図1には、本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置10の構成が分解斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前後方向一側を矢印LOで示し、車幅方向一側(例えば、車幅方向外側)を矢印WOで示し、上方を矢印UPで示す。
図1に示す如く、ウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、略板状の背板14と、背板14の幅方向両端のそれぞれから一体に延出する脚板16及び脚板18とによって構成されている。背板14には、クランク状に屈曲された板状のステイ19が固定されており、背板14及びステイ19がボルト等の図示しない締結手段によって車体に固定されることで、ウェビング巻取装置10が車体に取付けられる。脚板16及び脚板18には、それぞれ円状の配置孔16A及び配置孔18Aが貫通形成されている。
脚板16と脚板18との間には、ダイカスト等によって製作された巻取軸としてのスプール20が回転可能に配置されている。スプール20は全体として鼓形状をなしており、スプール20には、長尺帯状に形成されたウェビング30の基端部が連結固定されている。スプール20をその軸線周り一方(図1に示される矢印A方向であり、以下、この方向を「巻取方向」と称する)へ回転させると、ウェビング30がその基端側からスプール20の外周部に層状に巻取られ、一方、ウェビング30をその先端側から引張れば、これに伴いスプール20がその軸線周り他方(図1に示される矢印B方向であり、以下、この方向を「引出方向」と称する)へ回転しながらウェビング30が引出される。
スプール20内には、フォースリミッタ機構を構成するエネルギー吸収部材としての図示しないトーションシャフトが同軸上に挿入されており、トーションシャフトの脚板18側の端部は、スプール20の脚板18側の端面から突出されている。トーションシャフトの脚板16側の端部は、スプール20の脚板16側の端部に相対回転不能に連結されており、トーションシャフトは、スプール20と一体に回転可能にされている。トーションシャフトの脚板16側の端部には、スプール20の脚板16側において、略円柱状のラチェット24が相対回転不能に連結されると共に、スクリュー22が固定されており、ラチェット24はスプール20とスクリュー22との間に狭持されている。ラチェット24はスプール20と同軸上に配置されており、ラチェット24の外周部には、ラチェット歯24A(外歯)が形成されている。
スプール20の脚板18側には、回転部材としての略円柱状のロックギヤ26が設けられており、ロックギヤ26にはトーションシャフトが同軸上に貫通されている。また、ロックギヤ26には、トーションシャフトが相対回転不能に固定されており、ロックギヤ26は、トーションシャフトと一体に回転可能にされている。また、ロックギヤ26の外周全体には、ラチェット歯26A(外歯)が形成されている。
フレーム12の脚板18外側(図1に示される矢印D側)には、箱状のセンサカバー32が取付けられており、センサカバー32は脚板18側に向けて開口されている。トーションシャフトの脚板18側の端部は、センサカバー32の内側に挿入されて、センサカバー32に設けられた図示しない軸受部に回転可能に支持されている。センサカバー32の内側には図示しない周知のロック機構が収容されている。このロック機構が、車両の急減速時などに、ロックギヤ26のラチェット歯26Aに係合することで、トーションシャフトの引出方向への回転が規制される。
さらに、センサカバー32と脚板18との間には、プリテンショナ機構34が設けられている。プリテンショナ機構34は、脚板18に固定されたシリンダ36を備えており、シリンダ36の上端部には、ガスジェネレータ38が収容されている。このガスジェネレータ38は、図示しない点火装置が作動することでシリンダ36内に高圧のガスを発生させる。シリンダ36の内側には図示しないピストンが収容されており、シリンダ36内にガスが発生すると、このピストンがシリンダ36から突出してトーションシャフトを巻取方向へ強制的に回転させる。
フレーム12の脚板16外側(図1に示される矢印C側)には、樹脂により製作された略有底円筒状のスプリングカバー70が設けられており、スプリングカバー70は、脚板16側に向けて開口されている。スプリングカバー70の開口部は図示しないカバーによって閉塞されている。スプリングカバー70は、後述するギヤハウジング42を介してフレーム12の脚板16に取付けられている。スプリングカバー70の内側には、スプール20のスクリュー22が挿入されており、スクリュー22はスプリングカバー70に設けられた図示しない軸受部に回転可能に支持されている。
また、スプリングカバー70内には、図示しない渦巻き状のぜんまいばねが収容されている。このぜんまいばねは、渦巻き方向外側端部がスプリングカバー70に係止されると共に、渦巻き方向内側端部がスクリュー22に係止されており、スプール20を巻取方向へ付勢している。
フレーム12の脚板16とスプリングカバー70との間には、後述する減速機構40を収容する樹脂により製作された略直方体状の支持部材としてのギヤハウジング42が設けられており、ギヤハウジング42は脚板16に取付けられている。
図1〜図4に示す如く、ギヤハウジング42の上側部分には、脚板16側部において、クラッチ収容部44が設けられており、クラッチ収容部44は脚板16側に向けて開口されている。クラッチ収容部44の底壁44Aには、断面円状の貫通孔44Bが貫通形成されている。貫通孔44Bは、スプール20と同軸上に配置されており、貫通孔44B内にスクリュー22が貫通されている。また、クラッチ収容部44の底面には、貫通孔44Bの周囲において、円筒状の支持部46が設けられており、支持部46は、スプール20と同軸上に配置されて、脚板16側へ突出されている。
ギヤハウジング42の下側部分には、スプリングカバー70側部において、断面略円状のギヤ収容部48が設けられており、ギヤ収容部48はスプリングカバー70側に向けて開口されている。ギヤ収容部48の底壁48Aは、クラッチ収容部44の底壁44Aに対して、脚板16側に配置されている。
ギヤ収容部48の中央部には、略円筒状の支軸部としての第1支軸50が一体に設けられており、第1支軸50はスプール20の軸線方向と平行にスプリングカバー70側へ突出されている。第1支軸50の内側部分は、開口孔としての第1開口孔51にされており、第1開口孔51はスプリングカバー70側に向けて開口されている。第1開口孔51の底壁の厚さL1は、第1支軸50周囲の底壁48Aの厚さT1と同じにされている(図3参照)。
第1開口孔51内には、中央部において、補強部としての断面略矩形板状のリブ52が設けられており、リブ52の一端52Cと他端52Dとは第1支軸50の周壁に接続されて、リブ52が第1支軸50と一体にされている。このため、リブ52によって第1開口孔51は分割されており、第1開口孔51のリブ52に対する一側部分と他側部分とは、リブ52に対して対称に配置されている。リブ52は上側に向かうに従い車幅方向一側に向かう方向へ傾斜されており、リブ52の側面52Aと側面52Bとは平行に配置されている。
ギヤ収容部48の上側部には、車幅方向一側部において、略円筒状の支軸部としての第2支軸53が一体に設けられており、第2支軸53はスプール20の軸線方向と平行にスプリングカバー70側へ突出されている。第2支軸53の内側部分は、開口孔としての第2開口孔54にされており、第2開口孔54はスプリングカバー70側に向けて開口されている。第2開口孔54は底壁48A内まで延在されて、第2開口孔54の底壁の厚さL2は、第2支軸53周囲の底壁48Aの厚さT2に比して薄くされている(図4参照)。
第2開口孔54内には、中央部において、補強部としての断面略矩形板状のリブ55が設けられており、リブ55の一端55Cと他端55Dとは第2支軸53の周壁に接続されて、リブ55が第2支軸53と一体にされている。このため、リブ55によって第2開口孔54は分割されており、第2開口孔54のリブ55に対する一側部分と他側部分とは、リブ55に対して対称に配置されている。リブ55は上側に向かうに従い車幅方向他側に向かう方向へ傾斜されており、リブ55の側面55Aと側面55Bとは平行に配置されている。
また、ギヤ収容部48の上側部には、車幅方向他側部において、略円筒状の支軸部としての第3支軸56が一体に設けられており、第3支軸56はスプール20の軸線方向と平行にスプリングカバー70側へ突出されている。第3支軸56の内側部分は、開口孔としての第3開口孔57にされており、第3開口孔57はスプリングカバー70側に向けて開口されている。第3開口孔57の底壁の厚さL3は、第3支軸56周囲の底壁48Aの厚さT3と同じにされている(図4参照)。
第3開口孔57内には、中央部において、補強部としての断面略矩形板状のリブ58が設けられており、リブ58の一端58Cと他端58Dとは第3支軸56の周壁に接続されて、リブ58が第3支軸56と一体にされている。このため、リブ58によって第3開口孔57は分割されており、第3開口孔57のリブ58に対する一側部分と他側部分とは、リブ58に対して対称に配置されている。リブ58は上側に向かうに従い車幅方向一側に向かう方向へ傾斜されており、リブ58の側面58Aと側面58Bとは平行に配置されている。
ギヤ収容部48の底壁48Aには、第1支軸50と第2支軸53との間において、断面円状の貫通孔49が貫通形成されており、貫通孔49には後述するモータ66の出力軸66Aが貫通されている。また、ギヤ収容部48の底壁48Aには、第3支軸56の上側部において、長尺の連通孔59が貫通形成されており、連通孔59は、湾曲されると共に、クラッチ収容部44とギヤ収容部48との間を連通している。
また、ギヤハウジング42の下側部には、脚板16側部において、略円筒状の筒部49が設けられており、筒部49は脚板16側へ突出されている。
一方、図1に示す如く、前述したギヤハウジング42のクラッチ収容部44内には、減速機構40を構成する連結部としてのクラッチ60が収容されている。クラッチ60は略有底円筒状のクラッチギヤ62を備えており、クラッチギヤ62は脚板16側に向けて開口されている。クラッチギヤ62の底壁には、断面円状の支持孔62Aが貫通形成されており、支持孔62Aは、スプール20と同軸上に配置されて、クラッチ収容部44の支持部46にスプール20に対して相対回転可能に支持されている。クラッチギヤ62の外周部には、外歯62Bが形成されており、外歯62Bは、後述する減速ギヤ列100に対応している。
クラッチギヤ62とフレーム12の脚板16との間には、略有底円筒状のクラッチカバー64が設けられており、クラッチカバー64はクラッチギヤ62の開口部を閉塞している。
クラッチギヤ62の内側には、スプール20のラチェット24が配置されており、ラチェット24の半径方向外側には、図示しないロックバーが設けられている。このロックバーは、通常は図示しないリターンスプリングの付勢力によってラチェット24のラチェット歯24Aから離間した位置に保持されているが、クラッチギヤ62が巻取方向(図1に示される矢印A方向)へ回転されると、ラチェット歯24Aに噛合する。この噛合状態では、ラチェット24に対するクラッチギヤ62の巻取方向への相対回転が規制されて、ラチェット24がクラッチギヤ62と一体に巻取方向へ回転される。これにより、スプール20が巻取方向へ回転される。また、クラッチギヤ62が引出方向(図1に示される矢印B方向)へ回転されると、上述のロックバーとラチェット24のラチェット歯24Aとの噛合が解除されて、スプール20とクラッチギヤ62との連結が解除される。
スプール20の下側には、フレーム12の脚板16と脚板18との間において、モータ66が設けられている。モータ66はスプール20の軸線方向に平行に配置されており、モータ66の一端(図1に示される矢印C側端)が、ギヤハウジング42の筒部49内において、ギヤハウジング42に固定されている。これにより、モータ66はギヤハウジング42を介してフレーム12に支持されている。モータ66の一端には、出力軸66Aが設けられており、出力軸66Aは、モータ66の一端に対してギヤハウジング42側へ突出されている。出力軸66Aの先端部にはギヤ68が固定されており、ギヤ68はギヤハウジング42のギヤ収容部48内に配置されている。
ギヤハウジング42のフレーム12の脚板16側には、樹脂により製作された略有底円筒状の被覆部材としてのモータカバー90が設けられており、モータカバー90はギヤハウジング42側に向けて開口されている。モータカバー90の開口部には取付部92が設けられており、モータカバー90の内側にモータ66を収容した状態で取付部92がギヤハウジング42に固定されている。
一方、前述したギヤハウジング42のギヤ収容部48内には、前述したモータ66のギヤ68が配置されると共に、減速機構40を構成する減速ギヤ列100が収容されている。
減速ギヤ列100には、モータ66のギヤ68の半径方向側方において、回転体としての平歯のギヤ102が設けられており、ギヤ102はギヤ68よりも大径にされている。ギヤ102は、ギヤ68に噛合された状態でギヤハウジング42の第2支軸53に回転可能に支持されている。
ギヤ102の軸線方向一側(図1に示される矢印C側)には、回転体としての平歯のギヤ104が設けられており、ギヤ104はギヤ102よりも小径にされている。ギヤ104は、ギヤ102に対して同軸上に配置されると共に、ギヤ102と一体にされており、第2支軸53に回転可能に支持されている。
減速ギヤ列100には、ギヤ104の半径方向側方において、オーバーロード開放機構を構成する回転体としての大径ギヤ106が設けられており、大径ギヤ106はギヤ104よりも大径にされている。大径ギヤ106は、略有底円筒状に形成されて、スプリングカバー70側へ向けて開口されている。大径ギヤ106の外周部には平歯の外歯106A(外歯)が形成されている。
大径ギヤ106の軸線方向一側(図1に示される矢印C側)には、円板状のカバー112が設けられており、カバー112は大径ギヤ106の開口部を閉塞している。
減速ギヤ列100には、大径ギヤ106の軸線方向他側(図1に示される矢印D側)において、回転体としての小径ギヤ108が設けられており、小径ギヤ108はギヤ106よりも小径にされている。小径ギヤ108の軸線方向一側端は大径ギヤ106内に同軸上に挿入されており、大径ギヤ106が小径ギヤ108に対して相対回転可能に支持されている。また、大径ギヤ106の外歯106Aがギヤ104に噛合された状態で、小径ギヤ108がギヤハウジング42の第1支軸50に回転可能に支持されている。
大径ギヤ106内には、図示しない板ばねが固定されており、板ばねは小径ギヤ108の軸線方向一側端に係合されている。このため、通常では、大径ギヤ106と小径ギヤ108とは一体回転可能にされている。但し、小径ギヤ108と大径ギヤ106との間に所定値以上の回転力が作用すると、板ばねが弾性変形することで板ばねと小径ギヤ108との係合が解除されて、大径ギヤ106に対する小径ギヤ108の相対回転が許容される(オーバーロード開放機構が作動される)。
一方、小径ギヤ108の軸線方向他側端には、外周部において、平歯の外歯108A(外歯)が設けられている。
減速ギヤ列100には、小径ギヤ108の半径方向側方において、回転体としての平歯のギヤ110が設けられており、ギヤ110は小径ギヤ108よりも大径にされている。ギヤ110は、小径ギヤ108の外歯108Aに噛合した状態でギヤハウジング42の第3支軸56に回転可能に支持されている。
また、ギヤ110は、ギヤハウジング42の連通孔59において、前述したクラッチ60のクラッチギヤ62の外歯62Bに噛合されている。これにより、モータ66の出力軸66Aの回転が減速ギヤ列100を介してクラッチギヤ62に伝達される。
なお、モータ66が出力軸66Aを正転させると、クラッチギヤ62が巻取方向(図1に示される矢印A方向)へ回転される。また、モータ66が出力軸66Aを逆転させると、クラッチギヤ62が引出方向(図1に示される矢印B方向)へ回転される。
一方、ギヤハウジング42のスプリングカバー70側には、略円筒状のギヤカバー114が設けられており、ギヤカバー114はギヤハウジング42側に開口されている。ギヤカバー114は、減速ギヤ列100を被覆した状態で、ギヤハウジング42に固定されている。
次に、モータ66の出力軸66Aが正転される際のギヤ102、ギヤ104、大径ギヤ106、小径ギヤ108、及びギヤ110に作用される荷重と第1支軸50、第2支軸53、及び第3支軸56に作用される荷重の方向について説明する。
図5に示す如く、ギヤ102はギヤ68に噛合されているため、ギヤ102の外歯には、ギヤ102のピッチ円接線方向の荷重f1が作用される。
ギヤ104は大径ギヤ106の外歯106Aに噛合されているため、ギヤ104の外歯には、ギヤ104のピッチ円接線方向の荷重f2が作用されると共に、大径ギヤ106の外歯106Aには、大径ギヤ106のピッチ円接線方向の荷重f2が作用されて、ギヤ104と大径ギヤ106とにそれぞれ作用される荷重f2の方向は反対になる。
小径ギヤ108の外歯108Aはギヤ110に噛合されているため、小径ギヤ108の外歯108Aには、小径ギヤ108のピッチ円接線方向の荷重f3が作用されると共に、ギヤ110の外歯には、ギヤ110のピッチ円接線方向の荷重f3が作用されて、小径ギヤ108とギヤ110とにそれぞれ作用される荷重f3の方向は反対になる。また、ギヤ110はクラッチギヤ62の外歯62Bに噛合されているため、ギヤ110の外歯には、ギヤ110のピッチ円接線方向の荷重f4が作用される。
図6に示す如く、第2支軸53はギヤ102及びギヤ104を回転可能に支持しているため、第2支軸53には、荷重F53が作用される。
ここで、荷重F53の荷重の方向としての荷重方向ベクトルは、荷重f1と荷重f2との荷重の比と、荷重f1と荷重f2とのベクトルから、合力方向のベクトルとして求めることができる。ところで、r1をギヤ102のピッチ円半径、r2をギヤ104のピッチ円半径とすると、回転トルクの釣合いから、
f1×r1=f2×r2
となり、D1をギヤ102のピッチ円直径、Z1をギヤ102の歯数、m1をギヤ102のモジュールとし、D2をギヤ104のピッチ円直径、Z2をギヤ104の歯数、m2をギヤ104のモジュールとすると、
D1=m1×Z1、及びD2=m2×Z2
より、
(f1×m1×Z1)/2=(f2×m2×Z2)/2
となる。
したがって、荷重f1と荷重f2との荷重の比は、
f1:f2=(m2×Z2):(m1×Z1)
となる。
これに対して、前述した第2支軸53のリブ55は、荷重F53の荷重方向ベクトルに沿って配置されている。
また、第1支軸50は大径ギヤ106及び小径ギヤ108を回転可能に支持しているため、第1支軸50には、荷重F50が作用される。
ここで、荷重F50の荷重の方向としての荷重方向ベクトルは、荷重f2と荷重f3との荷重の比と、荷重f2と荷重f3とのベクトルから、合力方向のベクトルとして求めることができる。ところで、r3をギヤ106のピッチ円半径、r4をギヤ108のピッチ円半径とすると、回転トルクの釣合いから、
f2×r3=f3×r4
となり、D3をギヤ106のピッチ円直径、Z3をギヤ106の歯数、m2をギヤ106のモジュールとし、D4をギヤ108のピッチ円直径、Z4をギヤ108の歯数、m3をギヤ108のモジュールとすると、
D3=m2×Z3、及びD4=m3×Z4
より、
(f2×m2×Z3)/2=(f3×m3×Z4)/2
となる。
したがって、荷重f2と荷重f3との荷重の比は、
f2:f3=(m3×Z4):(m2×Z3)
となる。
これに対して、前述した第1支軸50のリブ52は、荷重F50の荷重方向ベクトルに沿って配置されている。
さらに、第3支軸56はギヤ110を回転可能に支持しているため、第3支軸56には、荷重F56が作用される。
ここで、荷重F56の荷重の方向としての荷重方向ベクトルは、荷重f3のギヤ108とギヤ110との接線方向のベクトルと荷重f4のギヤ110とギヤ62との接線方向のベクトルとの合力方向のベクトルとなる。
これに対して、前述した第3支軸56のリブ58は、荷重F56の荷重方向ベクトルに沿って配置されている。
次に、本実施の形態の作用について説明する。
ウェビング巻取装置10では、乗員が車両の座席に着席して、ウェビング巻取装置10に格納されたウェビング30を引張ると、スプール20が引出方向(図1に示される矢印B方向)へ回転しつつウェビング30が引出される。これにより、乗員はウェビング30を身体に掛けまわし、例えば、ウェビング30に設けられたタングプレートをバックル装置に係合させることで、ウェビング30を身体に装着することができる。
一方、例えば、車両走行中に車両の前方に障害物が存在し、しかも車両と障害物との間隔(車両から障害物までの距離)が所定範囲内に達すると、モータ66の駆動が開始され、モータ66の出力軸66Aが急激に回転される。
モータ66の出力軸66Aが回転されると、その回転力がギヤ68、ギヤ102、ギヤ104、大径ギヤ106、小径ギヤ108、ギヤ110、及びクラッチ60のクラッチギヤ62に伝達され、クラッチギヤ62が急激に巻取方向(図1に示される矢印A方向)へ回転される。
クラッチギヤ62が巻取方向へ回転されると、クラッチ60のロックバーがスプール20のラチェット24のラチェット歯24Aに噛合して、ラチェット24がクラッチギヤ62と一体に巻取方向へ回転される。このため、スプール20が巻取方向へ急激に回転される。
これにより、ウェビング30がスプール20に巻取られて、ウェビング30の僅かな緩み、所謂「スラック」が解消されて、ウェビング30による乗員の身体に対する拘束力が向上する。
さらに、「スラック」が解消された状態では、乗員の身体が障害となり基本的にはそれ以上スプール20にウェビング30を巻取ることはできなくなる。このため、スプール20には、ウェビング30から所定値以上の荷重が作用し、その結果、クラッチギヤ62及びギヤ110を介して小径ギヤ108に所定値以上の荷重が作用する。
このとき、大径ギヤ106は、モータ66の駆動力によって巻取方向へ回転しようとしているため、小径ギヤ108と大径ギヤ106との間には相対的な回転力が作用する。この回転力が所定値以上になると、大径ギヤ106に固定された板ばねと小径ギヤの軸線方向一側端との係合が解除される。したがって、大径ギヤ106と小径ギヤ108との相対回転が許容される。
これにより、スプール20が、モータ66の駆動力によって必要以上の力で巻取方向へ回転されることを防止でき、ウェビング30が必要以上の力で乗員の身体を締め付けることを防止できる。
一方、車両衝突の危険が回避された場合には、モータ66の出力軸66Aが逆転される。この出力軸66Aの回転力は、ギヤ68、ギヤ102、ギヤ104、大径ギヤ106、小径ギヤ108、ギヤ110、及びクラッチ60のクラッチギヤ62に伝達され、クラッチギヤ62が急激に引出方向へ回転される。
クラッチギヤ62が引出方向へ回転されると、クラッチ60のロックバーとスプール20のラチェット歯24Aとの噛合が解除されて、スプール20とクラッチギヤ62との連結が解除される。これにより、スプール20の自在な回転が可能となる。
ここで、ギヤハウジング42の第1支軸50には、第1開口孔51が設けられており、第1開口孔51はスプリングカバー70側に向けて開口されている。また、第1開口孔51の底壁の厚さL1は、第1支軸50周囲の底壁48Aの厚さT1と同じにされている。このため、ギヤハウジング42では、第1支軸50が設けられている部位において、第1開口孔51によって体積を小さくできる。
また、ギヤハウジング42の第2支軸53には、第2開口孔54が設けられており、第2開口孔54はスプリングカバー70側に向けて開口されている。また、第2開口孔54の底壁の厚さL2は、第2支軸53周囲の底壁48Aの厚さT2に比して薄くされている。このため、ギヤハウジング42では、第2支軸53が設けられている部位において、第2開口孔54によって体積を小さくできる。
さらに、ギヤハウジング42の第3支軸56内には、第3開口孔57が設けられており、第3開口孔57はスプリングカバー70側に向けて開口されている。また、第3開口孔57の底壁の厚さL3は、第3支軸56周囲の底壁48Aの厚さT3と同じにされている。このため、ギヤハウジング42では、第3支軸56が設けられている部位において、第3開口孔57によって体積を小さくできる。
以上により、ギヤハウジング42が成形される際には、ギヤハウジング42の第1支軸50、第2支軸53、及び第3支軸56が設けられている部位において、樹脂の収縮を小さくできるため、例えば、第1支軸50、第2支軸53、第3支軸56のそれぞれの先端面がへこんだ形状に変形する(ヒケる)ことを抑制できる。また、ギヤ収容部48の底壁48Aの第1支軸50、第2支軸53、及び第3支軸56が設けられている部位において、底壁48Aの脚板16側の面がへこんだ形状に変形する(ヒケる)ことを抑制できる。さらに、底壁48Aが弓なりに変形する(反る)ことを抑制できる。
また、第1開口孔51内にはリブ52が設けられており、リブ52は第1支軸50と一体にされている。また、第2開口孔54内にはリブ55が設けられており、リブ55は第2支軸53と一体にされている。さらに、第3開口孔57内にはリブ58が設けられており、リブ58は第3支軸56と一体にされている。このため、第1支軸50、第2支軸53、及び第3支軸56は、それぞれリブ52、リブ55、及びリブ58によって補強される。これにより、ギヤハウジング42の第1支軸50、第2支軸53、及び第3支軸56の耐荷重性を確保できる。
しかも、第1支軸50のリブ52の長手方向は、第1支軸50に作用される荷重F50の荷重方向ベクトルに沿って配置されている。また、第2支軸53のリブ55の長手方向は、第2支軸53に作用される荷重F53の荷重方向ベクトルに沿って配置されている。さらに、第3支軸56のリブ58の長手方向は、第3支軸56に作用される荷重F56の荷重方向ベクトルに沿って配置されている。
このため、第1支軸50、第2支軸53、及び第3支軸56にそれぞれ作用される荷重に対してリブ52、リブ55、及びリブ58を効率的に設けることができるため、第1支軸50、第2支軸53、及び第3支軸56の軸径を最適化(小さく)できる。これにより、ギヤ102、ギヤ104、大径ギヤ106、小径ギヤ108、及びギヤ110の伝達効率を向上できる。
なお、本実施の形態では、荷重F50の荷重方向ベクトル、荷重F53の荷重方向ベクトル、及び荷重F56の荷重方向ベクトルが、それぞれ、リブ52、リブ55、及びリブ58の長手方向と一致しているが、荷重F50の荷重方向ベクトル、荷重F53の荷重方向ベクトル、及び荷重F56の荷重方向ベクトルが、それぞれ、リブ52、リブ55、及びリブ58の長手方向と一致していなくてもよい。例えば、図7に示す如く、リブ52で説明する。第1支軸50とギヤ102との間の位置ばらつき等により、荷重F50の荷重方向ベクトルとリブ52の長手方向とが一致しない場合でも、第1支軸50の軸中心から荷重F50の荷重方向ベクトルに沿った直線L50(図7にて2点鎖線で示される直線)がリブ52の一端52C及び他端52Dの少なくとも一方を通過していればよい。
また、本実施の形態では、リブ52、リブ55、リブ58は矩形板状にされているが、リブ52、リブ55、リブ58の形状はこれに限らない。例えば、リブ52で説明すると、図8の(A)に示す如く、リブ52の側面52Aと側面52Bとが、リブ52の一端から他端に向かうに従い互いに離間されて配置されてもよい。また、図8の(B)に示す如く、リブ52の側面52Aと側面52Bとが、長手方向中間部において互いに接近して湾曲されてもよい。さらに、図9に示す如く、第1支軸50の軸線から側面52A及び側面52Bまでの垂線距離がそれぞれ異なるように、側面52A及び側面52Bが配置されてもよい。つまり、上述した如く、第1支軸50の軸中心から荷重F50の荷重方向ベクトルに沿った直線L50がリブ52の一端52C及び他端52Dの少なくとも一方を通過していればよい。
また、本実施の形態では、第1開口孔51内、第2開口孔54内、及び第3開口孔57内にそれぞれリブ52、リブ55、リブ58が1つ設けられている。これに替えて、第1開口孔51内、第2開口孔54内、及び第3開口孔57内にそれぞれリブ52、リブ55、リブ58が複数設けられてもよく、この場合、各リブ52、各リブ55、各リブ58がそれぞれ平行に配置されてもよい。
さらに、本実施の形態では、第1開口孔51内、第2開口孔54内、及び第3開口孔57内にそれぞれリブ52、リブ55、リブ58が設けられている。これに替えて、リブ52、リブ55、及びリブ58の各中央部において、リブ52、リブ55、リブ58にそれぞれ交差(特に、直交)するリブを所定数更に設けてもよい。これにより、第1支軸50、第2支軸53、及び第3支軸56の断面形状を真円にし易くできる
また、本実施の形態では、第1開口孔51、第2開口孔54、及び第3開口孔57がスプリングカバー70側に開口されている。これに替えて、第1開口孔51、第2開口孔54、及び第3開口孔57が、底壁48Aを貫通して、フレーム12の脚板16側に開口されていてもよい。
さらに、本実施の形態では、第1開口孔51、第2開口孔54、及び第3開口孔57がスプリングカバー70側に開口されている。これに替えて、第1開口孔51、第2開口孔54、及び第3開口孔57が、底壁48Aを貫通して、スプリングカバー70側及び脚板16側に開口されていてもよい。
さらに、本実施の形態では、ギヤハウジング42は樹脂により製作されているが、ギヤハウジング42が亜鉛等によりダイカストによって製作されてもよい。