JP5517228B1 - 多コア光ファイバのクロストーク特性の評価方法及びそのシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】簡便で再現性の良い多コア光ファイバのクロストーク特性の評価方法及びそのシステムを提供すること。
【解決手段】光源1で発生した測定光を波長スクランブラ(PS)2及びSMF3を介して被測定多コア光ファイバ(FUT)10の一端の任意の1つのコアに単一モード動作状態で入射し、当該FUT10の他端からの出射光をSMF4を介してパワーメータ7で受光してその光強度を測定する際、FUT10の一端及び当該一端から所定の長さ離れた部位をそれぞれ固定した微動台5及び6の間隔を変化させることによりFUT10に張力を印加して測定光の位相状態を変化させ、測定光の位相変化に伴う時間領域における光強度分布を、PS2により測定光の偏光状態を変化させながら取得し、その光強度分布の標準偏差の3倍に相当する光強度偏差ΔPを用いてFUT10の平均電力結合係数hを導出する。
【選択図】図1
【解決手段】光源1で発生した測定光を波長スクランブラ(PS)2及びSMF3を介して被測定多コア光ファイバ(FUT)10の一端の任意の1つのコアに単一モード動作状態で入射し、当該FUT10の他端からの出射光をSMF4を介してパワーメータ7で受光してその光強度を測定する際、FUT10の一端及び当該一端から所定の長さ離れた部位をそれぞれ固定した微動台5及び6の間隔を変化させることによりFUT10に張力を印加して測定光の位相状態を変化させ、測定光の位相変化に伴う時間領域における光強度分布を、PS2により測定光の偏光状態を変化させながら取得し、その光強度分布の標準偏差の3倍に相当する光強度偏差ΔPを用いてFUT10の平均電力結合係数hを導出する。
【選択図】図1
Description
本発明は、光信号伝搬に供する光ファイバの特性評価技術に関する。
近年、空間利用効率の拡大を目的とし、同一クラッド内に複数のコアを有する多コア光ファイバの研究開発が盛んに行われている。多コア光ファイバは、各コアを独立した光通信の伝送路として用いることにより、光ファイバ1芯の伝送容量を直接的に増加できる。また、光ファイバの外界特性を断面内の空間分布として、あるいは複数コア間の信号光の干渉として取得することにより、光ファイバセンシングにおける感度向上などの効果も期待できる。
多コア光ファイバの光通信、光ファイバセンシング等への応用では、当該多コア光ファイバ中のコア間のクロストーク特性を詳細に把握する必要がある。クロストーク特性の評価技術としては、光源とパワーメータを用い、光源に対向するコア及びその隣接コアの出射光強度の比を測定する透過法、または基準コア及びその隣接コアの後方散乱光強度を測定するOTDR法(非特許文献1参照)などが知られている。
しかし、前述した透過法やOTDR法では、複数のコアの出射光強度または後方散乱光強度を測定するため、測定が煩雑となり、かつ時間を要するという課題があった。また、特に透過法では、クロストーク特性の時間的な不安定性により出射光強度の収束性が悪く、十分な測定再現性が得られないという課題があった。
本発明は以上のような背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは簡便で再現性の良い多コア光ファイバのクロストーク特性の評価方法及びそのシステムを提供することにある。
本発明では、多コア光ファイバ中の任意の1つのコアを用い、測定光の位相変化に伴う時間領域における光強度分布、または測定光の波長変化に伴う波長領域における光強度分布を、測定光の偏光状態を変化させながら取得し、前記光強度分布の標準偏差σの3倍に相当する光強度偏差ΔPから平均電力結合係数hを導出することにより、簡便で再現性の良いクロストーク特性の評価方法を実現する手段としている。
この際、平均電力結合係数hは関係式(1)
本発明によれば、任意の1つのコアにおける出射光強度を時間領域もしくは波長領域で測定することで、当該コアのクロストーク特性が評価できるため、複数のコアの光強度を測定する従来の評価技術に比べ、簡便に測定を行えるといった効果を奏する。また、測定光の偏光状態を変化させながら出射光強度を取得することとしたため、クロストーク特性の時間的な変動による測定の不確定性を飛躍的に低減できるといった効果も奏する。更に、汎用的な波長可変光源を用いて評価が行えるため、当該多コア光ファイバのクロストーク特性の波長依存性を簡便に評価できるといった効果も奏する。
以下では、本発明のクロストーク特性の評価方法の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明のクロストーク特性の評価方法を実施する、クロストーク特性の評価システムの一例を示すもので、本システムは、光源1、偏波スクランブラ(PS)2、シングルモードファイバ(SMF)3,4、微動台(MS)5,6及びパワーメータ(PM)7により構成される。
光源1は、所定の測定波長の測定光を発生するためのもので、測定光は少なくとも数百MHz以下の線幅を有することが好ましく、汎用的な分布帰還型レーザ、波長可変光源等が使用できる。偏波スクランブラ2は、光源1からの測定光の偏光状態を変化させるためのもので、光源1と偏波スクランブラ2とは光ファイバあるいはレンズを用いた光学系を用いて接続される。
SMF3,4は、被測定多コア光ファイバ(FUT)10を入出力する測定光が単一モード動作状態となるようにするためのもので、それぞれ5m程度の長さを備えている。詳細には、SMF3は偏波スクランブラ2と被測定多コア光ファイバ10の一端(測定光の入射端)との間に配置され、また、SMF4は被測定多コア光ファイバ10の他端(測定光の出射端)とパワーメータ7との間に配置される。
微動台5,6は、測定光を被測定多コア光ファイバ10の一端の任意の1つのコアに入射するとともに、被測定多コア光ファイバ10に張力を付与するためのものである。詳細には、微動台5はSMF3の端面及び被測定多コア光ファイバ10の一端の端面とが僅かな間隔を隔てて対向し、SMF3から出射した測定光が被測定多コア光ファイバ10の一端の任意の1つのコアに入射可能となるようにSMF3及び被測定多コア光ファイバ10の一端をそれぞれ固定し、また、微動台6は当該被測定多コア光ファイバ10の一端から所定の長さ(通常、数m)離れた部位を固定し、さらに微動台5,6のいずれか一方または両方(通常は微動台6)を稼動させることにより微動台5,6間の間隔を変化させ、測定多コア光ファイバ10に張力を付与することが可能となっている。なお、被測定多コア光ファイバ10の他端とSMF4とは通常、融着接続される。
パワーメータ7は、被測定多コア光ファイバ10の他端からの出射光をSMF4を介して受光し、その光強度を測定するためのものである。
前記構成において、光源1からの測定光は偏波スクランブラ2で任意の偏光状態とされ、SMF3を介して被測定多コア光ファイバ10の被測定対象コアに入射される。被測定多コア光ファイバ10からの出射光はSMF4を介してパワーメータ7で受光され、その光強度が測定される。
ここで、被測定多コア光ファイバ10の両端に接続するSMF3,4は、測定波長で単一モード動作を実現するのに十分な長さがあれば良く、その長さは5mに限定されない。また、微動台5,6間で被測定多コア光ファイバ10に撓みが生じなければ、被測定多コア光ファイバ10の一端から固定部位までの長さ(微動台5,6間の間隔)は任意の長さに設定することが可能である。また、パワーメータ7では平均化処理を行わず、サンプリング速度(時間)は偏波スクランブラ2の偏光状態の変位速度(時間)に比べて十分速い(短い)ことが好ましい。さらにまた、光源1、偏波スクランブラ2、微動台5,6及びパワーメータ7を計算機(PC)8で制御することにより、自動計測を行うようにすることもできる。
図1の測定システムを用い、被測定多コア光ファイバ10の所望のコアに測定光を入射すると、被測定多コア光ファイバ10の当該コアの出射端では、出射光強度の時間変動が観測される。ここで、前記出射光強度の時間変動は、被測定多コア光ファイバ10中の隣接コア間における光波結合特性の伝搬方向における揺らぎと、その偏光状態への依存性に起因して発生する。
そこで、本発明では、微動台6を稼動して被測定多コア光ファイバ10に張力を印加することにより、測定光の位相状態を意図的に変化させ、出射光強度の時間(微動台の移動量)軸上のヒストグラムを検出する。更に、偏波スクランブラ2により測定光の偏光状態を変化させながら出射光強度をサンプリングすることにより、被測定多コア光ファイバ10中のクロストーク特性に起因する出射光強度の変化を高速、かつ簡易に検出することを可能としている。尚、前記偏光状態は、微動台6の移動量において、少なくとも50以上の異なる状態に設定して出射光強度をサンプリングすることが望ましい。
ここで、図1において、光源1に波長可変光源を用い、測定光の波長を変化させることにより、波長軸上における出射光強度のヒストグラムを観測し、被測定多コア光ファイバ10中のクロストーク特性に起因する出射光強度の変化を高速、かつ簡易に検出することも可能となる。尚、波長可変光源を用いた波長領域の評価を行う場合、波長可変光源の線幅は数MHz以下で、かつ測定波長は0.02nm以下の精度で制御できることが好ましい。また、波長可変光源を用いた波長領域の評価を行う場合、2台の微動台を設置する必要はない。
図2に、波長1550nm帯で測定した波長領域における出射光強度のヒストグラムを示す。本測定例では、波長を0.02nmの間隔で掃引し、各波長で偏光状態を変化させながら出射光強度を100回サンプリングしている。図2より、光強度分布は概ねガウス型の確率分布を有することが分かる。従って、受光強度の統計的な偏差ΔPは標準偏差σの3倍として考えられる。
測定波長領域(もしくは時間領域)における、受光強度分布(ヒストグラム)の標準偏差σから、ΔP=3σ(単位:dB)を求めることにより、被測定多コア光ファイバ10中のクロストーク特性に依存した統計的な光強度変化をより正確に抽出することが可能となる。尚、ΔPを前記受光強度分布の平均値に対する最大偏差として導出することにより、より少ない受光強度のサンプリング数で当該被測定多コア光ファイバ10のクロストーク特性を評価することも可能である。
ここで、長さL(単位:m)の並行導波路間の電力結合係数をh(単位:m-1)とすると、当該並行導波路中のクロストークによる光強度変化ΔXT(単位:dB)は、次式(2)で与えられる。
従って、前記光強度偏差ΔPを関係式(4)に代入することにより、被測定多コア光ファイバ10の測定波長における平均電力結合係数h(単位:m-1)が得られる。
更に、前記平均電力結合係数hを次の関係式(5)に代入することにより、被測定多コア光ファイバ10の測定波長におけるクロストークXT(単位:dB)を評価することが出来る。
図4に本発明のクロストーク特性の評価方法による時間領域及び波長領域の評価結果について示す。図中のプロットは、時間領域及び波長領域の評価方法で求めた、光強度偏差ΔPを示す。図4から時間領域及び波長領域における評価結果は良く一致していることが確認できる。
以上説明したように、本発明によれば、光源、偏波スクランブラ及びパワーメータを用い、以下の関係式(6)を用いて電力結合係数hを導出することとしたため、従来の評価技術よりも簡便かつ再現性に優れたクロストーク特性の評価を行うことを可能とする。
1:光源、2:偏波スクランブラ(PS)、3,4:シングルモードファイバ(SMF)、5,6:微動台、7:パワーメータ(PM)、8:計算機(PC)、10:被測定多コア光ファイバ。
M. Nakazawa et al., Opt. Express, vol.20, no.11, p.12530-12540, 2012.
Claims (7)
- 多コア光ファイバのコア間のクロストーク特性を評価する方法であって、
光源で発生した所定の波長の測定光を単一モード動作状態として被測定多コア光ファイバの一端の任意の1つのコアに入射し、当該被測定多コア光ファイバの他端からの出射光をパワーメータで受光してその光強度を測定する際、
張力付与手段により被測定多コア光ファイバに張力を印加して測定光の位相状態を変化させ、測定光の位相変化に伴う時間領域における光強度分布を、偏波スクランブラにより測定光の偏光状態を変化させながら取得し、その光強度分布の標準偏差の3倍に相当する光強度偏差ΔPを用いて被測定多コア光ファイバの平均電力結合係数hを導出する
ことを特徴とするクロストーク特性の評価方法。 - 多コア光ファイバのコア間のクロストーク特性を評価する方法であって、
光源で発生した測定光を単一モード動作状態として被測定多コア光ファイバの一端の任意の1つのコアに入射し、当該被測定多コア光ファイバの他端からの出射光をパワーメータで受光してその光強度を測定する際、
光源に波長可変光源を用いて測定光の波長を変化させ、測定光の波長変化に伴う波長領域における光強度分布を、偏波スクランブラにより測定光の偏光状態を変化させながら取得し、その光強度分布の標準偏差の3倍に相当する光強度偏差ΔPを用いて被測定多コア光ファイバの平均電力結合係数hを導出する
ことを特徴とするクロストーク特性の評価方法。 - 多コア光ファイバのコア間のクロストーク特性を評価するシステムであって、
所定の波長の測定光を発生する光源と、
光源からの測定光の偏光状態を変化させる偏波スクランブラと、
偏波スクランブラを通過した測定光を単一モード動作状態で被測定多コア光ファイバの一端の任意の1つのコアに入射する単一モード動作状態付与手段と、
被測定多コア光ファイバに張力を付与する張力付与手段と、
被測定多コア光ファイバの他端からの出射光を受光してその光強度を測定するパワーメータとを具備し、
張力付与手段により被測定多コア光ファイバに張力を印加して測定光の位相状態を変化させ、測定光の位相変化に伴う時間領域における光強度分布を、偏波スクランブラにより測定光の偏光状態を変化させながら取得し、その光強度分布の標準偏差の3倍に相当する光強度偏差ΔPを用いて被測定多コア光ファイバの平均電力結合係数hを導出する
ことを特徴とするクロストーク特性の評価システム。 - 張力付与手段は、被測定多コア光ファイバの一端及び当該一端から所定の長さ離れた部位をそれぞれ固定した2台の微動台からなる
ことを特徴とする請求項4に記載のクロストーク特性の評価システム。 - 多コア光ファイバのコア間のクロストーク特性を評価するシステムであって、
波長が変化する測定光を発生する波長可変光源と、
波長可変光源からの測定光の偏光状態を変化させる偏波スクランブラと、
偏波スクランブラを通過した測定光を単一モード動作状態で被測定多コア光ファイバの一端の任意の1つのコアに入射する単一モード動作状態付与手段と、
被測定多コア光ファイバの他端からの出射光を受光してその光強度を測定するパワーメータとを具備し、
波長可変光源により測定光の波長を変化させ、測定光の波長変化に伴う波長領域における光強度分布を、偏波スクランブラにより測定光の偏光状態を変化させながら取得し、その光強度分布の標準偏差の3倍に相当する光強度偏差ΔPを用いて被測定多コア光ファイバの平均電力結合係数hを導出する
ことを特徴とするクロストーク特性の評価システム。
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