JP5436637B2 - 架橋剤、架橋高分子、およびそれらの用途 - Google Patents
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Description
かかる架橋高分子は、(i)単量体を架橋剤によって三次元架橋して高分子化したもの、(ii)線状高分子を架橋剤によって分子間架橋して得られるもの、に大別される。
かかるPVA系樹脂の場合、主鎖に結合する水酸基を架橋に用いた例も広く知られているが、架橋効率を高め、強固な架橋構造を形成させるためには、側鎖に反応性に富む官能基が導入されたPVA系樹脂を用いることが好ましく、例えば、アセトアセチル基を側鎖に有するPVA系樹脂が高い耐水性が求められる用途に用いられている。
例えばAA化PVA系樹脂をジアルデヒド化合物であるグリオキザールで架橋して得られた架橋高分子は、感熱記録用媒体の表面保護層(例えば、特許文献1参照。)や、偏光板における偏光フィルムと保護フィルムとの接着層(例えば、特許文献2参照。)等に好適に用いられている。
また、エチレン性不飽和単量体に由来する繰り返し構造単位を含む重合体を分散質とし、分散剤としてAA化PVA系樹脂を用いて得られた水性エマルジョンにおいて、架橋剤としてグリオキザールを用い、かかるエマルジョンの乾燥被膜に耐水性を付与した例も知られている(例えば、特許文献3参照。)
さらに、AA化PVA系樹脂をホルムアルデヒドやグリオキザールなどの、現在多用されているアルデヒド化合物によって架橋して得られた架橋高分子は、その保存環境によっては経時によって着色するという問題点があった。
なお、特許文献4には、ホルムアルデヒドのアルデヒド基がグルコース等のポリオール化合物によってアセタール化された化合物がAA化PVA系樹脂の架橋剤として提案されているが、かかる化合物を架橋剤として用いた場合、AA化PVA系樹脂との混合水溶液の安定性、および得られた架橋高分子の耐経時着色性は若干向上するものの、まだまだ改善の余地があるものであった。
また、かかる一般式(1)で表わされるグリオキシル酸エステル誘導体は、有効成分として架橋剤中に含まれるもので、有効成分とは、実質的に架橋剤として機能することを意味するものである。また、その含有量としては、一概には言えないが、通常、架橋剤全量に対して60〜100重量%であり、好ましくは70〜100重量%の範囲である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の架橋剤は、一般式(1)で表わされるグリオキシル酸エステル誘導体を含む架橋剤である。
まず、本発明の架橋剤中に有効成分として含有されるグリオキシル酸エステル誘導体について説明する。
本発明で用いられるグリオキシル酸エステル誘導体は、下記一般式(1)で表わされるもので、式中のR1、R2は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基を示し、R3は水素または炭素数1〜10のアルキル基を示す。中でも、R1、R2が各々独立に炭素数1〜10のアルキル基であり、R3が水素である、下記一般式(1a)で表わされるヘミアセタール化合物が好ましく用いられる。
また、本発明のヘミアセタール化合物はエステル基中のR1とヘミアセタール基中のR2が同じものであっても、異なっているものであってもよい。さらに、R1あるいはR2がそれぞれ異なる複数のヘミアセタール化合物の混合物であってもよい。
(A)グリオキシル酸の水溶液にアルコールを加え、無触媒もしくは硫酸ジルコニウム等の触媒の存在下でエステル化する方法。
(B)酒石酸ジアルキルをハロゲン系溶媒中で過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化剤を用いて酸化する方法(例えば、WO2005−113570号公報参照。)。
(C)フマル酸ジエチル、またはマレイン酸ジメチルをエステル系溶媒中でオゾン酸化して得られるオゾニドを含む反応混合物をグリオキシル酸エステルに転化する方法(例えば、特開平9−124553号公報参照。)。
本発明の架橋剤中の有効成分である一般式(1)で表わされるグリオキシル酸エステル誘導体の含有量は、通常、架橋剤全量に対して、60〜100重量%であり、特に70〜100重量%の範囲が好ましく用いられる。
次に、本発明の架橋剤を用いて得られる架橋高分子について説明する。本発明の架橋高分子は、アセトアセチル基含有樹脂が、本発明の架橋剤によって架橋されてなることを特徴とするものである。
共重合によってアセトアセチル基を側鎖に導入する場合に用いられる単量体としては、例えば、アセト酢酸ビニルや、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、特にアセトアセトキシメチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
かかるアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートは、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂にアセトアセチル基を導入する場合に広く用いられており、例えば、かかるアセトアセチル基を有する単量体と各種単量体を乳化重合することによって、これらの成分を有する共重合体の水性エマルジョンが得られる。具体的には、特開2001−342219号公報に開示された水性エマルジョンなどを挙げることができる。
このアセトアセチル基を有する重合体を分散質とする水性エマルジョンに対し、本発明の架橋剤を用いることによって、かかるエマルジョンから得られる乾燥皮膜に優れた耐水性を付与することが可能である。
かかる水性エマルジョンに対する、本発明の架橋剤の配合量は、通常、水性エマルジョンの固形分100重量部に対して架橋剤が0.01〜100重量部、特に0.1〜50重量部、さらに0.5〜10重量部である範囲が好ましく用いられる。また、水性エマルジョン中のアセトアセチル基を有する重合体中のアセトアセチル基量(Y)に対する架橋剤中のヘミアセタール基とアセタール基の合計量(X)のモル比(Y/X)は、通常、0.01〜20、好ましくは0.05〜10、特に0.1〜5の範囲が好ましく用いられる。かかる架橋剤の配合量、あるいは架橋剤中のヘミアセタール基とアセタール基の合計量が少なすぎると、架橋に長時間を要したり、得られた架橋高分子の耐溶剤性が不十分となる傾向があり、逆に多すぎると、その使用環境等によっては、架橋剤配合後の水性エマルジョンが増粘しやすくなり、ポットライフが短くなる傾向がある。
なお、式中のXは炭素数1〜10のアルキル基を表わす。
従って、本発明の架橋剤は、AA化PVA系樹脂と組み合わせることによって、その能力を最も強く発揮できるものと考えられる。
以下、AA化PVA系樹脂およびその架橋高分子について詳細に説明する。
本発明に用いるAA化PVA系樹脂とは、側鎖にアセトアセチル基を有するPVA系樹脂である。
かかるAA化PVA系樹脂の製造法としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法、PVA系樹脂とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等を挙げることができるが、製造工程が簡略で、品質の良いAA化PVA系樹脂が得られることから、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法で製造するのが好ましい。以下、かかる方法について説明する。
なお、かかる共重合モノマーの導入量はモノマーの種類によって異なるため一概にはいえないが、通常は全構造単位の10モル%以下、特には5モル%以下であり、多すぎると水溶性が損なわれたり、架橋剤との相溶性が低下したりする場合があるため好ましくない。
l(OH)={2(OH,OH)+(OH,OR)}/(OH,OR)
(ただし、(OH,OR)、(OH,OH)の各吸収強度比は、いずれもモル分率で計算するものとする。)
かかる水酸基平均連鎖長およびその測定方法に関しては、「ポバール」(発行所:高分子刊行会、248ページ、1981)およびMacromolecules,Vol.10,p532(1977)に詳述されている。
かかるAA化PVA系樹脂以外の各種のPVA系樹脂の例としては、ビニルエステル系モノマーと該ビニルエステル系モノマーと共重合性を有する各種モノマーとの共重合体のケン化物等を用いることができ、かかる各種の共重合モノマーとしては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
かかる乾燥条件としては、特に限定されるものではなく、使用形態によって適宜選択されるものではあるが、通常は5〜150℃、さらには30〜150℃、特には50〜150℃の温度条件で、0.1〜60分、さらには0.1〜30分、特には0.2〜20分の乾燥時間が好ましく用いられる。
まず、本発明の偏光板について説明する。
本発明の偏光板に用いられる偏光フィルムとしては、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。例えば、(i)PVA系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン−ビニルアルコール樹脂系フィルム、等のビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素や二色性色素などの二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの(例えば、特開2001−296427号公報、特開平7−333426号公報参照。)、(ii)(i)において二色性材料とともに液晶性を有する複屈折材料をビニルアルコール系樹脂フィルム中に有するもの(例えば、特開2007−72203号公報参照。)、(iii)二色性材料を含有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂フィルムを一軸延伸したもの(例えば、特開2001−356213号公報参照。)、(iv)PVA系樹脂やエチレン−ビニルアルコール樹脂を脱水あるいは脱酢酸して連続するポリエン構造を導入し、これを延伸して得られるポリエン系フィルム(例えば、特開2007−17845号公報参照。)、などを挙げることができる。
PVA系フィルムに用いられるPVA系樹脂としては、通常、酢酸ビニルに代表される脂肪酸ビニルエステルを重合して得られるポリビニルエステルをケン化して製造されるが、偏光特性を損なわない範囲において、少量の共重合体であってもよく、例えば不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合物をケン化したものであっても良い。PVA系樹脂のケン化度は通常85〜100モル%であり、特に90〜100モル%、さらには95〜100モル%のものが好ましく用いられる。かかるケン化度が低すぎる場合には偏光フィルム作成時に耐水性が不足する傾向がある。
まずPVA系樹脂の水溶液から原反フィルムが形成される。かかる方法としては公知の製膜法を用いることができ、通常は溶液流延法が採用されているが、乾・湿式製膜法やゲル製膜法等も実施可能である。かかる溶液流延法を用いる場合、PVA系樹脂水溶液の濃度は通常1〜50重量%であり、かかる水溶液を金属ロール等に流延し、加熱乾燥することで原反フィルムがえられる。
環状オレフィン系樹脂フィルムの市販品としては、JSR社製「ARTON」、日本ゼオン社製「ZEONOR」、「ZEONEX」、日立化成工業社製「OPTOREZ」、三井化学社製「APEL」、積水化学工業社製「エスシーナ」「SCA40」などを挙げることができる。
かかる(メタ)アクリル系樹脂フィルムの市販品としては、三菱レイヨン社製「アクリペットVRL20A」、「アクリペットIRD−70」、UMGABS社製「MUX−60」などが挙げられる。
したがって、本発明における硬化塗膜層は、上記の如き硬化性樹脂を含む塗工液を、スピンコート法、マイクログラビアコート法など、公知の方法で酢酸セルロース系フィルムの表面に塗工し、紫外線硬化や熱硬化等により設けることができる。硬化塗膜層の厚みは1〜30μm 程度であり、好ましくは2μm〜20μmである。
また、かかる保護フィルムは、偏光フィルムと積層されない面にハードコート層を設けたり、スティッキング防止、反射防止、アンチグレアなどの各種処理を施すことも可能である。さらに、位相差板や視野角拡大フィルムなどの、各種光学機能フィルムを、積層することも可能である。
かかる接着剤層中における架橋高分子の含有量は、通常50〜100重量部であり、特に70〜100重量部、さらに80〜100重量部の範囲が好ましく用いられる。かかる含有量が少なすぎると、接着力が不足したり、接着剤の耐水性が不足する傾向がある。
かかる接着剤層は、通常は、本発明の架橋高分子を含有する水性接着剤を偏光フィルムあるいは保護フィルム、あるいはその両方に均一に塗布し、両者を貼り合わせた後に圧着、加熱乾燥することで形成される。
かかる水性接着剤を偏光フィルムあるいは保護フィルム上に塗工するにあたっては、ロールコーター法、エアードクター用、ブレードコーター法、噴霧法、浸漬法や、偏光フィルムと保護フィルムを貼り合わせる直前に、水性接着剤(水)溶液を、該フィルム間に適量供給して流し込んだ後、両者を貼り合わせ乾燥する等の公知の方法を用いることができる。また、かかる水性接着剤の塗工量は、乾燥後の接着剤層の厚さとして、通常1〜1000nm、特に1〜500nm、さらには1〜300nmの範囲から選定され、厚さが厚くなりすぎると均一な塗工が困難になったり、厚さムラが生じる傾向がある。また、水性接着剤を塗布、貼り合わせ後の加熱乾燥条件としては、通常5〜150℃、特に30〜120℃、さらに50〜90℃において、10秒〜60分、さらには30秒〜30分、特に1分〜20分の条件で行われる。
つぎに、本発明の架橋高分子を含有する層を有する感熱記録用媒体について説明する。
本発明の感熱記録用媒体は、好ましくは支持基材上の感熱発色層および/または保護層中に本発明の架橋高分子を含有するものである。
感熱発色層は、ロイコ染料と顕色剤およびバインダー樹脂を含有する水性塗工液を支持基材上に塗工することにより形成させることができ、本発明においては、かかるバインダー樹脂として、本発明の架橋高分子を用いるものである。この時の架橋高分子の含有量は、ロイコ染料及び顕色剤の総量100重量部に対して通常10〜200重量部であり、特に30〜150重量部、さらに50〜100重量部の範囲が適当である。
保護層は、耐水性、耐薬品性、記録走行性などの向上を目的として上述の感熱発色層上に設けたもので、水を媒体とし、バインダー樹脂、無機顔料、および必要に応じて滑剤などを混合撹拌して調整された保護層用塗工液を、感熱発色層上に塗工、乾燥して形成される。本発明においては、かかるバインダー樹脂として、AA化PVA系樹脂を本発明の架橋剤によって架橋して得られる架橋高分子を用いるものである。この時の架橋高分子の含有量は、無機顔料100重量部に対して10〜200重量部が適当である。
また、感熱発色層塗工後、または保護層塗工後、スーパーカレンダー処理を行い、平滑性、光沢性を向上させることも可能である。
(1)紙加工剤
昇華型感熱記用媒体の顔料バインダー、空隙型インクジェット記録用媒体の無機微粒子バインダー及びアンダーコート層、膨潤型インクジェット記録用媒体のインク受容層及びアンダーコート層、紙のクリアコーティング剤、塗工紙の顔料バインダー、電子写真用記録媒体の顔料バインダー、離型紙の表面塗工剤、離型紙の塗工層顔料バインダーなど
(2)接着剤
2液型接着剤、ハネムーン型接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、建材用バインダー(石膏ボード、繊維板等)、各種粉体造粒用バインダー、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤など
(3)水性ゲル
排水処理用担体、保水剤、保冷剤、バイオリアクター、芳香剤、地盤強化剤など
(4)被覆剤
繊維加工剤、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、導電剤、暫定塗料、暫定保護膜など
(5)フィルム、膜
電解質膜、包装用フィルムなど
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
50%グリオキシル酸水溶液400g(2.71mol)を減圧濃縮して85%グリオキシル酸水溶液とし、これにエタノール1250g(27.1mol)と硫酸ジルコニウム・4水和物19.2g(0.054mol)を加え、2時間加熱還流して反応混合物を得た。これを室温まで放冷した後、減圧濃縮(40℃、60mmHg)し、未反応のエタノール(875g)を回収した。残った反応混合物を60mmHgの減圧下でフラッシュ蒸留し、30〜80℃の留分430gを集め、架橋剤(B1)とした。
かかる架橋剤(B1)を1H−NMRで解析したところ、一般式(1a)においてR1およびR2がエチル基であり、R3が水素であるグリオキシル酸エステルのヘミアセタール化合物を約23%、一般式(1b)においてR1、R3、およびR4のすべてがエチル基であるグリオキシル酸エステルのアセタール化合物を約2%、エタノールを約75%含有するものであった。
13〜18ppm :エチル基のメチル炭素
57〜64ppm :エチル基のメチレン炭素
87〜98ppm :アセタール基、ヘミアセタール基の炭素
168〜172ppm:カルボン酸エステル基の炭素
50%グリオキシル酸水溶液32.6g(0.35mol)を減圧濃縮して85%グリオキシル酸水溶液とし、これにメタノール112g(3.49mol)と硫酸ジルコニウム・4水和物2.5g(6.99mmol)を加え、2時間加熱還流して反応混合物を得た。これを室温まで放冷した後、減圧濃縮(40℃、100mmHg)し、未反応のメタノール(78.2g)を回収した。残った反応混合物を60mmHgの減圧下でフラッシュ蒸留し、30〜80℃の留分38.6gを集め、架橋剤(B2)とした。
かかる架橋剤(B2)を1H−NMRで解析したところ、一般式(1a)においてR1およびR2がメチル基であり、R3が水素であるグリオキシル酸エステルのヘミアセタール化合物を約99%、一般式(1b)においてR1、R3、およびR4のすべてがメチル基であるグリオキシル酸エステルのアセタール化合物を約1%含有するものであった。
52〜55ppm :メチル基の炭素
87〜99ppm :アセタール基、ヘミアセタール基の炭素
167〜170ppm:カルボン酸エステル基の炭素
実施例1
平均重合度1200、ケン化度99モル%、AA化度5.0モル%、水酸基平均連鎖長22であるAA化PVA系樹脂の10%水溶液100重量部に、架橋剤として製造例1で得られた架橋剤(B1)(グリオキシル酸エチル誘導体)を固形分で0.6重量部(AA化PVA系樹脂に対して6重量%)添加して混合撹拌し、樹脂組成物水溶液とした。このときの、AA化PVA系樹脂中のAA基量(Y)に対する架橋剤中のヘミアセタール基量とアセタール基量の和(X)のモル比(Y/X)は2.9であった。
かかる水溶液をPETフィルム上に流延し、23℃、50%RHの条件下で48時間放置後、70℃で5分間加熱処理を行って厚さ100μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの耐水性および耐着色性を以下の要領で評価した。
得られたフィルムを80℃の熱水に1時間浸漬して、フィルムの溶出率(%)を測定した。なお、溶出率(%)の算出にあたっては、熱水浸漬前のフィルムの乾燥重量(X1)および熱水浸漬後のフィルムの乾燥重量(X2)(いずれもg)を求め、下式にて溶出率(%)を算出した。結果を表1に示す。
溶出率(%)={(X1―X2)/X1}×100
得られたフィルムを40℃、90%RHの条件下で1週間保管した後のフィルムの着色(黄変)の度合いを目視観察し以下の通り評価した。結果を表1に示す。
○・・・全く着色が認められない
△・・・若干、黄変が認められる
×・・・著しく黄変が認められる
得られた樹脂組成物の7%水溶液の23℃における粘度(a)をブルックフィールド型粘度計(ブルックフィールド社製、ローターNo.2、回転数100rpm)で測定した後、該水溶液を23℃の雰囲気下に置き、6日後の水溶液粘度(b)を測定し、前後の増粘倍率を(b)/(a)で示した。
実施例1において、架橋剤(B1)の添加量を固形分で1.22重量部(AA化PVA系樹脂に対して12.2重量%)(Y/X=1.4)となるようにした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤として製造例2によって得られた架橋剤(B2)(グリオキシル酸メチル誘導体)を用い、その添加量を固形分で0.52重量部(AA化PVA系樹脂に対して5.2重量%)(Y/X=2.3)とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤としてグリオキザールの40%水溶液を用い、その添加量を0.25重量部(純分0.1重量部、AA化PVA系樹脂に対して1重量%)(Y/X=0.8)とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤としてグリオキシル酸の50%水溶液を用い、その添加量を1重量部(純分0.5重量部、AA化PVA系樹脂に対して5重量%)(Y/X=1.7)とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、架橋剤としてグルコースとグリオキザールとの反応物である環状アセタール化合物(オムノヴァ社製「セクアレッツ755」、55重量%水溶液)を用い、その添加量を0.45重量部(純分0.25重量部、AA化PVA系樹脂に対して2.5重量%)(Y/X=6.1)とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例6
重合度2600、ケン化度99.8モル%のPVA系樹脂からなる厚さ50μmのPVAフィルムを30℃の水中に浸漬し、ついでヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム20g/Lを含有する30℃の染色液に浸漬・延伸、さらにホウ酸50g/L、ヨウ化カリウム50g/Lを含有する53℃のホウ酸処理液に浸漬・延伸して、延伸倍率4.0倍、厚さ28μmの偏光フィルムを得た。
偏光フィルムの両面に、かかる樹脂組成物水溶液を介して厚さ80μmのトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを貼り合わせ、0.33MPaの圧力をかけてラミネートし、80℃で10分間乾燥して偏光板を得た。
実施例6において、接着剤として用いた樹脂組成物中の架橋剤とその添加量を表2に示す通りにした以外は実施例6と同様に偏光板を作製し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。なお、実施例10では、架橋剤として試薬として購入したグリオキシル酸メチルのメチルヘミアセタールを用いた。結果を表2に示す。
実施例6において、架橋剤としてグリオキザールの40%水溶液、およびメチロール化メラミン(住友化学社製または長春人造樹脂社製「スミマールM−30W」)を用い、その添加量を表2に示す通りにした以外は実施例6と同様に偏光板を作製し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
実施例11
実施例1で用いたものと同様のAA化PVA系樹脂(平均重合度1200、ケン化度99モル%、AA化度5.0モル%、水酸基平均連鎖長22)の10%水溶液100重量部、製造例1で得られた架橋剤(B1)(グリオキシル酸エチル誘導体)を固形分で0.65重量部(AA化PVA系樹脂に対して6.5重量%)、カオリン(エンゲルハード社製「UW−90」)25重量部、ステアリン酸亜鉛の40%水溶液(中京油脂社製「ハイミクロンF−930」)9.36重量部、および水を総量が200重量部となるように配合し、保護層用塗工液を作製した。
得られた感熱記録紙を120℃の熱板上に1kg/cm2の圧力で10秒間押し当てて発色させ、その発色濃度(C1)をマクベス濃度計(マクベス社製「RD−100R型」、アンバーフィールド使用)にて測定した。これを24℃の水に10時間浸漬した後、自然乾燥させ、発色濃度(C2)を同様に測定し、下式にて耐水性を求めた。結果を表3に示す。
耐水性=C2/C1
得られた感熱記録紙のイエローインデックス(YI)値(Y1)を色差計(日本電色工業社製「SZ−Σ90」、反射法)にて測定した。これを40℃、90%RHの雰囲気下で5日間放置し、そのYI値(Y2)を同様に測定し、下式にて耐変色性を求めた。結果を表3に示す。
耐変色性=Y2/Y1
実施例11において、保護層用塗工液に用いた架橋剤とその配合量を表3に示す通りにした以外は実施例11と同様に保護層を有する感熱記録紙を作製し、同様に評価を行った。なお、実施例14では、架橋剤として試薬として購入したグリオキシル酸メチルのメチルヘミアセタールを用いた。結果を表3に示す。
Claims (4)
- アセトアセチル基含有樹脂がアセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の架橋高分子。
- 偏光フィルムと請求項2記載の架橋高分子を含有する接着剤層と保護フィルムをこの順番で含有することを特徴とする偏光板。
- 支持基材上に請求項2記載の架橋高分子を含有する層を含むことを特徴とする感熱記録用媒体。
Priority Applications (1)
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