しかしながら、上述のように偏心部間の距離を長くすると、主軸受と副軸受との間の距離(軸受間距離)が長くなるため、駆動軸が撓む虞がある。また、4気筒やそれ以上の多気筒ロータリ式圧縮機を構成する場合、偏心部間の距離を僅かに長くするだけでも、軸受間距離が大幅に長くなり、駆動軸がより撓み易くなるという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮機構部を3つ以上備えた多気筒ロータリ式圧縮機において、駆動軸の撓みを抑制すると共にピストンの組付性の向上を図ることにある。
第1の発明は、シリンダ(41,42,43,44)と該シリンダ(41,42,43,44)内で偏心回転するピストン(51,52,53,54)と該ピストン(51,52,53,54)と上記シリンダ(41,42,43,44)との間に形成された圧縮室(S1,S2,S3,S4)を高圧室(S21,S22,S23,S24)と低圧室(S11,S12,S13,S14)とに仕切るブレード(55,56,57,58)とを有する圧縮機構部(21,22,23,24)が3つ以上積み重ねられた圧縮機構(20)と、上記各圧縮機構部(21,22,23,24)を貫通し、上記各ピストン(51,52,53,54)がそれぞれ外嵌する偏心部(33c,33d,33e,33f)と、該各偏心部(33c,33d,33e,33f)をそれぞれ連結する中間軸部(33g,33h,33i)とを有する駆動軸(33)とを備えた多気筒ロータリ式圧縮機であって、上記3つ以上の圧縮機構部(21,22,23,24)のうち、両端に設けられた圧縮機構部(21,24)の間に配された中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)は、該ピストン(52,53)と上記駆動軸(33)の一端との間に位置する中間軸部(33h,33i)よりも軸方向の長さが短い複数のピストン片(52a,53a)に分割され、上記中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)と上記駆動軸(33)の一端との間に位置する中間軸部(33h,33i)は、外周面が軸方向に隣り合う偏心部(33d,33e,33f)の外周面よりも軸方向視において内側に位置するように形成され、上記各中間圧縮機構部(22,23)のブレード(56,57)は、軸方向に上記ピストン片(52a,53a)と等しい長さを有する複数のブレード片(56a,57a)に分割され、上記各中間圧縮機構部(22,23)のピストン片(52a,53a)とブレード片(56a,57a)とは、それぞれ一体に形成されている。
第1の発明では、駆動軸(33)の軸方向に積み重ねられた圧縮機構部(21,22,23,24)のうちの両端の圧縮機構部(21,24)の間に配された中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)が、該ピストン(52,53)と駆動軸(33)の一端との間に位置する中間軸部(33h,33i)よりも軸方向の長さが短い複数のピストン片(52a,53a)に分割されている。また、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)と駆動軸(33)の一端との間に位置する中間軸部(33h,33i)は、その外周面が軸方向に隣り合う偏心部(33d,33e,33f)の外周面よりも軸方向視において内側に位置するように形成されている。
上述のようにロータリ式圧縮機(10)を構成することで、中間圧縮機構部(22,23)に対応する偏心部(33d,33e)にピストン(52,53)を外嵌する際に、ピストン片(52a,53a)毎に該駆動軸(33)の一端側から挿通させていくことによって、該ピストン片(52a,53a)を容易に中間圧縮機構部(22,23)に対応する偏心部(33d,33e)に外嵌することができる。
つまり、軸方向視において、中間軸部(33h,33i)の外周面が軸方向に隣り合う偏心部(33d,33e,33f)の外周面よりも一部分でも外側に位置するように形成されていると、偏心部(33e,33f)を通過中のピストン片(52a,53a)が中間軸部(33h,33i)に当接してしまう。しかしながら、中間軸部(33h,33i)は、該中間軸部(33h,33i)の外周面が軸方向に隣り合う偏心部(33d,33e,33f)の外周面よりも軸方向視において内側に位置するように形成されているため、ピストン片(52a,53a)を中間軸部(33h,33i)に当接させることなく容易に中間軸部(33h,33i)を通過させることができる。また、ピストン片(52a,53a)は、中間軸部(33h,33i)よりも軸方向の長さが短くなるように形成されている。そのため、挿通方向の手前側の偏心部(33e,33f)を通過させる際に、ピストン片(52a,53a)の挿通方向の前端部が奥側の偏心部(33d,33e)に当接してしまうことがなく、また、該ピストン片(52a,53a)を中間軸部(33h,33i)において奥側の偏心部(33d,33e)の偏心方向にずらすことができる。その結果、ピストン片(52a,53a)を奥側の偏心部(33d,33e)に当接させることなく容易に奥側の偏心部(33d,33e)に外嵌する又は奥側の偏心部(33e)を通過させることができる。
また、第1の発明では、各中間圧縮機構部(22,23)のブレード(56,57)は、軸方向にピストン片(52a,53a)と等しい長さを有する複数のブレード片(56a,57a)に分割され、各ピストン片(52a,53a)とブレード片(56a,57a)とはそれぞれ一体に形成されている。
ここで、中間圧縮機構部(22,23)がピストン(52,53)とブレード(56,57)とが別体に形成された所謂ローリングピストン型の圧縮機構部である場合、ピストン(52,53)を軸方向に複数のピストン片(52a,53a)に分割したときに、複数のピストン片(52a,53a)の外径にばらつきがあると、いずれかのピストン片(52a,53a)とブレード(56,57)との間に隙間が生じてしまう。そのため、該隙間から流体が漏れてしまう虞があった。
しかしながら、第1の発明では、上述のように、中間圧縮機構部(22,23)のブレード(56,57)を軸方向に複数のブレード片(56a,57a)に分割し、該ブレード片(56a,57a)とピストン片(52a,53a)とを一体に形成した所謂揺動ピストン型の圧縮機構部に構成することにより、ピストン(52,53)を複数のピストン片(52a,53a)に分割しても、いずれかのピストン片(52a,53a)とブレード(56,57)との間に隙間が形成されることが無い。よって、該隙間から流体が漏れ出すことがない。
第2の発明は、第1の発明において、上記中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)と上記駆動軸(33)の一端との間に位置する中間軸部(33h,33i)は、上記中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)よりも軸方向の長さが短くなるように形成されている。
第2の発明では、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)と駆動軸(33)の一端との間に位置する中間軸部(33h,33i)は、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)よりも軸方向の長さが短くなるように形成されている。このように構成すると、ピストン(52,53)を偏心部(33d,33e)に組付ける際に、中間軸部(33h,33i)においてピストン(52,53)の径方向位置をずらすことができなくなり、中間の偏心部(33d,33e)にピストン(52,53)を組付けることができなくなる虞がある。しかしながら、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)は、該ピストン(52,53)と駆動軸(33)の一端との間に位置する中間軸部(33h,33i)よりも軸方向の長さが短い複数のピストン片(52a,53a)に分割されているため、該ピストン片(52a,53a)毎に駆動軸(33)に挿通させていくことにより、中間圧縮機構部(22,23)に対応する偏心部(33d,33e)に容易にピストン(52,53)を組付けることができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記駆動軸(33)は、上記偏心部(33c,33d,33e,33f)のうちの片側端の偏心部(33c)に連結された主軸部(33a)と、他の片側端の偏心部(33f)に連結された副軸部(33b)とをさらに有し、上記各中間軸部(33g,33h,33i)は、上記主軸部(33a)及び副軸部(33b)よりも大径に形成されている。
第3の発明では、各偏心部(33c,33d,33e,33f)をそれぞれ連結する中間軸部(33g,33h,33i)を、主軸部(33a)及び副軸部(33b)よりも大径に形成することにより、流体の圧縮動作によって撓み易い中間軸部(33g,33h,33i)の剛性が高まる。
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記流体は二酸化炭素である。
第4の発明では、多気筒ロータリ式圧縮機(10)において二酸化炭素が圧縮される。そのため、二酸化炭素を圧縮する場合、高低差圧が大きいために駆動軸(33)に大きな力が作用し、駆動軸(33)が撓み易くなる。
本発明によれば、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)を、軸方向の長さが該ピストン(52,53)と駆動軸(33)の一端との間に位置する中間軸部(33h,33i)の軸方向の長さ(偏心部間の距離)よりも短い複数のピストン片(52a,53a)に分割し、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)と駆動軸(33)の一端との間に位置する中間軸部(33h,33i)を、その外周面が隣り合う偏心部(33c,33d,33e,33f)の外周面よりも軸方向視において内側に位置するように形成した。そして、ピストン片(52a,53a)毎に駆動軸(33)の一端側から挿通して偏心部(33d,33e)に組み付けることとした。これにより、中間圧縮機構部(22,23)に対応する偏心部(33d,33e)にピストン(52,53)を容易に外嵌することができる。また、従来のように偏心部間の距離を拡大することなく、ピストン(52,53)を分割することによって、該ピストン(52,53)を容易に偏心部(33d,33e)に組み付けることができるため、多気筒化に伴う軸受間距離の長尺化を抑制することができる。これにより、多気筒ロータリ式圧縮機(10)において、駆動軸(33)の撓みを抑制することができる。以上より、本ロータリ式圧縮機(10)によれば、駆動軸(33)の撓みを抑制しつつピストンの組付性の向上を図ることができる。
また、本発明によれば、ピストン片(52a,53a)とブレード片(56a,57a)とが一体に形成された所謂揺動ピストン型に構成しているため、上述のようにピストン(52,53)を複数のピストン片(52a,53a)に分割しても、ピストン片(52a,53a)とブレード(56,57)との間に隙間が生じることがない。そのため、高圧室(S22,S23)の流体がピストン片(52a,53a)とブレード(56,57)との隙間から低圧室(S12,S13)側へ漏れ出すことを防止することができる。
また、第2の発明によれば、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)と駆動軸(33)の一端との間に位置する中間軸部(33h,33i)の軸方向の長さを中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)の軸方向の長さよりも短く形成しても中間圧縮機構部(22,23)に対応する偏心部(33d,33e)に容易にピストン(52,53)を組付けることができる。その結果、中間軸部(33h,33i)を短尺化して多気筒化に伴う軸受間距離の長尺化を抑制することができる。従って、駆動軸(33)の撓みをより抑制することができる。
また、第3の発明によれば、各偏心部(33c,33d,33e,33f)を連結する中間軸部(33g,33h,33i)を主軸部(33a)及び副軸部(33b)よりも大径に形成することにより、流体の圧縮動作によって撓み易い中間軸部(33g,33h,33i)の剛性を高めることができる。そのため、駆動軸(33)の撓みをより抑制することができる。
また、第4の発明によれば、多気筒ロータリ式圧縮機(10)において二酸化炭素を圧縮する場合、高低差圧が大きいために駆動軸(33)に大きな力が作用し、駆動軸(33)が撓み易くなる。しかしながら、上述のようにピストン(52,53)を軸方向に複数のピストン片(52a,53a)に分割することにより、偏心部間の距離を長くしなくとも中間圧縮機構部(22,23)に対応する偏心部(33d,33e)にピストン(52,53)を外嵌することができる。従って、冷媒として二酸化炭素を用いても、軸受間距離の短尺化を図ることができ、駆動軸(33)の撓みを抑制することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下では、本発明の実施形態としてロータリ式圧縮機の一例を説明する。このロータリ式圧縮機は、冷媒(例えば二酸化炭素)が充填されて蒸気圧縮冷凍サイクルを行う冷凍装置の冷媒回路に設けられる。
図1は、本発明の実施形態に係るロータリ式圧縮機(10)の縦断面図である。このロータリ式圧縮機(10)は、縦長で円筒形の密閉容器であるケーシング(11)を備えている。該ケーシング(11)内には、図1における下寄りの位置に圧縮機構(20)が配置され、上寄りの位置に電動機(30)が配置されている。
圧縮機構(20)は、4つの圧縮機構部を備えている。具体的には、圧縮機構(20)は、図1において上側から下側に向かって、上側圧縮機構部(21)、第1中間圧縮機構部(22)、第2中間圧縮機構部(23)、下側圧縮機構部(24)の順に設けられた4つの圧縮機構部を備えている。これらの圧縮機構部(21,22,23,24)は、詳細な構成については後述するが、所謂揺動ピストン型のロータリ式圧縮機構部に構成されている。これらの圧縮機構部(21,22,23,24)では、後述するピストン(51,52,53,54)がシリンダ(41,42,43,44)内で揺動運動することによって圧縮室(S1,S2,S3,S4)内の冷媒を圧縮する。
ケーシング(11)は、円筒形状の胴部(11a)と、該胴部(11a)の上端を閉塞する椀状の上部鏡板(11b)と、胴部(11a)の下端を閉塞する椀状の下部鏡板(11c)とを備えている。
ケーシング(11)の胴部(11a)には、吸入管(12)が貫通するように設けられている。吸入管(12)は、圧縮機構(20)に接続されている。また、ケーシング(11)の上部鏡板(11b)には、吐出管(13)が貫通するように設けられている。吐出管(13)は、ケーシング(11)の内部空間(S0)であって上記電動機(30)の上方において開口している。また、ケーシング(11)内の下部には、圧縮機構(20)等の各摺動部に供給される潤滑油が貯留される油溜まり(11d)が形成されている。
上記ケーシング(11)の内部には、上下方向に延びる駆動軸(33)が設けられている。該駆動軸(33)は、上端部を含む主軸部(33a)と、下端部を含む副軸部(33b)と、該主軸部(33a)と副軸部(33b)との間に設けられた4つの偏心部(図1において上から順に、上部偏心部(33c)、第1中間偏心部(33d)、第2中間偏心部(33e)、下部偏心部(33f))と、該4つの偏心部をそれぞれ連結する3つの中間軸部(図1において上から順に、第1中間軸部(33g)、第2中間軸部(33h)、第3中間軸部(33i))とを備えている。
上記主軸部(33a)は、副軸部(33b)に比べて大幅に長く形成されている。主軸部(33a)の上部には電動機(30)が連結されている。また、主軸部(33a)の下部は、ケーシング(11)の胴部(11a)に固定された主軸受(71)によって回転自在に支持されている。
一方、上記副軸部(33b)は、主軸部(33a)に比べて短く形成されている。副軸部(33b)は、ケーシング(11)の胴部(11a)に固定された副軸受(81)によって回転自在に支持されている。
また、図2に拡大して示すように、上記4つの偏心部(33c,33d,33e,33f)は、駆動軸(33)の下部において、隣り合う偏心部間の距離をDとして等間隔に設けられている。つまり、4つの偏心部(33c,33d,33e,33f)をそれぞれ連結する3つの中間軸部(33g,33h,33i)は、軸方向の長さがDとなるように形成されている。そして、4つの偏心部(33c,33d,33e,33f)は、主軸部(33a)及び副軸部(33b)よりも大径の円柱形状となるように形成されている。そして、上部偏心部(33c)は、軸方向視において、その外周面が主軸部(33a)の外周面よりも外側に位置するように形成される一方、下部偏心部(33f)は、軸方向視において、その外周面が副軸部(33b)の外周面よりも外側に位置するように形成されている。言い換えると、主軸部(33a)は、軸方向視において、その外周面が上部偏心部(33c)の外周面よりも内側に位置するように形成され、副軸部(33b)は、軸方向視において、その外周面が下部偏心部(33f)の外周面よりも内側に位置するように形成されている。
また、4つの偏心部(33c,33d,33e,33f)は、その軸心が主軸部(33a)及び副軸部(33b)の軸心から所定量Eだけそれぞれ偏心している。なお、4つの偏心部(33c,33d,33e,33f)の偏心方向は、軸方向に隣り合う偏心部間で位相が90°ずつずれるように形成されている。また、図1及び図2では、上部偏心部(33c)及び第2中間偏心部(33e)の中心は、主軸部(33a)及び副軸部(33b)の軸中心に対して偏心していないように描かれているが、実際には、紙面に垂直な方向に所定量Eだけ偏心している。
3つの中間軸部(33g,33h,33i)は、それぞれ軸方向の長さが等しく、その長さがDとなるように形成されている。また、3つの中間軸部(33g,33h,33i)は、半径R1が4つの偏心部(33c,33d,33e,33f)の半径R2から偏心長さEを減じた長さ以下の長さとなるように形成されている。つまり、各中間軸部(33g,33h,33i)は、その外周面が各偏心部(33c,33d,33e,33f)の外周面よりも軸方向視において内側に位置するように形成されている。言い換えると、各中間軸部(33g,33h,33i)は、どの角度位置においても、各偏心部(33c,33d,33e,33f)よりも径方向外側に出っ張らないように形成されている。一方、各中間軸部(33g,33h,33i)は、主軸部(33a)及び副軸部(33b)よりも大径に形成されている。
なお、図1に示すように、第1中間軸部(33g)には第1ミドルプレート(60a)が連結され、第2中間軸部(33h)には第2ミドルプレート(60b)が連結され、第3中間軸部(33i)には第3ミドルプレート(60c)が連結されている。
図1に示すように、上記電動機(30)は、ステータ(31)とロータ(32)とを備えている。ステータ(31)は、ケーシング(11)の胴部(11a)の内壁に固定されている。また、ロータ(32)は、ステータ(31)の内側に配置されて駆動軸(33)の主軸部(33a)と連結されている。このような構成により、上記駆動軸(33)は、ロータ(32)の回転に伴って回転する。
上述したように、本実施形態の圧縮機構(20)は、上側圧縮機構部(21)、第1中間圧縮機構部(22)、第2中間圧縮機構部(23)及び下側圧縮機構部(24)の4つの圧縮機構部を備えている。これらの圧縮機構部(21,22,23,24)は、駆動軸(33)の軸方向に積み重ねられた状態で駆動軸(33)に連結されている。
具体的には、図3に示すように、上側圧縮機構部(21)は、シリンダ(41)と、該シリンダ(41)内に設けられて圧縮室(S1)を形成するピストン(51)と、圧縮室(S1)を低圧側の低圧室(S11)と高圧側の高圧室(S21)とに仕切るブレード(55)とを備えている。
第1中間圧縮機構部(22)は、シリンダ(42)と、該シリンダ(42)内に設けられて圧縮室(S2)を形成するピストン(52)と、圧縮室(S2)を低圧側の低圧室(S12)と高圧側の高圧室(S22)とに仕切るブレード(56)とを備えている。
第2中間圧縮機構部(23)は、シリンダ(43)と、該シリンダ(43)内に設けられて圧縮室(S3)を形成するピストン(53)と、圧縮室(S3)を低圧側の低圧室(S13)と高圧側の高圧室(S23)とに仕切るブレード(57)とを備えている。
下側圧縮機構部(24)は、シリンダ(44)と、該シリンダ(44)内に設けられて圧縮室(S4)を形成するピストン(54)と、圧縮室(S4)を低圧側の低圧室(S14)と高圧側の高圧室(S24)とに仕切るブレード(58)とを備えている。
上記シリンダ(41,42,43,44)は、ドーナツ板状に形成され、中央の孔にはピストン(51,52,53,54)が収容されている。そして、シリンダ(41,42,43,44)とピストン(51,52,53,54)との間に上記圧縮室(S1,S2,S3,S4)が形成されている。また、シリンダ(41,42,43,44)には、吸入ポート(41a,42a,43a,44a)と吐出ポート(41b,42b,43b,44b)とが形成されている。
なお、各シリンダ(41,42,43,44)の吸入ポート(41a,42a,43a,44a)は、それぞれ連通するように形成されている(図4参照)。具体的には、各シリンダ(41,42,43,44)間に設けられた第1〜第3ミドルプレート(60a,60b,60c)に、各吸入ポート(41a,42a,43a,44a)を連通する連通孔(61)が形成されている。また、主軸受(71)には、連通孔(61)によって連通された吸入ポート(41a,42a,43a,44a)に連通するように吸入通路(71a)が形成されている。具体的には、吸入通路(71a)は、吸入ポート(41a)の上端から上方に延びた後、側方に折れ曲がるように形成されている。該吸入通路(71a)には、前述の吸入管(12)が挿入されている。
図示を省略するが、吐出ポート(41b,42b,43b,44b)もそれぞれ連通するように形成されている(図3参照)。つまり、各シリンダ(41,42,43,44)間に設けられた第1〜第3ミドルプレート(60a,60b,60c)に、各吸入ポート(41a,42a,43a,44a)を連通する連通孔(62)が形成されている。また、図示を省略しているが、主軸受(71)には、連通孔(62)によって連通された吐出ポート(41b,42b,43b,44b)に連通するように吐出通路が形成されている。吐出通路の出口端は主軸受(71)の上端面に形成され、吐出通路はケーシング(11)の内部空間(S0)に連通している。また、吐出ポート(41b,42b,43b,44b)の入口端には、該入口端を開閉する吐出弁(63)が設けられている。該吐出弁(63)は、各高圧室(S21,S22,S23,S24)と吐出ポート(41b,42b,43b,44b)との圧力差が所定値以上になると開く一方、所定値未満となると閉じるように構成されている。
また、シリンダ(41,42,43,44)には、4つの貫通孔(64)が形成されている。該貫通孔(64)は、各圧縮機構部(21,22,23,24)から冷媒と共に吐出された潤滑油を、油溜まり(11d)に返送するために設けられている。また、これらの貫通孔(64)によって軽量化を図ることもできる。さらに、シリンダ(41,42,43,44)には、複数のボルト穴(65)が形成されている。ボルト穴(65)は、主軸部(33a)、シリンダ(41,42,43,44)、第1〜第3ミドルプレート(60a,60b,60c)及び副軸部(33b)を固定用ボルトによって一体的に固定するために使用する。
上記ピストン(51,52,53,54)は円筒形状に形成され、ブレード(55,53,57,58)と一体形成されて所謂揺動ピストンを構成している。上述したように、ピストン(51,52,53,54)は、シリンダ(41,42,43,44)の中央の孔に収容され、該シリンダ(41,42,43,44)の内周面との間に圧縮室(S1,S2,S3,S4)を形成している。なお、本実施形態では、4つのピストン(51,52,53,54)は、互いに軸方向の長さが等しく、且つ4つのシリンダ(41,42,43,44)と軸方向の長さが等しくなるように形成されている。また、4つのピストン(51,52,53,54)は、互いの外径が等しくなるように形成されている。
また、上側圧縮機構部(21)のピストン(51)は、駆動軸(33)の上部偏心部(33c)に嵌め込まれている。そして、ピストン(51)は、駆動軸(33)の軸方向に複数のピストン片(51a)に分割されている。本実施形態では、ピストン(51)は、軸方向の長さの等しい2つのピストン片(51a)に分割されている。なお、ピストン(51)と一体に形成されたブレード(55)も、軸方向の長さの等しい2つのブレード片(55a)に分割されている。
第1中間圧縮機構部(22)のピストン(52)は、駆動軸(33)の第1中間偏心部(33d)に嵌め込まれている。そして、ピストン(52)は、駆動軸(33)の軸方向に複数のピストン片(52a)に分割されている。本実施形態では、ピストン(52)は、軸方向の長さの等しい2つのピストン片(52a)に分割されている。なお、ピストン(52)と一体に形成されたブレード(56)も、軸方向の長さの等しい2つのブレード片(56a)に分割されている。
第2中間圧縮機構部(23)のピストン(53)は、駆動軸(33)の第2中間偏心部(33e)に嵌め込まれている。そして、ピストン(53)は、駆動軸(33)の軸方向に複数のピストン片(53a)に分割されている。本実施形態では、ピストン(53)は、軸方向の長さの等しい2つのピストン片(53a)に分割されている。なお、ピストン(53)と一体に形成されたブレード(57)も、軸方向の長さの等しい2つのブレード片(57a)に分割されている。
下側圧縮機構部(24)のピストン(54)は、駆動軸(33)の下部偏心部(33f)に嵌め込まれている。そして、ピストン(54)は、駆動軸(33)の軸方向に複数のピストン片(54a)に分割されている。本実施形態では、ピストン(54)は、軸方向の長さの等しい2つのピストン片(54a)に分割されている。なお、ピストン(54)と一体に形成されたブレード(58)も、軸方向の長さの等しい2つのブレード片(58a)に分割されている。
各ブレード(55,56,57,58)は、各シリンダ(41,42,43,44)に形成されたブッシュ溝(66)に揺動自在に設けられた一対のブッシュ(67,67)に挟持されている。一対のブッシュ(67,67)は、それぞれ半球形状に形成され、互いの平面部が対向するように設けられている。各ブレード(55,56,57,58)は、該一対のブッシュ(67,67)の平面部の間に摺動自在に挿通されている。
ここで、第1中間圧縮機構部(22)のピストン片(52a)及びブレード片(56a)は、該ピストン(52)の下方側に位置する(ピストン(52)と駆動軸(33)の下端との間に位置する)中間軸部(33h,33i)よりも軸方向の長さが短くなるように形成されている。また、第2中間圧縮機構部(23)のピストン片(53a)及びブレード片(57a)は、該ピストン(53)の下方側に位置する中間軸部(33i)よりも軸方向の長さが短くなるように形成されている。つまり、ピストン片(52a,53a)及びブレード片(56a,57a)の軸方向の長さhは、中間軸部(33h,33i)の軸方向の長さDよりも短い。
また、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)の下方側に位置する(ピストン(52,53)と駆動軸(33)の下端との間に位置する)中間軸部(33h,33i)は、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)よりも軸方向の長さが短くなるように形成されている。つまり、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)の下方側に位置する中間軸部(33h,33i)の軸方向の長さDは、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)の軸方向の長さ2hよりも短い。また、上述したように、中間軸部(33g,33h,33i)は、主軸部(33a)及び副軸部(33b)よりも大径に形成されている。
なお、本実施形態では、各ピストン片(51a,52a,53a,54a)及び各ブレード片(55a,56a,57a,58a)はそれぞれ軸方向の長さが等しくなるように形成されている。また、3つの中間軸部(33g,33h,33i)もそれぞれ軸方向の長さが等しくなるように形成されている。そのため、各ピストン片(51a,52a,53a,54a)及び各ブレード片(55a,56a,57a,58a)は、3つの中間軸部(33g,33h,33i)よりも軸方向の長さが短くなるように形成され(図2参照)、3つの中間軸部(33g,33h,33i)は、各ピストン(51,52,53,54)よりも軸方向の長さが短くなるように形成されている。
−動作−
本ロータリ式圧縮機(10)では、電動機(30)を起動すると、ロータ(32)が駆動軸(33)を回転させる。これにより、駆動軸(33)の4つの偏心部(33c,33d,33e,33f)は、主軸部(33a)及び副軸部(33b)の軸心回りに偏心回転する。そして、偏心部(33c,33d,33e,33f)が偏心回転すると、各圧縮機構部(21,22,23,24)において、ピストン(51,52,53,54)がシリンダ(41,42,43,44)内で揺動運動を行う。それぞれのピストン(51,52,53,54)の揺動運動に従って、吸入管(12)を介して本ロータリ式圧縮機(10)内に吸入された冷媒は、吸入通路(71a)を経て、各吸入ポート(41a,42a,43a,44a)へ分流されて各シリンダ(41,42,43,44)の圧縮室(S1,S2,S3,S4)に吸入される。
具体的には、吸入管(12)内の冷媒は、吸入通路(71a)を通って吸入ポート(41a)に流入し、その一部が連通孔(61)を通って吸入ポート(42a)に流入し、またその一部が連通孔(61)を通って吸入ポート(43a)に流入し、さらにその一部が連通孔(61)を通って吸入ポート(44a)に流入する。このようにして各吸入ポート(41a,42a,43a,44a)に分流された冷媒が各圧縮室(S1,S2,S3,S4)に吸入される。
以上のようにして圧縮機構(20)の各圧縮機構部(21,22,23,24)に吸入された冷媒は、各圧縮室(S1,S2,S3,S4)においてそれぞれ圧縮される。具体的には、各シリンダ(41,42,43,44)内においてピストン(51,52,53,54)が揺動することによって低圧室(S11,S12,S13,S14)と高圧室(S21,S22,S23,S24)の容積が変動する(図5(A)〜(D)を参照)。低圧室(S11,S12,S13,S14)には、該低圧室(S11,S12,S13,S14)の容積が拡大するにつれて冷媒が吸入される。一方、高圧室(S11,S12,S13,S14)では、該高圧室(S11,S12,S13,S14)の容積が縮小するにつれて冷媒が圧縮される。そして、各高圧室(S21,S22,S23,S24)と吐出ポート(41b,42b,43b,44b)との圧力差が所定値以上になると各吐出弁(63)が開き、各高圧室(S11,S12,S13,S14)の高圧の冷媒が各吐出ポート(41b,42b,43b,44b)に吐出される。
各吐出ポート(41b,42b,43b,44b)に吐出された高圧の冷媒は、各連通孔(62)を介して合流され、主軸受(71)に形成された吐出通路を通ってケーシング(11)の内部空間(S0)に吐出される。そして、ケーシング(11)の内部空間(S0)に吐出された高圧の冷媒は、吐出管(13)を介して本ロータリ式圧縮機(10)の外部に吐出される。
−ピストンの組付動作−
次に、4つの圧縮機構部(21,22,23,24)のピストン(51,52,53,54)を各偏心部(33c,33d,33e,33f)に組み付ける際の動作について説明する。なお、実際の組み付けの際には、4つのピストン(51,52,53,54)を組み付ける際に、4つのピストン(41,42,43,44)及び3つのミドルプレート(60a,60b,60c)も組み付けられるが、ここでは4つのピストン(51,52,53,54)の組付動作についてのみ説明する。
本実施形態では、4つの圧縮機構部(21,22,23,24)のピストン(51,52,53,54)のうち、上側圧縮機構部(21)のピストン(51)は、駆動軸(33)の上端から挿通させて上部偏心部(33c)に組み付ける。一方、残りの第1中間圧縮機構部(22)、第2中間圧縮機構部(23)及び下側圧縮機構部(24)のピストン(52,53,54)については、駆動軸(33)の下端から挿通させて各偏心部(33d,33e,33f)に組み付ける。
具体的には、まず、ピストン(51)を駆動軸(33)の主軸部(33a)に挿通して下方に移動させ、上部偏心部(33c)にピストン(51)を嵌め込む。このとき、主軸部(33a)は、外周面が上部偏心部(33c)の外周面よりも軸方向視において内側に位置するように形成されているため、ピストン(51)を上部偏心部(33c)に容易に嵌め込むことができる。なお、本実施形態では、ピストン(51)は軸方向に2つのピストン片(51a)に分割されているため、ピストン片(51a)毎に主軸部(33a)に挿通して上部偏心部(33c)に嵌め込んでもよい(図6(A)参照)。
次に、ピストン(52)を駆動軸(33)の副軸部(33b)に挿通して上方に移動させ、第1中間偏心部(33d)にピストン(52)を組み付ける。その際、ピストン(52)を構成するピストン片(52a)毎に組み付け作業を行う。
具体的には、ピストン片(52a)を副軸部(33b)に挿通させ、下部偏心部(33f)の偏心方向に移動させて該下部偏心部(33f)を通過させる(図6(B)の(1)参照)。そして、第3中間軸部(33i)の外周において、ピストン片(52a)を奥側の第2中間偏心部(33e)の偏心方向に移動させる(図6(B)の(2)参照)。その後、ピストン片(52a)を上方に移動させて第2中間偏心部(33e)を通過させる(図6(B)の(3)参照)。そして、同様にしてピストン片(52a)を、第2中間軸部(33h)の外周において第1中間偏心部(33d)の偏心方向に移動させ(図6(B)の(4)参照)、そのまま上方に移動させて該第1中間偏心部(33d)に嵌め込む。
続いて、ピストン(53)を駆動軸(33)の副軸部(33b)に挿通して上方に移動させ、第2中間偏心部(33e)にピストン(53)を組み付ける。その際、上記ピストン(52)と同様にして、ピストン(53)を構成するピストン片(53a)毎に組み付け作業を行う(図6(C)参照)。
最後に、ピストン(54)を駆動軸(33)の副軸部(33b)に挿通して上方に移動させ、下部偏心部(33f)にピストン(54)を組み付ける。このとき、副軸部(33b)は、外周面が下部偏心部(33f)の外周面よりも軸方向視において内側に位置するように形成されているため、ピストン(54)を下部偏心部(33f)に容易に嵌め込むことができる。なお、本実施形態では、ピストン(54)は軸方向に2つのピストン片(54a)に分割されているため、ピストン片(54a)毎に副軸部(33b)に挿通して下部偏心部(33f)に嵌め込んでもよい(図6(D)参照)。
−実施形態1の効果−
以上のように、本ロータリ式圧縮機(10)によれば、中間圧縮機構部(第1中間圧縮機構部(22)及び第2中間圧縮機構部(23))のピストン(52,53)を、軸方向の長さhが中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)の下方側に位置する(ピストン(52,53)と駆動軸(33)の下端との間に位置する)中間軸部(33h,33i)の軸方向の長さD(偏心部間の距離)よりも短い複数(2つ)のピストン片(52a,53a)に分割し、中間軸部(33h,33i)を、その外周面が隣り合う偏心部(33d,33e,33f)の外周面よりも軸方向視において内側に位置するように形成している。そして、ピストン片(52a,53a)毎に駆動軸(33)の一端側(下端側)から挿通させることにより、中間圧縮機構部(22,23)に対応する偏心部(33d,33e)にピストン(52,53)を容易に嵌め込むことができる。また、従来のように偏心部(33c,33d,33e,33f)間の距離を拡大することなく、ピストン(52,53)を分割することによって、該ピストン(52,53)を容易に偏心部(33d,33e)に組み付けることができるため、多気筒化に伴う軸受間距離の長尺化を抑制することができる。これにより、多気筒ロータリ式圧縮機(10)において、駆動軸(33)の撓みを抑制することができる。以上より、本ロータリ式圧縮機(10)によれば、駆動軸(33)の撓みを抑制しつつピストン(52,53)の組付性の向上を図ることができる。
また、本ロータリ式圧縮機(10)では、中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)の下方側に位置する(ピストン(52,53)と駆動軸(33)の下端との間に位置する)中間軸部(33h,33i)を、軸方向の長さDがピストン(52,53)の軸方向の長さ2hよりも短くなるように形成している。中間軸部(33h,33i)の軸方向の長さをこのように短く形成することとしても、上述のようにピストン(52,53)を複数(2つ)のピストン片(52a,53a)に分割して、ピストン片(52a,53a)毎に組み付けることによって中間圧縮機構部(22,23)に対応する偏心部(33d,33e)に容易にピストン(52,53)を組付けることができる。そのため、中間軸部(33h,33i)を短尺化して多気筒化に伴う軸受間距離の長尺化を抑制することができる。従って、駆動軸(33)の撓みをより抑制することができる。
また、本ロータリ式圧縮機(10)では、各偏心部(33c,33d,33e,33f)を連結する中間軸部(33g,33h,33i)は、主軸部(33a)及び副軸部(33b)よりも大径に形成されている。このことにより、流体の圧縮動作によって撓み易い中間軸部(33g,33h,33i)の剛性を高めることができる。そのため、駆動軸(33)の撓みをより抑制することができる。
また、本ロータリ式圧縮機(10)では、各圧縮機構部(21,22,23,24)は、ピストン片(51a,52a,53a,54a)とブレード片(55a,56a,57a,58a)とが一体に形成された所謂揺動ピストン型の圧縮機構部に構成されている。そのため、上述のようにピストン(51,52,53,54)を複数(2つ)のピストン片(51a,52a,53a,54a)に分割しても、ピストン片(51a,52a,53a,54a)とブレード(55,56,57,58)との間に隙間が生じることがない。そのため、高圧室(H21,H22,H23,H24)の流体がピストン片(51a,52a,53a,54a)とブレード(55,56,57,58)との隙間から低圧室(H11,H12,H13,H14)側へ漏れ出すことを防止することができる。
また、本ロータリ式圧縮機(10)は、冷媒として二酸化炭素が充填された冷媒回路に設けられている。なお、二酸化炭素を圧縮する場合、高低差圧が大きいために駆動軸(33)に大きな力が作用し、駆動軸(33)が撓み易くなる。しかしながら、上述のようにピストン(52,53)を軸方向に複数(2つ)のピストン片(52a,53a)に分割することにより、偏心部間の距離(=中間軸部の軸方向長さD)を長くしなくとも中間圧縮機構部(22,23)に対応する偏心部(33d,33e)にピストン(52,53)を容易に嵌め込むことができる。従って、本ロータリ式圧縮機(10)によれば、冷媒として二酸化炭素を用いても、軸受間距離の短尺化を図ることができ、駆動軸(33)の撓みを抑制することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態では、4つの圧縮機構部(21,22,23,24)を有する4気筒ロータリ式圧縮機について説明したが、本発明に係る多気筒ロータリ式圧縮機の気筒数はこれに限られない。3気筒以上であればいかなる気筒数のロータリ式圧縮機であってもよい。例えば、5気筒ロータリ式圧縮機であれば、駆動軸の軸方向に積み重ねられた5つの圧縮機構部のうちの両端を除く中間の3つの圧縮機構部のピストンを軸方向に中間軸部よりも軸方向の長さが短い複数のピストン片に分割すると共に、中間軸部を、外周面が隣り合う偏心部の外周面よりも軸方向視において内側に位置するように形成すればよい。このように構成することにより、上記実施形態1と同様に、中間軸部の軸方向の長さを長く形成することなく、中間圧縮機構部のピストンを中間偏心部に容易に嵌め込むことができる。よって、駆動軸の撓みを抑制しつつピストンの組付性の向上を図ることができる。
なお、気筒数が増えるに従って、中間軸部の数も増える。そのため、中間軸部の軸方向の長さを抑制して駆動軸の撓みを抑制する効果は、気筒数が増えるに従ってより顕著となる。
また、本ロータリ式圧縮機(10)では、4つの圧縮機構部(21,22,23,24)の全てのピストン(51,52,53,54)を軸方向に2つずつに分割することとしていたが、本発明に係るロータリ式圧縮機はこれに限られない。少なくとも中間圧縮機構部(22,23)のピストン(52,53)が軸方向に複数のピストン片に分割されていればよいため、両端の圧縮機構部(上側圧縮機構部(21)及び下側圧縮機構部(24))のピストン(51,54)は軸方向に分割されていなくてもよい。また、ピストン(52,53)は、軸方向に3つずつ分割されていてもよく、それ以上の個数に分割されていてもよい。
また、上記実施形態では、全ての圧縮機構部(21,22,23,24)をピストン(51,52,53,54)とブレード(55,56,57,58)とが一体に形成された所謂揺動ピストン型の圧縮機構部としていたが、本発明はこれに限定されない。中間圧縮機構部(22,23)についてのみ所謂揺動ピストン型の圧縮機構部とし、上側圧縮機構部(21)及び下側圧縮機構部(24)についてはローリングピストン型の圧縮機構部としてもよい。
また、上記実施形態では、4つの偏心部(33c,33d,33e,33f)は、軸方向に隣り合う偏心部間で位相が90°ずつずれるように形成されていた。しかし、軸方向に隣り合う偏心部間の位相はこれに限られず、180°ずつずれるように形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、中間軸部(33g,33h,33i)は、横断面が円形形状となるように形成されていたが、本発明の中間軸部はこの形状に限られない。例えば、図7では、一例として上部偏心部(33c)と第1中間偏心部(33d)との間の第1中間軸部(33g)を示している。なお、図7では、軸方向に隣り合う上部偏心部(33c)と第1中間偏心部(33d)とは位相が180°ずれるように形成されているものとする。このような場合において、第1中間軸部(33g)を、横断面において軸方向に隣り合う偏心部(33c,33d)の偏心方向に直交する方向の長さL2が偏心方向の長さL1よりも長くなるように形成する。なお、上記L1は、偏心部(33c,33d)の半径R2から偏心長さEを減じた長さ以下の長さとなるように設定する。
このように構成することにより、中間軸部(33g,33h,33i)の横断面の面積を増加させることにより、該中間軸部(33g,33h,33i)の剛性を増大させることができる。よって、このような形態によれば、駆動軸(33)の撓みをより抑制することができる。
また、上記実施形態では、4つのピストン(51,52,53,54)は、互いに軸方向の長さが等しくなるように形成されていた。しかし、4つのピストン(51,52,53,54)の軸方向の長さはこれに限られず、それぞれ異なる長さであってもよい。また、各ピストン(51,52,53,54)は、それぞれ軸方向の長さの等しい2つのピストン片(51a,52a,53a,54a)に分割されていたが、分割の仕方はこれに限られず、軸方向の長さの異なるピストン片(51a,52a,53a,54a)に分割されていてもよい。
また、上記実施形態では、3つの中間軸部(33g,33h,33i)は、軸方向の長さが等しくなるように形成されていたが、本発明はこれに限られない。3つの中間軸部(33g,33h,33i)は、軸方向の長さが異なっていてもよい。
また、上記実施形態では、4つの圧縮機構部(21,22,23,24)のピストン(51,52,53,54)のうち、上側圧縮機構部(21)のピストン(51)を駆動軸(33)の上端から挿通させて上部偏心部(33c)に組み付け、残りの圧縮機構部(22,23,24)のピストン(52,53,54)を駆動軸(33)の下端から挿通させて各偏心部(33d,33e,33f)に組み付けていた。しかしながら、ピストンの組み付け手順はこれに限られない。4つのピストン(51,52,53,54)を共に駆動軸(33)の上端から挿通させて組み付けてもよく、逆に駆動軸(33)の下端から挿入させて組み付けてもよい。また、上側の2つを駆動軸(33)の上端から挿入して組み付ける一方、下側の2つを駆動軸(33)の下端から挿入して組み付けてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。