、数式(8)および(9)を発見するように繰り返し動作する。ユークリッド・アルゴリズムは、以下のように進行する。
g−1(X)=0、g0(X)=Γ(X)、r−1(X)=X2×t、およびr0(X)=T(X)を設定する。
以下の反復を実行する。
ri(X)=ri−2(X)−qi(X)ri−1(X) (10)
gi(X)=gi−2(X)−qi(X)gi−1(X) (11)
反復は、偶数のeに対してr<t+e/2または奇数のeに対してr<t+(e−1)/2となったときに停止される。ただし、r=deg[rn(X)]、および
反復が完了すると、方程式ソルバ620は、誤り/消失ロケータ多項式
および誤りマグニチュード多項式Ω(X)=r
n(X)を設定し、各多項式を出力する。
チェン探索ブロック640は、チェン探索アルゴリズムに基づいて探索を実行する。チェン探索アルゴリズムは、誤り位置を発見するために誤り/消失ロケータ多項式Ψ(X)上で実行される。これは、消失位置が、例えば誤り検出デバイスによって推定することができ、検出デバイスによって既に分かっている、または推定されているからである。しかし、本明細書に述べるように、誤り位置が本質的に既知である場合もあるので、信号を符号化するために消失訂正を行うRSデコーダを使用しても、誤り検出デバイスを使用する必要がないこともある。一般に、探索アルゴリズムは、多項式の根の逆数を発見し、符号語中の誤り座標i(k)(0≦k<ν)を特定することに相当する。ここで、数式(8)と同様に、νは誤りの数である。
誤り/消失マグニチュード計算機630は、以下の方程式を用いて誤りマグニチュードを計算する。
ここで、0≦k<νであり、νは誤りの数であり、Ψ'(X)は、誤り/消失ロケータ多項式の導関数である。
また、誤り/消失マグニチュード計算機630は、以下の方程式を用いて消失マグニチュードも計算する。
ここで、0≦l<fであり、fは消失の数であり、Ψ'(X)は誤り/消失ロケータ多項式の導関数である。
バッファ660は、シンドローム計算機610、誤り/消失マグニチュード計算機630、およびチェン探索ブロック640で生じる処理および計算の遅延を説明するために受信符号語を記憶し、遅延させる。ゲート・ユニット650は、チェン探索ブロック640で発見された各根(すなわち誤り位置)ごとに、推定した誤りE*または消失F*のマグニチュードを出力する。
加算器670は、符号語中の適当な座標または位置で受信符号語から誤りまたは消失のマグニチュードを減算して、方程式(2)を満たす推定符号語C*を得る。消失訂正を行うRSデコーダ600の出力は、この推定符号語C*である。
上述のように、消失訂正を行うRSデコーダ600など、RSデコーダの応用装置を、信号伝送システムのエンコーダの代わりに使用することができる。ただし、図1に示す系統的/非系統的RSエンコーダ154などの系統的/非系統的RSエンコーダの代わりに消失訂正を行うRSデコーダを使用することにより、ユークリッド・アルゴリズムおよび図6の消失訂正を行うRSデコーダに関連して説明した各ブロックをさらに簡略化することができる可能性があることに留意することが重要である。例えば、エンコーダへの入力信号には、誤りがなく、消失のみであり、消失の数は、計算する必要のあるパリティ・バイトの数に相当する20である。消失の存在、およびそれらの位置は上記の表から既知であり、またシンドロームが全てゼロになるのは極めて高い一致をみたときだけであるので、シンドローム計算は、常に非ゼロ出力を生じることになる。入力信号は、上記の表で特定された各消失位置(すなわちパリティ・バイト位置)に既知の、または所定の値を含むことができる。
さらに、キー方程式ソルバ620における方程式(5)の消失多項式Γ(X)の計算は、必要とすべきではない。この計算は、119通りの消失パターンしか存在し得ないので、不要である。従って、実行中に消失多項式を計算する必要はない。その代わりに、119通りの可能性を事前に計算し、メモリに記憶しておくことができる。また、方程式(5)において、消失の数f=20は定数である。従って、全ての多項式が、次数f=20とf+1=21個の係数とを有することになり、これらの係数のうち、第1の係数は1に等しく、各係数はRSシンボル、すなわち8ビットである。次いで、これらの事前に計算された多項式を、ROMに記憶することができる。このROMは、第1の係数が既知であることから、20×8×119ビットを含むことになる。この事前計算によって、記憶容量と引き替えに待ち時間および論理が削減される。
さらに、キー方程式(7)を解くことは、方程式(6)の定義からr=deg[r0(X)=T(X)]<2×tであり、さらに
であるという認識に基づき、大幅に簡略化することができる。その結果、r<t+e/2となり、アルゴリズムを停止して、論理が集中するアルゴリズムの反復部分を省略することができる。アルゴリズムは、
およびΩ(X)=r
0(X)=T(X)に直接設定することができる。その結果として、キー方程式ソルバ620における処理を、かなり削減することができる。
さらに、誤りが存在せず、消失位置が既知であるので、チェン探索ブロック640を省略することもできる。また、データ信号中に実際の誤りが存在せず、一時的な値または初期値を有する誤り位置しか存在しないので、誤り/消失マグニチュード計算機630における誤りマグニチュードの計算も、省略することができる。
最後に、誤り/消失マグニチュード計算機630における消失マグニチュードの計算は、方程式(13)を以下のように変形した式に基づいて、大幅に簡略化することもできる。
0≦l<fであり、fは消失の数、Ψ'(X)は誤り/消失ロケータ多項式の導関数である。標数2の体について定義された符号を用いる場合には、多項式Xの奇数の累乗の多項式係数が消滅し、次の数式が得られることが当業者には周知である。
方程式(15)は、方程式(14)の分母を次の式によって定義することができることを意味している。
であり、Y
i=α
j(l)は消失ロケータであり、j(l)は符号語中の消失座標であり、0≦l<fであり、f=20は消失の数である。
全ての消失ロケータおよび
は図4に示す信号データ・パターンに基づいてあらかじめ決定されているので、表の各行の
の値を、事前に計算または事前に決定して、ROMに記憶することができる。このROMは、20×8×119ビットを含むことになる。また、
の値が既に計算されているので、逆演算も不要となる。上記で認識した簡略化によって、記憶容量と引き替えに待ち時間および論理がさらに削減される。
図7を参照すると、本開示の特徴による信号符号化プロセスの一実施例を示す流れ図が示してある。例示および説明のために、プロセス700の各ステップは、図1の系統的/非系統的RSエンコーダ154で主に使用することができる。また、プロセス700の各ステップは、図5の信号エンコーダ500などの信号エンコーダによって実行することもできる。プロセス700の各ステップは、単なる例示に過ぎず、いかなる意味においても本開示を制限するためのものではない。
ステップ710で、入力符号語を受信する。入力符号語は、複数のパケットにグループ化することができる。一実施例では、符号語は、そのうちの187バイトがデータを表す207バイトを含むパケット中に配列される。符号語は、ATSCメイン・サービス・データ・ストリームやATSC MHサービス・ストリームなど、複数の可能なデータ・ストリームの一部とすることができる。また、ステップ710で、1つまたは複数の制御信号を受信することができる。この1つまたは複数の制御信号は、符号語および当該符号語の具体的な特徴を特定するために使用することができる。符号語の特徴のいくつかとしては、符号語のデータのタイプや符号語のデータのフォーマットがあるが、符号語を特定するために使用されるその他の特徴が含まれることもある。一実施例では、制御信号は、メモリ中のアドレス位置を表す。メモリ中のアドレス位置は、受信符号語中のパリティ・バイトの位置に関する識別情報を含む。
次に、ステップ720で、ステップ710で受信した情報に基づいて、修正ユークリッド・アルゴリズムで消失多項式
に使用される事前に計算した多項式を、メモリから取り出す。消失多項式
は、方程式(5)で説明したのと同様の方法で計算し、メモリに記憶することができる。逆多項式
も、方程式(15)および(16)で説明したのと同様の方法で事前に計算し、メモリに記憶することができる。その結果、全ての可能な符号語グループ(すなわちM/Hグループおよびレガシー・グループ)に対する消失多項式および逆多項式が、符号化プロセス中に実行されるユークリッド・アルゴリズムで使用される計算の前に分かる。符号語中のパリティ・バイトの位置に関する情報は、消失多項式および逆多項式のうちのどの1つが取り出されるかを決定する。一実施例では、消失多項式および逆多項式は、M/Hデータ・パケットおよびレガシー・データ・パケットの可能な符号語グループのそれぞれに対する消失セットの一部として記憶することができる。この消失セットは、図4aおよび図4bならびに上記の表に示すマッピングなどのパリティ・バイト・マッピングも含む。
また、ステップ720では、パリティ・バイト・プレースホルダを、受信した符号語に付加することもできる。これらのプレースホルダは、既知のパリティ・バイトの位置に付加してもよいし、あるいは正しい符号語長を確立するために符号語に付加してもよい。一実施例では、パリティ・バイト位置をメモリから取り出し、値「0」などの一時的な値または初期化値をパリティ・バイトに与える。
ステップ730では、受信した各符号語ごとに、シンドローム多項式S(x)を計算する。シンドローム多項式S(x)は、方程式(3)で述べたのと同様の方法で計算される。次に、ステップ740で、フォーニーの修正シンドローム多項式T(X)を計算する。フォーニーの修正シンドローム多項式T(X)は、方程式(6)で述べたのと同様の方法で計算する。この計算は、誤りマグニチュード多項式すなわちΩ(X)=T(X)に相当することになる。
次に、ステップ750で、ステップ720で取り出した逆行列値
を用いて方程式(14)と同様にして消失マグニチュードを計算する。消失位置は、各符号語で常に同じというわけではないが、受信符号語の性質に基づき既知であることに留意することは重要である。一実施例では、ATSC A/153放送規格を用いて伝送された符号語に関連する性質を使用して、各符号語の消失位置の組を特定する。消失位置に関する情報には、制御信号を介するなどして符号語を与えることができ、消失位置は、消失マグニチュード計算の一部として、ステップ720またはステップ750で取り出すことができる。
次に、ステップ760で、適当な座標または位置で計算した消失マグニチュードを受信符号語から減算して、方程式(2)を満たす訂正符号語C*を得る。ステップ770で、さらなる処理のために、メイン・サービス・データ・ストリーム(すなわちATSCのレガシー・データ)またはMHサービス・データ・ストリームの一部として訂正符号語C*を提供する。
プロセス700で述べたステップは、前述の消失訂正を行うRSデコーダのユークリッド・アルゴリズムの修正形態を表していることに留意することは重要である。これらの修正には、ATSC M/Hと呼ばれるATSC A153放送規格による信号の符号化および伝送においてみられる動作状態に対応するために加えられた変更も含まれる。例えば、図6に示す消失訂正を行うRSデコーダ600とともに使用されるユークリッド・アルゴリズムのいくつかのステップを、メモリに記憶した事前に計算した値によって省略または簡略化して、比較的小さな記憶容量と引き替えに論理および待ち時間を節約することができる。
次に図8を参照すると、本開示のいくつかの特徴による消失訂正を行うRSデコーダ800の別の実施例を示すブロック図が示してある。消失訂正を行うRSデコーダ800は、ユークリッド・アルゴリズムに基づく符号化アルゴリズムを実施し、ATSC M/H放送規格で使用されるような、データ内の複数組の消失の所定位置の特定に関連するいくつかの特徴も考慮に入れる。消失訂正を行うRSデコーダ800は、図5に示す消失訂正を行うRSデコーダ510で述べたのと同様の方法で動作することができ、図7に示す信号符号化プロセス700を実施することもできる。
符号語を表す入力信号は、シンドローム計算機810に入力される。シンドローム計算機810は、修正シンドローム多項式計算機820に接続される。修正シンドローム多項式計算機820は、消失マグニチュード計算機830に接続される。消失マグニチュード計算機830は、ゲート850に接続される。それ以前の処理ブロックから提供される制御信号は、消失多項式メモリ825、逆多項式メモリ840、および消失位置メモリ845に接続される。消失多項式メモリ825は、修正シンドローム多項式計算機820に接続される。逆多項式メモリ840は、消失マグニチュード計算機830に接続される。消失位置メモリ845は、ゲート850に接続される。ゲート850は、加算器870の1つの入力に接続される。入力信号はバッファ860にも入力され、バッファ860は、加算器870の第2の入力に接続される。加算器870の出力は、消失訂正を行うRSデコーダ800の出力信号である。
シンドローム計算機810、消失マグニチュード計算機830、ゲート850、バッファ860、および加算器870の機能および動作は、図6に示す消失訂正を行うRSデコーダ600における同様の名称および番号がつけられたブロックの動作と同様である。以下に示す点以外は、これらのブロックについては、ここではこれ以上詳細には説明しない。さらに、消失多項式メモリ825、逆多項式メモリ840、および消失位置メモリ845は、単一のメモリ・デバイスとして実施することもでき、また、図5に示す消失位置メモリ520の一部として含めることもできる。
消失訂正を行うRSデコーダ800では、受信データは誤りを含まない。受信データは、パリティ・バイトの追加位置またはパリティ・バイト・プレースホルダを含むこともでき、これらは計算されて受信データに付加されることになる。こうした追加位置またはパリティ・バイト・プレースホルダを含むデータ・パケットを提供しないいくつかの実施例では、シンドローム計算機810は、受信データ・パケットにバイトを挿入する回路を含むことができる。一実施例では、値「0」などの初期値または一時的な値をそれぞれ有するパリティ・バイトを、図4aおよび図4bに示す表に基づき、またATSC A/153放送規格に関連してデータ・パケットの特定の位置に追加することができる。
上述のように、修正シンドローム多項式計算機820は、符号語内の特定された消失位置の組に基づいて簡潔な方法でユークリッド・アルゴリズムを実施する機能を含む。これらの計算の特徴は符号語によって異なる場合もあるが、消失位置の組の数は既知であり、消失位置は、図4aおよび図4bに示すようにデータ構造の特徴に基づいて特定することができる。具体的には、修正シンドローム多項式計算機820は、方程式(6)に基づいてフォーニーの修正シンドローム多項式T(X)の値を決定する。値
が、消失多項式メモリ825から取り出され、この計算に使用される。修正シンドローム多項式計算機820は、出力値Ω(X)のみを提供する。誤りまたは消失の位置に関連する追加の計算は不要である。
修正シンドローム多項式計算機820からの出力は、消失マグニチュード計算機830に提供される。また、消失マグニチュード計算機830は、逆多項式メモリ840から逆多項式
を取り出し、それらの値を消失マグニチュード値の決定に使用する。同様に、ゲート850は、消失位置メモリ845から消失位置を取り出し、それらの位置を計算した消失マグニチュード値と一致させる、または同期させる。上述のように、加算器870は、特定した消失位置の消失マグニチュード値を入力符号語から減算し、新たな符号語を、RS符号化符号語として、出力として提供する。
のメモリに記憶された値、および消失位置は、一般に、受信符号語の処理の前に決定されることに留意することが重要である。例えば、これらの値は、製造時に信号伝送デバイスの外部で計算し、メモリにプログラムすることができる。あるいは、これらの値は、最初にデバイスを起動するときなど、符号語の処理より前の時点で、信号伝送デバイスが計算することができる。これらの計算は、修正シンドローム多項式計算機820によって実行する、またはデバイス内の別のプロセッサによって実行して、メモリに記憶することができる。
事前に計算した値または事前に決定された値を記憶するために使用される任意のメモリは、当技術分野で既知の任意の従来の記憶装置またはメモリ・デバイスとすることができることを理解されたい。さらに、記憶装置またはメモリの実施態様としては、例えば単一のメモリ・デバイスや、あるいは互いに接続されて1つの共用または共有メモリを構成する複数のメモリ回路など、いくつかの実施例が可能である。さらに、メモリは、バス通信回路の一部などその他の回路とともに、さらに大きな回路に含めることもできる。最後に、記憶装置またはメモリは、静的ランダム・アクセス。メモリ(SRAM)、読取り専用メモリ(ROM)、ハード・ディスク・ドライブなど(ただしこれらに限定されない)、データおよび/または命令符号の記憶に適した任意の現在の記憶技術を利用することができる。
本開示の実施例は、リード・ソロモン符号化に基づく信号を符号化する方法および装置を示す。これらの実施例の1つまたは複数は、消失訂正を行うRSデコーダを含むことにより符号化動作を実施し、ATSC M/Hグループ構造を利用してその設計を簡略化する。本開示で用いる概念は、Wi−Fiやその他の地上波、衛星、および有線通信システムなど、その他のシステムにも拡張することができる。これらの実施例は、VHDL、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組合せで実施することができ、移動ATSC−M/H伝送デバイスで利用することができる。
例示を目的として具体的な実施例を図面に示し、本明細書で詳細に説明したが、これらの実施例には様々な修正および改変を加えることができる。ただし、本開示は、開示した特定の形態に限定されるものではないことを理解されたい。本開示は、後記する添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲に含まれる全ての修正物、均等物および代替物をカバーするものである。