JP5448042B2 - レーザー加工装置、レーザー加工装置の製造方法、及びレーザー加工方法 - Google Patents
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Description
このように構成された本発明においては、孔の直径が噴流液柱の直径以上で、噴流液柱の直径の20倍以下であるので、噴流液柱がカバーを通過することができる寸法を確保しながら、孔の直径を最小限に抑制して、噴流液体のはね返りからノズル及び噴流液柱を効果的に保護することができる。ここで、孔の直径が噴流液柱の直径よりも小さいと、噴流液柱が孔を通ることができず、孔の直径が噴流液柱の直径の20倍より大きいと、噴流液柱と孔との間に形成される隙間が大きくなり、はね返った噴流液体がこの隙間からカバーの上方に入ってノズルに付着したりノズルとカバーの間の噴流液柱に当たったりする可能性がある。
このように構成された本発明においては、カバーが薄板状に形成されているので、噴流液柱内に導かれたレーザーによってカバーの孔を容易且つ高精度に形成することができる。
このように構成された本発明においては、被加工物のレーザー加工中、エア噴射手段によって被加工物にエアジェットを噴射すると、エアジェットは、被加工物の加工部周辺の液体を排除する。したがって、エア噴射手段によって、液体のノズルへのはね返りをより効果的に防止することができ、液体のノズルへの付着及び噴流液柱の乱れをより確実に防止することができる。
噴流液柱内に導かれたレーザーによってカバーに孔を形成するので、孔の直径は、噴流液柱とほぼ同径となる。したがって、レーザー加工中、噴流液柱と孔との間の隙間が最小限に抑制され、カバーによって、被加工物に当たってはね返る液体がノズルに付着したり、ノズルとカバーの間の噴流液柱に当たったりするのを確実に防止することができ、噴流液柱の乱れを防止することができる。それにより、レーザーの伝送効率を低下させることなく、良好な加工効率を維持してレーザー加工を行うことができる。また、噴流液柱内に導かれたレーザーによってカバーの孔を形成するので、孔を噴流液柱に対して位置合わせする必要がなく、カバーの正確な位置に、噴流液柱と整合する孔を形成することができる。
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態によるレーザー加工装置1の全体を示す概略構成図である。本発明の第1実施形態によるレーザー加工装置1は、レーザー加工ヘッド2と、このレーザー加工ヘッド2を通ってレーザーを被加工物W上に照射する光学装置4と、被加工物Wに噴流液体である高圧水を噴射するための液体噴射手段6と、を備えている。
レーザー光学系12は、レーザー発振器14から出射されたレーザーを光ファイバ等でレーザー加工ヘッド2に導くと共に、このレーザーをレーザー加工ヘッド2内のノズル10の上端の開口近傍の位置で集光させるように構成されている。なお、図1においては、レーザー光学系12は一部を模式化して図示しており、レーザーを最終的に集光させる1枚の集光レンズ16のみ示している。
グリーンレーザーは、2倍波(SHG)YAGレーザーであり、波長が532nmである。グリーンレーザーは、YAGレーザー(波長1064nm)やCO2レーザー(波長10.6μm)と異なり、水を通過しやすい特徴を有するため、噴流液体として安価で入手が容易な水を使用する場合には、レーザーの伝搬効率を向上させることができる。また、水に吸収され難いため、熱レンズの発生を抑制することで、レーザー加工ヘッド2内のノズル10の開口近傍の位置に精度よくレーザーを導くことが容易となる。このため、ノズル10の損傷を防止するとともに、安定した加工品質を確保することができる。
なお、上記のカバー取付部32は、カバー30の下面に配置されているものに限らず、例えばカバー30の上方に配置され、カバー取付部の下面においてカバー30を支持固定する構造となっていてもよい。
また、ノズル10の上面からカバー30の上面までの距離L1は、4〜40mmが好ましく、本実施形態では約20mmである。距離L1が小さすぎると、空間部31の寸法L2も小さくなり、ノズル10の下面とカバー30の上面との間に、表面張力によって水が溜まり、ノズル10とカバー30の間の空間部31に水が溜まる可能性がある。また、距離L1が大きすぎると、空間部31のブラケット28の噴流液柱Fに沿った方向の寸法L2が大きくなり、ノズル10を被加工物Wに近づけられなくなる。それにより、良好なレーザー加工性能を得ることが難しくなる。
ここで、貫通孔36の成形加工は、例えばレーザー加工装置1の製造段階で行ってもよい。即ち、レーザー加工装置1の製造段階において、レーザー加工装置1のレーザー加工ヘッド2、光学装置4、液体噴射手段6等の製造、組立後、レーザー加工ヘッド2にブラケット28を取り付け、ブラケット28にカバー30を固定する。そして、ノズル10から噴流液柱Fを噴射してレーザーを照射すると、噴流液柱Fおよびレーザーは、カバー30に当たり、カバー30を加工して貫通孔36を形成する。このようにして、レーザー加工装置1の製造を完成させてもよい。
なお、貫通孔36の直径は、噴流液柱Fの直径以上で、噴流液柱Fの直径の20倍以下、より好ましくは10倍以下の範囲で形成されるのがよい。
噴流液柱Fの水が被加工物Wに当たると、レーザー加工ヘッド2付近にはね返る場合があるが、ノズル10と被加工物Wとの間に設けられたカバー30がノズル10、及びノズルの近傍の、即ちノズル10とカバー30の間の噴流液柱Fを保護し、ノズル10への水の付着や噴流液柱Fの乱れを防止する。
ノズル10と被加工物Wとの間にカバー30が設けられているので、噴流液柱Fが被加工物Wに当たって水がはね返った場合にも、水のノズル10への付着及び噴流液柱Fの乱れを防止することができる。それにより、安定した層流状態の噴流液柱Fを形成することができ、レーザーの伝送効率の低下を防止することができる。これは特に、被加工物Wからの水の跳ね返りが深刻な深堀り加工においても、安定した噴流液柱Fを形成することができるようになるので、有用である。また、カバー30によってノズル10の近傍の噴流液柱Fを保護するので、安定した噴流液柱Fを形成するのに重要な、ノズル10から噴射された直後の領域を保護することができ、安定した噴流液柱Fの形成を確実にすることができる。また、安定した噴流液柱Fを形成することができるので、はね返りの外乱に強くなり、良好なレーザー加工性能を維持しながら被加工物Wからのノズル10の設定距離をより大きくとることが可能となるから、ノズル10の距離設定の自由度が高くなる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態によるレーザー加工装置50は、被加工物Wに向かってエアジェットを噴射するエア噴射手段52が設けられている点で、第1実施形態によるレーザー加工装置1と異なる他は、第1実施形態によるレーザー加工装置1と同様の構成である。
レーザー加工装置50にエア噴射手段52が設けられているので、被加工物Wからの水のはね返りを抑制することができる。これにより、ノズル10への水の付着及び噴流液柱Fの乱れをより一層確実に防止することができる。
また、エア噴射手段52が、被加工物Wの加工部付近に向かってエアジェットを噴射するので、加工部に溜まった水を除去することができる。これは、特に、被加工物Wの加工部に水が溜まりやすい深堀り加工においても、加工部の水をエアジェットによって積極的に排除することができるので、有用である。
この場合にも、孔の直径は、噴流液柱の直径以上で、噴流液柱の直径の20倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。
ノズルとカバーの間に形成される空間部の形状は、円柱状のものに限らず任意の形状を採用することができ、例えばカバーを取り付けるブラケットが角柱状に形成される場合には、空間部も角柱状に形成される場合がある。また、空間部の寸法、即ち噴流液柱に沿った方向の寸法及び噴流液柱に略直交する方向の寸法は、前述の実施形態に記載した範囲が好ましいが、これに限らずレーザー加工ヘッドやノズルの形状、配置等に応じて任意に設定することができる。なお、空間部が円柱状以外の形状に形成されている場合には、噴流液柱に略直交する方向の寸法は、噴流液柱からの空間部の外縁までの最小距離が適当となるように設定されるのがよい。
第1実施形態のレーザー加工装置1を使用して、金属板のピアス加工を行った。被加工物Wとしては、SUSの板状部材を使用し、厚さtが、0.3mm、0.5mm、0.6mm、及び1.0mmのものを用いた。ノズル10の孔径を100μm、高圧ポンプ22から圧送される水の圧力を10MPa、レーザー周波数を13kHz、レーザー出力を40Wとした。
レーザー加工装置1の設置台を静止したまま、噴流液柱F内に導かれたレーザーを被加工物Wに照射し、金属板に貫通孔が形成されるかを観察した。それぞれの厚さの被加工物Wについて、10個ずつ試験を行った。
第1実施形態のレーザー加工装置1からブラケット28及びカバー30を取り外した状態で、実施例1と同様のピアス加工を行った。被加工物Wの厚さtが0.3mmのものについて10個の試験を行った。その他の実験条件は、実施例1と同じである。
実施例1においては、厚さtが0.3mm、0.5mm、及び0.6mmの被加工物Wについては、レーザーを1秒間照射することにより、10個の試験片中10個において貫通孔が形成された。また、厚さtが1.0mmの被加工物Wについては、レーザーを5秒間照射することにより、10個の試験片中8個において貫通孔が形成された。
一方、比較例1においては、厚さtが0.3mmのものにおいて、レーザーを1秒間照射した場合、及びレーザーを5秒間照射した場合の両方について、10個の試験片中1つも貫通孔が形成されなかった。
以上より、実施例1におけるレーザー加工装置1によるレーザー加工の方が、比較例1におけるレーザー加工よりもレーザーの伝送効率がよく、レーザー加工性能が優れていることが確認できた。
第1実施形態のレーザー加工装置1を使用して、金属材料の直線溝掘り加工を行った。被加工物Wとしては、SUSを使用した。ノズル10の孔径を60μm、高圧ポンプ22から圧送される水の圧力を18MPa、レーザー周波数を10kHz、レーザー出力を15Wとし、レーザー加工装置1の設置台を、送り速度2mm/秒で直線移動させながら所定回数往復させ、被加工物Wに直線状の溝を形成する加工を行った。
第1実施形態のレーザー加工装置1からブラケット28及びカバー30を取り外した状態で、実施例2と同様の直線溝掘り加工を行った。その他の実験条件は、実施例2と同じである。
実施例2においては、レーザーを5往復させることにより、約1.8mmの深さの溝が形成された。また、レーザーを10往復させることにより、約2.3mmの深さの溝が形成された。
一方、比較例2においては、レーザーを5往復させることにより、約1.6mmの深さの溝が形成された。また、レーザーを10往復させることにより、約1.7mmの深さの溝が形成された。
以上より、実施例2におけるレーザー加工装置1によるレーザー加工の方が、比較例2におけるレーザー加工よりも、レーザー加工の伝送効率がよく、レーザー加工性能が優れていることが確認できた。
2 レーザー加工ヘッド
10 ノズル
14 レーザー発振器
28,54 ブラケット
30,56 カバー
36,70 貫通孔
52 エア噴射手段
F 噴流液柱
W 被加工物
Claims (6)
- レーザーを発生するレーザー発振器と、被加工物に噴流液体を噴射するノズルとを備え、前記ノズルから噴射された噴流液柱内に導かれたレーザーによって前記被加工物を加工するレーザー加工装置であって、
前記ノズルと前記被加工物との間に配置され、噴射された前記噴流液体のはね返りから前記ノズル及び前記噴流液柱を保護するカバーを備え、
前記カバーには、前記ノズルから噴射された噴流液柱が通過可能な孔が形成されており、
前記孔は、前記ノズルから噴射された前記噴流液柱内に導かれたレーザーによって形成され、
前記ノズルの上面から前記カバーの上面までの距離は、4〜40mmであり、前記カバーの上面には、前記噴流液柱に沿った方向の寸法が2mm以上で、且つ前記噴流液柱に略直交する方向の寸法が5mm以上の空間部が設けられている、
ことを特徴とするレーザー加工装置。 - 前記孔の直径は、前記噴流液柱の直径以上で、前記噴流液柱の直径の20倍以下である、
請求項1に記載のレーザー加工装置。 - 前記カバーは、薄板状に形成されている、
請求項1または請求項2に記載のレーザー加工装置。 - 前記カバーと前記被加工物との間に配置され、前記被加工物に向かってエアジェットを噴射するエア噴射手段を更に有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。 - レーザーを発生するレーザー発振器と、被加工物に噴流液体を噴射するノズルとを備え、前記ノズルから噴射された噴流液柱内に導かれたレーザーによって前記被加工物を加工するレーザー加工装置の製造方法であって、
前記ノズルと前記被加工物の間に、噴射された前記噴流液体のはね返りから前記ノズル及び前記噴流液柱を保護するためのカバーを取り付けて、前記ノズルの上面から前記カバーの上面までの距離を、4〜40mmとし、前記カバーの上面には、前記噴流液柱に沿った方向の寸法が2mm以上で、且つ前記噴流液柱に略直交する方向の寸法が5mm以上の空間部を設けるステップと、
前記カバーに、前記噴流液柱内に導かれたレーザーを照射することによって、前記噴流液柱が通過可能な孔を形成するステップと、を含む、
ことを特徴とするレーザー加工装置の製造方法。 - レーザーを発生するレーザー発振器と、被加工物に噴流液体を噴射するノズルとを備え、前記ノズルから噴射された噴流液柱内に導かれたレーザーによって前記被加工物を加工するレーザー加工装置によるレーザー加工方法であって、
前記ノズルと前記被加工物の間に、噴射された前記噴流液体のはね返りから前記ノズル及び前記噴流液柱を保護するためのカバーを取り付けて、前記ノズルの上面から前記カバーの上面までの距離を、4〜40mmとし、前記カバーの上面には、前記噴流液柱に沿った方向の寸法が2mm以上で、且つ前記噴流液柱に略直交する方向の寸法が5mm以上の空間部を設けるステップと、
前記カバーに、前記噴流液柱内に導かれたレーザーを照射することによって、前記噴流液柱が通過可能な孔を形成するステップと、
前記孔を通過する前記噴流液柱内に導かれたレーザーによって前記被加工物を加工するステップと、を含む、
ことを特徴とするレーザー加工方法。
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