以下、本実施の形態に係る透明導電膜の製造方法についてそれを実施する製造装置との関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る導電性フイルム14を製造するための製造装置10の概略構成ブロック図である。
製造装置10は、メッシュパターンMに応じた模様を表す画像データImg(出力用画像データImgOutを含む。)を作成する画像処理装置12と、該画像処理装置12により作成された前記出力用画像データImgOutに基づいて製造工程下の導電性フイルム14(透明導電膜)に光16を照射して露光する露光部18と、前記画像データImgを作成するための各種条件(メッシュパターンMの視認情報を含む。)を画像処理装置12に入力する入力部20と、該入力部20による入力作業を補助するGUI画像や、記憶された出力用画像データImgOut等を表示する表示部22とを基本的に備える。
画像処理装置12は、画像データImg、出力用画像データImgOut、候補点SPの位置データSPd、及びシード点SDの位置データSDdを記憶する記憶部24と、擬似乱数を発生して乱数値を生成する乱数発生部26と、該乱数発生部26により生成された前記乱数値を用いて、所定の二次元画像領域の中からシード点SDの初期位置を選択する初期位置選択部28と、前記乱数値を用いて前記二次元画像領域の中から候補点SPの位置(シード点SDの位置を除く。)を決定する更新候補位置決定部30と、出力用画像データImgOutを露光部18の制御信号(露光データ)に変換する露光データ変換部32と、表示部22に各種画像を表示する制御を行う表示制御部34とを備える。
なお、シード点SDは、更新対象でない第1シード点SDNと、更新対象である第2シード点SDSとからなる。換言すれば、シード点SDの位置データSDdは、第1シード点SDNの位置データSDNdと、第2シード点SDSの位置データSDSdとから構成されている。
画像処理装置12は、入力部20から入力された視認情報(詳細は後述する。)に基づいてメッシュパターンMに応じた画像情報を推定する画像情報推定部36と、該画像情報推定部36から供給された前記画像情報及び記憶部24から供給されたシード点SDの位置に基づいてメッシュパターンMに応じた模様を表す画像データImgを作成する画像データ作成部38と、該画像データ作成部38により作成された画像データImgに基づいてメッシュ状の模様を評価するための評価値EVPを算出するメッシュ模様評価部40と、該メッシュ模様評価部40により算出された評価値EVPに基づいてシード点SDや評価値EVP等のデータの更新/非更新を指示するデータ更新指示部42とをさらに備える。
図1の導電性フイルム14は、図2Aに示すように、複数の導電部50と複数の開口部52とを有している。複数の導電部50は、複数の金属細線54が互いに交叉したメッシュパターンM(メッシュ状の配線)を形成している。すなわち、1つの開口部52と、該1つの開口部52を囲む少なくとも2つの導電部50の組み合わせ形状がメッシュ形状となっている。このメッシュ形状は開口部52毎に異なっており、それぞれ不規則(すなわち非周期的)に配列されている。以下、導電部50を構成する材料を「線材」という場合がある。
金属細線54の線幅は、5μm以上200μm(0.2mm)以下から選択可能である。もちろん、透光性を向上させたい場合は、5μm以上50μm以下から選択してもよい。また、開口部52の面積は、0.02mm2以上40mm2以下が好ましく、さらに好ましくは、0.1mm2以上1mm2以下である。
このように構成しているので、導電性フイルム14の全体の光透過率は70%以上99%未満であり、80%以上99%未満、さらには、85%以上99%未満を実現することができる。
この導電性フイルム14は、車両のデフロスタ(霜取り装置)や、窓ガラス等の一部として使用可能な導電性フイルムである。この導電性フイルム14は、電流を流すことで発熱する透明発熱体としても機能し、図3に示すように、透明フイルム基材56(透明基材)と、該透明フイルム基材56上に形成された前記導電部50及び開口部52を備える。
図2Bに示すように、この導電性フイルム14を透明発熱体58として使用する場合は、導電性フイルム14の対向する端部(例えば、図2Bの左右両端)に第1電極60a及び第2電極60bを形成し、第1電極60aから第2電極60bに電流を流す。これにより、透明発熱体58が発熱し、透明発熱体58に接する又は透明発熱体58を組み込んだ加熱対象物(例えば、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス、車両用灯具の前面カバー等)が加熱される。その結果、加熱対象物に付着していた雪等が取り除かれることになる。
図4は、図1に示すメッシュ模様評価部40及びデータ更新指示部42の詳細機能ブロック図である。
メッシュ模様評価部40は、画像データ作成部38から供給された画像データImgに高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation;以下、FFTという。)を施して二次元スペクトルデータ(以下、単に「スペクトルSpc」という。)を取得するFFT演算部100と、該FFT演算部100から供給されたスペクトルSpcに基づいて第1評価値EV1を算出する第1評価値算出部102と、該FFT演算部100から供給されたスペクトルSpcに基づいて第2評価値EV2を算出する第2評価値算出部104と、第1評価値算出部102から供給された第1評価値EV1と、第2評価値算出部104から供給された第2評価値EV2とを重み付け加算して評価値EVPを取得する重み付け加算部106とを備える。
データ更新指示部42は、メッシュ模様評価部40による評価回数を計上するカウンタ108と、後述する擬似焼きなまし法で用いる擬似温度Tの値を管理する擬似温度管理部110と、メッシュ模様評価部40から供給された評価値EVP及び擬似温度管理部110から供給された擬似温度Tに基づいてシード点SDの更新確率を算出する更新確率算出部112と、該更新確率算出部112から供給された前記更新確率に基づいてシード点SDの位置データSDd等の更新/非更新を判定する位置更新判定部114と、擬似温度管理部110からの通知に応じて1つの画像データImgを出力用画像データImgOutとして決定する出力用画像データ決定部116とを備える。
図5は、画像データ作成条件の設定画面の一例を示す図である。
設定画面120は、上方から順番に、左側のプルダウンメニュー122と、左側の表示欄124と、右側のプルダウンメニュー126と、右側の表示欄128と、7個のテキストボックス130、132、134、136、138、140、142と、[設定]、[中止]と表示されたボタン144、146とを備える。
プルダウンメニュー122、126の左方部には、「種類」なる文字列が表示されている。入力部20(例えば、マウス)の所定の操作により、プルダウンメニュー122、126の下方部に図示しない選択欄が併せて表示され、その中の項目を選択自在である。
表示欄124は、5つの欄148a、148b、148c、148d、148eから構成されており、これらの左方部には、「光透過率」、「光反射率」、「色値L*」、「色値a*」及び「色値b*」なる文字列がそれぞれ表示されている。
表示欄128は、表示欄124と同様に、5つの欄150a、150b、150c、150d、150eから構成されており、これらの左方部には、「光透過率」、「光反射率」、「色値L*」、「色値a*」及び「色値b*」なる文字列がそれぞれ表示されている。
テキストボックス130の左方部には「全体透過率」と表示され、その右方部には「%」と表示されている。テキストボックス132の左方部には「膜厚」と表示され、その右方部には「μm」と表示されている。テキストボックス134の左方部には「配線の幅」と表示され、その右方部には「μm」と表示されている。テキストボックス136の左方部には「配線の厚さ」と表示され、その右方部には「μm」と表示されている。テキストボックス138の左方部には「パターンサイズH」と表示され、その右方部には「mm」と表示されている。テキストボックス140の左方部には「パターンサイズV」と表示され、その右方部には「mm」と表示されている。テキストボックス142の左方部には「画像解像度」と表示され、その右方部には「dpi」と表示されている。
なお、7個のテキストボックス130、132、134、136、138、140、142のいずれにも、入力部20(例えば、キーボード)の所定の操作により算用数字の入力が自在である。
基本的には、以上のように構成される製造装置10の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。
先ず、メッシュパターンMに応じた模様を表す画像データImg(出力用画像データImgOutを含む。)を作成する際に必要な各種条件を入力する(ステップS1)。
作業者は、表示部22に表示された設定画面120(図5参照)を介して、適切な数値等を入力する。これにより、メッシュパターンMの視認性に関わる視認情報を入力することができる。ここで、視認情報とは、メッシュパターンMの形状や光学濃度に寄与する各種情報であり、線材(金属細線54)の視認情報や、透明基材(透明フイルム基材56)の視認情報が含まれる。線材の視認情報として、例えば、該線材の種類、色値、光透過率、若しくは光反射率、又は金属細線54の断面形状若しくは太さの少なくとも1つが含まれる。透明基材の視認情報として、例えば、該透明基材の種類、色値、光透過率、光反射率又は膜厚の少なくとも1つが含まれる。
作業者は、製造しようとする導電性フイルム14に関して、プルダウンメニュー122を用いて線材の種類を1つ選択する。図5の例では、「銀(Ag)」が選択されている。線材の種類を1つ選択すると、表示欄124が即時に更新され、該線材の物性に応じた既知の数値が新たに表示される。欄148a、148b、148c、148d、148eには、100μmの厚さを有する銀の光透過率(単位:%)、光反射率(単位:%)、色値L*、色値a*、色値b*(CIELAB)がそれぞれ表示される。
また、作業者は、製造しようとする導電性フイルム14に関して、プルダウンメニュー126を用いて膜材(透明基材)の種類を1つ選択する。図5の例では、「PETフイルム」が選択されている。膜材の種類を1つ選択すると、表示欄128が即時に更新され、該膜材の物性に応じた既知の数値が新たに表示される。欄150a、150b、150c、150d、150eには、1mmの厚さを有するPETフイルムの光透過率(単位:%)、光反射率(単位:%)、色値L*、色値a*、色値b*(CIELAB)がそれぞれ表示される。
なお、プルダウンメニュー122、126の図示しない「マニュアル入力」の項目を選択することで、表示欄124、128から各物性値を直接入力できるようにしてもよい。
さらに、作業者は、製造しようとする導電性フイルム14に関して、テキストボックス130等を用いてメッシュパターンMの各種条件をそれぞれ入力する。
テキストボックス130、132、134、136の入力値は、全体の光透過率(単位:%)、透明フイルム基材56の膜厚(単位:μm)、金属細線54の線幅(単位:μm)、金属細線54の厚さ(単位:μm)にそれぞれ対応する。
テキストボックス138、140、142の入力値は、メッシュパターンMの横サイズ、メッシュパターンMの縦サイズ、出力用画像データImgOutの画像解像度(画素サイズ)に相当する。
作業者による[設定]ボタン144のクリック動作に応じて、画像情報推定部36は、メッシュパターンMに応じた画像情報を推定する。この画像情報は、画像データImg(出力用画像データImgOutを含む。)を作成する際に参照される。
例えば、メッシュパターンMの縦サイズ(テキストボックス138の入力値)と出力用画像データImgOutの画像解像度(テキストボックス142の入力値)とに基づいて、出力用画像データの横方向の画素数を算出できるし、配線の幅(テキストボックス134の入力値)と前記画像解像度とに基づいて金属細線54の線幅に相当する画素数を算出できる。
また、線材の光透過率(欄148aの表示値)と配線の厚さ(テキストボックス136の入力値)とに基づいて金属細線54単体の光透過率を推定できる。これに加えて、膜材の光透過率(欄150aの表示値)と膜厚(テキストボックス132の入力値)とに基づいて、透明フイルム基材56上に金属細線54を積層した状態での光透過率を推定できる。
さらに、線材の光透過率(欄148aの表示)と、膜材の光透過率(欄150aの表示)と、全体透過率(テキストボックス130の入力値)と、配線の幅(テキストボックス132の入力値)とに基づいて、開口部52の個数を推定するとともに、シード点SDの個数を推定できる。なお、開口部52の領域を決定するアルゴリズムに応じて、シード点SDの個数を推定するようにしてもよい。
次いで、メッシュパターンMを形成するための出力用画像データImgOutを作成する(ステップS2)。
出力用画像データImgOutの作成方法の説明に先立って、画像データImgの評価方法について始めに説明する。本実施の形態では、複数の開口部52を介して発生する光干渉の指向性について、交叉する2軸方向に対して定量化した第1評価値EV1と、メッシュパターンMのノイズ特性(例えば、粒状ノイズ)を定量化した第2評価値EV2とに基づいて評価を行う。
図7Aは、メッシュパターンMの模様を表す画像データImgを可視化した概略説明図である。以下、この画像データImgを例に挙げて説明する。
第1評価値EV1の算出方法について説明する。先ずは、図7Aに示す画像データImgに対してFFTを施す。これにより、開口部52を透過した光の回折像を得ることができる。ここで、開口部52の形状が極めて微小で、無数の開口部52が連続的に配置されたものと考えてもよい。したがって、前記回折像の特性は、複数の開口部52を介して発生する干渉縞の発生領域と高い相関関係を有するといえる。
図7Bは、図7Aの画像データImgに対してFFTを施して得られるスペクトルSpcの分布図である。ここで、当該分布図の横軸はX軸方向に対する空間周波数を示し、その縦軸はY軸方向に対する空間周波数を示す。また、空間周波数帯域毎の表示濃度が薄いほど強度レベル(スペクトルSpcの値)が小さくなり、表示濃度が濃いほど強度レベルが大きくなっている。本図の例では、このスペクトルSpcの分布は、等方的であるとともに環状のピークを2個有している。
図7Cは、図7Bに示すスペクトルSpcの分布のX軸断面図である。スペクトルSpcは等方的であるので、図7Cはあらゆる角度方向に対する動径方向分布に相当する。本図から諒解されるように、低空間周波数帯域及び高空間周波数帯域での強度レベルが小さくなり、中間の空間周波数帯域のみ強度レベルが高くなるいわゆるバンドパス型の特性を有する。すなわち、図7Aに示す画像データImgは、画像工学分野の技術用語によれば、「グリーンノイズ」の特性を有する模様を表すものといえる。
第1評価値EV1を算出すべく、次いで、スペクトルSpcの任意の角度θ方向におけるm次モーメントMom(θ,m)を算出する。ここで、θは0≦θ<2πの範囲内の値であり、mは1以上の整数である。具体的には、次の(1)式で算出される。
ここで、スペクトルSpcの所定の軸方向でのモーメントを算出する際の積分範囲について、図8を参照しながら説明する。(1)式に示すように、−umax≦u≦umaxを積分範囲としている。ここで、umaxは、積分計算の上限値・下限値を決定するパラメータである。例えば、全空間周波数帯域で計算する場合は、umax=∞に相当する。画像データImgは離散データであるから、umaxの値を0<umax≦unyq/2の範囲内にある任意の値に設定することができる。なお、unyqは、画像データImgのナイキスト周波数である。
例えば、本実施の形態では、互いに直交するX軸及びY軸方向における1次モーメントの比を評価値とする。すなわち、第1評価値EV1は、次の(2)式で表される。
EV1=|Mom(π/2,1)/Mom(0,1)−γ| ‥‥(2)
この第1評価値EV1のうちの第1項は、干渉縞の発生領域のX軸−Y軸アスペクト比に相当する。ここで、γは、アスペクト比の目標値に相当する。一例として、γ=0とすると、スペクトルSpcがX軸近傍に局在するほど、第1評価値EV1の値が小さくなる。一方、スペクトルSpcが二次元方向に均一に分散する場合は、第1評価値EV1の値が大きくなる。
例えば、車両用のフロントガラスに発生する干渉縞について、二次元領域に広く発生するよりも、X軸近傍に局在するように発生する方が好ましい。なぜならば、運転者は、遠方(Y軸上方)又は近方(Y軸下方)の視界を確保することができるからである。この場合は、第1評価値EV1が小さくなるようなメッシュパターンMを選択すればよい。
なお、メッシュパターンMに対する評価内容(目標特性)に応じて、モーメントの次数mや、軸方向、積分範囲等を任意に定めることができる。例えば、2軸方向が直交しないように設定してもよい。この場合は、特定の角度方向でのスペクトルSpcの異方度を求めることができる。
続いて、第2評価値EV2の算出方法について説明する。この第2評価値EV2は、メッシュパターンMのノイズ特性を評価するための評価値である。
ノイズ特性を評価する例として、画像データImgの所定の領域範囲を定め、該領域範囲内の画素値に対してRMS(Root Mean Square)を求めてもよい。本実施の形態では、人間の視覚応答特性を評価に採り入れ、さらに改良した評価値EV2を用いている。
先ず、第1評価値EV1を算出する場合と同様に、画像データImgに対してFFTを施す。これにより、メッシュパターンMの形状について、部分的形状ではなく、全体の傾向(空間周波数分布)として把握できる。
なお、第1評価値EV1での注目箇所は開口部52であるのに対し、第2評価値EV2での注目箇所は導電部50である。つまり、第1評価値EV1と第2評価値EV2とは、同一画像データImg内での注目箇所が異なるにすぎない。結局、評価値の算出に用いるスペクトルSpcは同じである。
図9は、Dooley−Shaw関数(観察距離300mm)を表すグラフである。
Dooley−Shaw関数は、VTF(Visual Transfer Function)の一種であり、人間の視覚応答特性を模した代表的な関数である。具体的には、輝度のコントラスト比特性の2乗値に相当する。なお、グラフの横軸は空間周波数(単位:cycle/mm)であり、縦軸はVTFの値(単位は無次元)である。
観察距離を300mmとすると、0〜1.0cycle/mmの範囲ではVTFの値は一定(1に等しい。)であり、空間周波数が高くなるにつれて次第にVTFの値が減少する傾向がある。すなわち、この関数は、中〜高空間周波数帯域を遮断するローパスフィルタとして機能する。
なお、実際の人間の視覚応答特性は、0cycle/mm近傍で1より小さい値になっており、いわゆるバンドパスフィルタの特性を有する。しかし、本実施の形態において、図9に例示するように、極めて低い空間周波数帯域であってもVTFの値を1にすることで、第2評価値EV2への寄与度を高くしている。これにより、メッシュパターンMの繰り返し配置に起因する周期性を抑制する効果が得られる。
第2評価値EV2は、スペクトルSpcの値をF(Ux,Uy)とするとき、次の(3)式で算出される。
ウィナー・ヒンチン(Wiener−Khintchen)の定理によれば、スペクトルSpcを全空間周波数帯域で積分した値は、RMSの2乗値に一致する。このスペクトルSpcに対してVTFを乗算し、この新たなスペクトルSpcを全空間周波数帯域で積分した値は、人間の視覚特性に略一致する評価指標となる。この第2評価値EV2は、人間の視覚応答特性で補正したRMSということができる。通常のRMSと同様に、第2評価値EV2は、常に0以上の値を取り、0に近づくほどノイズ特性が良好であるといえる。
また、図9に示すVTFに対して逆フーリエ変換(例えば、IFFT)を施すことで、VTFに対応する実空間上のマスクを算出し、評価しようとする画像データImgに対して該マスクを作用して畳み込み演算を行い、新たな画像データImgに対してRMSを求めてもよい。これにより、(3)式を用いた上記方法と同等の演算結果を得ることができる。
以上説明した第1評価値EV1と、第2評価値EV2とを組み合わせて、メッシュパターンMの模様についての評価値EVPを算出することができる。評価値EVPの一例として、次の(4)式で与えられる。
EVP=α×EV1+β×EV2 ‥‥(4)
例えば、第1評価値EV1、第2評価値EV2はともに必ず0以上の値を取り、0に近づくほど望ましいと仮定する。そうすると、α及びβはいずれも正の値とした上で、各評価の重要度に応じて各値を定めることができる。また、第1評価値EV1のみを用いる場合はβ=0とし、第2評価値EV2のみを用いる場合はα=0とすればよい。さらに、α、βは、理論的に定めた値であるか、経験的に見出した値であるかは問わない。
なお、メッシュパターンMを決定するための目標レベル(許容範囲)や評価関数に応じて、評価値EVPの算出式を種々変更し得ることはいうまでもない。
以下、上記した評価値EVPに基づいて出力用画像データImgOutを決定する具体的方法について説明する。例えば、模様が異なる画像データImgの作成と、評価値EVPによる評価とを順次繰り返す方法を用いることができる。かかる場合、出力用画像データImgOutを決定する最適化問題として、構成的アルゴリズムや逐次改善アルゴリズム等の種々の探索アルゴリズムを用いることができる。
本実施の形態では、擬似焼きなまし法(Simulated Annealing;以下、SA法という。)によるメッシュパターンMの最適化方法について、図10のフローチャート及び図1の機能ブロック図を主に参照しながら説明する。なお、SA法は、高温状態で鉄を叩くことで頑健な鉄を得る「焼きなまし法」を模した確率的探索アルゴリズムである。
先ず、初期位置選択部28は、シード点SDの初期位置を選択する(ステップS21)。
初期位置の選択に先立って、乱数発生部26は、擬似乱数の発生アルゴリズムを用いて乱数値を発生する。ここで、擬似乱数の発生アルゴリズムとしてメルセンヌ・ツイスタ(Mersenne Twister)、SFMT(SIMD−oriented Fast Mersenne Twister)やXorshift法等の種々のアルゴリズムを用いてもよい。そして、初期位置選択部28は、乱数発生部26から供給された乱数値を用いて、シード点SDの初期位置をランダムに決定する。ここで、初期位置選択部28は、シード点SDの初期位置を画像データImg上の画素のアドレスとして選択し、シード点SDが互いに重複しない位置にそれぞれ設定する。
なお、初期位置選択部28は、画像情報推定部36から供給される画像データImgの縦方向・横方向の画素数に基づいて、二次元画像領域の範囲を予め決定しておく。また、初期位置選択部28は、シード点SDの個数を画像情報推定部36から予め取得し、その個数を決定しておく。
図11は、シード点SDの配置密度と、メッシュパターンMの全体透過率との関係の一例を表すグラフである。本図は、配置密度が高くなるにしたがって、配線の被覆面積が増加し、その結果、メッシュパターンMの全体透過率が低下することを示している。
このグラフ特性は、膜材の光透過率(図5の欄150aの表示)、配線の幅(図5のテキストボックス132の入力値)及び領域決定アルゴリズム(例えば、ボロノイ図)に応じて変化する。よって、配線の幅等の各パラメータに応じた特性データを、関数やテーブル等の種々のデータ形式で、記憶部24に予め記憶してもよい。
また、シード点SDの配置密度とメッシュパターンMの電気抵抗値との対応を予め取得しておき、該電気抵抗値の指定値に基づいてシード点SDの個数を決定するようにしてもよい。電気抵抗値は、導電部50の通電性を表す1つのパラメータであり、メッシュパターンMの設計に不可欠だからである。
なお、初期位置選択部28は、乱数値を用いることなくシード点SDの初期位置を選択してもよい。例えば、図示しないスキャナや記憶装置を含む外部装置から取得したデータを参照しながら、初期位置を決定することができる。このデータは、例えば、所定の2値画像データであってもよく、具体的には印刷用の網点データであってもよい。
次いで、画像データ作成部38は、初期データとしての画像データImgInitを作成する(ステップS22)。画像データ作成部38は、記憶部24から供給されたシード点SDの個数や位置データSDd、並びに画像情報推定部36から供給された画像情報に基づいて、メッシュパターンMに応じた模様を表す画像データImgInit(初期データ)を作成する。
複数のシード点SDからメッシュ状の模様を決定するアルゴリズムは、種々の方法を採り得る。以下、図12A〜図13Bを参照しながら詳細に説明する。
図12Aに示すように、例えば、正方形状の二次元画像領域200内に8つの点P1〜P8を無作為に選択したとする。
図12Bは、ボロノイ図を用いて8つの点P1〜P8をそれぞれ囲繞する8つの領域V1〜V8を画定した結果を示す説明図である。なお、距離関数としてユークリッド距離を用いた。本図から諒解されるように、領域Vi(i=1〜8)内の任意の点において、点Piが最も近接する点であることを示している。
また、ドロネー三角形分割法を用いて、図13A(図12Aと同図)の点P1〜P8をそれぞれ頂点とする8つの三角形状の領域を画定した結果を図13Bに示す。
ドロネー三角形分割法とは、点P1〜P8のうち、隣接する点同士を繋いで領域を画定する方法である。この方法によっても、点P1〜P8の個数と同数の領域V1〜V8を決定することができる。
ところで、画像データImg(初期画像データImgInitを含む。)を作成する前に、画素のアドレス及び画素値の定義を予め決定しておく。
図14Aは、画像データImgにおける画素アドレスの定義を表す説明図である。例えば、画素サイズが10μmであり、画像データの縦横の画素数はそれぞれ8192個とする。後述するFFTの演算処理の便宜のため、2の冪乗(例えば、2の13乗)となるように設けている。このとき、画像データImgの画像領域全体は、約82mm四方の矩形領域に対応する。
図14Bは、画像データImgにおける画素値の定義を表す説明図である。例えば、1画素当たりの階調数を8ビット(256階調)とする。光学濃度0を画素値0(最小値)と対応させ、光学濃度4.5を画素値255(最大値)と対応させておく。その中間の画素値1〜254では、光学濃度に対して線形関係となるように値を定めておく。ここで、光学濃度とは、透過濃度のみならず、反射濃度であってもよいことはいうまでもなく、導電性フイルム14の使用態様等に応じて適宜選択できる。また、光学濃度の他に、三刺激値XYZや色値RGB、L*a*b*等であっても、上記と同様にして各画素値を定義することができる。
このようにして、画像データ作成部38は、画像データImgのデータ定義と、画像情報推定部36で推定された画像情報(ステップS1の説明を参照)に基づいて、メッシュパターンMに応じた画像データImgInitを作成する(ステップS22)。画像データ作成部38は、シード点SDの初期位置(図15A参照)を基準とするボロノイ図を用いて、図15Bに示すメッシュパターンMの初期状態を決定する。なお、画像の端部については、上下方向、左右方向に繰り返し配列されるように適切な処理を行う。例えば、画像の左端(又は右端)近傍のシード点SDについては、画像の右端(又は左端)近傍のシード点SDとの間で領域Viを得るようにする。同様に、画像の上端(又は下端)近傍のシード点SDについては、画像の下端(上端)近傍のシード点SDとの間で領域Viを得るようにする。
以下、画像データImg(画像データImgInitを含む。)は、光学濃度OD、色値L*、色値a*、色値b*の4チャンネルの各データを備える画像データであるとする。
次いで、メッシュ模様評価部40は、評価値EVPInitを算出する(ステップS23)。なお、SA法において、評価値EVPは、対価関数(Cost Function)としての役割を担う。
具体的には、図4に示すFFT演算部100は、画像データImgInitに対してFFTを施す。そして、第1評価値算出部102は、FFT演算部100から供給されたスペクトルSpcに基づいて第1評価値EV1を算出する。画像データImgのうち、光学濃度ODのチャンネルに対して、上述した第1評価値EVP1を算出する。なお、光学濃度ODの代わりに色値L*を用いてもよい。
第1評価値EV1に関しては既に説明したので、詳細な説明を割愛する{(1)式及び(2)式を参照}。
そして、第2評価値算出部104は、FFT演算部100から供給されたスペクトルSpcに基づいて第2評価値EV2を算出する。画像データImgのうち、色値L*、色値a*、色値b*の各チャンネルに対して、上述した評価値EVP2(L*)、EVP2(a*)、EVP2(b*)をそれぞれ算出する{(3)式を参照}。そして、所定の重み係数を用いて積和演算することで、評価値EVP2を得る。
なお、色値L*、色値a*、色値b*の代わりに光学濃度ODを用いてもよい。第2評価値EV2に関しては、観察態様の種別、具体的には、補助光源は透過光が支配的であるか、反射光が支配的であるか、あるいは透過光・反射光の混合光であるかに応じて、人間の視感度により適合した演算手法を適宜選択することができる。
そして、重み付け加算部106は、(4)式に示すように、係数αで重み付けされた第1評価値EV1と、係数βで重み付けされた第2評価値EV2とを加算し、評価値EVPInitを得る。なお、メッシュパターンMを決定するための目標レベル(許容範囲)や評価関数に応じて、評価値EVPの算出式を種々変更し得ることはいうまでもない。
このようにして、メッシュ模様評価部40は、評価値EVPInitを算出する(ステップS23)。
次いで、記憶部24は、ステップS22で作成された画像データImgInitと、ステップS23で算出された評価値EVPInitとを一時的に記憶する(ステップS24)。あわせて、擬似温度Tに初期値nΔT(nは自然数、ΔTは正の実数値である。)を代入する。
次いで、カウンタ108は、変数Kを初期化する(ステップS25)。すなわち、Kに0を代入する。
次いで、シード点SDの一部(第2シード点SDS)を候補点SPに置き換えた状態で、画像データImgTempを作成し、評価値EVPTempを算出した後に、シード点SDの「更新」又は「非更新」を判断する(ステップS26)。このステップS26について、図1、図4の機能ブロック図及び図16のフローチャートを参照しながら、更に詳細に説明する。
先ず、更新候補位置決定部30は、所定の二次元画像領域200から候補点SPを決定する(ステップS261)。更新候補位置決定部30は、例えば、乱数発生部26から供給された乱数値を用いて、シード点SDのいずれの位置とも重複しない位置を決定する。なお、候補点SPの個数は1つであっても複数であってもよい。図17Aに示す例では、現在のシード点SDが8個(点P1〜P8)に対して、候補点SPは2個(点Q1と点Q2)である。
次いで、シード点SDの一部と候補点SPとを無作為に交換する(ステップS262)。更新候補位置決定部30は、各候補点SPと交換(あるいは更新)される各シード点SDを無作為に対応付けておく。図17Aでは、点P1と点Q1とが対応付けられ、点P3と点Q2とが対応付けられたとする。図17Bに示すように、点P1と点Q1とが交換されるとともに、点P3と点Q2とが交換される。ここで、交換(あるいは更新)対象でない点P2、点P4〜P8を第1シード点SDNといい、交換(あるいは更新)対象である点P1及び点P3を第2シード点SDSという。
次いで、画像データ作成部38は、交換された新たなシード点SD(図17B参照)を用いて、画像データImgTempを作成する(ステップS263)。このとき、ステップS22(図10参照)の場合と同一の方法を用いるので、説明を割愛する。
次いで、メッシュ模様評価部40は、画像データImgTempに基づいて、評価値EVPTempを算出する(ステップS264)。ステップS23(図10参照)の場合と同一の方法を用いるので、説明を割愛する。
次いで、更新確率算出部112は、シード点SDの位置の更新確率Probを算出する(ステップS265)。ここで、「位置の更新」とは、ステップS262で暫定的に交換して得たシード点SD(すなわち、第1シード点SDN及び候補点SP)を新たなシード点SDとして決定することをいう。
具体的には、メトロポリス基準に従って、シード点SDを更新する確率又は更新しない確率をそれぞれ算出する。更新確率Probは、次の(5)式で与えられる。
ここで、Tは擬似温度を表し、絶対温度(T=0)に近づくに従って、更新則が確率論的から決定論的に変化する。
次いで、位置更新判定部114は、更新確率算出部112により算出された更新確率Probに従って、シード点SDの位置を更新するか否かについて判断する(ステップ266)。例えば、乱数発生部26から供給された乱数値を用いて、確率的に判断してもよい。
シード点SDを更新する場合は「更新」の旨を、更新しない場合は「非更新」の旨を記憶部24側にそれぞれ指示する(ステップS267、S268)。
このようにして、ステップS26が完了する。
図10に戻って、「更新」又は「非更新」のいずれか一方の指示に従って、シード点SDを更新するか否かが判定される(ステップS27)。シード点SDを更新しない場合は、ステップS28を行うことなく、次のステップS29に進む。
一方、シード点SDを更新する場合は、記憶部24は、現在記憶している画像データImgに対し、ステップS263で求めた画像データImgTempを上書き更新する(ステップS28)。また、記憶部24は、現在記憶している評価値EVPに対し、ステップS263で求めた評価値EVPTempを上書き更新する(ステップS28)。さらに、記憶部24は、現在記憶している第2シード点SDSの位置データSDSdに対し、ステップS261で求めた候補点SPの位置データSPdを上書き更新する(ステップS28)。その後、次のステップS29に進む。
次いで、カウンタ108は、現時点でのKの値を1だけ加算する(ステップS29)。
次いで、カウンタ108は、現時点でのKの値と予め定められたKmaxの値との大小関係を比較する(ステップS30)。Kの値の方が小さい場合はステップS26まで戻り、以下ステップS26〜S30を繰り返す。なお、この最適化演算における収束性を十分確保するため、例えば、Kmax=10000と定めることができる。
それ以外の場合は、擬似温度管理部110は、擬似温度TをΔTだけ減算し(ステップS31)、次のステップS32に進む。なお、擬似温度Tの変化量は、ΔTの減算のみならず、定数δ(0<δ<1)の乗算であってもよい。この場合は、(5)式に示す確率Prob(下段)が一定値だけ減算される。
次いで、擬似温度管理部110は、現時点での擬似温度Tが0に等しいか否かを判定する(ステップS32)。Tが0と等しくない場合はステップS25に戻って、以下ステップS25〜S32を繰り返す。
一方、Tが0に等しい場合は、擬似温度管理部110は、出力用画像データ決定部116に対し、SA法によるメッシュ模様の評価が終了した旨を通知する。そして、記憶部24は、ステップS28で最後に更新された画像データImgの内容を出力用画像データImgOutに上書き更新する(ステップS33)。
このようにして、出力用画像データImgOutの作成を終了する(ステップS2)。なお、この出力用画像データImgOutは、その後、露光データ変換部32側に供給され、露光部18の制御信号に変換される画像データである。
なお、作業者が目視確認するために、得られた出力用画像データImgOutを表示部22に表示させ、メッシュパターンMを擬似的に可視化してもよい。
図18Aは、(2)式において、γ=0.5に設定して得られたメッシュパターンMの模様を表す画像データImgOutを可視化した概略説明図である。図18Bは、図18Aの画像データに対してFFTを施して得られるスペクトルSpcの分布図である。このように、スペクトルSpcの分布は、異方的であるとともに略楕円状のピークを2個有している。この楕円の長辺と短辺との比は概ね2:1であり、X軸方向、Y軸方向の1次モーメントの比も2:1である。すなわち、(2)式におけるγ=0.5の値と対応している。
図6に戻って、露光部18は、メッシュパターンMの露光処理を行い(ステップS3)、その後、現像処理を行う(ステップS4)。
ここで、透明フイルム基材56上に金属細線54によるメッシュパターンMを形成するいくつの方法(第1方法〜第4方法)について図19A〜図22を参照しながら説明する。
第1方法は、透明フイルム基材56上に設けられた銀塩感光層を露光し、現像、定着することによって形成された金属銀部にてメッシュパターンMを構成する方法である。
具体的には、図19Aに示すように、ハロゲン化銀62(例えば臭化銀粒子、塩臭化銀粒子や沃臭化銀粒子)をゼラチン64に混ぜてなる銀塩感光層66を透明フイルム基材56上に塗布する。なお、図19A〜図19Cでは、ハロゲン化銀62を「粒々」として表記してあるが、あくまでも本発明の理解を助けるために誇張して示したものであって、大きさや濃度等を示したものではない。
その後、図19Bに示すように、銀塩感光層66に対して導電部50の形成に必要な露光を行う。すなわち、図10に示すパターン生成処理を経て得られた露光パターンに対応したマスクパターンを介して光16を銀塩感光層66に照射する。あるいは、銀塩感光層66に対するデジタル書込み露光によって、銀塩感光層66に、前記パターン生成処理にて生成された露光パターンを露光する。ハロゲン化銀62は、光エネルギーを受けると感光して「潜像」と称される肉眼では観察できない微小な銀核を生成する。
その後、潜像を肉眼で観察できる可視化された画像に増幅するために、図19Cに示すように、現像処理を行う。具体的には、潜像が形成された銀塩感光層66を現像液(アルカリ性溶液と酸性溶液のどちらもあるが通常はアルカリ性溶液が多い)にて現像処理する。この現像処理とは、ハロゲン化銀粒子ないし現像液から供給された銀イオンが現像液中の現像主薬と呼ばれる還元剤により潜像銀核を触媒核として金属銀に還元されて、その結果として潜像銀核が増幅されて可視化された銀画像(現像銀68)を形成する。
現像処理を終えたあとに銀塩感光層66中には光に感光できるハロゲン化銀62が残存するのでこれを除去するために図19Dに示すように定着処理液(酸性溶液とアルカリ性溶液のどちらもあるが通常は酸性溶液が多い)により定着を行う。
この定着処理を行うことによって、露光された部位には金属銀部70が形成され、露光されていない部位にはゼラチン64のみが残存し、透光部72となる。すなわち、透明フイルム基材56上に金属銀部70と透光部72との組み合わせによるメッシュパターンMが形成されることになる。
ハロゲン化銀62として臭化銀を用い、チオ硫酸塩で定着処理した場合の定着処理の反応式を以下に示す。
AgBr(固体)+2個のS2O3イオン → Ag(S2O3)2
(易水溶性錯体)
すなわち、2個のチオ硫酸イオンS 2 O 3 とゼラチン64中の銀イオン(AgBrからの銀イオン)が、チオ硫酸銀錯体を生成する。チオ硫酸銀錯体は水溶性が高いのでゼラチン64中から溶出されることになる。その結果、現像銀68が金属銀部70として定着されて残ることになる。この金属銀部70にてメッシュパターンMが構成されることになる。
したがって、現像工程は、潜像に対し還元剤を反応させて現像銀68を析出させる工程であり、定着工程は、現像銀68にならなかったハロゲン化銀62を水に溶出させる工程である。詳細は、T.H.James, The Theory of the Photographic Process, 4th ed., Macmillian Publishing Co.,Inc, NY,Chapter15, pp.438−442. 1977を参照されたい。
なお、現像処理は多くの場合アルカリ性溶液で行われることから、現像処理工程から定着処理工程に入る際に、現像処理にて付着したアルカリ溶液が定着処理溶液(多くの場合は酸性溶液である)に持ち込まれるため、定着処理液の活性が変わるといった問題がある。また、現像処理槽を出た後、膜に残留した現像液により意図しない現像反応が更に進行する懸念もある。そこで、現像処理後で、定着処理工程に入る前に、酢酸(酢)溶液等の停止液で銀塩感光層66を中和もしくは酸性化することが好ましい。
そして、図19Eに示すように、例えばめっき処理(無電解めっきや電気めっきを単独ないし組み合わせる)を行って、金属銀部70のみに導電性金属74を担持させることによって、金属銀部70と該金属銀部70に担持された導電性金属74にてメッシュパターンMを形成するようにしてもよい。
ここで、上述した銀塩感光層66を用いた方法(銀塩写真技術)と、フォトレジストを用いた方法(レジスト技術)との違いを説明する。
レジスト技術では、露光処理により光重合開始剤が光を吸収して反応が始まりフォトレジスト膜(樹脂)自体が重合反応して現像液に対する溶解性の増大又は減少させ、現像処理により露光部分又は未露光部分の樹脂を除去する。なお、レジスト技術で現像液とよばれる液は還元剤を含まず、未反応の樹脂成分を溶解する例えばアルカリ性溶液である。一方、本発明の銀塩写真技術の露光処理では上記に記載したように、光を受けた部位のハロゲン化銀62内において発生した光電子と銀イオンからいわゆる「潜像」と呼ばれる微小な銀核が形成され、その潜像銀核が現像処理(この場合の現像液は必ず現像主薬と呼ばれる還元剤を含む)により増幅されて可視化された銀画像になる。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、露光処理から現像処理での反応が全く異なる。
レジスト技術の現像処理では露光部分又は未露光部分の重合反応しなかった樹脂部分が除去される。一方、銀塩写真技術の現像処理では、潜像を触媒核にして現像液に含まれる現像主薬と呼ばれる還元剤により還元反応がおこり、目に見える大きさまで現像銀68が成長するものであって、未露光部分のゼラチン64の除去は行われない。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、現像処理での反応も全く異なる。
なお、未露光部分のゼラチン64に含まれるハロゲン化銀62は、その後の定着処理によって溶出されるものであって、ゼラチン64自体の除去は行われない。
このように、銀塩写真技術では反応(感光)主体がハロゲン化銀であるのに対し、レジスト技術では光重合開始剤である。また、現像処理では、銀塩写真技術ではバインダ(ゼラチン64)は残存するが、レジスト技術ではバインダがなくなる。このような点で、銀塩写真技術とフォトレジスト技術は大きく相違する。
その他の製造方法(第2の製造方法)としては、図20Aに示すように、例えば透明フイルム基材56上に形成された銅箔75上のフォトレジスト膜76を形成して感光材料を得る。その後、感光材料に対して露光を行う。すなわち、図10に示すパターン生成処理を経て得られた露光パターンに対応したマスクパターンを介して光をフォトレジスト膜76に照射する。あるいは、フォトレジスト膜76に対するデジタル書込み露光によって、フォトレジスト膜76に、パターン生成装置にて生成された露光パターンを露光する。その後、現像処理することで、透明フイルム基材56上に導電部50に対応したレジストパターン78を形成し、図20Bに示すように、レジストパターン78から露出する銅箔75をエッチングする。この段階で、透明フイルム基材56上に、銅箔75による導電部50(メッシュパターンM)が形成される。
また、第3の製造方法としては、図21Aに示すように、透明フイルム基材56上に金属微粒子を含むペースト80を印刷し、図21Bに示すように、印刷されたペースト80に、金属めっき82を行うことによって、導電部50(メッシュパターンM)を形成するようにしてもよい。
あるいは、第4の製造方法として、図22に示すように、透明フイルム基材56に金属薄膜84をスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷してメッシュパターンMを形成するようにしてもよい。
次に、本実施の形態に係る導電性フイルム14において、特に好ましい態様であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる導電性金属薄膜の作製方法を中心にして述べる。
本実施の形態に係る導電性フイルム14は、上述したように、透明フイルム基材56上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって露光部及び未露光部に、それぞれ金属銀部70及び透光部72を形成し、さらに金属銀部70に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部70に導電性金属74を担持させることで製造することができる。
本実施の形態に係る導電性フイルム14の形成方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は物理現像して金属銀部70を該感光材料上に形成させる態様。
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を物理現像して金属銀部70を該感光材料上に形成させる態様。
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部70を非感光性受像シート上に形成させる態様。
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電膜等の透光性導電膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は物理現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に透光性導電膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀の比表面は小さい球形である。
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に透光性導電膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Process, 4th ed.」(Macmillan社、1977年刊行)に解説されている。本件は液処理に係る発明であるが、その他の現像方式として熱現像方式を適用する技術も参考にすることができる。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号の各公報、特願2004−244080号、同2004−085655号の各明細書に記載された技術を適用することができる。
(感光材料)
被めっき素材としての感光材料(感光ウエブ)は、例えば、透明フイルム基材56上に銀塩(例えばハロゲン化銀)が含有した銀塩含有層を設けた長尺フレキシブル基材である。また、銀塩含有層上には保護層が設けられていてもよく、この保護層とは例えばゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために銀塩含有層上に形成される。保護層の厚みは0.02〜20μmであることが好ましい。
これらの銀塩含有層や保護層の組成等は、銀塩写真フイルム、印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に適用されるハロゲン化銀乳剤層(銀塩含有層)や保護層を適宜適用することができる。
特に、感光材料としては、銀塩写真フイルム(銀塩感光材料)が好ましく、白黒銀塩写真フィルム(白黒銀塩感光材料)が最もよい。また、銀塩含有層に適用する銀塩としては、特にハロゲン化銀が最も好適である。なお、感光材料の幅は、例えば、20cm以上とし、厚みは50〜200μmとすることがよい。
[透明フイルム基材56]
本実施の形態の製造方法に用いられる透明フイルム基材56としては、フレキシブルなプラスチックフイルムを用いることができる。
上記プラスチックフイルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、EVA等のポリオレフィン類、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリル樹脂、ポリイミド、又はアラミド等を用いることができる。
本実施の形態においては、透光性、耐熱性、取り扱い易さ及び価格の点から、上記プラスチックフイルムはポリエチレンテレフタレート(PET)フイルム又はトリアセチルセルロース(TAC)フイルムであることが好ましい。
窓ガラス用の透明発熱体では透光性が要求されるため、透明フイルム基材56の透光性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフイルムの全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフイルムとして本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
本実施の形態におけるプラスチックフイルムは、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フイルムとして用いることも可能である。
[保護層]
用いられる感光材料は、後述する乳剤層上に保護層を設けていてもよい。本実施の形態において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層に形成される。上記保護層は、めっき処理する上では設けない方が好ましく、設けるとしても薄い方が好ましい。その厚みは0.2μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法の形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
[乳剤層]
本実施の形態の製造方法に用いられる感光材料は、透明フイルム基材56上に、光センサとして銀塩を含む乳剤層(銀塩感光層66)を有することが好ましい。本実施の形態における乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダ、溶媒等を含有することができる。
<銀塩>
本実施の形態で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩が好ましく、特に銀塩がハロゲン化銀写真感光材料用ハロゲン化銀粒子の形で用いられるのが好ましい。ハロゲン化銀は、光センサとしての特性に優れている。
ハロゲン化銀写真感光材料の写真乳剤の形で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
本実施の形態では、光センサとして機能させるためにハロゲン化銀を使用することが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本実施の形態においても用いることができる。
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
なお、ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
本実施の形態に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、4以上の階調を得るためや低かぶりを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物等を含有することが好ましい。
また、高感度化のためにはK4〔Fe(CN)6〕やK4〔Ru(CN)6〕、K3〔Cr(CN)6〕のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
その他、本実施の形態では、Pd(II)イオン及び/又はPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。ここで、Pdが「ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有する」とは、ハロゲン化銀粒子の表面から深さ方向に50nm以内において、他層よりもパラジウムの含有率が高い層を有することを意味する。
このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する途中でPdを添加することにより作製することができ、銀イオンとハロゲンイオンとをそれぞれ総添加量の50%以上添加した後に、Pdを添加することが好ましい。また、Pd(II)イオンを後熟時に添加する等の方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、物理現像や無電解めっきの速度を速め、所望の発熱体の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解めっき触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
本実施の形態において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオン及び/又はPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の、銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
使用するPd化合物の例としては、PdCl4や、Na2PdCl4等が挙げられる。
本実施の形態では、さらに光センサとしての感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感の方法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感等のカルコゲン増感、金増感等の貴金属増感、還元増感等を用いることができる。これらは、単独又は組み合わせて用いられる。上記化学増感の方法を組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法等の組み合わせが好ましい。
<バインダ>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。本発明において、上記バインダとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。例えば、乳剤層中に含有されるバインダの含有量として、銀塩感光層66中のAg/バインダ体積比が1/4以上になるように調節することが好ましく、1/2以上になるように調節することがさらに好ましい。
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
次に、導電部50(メッシュパターンM)を形成するための各工程について説明する。
[露光]
本実施の形態では、露光部18により、透明フイルム基材56上に設けられた銀塩感光層66を有する感光材料への露光が行われる。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
パターン像を形成させる露光方式としては、均一光をマスクパターンを介して感光面に照射してマスクパターンを像様形成させる面露光方式と、レーザ光等のビームを走査してパターン状の照射部を感光性面上に形成させる走査露光方式とがある。
露光は、種々のレーザビームを用いて行うことができる。例えば、本実施の形態における露光は、ガスレーザ、発光ダイオード、半導体レーザ、半導体レーザ又は半導体レーザを励起光源に用いた固体レーザと非線形光学結晶を組み合わせた第2高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらに、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザ等も用いることができる。システムをコンパクトで、安価なものにするために、露光は、半導体レーザ、半導体レーザあるいは固体レーザと非線形光学結晶を組合わせた第2高調波発生光源(SHG)を用いて行うことがより好ましい。特に、コンパクトで、安価、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザを用いて行うことが最も好ましい。
銀塩感光層66をパターン状に露光する方法は、レーザビームによる走査露光が好ましい。特に特開2000−39677号公報記載のキャプスタン方式のレーザ走査露光装置が好ましく、さらには該キャプスタン方式においてポリゴンミラーの回転によるビーム走査の代わりに特開2004−1224号公報記載のDMDを光ビーム走査系に用いることも好ましい。特に、3m以上の長尺フレキシブルフイルムヒータを作製する場合には、湾曲した露光ステージ上において、感光材料を搬送しながらレーザビームで露光するのが好ましい。
メッシュパターンMは、後述するように、実質的に平行の直線状細線が交叉してなす三角形、四角形(菱形、正方形等)、六角形等の格子紋様や、平行な直線やジグザグ線、波線等、電圧の印加される電極間に電流を流せる構造であれば特に限定されない。
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。
リス現像液を用いることもできる。リス現像液としては、KODAK社処方のD85等を用いることができる。本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部に金属銀部70、好ましくはパターン状の金属銀部70が形成されると共に、未露光部に後述する透光部72が形成される。
現像処理で用いられる現像液は、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。画質向上剤としては、例えばベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合、特に、ポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
本実施の形態における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、透光部の透光性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、上述した露光及び現像処理により形成された金属銀部70の導電性を向上させる目的で、金属銀部70に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本実施の形態では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属銀部70に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部70に担持させることもできる。
本実施の形態における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオン等の金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフイルム、インスタントスライドフイルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。
[カレンダー処理]
現像処理済みの金属銀部70(全面金属銀部、金属メッシュパターン部又は金属配線パターン部)にカレンダー処理を施して平滑化するようにしてもよい。これによって金属銀部70の導電性が顕著に増大する。カレンダー処理は、カレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは通常一対のロールからなる。
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の上限値は1960N/cm(200kgf/cm、面圧に換算すると699.4kgf/cm2)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm2)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
[蒸気接触処理]
カレンダー処理の直前あるいは直後に蒸気に接触させるとカレンダー処理による効果をより引き出すことができる。すなわち、導電性を著しく向上させることができる。使用する蒸気の温度は80℃以上が好ましく、100℃以上140℃以下がさらに好ましい。蒸気への接触時間は10秒から5分程度が好ましく、1分から5分がさらに好ましい。
なお、本発明は、下記表1及び表2に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組み合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[ハロゲン化銀感光材料]
水媒体中のAg60gに対してゼラチン10.0gを含む、球相当径平均0.1μmの沃臭塩化銀粒子(I=0.2モル%、Br=40モル%)を含有する乳剤を調製した。
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、さらに塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が1g/m2となるようにポリエチレンテレフタレート(PET)上に塗布した。この際、Ag/ゼラチン体積比は1/2とした。
幅30cmのPET支持体に25cmの幅で20m分塗布を行ない、塗布の中央部24cmを残すように両端を3cmずつ切り落としてロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
[露光パターンの作成]
3種類のメッシュパターンM1〜M3を表す出力用画像データImgOutをそれぞれ作成した。
図23Aに示すように、上下方向又は左右方向に延在する直線状の配線からなるメッシュパターンM1は、正方格子状である。
図24Aに示すように、正弦波状の複数の配線からなるメッシュパターンM2は、縦縞状である。これらの正弦波は、互いに交叉することなく上下方向に平行して進行しているが、中心線の離間距離、正弦波の振幅・位相がそれぞれ異なっている。例えば、これらの値は、一様分布に従ってランダムに定められている。
図25Aに示すように、不規則に配置された配線からなるメッシュパターンM3は、ランダムな形状である。このメッシュパターンM3は、本実施の形態で説明したSA法(図10等参照)を用いて実際に得られた模様である。
メッシュパターンM3の設定条件は、全体透過率93%、透明フイルム基材56の厚さを20μm、金属細線54の幅を20μm、金属細線54の厚さを10μmとした。パターンサイズを縦横とも5mm、画像解像度を3500dpi(dot per inch)とした。シード点SDの初期位置はメルセンヌ・ツイスタを用いてランダムに決定し、ボロノイ図を用いて多角形状の各メッシュ領域を画定した。第1評価値EV1は画像データImgの色値L*に基づいて算出し、第2評価値EV1は画像データImgの色値L*、色値a*、色値b*に基づいて算出した。そして、同一の出力画像データImgOutを上下方向及び左右方向に並べて配置することで、周期的な露光パターンを形成した。
[露光]
ハロゲン化銀感光材料に対する露光パターンの露光は、特開2004−1224号公報の発明の実施の形態記載のDMD(デジタル・ミラー・デバイス)を用いた露光ヘッドを25cm幅になるように並べ、感光材料の感光層上にレーザ光が結像するように露光ヘッド及び露光ステージを湾曲させて配置し、感材送り出し機構及び巻取り機構を取り付けた上、露光面のテンション制御及び巻取り、送り出し機構の速度変動が露光部分の速度に影響しないようにバッファ作用を有する撓みを設けた連続露光装置にて行った。露光の波長は400nmで、ビーム形は12μmの略正方形、及びレーザ光源の出力は100μJであった。
[現像液の組成]
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 20 g
亜硫酸ナトリウム 50 g
炭酸カリウム 40 g
エチレンジアミン・四酢酸 2 g
臭化カリウム 3 g
ポリエチレングリコール2000 1 g
水酸化カリウム 4 g
pH 10.3に調整
[定着液の組成]
定着液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25 g
1,3−ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
[現像処理]
上記処理剤を用いて露光済み感材を、富士フイルム社製自動現像機 FG−710PTSを用いて処理条件:現像35℃ 30秒、定着34℃ 23秒、水洗 流水(5L/分)の20秒処理で行った。
ランニング条件として、感材の処理量を100m2/日で現像液の補充を500ml/m2、定着液を640ml/m2で3日間行った。このとき、めっき処理後の銅のパターンが12μm線幅300ミクロンピッチであることが確認された。
さらに、めっき液(硫酸銅0.06モル/L,ホルマリン0.22モル/L,トリエタノールアミン0.12モル/L,ポリエチレングリコール100ppm、黄血塩50ppm、α、α‘−ビピリジン20ppmを含有する、pH=12.5の無電解Cuめっき液)を用い、45℃にて無電解銅めっき処理を行った後、10ppmのFe(III)イオンを含有する水溶液で酸化処理を行ない、導電性フイルムの各試料を得た。
以下、メッシュパターンM1〜M3を有する導電性フイルム14を第1〜第3サンプルという。
[撮影]
第1〜第3サンプルを設置するための透明板を配置する。透明板は厚さ5mmのガラスでできており、窓ガラスを模している。透明板に第1〜第3サンプルをそれぞれ貼り付け、部屋を暗室にした。
メッシュパターンMによる回折光の干渉性を確認するために、透明板から3m離れた距離に白熱灯(40ワット球)を点灯させ、透明板越しにカメラを用いて撮影した(以下、第1撮影という。)。
また、メッシュパターンMのノイズ特性を評価するために、前記白熱灯を消灯させた状態で、前記カメラのフラッシュ光(補助光)を用いて、透明板を撮影した(以下、第2撮影という。)。
[結果]
図23B、図24B及び図25Bは、メッシュパターンM1、M2及びM3を有する導電性フイルム14の第1撮影写真である。
図23B及び図24Bに示すように、X軸又はY軸方向に対して周期性を有するメッシュパターンM1、M2では、干渉縞の発生領域は狭くなるとともに、光強度が大きい傾向があることがわかった。一方、図25Cに示すように、非周期性を有するメッシュパターンM3では、干渉縞の発生領域は広くなるとともに、光強度が小さい傾向があることがわかった。
図23C、図24C及び図25Cは、メッシュパターンM1、M2及びM3を有する導電性フイルム14の第2撮影写真である。
このように、所定の二次元画像領域200の中から複数の位置(シード点SD)を選択し、複数の開口部52を有するメッシュパターンMの模様を表す画像データImgを、選択された前記複数の位置(シード点SD)に基づいて作成し、複数の開口部52を介して発生する光干渉の指向性について、交叉する2軸方向に対して定量化した第1評価値EV1を、作成された画像データImgに基づいて算出し、算出された第1評価値EV1と所定の評価条件とに基づいて1つの画像データImgを出力用画像データImgOutとして決定し、決定された出力用画像データImgOutに基づいて透明フイルム基材56上に線材を出力形成するようにしたので、前記所定の評価条件を満たす光干渉を発生させるメッシュパターンMの形状を決定できる。換言すれば、メッシュパターンMにより形成される複数の開口部52を介して発生する光干渉の指向性を適切に制御できる。
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。