JP5516803B2 - メタルハライドランプ - Google Patents
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Description
発光管33は、交流電源35からランプ電力供給回路36を介して交流ランプ電力が供給され、その電極37A、37B間で放電発光される。
この逆分極飽和状態から正分極飽和状態に至るまでのFEC39の放電/充電動作により、これが安定器38に電流が流れ、FEC39が正分極飽和状態となった時点で電流は0となる。
このとき、FEC39が正分極飽和状態となって流れが止まる直前の電流値が高ければ高いほど電流変化量が高くなるので、安定器38から出力される始動パルスの電圧が高くなり、発光管33は始動しやすい。
VP=−L(di/dt)
L:安定器の自己インダクタンス
dt:時間
di:電流変化量
で表される。
このため、FEC39と直列に半導体スイッチ40を接続し、そのブレークオーバー電圧をピーク電圧近傍の所定の値に設定することにより、電源電圧が高いときに、FEC39が充電/放電されるように成されている。
これによって、安定器38から高電圧(1.6〜2.2kV程度)の始動パルスが出力されると、発光管33が絶縁破壊される前であれば、高電圧始動パルスがFEC39にも印加されてさらに電荷が追加蓄積され、次の放電/充電時に安定器に流れる電流をより高く維持できるというメリットがある。
C=ε0εS(S/D)
C:静電容量
S:電極面積
D:電極間距離
εS:絶縁体の誘電率
ε0:真空の誘電率(8.854×10-12)
で表される。
これより、FEC39においては、強誘電体となるセラミック基板の厚さを薄く(距離Dを小さく)すればするほど静電容量は大きくなり、対向する電極面積Sを広くすればするほど静電容量は大きくなるが、FEC39を薄く広く形成すれば機械的強度が低下するという問題が生じ、長時間使用しているうちに、発光管33が破損する前に、FEC39にクラックが入って点灯不能となる事例が発見された。
FEC39には絶縁破壊されるまで始動パルスの電圧が印加されて電荷が蓄積されるので、絶縁破壊に伴って放電される電荷量は、絶縁破壊のタイミングにより大きく異なり、タイミングによっては始動パルスの最大電圧値(例えば2.0kV)が印加されて、絶縁破壊と同時にその電圧値に匹敵する放電電圧で放電されることになる。
また、強誘電体は多結晶構造を有しており、電圧変化によって一つ一つの結晶が変形すると、隣合う結晶同士の位置関係がずれて摩擦力や応力を生じる。
したがって、放電時間が短ければ短いほど、電界の変化が速いため、FEC39の単位時間当たりの変形量が大きく、これが衝撃となって結晶同士がはがれ、クラックが発生して割れたり、割れないまでもクラックに電流が流れてショートしたりするなどして、FEC39にダメージを与えていることが判明した。
しかも、通常は、電極37A、37B間で一旦絶縁破壊されても即時に安定点灯するわけではなく、始動開始から安定点灯に移行するコンマ数秒〜十数秒の間に、始動パルスにより絶縁破壊されては立消えるという現象を繰り返し、数回〜数百回の始動パルスが出力されるので、ランプ始動時には、始動パルスが出力されるたびに生ずる電歪現象によりFEC39がコンマ数秒〜十数秒間にわたって変形を繰り返し、振動することは避けられず、これが、FEC39のクラックの原因となっていると推測される。
発光管の始動時にランプ電力供給回路を介して始動回路に印加される交流の電源電圧が、半サイクルごとに正負のブレークオーバー電圧を超えた時点で半導体スイッチが導通状態に切り換わり、前の交流サイクルにより逆分極飽和状態となっていたFECに高電圧の電荷が充電され、正分極飽和状態となり充電が完了する。
この逆分極飽和状態から正分極飽和状態に至る放電/充電動作の間、安定器に電流が流れ、正分極飽和状態となった時点で電流は0となる。
FECには絶縁破壊されるまで始動パルスの電圧が印加されて電荷が蓄積されるので、絶縁破壊のタイミングによっては始動パルスの最大電圧値(例えば2.0kV)に匹敵する放電電圧で電荷が放電されるが、始動回路には、時定数調整抵抗が介装されてその閉回路の時定数が大きく設定されている。
したがって、例えば、その閉回路の時定数が2倍になるように時定数調整抵抗の抵抗値を選択すれば、FECの放電時間も2倍に延び、その分、FECを構成する強誘電体の変形速度が低下するので、電歪衝撃によるクラックの発生を確実に防止することができる。
図1は本発明に係るメタルハライドランプの一例を示す回路図、図2はその外観図、図3は強誘電体セラミックコンデンサの断面図、図4は始動時の電圧/電流変化を示すグラフ、図5は時定数調整抵抗の効果を示すグラフである。
外管2は透明硬質ガラスで発光管2及び始動回路4を収納可能な大きさに形成されると共に、その片端側に口金5が配され、該口金5を介して交流電源6及び安定器7が介装された電力供給回路8に接続できるようになっている。本例では、AC200V(最大値:±282V)の交流電源6が用いられ、400W水銀灯に適合した安定器7が用いられている。
そして、両端封止部9A、9Bに電極10A,10Bが挿通されて封止され、内部には、始動補助ガスと共に水銀及びスカンジウム,ナトリウム等の金属ハロゲン化物(金属蒸気)が封入されており、交流電源6からランプ電力供給回路8を介して供給される交流の交流電力により放電発光される。本例では、定格電力360Wのものを用いた。
溶断抵抗12は、発光管の点灯中に発光管内の金属蒸気が外管内に漏洩して前記強誘電体セラミックコンデンサの電極間で沿面放電が生じたときに、当該始動回路に流れる過電流により溶断されて、FECが破損するのを防止している。
本例では、強誘電体(バルク)16が厚さ×直径=1mm×19mm、電極17A、17Bが直径16.8mm、その抗電圧が±40Vに設計されており、印加電圧が±40Vを越えた時点で充放電が行われるようになっている。
本例では、例えば、電源電圧が交流200V(最大値:±282V)である場合に、ブレークオーバー電圧が±200Vに設定されている。
そして、FEC13が正分極飽和状態に達した時点で、安定器7に流れる電流が0となり、この電流変化によって安定器7から高電圧(1.6〜2kV程度)の始動パルスが出力される。
発光管3の電極10A、10B間が絶縁破壊され、FEC13に充電された電荷が放電される現象は、始動回路4及び発光管3で形成されるRC回路18で生じる放電であると考えられ、放電開始から放電終了に至る放電時間は、発光管インピーダンスR0と、時定数調整抵抗15の抵抗値R1に依存すると考えられる。
このとき、固定抵抗による時定数T1は、
T1=R1C
C:FEC13の静電容量
で表され、RC回路18の放電時間は、時定数T1成分に影響されて、その分、遅延するものと考えられる。
本例では、時定数調整抵抗15としてR1=100Ωの炭素膜抵抗を用いており、始動パルスの電圧値V1は電圧値V0の92%であった。
スイッチ(図示せず)をオンして、交流電源6からランプ電力供給回路8を介してAC200Vの電源電圧を供給すると、その交流電圧は±282Vをピークとするサイン波形として出力される。
まず、電源電圧が0から±240Vに達するまでは、発光管3の電極10A、10B間が絶縁状態にあり、始動回路4の半導体スイッチ14も非導通状態であるので、始動回路4及びランプ電力供給回路8には一切の電流は流れない。
[図4:P1〜P2間、P5〜P6間]
次いで、電源電圧がFEC13の抗電圧(±40V)と半導体スイッチ14のブレークオーバー電圧(±200V)の合計電圧(±240V)を超えると、半導体スイッチ14が導通して、電源電圧がFEC13に電源電圧が印加され、前の交流サイクルで逆分極飽和状態にあったFEC13が放電/充電されて正分極飽和状態に反転し、この充放電動作が行われている一瞬の間、安定器7に電流が流れる。
[図4:P2〜P3間、P6〜P7間]
FEC13が正分極飽和状態に達した時点で、安定器7に流れる電流が0となるので、この電流変化によって安定器7から高電圧(例えば2kV)の始動パルスが出力される。
すなわち、この間、発光管3の電極は絶縁破壊/立消えを繰り返し、安定点灯に至るまで数回〜数百回の始動パルスが出力されることとなる。
このとき、FEC13には、絶縁破壊が起きる直前まで始動パルスの電圧が印加されているから、その放電電圧は絶縁破壊が起きる瞬間の始動パルスの電圧に等しい。
始動パルスが出力されるときの電源電圧が約240Vであり、始動パルスは240Vから2kVまで瞬間的に変化するため、FEC13の放電電圧は最大で2kVに達する。
このため、FEC13の放電によりその電極間電圧が2kVから0Vに変化しても、その変化速度が遅いため、電歪によりFEC13の強誘電体が変形しても、その変形速度が遅いゆっくりとした変形となる。
したがって、強誘電体の単位時間当たりの変形量が小さくなり、これが衝撃となることもなく、FEC13に与えるダメージを減少させることができる。
図5(a)は時定数調整抵抗15が介装された等価回路の実験結果、図5(b)は比較のため時定数調整抵抗15が介装されていない回路の実験結果を示す。
その結果、発光管3で生ずる電圧降下(FEC13の電極間電圧に相当)は、図5(b)に示す通り、絶縁破壊から0.2μ秒経過するまでは緩やかな勾配A0で低下し、その後、0.3μ秒経過後から急激な勾配B0で低下する。
これにより、約2kVに充電されたFEC13の電極間電圧がその30%(600V)に低下するまでの放電時間が僅か約0.6μ秒であった。
したがって、その電圧降下は、図5(a)に示す通り、絶縁破壊から0.2μ秒経過するまでは緩やかな勾配A0で低下し、その後、0.3μ秒経過後も比較的緩やかな勾配B1で低下していく。
これにより、約1.9kVに充電されたFEC13の電極間電圧がその30%(570V)に低下するまでの放電時間が約1.2μ秒であった。
2 外管
3 発光管
4 始動回路
6 交流電源
7 安定器
8 電力供給回路
12 溶断抵抗
13 FEC(強誘電体セラミックコンデンサ)
14 半導体スイッチ
15 時定数調整抵抗
Claims (2)
- 外管内に、ランプ電力供給回路を介して供給される交流電力により電極間で放電発光する発光管と、前記ランプ電力供給回路に介装された安定器を流れる電流を急変させて安定器から高電圧始動パルスを出力させる始動回路が、並列に接続された状態で収納配設されたメタルハライドランプにおいて、
前記始動回路には、
予め設定された抗電圧以上の電圧がランプ電力供給回路を介して印加されたときに充放電を生じ、前記安定器に流れる電流を変化させて安定器から高電圧の始動パルスを出力させる強誘電体セラミックコンデンサと、
予め設定されたブレークオーバー電圧以上の電圧が印加されたときに導通状態に切り換わる半導体スイッチと、
前記始動パルスにより前記発光管が一旦絶縁破壊されてから安定点灯するまでの間、前記発光管が絶縁破壊されたときに、前記コンデンサの一方の電極から前記発光管を介して他方の電極に至る閉回路を介して放電される電荷の放電時間を遅延させる時定数調整抵抗が、直列に接続されており、
前記始動パルスの電圧値が前記時定数調整抵抗の抵抗値を0としたときの始動パルスの電圧値の90%以上となるように、かつ、前記コンデンサでの電歪衝撃によるクラックの発生を防止することができるように、前記時定数調整抵抗の抵抗値が選定されたことを特徴とする始動器内蔵型メタルハライドランプ。 - 前記始動回路には、発光管の点灯中に発光管内の金属蒸気が外管内に漏洩して前記強誘電体セラミックコンデンサの電極間で沿面放電が生じたときに、当該始動回路に流れる過電流により溶断される溶断抵抗が介装された請求項1記載の始動器内蔵型メタルハライドランプ
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