本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
図1は、本発明における透過潜像模様形成体(1)(以下、「形成体」という。)の一例を示す図である。この形成体(1)は、図1に示すように、基材(2)上の少なくとも一部に本発明における透過潜像模様が形成されている潜像模様領域(3)を有している。なお、図1に示すように、潜像模様領域(3)以外の領域には、料額、文字、他の模様等の必要な情報が公知の印刷方式(例えば、オフセット印刷又は凹版印刷等)により施されていても良い。
また、潜像模様領域(3)は、基材(2)の一方の面に設けられている領域だけではなく、後述する第3の実施形態において、基材(2)の他方の面に設けられている領域も含むものであり、すなわち、本発明における潜像模様領域(3)は、基材(2)を挟んで表裏同じ位置に設けられている領域のことである。なお、本発明において、基材(2)に第1の要素群(4)及び光反射層(5)が形成されている側の面を「一方の面」とし、その反対側の基材(2)の面を「他方の面」とする。
本発明における基材(2)は、上質紙、コート紙又はアート紙等の紙葉類並びにフィルム又はプラスチック等を用いることができ、後述する潜像模様領域(3)に形成する光反射層(4)を貼付又は印刷可能であり、透過光下において、本発明の特徴点である透過潜像模様を視認することができるような光透過性を有していれば、特に限定されるものではない。さらに、透過潜像模様のコントラストを高くするためには、不透明度が90%より大きい材質の基材を用いることが好ましい。この不透明度については、後述する基材の他方の面の潜像模様領域(3)に形成される第3の要素群を説明するところで詳細に説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1に示した形成体(1)における潜像模様領域(3)の視認状態について説明する。図2(a)は、基材(2)の一方の面の少なくとも一部に設けられた潜像模様領域(3)を、反射光下において観察した際の状態を示す図であり、その際に確認することができる模様を示したものが図2(b)又は図2(c)である。
潜像模様領域(3)は、基材(2)の一方の面上に、印刷インキにより形成された第1の要素群(4)と、その第1の要素群(4)の上に光を反射可能な光反射層(5)が積層されている。それぞれの構成等については後述するが、図2(a)のように、潜像模様領域(3)を反射光下で見ると、最上層に形成されている図2(b)又は(c)のような、光反射層(5)が光沢をもって確認することができる。
この光反射層(5)は、金、銀、銅、アルミニウム及びチタン等の金属材料から成る金属箔により形成されているか、又はアルミニウム等の金属材料を含む印刷インキ(以下、「金属インキ」という。)が印刷されて形成される。本第1の実施形態では、潜像模様領域(3)を長方形で形成しているが、これに限定されるものではなく、三角形、真円、楕円、多角形等、どのような形状でも良い。
光反射層(5)を金属箔により形成する場合に、図2(b)のような無地の金属箔を基材(2)上に貼付しても良いが、図2(c)に示すように、光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現することができるホログラムなどの回折格子や光学特性が異なる複数の薄膜を重ねた多層薄膜等のOVD(optical variable device)としても良い。なお、図2(c)に示したOVDを光反射層(5)に用いた場合に、一定の角度において確認することができる画像(図中では★の模様)を、以下、OVD画像(6)という。光反射層(5)にOVDを用いることにより、反射光下では、OVD画像(6)を確認することができ、透過光下では、後述する本発明の透過潜像模様を確認することができるため、より一層の効果を奏することが可能となる。
また、図3(a)のように、第1の要素群(4)及び光反射層(5)が形成されている側と反対側から所定の光源(7)を照射し、潜像模様領域(3)を第1の要素群(4)及び光反射層(5)が形成されている側から見ると、図3(c)に示すような本発明の透過潜像模様(8)(図中では「A」)を確認することができる。なお、この透過潜像模様(8)については、反射光下においても、光反射層(5)(特に、光反射層がOVDの場合)が光源によって著しく反射光を発する(OVD画像(6)を視認することができる)角度以外の角度において、透過光下で観察するよりは劣るが、透過潜像模様(8)を視認することができる。
なお、図3(a)では、所定の光源(7)を白熱灯で示しているが、これに限定されず、図3(b)に示すように、基材(2)を太陽光にかざして潜像模様領域(3)を見ても、同じように透過潜像模様(8)を確認することができる。したがって、本発明では、透過潜像模様(8)を確認するための所定の光源(7)は、特に限定されず、透過潜像模様(8)を確認することができる程度の光が照らされていれば同様の効果を得る。
さらに、図3(a)及び(b)で示したような透過潜像模様(8)を確認する状態については、図2で説明した「反射光下」での確認に対して、本発明では、「透過光下」で確認すると定義する。
以下、潜像模様領域(3)に形成されている第1の要素群(4)及び光反射層(5)について順番に説明する。
まず、基材(2)の一方の面に形成されている第1の要素群(4)について説明する。
(第1の要素群)
第1の要素群(4)は、図4(a)に示すように、第1の要素(9)が潜像模様領域(3)内において、万線状に配列されている。なお、本発明において「万線状」とは、複数の要素が規則的に所定のピッチで配列されている状態をいう。
この第1の要素(9)は、図4(b)に示した拡大図のように、第1の色(10)及び第2の色(11)の異なる二色のインキにより形成されている。仮に、どちらか一方のインキが、基材(2)と同じ色であっても、本発明における透過潜像模様(8)を形成することは可能であるが、本発明の効果をより一層高めるためには、この二色のインキは、基材(2)の色と異なることが好ましい。第1の要素(9)を基材(2)上に形成する方法としては、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方式を用いることができる。以下、本実施の形態については、第1の色(10)及び第2の色(11)は、共に、基材(2)の色とは異なる色として説明する。
第1の要素(9)を構成している第1の色(10)及び第2の色(11)については、一方が本発明の透過潜像模様(8)の模様部(12)を、他方が背景部(13)を構成するものである。図4(a)では、第1の色(10)が模様部(12)を形成しており、具体的には「A」を形成し、第2の色(11)が背景部(13)を形成している。
第1の要素(9)の要素幅(W1)及びピッチ(P1)は、後述する光反射層(5)に形成される第2の要素の要素幅及びピッチにより適宜設定すれば良いが、前述のとおり、透過潜像模様(8)は、透過光下においてのみ確認することができることが必要となり、反射光下では、光反射層(5)の光沢により確認することができないようにするため、要素幅(W1)が50〜500μm、ピッチ(P1)が100〜1000μmの範囲で形成することが好ましい。詳細については、第2の要素との位置関係を説明するところで述べる。
また、どのような透過潜像模様(8)の形状を形成するかにより、第1の要素(9)における第1の色(10)及び第2の色(11)の配置を適宜設計すれば良い。
さらに、第1の色(10)と第2の色(11)については、どちらで透過潜像模様(8)の模様部(12)を形成しても良く、反対に、どちらで背景部(13)を形成しても良い。例えば、図5(a)では、第1の色(10)で模様部(12)、第2の色(11)で背景部(13)を形成する構成とし、図5(b)では、第2の色(11)で模様部(12)、第1の色(10)で背景部(13)を形成する構成としている。それぞれの透過潜像模様(8)の視認状態は、図5(c)及び図5(d)となる。どちらの構成でも良く、それぞれの構成はネガポジの関係となっている。
第1の要素(9)は、万線状に配置されることとなるため、形状については、図4で示したように画線で形成することが好ましく、特に、直線により形成することが好ましい。ただし、これに限定されるものではなく、図6に示すような色々な形状で形成することが可能である。
例えば、図6(a)〜(c)は画線であり、特に、図6(a)は直線、図6(b)は破線、図6(c)は波線となっている。また、図6(d)は、複数の点の集合体である点群、図6(e)は、複数の画素の集合体である画素群、さらに、図6(f)は、複数の微小な文字の集合体である文字群である。
第1の要素(9)を図6(b)で示したような破線により形成する場合には、一本の破線において、線と線との間隔を余り広くしてしまうと、透過潜像模様(8)自体が不鮮明な模様となってしまうため、形成する透過潜像模様(8)の形状及び再現性を考慮し、適宜設定する必要がある。
また、前述のとおり、第1の要素(9)は、万線状に配置されることとなるため、図6(d)〜(f)に示した点、画素及び微小な文字で形成する場合、それぞれを一つの画線上に複数配列させ、肉眼では画線として視認することができるような配置とすることが必要となる。
例えば、図7においては、第1の要素(9)を複数の点の集合体である点群により形成した例を示している。この点は、高さ又は直径となるh1が、図4で示した第1の要素(9)の幅(W1)と同じこととなり、50〜500μmの範囲となる。
また、各点同士のピッチ(p1)については、肉眼において一つの画線として視認可能な程度の間隔となるよう50〜1000μmの範囲とする。
図6(f)で示した微小な文字については、文字に限定されるものではなく、記号、数字、その他、図形又はマーク等でも良い。さらに、点、画素又は文字等の群により画線状の要素を形成する場合には、図6(g)に示すように、一つの要素内において色々な形状を配置しても良い。いずれにおいても、前述した高さ又は直径(h1)及びピッチ(p1)の条件を満たしていれば、その形状は限定されない。本発明において、複数の点の集合体である点群、複数の画素の集合体である画素群、複数の微小な文字、記号、数字、図形又はマーク等の集合体について、総称して「微小要素群」という。したがって、図6(d)〜図6(g)までは、すべて微小要素群により第1の要素(9)が形成されていることとなる。
一つの要素内において、複数の「微小要素群」で形成しても良いことを説明したが、図8(a)から(c)に示すように、一つの要素内において複数の形状を成した画線により形成しても良い。当然、一つの要素内で画線と「微小要素群」により形成しても良い。
さらには、図8(d)及び図8(e)に示すように、第1の要素群(4)内において第1の要素(9)を異なる形状の要素で形成しても良い。図8(d)では、第1の要素(9)を直線と破線を交互に配置した例を示しており、図8(e)では、第1の要素群(4)内において、第1の要素(9)を直線として複数本配置した次に、画素による微小要素群を複数本配置した例を示している。いずれにしても、第1の要素(9)については、一つの要素内及び第1の要素群(4)における各々の要素において、図6で示したどの形状で形成しても良い。
(光反射層)
次に、第1の要素群(4)の上に形成される光反射層(5)について説明する。
基材(2)の一方の面における潜像模様領域(3)に形成された第1の要素群(4)の上に形成された光反射層(5)は、図9(a)に示したように、光反射層(5)が光反射性の金属材料により形成されている場合、光反射層を構成している金属材料が一部が除去されて形成された微細な第2の要素(14)が、万線状に配置されたことにより、形成された第2の要素群(15)を有しており、光反射層(5)が光反射性を有する金属インキにより形成されている場合には、金属インキが印刷されないことにより形成された微細な第2の要素(14)が、万線状に配置されたことにより、形成された第2の要素群(15)を有している。図9(a)では、説明上、万線状に形成されている第2の要素群(15)を確認することができるが、実際は、第2の要素群(15)以外の領域が光反射層(5)であることから、光の反射により確認することができない。さらに、図9(a)では、横方向に第2の要素(14)が配列されているが、これに限定されず、縦方向でも、斜め方向でも良く、一定の方向に万線状に配列されていれば良い。ただし、前述した第1の要素群(4)との位置関係が重要なため、第1の要素群(4)の配列方向との関係により適宜設計することとなる。この第1の要素群(4)との位置関係については、後述する。
また、第2の要素(14)についても、一つ一つの要素が肉眼で画線状に視認可能であれば良いため、第1の要素(9)と同様、図6(a)〜(g)のような種々の形状とすることが可能であり、さらに、図8(a)〜(e)で示したように、一つの要素内において異なる形状で形成しても良く、要素群内において異なる形状としても良い。詳細については、第1の要素(9)で説明したため省略する。なお、第1の要素(9)と第2の要素(14)についても、それぞれ異なる形状としても良い。
図9(a)において点線により囲んだところを拡大したのが図9(b)である。第2の要素(14)の要素幅(W2)は、50〜500μm、とし、ピッチ(P2)は100〜1000μmで形成する。要素幅(W2)が50μmよりも狭いと、光反射層(5)に形成することが製造上困難となってしまうことや、第1の要素群(4)との融合による透過潜像模様(8)自体の視認性が劣ってしまうからである。逆に500μmよりも太いと、反射光下において第2の要素群(15)や透過潜像模様(8)を視認することができてしまうためである。なお、第2の要素(14)の要素幅(W2)については、50〜500μmの範囲内であれば、必ずしも複数配置されている第2の要素(14)に対してすべてを同じ幅とする必要はなく、異なっていても良いが、あまり第2の要素(14)の要素幅(W2)に差を持たせてしまうと、光反射層(5)からの反射光量や、透過潜像模様(8)を確認する際の透過光量に差が生じてしまうため、同じ要素幅(W2)とすることが好ましい。
また、第2の要素(14)のピッチ(P2)は、第1の要素(9)のピッチ(P1)と略等しくする。それぞれの要素群の配置については後述するが、透過光下において第1の要素群(4)により形成されている透過潜像模様(8)を確認することができるような配置とするためである。なお、前述した「略等しい」の “略”については、第2の要素(14)のピッチ(P2)と第1の要素(9)のピッチ(P1)が、完全に等しくなくても、本発明の構成によって透過潜像模様(8)を確認することができれば、ピッチの若干の差については、本発明において等しいピッチであるということとして、この若干の差を“略”とするものである。以降についても、“略”という記載については、本発明の効果を奏する範囲での若干の差は、「等しい」の範囲に含まれることとするという意味である。
以下、本第1の実施形態においては、第2の要素(14)についても、直線により形成することとして説明する。
次に、第2の要素群(15)の作製方法について説明する。第2の要素群(15)は、前述のとおり、光反射層(4)が一部存在しない部分を形成するものであり、光反射層(4)が箔の場合には、光反射層(4)を形成している金属材料の一部を万線状に削除することにより形成する。したがって、光反射層(5)が、図2(a)に示した無地の金、銀、銅、アルミニウム又はチタン等の金属材料の1層から成る場合、レーザ加工又はスパッタリング法のような公知の真空蒸着法により形成することができる。また、図2(b)に示した光反射層(5)を有するOVDに対して第2の要素群(15)を形成する方法については、公知のレーザ加工又はディメタライズ加工により形成することが可能である。例えば、本出願人が既に開示している特開2007−240785号公報に記載されている加工方法を用いることでも良い。
また、光反射層(4)を金属インキにより形成する方法については、金属インキを用いて、オフセット印刷方式、インクジェット印刷方式等の公知の印刷方式により、第2の要素(14)部分を非画線部となるように印刷すれば良い。なお、使用可能な金属インキは、例えば、銀インキであるオフセットインキ(T&K TOKA製 UV No.3シルバー)を用いることができる。
以上のように、光反射層(5)の少なくとも一部に、光反射層が一部存在しないことにより形成された第2の要素(14)として、具体的には金属材料が除去されて成るか、又は金属インキを印刷(付与)する領域としない領域とにより形成することが可能である。
光反射層(5)については、図2を用いて説明したように、光反射層(5)を有するOVDを用いた方が、反射光下におけるOVD画像(6)と、透過光下における透過潜像模様(8)の二つの画像を確認することができるとともに、反射光下において、OVD画像(6)が万線状の第2の要素群(15)及び第1の要素群(4)をカモフラージュする効果が高くなるため、本発明の効果をより奏することとなる。したがって、OVDを用いて光反射層(5)を形成することが好ましい。以下、光反射層(5)が光反射性の金属材料により形成された箔として説明することとする。
以上説明した第1の要素群(4)と光反射層(5)に形成された第2の要素群(15)の位置関係を説明する。
図10(a)は、第1の要素群(4)と第2の要素群(15)の位置関係を説明するための図であり、説明上分かり易いように、第1の要素群(4)と光反射層(5)を図面において左右方向にずらして示している。
図10(a)に示すように、第1の要素群(4)におけるピッチ(P1)と、第2の要素群(15)におけるピッチ(P2)は略等しいため、第1の要素(9)と第2の要素(14)は同じ位置に配置されることとなる。
双方の要素のピッチ(P1及びP2)が等しい場合、第1の要素(9)の要素幅は、前述した要素幅(W1)以内であれば、第2の要素(14)の要素幅(W2)よりも太くても構わない。なぜなら、反射光下及び透過光下のいずれにおいても、第2の要素(14)よりも幅が広い箇所となる第1の要素(9)の一部分は、光反射層(5)における光反射材料によって隠ぺいされてしまうからである。逆に、第1の要素(9)の要素幅(W1)が第2の要素(14)の要素幅(W2)よりも狭いと、透過光下において、第2の要素(14)内に、第1の要素(9)と基材(2)の色が見えてしまい、鮮明な透過潜像模様(8)を確認しづらくなってしまう。したがって、第1の要素(9)の要素幅(W1)は、第2の要素(14)の要素幅(W2)と等しいか、又は太く形成することが好ましい。光反射層(5)を後から形成する際のアバレを考慮すると、第1の要素(9)の要素幅(W1)を第2の要素(14)の要素幅(W2)よりも太くしておくことがより好ましい。
また、第1の要素群(4)と光反射層(5)の大きさの関係については、光反射層(5)の下に第1の要素群(4)が形成されることとなるため、第1の要素群(4)が光反射層(5)よりも小さいか、又は同じとすることが好ましい。例えば、図10(a)において、第1の要素群(4)の縦方向の長さ(z1)は、光反射層(5)の縦方向の長さ(z2)よりも短く、第1の要素群(4)の横方向の長さ(y1)も、光反射層(5)の横方向の長さ(y2)よりも短いこととなる。このような大きさの関係とすることで、図10(b)に示すように、第1の要素群(4)と光反射層(5)を重ねて形成した際に、反射光下において第1の要素群(4)が光反射層(5)に隠ぺいされて完全に視認することができない。
ただし、図10(c)に示したように、第1の要素群(4)を地紋又は彩紋模様のような形態で形成することで、単に、地紋又は彩紋模様の上に光反射層(5)、特に、OVDが貼付されているかのごとく感じられるようにしても良い。したがって、第1の要素群(4)全体の大きさについては、特に光反射層(5)の大きさに対して限定されるものではないが、形成するときの意匠性等を考慮し、適宜設定すれば良い。
以上説明した第1の要素群(4)及び光反射層(5)の構成、並びに、第1の要素群(4)と第2の要素群(15)の位置関係により形成された潜像模様領域(3)を、図2(a)で示したように、基材(2)の一方の面(第1の要素群(4)及び光反射層(5)が形成されている側)の方から反射光下で視認すると、光反射層(5)の光沢(OVDを用いた場合には、OVD画像(6))を確認することができ、この光反射層(5)の光沢(OVDを用いた場合には、OVD画像(6))を視認することができた角度とは異なる角度において、視認性は若干劣るが、光反射層(5)を通して透過潜像模様(8)を視認することができ、また、図3(a)又は図3(b)のように透過光下で視認すると、図3(c)に示したように、第2の要素群(15)を介して、第1の要素群(4)で形成された透過潜像模様(8)を明確に確認することができる。
(変形例1)
前述において説明した第1の実施形態の変形例について以下説明するが、前述した第1の実施形態と重複するところについては省略する。まず、変形例1については、第1の要素群(4)及び第2の要素群(15)の形状の変形である。
前述した第1の実施形態では、すべて直線で形成した第1の要素(9)及び第2の要素(14)を複数平行に配置した形態として説明してきたが、すべてを平行な直線状に配列することに限られるものではなく、図11(a)及び図11(b)に示したように、各要素群は、多角形状(図11では、八角形)に形成されても良い。このような配列についても、各要素が本発明における万線状に配列されているものである。
説明が重複するが、本発明における「万線状」とは、各要素が規則的に複数配列される状態を示すものであるため、単に、直線が平行に配列されるものだけを示しているものではなく、図11のように、多角形状であっても、規則的に各要素が配列されているため、これらも万線状に配列されていることとなる。したがって、万線状に各要素が配列されていれば、図11に示すような多角形状に限定されるものではなく、円、楕円、その他色々な形状であっても良い。なお、図11のような場合、連続的に繋がっている八角形の一つの要素が第1の要素(9)及び第2の要素(14)であり、各辺一つずつが第1の要素(9)及び第2の要素(14)ではない。ただし、第1の要素群(4)と第2の要素群(15)の形状は同一の形状とする。
図11(a)に示した第1の要素群(4)と、図11(b)に示した第2の要素群(15)を有する光反射層(5)を重ね合わせて基材(2)に形成し、透過光下において潜像模様領域(3)を視認すると、図11(c)に示す透過潜像模様(8)を確認することができることとなる。
(変形例2)
次に変形例2について説明することとするが、この変形例2については、第1の要素(9)と第2の要素(14)が異なる角度に配置されているものである。
図12(a)に示すように、変形例2では、第1の要素(9)と第2の要素(14)が異なる角度を有して配列されている。具体的には、第2の要素(14)は、基材(2)の長辺方向に水平となっているが、第1の要素(9)が、第2の要素(14)に対して若干角度を有しているものである。図12(a)において点線で囲んだところの拡大図である図12(b)を用いて詳細に説明する。
図12(b)の拡大図に示すように、第1の要素(9)が配列されている方向を第1の方向(T1)とし、第2の要素(14)が配列されている方向を第2の方向(T2)とすると、第1の方向(T1)と第2の方向(T2)は、異なる角度(α)を有して配置されている。
この第1の方向(T1)及び第2の方向(T2)は、複数の第1の要素(9)が配列されている方向のことを示しているが、今まで図示しながら説明してきた第1の要素群(4)及び第2の要素群(15)は、すべて同一方向に各要素が配列された形態であったため、第1の方向(T1)及び第2の方向(T2)も同一方向となっていた。本変形例2では、この第1の方向(T1)と第2の方向(T2)が異なる方向となっているものである。
第1の方向(T1)と第2の方向(T2)の異なる角度(α)については、0〜±5°以下の範囲とする。±5°より大きな角度とすると、第2の要素(14)を介して視認することができる第1の要素(9)により形成された透過潜像模様(8)が所望する模様とならなくなってしまうからである。
また、図12では、すべての要素が平行に配列された万線状の第1の要素群(4)及び第2の要素群(15)となっていたが、変形例1で示したような多角形状や円又は楕円状に配列されている場合であっても、同様に、第1の要素(9)と第2の要素(14)の配列角度を異ならせることも可能である。
このような配列状態においても、第1の要素群(4)及び第2の要素群(15)は、本発明における万線状に必ず配列されているため、基準とする要素に対して垂直となる方向が第1の方向(T1)及び第2の方向(T2)として、異なる角度に配列すれば良い。
例えば、図13に示したように、第1の要素群(4)及び第2の要素群(15)を楕円形状となるように万線状に各要素を配列した場合、第1の要素(9)の所定の点(D1)から隣り合う第1の要素(9)に対して垂直となるような方向を、図13(a)のように第1の方向(T1)とした場合、第1の要素群(4)と光反射層(5)を重ね合わせた場合に、その第1の要素(9)と同じ位置となる所定の点(D2)から隣り合う第2の要素(14)に対して垂直となるような方向が、図13(b)のような第2の方向(T2)となる。このように、第1の要素群(4)と第2の要素群(15)を重ね合わせたときに同じ位置となる所定の点(D1及びD2)は、「対応した位置」であるとし、その対応した位置である所定の点(D1及びD2)において、各要素は、第1の方向(T1)又は第2の方向(T2)に垂直となる関係となっている。
また、仮に第1の要素(9)の所定の点を図13(a)における(D’1)とすると、その所定の点(D’1)において第1の要素(9)に垂直となるような方向が第1の方向(T’1)となり、図13(b)に示すように、その所定の点(D’1)と対応した位置となる第2の要素(14)の所定の点(D’2)において、第2の要素(14)に垂直となるような方向が第2の方向(T’2)となる。
したがって、このような楕円形状となるように万線状に配置された第1の要素群(4)と第2の要素群(15)の第1の方向(T1)と第2の方向(T2)の角度(α)を異ならせて配置すると、図13(c)のようになる。第1の方向(T1)と第2の方向(T2)の関係のみを抽出したのが図13(d)であり、第1の方向(T1)と第2の方向(T2)は異なる角度(α)を有していることがわかる。
このように、第1の方向(T1)と第2の方向(T2)を異ならせて配置することにより、透過光下において確認することができる透過潜像模様(8)は、第2の要素群(15)を介して、第1の要素群(4)だけではなく、若干であるが基材(2)の色も合わせて確認することができるため、同一の角度として配置した形態とは異なる色彩によって確認することもできる。
(第2の実施形態)
次に、本発明における第2の実施形態について説明するが、第1の実施形態と重複するところについては省略することとし、併せて、同じ構成を示す部位等については同じ符号を用いて説明する。
第2の実施形態では、第1の要素群(4)を構成する第1の要素(9)において、隣り合う第1の要素(9)同士の間に、第1の色(10)及び第2の色(11)の配置を逆とした別の構成の第1の要素(9)を配置するものである。図14を用いて詳しく説明する。
図14(a)では、第1の実施形態と同様に、第1の色(10)及び第2の色(11)により形成された第1aの要素(9a)が万線状に配置されている。この第1の色(10)によって透過潜像模様(8)の模様部(12)を形成し、第2の色(11)によって背景部(13)を形成するものである。このような構成の複数の第1aの要素(9a)において、隣り合う第1aの要素(9a)同士の間に、一つずつの第1bの要素(9b)が配置されている。この第1bの要素(9b)は、第1aの要素(9a)の第1の色(10)及び第2の色(11)と配置が逆となっている。この状態を拡大したのが図14(b)である。
図14(b)では、第1の色(10)と第2の色(11)の配置が逆となっている第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)の二つの要素が、一つのセットとして隣り合って配置され、順次その関係が成り立って複数配列されて第1の要素群(4)を構成している。この二つが一つのセットとなっている第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)を第1の要素セット(16)と定義する。この第1の要素セット(16)における第1の色(10)及び第2の色(11)は、二つ隣り合って配置されている第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)において、互いに逆の配置となっており、このような配置を本発明では、「対応した配置」と定義する。
第1の要素セット(16)内において、第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)が対応して配置していることは説明したが、第1の要素セット(16)内だけで対応して配置されているだけではなく、第1の要素群(4)を構成しているすべての第1の要素セット(16)に対して、第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)の配列順序も同じとすることが好ましい。図14では、すべての第1の要素セット(16)に対して、同じように、第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)が順番に配列されているものである。このように、すべての第1の要素セット(16)に対して、第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)が同じ順番で配列されていることを、本発明では、規則的に対応して配置されているという。
なお、仮に、一つずつの第1の要素セット(16)においては、対応して配置されていても、すべての第1の要素セット(16)に対しては規則的に配置されていない場合でも、透過潜像模様(8)は形成可能ではあるが、その場合、模様部(12)を形成する色が、場所により第1の色(10)及び第2の色(11)となり、鮮明な透過潜像模様(8)とはならないため、あまり好ましくはない。
図14(a)では、すべての第1の要素セット(16)において規則的に対応して配置されており、第1aの要素(9a)で第1の色(10)が模様部(12)を形成し、第2の色(11)が背景部(13)を形成し、逆に、第1bの要素(9b)では、第2の色(11)が模様部(12)を形成し、第1の色(10)が背景部(13)を形成している。
なお、図5では、第1の色(10)と第2の色(11)において、どちらを模様部(12)又は背景部(13)としても良く、それぞれ形成された透過潜像模様(8)は、ネガポジの関係となると説明したが、本第2の実施形態は、このネガポジの関係を同時に形成したこととなる。
また、前述したように、第1aの要素(9a)は、ピッチ(P1)により複数配列されていることから、その間に配置された第1bの要素(9b)とのピッチ(P1’)は、第1aの要素(9a)同士のピッチ(P1)の略1/2ということになる。したがって、第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)のピッチ(P1’)は、第2の要素(14)のピッチ(P2)の略1/2ということになる。さらに第1bの要素(9b)の要素幅(W1)については、第1aの要素(9a)と略同一の要素幅を有している。
この第1の要素セット(16)を複数配列した第1の要素群(4)に対して、第2の要素群(15)を有する光反射層(5)を重ね合わせて形成体(1)を形成するには、図15に示すように、第1の要素セット(16)のどちらか一方の第1の要素(9)を第2の要素(14)と同じ位置となるように配置することとなる。図15では、説明上、それぞれの配置を図面において左右方向にずらして図示しているが、実際は、第1の要素群(4)と第2の要素群(15)が同じ位置に重なるように配置してある。
図15では、第1aの要素(9a)と第2の要素(14)が同じ位置となるように配置した例で示している。この場合、もう一方の第1bの要素(9b)は、第2の要素(14)同士の間、所謂、光反射層(5)の金属材料部分である非要素部(17)に配置されることとなる。なお、この非要素部(17)は、第2の要素(14)同士の間だけではなく、光反射層(5)において第2の要素(14)が形成されていない部分のすべてのことである。
このような配置により構成された形成体(1)を透過光下で確認すると、図16(a)に示すように、第2の要素群(15)を介して複数の第1aの要素(9a)により形成された透過潜像模様(8)を確認することができる。この時、複数の第1bの要素(9b)は、光反射層(5)の非要素部(17)に隠ぺいされて確認することができない。
この状態を示したのが、図16(a)におけるX−X’断面図の図16(b)である。図16(b)で示したように、基材(2)上に形成された第1の要素群(4)において、第1aの要素(9a)は、さらにその上に形成された光反射層(5)の第2の要素(14)と同じ位置に配置され、第1bの要素(9b)は、第2の要素(14)の間の非要素部(17)に配置されている状態となっている。
逆に、第2の要素(14)に対して第1bの要素(9b)が同じ位置となるように配置すると、第1aの要素(9a)は、第2の要素(14)同士の間の非要素部(17)に隠ぺいされて確認することができない。
本第2の実施形態のような構成とする一つ目の理由は、本発明の第1の要素群(4)及び第2の要素群(15)は、前述のとおり非常に微細な要素構成となっているため、実際に製造する段階において、高度な位置精度が要求されることとなる。そこで、本第2の実施形態のような構成とすることで、製造上のアバレがあっても、第1aの要素(9a)又は第1bの要素(9b)のどちらか一方の要素が第2の要素(14)と同じ位置となる。
ここで、本第2の実施形態における第1の要素群(4)と第2の要素群(15)との要素幅及びピッチの関係について説明する。
第2の要素(14)の要素幅(W2)は、第1aの要素(9a)又は第1bの要素(9b)のピッチ(P1’)よりも狭くとることが望ましい。透過潜像模様(4)を形成するためには、第1の要素セット(16)のうち、第1aの要素(9a)又は第1bの要素(9b)のどちらか一方のみが主体的に第2の要素(14)と同じ位置に配置されることとなるため、仮に、第2の要素(14)の要素幅(W2)が、第1aの要素(9a)又は第1bの要素(9b)のピッチ(P1’)よりも大きくなってしまうと、図17に示すように、一つの第2の要素(14)内に第1の要素セット(16)である第1aの要素(9a)及び第1bの要素(9b)が位置することとなってしまい、所望する透過潜像模様(8)を鮮明に形成することができなくなってしまうからである。したがって、第1aの要素(9a)及び第1bの要素(9b)の要素幅(W1)は、第2の要素(14)の要素幅(W2)と略等しい又は太く形成することが好ましい。
また、第2の要素(14)のピッチ(P2)は、第1の要素セット(16)のピッチ(P1)と略等しくすることが好ましい。第2の要素(14)のピッチ(P2)と第1の要素セット(16)のピッチ(P1)を略等しくし、前述のとおり、第2の要素(14)の要素幅(W2)を第1aの要素(9a)又は第1bの要素(9b)のピッチ(P1’)よりも狭くとることで、第1の要素セット(16)のうち、必ず一方の第1の要素(9)(例えば、第1aの要素(9a))は、第2の要素(14)と同じ位置となり、他方の第1の要素(9)(例えば、第1bの要素(9b))は、非要素部(17)と同じ位置となる。
仮に、第2の要素(14)のピッチ(P2)と第1の要素セット(16)のピッチ(P1)が若干異なっていても、それぞれの第2の要素(14)には、第1aの要素(9a)又は第1bの要素(9b)がどのような状態であろうとも、必ず配置されることとなり、透過潜像模様(8)の視認性は、若干劣ることとなるが、グラデーションの係った色彩感のある透過潜像模様(8)を確認することもできる。
次に、二つ目の理由としては、本第2の実施形態においても、第1の要素群(4)と第2の要素群(15)を異なる角度を有するように配置することが可能であり、その場合には、第1の要素セット(16)により、グラデーションが掛かったように透過潜像模様(8)を確認することができることである。
図18(a)では、第1の要素群(4)と第2の要素群(15)を異なる角度(α)を有するように配置した際の透過潜像模様(8)の状態を示している。図示したように、それぞれの第2の要素(14)において、第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)を確認することができる配置となっている。
図18(b)は、図18(a)において点線により囲まれた部分の拡大図であり、第1の要素群(4)(図中では、代表して第1bの要素(9b)となっている)の配列方向である第1の方向(T1)と、第2の要素群(15)の配列方向である第2の方向(T2)とが、異なる角度(α)を有して配置されている。この異なる角度(α)については、第1の実施形態における変形例2において説明した異なる角度(α)と同じであり、その角度の範囲は0〜±5°とすることが好ましい。
このような配置構成とすることで、グラデーションの掛かった色彩感豊かな透過潜像模様(8)を形成することも可能である。なお、本第2の実施形態についても、光反射層(5)については、OVDを用いても良いことはいうまでもない。
(第3の実施形態)
次に、本発明における第3の実施形態について説明するが、第1の実施形態及び第2の実施形態と重複するところについては省略することとし、併せて、同じ構成を示す部位等については、同じ符号を用いて説明する。
第3の実施形態では、第1の要素群(4)及び光反射層(5)が形成されている基材(2)の面と反対側の潜像模様領域(3)に、基材(2)よりも透過率が高い第3の要素群(18)が形成されているものである。ここで、透過率が高いとは、不透明度が低いということであり、基材(2)の不透明度よりも第3の要素群(18)の不透明度が低いということになる。
また、前述したように、基材の他方の面の潜像模様領域(3)は、基材(2)の一方の面に設けられている潜像模様領域(3)に対して、基材(2)を挟んで同じ位置に設けられている。
第3の要素群(18)は、基材(2)よりも透過率が高ければ良く、特にその透過率には限定はないが、例えば、紙を基材(2)とした場合、一般的に紙基材は、不透明度が90%より高いため、第3の要素群(18)は、不透明度が90%以下であることを意味している。
第3の実施形態における形成体(1)を図示したのが図19である。図19(a)に示すように、第3の実施形態では、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態における第1の要素群(4)及び光反射層(5)が形成されている基材(2)の面とは反対側の面となる他方の面に、第3の要素群(18)が形成されているものである。
基材(2)の他方の面に形成されている第3の要素群(18)について、図19(b)を用いて説明する。第3の要素群(18)は、基材の透過率よりも高い透過率を有する第3の要素(19)が、潜像模様領域(3)において万線状に配列されている。
この第3の要素(19)についても、第1の要素(9)及び第2の要素(14)と同様に、図6で示したような種々の形状で形成することが可能であるが、基材(2)の一方の面側から透過潜像模様(8)を確認する際に、コントラストを高くする役割を有しているため、画線により形成することが好ましい。要素の各形状については、図6において説明したので省略する。なお、第1の要素(9)、第2の要素(14)及び第3の要素(19)は、それぞれ異なった形状としても良い。以下、第3の要素(19)は、直線で形成したこととして説明する。
第3の要素(19)を不透明度90%以下とする方法は、基材(2)が紙葉類であれば、例えば、用紙製造段階において、すき入れにより施すことでも良いし、公知のレーザ加工又はプレス成型により施しても良い。また、透明材料を紙に印刷することにより第3の要素(19)を形成することでも良い。このような透明材料としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン等の合成樹脂をインキ用溶剤と混合したものを用いることができる。基材(2)にフィルム又はプラスチックを用いる場合には、レーザ加工又はプレス成型により第3の要素(19)を形成することができる。以下、第3の要素(19)はレーザ加工により、基材(2)を一部除去して形成したこととして説明する。そのため、図19以降の図面では、基材(2)に対して凹部となって表現してあるものとする。
第3の要素(19)の要素幅(W3)については、50〜1000μmの範囲で形成する。50μmより細いと、製造上形成することが困難となるとともに、透過潜像模様(8)のコントラストを高くするという本来の目的を奏することができなくなってしまうからである。また、1000μmより太いと、基材(2)の他方の面側から第3の要素群(18)が反射光下において明確に確認することができてしまい、デザイン的に好ましくない。さらに、第3の要素(19)をすき入れ、プレス成型又はレーザ加工によって形成する場合、第3の要素(19)は、基材(2)に対して凹部となり、形成された潜像模様領域(3)自体が、他の領域よりも強度が弱くなってしまうという問題が生じることとなる。
第3の要素(19)の要素幅(W3)は、形成体(1)を透過光下にて確認した際における透過潜像模様(8)のコントラストを高くする役割を担っていることと、前述した基材(2)の強度を弱くさせないことを踏まえ、第1の要素(9)の要素幅(W1)及び第2の要素(14)の要素幅(W2)と同じとすることが好ましい。
また、第3の要素(19)のピッチ(P3)については、100〜1000μmの範囲で形成する。ただし、第3の要素(19)は、透過潜像模様(8)のコントラストを高くする役割を担っているため、当然、第1の要素(9)及び第2の要素(14)と同じ位置に配置する必要があることから、第1の要素(9)のピッチ(P1)及び第2の要素(14)のピッチ(P2)と同じとすることが好ましい。
第3の要素(19)の形状については、第1の要素(9)及び第2の要素(14)の形状と同様、図6〜図8で示した種々の形状で形成することが可能であるが、重要なのは、透過潜像模様(8)のコントラストを高くするために、透過率を基材(2)よりも高くすることであり、基材(2)よりも透過率を高くし、かつ、透過光下において透過潜像模様(8)のコントラストを高くすることができる形状であれば、特に限定されない。
この第3の要素群(18)と第1の要素群(4)及び第2の要素群(15)との位置関係について説明する。
基材(2)の一方の面に形成された第1の要素群(4)における各第1の要素(9)と、さらに、その上に積層された光反射層(5)における各第2の要素(14)は、同じ位置に配置されているが、他方の面に形成されている第3の要素(19)も、その第1の要素(9)及び第2の要素(14)と同じ位置に形成される。その状態を図示したのが図20である。
図20(a)は、透過光下において透過潜像模様(8)を確認したときの状態を示したものである。図20(a)における透過潜像模様(8)の状態は、第1の実施形態における状態と一見変わりがないように見えるが、これは、図面上でのことであり、実際には、第1の実施形態よりもコントラストが高い透過潜像模様(8)を確認することができている。
図20(a)におけるX−X’断面図が図20(b)であり、基材(2)の一方の面に形成されている各第1の要素(9)及び各第2の要素(14)と、基材(2)の他方の面に形成されている各第3の要素(19)は、同じ位置に配置されている。なお、第1の要素(9)と第2の要素(14)については、第1の実施形態の変形例2で説明したように、異なる角度(α)を有して配置することが可能であるが、第3の要素(19)は、透過潜像模様(8)のコントラストを高くする役割を担っているため、第2の要素(14)と同じ位置に配置されることとなる。
このような位置関係とすることで、第3の要素(19)が基材(2)よりも透過率が高く形成されていることから、基材(2)の一方の面側から透過光下にて視認すると、第1の実施形態及び第2の実施形態よりも透過潜像模様(8)のコントラストを高く確認することができるものとなる。
また、第3の実施形態についても、第2の実施形態で示したような第1の要素群(4)とすることも可能である。第2の実施形態で示した第1の要素群(4)の態様は、第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)から成る第1の要素セット(16)により構成されているものであったが、その構成を第3の実施形態に用いた状態が図21である。
図21(a)において、第1の要素群(4)は、第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)から成る第1の要素セット(16)から構成されているが、第1の要素セット(16)のうち、一方の第1bの要素(9b)は、その上に積層されている光反射層(5)によって隠ぺいされているため、実際には、視認されないため、図面上では、点線により表現している。さらに、図20と同様に、基材(2)の一方の面からは、基材(2)の他方の面に形成されている第3の要素群(17)は確認することができない。
図21(a)におけるX−X’断面図が図21(b)である。第1の要素群(4)は二つの第1の要素(9a及び9b)から成る第1の要素セット(16)により構成されているが、透過潜像模様(8)自体を形成しているのは、一方の第1aの要素(9a)であることから、第3の要素(19)は、その第1aの要素(9a)と同じ位置となるように配置されている。ということは、仮に第1の要素群(4)が第1の要素セット(16)により構成されていたとしても、第3の要素(19)は、第2の要素(14)と同じ位置に配置されるように形成すれば良いこととなる。
第3の実施形態について、第1の要素(9)、第2の要素(14)及び第3の要素(19)の配列方向については、第2の実施形態で説明したように、第1の要素(9)における第1の方向(T1)と第2の要素(14)における第2の方向(T1)は、異なる角度(α)を有しても良いことはいうまでもないが、第3の要素(19)については、前述したとおり、透過潜像模様(8)のコントラストを高くする役割であるため、第2の要素(14)と平行となるように万線状に配列することとなる。
以下、本発明における形成体(1)について、実施例を用いて詳細に説明するが、以下の実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的な範疇であれば、適宜、変更が可能なことはいうまでもない。
実施例1では、基材(2)を紙とし、第1の要素群(4)をオフセット印刷方式により印刷し、光反射層(5)を図2(b)で示した無地の金属箔を用いて作製された形成体(1)である。実施例1の形成体(1)について、第1の実施形態で説明した図面を用いて説明する。
実施例1の形成体(1)(具体的には商品券)は、図1に示すように、基材(2)の一部の潜像模様領域(3)に、図4(a)に示した潜像模様を、オフセット印刷方式により二色のインキを用いて印刷した第1の要素群(4)と、その上に、図2(b)に示した無地の光反射層(5)が貼付されており、その他の領域には、商品名、1000円の料額文字及び彩紋模様がオフセット印刷方式により形成されている。
図1に示す基材(2)は、坪量が85g/m2、紙厚が87μm、不透明度が91%(JIS−P8149)の褐色の紙材を用いた。また、光反射層(5)には、アルミ箔を用いた。
基材(2)の一方の面の潜像模様領域(3)には、図4(a)で示すような、第1の要素(9)を複数配列した第1の要素群(4)を形成した。この第1の要素(9)は、要素幅(W1)を200μmの直線で構成し、ピッチ(P1)を500μmとして規則的に複数配列した。
また、第1の要素(9)は、模様部(12)を第1の色(10)として、紫色のオフセットインキ(T&K TOKA製 BO特練PANTONE紫)を用い、背景部(13)を第2の色(11)として、緑色のオフセットインキ(T&K TOKA製 BO特練PANTONE緑)を用い、オフセット印刷機(下垣鉄工所製 EP−60)により印刷した。
この第1の要素群(4)の上に、図2(b)に示すような、反射光下では、無地のアルミ箔である光反射層(5)を、アクリル系の接着剤(スプレーのり 55 スリーエム製)を塗布して貼り付けた。光反射層(5)には、図9(a)に示すような第2の要素(14)を複数配列した第2の要素群(15)を形成してある。第2の要素(14)は、要素幅(W2)を200μmの直線で構成し、ピッチ(P2)を500μmとして規則的に複数配列した。
光反射層(5)への第2の要素(14)の形成方法は、アルミ箔に対してレーザ加工器(レーザマーカ MD−V キーエンス製)を用い、直線状に除去することで形成した。
第1の要素(9)の要素幅(W1)と第2の要素(14)の要素幅(W2)は等しく、それぞれのピッチ(P1)及び(P2)も等しいことから、第1の要素群(4)と第2の要素群(15)は、図10に示すように、同じ位置に配置されている。
このようにして作製した実施例1の形成体(1)である商品券を、図2(a)に示すような観察状態(反射光下)で観察すると、図2(b)に示す無地のアルミ光沢が確認され、その状態から基材(2)を傾けて見てみると、ある角度において若干ではあるが、アルファベットの「A」の文字を視認することができた。そして、実施例1の形成体(1)を、図3(a)又は(b)に示すような観察状態(透過光下)で観察すると、図3(c)に示すアルファベットの「A」を明確に確認することができた。
実施例2は、実施例1に対して異なる点のみを説明する。実施例2は、光反射層(5)に、図2(c)で示すOVD画像(6)を有するOVD箔を用い、第1の要素群(4)及び第2の要素群(15)を、図11で示すような同一形状の八角形とした形成体(1)である。実施例2の形成体(1)について、第1の実施形態の変形例1で説明した図面を用いて説明する。
光反射層(5)に用いたOVD箔は、アルミ層を基材としており、その上にOVD画像(6)を形成するための回折格子が構成されている。このアルミ層に対して、レーザ加工器(レーザマーカ MD−V キーエンス製)を用い、第2の要素(14)を規則的に直線状に除去することで第2の要素群(15)を形成した。
このようにして作製した実施例2の形成体(1)である商品券を、図2(a)に示すような観察状態(反射光下)で観察すると、OVDが有する光学的変化の中に、図2(c)に示す複数の星から成るOVD画像(6)を確認することができ、その状態からOVD画像(6)が見づらくなる角度になった時、わずかではあるが、図11(c)に示すアルファベットの「A」の文字を見ることができた。そして、図3(a)又は(b)に示すような観察状態(透過光下)で観察すると、OVD箔(5)を介して、図11(c)に示すアルファベットの「A」を含む透過潜像模様(8)が確認された。
このように、実施例2の構成とすることによって、形成体(1)の構成が複雑になり、さらに、光反射層(5)にOVD箔を用いていることから、意匠性を向上させることができるとともに、第1の要素群(4)及び第2の要素群(15)を隠ぺいする効果も奏する。
実施例3は、実施例1に対して異なる点のみを説明する。実施例3は、第1の要素群(4)が、第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)で構成した第1の要素セット(16)を複数配列して構成している形成体(1)である。実施例3の形成体(1)について、第2の実施形態で説明した図面を用いて説明する。
第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)は、要素幅(W1)が等しく、200μmの直線で構成した。第1aの要素(9a)のピッチ(P1)、所謂、第1の要素セット(16)のピッチ(P1)を500μmとし、第2の要素(14)のピッチ(P2)と等しくしたため、第1aの要素(9a)と第1bの要素(9b)とのピッチ(P1’)は、250μmとなっている。
第1aの要素(9a)は、模様部(12)を第1の色(10)として、紫色のオフセットインキ(T&K TOKA製 BO特練PANTONE紫)を用い、背景部(13)を第2の色(11)として、緑色のオフセットインキ(T&K TOKA製 BO特練PANTONE緑)を用い、オフセット印刷機(下垣鉄工所製 EP−60)により印刷した。
また、第1bの要素(9b)は、第1aの要素(9a)と対応した配置とするため、同じ第1の色(10)及び第2の色(11)のインキを用いて、模様部(12)を第2の色(11)で、背景部(13)を第1の色(10)で構成した。
以上の構成による第1の要素群(4)の上に、第2の要素群(15)を有するアルミ箔(5)を貼り付けた。なお、第1の要素群(4)と第2の要素群(15)は、かなり微細な構成となっているが、その配置については厳密な精度を要するものではなく、第1の要素セット(16)のうち、第1aの要素(9a)又は第1bの要素(9b)のどちらか一方が第2の要素(14)と同じ位置に配置されれば良い。本実施例3では、第1aの要素(9a)が第2の要素(14)と同じ位置に配置された状態としている。したがって、第2の要素(14)のピッチ(P2)と第1の要素セット(16)のピッチ(P1)が等しいことから、第1bの要素(9b)は非要素部(17)と同じ位置となった。
このようにして作製した実施例3の形成体(1)である商品券を、図2(a)に示すような観察状態(反射光下)で観察すると、図2(b)に示す無地のアルミ光沢が確認され、その状態から基材(2)を傾けてみて見ると、無地の光反射層を通して、図16(a)に示すアルファベットの「A」の文字をわずかに確認することができた。そして、図3(a)又は(b)に示すような観察状態(透過光下)で観察すると、アルミ箔を介して、図16(a)に示すアルファベットの「A」を含む透過潜像模様(8)が確認された。
このように、実施例3の構成とすることによって、第1の要素群(4)が第1の要素セット(16)により構成されているため、第1aの要素(9a)又は第1bの要素(9b)のどちらか一方の要素(9)が第2の要素(14)と同じ位置に配置されれば良いことから、製造工程において厳密な位置精度を必要とせず、形成体(1)を作製することが可能となる。
実施例4は、実施例3に対して異なる点のみを説明する。実施例4は、実施例3と同様に、第1の要素群(4)が第1の要素セット(16)を複数配列して構成しており、第1の要素群(4)と第2の要素群(15)の配列方向を異ならせて形成した形成体(1)である。実施例4の形成体(1)について、第2の実施形態で説明した図面を用いて説明する。
実施例4の形成体(1)は、図18(a)に示すような第1の要素群(4)と第2の要素群(15)の配列関係を有している。具体的には、光反射層(5)に形成されている第2の要素群(15)は、基材(2)の長手方向と垂直となる第2の方向(T2)に配列されているが、印刷インキで形成されている第1の要素群(4)は、第2の方向(T2)に対して1.5°の角度を有する方向の第1の方向(T1)に配列されている。この1.5°の角度差については、図18(b)に示した一部拡大図のとおりの方向に傾けて配列しているものである。
このようにして作製した実施例4の形成体(1)である商品券を、図2(a)に示すような観察状態(反射光下)で観察すると、図2(b)に示す無地のアルミ光沢が確認され、その状態から基材(2)を傾けてみて見ると、無地の光反射層を通して、図18(c)に示すアルファベットの「A」の文字をわずかに確認することができた。そして、図3(a)又は(b)に示すような観察状態(透過光下)で観察すると、アルミ箔を介して、図18(c)に示すアルファベットの「A」を含む透過潜像模様(8)が、第1の色の紫色と第2の色の緑色のグラデーションとして確認された。
実施例5は、実施例3に対して異なる点のみを説明する。実施例5は、第1の要素群(4)及び光反射層(5)が形成されている基材(2)の一方の面に対して、他方の面側の潜像模様領域(3)に、すき入れにより第3の要素群(18)を形成した形成体(1)である。
まず、基材(2)の他方の面側から円網抄紙機により透かし模様として、図22(a)に示す第3の要素群(18)を形成した。この方法により形成された第3の要素(19)の不透明度は、52%(JIS−P8149)であった。また、第3の要素(19)の部位の紙厚は、40μm(デジタルリニアゲージ DG−925 小野測器製)であった。
また、第3の要素群(18)を構成している各第3の要素(19)は、OVD箔(5)に形成した第2の要素(14)と同様、要素幅(W3)を200μmの直線で構成し、ピッチ(P3)を500μmとして規則的に複数配列した。
次に、第3の要素群(18)を形成した面とは反対側の一方の面に、図22(b)に示すように、第1の要素群(4)をアルファベットの「X」を形成するように、第1の色(10)及び第2の色(11)を配置して形成した。なお、第3の要素(19)と同じ位置には、第1の要素セット(16)のうち、第1aの要素(9a)が印刷された。
次に、第1の要素群(4)の上に貼り付ける光反射層(5)については、OVD箔を用いた。このOVD箔を構成しているアルミ層に形成した第2の要素群(15)は、図22(c)に示すように、第1の要素セット(16)のピッチ(P1)と同じピッチとして形成し、第1aの要素(9a)及び第3の要素(19)と同じ位置に第2の要素(14)が配置されるように第1の要素群(4)の上に貼り付けた。なお、本実施例5のOVD箔は、反射光下における所定の角度において、図22(d)に示す太陽の模様であるOVD画像(6)を視認することができるものである。
以上の第1の要素群(4)、第2の要素群(15)を有するOVD箔(5)及び第3の要素群(18)の配置状態を示したのが図23(a)及び(b)であり、図23(a)は、基材(2)の一方の面から見たときの正面図であり、図23(b)は、図23(a)のX−X’における断面図である。第1の要素セット(16)については、第1aの要素(9a)が第2の要素(14)及び第3の要素(19)と同じ位置となるように配置してある。したがって、図23(a)では点線にて示唆してあるが、第1bの要素(9b)は、OVD箔(5)の非要素部(17)に隠ぺいされて実際には確認することができない。
このようにして作製した実施例5の形成体(1)である商品券を、図2(a)に示すような観察状態(反射光下)で観察すると、図22(d)に示した太陽の模様であるOVD画像(6)が確認され、このOVD画像(6)が確認し難い角度において観察すると、OVDを通して、わずかではあるが、図23(c)に示すアルファベットの「X」の文字を確認することができた。そして、図3(a)又は(b)に示すような観察状態(透過光下)で観察すると、OVD箔(5)を介して、図23(c)に示すアルファベットの「X」を含む透過潜像模様(8)が確認された。
このように、実施例5の構成とすることによって、第1の要素群(4)が第1の要素セット(16)により構成されているため、製造工程において厳密な位置精度を必要とせず形成体(1)を作製することが可能となり、また、光反射層(5)にOVD箔を用いているため、反射光下においては、OVD画像(6)を確認することができることから、意匠性が向上することに加え、透過潜像模様(8)をカモフラージュする効果も高くなる。さらに、基材(2)にすき入れにより第3の要素群(18)を形成したため、透過光下において確認することができた透過潜像模様(8)は、よりコントラストの高い鮮明な模様として確認することができた。