JP5446695B2 - 乳味増強作用を有する食品素材、その製造方法、および食品または調味剤の乳味増強方法 - Google Patents

乳味増強作用を有する食品素材、その製造方法、および食品または調味剤の乳味増強方法 Download PDF

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本発明は、乳味増強作用を有する新規な食品素材およびその製造方法に関するものである。また、本発明は、食品または調味剤の乳味増強方法に関する。
アミノ酸および糖質は、食品の呈味に大きく関与していることは公知である。さらに、アミノ酸と糖質は加熱により反応を起こし、その結果様々な風味変化が生じることが知られている。実際の食生活においても経験できることであり、煮込み料理で風味が変化することや、生肉を焼くことによって風味が変化することはメイラード反応が一因となっているといわれている。このアミノ酸と糖質が反応する現象を利用した多くの香気・呈味改善の技術が示されているが、乳味を増強する技術については知られていない。
例えば、アミノ酸類と糖質などから加熱反応を利用した技術としては、主にフレーバーを作り出す技術が多い。反応の基質であるアミノ酸や糖をもともと食品中に含有されたものに頼るだけではなく、これらの基質を積極的に食品に添加する試みである。その多くは、メイラード反応を利用し効率的に所望の香りを有したフレーバーやその製造方法に関するものである。
プロリンとラムノースとの混合物を密閉状態で加熱して香味成分を作り、これを食品に付与して食品の香味を改良する方法(特許文献1)、バリン、ロイシン、イソロイシンを単独に、或いはそれらの少なくとも1種を含むアミノ酸混合物と糖質とを、水の存在下で加熱反応させた後、反応生成物にアルコール類を添加して更に熟成することを特徴とするチョコレート様フレーバー物質の製造法(特許文献2)、塩基性アミノ酸と糖質とを、特定の混合比で混合しプロピレングリコール及び/又はグリセリンの存在下で加熱することにより得られる生成物よりなるコーヒー様風味を有するコーヒー呈味物質(特許文献3)、リジンもしくはアルギニンまたはそれらの塩酸塩と糖類とをレシチンの存在下に加熱反応させることを特徴とするアーモンド様乃至カステラ様香気組成物の製法(特許文献4)、アミノ酸又はペプタイドと還元糖との混合物からフレーバー成分を抽出する方法(特許文献5)、アミノ酸もしくはその誘導体と糖からの焙焼香気フレーバー添加剤の製造法(特許文献6)、少なくとも1つの遊離アミノ酸源、および少なくとも1つの還元糖を含むペースト状混合物から肉様味を有する付与剤を製造する方法(特許文献7)などが提案されている。上記の従来方法は、アミノ酸類と糖類等を水、有機溶媒、油脂類等を用い加熱反応させるなどによりフレーバーを得る方法であり、力価の高いフレーバーを効率的に作製するために、密閉容器中で反応させたり、アルコールを使用したり、乳化剤を利用したり様々な工夫がなされている。しかし、これらのいずれもが、呈味そのものを増強させる難揮発性の呈味増強物質の製造を目的としたものではない。また、それぞれは特定の香気を有するから、食品や調味剤に添加した際に、おのずと目的の香調にはならないといった制限が生じ、汎用性に問題がある。
このようにメイラード反応などのアミノ酸と糖質の加熱反応を利用した検討は多くなされてきたが、乳味増強作用に直接関連する技術は得られていない。アミノ酸類と糖質等の加熱による反応機構には未だ未解明な部分が多く残されており、例えばメイラード反応についても、その複雑な反応機構が現在でもなお完全に解明されたものではない。すなわち、理論に基づいた技術開発が困難であることが、その十分な産業技術としての確立を阻んでいることが背景にあると考えられる。
また、特定のアミノ酸を飲食品に利用した技術がある。アミノ酸は多くの食品で風味に大きな影響を及ぼしていることは公知であるが、アミノ酸の組み合わせや含量などのバランス、またその後の他成分との組み合わせや反応によりどのような風味が醸し出されるのかについては、十分に解明されていない。そこで様々な試行が従来行われていた。
L−グルタミン酸、L−システイン、L−メチオニン、L−ロイシン及びL−アルギニンを特定の割合で配合した配合物を、もしくは該アミノ酸配合物と他のアミノ酸とを肉製品の製造工程において添加することを特徴とする熟成風味を有する肉製品の製造方法がある(特許文献8)。これは肉製品においては効果的であるが、乳味増強についての記載はない。また加熱処理する必要性についても触れていない。卵独特の旨みやコク味を向上させるために、メチオニンを一定量添加する技術がある(特許文献9)。ただし、この効果は卵に限定されたものであって、乳味増強への効果は記載がない。食塩含有量が低いにもかかわらず一定量のアスパラギン酸及びグルタミン酸を添加することで塩味を十分に感じる液体調味料が提示されている(特許文献10)。やはりこれも醤油などの液体調味料には効果が示されているが、乳味増強に関わる記載はない。発酵乳様風味を有する無発酵食品及びその製造方法に関する技術が提示されている(特許文献11)。これはL−グルタミン酸など数種のアミノ酸を一定量配合することで発酵乳と同様の風味を有する無発酵食品が得られること、およびその製造方法を提示したものである。乳酸菌による乳酸発酵をさせる必要がないため、この技術により簡便且つ保存性に優れた発酵乳様食品が得られる。しかし、この発明は酸度の高い発酵食品には適用できるが、無発酵の酸味を有さない乳製品に適用できる旨の記載はない。アミノ酸を乳含有食品に利用した例として、コーヒー分に、塩基性物質および/または塩基性アミノ酸を添加し、乳分と混合した後に加熱殺菌することを特徴とした乳入りコーヒー飲料が提示されている(特許文献12)。これは乳分混合時の凝固を防止し、且つ、加熱殺菌後の沈殿物の発生が防止でき、乳化剤や糊料の添加量を低減することを効果の目的としているものであって、乳味増強を目的としたものではない。
次に、乳風味の改良を目的とした取り組みを示す。乳を含有した食品は我々の生活に馴染み深く、実に幅広く存在している。牛乳、加工乳、乳飲料などの飲料に留まらず、チーズ、ヨーグルトなどの発酵食品、パン類、アイスクリームなどのデザート類、ビスケット、タブレット、キャンディなどの菓子類、ケーキなどの生菓子類、シチューなどの料理など、例を挙げれば枚挙に暇が無い。乳は人が生まれながらにして初めて摂取する食品でもあり馴染みが深いからであろうが、人は乳の美味しさを感じていることに疑う余地は無い。だからこそ、乳含有製品に対して人が美味しいと十分に満足できる要求レベルは高く、その期待に応える乳製品を作り上げるハードルは高い。乳風味に乏しい乳含有食品であれば人に受け入れてもらえず、よって食品業界において、十分に美味しいと感じる程度の乳風味が高い食品を開発することは非常に大きな目標である。まして、近年の健康志向の高まりから低カロリー食品の開発が求められ、特に乳風味の発現に重要な生クリームやバターの使用が制限されることがあり、乳脂肪分や乳成分そのものが少ない製品設計において、乳風味を適切に高めるための技術課題は食品業界における重要課題である。
従来、多くの乳風味を改善するための取り組みがなされてきた。乳様フレーバーの開発はもちろんのこと、乳風味を引き立たせたり風味を改善させたりする原料や組成物、加工方法が提示されている。
乳フレーバーやバターフレーバーに関するもの(特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16)が検討されている。これらはフレーバー開発に関するものであり、確かに少量の添加で香気増強に一定の効果はあるが、乳製品独特のボディー感はそもそも香料で実現しにくいものである。さらに香料は一般的に加熱加工工程で揮発し力価が減少するという欠点を有したものであり、効果には限界がある。
フレーバー開発と異なるアプローチの検討も多い。粉体乳製品にイースト自己消化液を添加し粉体乳製品の乳風味を向上させる方法(特許文献17)が示されている。しかしこの方法では、添加液を作製する工程が複雑で時間とコストを要する。リン酸化オリゴ糖を味質改善剤として含有する飲食物(特許文献18)が示されているが、リン酸化オリゴ糖を馬鈴薯から抽出・精製する工程が複雑で時間とコストを要する。スクラロースを乳感向上剤として用い、乳感の向上された乳含有製品(特許文献19)が提示されているが、スクラロースは高度な甘味を有した合成甘味料であるから添加とともに甘味も急上昇し、乳感のみを増強させる目的では使用できない。バターミルクを遠心分離して乳脂肪球を除去し、次いで2段階の限外濾過膜を行い、得た濃縮乳を乳風味付与剤とする乳風味付与剤とその製造方法が示されている(特許文献20)。同様に、バターミルクを遠心分離し乳脂肪球を除去し、さらに限外濾過で得られた濃縮乳を乾燥処理してコロイド分散系成分を含有する粉末を得て、これを食品に添加することを特徴とする食品への乳風味の付与方法と、乳風味付与剤に関する技術がある(特許文献21)。バターミルクはバター製造時の副産物であり、原料供給に限りがあったり、腐敗等の管理が必要であったり、また目的の添加液を作製するための工程が複雑であったりする欠点を有する。また脂肪も含有されていることから、低カロリー食品への添加量が限定される。大豆蛋白を用いて大豆特有の大豆臭が無く、動物性蛋白を用いた牛乳等とほぼ同様の乳風味を持つ乳風味大豆蛋白組成物が示されている(特許文献22)。しかし、この場合も大豆蛋白と共に乳風味油脂が必須であるから、脂肪分が含有され、低カロリー食品への添加量が限定される。また加工食品への添加時に大豆蛋白が物性面で悪影響を及ぼすことが考えられる。コーン粉末と油脂とを、水の沸点より低い温度で接触処理することを特徴とする乳風味増強材の製造方法、及び当該乳風味増強材を含有する食品の提示がある(特許文献23)。この場合もコーン粉末と共に油脂が必須であるから、脂肪分が含有され、低カロリー食品への添加量が限定される。また加工食品への添加時にコーン由来成分が物性面で悪影響を及ぼすことが考えられる。玄米あるいは催芽処理させた玄米を粉砕処理して得られる粉末を乳製品を含有する飲食品に添加し、加熱することによって乳製品の乳風味を増強する方法及び飲食品が公知となっている(特許文献24)。この場合も加工食品へ適用する際に、玄米が物性面で悪影響を及ぼすことが考えられる。好ましくは玄米粉末の粒径が50μm以下であると記載があるが、例えば飲料に添加すると保存時の沈殿発生は避けられない。ペプチドとカルボニル化合物とのアミノ−カルボニル反応物を有効成分とし、乳製品に添加することでミルク感を増強する方法(特許文献25)であるが、本方法ではペプチドの起源であるタンパク質の味の影響を受けやすく、ペプチドを合成するにしてもコストが高くなる欠点がある。
上述の例は乳風味の向上を目的とした技術であるが、いずれも問題点を抱えている。一方、直接に乳風味改善を目的とした技術ではないが、呈味を増強するための多くの検討もなされてきた。乳風味の向上を目的とした場合に、これらの技術が応用できる可能性が考えられたため、呈味改善の従来技術について下記に示した。
食品の味は実に多種多様であり、それぞれ固有の味を呈する。味は甘味、酸味、苦味、塩味、旨味の五味からなり、また五味では現せない味としてコク味も存在している。味に対する追求は過去より精力的に取り組まれている。旨味物質として、例えばアミノ酸ではグルタミン酸ナトリウム、核酸関連化合物ではイノシン酸ナトリウムなどが知られており、それぞれ特有の旨味を有している。また、アミノ酸系と核酸系の旨味物質には相乗効果が知られており、組み合わせた多くの調味料が開発されている。しかしながら、このような化合物の組み合わせで作製されたいわば人工的な旨み増強剤では、単純な呈味となりがちであり、飲食品が本来持つ複雑な旨味の増強には至らず、自然味に欠けた味になるという欠点がある。
もちろん、飲食品を自然且つ複雑な味に近づけるために天然物から抽出されたエキス類、主に酵母エキス、畜肉エキス、魚貝エキス或いは野菜エキスなどが用いられており、関連する特許文献も多く提示されている(例えば特許文献26)。しかしながら、これらの天然エキスには、必然的に天然原料由来の味や香りが含まれるため、おのずと用途や使用量には制限が生じるという問題点を有していた。これらの天然エキスから異味や雑味を低減するために分離精製が適用した多くの関連技術があるが、味の力価低下や、加工コストの上昇などの問題点を有していた。例えば、茶の溶媒抽出物を含有することを特徴とする呈味増強剤の提示(特許文献27)があるが、やはり茶由来であるために汎用性に限界はあり、合成吸着剤での精製例も示されている。甘蔗由来の蒸留物を有効成分とする飲食品の風味改善剤(特許文献28)の提示があるが、やはり合成吸着剤での精製ステップが必要である。寒天分子によって液体をゲル化させずに、寒天分子をゲル化能以下の流動体として液体中に浮遊させることによって、呈味を改良することができる(特許文献29)ことが示されているが、物性面からの使用の制限が大きい。
天然エキスを使用しない風味や呈味改善剤の報告も数多く提示されている。窒素を含む6員環の複素環化合物であるピラジン化合物を用いた飲食品にこく味を付与する方法(特許文献30)が提示されているが、合成や精製にはコストや手間がかかる点が欠点である。グリシン、リジン等のアミノ酸とリボースの反応により本化合物を生成させることもできるが、リボースは食品原料としては主要な原料ではなく、精製しない限りリボースが味や加工適性に影響することが考えられる。
その他にも、コク味付与に関する報告がある。ゼラチン及びトロポミオシンの加熱物(特許文献31)などを添加する方法については、ゼラチンが使用されるために用途は制限されるし、不特定のペプチドと糖をメイラード反応により結合させてコク味を付与する調味料(特許文献32)を提供しようと試みもあったが、ペプチドの苦味が欠点として残っている。コク味付与機能を有する新規糖ペプチド及びペプチド本発明の糖ペプチド及びペプチド(特許文献33)が提示されている。これらを合成するためには、単純にアミノ酸類と糖質を加熱するだけでは所望のペプチドは得られないため化学的な合成が必要になりコストの問題は大きい。一方、タンパク質を酵素によって加水分解する場合にも、精製が必要であり、精製しない場合は同時に派生する他のペプチドの苦味やタンパク質の由来素材の風味の影響を受ける。
したがって、食品や調味剤の自然で複雑な味を増強する効果を有し、尚且つ雑味や異質な香気が少なく汎用性の高い呈味増強食品素材、さらにこれが特に乳味を増強する特徴を有する食品素材が求められていた。
特公昭48−25508号公報 特公昭55−11300号公報 特公昭58−11987号公報 特公昭59−48974号公報 特開平5−207860号公報 特公平6−6038号公報 特公平7−57169号公報 特公平6−16691号公報 特許第4202099号公報 特許第4060843号公報 特開平10−276670号公報 特許第3702176号公報 特許第3516041号公報 特許第3851945号公報 特許第3362092号公報 特許第4319361号公報 特開平6−319448号公報 特開2002−253164号公報 特開2000−135055号公報 特許第3004912号公報 特許第3059380号公報 特開平7−99892号公報 特開2000−4822号公報 特開2005−21047号公報 特開2007−202492号公報 特許第2950756号公報 特開2005−137286号公報 特許第4037035号公報 特開2006−180792号公報 特許第3929170号公報 特開平10−276709号公報 特開2002−335904号公報 国際公開第2004/096836号パンフレット
本発明の課題は、雑味の少ない強い乳味増強作用を有する食品素材、その製造方法および乳味性を向上させるための方法を提供することにある。
本発明者らは、加熱反応を利用した簡便な製法により従来にはない高性能な乳味増強作用を有する食品素材を開発することを目指した。そこで、まずアミノ酸と糖質との加熱反応に関連する従来技術を精査し、次にアミノ酸を利用した呈味改善技術を調査し、さらに、これらとは異なる手法による呈味増強手法に関しても網羅的に分析し分類した。しかしながら従来技術には、乳味作用に関する記載や示唆はなく、つまり「乳味増強作用」という更に限定された作用に関する本発明は全く新規な技術思想に基づくものである。
本発明者らは、食品や調味剤の乳味を増強する新規な食品素材について鋭意検討を重ねた結果、バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸を主成分とするアミノ酸と糖質を含む水溶液を加熱させてなる新規な食品素材が、効果的に各種食品や調味剤の乳味を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の乳味増強食品素材は、それ自身雑味は少なく旨味やコク味も少ないが、乳味増強を目的とする対象飲食品に添加すると、その効果が顕著に発揮され、食品が元来有する自然な乳味、コク味、味の厚みや広がりといった乳のボディー感を増強するという性質を有している。
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸を主成分とするアミノ酸と糖質を含み、かつ乳由来原料を添加していない水溶液を加熱させてなる乳味増強作用を有する食品素材であって、
バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸の総量が、全アミノ酸総量に対して70重量%以上であり、
糖質が異性化糖である乳味増強作用を有する食品素材、
〔2〕バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸を主成分とするアミノ酸と糖質と水を混合し、混合されかつ乳由来原料を添加していない水溶液開放系下で70℃〜150℃にて加熱させ、生じた香気成分を揮発させる工程を含むことを特徴とする前記乳味増強作用を有する食品素材の製造方法、
〔3〕前記乳味増強作用を有する食品素材を、最終固形分濃度が1ppm〜10,000ppmとなるように食品または調味剤に添加する食品または調味剤の乳味増強方法、
に関する。
本発明の乳味増強剤は、飲食品の乳味を損なうことなく飲食品が元来有する自然な乳味、コク味、味の厚みや広がりといった乳のボディー感を増強する効果を有する。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸を主成分とするアミノ酸と糖質を含む水溶液を加熱させてなる食品素材が、雑味は付与せずに効果的に食品や調味剤そのものの自然で複雑な乳味を増強させることを初めて見出し、その製造方法を完成し、更に本発明品を用いた食品または調味剤の乳味増強方法を完成させたものである。
なお、本発明において、乳味とは、乳が元来有する甘味、酸味、苦味、塩味、旨味の五味やコク味、そしてこれらの相互作用の結果、人が好ましいと感じる味のことを指す。さらにはバター、チーズ、粉乳等の乳原料が有する乳由来の五味やコク味、そしてこれらの相互作用の結果、人が好ましいと感じる味も乳味に含まれる。雑味とは乳原料とは異なる素材の五味、香り、コクのことをいう。
本明細書においては、特に断わらない限り、アミノ酸は、L型アミノ酸を意味する。また本発明で用いるアミノ酸はアミノ酸塩であってもよく、ナトリウム、カリウム、塩酸等の食品としての使用が問題ないアミノ酸塩であれば使用できる。なお、本発明にいうアミノ酸は遊離のアミノ酸またはアミノ酸塩の状態のものを指すが、本発明に規定する含有量は、遊離のアミノ酸に換算した値をいう。本明細書中にある「呈味増強」とは、元来、種々の食品が持つ甘味、酸味、苦味、塩味、旨味の五味やコク味、そしてこれらの相互作用の結果、人が美味しいと感じる好ましい味を、より自然な深み、厚みや広がりのある好ましい味に増強することを指し、「乳味増強」とは、元来、乳が持つ五味やコク味、そしてこれらの相互作用の結果、人が美味しいと感じる好ましい味を、より自然な深み、厚みや広がりのある好ましい味に増強することを指す。
原料として使用するアミノ酸の由来は特に限定されるものではなく、工業的に製造され精製されたアミノ酸でも良く、天然物から抽出した粗エキスでも、さらに粗エキスを精製したものでも良い。ただし、出来る限り雑味を有さないことが望ましいため、天然物原料由来の成分の持込みがないという観点から考えると、精製されたアミノ酸の使用が好ましい。
使用する糖質としては、特に限定はされないが、効果が強い点で単糖類、二糖類が好ましく、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、ガラクトースなどが挙げられる。糖質は、特に還元糖である必要はない。また、糖質は、キシリトールなどの糖アルコールでもよい。また複数の糖質の混合物であっても良く、コスト面からは果糖ブドウ糖液糖やブドウ糖果糖液糖などの異性化糖が好ましい。オリゴ糖、あるいは水飴やデキストリンなど分子量が大きい糖質であっても良い。また、黒糖などの精製度の低い糖質を使用することもでき、糖質を多く含有した蜂蜜や果汁シロップなども使用することができるが、本発明の食品素材を使用する対象食品との風味上の相性が好ましい場合に限る。
これらの糖質を、目的に応じてあらかじめ加熱してカラメル風味をつけても良いが、カラメル風味は最終的な風味にも非常に影響を与えるから、所望のカラメル風味となるように加熱加減を厳密に制御することが必要である。
本発明の食品素材は、バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸を主成分とするアミノ酸と糖質とを含む水溶液を加熱させて得られる。使用するアミノ酸としては、必須成分として、バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸の組み合わせが挙げられるが、組み合わせに限定はない。ただし、これら組み合わせて用いるアミノ酸の総量が、全アミノ酸総量に対して70重量%以上が好ましい。すなわち、これら6種類から選ばれたアミノ酸以外にも最終的に目的とする風味に適したアミノ酸を選択し使用することができるが、使用する全アミノ酸総量に対して30重量%未満であることが同様の理由で好ましい。
バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸の組み合わせとしては、特にバリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸及びアルギニンの6種類全て、及びバリン、プロリン、イソロイシン、リジン、及びアルギニンの5種類の組み合わせ、及びバリン、プロリン、イソロイシンの3種類の組み合わせが、特に高性能に乳味向上効果を有することから好ましい。
アミノ酸と糖質との加熱反応は、水溶液の状態で行う。溶媒としては水に加えてエタノール等の有機溶媒や油脂が混和していても問題ないが、異風味が最終的に生じることのないように溶媒は選択されるべきであり、溶媒中の水分の比率は70%(V/V)以上が好ましい。アミノ酸と糖質の比率に特に制限はないが、アミノ酸総量:糖質総量の重量比率が1:99〜99:1が好ましく、1:9〜9:1が更に好適である。水等の溶媒に添加するアミノ酸の濃度は、0.001〜10.0重量%が好ましく、0.01〜5重量%が更に好ましい。0.001重量%未満であれば乳味増強効果が弱く、10.0重量%を超えるとアミノ酸の溶解作業に手間がかかり、また加熱時に期待しない焦げ臭が生じるリスクがあがる。
前記の水等の溶媒に、必要に応じてアミノ酸と糖質以外の調味物質を添加してもよい。例えば、食塩、核酸関連素材、各種調味エキス、ペプチド系調味素材などが該当する。食塩は精製塩であっても、岩塩などの精製が不十分な食塩であっても問題ない。核酸関連素材としては、精製されたイノシン酸・グアニル酸やその塩類、核酸を豊富に含有する白子エキスのような抽出物であっても良い。各種調味エキスとしては、酵母エキス、畜肉エキス、魚貝エキス或いは野菜エキスなど天然物抽出エキスの中から、好ましいものを使用することが出来る。ペプチド系調味素材としては、主にタンパク質分解物が知られており、トウモロコシ、小麦、カゼイン、ホエー、酵母などのタンパク質の酵素分解物やその精製物が該当する。ただし、核酸関連素材、各種調味エキス、ペプチド系調味素材は、これらの素材自体に特徴的な風味があるから、アミノ酸総量に対して20重量%以下の添加量に抑える必要がある。
なお、本発明においては、乳味を増強させる目的で、水等の溶媒中に乳由来原料を添加することは好適でない。乳由来原料を添加すると、アミノ酸と糖との反応が目的通りに進行せずに、雑味を生じるだけでなく、乳味増強効果そのものが低下する。

前記アミノ酸と糖質と水を混合することで、アミノ酸と糖質とを含有する水溶液(本発明では前記水以外の溶媒を混合している場合も水溶液という)は調製される。
調製された水溶液は、加熱処理を施すことにより初めて所望の乳味増強効果を奏する。加熱処理は、混合された水溶液が開放系下で70℃〜150℃にて加熱させ、生じた香気成分を揮発させる工程を含む。
調製された水溶液を、開放系下で70℃〜150℃にて加熱するが、本明細書で言う開放系下とは、構造上密閉されていない系はもちろんのこと、構造上密閉されていても物質除去の仕組みが備わっている場合も開放系に該当する。すなわち、構造上密閉されているが排気装置が付いている場合、例えば、密閉反応容器のヘッドスペース部分に接続されているパイプ等により、容器内雰囲気が容器外に自発的に或いは強制的に導き出される反応系は開放系に含まれる。さらに、外気と接触しないが、ヘッドスペース部分の雰囲気が回収され、臭い除去装置を通過した後に再度反応容器に戻される循環型の装置も、この場合開放系に含まれる。さらに、外気と接触しないが、容器中の溶液が、臭い除去装置を通過した後に再度反応容器に戻される循環型の装置も、この場合開放系に含まれる。
加熱手段は特に限定されず、直火、水蒸気、電気的な方法で反応容器の温度を上げる方法、水蒸気、電気的な方法で直接水溶液の温度を上げる方法、マイクロウェーブで水溶液の温度を上げる方法など何でも良い。加熱温度は、70℃〜150℃で行う。70℃未満であれば反応が不十分であり所望の効果は望めず、150℃を超えると焦げ臭による雑風味が生じやすくなる。加熱時間に特に制限は無く、必要な効果が生じる段階で加熱を終える。ただし、工程の効率を考えると、5分〜120分が好ましく、完全に乾固するまでに加熱すると焦げ臭が発生するから、水溶液の状態で加熱は停止することが望ましい。加熱時の圧力は、常圧はもちろんこと、減圧あるいは加圧のいずれで行っても問題ない。
前記の加熱を行うことにより香気が発生する。この香気の原因となる揮発性の香気成分は、アミノ酸に由来すると考えられる。このような香気は、本発明の食品素材の用途を限定する要因になるから、効率的に除去する必要がある。ただし、香気成分は、概ね沸点が低く易揮発性であるから、加熱時には外気と遮断されていない蓋のない容器や、発生した蒸気や香気成分の逃げ道を有した容器で加熱することが望ましい。また、減圧しながら加熱し効率的に香気成分を除去することが望ましい。あるいは、水蒸気を水溶液に吹き込みながら加熱と同時に、香気成分を除去する方法も効率的である。空気、炭酸ガス、窒素ガスなどを水溶液にバブリングし、パージすることも有効である。また、加熱しながら水溶液を攪拌することも除去効率を上げることができる。上記の各種方法を全て取り入れる必要はなく、単独で、あるいは組み合わせて採用すればよい。加圧可能な反応容器で製造することも可能である。加圧、常圧、減圧を繰り返すなど組み合わせも可能である。循環式の装置であれば、ヘッドスペース部分の雰囲気や加熱処理中の水溶液を回収し、活性炭などの臭い吸着剤を通過させ香気成分を低減させた後に、再度反応容器に戻すことも可能である。また、前記のように加熱した後の水溶液に、さらに香気成分を除去する処理を施してもよい。
ただし、完全な閉鎖系で反応させた後に香気成分を除去することは、過剰で多様な香気成分が存在してしまい、香気発生の問題と除去に対する労力が増大するために望ましくない。有機溶媒による除去はテーブルスケールでは効果的であるが、工業化するには溶媒コストと分配コストが生じるし、同様に閉鎖系での反応後に水蒸気蒸留で香気成分を除去する製法は、除去すべき香気成分が水溶液中に高濃度に残存しており除去に時間を要するから、いずれも極めて非効率的であり望ましくない。
前記のように加熱し、次いで香気成分を除去することにより、香気の低減された乳味増強作用を有する水溶液が得られる。このようにして得られた水溶液はそのままでも、或いはこれを各種液体で希釈しても、或いは焦げ臭の発生しない適切な乾燥法や、デキストリンなど加工適性を改善するための基材を添加し乾燥させ得られた粉体としても使用可能であり、これら全てを、本発明でいう乳味増強作用を有する食品素材という。
以上のようにして得られる乳味増強作用を有する食品素材(以下、本発明の食品素材と略す)は、様々な食品の乳味増強素材として使用することができる。
また、本発明の食品素材は、乳原料が元来有する香り、甘味、酸味、旨味、コク味、そしてこれらの相互作用の結果、人が美味しいと感じる好ましい味を、より自然な深み、厚みや広がりのあるボディー感豊かな好ましい味に増強することができる。
また、本発明の食品素材は、食品素材や食品添加物から作製されるものであって非常に安全であり、また低コストで作製することができる。
本発明の食品素材は、各種食品に添加し、その乳味を増強することができる。水溶液の状態でも粉末の状態でも、あるいは粉末を液体に再溶解させた状態のものでも、加工作業上好ましい状態のものを使用すればよい。完成された食品や調味剤に最後に添加しても良く、原材料の仕込みの段階で使用しても良く、加工工程中に使用しても良い。いずれも各食品の味や加工工程との相性を考えながら使用方法を判断すればよい。添加後に加熱しても問題なく、むしろ更なる加熱により乳味増強効果が顕著に発揮される場合もあり、この場合は、加熱前の添加が望ましい。
食品や調味剤が僅かながらでも元々乳風味を有している限り、あるいは原材料の一部に乳原料を使用している限り、本発明の食品素材が適用される対象に制限は無い。飴、グミ、スナック、煎餅、チョコレート、タブレット、ガム、アイスクリーム、ゼリーなどの菓子類、チーズ等を原料に使用したおつまみなどの嗜好菓子、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、健康飲料などの飲料、チューハイなどの酒類、加工食品としての肉団子、ソーセージ、シチュー、カレーなど多岐にわたる。添加のタイミングは、食品の加工方法によるが、原料ミックスの仕込み時でも良く、仕込み以降の中間工程時でもよく、最終ステップであるパウダーリング時やコーティング時でも良く、工程上の作業効率や乳味の譲成が好ましい段階が良い。また、本発明品はドレッシングなどの調味剤に添加することも可能である。パンや麺類への添加も可能である。チーズ、ヨーグルトなどの醗酵食品に添加しても良く、醗酵前の仕込み段階であっても醗酵後であっても問題ない。塩味との相性は特に優れているため、食塩を併用するとより高性能に効果が発揮されるため、塩味の効いた乳含有製品への使用も好適である。また、本発明品は雑味が非常に少ないから、例えば乳味と共に酸味の効いたフルーツ系の加工食品に添加し、乳味豊かな果実加工食品を得ることもできる。
さらに、これらの加工食品のみならず一般的な家庭での食事にも使用できるものである。この場合は、ドレッシングや液体調味料などの家庭用調味剤として利用すると利便性が高い。
本発明の食品素材を、最終固形分濃度が1ppm〜10,000ppmとなるように食品または調味剤に添加することで食品や調味剤の乳味を増強することができる。固形分として1ppm〜10,000ppmの範囲であれば、水溶液の状態で添加しても何ら問題ない。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これにより本発明を限定するものではない。なお、実施例で記載するアミノ酸の含有量は、遊離のアミノ酸に換算した値をいう。
(1)乳味増強作用を有する食品素材(反応液1、2)の作製例
バリン、プロリン、イソロイシン、グルタミン酸ナトリウム、アルギニン(それぞれ協和醗酵工業製)およびリジン塩酸塩(味の素製)を一定量秤量し(表1)、水で300mLにメスアップした。
Figure 0005446695
次に、このアミノ酸溶液と果糖ブドウ糖液糖(ハイフラクトM;日本コーンスターチ社製)2.5gを蓋の無い鍋に移し、電磁調理器(ツインバード社製)にて攪拌しながら30分沸騰加熱した(約100℃)。攪拌することで、香気成分が蒸気とともに揮発した。加熱後、再びこの水溶液を300mLにメスアップし、本発明品(反応液1)を得た。
次にバリン、プロリン、イソロイシン、グルタミン酸ナトリウム、アルギニン(それぞれ協和醗酵工業製)およびリジン塩酸塩(味の素製)を一定量秤量し(表2)、水で900mLにメスアップした。
Figure 0005446695
次に、このアミノ酸溶液と果糖ブドウ糖液糖(ハイフラクトM;日本コーンスターチ社製)7.5gを排気装置付きの真空釜に移し、−550mmHg、90℃の条件下で攪拌しながら20分間加熱した。香気成分が蒸気とともに揮発して排気装置から排出された。加熱後、再びこの水溶液を水で900mLにメスアップし、本発明品(反応液2)を得た。
(2)食品素材(試験液1)の作製例
バリン、プロリン、イソロイシン、グルタミン酸ナトリウム、アルギニン(それぞれ協和醗酵工業製)およびリジン塩酸塩(味の素製)を一定量秤量し(表1)、果糖ブドウ糖液糖2.5gを添加した後に水で300mLにメスアップした。本調製品には加熱を施さず、試験液1を得た。
(3)反応液1、2、試験液1の低カロリーキャンディに対する乳味増強効果
次に、反応液1、2、および試験液1の乳味増強効果を、低カロリーキャンディの原材料として使用し、得られた試作物から評価した。なお、対照品には本発明品と同量の水を添加して用いた。パネルテストは10人によって行い、得られた試験品と対照品の乳味について官能評価した。「乳味」については5段階(1が最も弱く、5が最も強い)で評価し、平均値を示した。乳味が強ければ得点が高くなるが、乳味が低い場合や異味を感じれば得点が低くなる総合的な官能評価とした。
(対照例1)
砂糖100部、還元麦芽糖水飴500部を混合溶解(100℃、以下の実施例、比較例でも同じ)し、生クリーム15部、バター5部、練乳10部、6倍濃縮いちご果汁10部、乳化剤0.8部、水100部を混合した後、真空釜にて−650mmHg、140℃の条件下で濃縮し、水分値2.0重量%の低カロリーキャンディを得た。
(実施例1)
水のかわりに反応液1を使用した以外は対照例1と同様にして、水分値2.0重量%の低カロリーキャンディを得た。
(実施例2)
水のかわりに反応液2を使用した以外は対照例1と同様にして、水分値2.0重量%の低カロリーキャンディを得た。
(比較例1)
水のかわりに試験液1を使用した以外は対照例1と同様にして、水分値2.0重量%の低カロリーキャンディを得た。
(対照例1と実施例1、2、比較例1の乳味比較)
次に対照例1、実施例1、2および比較例1で得られた低カロリーキャンディについて官能検査を行った(表3)。
Figure 0005446695
実施例1および2はいずれも対照例1と比べて顕著に乳味が増強されたことが確認された。しかしながら加熱処理していない試験液1を用いた場合には(比較例1)、対照例1と比べて乳味はほぼ同等で増強効果はほとんどなかった。このことから、特定のアミノ酸配合からなるアミノ酸と糖質との加熱反応が重要であることが明らかとなった。
(3)反応液3〜55の低カロリーキャンディに対する乳味増強効果の検討(実施例3〜48、比較例2〜8、なお、実施例47、48は参考例である。)
バリン、プロリン、イソロイシン、グルタミン酸ナトリウム、アルギニン(それぞれ協和醗酵工業製)およびリジン塩酸塩(味の素製)から各種アミノ酸を一定量組み合わせ、水で300mLにメスアップした。次に、これら各アミノ酸溶液と果糖ブドウ糖液糖(ハイフラクトM;日本コーンスターチ社製)2.5gを蓋の無い鍋に移し、電磁調理器(ツインバード社製)にて攪拌しながら30分沸騰加熱した。攪拌することで、香気成分が蒸気とともに揮発した。加熱後、再びこの水溶液を水で300mLにメスアップし、本発明品(反応液3〜43)を得た(表4)。また、一定の効果を有するアミノ酸の組み合わせ例として、同様に果糖ブドウ糖液糖との加熱反応液44〜48を得た。また、効果の得られないアミノ酸配合の比較例を多数得るために同様に果糖ブドウ糖液糖との加熱反応液49〜55を得た。これらの反応液のアミノ酸配合を表5に示した。

Figure 0005446695
Figure 0005446695
次に各反応液を原材料の一部とし低カロリーキャンディを作製し、官能評価を行った。評価は対照例1と比較して実施した。水のかわりに各反応液を使用した以外は対照例1と同様にして、水分値2.0重量%の低カロリーキャンディを得た。表6に実施例3〜48および比較例2〜8に用いた反応液と、官能評価得点を記載した。
表6に示す結果より、実施例3〜55で得られた低カロリーキャンディは、いずれも対照例1のものに比べて有意に高い乳味増強効果が得られ、また、比較例2〜8のものよりもいずれも高い乳味増強効果が得られた。中でも、実施例3〜46で得られたものは乳味増強効果が顕著に高いものであった。
Figure 0005446695
(4)反応液1の乳風味クッキーに対する乳味増強効果の検討(実施例49、対照例2、比較例9)
反応液1および試験液1をそれぞれ凍結乾燥し粉体(それぞれ反応液1粉体、試験液1粉体という)を得た。対照例2の材料配合表を表7に、実施例49の材料配合表を表8に、比較例9の材料配合表を表9に示した。まず、ショートニングをクリーミングし、これに砂糖を加えながら更にクリーミングし、さらに食塩、膨剤、脱脂粉乳を水に溶かしたものを加え、全体をクリーミングした。その後に反応液1粉体もしくは試験液1粉体を添加し混合し、最後に小麦粉を入れて軽く攪拌した後成形し、190℃で13分間焼成した。
Figure 0005446695
Figure 0005446695
Figure 0005446695
得られたクッキーを同様に官能検査した結果を示す(表10)。その結果、加熱処理していない試験液1粉体には乳味増強効果が認められなかったが、反応液1粉体には有意な乳味増強効果が認められた。
Figure 0005446695
(6)反応液1の乳風味飲料に対する乳味増強効果の検討(実施例50、対照例3、比較例10)
市販の低脂肪乳に反応液1および試験液1をそれぞれ1/200容量を添加し、官能評価用のサンプル(それぞれ実施例50、比較例10とした)を調製した。同量の水を添加した低脂肪乳を対照例3とし、同様に官能評価を行った(表11)。
Figure 0005446695
その結果、加熱処理していない試験液1には乳味増強効果が認められなかったが、反応液1には有意な乳味増強効果が認められた。
(6)反応液1の乳風味調味剤に対する乳味増強効果の検討(実施例51、対照例4、比較例11)
市販のホワイトソースドレッシングに反応液1および試験液1をそれぞれ1/50容量を添加し、官能評価用のサンプル(それぞれ実施例51、比較例11とした)を調製した。同量の水を添加したホワイトソースドレッシングを対照例4とし、同様に官能評価を行った(表12)。
Figure 0005446695
その結果、加熱処理していない試験液1には乳味増強効果が認められなかったが、反応液1には有意な乳味増強効果が認められた。

Claims (4)

  1. バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸を主成分とするアミノ酸と糖質を含み、かつ乳由来原料を添加していない水溶液を加熱させてなる乳味増強作用を有する食品素材であって、
    バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸の総量が、全アミノ酸総量に対して70重量%以上であり、
    糖質が異性化糖である乳味増強作用を有する食品素材。
  2. 選ばれるアミノ酸がバリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンである請求項1記載の食品素材。
  3. バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸を主成分とするアミノ酸と糖質と水を混合し、混合されかつ乳由来原料を添加していない水溶液開放系下で70℃〜150℃にて加熱させ、生じた香気成分を揮発させる工程を含むことを特徴とする請求項1または2記載の乳味増強作用を有する食品素材の製造方法。
  4. 請求項1または2記載の乳味増強作用を有する食品素材を、最終固形分濃度が1ppm〜10,000ppmとなるように食品または調味剤に添加する食品または調味剤の乳味増強方法。
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