周知の通り、アコースティックピアノ(以下『生ピアノ』)は、打鍵に応じてハンマを弦に打ちつけ、音を発生する構造を有している。生ピアノが発生する音は、打鍵の強弱やスピードによってその響き方や大きさが異なる。また、生ピアノには、音の余韻をコントロールするためのペダルが搭載されている。グランドピアノを例に取ると、ダンパペダル、ソステヌートペダル、シフトペダルである。これらペダルは、演奏者の踏み込み操作(=演奏操作)に伴って支点を中心に回動する。
これらのうちダンパペダル(以下単にペダル)は、ピアノの弦の振動を止めるためのダンパを制御するペダルであり、最も使用頻度が高い。ここで、ダンパは、弦と一対一に対応しており、通常、打鍵に応じて弦から離れ、離鍵に応じて弦を押さえて音の響きを止める。そして、各ダンパは、幾つかの連結部を介してペダルに接続されている。これらの連結部には、いわゆる遊びが設けられている。このため、ペダルを浅く踏み込んだとしても、その動作はダンパに伝達されない。しかしながら、ペダルが深く踏み込まれると、全ての弦についてダンパが解放され、鍵から指を離してもダンパによる止音は行われず、打鍵した全ての音が残る。この場合、打鍵されていない鍵に対応する弦を含めた全ての弦が共振し、倍音が鮮明に響くようになっている。このように、ダンパペダルによってダンパを操作することにより、音に様々な表情を与えることができる。
従って、ペダルの初期位置からの踏み込み量に伴って、例えばゆっくりと静的にペダルの踏み込み、戻し操作をした場合、図5に示すような反力(=ペダルの復帰方向の力、演奏者の足にかかる荷重)がペダルに発生する。即ち、演奏者によってペダルが踏まれていくと、連結部を介してダンパに踏み込み力が伝わり始め、連結部全体が有する弾性要素からの反力や、部分的に弦が持ち上げられ始めたダンパの重さ及び摩擦力によって反力が増加していく(領域A0〜A1)。さらに、ペダルが踏み込まれると、ダンパが弦から完全に離れ、連結部全体が有する弾性要素からの反力増加率も小さくなる。そのため、領域A2でのペダルの反力変化率は領域A1よりも小さくなる。この領域A1の後半から領域A1、A2間の境界を越えて領域A2に侵入する領域をハーフペダル領域AHという。このハーフペダル領域AHにおいて上級演奏者は、ペダルの踏み込みの深さを微妙に変化させることにより、発生させる楽音の音色、響きなどを微妙に変化させることが知られている。また、生ピアノの機種及びメーカーによって、ダンパーペダル、連結部及びダンパーの構造が異なると領域A0、A1、AH及びA2の各範囲の広さや各領域の境界位置も異なる。また、図9に示したように、領域A0、A1間でペダルの反力の変化率に差が表れる場合もある。
以上のような生ピアノの音色、操作性、外観を擬似的に再現した電子楽器として電子ピアノがある。この電子ピアノは、鍵盤の操作に応じて電子音源部から発音させる構造となっていて、弦を有さない。このため、生ピアノに比べて比較的安価であるため、近年急速に普及している。上述したように電子ピアノは、弦を有さないので、そのペダル構造は生ピアノとは異なっている。このような、従来の電子ピアノにおけるペダルの構造については、例えば特許文献1に開示された電子鍵盤楽器用ペダルユニット、特許文献2に開示された電子鍵盤楽器のペダル装置などが提案されている。
上述した特許文献1に開示された電子鍵盤楽器用ペダルユニットは、ペダル踏み込み時に反力(復帰力)が働くように、ペダルがバネによって付勢されている。また、特許文献2に開示された電子鍵盤楽器のペダル装置は、第1付勢部材に加えて、第2付勢部材とレバーなどによって、ペダルの変位量に応じた反力の変化率が1段階変化するものである。
しかしながら、従来の特許文献1に開示された電子鍵盤楽器用ペダルユニットは、ペダル周辺にバネやペダルの回動操作を検出する検出手段の配置が必要なため、ペダルを収容するペダルボックスが大型化しデザインに大きな影響を与えてしまう、という問題があった。また、従来の特許文献1に開示された電子鍵盤楽器用ペダルユニットは、反力の変化率が一定であり変化がなく、生ピアノのペダル操作を再現できていない。
また、特許文献2に開示された電子鍵盤楽器のペダル装置は、段階的に反力の変化率を変化させることができるが、その分、ペダルボックスに収容する部品点数が大きくなり大型化してしまう、という問題があった。また、上述した従来の電子鍵盤楽器のペダル装置のペダルの踏み込み量−反力特性は、バネの組み合わせによる1次関数の単純重ね合わせとなり、反力の増加率を減少させるような反力特性を得ることができない。このため、生ピアノのペダルの反力特性を正確に再現できない、という問題があった。
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。以下説明において、電子鍵盤楽器の「上下左右前後」は、演奏時の演奏者側からみた正立状態における「上下左右前後」を意味する。図1に示すように、電子鍵盤楽器100は、楽器本体101と、ペダルボックス102と、ペダル装置1と、を備えている。楽器本体101は、鍵盤装置103が設けられた楽器上部104と、この楽器上部104を支持する足部105と、から構成されている。上記ペダルボックス102には、後述するペダル2が収容される。ペダルボックス102は、上記楽器上部104から下垂された下垂部106の下端に設けられ、楽器本体101によって支持されている。上記下垂部106は、左右方向に一対配置されている。
上記ペダル装置1は、図1及び図2に示すように、ペダル2と、上限ストッパ3と、下限ストッパ4と、駆動ワイヤ5と、反力発生ユニット7と、を備えている。上記ペダル2は、ペダルボックス102に収容されている。本実施形態では、ペダル2としては、ダンパペダル、ソステヌートペダル、シフトペダルの3つが設けられている。図2に示すように、上記ペダル2は、前後方向に長尺状になるように設けられていて、支点C1を中心に回動可能に支持されている。ペダル2は、その前端が演奏者により踏み込まれると支点C1を中心に初期位置から押切位置の範囲内で回動する。上記上限ストッパ3及び下限ストッパ4は、フェルト、あるいはゴムなどから構成され、ペダルボックス102内に収容されている。上限ストッパ3は、ペダル2が初期位置のときにペダル2と当接してペダル2の回動を規制するストッパである。下限ストッパ4は、ペダル2が押切位置のときにペダル2と当接してペダル2の回動を規制するストッパである。
駆動ワイヤ5は、ワイヤ、伝達部材としてのインナーワイヤ51と、アウターチューブ52と、から構成されている。インナーワイヤ51は、その一端が上述したペダル2の後端に固定、または当接され、他端が楽器上部104に配置された後述する反力発生ユニット7を構成する第1可動部材72の下端に当接されている。アウターチューブ52は、筒状に設けられ内部にインナーワイヤ51を通し、下垂部106やペダルボックス102、楽器本体101等に固定されインナーワイヤ51を支持する。アウターチューブ52は、下垂部106や楽器上部104の形状に合わせて曲げ可能に設けられている。よって、ペダル2が踏み込まれるとインナーワイヤ51が反力発生ユニット7側に押されて、第1可動部材72が上側に押し上げられる。即ち、インナーワイヤ51は、ペダル2の回動を第1可動部材72に伝達する伝達部材に相当する。
図1に示すように、反力発生ユニット7は、ペダルボックス102から離れた楽器上部104内に配置されている。3つの反力発生ユニット7は、例えば左右方向に並べて配置されている。一番左、真ん中のペダル2に対応する反力発生ユニット7は中央よりも左側の楽器上部104に配置され、一番右のペダル2に対応する反力発生ユニット7は中央よりも右側の楽器上部104に配置されている。そして、上記中央よりも左側の楽器上部104に配置された反力発生ユニット7とペダル2とを連結する駆動ワイヤ5は、一対の下垂部106のうち左側の下垂部106に配策されている。一方、中央よりも右側の楽器上部104に配置された反力発生ユニット7とペダル2とを連結する駆動ワイヤ5は、一対の下垂部106のうち右側の下垂部106に配策されている。
上記反力発生ユニット7の各々は、図3に示すように、反力発生手段としての反力発生部701と、摩擦発生機構78と、検出手段としての検出部79と、を一体に備えている。上記反力発生部701は、第1固定部材71と、第1可動部材72と、質量体73と、第1付勢部材としての第1バネ741、742と、第2固定部材75と、第2可動部材76と、第2付勢部材としての第2バネ77と、をから構成されている。上記第1固定部材71は、後述する第2固定部材75、第1可動部材72、第2可動部材75、第1バネ741、742、第2バネ77、検出部79等と反力発生ユニット7としてユニット化された状態で棚板8の上側にネジNによって固定されている。第1固定部材71は、例えば円柱状に設けられていて、上下方向に貫通した挿通孔711が設けられている。この挿通孔711には、後述する第1可動部材本体721が上下方向に直動可能に挿通される。
上記第1可動部材72は、第1可動部材本体721と、フランジ部722及び723と、を備えている。上記第1可動部材本体721は、棒状に設けられ、その長手方向が上下方向に沿うように配置され、かつ、初期位置から押切位置の範囲内で上下方向に直動可能に支持されている。第1可動部材本体721は、第1固定部材71の挿通穴711に挿通されると共にその下端が棚板8に設けられた開口81から突出している。上記フランジ部722は、第1可動部材本体721の下端に固定して設けられていて、上述した第1固定部材71との間に後述する第1バネ741を挟む。このフランジ部722の上面にはフェルト、あるいはゴムなどから構成されたストッパ724が設けられている。ストッパ724は、第1可動部材72が押切位置まで押し上げられたときに上述した第1固定部材71の下面と当接して第1可動部材72の直動を規制するストッパである。一方、上記フランジ部723は、後述する第2可動部材76よりも下側の第1可動部材本体721に固定して設けられていて、第2可動部材76との間に後述する第1バネ742を挟む。このフランジ部723の上面にはフェルト、あるいはゴムなどから構成されたストッパ725が設けられている。ストッパ725は、ペダル2の踏み込みが所定量に達したときに後述する第2可動部材76と当接するように設けられる。
上記質量体73は、第1可動部材本体721の上端に固定されて設けられ、第1可動部材本体721、インナーワイヤ51を介してペダル2に荷重を与えている。上記第1バネ741、742は、ペダル2に反力を与える方向に第1可動部材72を付勢する第1付勢部材である。第1バネ741は、第1固定部材71と第1可動部材72のフランジ部722との間に設けられている。即ち、第1バネ741の両端はそれぞれ、第1固定部材71及び第1可動部材72のフランジ部722に当接して支持されている。第1バネ742は、第1可動部材72のフランジ部723と第2可動部材76との間に設けられている。即ち、第1バネ742の両端はそれぞれ、第1可動部材72のフランジ部723及び第2可動部材76に当接して支持されている。上記第2固定部材75は、各部材と反力発生ユニット7としてユニット化された状態で棚板8の上側にネジNによって固定されている。第2固定部材75は、円筒状に設けられていて、その内部に上述した第1固定部材71、第1可動部材72、後述する第2可動部材76が収容される。上記第2可動部材76は、第2可動部材本体761と、円板部762と、を備えている。第2可動部材本体761は、下側が開口された円筒の受皿状に設けられている。この第2可動部材本体761の下端はフランジ状に設けられていて、そのフランジ状の下端と第2固定部材75との間に第2バネ77が挟まれている。第2可動部材本体761は、上下方向に直動可能に設けられている。
上記円板部762は、第2可動部材本体761の上部に固定されて設けられている。円板部762の下側には、フェルト、あるいはゴムなどで構成されたストッパ763が設けられている。このストッパ763は、上述した第2固定部材75の上面と当接して第2可動部材76の直動の初期位置を規制するストッパである。また、円板部762の上側には、ストッパ764が設けられている。このストッパ764は、第1可動部材72が、初期位置のときに質量体73と当接して第1可動部材72の直動を規制するストッパである。上記第2バネ77は、ペダル2に反力を与える方向に第2可動部材76を付勢する第2付勢部材である。第2バネ77は、第2固定部材75と第2可動部材76との間に設けられている。即ち、上記第2バネ77の両端はそれぞれ、第2可動部材本体761のフランジ状の下端及び第2固定部材75に当接して支持されている。なお、第2バネ77は、上述した第2可動部材76の直動の初期位置においてプリテンションがかけられた状態で第2固定部材75と第2可動部材76との間に配置されている。
次に、上述した第1可動部材72、第2可動部材76、第1バネ741、742及び第2バネ77の配置位置の詳細について説明する。上記第1可動部材72、第2可動部材76、第1バネ741、742及び第2バネ77は、互いに同心に配置されている。そして、第1可動部材71及び第2可動部材76が、その同心軸C3方向に直動可能に設けられている。また、第1可動部材72が第1バネ741、742内に挿入され、第2可動部材76が第2バネ77内に挿入されている。そして、第1可動部材72及び第2可動部材76が、互いに同心軸C3方向の位置が重なるように、第1可動部材72が内側に第2可動部材76が外側に配置されている。また、第1バネ742及び第2バネ77が、互いに同心軸C3方向の位置が重なるように、第1バネ742が内側に第2バネ77が外側に配置されている。
また、上記摩擦発生機構78は、人工皮革やフェルトなど擦れると摩擦が発生する摩擦発生部材781と、この摩擦発生部材781に摺接される摺接部782とから構成されている。上記摩擦発生部材781は、第2固定部材75の外側面に取り付けられている。一方、摺接部782は、摩擦発生部材781と摺接するように第2可動部材76に取り付けられている。よって、第2可動部材76が上下方向に直動すると、摩擦発生部材781と摺接部782とが擦れて摩擦が発生する。また、摺接部782は、摩擦発生部材781に向かって付勢されている。この付勢力により、第2可動部材76の直動に伴なって摩擦発生部材781と摺接部782とが擦れることにより摺接部782に発生する揺動を抑えることができる。上記検出部79は、ペダル2の初期位置から押切位置までの全ストロークにおいてペダル2の回動に応じて変位するように設けられた第1可動部材72の動作を検出して、ペダル2の回動を検出する。検出部79は、光センサ791と、グレースケールなど光センサ791により読み取り可能なスケール板792と、から構成されている。そして、上記光センサ791は、固定支持具9を介して各部材と反力発生ユニット7としてユニット化された状態でネジNによって棚板8に固定されている。一方、スケール板792は、第1可動部材72に固定されている。
次に、上述した構成の電子鍵盤楽器のペダル装置1のペダル踏み込み時の動作について図4及び図6を参照して以下説明する。まず、演奏者が踏み込み操作を行っていない図4(A)に示す初期状態においては、質量体73の荷重や第1バネ741、742、第2バネ77の力により質量体73がストッパ764に当接する位置まで第1可動部材72が押し下げられている。また、図3(A)に示す初期状態では、第1バネ742が発生する図中上方向の力(弾性力)は、第2可動部材76の図中下方向にかかっている力よりも小さい。なお、上記第2の可動部材72の図中下方向にかかっている力は、第2の可動部材72の自重による重力、摩擦発生機構78による摩擦力、第2バネ77が発生する図中の下方向のバネ力の合力である。よって、円板部762がストッパ763に当接する位置まで第2可動部材76が押し下げられている。これにより、ペダル2が初期位置に保持される。そして、演奏者が踏み込み操作を行ってペダル2の前端を押し下げると、ペダル2が支点C1を中心に回動する。このペダル2の回動がインナーワイヤ51を介して第1可動部材72に伝達して第1可動部材72が押し上げられる。なお、第1可動部材72が押し上げられ始めた状態では、第1バネ742が発生する図中上方向の力(弾性力)は、第2可動部材76の図中下方向にかかっている力よりも小さいままであるため、第2可動部材76は動かない。そのため、第1可動部材72が押し上げられるに従って第1バネ741、742の両方が変位して(縮む)、その弾性力が増加する。よって、図5中の領域A01に示すように、演奏者の踏み込み量に応じてペダル2に発生する反力が第1バネ741、742の両方のバネ定数に応じた増加率で増加する。
次に、ペダル2の踏み込み量が所定量に達すると、第1バネ742が第2可動部材76に対して発生する弾性力が、第2可動部材76にかかる図中下方向(前記弾性力に抗する方向)の力と等しくなる。さらに、ペダル2を踏み込むと、やがて前記弾性力が第2可動部材76にかかる図中下方向の力を上回り、伝達部材として働く第1バネ742を介して第1可動部材71が第2可動部材76を押し上げる。第1可動部材72に設けたストッパ725は、前記弾性力が第2可動部材76にかかる図中下方向の力と等しくなったときに、図4(B)に示すように第2可動部材76に当接するように設定されている。よって、本実施形態では、第1可動部材72に設けたストッパ25によって、第1可動部材72の変位が直接、第2可動部材76で伝達されるようにもなっている。そして、第1可動部材72、第2可動部材76が押し上げられるに従って第1バネ741、第2バネ77は縮むが、第1バネ742は縮まなくなる。よって、図5中の領域A2に示すように、演奏者の踏み込み量に応じてペダル2に発生する反力が第1バネ741及び第2バネ72の両方のバネ定数に応じた増加率で増加する。上述したように第1バネ742は縮まなくなるので反力の増加率には寄与しなくなる。本実施形態では、例えば第2バネ77のバネ定数を第1バネ742のバネ定数より小さくするなどして、領域A2での反力の増加率が領域A01での反力の増加率より小さくなるようにしている。また、上述したように第1バネ742の弾性力が第2可動部材76にかかる図中下方向の力と等しくなったときに、第2可動部材76とストッパ725とが当接するように設定することにより、図5中実線で示すように領域A1と後述する領域A2との境界で、滑らかに繋がるような反力特性が実現できる。
さらに、演奏者がペダル2を踏み込むと、ペダル2が下限ストッパ4に、ほぼ同時に図4(C)に示すように第1可動部材72に設けたストッパ724が第1固定部材71にそれぞれ当接してペダル2が押切状態となる。これら下限ストッパ4及びストッパ724によって、図5中の領域A3に示すように、演奏者の踏み込み量に応じてペダル2に発生する反力が急増する。以上説明した動作をまとめると、第1バネ741は、第1可動部材72のみが移動する領域A01と、第1可動部材72及び第2可動部材76の両方が移動する領域A2と、ストッパ当接後の押し込み領域である領域A3と、の全領域においてペダル2に発生する反力の増加率に寄与する。第1バネ742は、上記領域A01のみにおいてペダル2に発生する反力の増加率に寄与する。第2バネ77は、領域A2、A3においてペダル2に発生する反力の増加率に寄与する。上記第1バネ741は、全領域においてペダル2に発生する反力変化に寄与することによって、ペダル2の操作性を安定させる効果がある。
上述した第1実施形態によれば、ペダル2の回動を反力発生ユニット7の第1可動部材72に伝える伝達部材が駆動ワイヤ5で設けられ、反力発生部701と検出部79とが一体に形成された反力発生ユニット7が、ペダルボックス102内のペダル2とは離間した楽器本体101に設けられている。これにより、ペダル2周りの部品点数を削減してペダルボックス102の小型化を測ることができる。このペダルボックス102の小型化によりペダル2回りのデザインの自由度を向上させることができる。また、伝達部材を駆動ワイヤ5で構成することにより、反力発生部701と検出部79とが一体に形成された反力発生ユニット7の配置自由度が向上する。
また、上述した第1実施形態によれば、第1可動部材72及び第2可動部材76の両方が変位している領域A2でのペダル2に発生する反力の増加率よりも第1可動部材72のみが変位している領域A01でのペダル2に発生する反力の増加率が大きくなるように、第1バネ741、742及び第2バネ77を設けている。これにより、生ピアノのペダルの反力特性を正確に再現することができる。
また、上述した第1実施形態によれば、反力発生ユニット7が、楽器上部104内に配置される。よって、電気的な配線が必要が検出部79を楽器上部104内に配置することができるため、電気的な配線を楽器上部104のユニットで全て完結することができ、組み立てや検査時の効率を向上を図ることができる。
上述した第1実施形態によれば、第1可動部材72、第2可動部材76、第1バネ741、742及び第2バネ77が互いに同心に配置され、第1可動部材72及び第2可動部材76が、同心軸C3方向に直動可能に設けられているので、反力発生ユニット7の小型化及びコストダウンを図ることができる。また、第1可動部材72、第2可動部材76、第1バネ741、742及び第2バネ77を一体のユニットとして構成することにより、取扱性及び組付性の向上を図ることができる。
また、上述した第1実施形態によれば、第1バネ742と第2バネ77とが互いに同心軸C3方向の位置が重なるように第1バネ742が内側に第2バネ77他方が外側に配置される。よって、反力発生ユニット7の軸方向の長さを低減し、さらに小型化を図ることができる。
ところで、生ピアノのペダル操作時の反力(F)発生要素としては、「ばね(弾性項k)」、「質量(慣性項m)」、「摩擦(μ)」、「粘性(ρ)」の4要素があり、運動方程式では下記のように表される。
F=m(dx2/dt2)+ρ(dx/dt)+kx+μN
このうち粘性項は要素としてあるが、影響が小さく無視できる程度であることが知られている。よって、上述した第1実施形態のように、摩擦発生機構78を備えることにより、摩擦に応じた反力を発生させることができるため、より一層、生ピアノのペダル2の反力特性を正確に再現することができる。しかも、上述したように反力発生ユニット7と一体に摩擦発生機構78を設けることにより、反力発生ユニット7と摩擦発生機構78とを別々に設ける場合に比べて取扱性、組立性の向上を図ることができる。
なお、上述した第1実施形態によれば、第1バネ742の弾性力が第2可動部材76にかかる図中下方向の力と等しくなったときに、第2可動部材76とストッパ725とが当接するように設定していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、第1バネ742の弾性力が第2可動部材76にかかる図中下方向の力と等しくなる以前に第2可動部材76とストッパ725とが当接するように設定してもよい。この場合、図5中の点線で示すように、領域A1と領域A2との境界で段差が生じる反力特性となる。
次に、上記反力発生ユニット7の変形例を図6及び図7に基づいて説明する。なお、図5及び図6は、概念図であり、ストッパ類などは省略してある。また、図6及び図7において、図3について上述した反力発生ユニット7と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。なお、図中、引用符号10は反力発生ユニット7の固定部材である。上述した第1実施形態では第1可動部材72を付勢する第1付勢部材として2つの第1バネ741、742を用いていたが、図6及び図7に示すように第1付勢部材としては、第1可動部材72と第2可動部材76との間に設けた第1バネ742のみを用いてもよい。この場合も、第1バネ742は、図5の領域A01のみにおいてペダル2に発生する反力の増加率に寄与する。第2バネ77は、領域A2、A3においてペダル2に発生する反力の増加率に寄与する。
また、上述した第1実施形態では質量体73を第1可動部材72に設けていたが、図7に示すように質量体73を第2可動部材76に設けるようにしてもよい。また、上述した第1実施形態では、摩擦発生機構78を構成する摩擦発生部材781を第2固定部材75に設け、摺接部782を第2可動部材72に設けていた。しかしながら、本発明はこれに限ったものではない。図6に示すように摩擦発生部材781を固定部材10に固定して、摺接部782を第1可動部材72に固定された質量体73の側面としてもよい。また、図7に示すように、摩擦発生部材781を固定部材9に固定して、摺接部782を第2可動部材76に固定された質量体73の側面にしてもよいし、摩擦発生部材781を第2可動部材76の外側面に固定して、摺接部782を固定部材10の内側面としてもよい。即ち、摩擦発生機構78としては摩擦発生部材781、摺接部782のうち何れか一方を第1可動部材72又は第2可動部材76に設け、他方を固定部材9に設けるようにすればよい。
また、上述した第1実施形態では、検出部791のスケール板792を第1可動部材72の上側に設け、スケール板792を読み取り可能に光センサ791を固定していたが、本発明はこれに限ったものではない。上記スケール板792としては、第1可動部材72に固定されていればよく、例えば図7に示すように第1可動部材72の下側に設けるようにしてもよい。
次に、上記反力発生ユニット7の別の変形例を図8及び図9に基づいて説明する。図8において、図3について上述した反力発生ユニット7と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。上述した第1実施形態では第1付勢部材として第1バネ742は、初期位置で第1可動部材72のフランジ部723に当接していて、初期位置からペダル2に反力を発生する方向に第1可動部材72を付勢していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図8に示すように、初期状態では第1可動部材72のフランジ部723と離間させるように第1バネ742を設けて、一定量踏み込んでから第1バネが第1可動部材72に当接するようにしてもよい。以上の構成によれば、図9に示すように、第1バネ742と第1可動部材72とが当接する前の領域A0では、第1バネ741のみが第1可動部材72に付勢力を与え、第1バネ742と第1可動部材72が当接した後、かつ、第1可動部材72が第2可動部材76を押し上げる前の領域A1では、2つの第1バネ741、742が第1可動部材に付勢力を与える。即ち、図8に示す変形例では、第1バネ741は、図9中の領域A0〜A3の全領域においてペダル2に発生する反力の増加率に寄与する。第1バネ742は、図9中の領域A1のみにおいてペダル2に発生する反力の増加率に寄与する。第2バネ77は、領域A2、A3においてペダル2に発生する反力の増加率に寄与する。よって、領域A1での増加率を領域A0での増加率よりも大きくすることができ、異なる機種やメーカーの生ピアノのペダル操作を再現することができる。また、上述した第1実施形態では、領域A2での反力の増加率が、領域A01のうち領域A2と連続する一部の領域A1だけでなく領域A01全体の反力の増加率よりも小さくなるように第1バネ741、742、第2バネ77が設けられていたが、図8に示す変形例では、領域A2での反力の増加率が、領域A1のみの反力の増加率より小さくなるように第1バネ741、742、第2バネ77を設けることができる。
なお、上述した第1実施形態では、第1可動部材72及び第2可動部材76が、互いに同心軸C3方向の位置が重なるように第1可動部材72が内側に第2可動部材76が外側に配置されていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、第2可動部材76が内側に第1可動部材72が外側になるように配置されていてもよい。即ち、第1可動部材72及び第2可動部材76が、互いに同心軸C3方向の位置が重なるように、第1可動部材72及び第2可動部材76の一方が内側に他方が外側に配置されていればよい。
また、上述した第1実施形態では、第1バネ742及び第2バネ77が、互いに同心軸C3方向の位置が重なるように第1バネ742が内側に第2バネ77が外側に配置されていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、第1バネ741及び第2バネ77が、互いに同心軸C3方向の位置が重なるように、第1バネ741が内側に第2バネ77が外側に配置されていてもよい。また、第1バネ741及び第1バネ742が、互いに同心軸C3方向の位置が重なるように、第1バネ741及び742の一方が内側に他方が外側に配置されていてもよい。即ち、第1付勢部材及び第2付勢部材の何れかを構成する複数のバネのうち2つが、互いに同心軸C3方向の位置が重なるように、一方が内側に他方が外側に配置されていればよい。
また、上述した第1実施形態では、図5に示すように、第1可動部材72が第2可動部材76を押し上げた後の領域A2での反力の増加率が、第1可動部材72が第2可動部材76を押し上げる前の領域A01での反力の増加率よりも小さくなるように、第1バネ741、742、第2バネ77を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、第1可動部材72が第2可動部材76を押し上げた後の領域A2での反力の増加率が、第1可動部材72が第2可動部材76を押し上げる前の領域A01での反力の増加率よりも大きくなるように、第1バネ741、742、第2バネ77を設けてもよい。また、上述した第1実施形態では、第1可動部材72を付勢する第1付勢部材として2つの第1バネ741、742を用いていたが、例えば、第1付勢部材としては、第1可動部材72と第1固定部材71との間に設けた第1バネ741のみを用いてもよい。
第2実施形態
次に、本発明の電子鍵盤楽器の第2実施形態について図10を参照して以下説明する。なお、図10において、図1について上述した第1実施形態と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。上述した第1実施形態では3つの反力発生ユニット7を楽器上部104内に左右方向に沿って配置されていたが、図10に示す第2実施形態のように前後方向に3つの反力発生ユニット7を配置してもよい。また、楽器上部104から下垂した1つの下垂部106の下端にペダルボックス102が設けられている場合、3つの反力発生ユニット7に対応する3つの駆動ワイヤ5をその1つの下垂部106内に配策される。
第3実施形態
次に、本発明の電子鍵盤楽器の第3実施形態について図11を参照して以下説明する。なお、図11において、図1について上述した第1実施形態と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。上述した第1実施形態では、楽器上部104に反力発生ユニット7を配置し、下垂部106内に駆動ワイヤ5を配策していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図11に示すように下垂部106に電子部品が配置される電子部品配置領域AEが設けられるなどして、下垂部106内に駆動ワイヤ5を配策することができなければ、足部105に反力発生ユニット7を配置すると共にペダルボックス102と足部105とを連結する連結部107を設け、連結部107に駆動ワイヤ5を配策してもよい。また、上記電子部品配置領域AEの両側にスピーカボックスを設けても良い。
なお、上述した第1〜第3実施形態では、インナーワイヤ51をアウターチューブ52で固定していた。しかしながら、本発明はこれに限ったものではない。例えば、ワイヤをプーリーで固定してもよい。
なお、上述した第1〜第3実施形態の反力発生ユニット7では、第1可動部材72、第2可動部材76が同心配置されており、また各ペダル2ごとに同じ構成の反力発生ユニット7を使用していたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図11の足部105のように、左右方向に比して上下、前後方向にスペース的余裕がある足部105に反力発生ユニット7を配置する場合には、例えば図12の模式図に示すように反力発生ユニット7を設けても良い。なお、図12において、図1について上述した第1実施形態と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。同図に示すように、反力発生ユニット7は、長尺レバー式の第1可動部材72、第2可動部材76を備え、幅が狭い反力発生ユニット7を配置するようにしてもよい。さらに、第1〜第3実施形態のように反力発生ユニット7と図12の模式図に示すような反力発生ユニットをスペースに応じて組み合わせて使用しても良い。
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。