JP5409153B2 - 印刷原版の製造方法、印刷版の製造方法、印刷原版、及び印刷原版の製造装置 - Google Patents

印刷原版の製造方法、印刷版の製造方法、印刷原版、及び印刷原版の製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、印刷原版の製造方法、印刷版の製造方法、印刷原版、及び印刷原版の製造装置に関する。
従来、部材表面に印刷を施す場合、その部材の材質や形状等を考慮して、印刷方式を使い分けることが行われている。印刷方式としては、例えば、フレキソ印刷、グラビア印刷等が挙げられる。例えば、これらの印刷方式では、まず印刷原版の樹脂層にパターンを形成して印刷版とし、この印刷版を用いて印刷対象物に印刷を行う。
フレキソ印刷は、アニロックスロール等を用いて印刷版上の凸部にインキを付けて、印刷対象物に転写する印刷方式である。通常、フレキソ印刷版には、弾性を有する樹脂(樹脂層)が用いられる。そして、印刷版の強度を確保する目的で、印刷原版の樹脂層に架橋処理を施すことが行われている。架橋処理は、紫外線や電子線等の活性線を樹脂層に照射する方法(光架橋)や、加硫や、有機過酸化物を用いる方法(熱架橋)が行われている。
グラビア印刷は、凹版印刷の一種であり、印刷版のインクが付着する部分が掘り込まれている印刷方式である。印刷版の凹部にインクを付着させて印刷するので、グラビア印刷は微細な濃淡を表現できる。グラビア印刷版は、例えば、金属製の支持体上に銅メッキを施した後、電子彫刻により銅メッキ表面に彫刻を施す方法により製造されている。あるいは、支持体上に感光性レジストとして樹脂層を形成させ、レーザーで樹脂層の表面に描画して現像し、エッチング処理を行うことにより凹凸を樹脂層に形成させ、最後にクロムメッキを施す方法によっても製造されている。
特許文献1には、支持体上にエラストマーからなる中間層及び該中間層の上に存在するエラストマー層の頂層が強化されるフレキソ印刷版の製造方法に関する技術が開示されており、オーブンやマイクロウェーブやIRランプによる加熱方法により上記頂層を強化する技術が開示されている。
特許文献2には、エラストマー系バインダー、レーザー照射用吸収剤、重合開始剤、及び溶剤を含む熱架橋性混合物を仮の支持体上で形成させ、溶剤を蒸発させた後に、金属製支持体に貼着して熱架橋する工程を含むフレキソ印刷版の製造方法に関する技術が開示されている。
特許文献3には、フレキソ印刷版の製造方法に関し、電子ビーム照射により硬化させる方法に関する技術が開示されている。
特表平7−505840号公報 特表2004−506551号公報 特表2004−535962号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、大気中でエラストマー層の加熱を行うため、大気と接するエラストマー層の表面から熱硬化が開始する。そのため、大気中の酸素が熱硬化を阻害する原因となり得る。その結果、エラストマー層の表面が十分に硬化されない。また、特許文献2に開示された技術では、金属製支持体上で熱架橋性混合物を熱硬化させる際に大気中の酸素の影響を受ける。そのため、硬化が不十分な部位や、未硬化の部位を有する印刷版となってしまう。
このように、樹脂層を構成する樹脂組成物を熱硬化させる場合、大気中の酸素が熱硬化の進行を阻害する。加熱時における酸素の影響を低減させるためには、窒素等の不活性ガス下で加熱する必要や、空気と接触する表面にフィルム等を貼り付けて酸素を遮断した状態で加熱する必要がある。しかし、これらの方法は、工程が複雑化することや、円筒状の繋ぎ目を完全に遮断することが困難であること等から好ましくない。
さらに、特許文献3に開示された電子ビーム照射による硬化方法は、電子線装置が大型かつ高価であるため簡便な方法とはいえない。また、電子ビーム照射による硬化を大気中で行う場合にも、特許文献1,2と同様に、酸素による阻害の影響を受けるため、印刷版に未硬化部分が生じる。
以上のように、上記文献をはじめとする従来技術において印刷原版の樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化を行う場合、大気と接している樹脂表面から硬化が開始する。これにより、大気中の酸素阻害の影響を受けて樹脂層が未硬化状態の部分を含んでしまう。その結果、印刷原版の樹脂層がべとついてしまい、印刷原版の生産性が低下し、耐摩耗性等の機械的強度が不十分な印刷版となってしまう。
さらに、印刷原板の樹脂層を構成する樹脂組成物を加熱する場合、通常、支持体上に配置された樹脂組成物を、大気と接する樹脂表面から加熱するため、硬化する温度に達する前に樹脂組成物の粘度が低下してしまう現象が生じる。例えば、円筒状支持体上に配置された樹脂組成物を大気側から加熱して硬化させる場合、加熱により粘度が低下した樹脂組成物が液垂れするため、材料のロスが生じる問題や、表面から樹脂の硬化収縮が生じるため樹脂層の厚さが均一にはならないといった問題も発生する。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、経済性に優れ、製造原版の生産性が高く、印刷原版の樹脂層の表面がべとつかず、樹脂層の厚さが均一である、印刷原版の製造方法、印刷版の製造方法、及び印刷原版、並びに印刷原版の製造装置を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体の表面上に配置する工程と、前記導電性支持体を高周波誘導加熱することにより、前記熱硬化性樹脂組成物を前記導電性支持体と接する面側から加熱し硬化させて、前記導電性支持体上に前記熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる樹脂層を形成する工程を、少なくとも行うことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体の表面上に配置する工程と、
前記導電性支持体を高周波誘導加熱することにより、前記熱硬化性樹脂組成物を前記導電性支持体と接する面側から加熱し硬化させて、前記導電性支持体上に前記熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる樹脂層を形成する工程と、
を含む印刷原版の製造方法。
〔2〕
前記導電性支持体は、中空円筒状支持体である〔1〕の印刷原版の製造方法。
〔3〕
前記熱硬化性樹脂組成物は、樹脂と、不飽和結合を有する有機化合物と、を含む〔1〕又は〔2〕の印刷原版の製造方法。
〔4〕
前記熱硬化性樹脂組成物は、熱重合開始剤を含む〔1〕〜〔3〕のいずれか一つの印刷原版の製造方法。
〔5〕
前記熱硬化性樹脂組成物は、カーボンブラックを含む〔1〕〜〔4〕のいずれか一つの印刷原版の製造方法。
〔6〕
熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体の表面上に配置する工程と、
前記導電性支持体を高周波誘導加熱することにより、前記熱硬化性樹脂組成物を前記導電性支持体と接する面側から加熱し硬化させて、前記熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる樹脂層を前記導電性支持体上に形成する工程と、
前記樹脂層に、レーザー彫刻若しくは電子彫刻、又はその両方を用いて印刷パターンを形成する工程と、
を含む印刷版の製造方法。
〔7〕
導電性支持体と、
前記導電性支持体の表面上に形成された樹脂層と、を含み、
前記樹脂層は、前記導電性支持体を高周波誘導加熱することによって、前記導電性支持体の表面上に配置された、熱硬化性樹脂組成物が、前記導電性支持体と接する面側から加熱されて硬化することにより形成された、印刷原版。
〔8〕
中空円筒状の導電性支持体と、
前記導電性支持体を保持する保持部と、
前記導電性支持体の外周表面上に、熱硬化性樹脂組成物を配置する手段と、
前記導電性支持体を高周波誘導加熱する加熱用コイルと、
を少なくとも備える印刷原版の製造装置。
〔9〕
前記導電性支持体を周方向に回転させる手段を、さらに備える〔8〕の印刷原版の製造装置。
本発明によれば、経済性に優れ、製造原版の生産性が高く、印刷原版の樹脂層の表面がべとつかず、樹脂層の厚さが均一である、印刷原版の製造方法、印刷版の製造方法、及び印刷原版、並びに印刷原版の製造装置を提供することを主な目的とする。
本実施の形態の印刷原版の製造方法の一態様を説明する概念図である。 本実施の形態の印刷原版の製造装置の一態様における、熱硬化性樹脂組成物を配置する機構の概略構成を示す上面模式図である。 図2における導電性支持体とドクターブレードとの関係を説明する側面模式図である。 本実施の形態の印刷原版の製造装置の一態様における、熱硬化性樹脂組成物を硬化させる機構の概略構成を示す上面模式図である。 本実施の形態の印刷原版の製造装置の一態様における、熱硬化性樹脂組成物を硬化させる機構の概略構成を示す側面模式図である。 本実施の形態の印刷原版の製造装置の別の一態様における、熱硬化性樹脂組成物を硬化させる機構の概略構成を示す側面模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[印刷原版の製造方法]
図1は、本実施の形態の印刷原版の製造方法の一態様を説明する概念図である。本実施の形態の印刷原版の製造方法は、熱硬化性樹脂組成物20を、導電性支持体10の表面上に配置する工程と、前記導電性支持体10を高周波誘導加熱することにより、前記熱硬化性樹脂組成物20を前記導電性支持体10と接する面側から加熱し硬化させて、前記導電性支持体10上に前記熱硬化性樹脂組成物20が硬化されてなる樹脂層を形成する工程と、を含むものである。高周波誘導加熱は、例えば、高周波誘導加熱用コイル30(以下、「加熱用コイル」という。)を用いて行い、インバーター40によって加熱用コイル30に流す電流を制御する。
導電性支持体10上に配置された熱硬化性樹脂組成物20を高周波誘導加熱することにより、熱硬化性樹脂組成物20は導電性支持体10側から加熱される(図1の矢印H参照)。ここで、熱硬化性樹脂組成物20は加熱されることにより硬化して、前記樹脂層を形成する。熱硬化性樹脂組成物20を導電性支持体10側から加熱することにより、熱硬化性樹脂組成物20の硬化を、大気とは接していない表面(即ち、導電性支持体10と接する表面;内周表面)側から進行させることができる。その結果、酸素阻害の影響が低減され、熱硬化性樹脂組成物20の大気と接する表面(外周表面)が未硬化状態のままであることを防止でき、樹脂硬化物の硬化ムラがないため、均一な厚さの樹脂層を形成できる。
樹脂層の未硬化部分が低減されることにより、表面のべとつきが低減され、材料ロスが少なくなる。さらに、未硬化樹脂を樹脂層から除去する工程が不要又は最低限の工程でよく、研削や研磨が不要又は最低限の工程でよい。その結果、生産性や経済性にも優れ、かつ工程数が少ない、印刷原版の製造方法、及び印刷版の製造方法とすることができる。
ここで熱硬化における酸素阻害について説明する。例えば、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させる場合、熱に誘起されラジカルが発生し、その発生したラジカルを開始点として、熱硬化性樹脂組成物の硬化反応が進む。ラジカル近傍に酸素がある場合は、酸素によりラジカルがトラップされて硬化反応が抑制される(酸素阻害)。ゆえに、厚膜の樹脂を加熱する場合、樹脂内部は酸素阻害の影響は受けずに硬化が進むが、大気と接している樹脂表面は酸素阻害の影響のため硬化が進まない。よって、従来の加熱方法では、酸素を遮断するには酸素透過性の低いポリエステルフィルムで樹脂表面を保護する方法や、不活性ガス雰囲気中で熱硬化する方法等が必要であった。本実施の形態の製造方法によれば、導電性支持体と接する表面から熱硬化性樹脂組成物を加熱するため、上記酸素阻害の影響を大幅に低減できる。その結果、酸素阻害を防止するための特別な工程が不要であり、効率よくかつ均一に熱硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。
[熱硬化性樹脂組成物の配置]
まず、熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体の表面上に配置する工程について説明する。
熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体の表面上に配置する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、注型法;ポンプや押し出し機等の機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ドクターブレードで厚みを合わせる方法(ブレード塗工法等);ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法;スプレー等を用いて熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体の表面に塗布する方法等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体の表面に配置する工程において、溶剤を使用しないことが好ましい。溶剤を使用しないことにより、塗布工程が簡略化でき、かつ層中に気泡が存在しない樹脂層とすることができる。
熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体に塗布する場合、熱硬化性樹脂組成物の厚みは、印刷原版及び印刷版の強度や、塗布工程の容易さの観点から、10μm以上10mm以下であることが好ましく、50μm以上2mm以下であることがより好ましい。
熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体に塗布する場合、塗工時の熱硬化性樹脂組成物の粘度を低下させ、成形容易にする観点から、熱硬化性樹脂組成物が硬化反応を起こさない範囲で加熱しながら成形を行うことが好ましい。さらに、必要に応じて圧延処理や研削処理等を施してもよい。
[高周波誘導加熱]
次に、前記導電性支持体を高周波誘導加熱することによって、前記熱硬化性樹脂組成物を前記導電性支持体と接する面側から加熱し硬化させて、前記導電性支持体上に前記熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる樹脂層を形成する工程を行う。高周波誘導加熱を利用し、間接的かつ短時間で熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体側から加熱することにより、熱硬化性樹脂組成物の表面を確実に硬化させることができる。これにより、樹脂層表面は未硬化部分を低減でき、表面のべとつきを抑えることができる。さらに、樹脂層表面の未硬化部分が低減できるため、熱硬化性樹脂組成物の材料ロスを低減でき、樹脂層を均一にすることができる。これにより、印刷原版及び印刷版を製造する上で未硬化樹脂層を除去する工程が不要となり、研削、研磨を不要又は最低限のプロセスで処理することができ、印刷原版及び印刷版の生産性を向上させることができる。
加熱温度は、熱硬化性樹脂組成物が加熱され硬化する温度であれば、特に限定されないが、加熱時に分解反応が起きない温度が好ましい。加熱温度としては、50℃以上300℃以下であることが好ましく、80℃以上250℃以下であることがより好ましく、100℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度の制御方法は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、加熱用コイルを用いて誘導加熱する場合、コイルに流す電流をインバーター等によって制御する方法が挙げられる。
本実施の形態では、熱硬化性樹脂組成物の加熱は、該熱硬化性樹脂組成物が大気と接していない表面(即ち、導電性支持体と接する表面;内周表面)側から行われていればよく、導電性支持体に対して行う高周波誘導加熱自体は、導電性支持体の外周表面側から行ってもよいし、導電性支持体の内周表面側から行ってもよい。例えば、高周波誘導加熱を行う加熱用コイルを導電性支持体の外周側に配置してもよいし、中空円筒状の導電性支持体の内周側(例えば、支持体の中空部分)に配置してもよい。そして、高周波誘導加熱を行う際の加熱用コイルと導電性支持体の距離は、効率的に加熱を行う観点から、5mm以上20mm以下であることが好ましく、8mm以上15mm以下であることがより好ましい。
また、中空円筒状の導電性支持体に熱硬化性樹脂組成物を配置して高周波誘導加熱を行う場合、中空円筒状支持体を周方向に回転させながら高周波誘導加熱を行うことが、熱硬化性樹脂組成物を均一に加熱できるため好ましい。導電性支持体を、その周方向に回転させるだけでなく、加熱用コイルを、導電性支持体の周方向と垂直な方向(幅方向)に動かしながら、高周波誘導加熱を行うことが、より好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物をより均一に加熱することができる。
[導電性支持体]
本実施の形態で用いる導電性支持体は、高周波誘導加熱により加熱可能な支持体である。高周波誘導加熱について以下に説明をする。導線に交流電流を流すと、その周りに、向き及び強度が変化する磁力線が発生する。その近くに金属等の導電性物質を置くと、磁力線の影響を受けて、金属の中に渦電流が流れる。金属には電気抵抗があるため、金属に電流が流れると「電力=電流×電流×抵抗」の関係を有するジュール熱が発生して金属が加熱される。この現象を高周波誘導加熱という。高周波誘導加熱の効率を高めるため、導線をコイル状にすることが好ましい。
導電性支持体の材料としては、高周波誘導加熱により加熱可能な物質で、印刷版として寸法安定性を有するものであればよく、例えば、金属、金属酸化物、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、クロム、酸化鉄、酸化クロム、フェライト、コバルト酸化鉄等が挙げられるが、それらの中でも、鉄、ニッケル、クロム等が好ましい。鉄、ニッケル、クロムは、電気抵抗が大きいため、高周波誘導加熱を効率的に行うことができる。
導電性支持体は、円筒状支持体であることが好ましく、中空円筒状支持体であることがより好ましい。円筒状支持体であることにより、シームレスな印刷版とすることができる。さらに、中空円筒状支持体であることにより、シームレスな印刷版とすることができるだけでなく、印刷版を直接印刷機に装着することができる。その結果、一層効率的に高周波誘導加熱を行うことができ、熱硬化性樹脂組成物を効率的に硬化させることができる。
導電性支持体は、寸法安定性のある非導電性支持体の表面に、蒸着等の方法により、導電性の薄膜を形成させたものを用いることもできる。非導電性支持体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンチオエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂からなる液晶樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、繊維強化プラスチック等が挙げられる。より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルムや、繊維強化プラスチック等の非金属表面に、金属若しくは金属酸化物、又はその両方を蒸着させた支持体等を、導電性支持体として用いることができる。
中空円筒状である場合の導電性支持体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10μm以上50mm以下、より好ましくは50μm以上40mm以下、さらに好ましくは100μm以上30mm以下である。導電性支持体を上記厚みにすることにより、寸法安定性を有し、かつ短時間で熱硬化性樹脂組成物を均一に加熱することができる。
[熱硬化性樹脂組成物]
本実施の形態で用いる熱硬化性樹脂組成物は、加熱することにより硬化して樹脂層を形成するものであれば特に制限されず、例えば、重合性不飽和基を有する樹脂(a)単独であってもよいし、重合性不飽和基を有さない樹脂(a)と不飽和結合を有する有機化合物(b)を含む組成物であってもよい。熱硬化性樹脂組成物は、耐溶剤性や機械的強度を確保する観点から、不飽和結合を有する有機化合物(b)を含むことが好ましい。
また、機械的強度を確保する観点から熱重合開始剤を含むことが好ましい。また、一般的な樹脂組成物は近赤外線領域の光を透過する。近赤外線レーザーを用いて高精細なレーザー彫刻を行う場合、カーボンブラックを含むことが好ましい。
[樹脂(a)]
樹脂(a)の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリジエン類;ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン等のポリスチレン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類;ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルエーテル等のC−C連鎖高分子、その他、ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル類;ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド等の主鎖にヘテロ原子を有する重合体等が挙げられる。
樹脂(a)としては、上記重合体を単独で用いてもよいし、2種以上の重合体を併用してもよい。2種以上の重合体を用いる場合の形態としては、共重合体であっても混合物であってもよい。
樹脂(a)は、その分子内に、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、エステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を有していることが好ましい。これにより、印刷原版及び印刷版について、芳香族炭化水素やエステル等の有機溶剤に対する耐溶剤性の向上効果が得られる。
熱硬化性樹脂組成物が不飽和結合を有する有機化合物(b)を含まない場合、樹脂(a)は重合性不飽和基を有することを要する。熱硬化性樹脂組成物が不飽和結合を有する有機化合物(b)を含む場合、樹脂(a)は重合性不飽和基を有してもよいし、重合性不飽和基を有さなくてもよい。
樹脂(a)が重合性不飽和基を有する場合、重合性不飽和基の個数の下限は、特に限定されないが、1分子あたり平均で0.7以上であることが好ましい。これにより、樹脂硬化物の機械強度に優れ、かつ耐久性にも優れ、特に印刷用基材として繰り返しの使用にも耐えられる。重合性不飽和基の個数は核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を用いて定量することができる。重合性不飽和基の個数の上限は、特に限定されないが、1分子あたり平均で100以下であることが好ましい。これにより、熱硬化時の収縮を低く抑えることができ、また表面近傍でのクラック等の発生も抑制できる。
樹脂(a)の数平均分子量は、好ましくは1000以上30万以下であり、より好ましくは2000以上15万以下であり、さらに好ましくは5000以上5万以下である。樹脂(a)の数平均分子量が、1000以上であれば、樹脂組成物を加熱硬化することにより得られる硬化物に優れた強度を付与できる。これにより、印刷版として用いる場合、繰り返しの使用にも耐えられる。樹脂(a)の数平均分子量が30万以下であれば、樹脂組成物の粘度が過度に上昇することもなく、シート状又は円筒状に成形する際に加熱押し出し等の複雑な加工方法は必要ない。数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
樹脂(a)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中、好ましくは5質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上90質量%以下である。樹脂(a)の含有量を上記範囲とすることにより、機械強度及び耐溶剤性に優れた印刷原版及び印刷版とすることができる。また、熱硬化性樹脂組成物は、印刷原版又は印刷版に高い強度を付与する観点から、樹脂組成物の主成分が樹脂(a)であることが好ましい。ここで、主成分とは、樹脂組成物中の50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
(樹脂(a)の製造方法)
樹脂(a)の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、(i)カーボネート結合を有する化合物と、(ii)水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、アルコキシカルボニル基等の反応性基を1つ又は2つ以上有し、かつエステル結合を有し、数平均分子量1000以上10000未満である化合物と、(iii)上記反応性基と結合し得る官能基を複数有する化合物(例えば、水酸基やアミノ基等を有するポリイソシアネート等)と、を反応させることにより、分子量を調節し、分子末端を結合性基に変換する。その後、この分子末端の結合性基と反応し得る官能基と、重合性不飽和基と、を有する有機化合物を、さらに反応させて、分子末端に重合性不飽和基を導入する方法等が挙げられる。
上記分子量の調節は、例えば、化合物(ii)と、化合物(iii)の質量比を調節することにより行うことができる。
樹脂(a)の製造に用いられる(i)カーボネート結合を有する化合物としては、例えば、4,6−ポリアルキレンカーボネートジオール、8,9−ポリアルキレンカーボネートジオール、5,6−ポリアルキレンカーボネートジオール等の脂肪族ポリカーボネートジオール、芳香族系分子構造を分子内に有する脂肪族ポリカーボネートジオール等が挙げられる。なお、上記ポリカーボネートジオールは、対応するジオールを出発原料として用いる公知の方法(例えば、特公平5−29648号公報)により製造できる。
さらに、化合物(i)の反応性基と、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’ −トリイソシアネート等のトリイソシアネート化合物と、を縮合反応させることが好ましい。これにより、ウレタン結合を導入するとともに、高分子量化させることができる。さらに、化合物末端の水酸基やイソシアネート基等の反応性基は、重合性不飽和基を導入するために用いることもできる。
樹脂(a)の製造に用いられる(ii)水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、アルコキシカルボニル基等の反応性基を1つ又は2つ以上有し、かつエステル結合を有し、数平均分子量1000以上10000未満である化合物としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸、シュウ酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼラン酸、セバシン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸化合物と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ピコナール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等の分子内に2個以上の水酸基を有する化合物と、を縮合反応させて得られるポリエステル類、ポリカプロラクトン等のポリエステル類等が挙げられる。
さらに、化合物(ii)の反応性基と、ジイソシアネート化合物と、を縮合反応させることが好ましい。これにより、ウレタン結合を導入するとともに、高分子量化させることができる。さらに、化合物末端の水酸基やカルボキシル基やイソシアネート基は、重合性不飽和基を導入するために用いることもできる。
樹脂(a)に重合性不飽和基を導入する方法として、例えば、重合性不飽和基を、高分子化合物の分子末端又は分子鎖中に直接導入する方法等が挙げられる。
また、別法として、以下の方法等も挙げられる。水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基等の反応性基を複数有する化合物に、前記反応性基と結合しうる官能基を複数有する結合剤(例えば、水酸基やアミノ基を反応性基として用いる場合には、ポリイソシアネート等が挙げられる。)を反応させることにより、分子量を調節し、化合物末端を結合性基に変換する。その後、得られた化合物に、この化合物の末端結合性基と反応しうる官能基と、重合性不飽和基と、を有する化合物を反応させることにより、重合性不飽和基を導入することもできる。
[不飽和結合を有する有機化合物(b)]
本実施の形態の樹脂組成物は、耐磨耗性の観点から、不飽和結合を有する有機化合物(b)を含むことが好ましい。不飽和結合を有する有機化合物(b)は、分子内に重合性不飽和基を有している有機化合物である。樹脂(a)と希釈し易さの観点から、数平均分子量は1000未満であることが好ましい。
不飽和結合を有する有機化合物の配合量は、上記樹脂組成物中、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以上40質量%以下である。上記含有量とすることで、機械的強度が優れた印刷原版及び印刷版とすることができる。
不飽和結合を有する有機化合物(b)としては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリルアルコール、アリルイソシアネート等のアリル化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びそれらの誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、シアネートエステル類等が挙げられる。それらの中でも、種類の豊富さ、価格等の観点から、(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル誘導体がより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、例えば、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケン基、ビシクロアルケン基等の官能基を有していてもよい脂環族化合物、ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、メチルスチリル基、スチリル基等の官能基を有していてもよい芳香族化合物、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基等の他の官能基を有していてもよい化合物のエステル誘導体が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル誘導体の具体例としては、例えば、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパン等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物が挙げられる。より具体的には、フェノキシエチルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルジエチレングリコールモノアクリレート、イソボロニルモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本実施の形態においては、不飽和結合を有する有機化合物(b)は、その目的に応じて1種又は2種以上のものを選択することができる。
印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を抑える観点から、上記有機化合物(b)として、長鎖脂肪族、脂環族又は芳香族のエステル誘導体を少なくとも1種類以上含有することが好ましい。また、樹脂硬化物の機械強度を高める観点から、上記有機化合物(b)は、脂環族又は芳香族のエステル誘導体を、少なくとも1種類以上含有することが好ましい。脂環族又は芳香族のエステル誘導体の含有量の合計は、有機化合物(b)の20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。上記含有量とすることで、機械的強度が優れた印刷版とすることができる。
有機化合物(b)としては、少なくとも1種類が、分子内に重合性不飽和基を3個以上有する有機化合物であることが好ましい。有機化合物(b)において、分子内に重合性不飽和基を3個以上有する有機化合物が占める割合の下限値は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることがよりさらに好ましく、33質量%以上であることがより一層好ましい。上限値は、100質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、67質量%以下であることがさらに好ましい。分子内に重合性不飽和基を3個以上有する有機化合物の割合が上記範囲内であれば、印刷原版及び印刷版の溶剤に対する耐性を大幅に向上させることができる。
不飽和結合を有する有機化合物(b)は、分子内に重合性不飽和基を3〜6個有する化合物であることが、より好ましく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性(PO変性)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(ECH変性)グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(EO変性)グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパン(トリ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート変性(HPA変性)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
[熱重合開始剤(c)]
本実施の形態で用いる樹脂組成物は、印刷原版及び印刷版の機械的強度を向上させる観点から、熱重合開始剤(c)を含むことが好ましい。熱重合開始剤(c)を含有することで、加熱により重合反応を自ら進行させることができ、効率よくかつ均一に樹脂組成物を硬化させることができる。熱重合開始剤(c)としては、ラジカル重合反応、開環重合反応等に使用できるあらゆる熱重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合反応に用いられる熱重合開始剤(c)としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機ケイ素過酸化物、ヒドロペルオキシド、アゾ化合物、チオール化合物、キノン及びキノンジオキシム誘導体等が挙げられる。
熱重合開始剤(c)としては、取り扱い性や、樹脂組成物との相溶性の観点から、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、例えば、ペルオキシエステル類、ジペルオキシケタール類、ジアルキルペルオキシド類、ジアシルペルオキシド類、t−アルキルヒドロペルオキシド類が挙げられる。
ペルオキシエステル類としては、例えば、過オクタン酸t−ブチル、過オクタン酸t−アミル、ペルオキシイソ酪酸t−ブチル、ペルオキシマレイン酸t−ブチル、過安息香酸t−アミル、ジペルオキシフタール酸ジ−t−ブチル、過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル及び2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等が挙げられる。
ジペルオキシケタール類としては、例えば、1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン及びエチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート等が挙げられる。
ジアルキルペルオキシド類としては、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド及び2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等が挙げられる。
ジアシルペルオキシド類としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド及びジアセチルペルオキシド等が挙げられる。
t−アルキルヒドロペルオキシド類としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド及びクミルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
無機過酸化物として、例えば、Ba、Ca、Mg、Zn等の過酸化物等が挙げられる。
有機ケイ素過酸化物として、例えば、Si−O−O−Si型、Si−O−O−C型、Si−O−O−R(アルキル基)型の化合物等が挙げられる。
チオール化合物として、例えば、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン、3‐メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、チオリンゴ酸、2―メルカプトエタノ−ル、2−メルカプトプロピオン酸、チオジグリコ−ル、チオグリセロ−ル、2−アミノ−3−メルカプト−1−プロパノ−ル、4,6−ジアミノピリミジン−2−チオ−ル、2−アミノ−3−メルカプトプロピオン酸、4−アミノチオフェノ−ル、3−アミノ−N−(2−メルカプトエチル)プロピオンアミド、6−アミノ−2−チオウラシル、2−アミノ−4−クロロベンゼンチオ−ル、1−アミノ−2−メチル−2−メルカプトプロパン−1−カルボン酸、等の2個以上の重合性官能基を有し、かつ該重合性官能基の1つがチオール基である化合物が挙げられる。
それ以外のチオール化合物としては、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジチオエリスリトール、2,3−ジメルカプトサクシン酸、1,2−ベンゼンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、3,4−ジメルカプトトルエン、o−,m−あるいはp−キシレンジチオール、4−クロロ−1,3−ベンゼンジチオール、2,4,6−トリメチル−1,3−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオジフェノール、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−メルカプトプロポキシフェニルプロパン)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、2−(ジメチルアミノ)−1,3−プロパンビスチオール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、等の2個以上の重合性官能基を有し、かつ該重合性官能基の2個がチオール基である化合物が挙げられる。
さらに、それ以外のチオール化合物としては、例えば、1,2,6−ヘキサントリオールトリチオグリコレート、1,3,5−トリチオシアヌル酸、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリヒドロキシエチルトリイソシアヌール酸トリスチオプロピオネート、トリス−[(エチル−3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート、等の3個以上の重合性官能基を有し、かつ該重合性官能基の3個がチオール基である化合物が挙げられる。
さらにそれ以外のチオール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスー3−メルカプトプロピオネート、等の4個以上の重合性官能基を有し、かつ該重合性官能基の4個以上がチオール基である化合物が挙げられる。
キノン及びキノンジオキシム誘導体としては、例えば、p−キノン、p−キノンジオキシム等が挙げられる。
ヒドロペルオキシドとしては、脂肪族及び脂環式飽和ヒドロペルオキシド、芳香族側鎖にOOH基を有するヒドロペルオキシドが挙げられる。ヒドロペルオキシドとしては、例えば、メチルヒドロペルオキシド、エチルヒドロペルオキシド、プロピルヒドロペルオキシド、ブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルヒドロペルオキシド、イソブチルヒドロペルオキシド、ヘキシルヒドロペルオキシド、オクチルヒドロペルオキシド、デシルヒドロペルオキシド、シクロペンチルヒドロペルオキシド、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、ベンジルヒドロペルオキシド、1−フェニルエチルヒドロペルオキシド、ジフェニルメチルヒドロペルオキシド、トリフェニルメチルヒドロペルオキシド、テトラリンヒドロペルオキシド、9−フルオレニルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
開環重合反応に用いられる熱重合開始剤(c)としては、マイクロカプセル中に酸や塩基を含有する重合開始剤が充填された潜在性熱重合開始剤等が好ましい。潜在性熱重合開始剤は、加熱によってマイクロカプセルが破壊することで、その内部の重合開始剤が流出することにより硬化を開始できる。市販品としては、旭化成ケミカルズ社製、「ノバキュア」(登録商標)等を用いることが好ましい。
熱重合開始剤(c)は、樹脂(a)や上記不飽和結合を有する有機化合物(b)との混合の容易性の観点から、20℃において液状であることが好ましい。
熱重合開始剤(c)の含有量は、樹脂組成物の全体量に対し、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上5質量%以下である。熱重合開始剤の含有量が上記範囲内であれば、樹脂組成物を十分に硬化させることができ、かつ経済性に優れる。
熱重合開始剤(c)の熱安定性は、通常、10時間半減期の温度(10h−t1/2)の方法によって評価することができる。10時間半減期温度とは、有機過酸化物の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間が10時間となる温度のことをいう。10時間半減期温度が高いほど、有機過酸化物の分解が起こりにくい。
10時間半減期温度は、下記の方法により測定できる。被測定有機過酸化物をトルエン等の溶媒に溶解させて、所定濃度の被測定有機過酸化物の溶液を調製し、この溶液を窒素置換したガラス管中に密閉する。このガラス管を所定温度Tにした恒温槽に浸して、有機過酸化物を熱分解させる。分解した有機過酸化物の濃度をx[mol/L]、分解速度係数をK[s-1]、時間をt[s]、有機過酸化物の初期濃度をa[mol/L]とすると、下記式が成り立つ。
dx/dt=K(a−x)
ln{a/(a−x)}=K・t
従って、ln{a/(a−x)}とtの関係をプロットすることで、温度Tにおける分解速度係数Kが求まる。
10時間半減期温度は、10時間で有機過酸化物濃度が初期の半分に減ずるときの温度であるから、上記式にx=a/2、t=3.6×104を代入して、上記式で求めた分解速度係数Kの値となるときの温度である。一方、分解速度係数Kは、頻度因子A[1/h]、活性化エネルギーΔE[J/mol]、気体定数R[8.314J/(mol・K)]、絶対温度T[K]とすると、下記式が成り立つ。
K=Aexp(−ΔE/RT)
lnK=lnA−ΔE/RT
従って、数点の温度についてKを測定し、lnK〜1/Tの関係をプロットし、得られた直線の傾きから、活性化エネルギーΔE、切片からAが求められる。ここで、温度Tと分解速度係数Kをプロットして10時間半減期温度を求めることができる。
熱重合開始剤(c)の10時間半減期の温度の下限は、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。10時間半減期の温度の上限は、好ましくは150℃以下である。熱重合開始剤(c)の10時間半減期の温度を上記範囲とすることにより、貯蔵安定性に優れ、かつ成形時や硬化時に樹脂組成物の粘度が下がることがなく容易に成形することができる。
[カーボンブラック(d)]
本実施の形態で用いる樹脂組成物は、近赤外線領域に波長を持つレーザーを用いた高精細な印刷原版及び印刷版を作製する観点からカーボンブラック(d)を含むことが好ましい。
一般に、前記樹脂(a)や不飽和結合を有する有機化合物(b)等の有機化合物は、近赤外線領域のレーザー発振波長に対応する吸収度が低い。そのため、近赤外線領域に波長を持つレーザーを用いて印刷版を製造するためには、当該レーザーの波長領域に吸収を有するレーザー吸収剤を含有させることが好ましい。このようなレーザー吸収剤としては、近赤外線領域に波長を持つレーザーに対する吸光度や、取扱いの容易さ等の観点から、カーボンブラックが好ましい。
さらに、カーボンブラックを樹脂組成物に配合することで、印刷原版にレーザー彫刻を行う際の彫刻閾値(濃淡画像(グレーピクセル)を黒又は白に判別する基準濃度)を下げることができる。
カーボンブラック(d)の平均1次粒径は、35nm〜70nmが好ましい、より好ましくは40nm〜68nmである。樹脂組成物中における良好な分散性を確保するという観点から、カーボンブラック(d)の平均1次粒径は35nm以上であることが好ましく、高解像度なレーザー彫刻を行うという観点から70nm以下であることが好ましい。カーボンブラック(d)の平均1次粒径は、電子顕微鏡解析における算術平均径の結果から算出できる。
カーボンブラック(d)のpHは、好ましくは1以上6以下であり、より好ましくは2以上5.9以下であり、さらに好ましくは2.5以上5.8以下であり、よりさらに好ましくは3以上5.6以下である。カーボンブラックのpHを、上記範囲とすることにより樹脂組成物の粘度が低くなり、製造効率の観点から好ましい。また、カーボンブラック(d)のpHは、ASTM D1512に準じて測定できる。
カーボンブラック(d)は市販品を用いることができる。その具体例としては、東海カーボン社製「TB#A700F」(平均1次粒径62nm、pH3)(商標)、三菱化学社製「MA220」(平均1次粒径55nm、pH3)(商標)、三菱化学社製「MA14」(平均1次粒径40m、pH3)(商標)、Degussa社製「Special Black100」(平均1次粒径50nm、pH3)(商標)、Degussa社製「Special Black250」(商標)(平均1次粒径56nm、pH3)、東海カーボン社製「シーストG−SO」(平均1次粒径43nm、pH5.6)(商標)、東海カーボン社製「シーストG−SVH」(平均1次粒径62nm、pH5)(商標)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の樹脂組成物中のカーボンブラック(d)の含有量は、樹脂組成物全体量に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、3質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。良好なレーザー彫刻性を確保する観点から1質量%以上が好ましく、印刷原版及び印刷版の製造効率の観点から50質量%以下が好ましい。そして、カーボンブラック(d)の含有量を50質量%以下とすることで、樹脂組成物の高粘度化を抑制できるため製造性や取り扱い性をさらに向上させることができる。
[添加剤]
本実施の形態の樹脂組成物は、用途や目的に応じて、重合禁止剤、紫外線吸収剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料等を添加することができる。重合禁止剤としては、例えば、アミド系、ヒドラジド系等の重金属不活性化剤、有機Ni系等のクエンチャー、ヒンダードピペリジン系等のHALS、ヒンダードフェノール系、セミヒンダードフェノール系等のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系、ホスホナイト系リン系等の酸化防止剤、チオエーテル系、イオウ系等の酸化防止剤が挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。かかる重合禁止剤は、市販品を用いることができ、例えば「UV22」(チバスペシャリティケミカル社)等が好適に用いられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が挙げられる。
[冷却工程]
本実施の形態の印刷原版の製造方法は、樹脂層を導電性支持体上に形成した後に、高周波誘導加熱により加熱された導電性支持体と樹脂組成物の少なくともいずれかを冷却する工程を、さらに含むことが好ましい。これにより生産効率を向上することができる。冷却の方法は特に限定はしないが、空冷、水冷等の方法が挙げられる。
[研削・研磨工程]
本実施の形態の印刷原版の製造方法は、樹脂層を導電性支持体上に形成した後に、樹脂層表面を、研削若しくは研磨、又はその両方を行うことが好ましい。これにより、より優れた平面平滑性を印刷原版に付与できる。
樹脂層表面の研削加工の方法としては、特に限定されないが、例えば、砥石による加工方法等が挙げられる。研削砥石の材質については、特に限定されるものではないが、例えば、アルミナ系や炭化ケイ素系の材質が挙げられる。アルミナ系の材質としては、褐色アルミナ、白色アルミナ、淡紅色アルミナ、解砕形アルミナ等が挙げられ、炭化ケイ素系の材質としては、黒色炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素等が挙げられる。
研削加工に用いられる研削砥石の砥粒の粒度については、粒度番号8番以上5000番以下の砥石が好ましい。砥粒を結合させる結合剤の主要成分としては、例えば、長石可溶性粘度・フラックス、ベークライト人造樹脂、珪酸ソーダフラックス、天然・人造ゴム・硫黄、セラック天然樹脂、金属箔等が挙げられる。
研磨加工に用いる研磨体としては、特に限定されないが、例えば、研磨紙、ラッピングフィルム、ミラーフィルム等の研磨フィルム、研磨ホイールが挙げられる。
研磨紙や研磨フィルム表面上の研磨剤の材質としては、金属微粒子、セラミックス、炭素化合物からなる群より選択される少なくとも1種類の微粒子が好ましい。
金属微粒子としては、例えば、クロム、チタン、ニッケル、鉄等の比較的硬質の材料等が挙げられる。
セラミックスとしては、例えば、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、珪酸ジルコニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。アルミナ質砥粒の素材質としては、例えば、褐色アルミナ質、解砕型アルミナ質研摩剤、淡紅色アルミナ質研摩剤、白色アルミナ質研削剤、人造エメリー研削剤等が挙げられる。炭化ケイ素質砥粒の素材質としては、例えば、黒色炭化ケイ素質研磨剤、緑色炭化ケイ素質研摩剤等が挙げられる。
炭素化合物としては、例えば、ダイヤモンド、グラファイト等の化合物が挙げられる。特に、人造ダイヤモンドは研磨剤として好ましい。
他の研磨剤の材質として、ガラスビーズ等のガラス系研磨剤、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、メチルメタルアクリレート等の樹脂系研磨剤、クルミ殻、杏の種、桃の種等の植物系研磨剤も用いることができる。
さらに、上記研磨剤と研磨布を組み合わせて用いてもよい。
上述した研磨剤の数平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上100μm以下であり、より好ましくは3μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは9μm以上30μm以下である。研磨剤の数平均粒子径が上記数値範囲であれば、印刷品質が良好な版面を簡易に形成できる。研磨剤の数平均粒子径はJIS R6001の方法により測定できる。
研磨ホイール表面の粒度としては、60番から8000番が好ましい。研磨ホイールの材質としては、特に限定されるものではないが、鉄、アルミナ、セラミックス、炭素化合物、砥石、木、ブラシ、フェルト、コルク等が挙げられる。
研磨紙や研磨フィルムや研磨ホイール等を支持する支持体の厚みは、特に制限するものではないが、1μm以上1000μm以下が好ましく、10μm以上500μmがより好ましく、25μm以上125μm以下がさらに好ましい。支持体の厚みを上記範囲とすることで巻き取り等の取り扱い性が簡便になる。支持体の形状は、特に制限するものではないが、ロール、ディスク、シート、ベルト等であってもよい。
研磨工程は、液体を介在させない乾式研磨でもよいが、研磨力、研磨後の印刷原版表面の均一性、粉塵の発生が少ないこと、研磨中に発生する熱の除去等の観点から、液体を介在させながら印刷原版に研磨剤を接触させて研磨を行う方法が好ましい。使用する液体としては、特に限定されないが、例えば、石油、機械油、アルカリ溶液、水等が挙げられる。それらの中でも、印刷原版及び印刷版の変性が少なくなり、廃液の処理も容易となる観点から、水が好ましい。
印刷原版又は印刷版の表面調整方法として、金属、セラミックス、炭素化合物等から選択される少なくとも1種類の物質からなる、数平均粒子径が0.1μm以上100μm以下程度の微粒子を、印刷原版又は印刷版の表面に衝突させる方法も挙げられる。微粒子を印刷原版又は印刷版に衝突させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、サンドブラスト、ショットブラスト、エアーブラスト、ブロワブラスト等が挙げられる。
微粒子の材質としては、特に限定されないが、例えばガラスビーズ等のガラス系粒子、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、メチルメタアクリレート等の樹脂系粒子、クルミ殻、杏の種、桃の種等の植物系粒子等が挙げられる。
このようにして得られる印刷原版は、導電性支持体と、前記導電性支持体の表面上に形成された、樹脂層と、を含み、前記樹脂層は、前記導電性支持体を高周波誘導加熱することによって、前記導電性支持体の表面上に配置された熱硬化性樹脂組成物が、前記導電性支持体と接する面側から加熱されて硬化することにより形成された、印刷原版である。
[印刷版の製造方法]
本実施の形態の印刷版の製造方法は、樹脂組成物を導電性支持体の表面上に配置する工程と、前記導電性支持体を高周波誘導加熱することにより、前記樹脂組成物を前記導電性支持体と接する面側から加熱し硬化させて、前記導電性支持体上に樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層に、レーザー彫刻若しくは電子彫刻、又はその両方を用いて印刷パターンを形成する工程と、を含むものである。本実施の形態では、本実施の形態の印刷原版の樹脂層にレーザー彫刻若しくは電子彫刻、又はその両方を用いることにより、所定の凹凸パターンを樹脂層に形成することで、印刷版とすることができる。
[レーザー彫刻]
レーザー彫刻法により印刷原版に凹凸パターンを形成して印刷版を得る場合、形成したい画像をデジタルデータとして、コンピューターを利用してレーザー装置を操作し、印刷原版にレリーフ画像を作成する。
レーザー彫刻に用いるレーザーは、印刷原版の樹脂層が吸収する波長を含むものであればよく、どのようなものを用いてもよい。
彫刻を高速度で行うためには、高出力のものが好ましく、炭酸ガスレーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等の赤外線あるいは赤外線放出固体レーザーが好ましい。
レーザーの波長としては、高い解像度を実現するため、ファイバーレーザーのようなレーザー波長が2μm以下のものが好ましい。
また、可視光線領域に発振波長を有するYAGレーザーの第2高調波、銅蒸気レーザー、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えばエキシマレーザー、第3あるいは第4高調波へ波長変換したYAGレーザーは、有機分子の結合を切断するアブレージョン加工が可能であり、微細加工に好適である。
レーザーの照射方法は、連続照射でもパルス照射でもよい。レーザー彫刻は、通常、酸素含有ガス下(空気存在下又は気流下等)で行われるが、炭酸ガス下や窒素ガス下でも行うこともできる。
[電子彫刻]
電子彫刻法により印刷原版に凹凸パターンを形成して印刷版を得る場合、鋭利なダイヤモンドの先端により樹脂を直接削って凹凸のパターンをつける。電子彫刻の方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
[洗浄処理]
彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状、液状の物質は、例えば溶剤や界面活性剤の入った水等で洗浄したり、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射したりする方法、高圧スチームを照射する方法等により除去できる。
[表面処理]
本実施形態の印刷版は、研磨後もしくはレーザー彫刻後、表面に所定の改質層を形成させることにより、印刷版のタックを低減させたり、インク濡れ性を向上させたりすることができる。改質層としては、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤等の表面水酸基と反応する化合物で処理した被膜や、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜等が挙げられる。
[印刷版の用途]
本実施形態の印刷版は、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、ドライオフセット印刷、ロータリースクリーン印刷等に適用できる。また、印刷版を鋳型として使用して、印刷版表面と、所定の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂とを接触させ、パターンの転写を行ってもよい。
図2は、本実施の形態の印刷原版の製造装置の一態様における、樹脂組成物を配置する機構の概略構成を示す上面模式図である。図3は、図2における導電性支持体とドクターブレードとの関係を説明する側面模式図である。図4は、本実施の形態の印刷原版の製造装置の一態様における、樹脂組成物を硬化させる機構の概略構成を示す上面模式図である。図5は、本実施の形態の印刷原版の製造装置の一態様における、樹脂組成物を硬化させる機構の概略構成を示す側面模式図である。本実施の形態の印刷原版の製造装置は、中空円筒状の導電性支持体10a、前記導電性支持体を保持する保持部50a,50aと、前記導電性支持体10aの外周表面上に樹脂組成物を配置する手段と、前記導電性支持体10aを高周波誘導加熱する加熱用コイル30a,30aと、を備える。そして、インバーター40aにより加熱用コイル30aに流れる電流を制御する。
導電性支持体10aの外周表面上に熱硬化性樹脂組成物20aを配置する手段としては、特に限定されないが、例えば、ドクター塗工法により行うことができる。例えば、図2では、中空円筒状の導電性支持体10aを、回転機構を備えた保持部50a,50aで保持する。次に、ドクターブレード60aと導電性支持体10aとの隙間に、ディペンサー等の手段を用いて熱硬化性樹脂組成物20aを供給しつつ、導電性支持体10aを周方向(矢印R参照)に回転させながら熱硬化性樹脂組成物20aを導電性支持体10aの表面上に配置する。このとき、導電性支持体10a上に配置されずに余った樹脂組成物を回収するためのサイドダム62a,62aを、ドクターブレード60aの両側に夫々配置することが好ましい。ドクターブレード60aによって導電性支持体10aの表面からかき出された樹脂組成物を、サイドダム62aにより回収できる。
導電性支持体の外周表面上に樹脂組成物を配置させる方法としては、他にも導電性支持体を回転させながらディスペンサーでスパイラル上に配置させる方法、押出ダイを用いて配置させる方法、樹脂組成物中に導電性支持体を直接浸漬させる方法等が挙げられる。
続いて、表面に熱硬化性樹脂組成物20aが配置された導電性支持体10aを周方向(矢印R参照)に回転させながら、加熱用コイル30a,30aを用いて導電性支持体10aを高周波誘導加熱する。これにより導電性支持体10aが加熱され、熱硬化性樹脂組成物20aを導電性支持体側から加熱することができる。この場合、導電性支持体10aの外周表面に沿って配置された、複数の加熱用コイルを備えることが好ましい。これにより、効率よくかつ均一に樹脂組成物を加熱できる。特に、側面視した状態で、導電性支持体10aを挟んで対向する位置に2体の加熱用コイル30a,30aを配置することが、より好ましい(図4参照)。
本実施の形態の印刷原版の製造装置は、前記導電性支持体10aを周方向(矢印R参照)に回転させる手段を、さらに含むことが好ましい。導電性支持体10aを回転させることで、導電性支持体10aの外周表面にわたり熱硬化性樹脂組成物20aを均一な厚さに配置できるとともに、樹脂組成物をより均一に加熱できる。回転させる手段は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、保持部50a,50aをコーン状の形状とし、これを回転させることにより、導電性支持体10aを周方向に回転させることができる。
また、本実施の形態の印刷原版の製造装置において、加熱用コイルの配置や構成は限定されず、使用条件や目的等を考慮して適宜選択できる。図6は、本実施の形態の印刷原版の製造装置の別の態様における、樹脂組成物を硬化させる機構の概略構成を示す側面模式図である。図6に示すように、加熱用コイル30bが、導電性支持体10bの外周表面を取り囲むように配置されていてもよい。そして、図6に示すように側面視した状態で、導電性支持体10bの外側に同心配置された加熱用コイル30bとしてもよい。そして、加熱用コイル30bは、インバーター40bによって制御される。これにより導電性支持体10b上に配置された熱硬化性樹脂組成物20bを硬化させることができる。
以下の実施例により本実施の形態をさらに詳しく説明するが、本実施形態は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(1)樹脂(a)の数平均分子量の測定
後述する製造例で調製した樹脂(a)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。具体的には、東ソー社製の高速GPC装置「HLC−8020」(商標)と東ソー社製のポリスチレン充填カラム「TSKgel GMHXL」(商標)とを用い、テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料として、樹脂濃度が1質量%のTHF溶液を調製し、THF溶液10μLをGPC装置に注入した。また、検出器としては、紫外吸収検出器を用い、モニター光として254nmの光を用いた。
(2)重合性不飽和基の数の測定
後述する製造例で調製した樹脂(a)の分子内に存在する重合性不飽和基の数は、液体クロマトグラフ法を用いて樹脂(a)中の未反応の低分子成分を除去した後、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法、NMR装置:Bruker Biospin社製「Avance 600」(商標))を用いて分子構造解析して求めた重合性不飽和基の平均数とした。
(3)印刷原版のべとつき・未硬化樹脂膜厚の測定
後述する印刷原版の製造方法により得られた製造原版の表面に触れ、樹脂のべとつきの有無を確認した。そして、印刷原版を50mm四方の大きさに切り取りサンプルとした。このサンプル表面の未硬化状態の樹脂を、アセトンを染みこませた不織布で拭き取り、拭き取り前とふき取り後の印刷原版の質量を夫々測定した。そして、以下の式(1)を用いて未硬化樹脂膜の厚みを算出した。
未硬化樹脂膜の厚み(cm)=(拭き取り前の印刷原版の質量(g)−拭き取り後の印刷原版の質量(g))/樹脂の比重(g/cm3)/印刷原版の面積(cm2)/10000 (1)
[印刷原版及び印刷版の製造方法]
(1)印刷原版の製造方法
後述する実施例において調整した樹脂組成物を導電性支持体の表面に塗工し、高周波誘導加熱又は恒温槽により、樹脂温度が140℃、15分の条件で加熱を行った。導電性支持体として、10mmの肉厚を有する鉄製の中空円筒状支持体を用いた。
[製造例1]
規則充填物ヘリパックパッキンNo.3(竹中金網株式会社製)を充填した蒸留塔(充填高さ300mm、内径30mm)と、分留塔と、を備えた500mLの四口フラスコに、ジエチレングリコール214g(2.01mol)、エチレンカーボネート186g(2.12mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解した。続いて、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタンを0.177g加えた。このフラスコを、内温145〜150℃、圧力2.5〜3.5kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながら、オイルバスで加熱し、22時間反応させた。その後、充填式蒸留塔を外して、単蒸留装置に取り替え、フラスコの内温を170℃に上げ、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったジエチレングリコールとエチレンカーボネートを1時間かけて留去した。さらにその後、フラスコの内温170℃、圧力0.1kPaとし、さらに5時間反応を行った。この反応により、室温で粘稠な液状の粗ポリカーボネートジオールが174g得られた。ポリカーボネートジオールの確認は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)により行った。
得られたポリカーボネートジオールのOH価は、60.9(数平均分子量:Mn=1843)であった。
OH価は、以下の方法により測定した。
無水酢酸12.5gをピリジン50mLでメスアップし、アセチル化試薬を調製した。そして、100mLのナスフラスコに、サンプル(ポリカーボネートジオール)を1.0g精秤した。次に、アセチル化試薬2mLとトルエン4mLを、ホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1時間撹拌加熱した。その後、蒸留水1mLをホールピペットで添加し、さらに10分間加熱撹拌した。2〜3分間冷却後、エタノールを5mL添加し、指示薬として1%フェノールフタレイン/エタノール溶液を2〜3滴入れた。その後、0.5mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定した。また、空試験としてアセチル化試薬2mL、トルエン4mL、蒸留水1mLを、100mLナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌し、その後、同様に滴定を行った。
この結果をもとに、下記数式(2)を用いてポリカーボネートジオールのOH価を計算した。
OH価(mgKOH/g)={(b−a)×28.05×f}/e (2)
a:サンプルの滴定量(mL)
b:空試験の滴定量(mL)
e:サンプル質量(g)
f:滴定液のファクター
次に、撹拌機を備えた300mLのセパラブルフラスコに、上記のようにして合成した粗ポリカーボネートジオール65.0g、リン酸モノブチル0.05gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。
そして、トリレンジイソシアネート(商品名「コロネートT80」、日本ポリウレタン工業社製)4.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(商品名「アイオノールCP」、ジャパンケムテック社製)0.07g、アジピン酸(旭化成ケミカルズ社製)0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート(東京化成工業社製)0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で80℃の条件下で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名「カレンズMOI」、昭和電工社製)2.77g、ジ−n−ブチルスズジラウレート(東京化成工業社製)0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で80℃の条件下で2時間撹拌した。
この段階で、赤外分光分析によりポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ二重結合を有すことを確認し、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1.8個)であり、数平均分子量約7000の樹脂(a)を調製した。
さらに樹脂(a)70質量部、不飽和結合を含む有機化合物(b)としてフェノキシエチルメタクレート(数平均分子量206)10質量部、もう一つの有機化合物(b)としてトリメチロールプロパントリメタクリレート(数平均分子量338.4)9質量部、熱重合開始剤(c)として、日本油脂株式会社製の1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)パーシクロヘキサン「パーヘキサC−75(EB)」(商標)1質量部、カーボンブラック(d)として東海カーボン社製のカーボンブラック「TB#A700F」(商標)(平均1次粒径62nm、pH3)10質量部を加え、50℃の温度条件下で攪拌しながら13kPaに減圧して脱泡し、粘稠な液体状の樹脂組成物Aを得た。
[製造例2]
樹脂(a)とて旭化成ケミカルズ社製のポリブタジエンゴム「ジエン531」(商標)70質量部、不飽和結合を含む有機化合物(b)としてフェノキシエチルメタクレート(数平均分子量206)10質量部、もう一つの不飽和結合を含む有機化合物(b)としてトリメチロールプロパントリメタクリレート(数平均分子量338.4)9質量部、熱重合開始剤(c)として、日本油脂株式会社製の1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)パーシクロヘキサン「パーヘキサC−75(EB)」(商標)1質量部、カーボンブラック(d)として東海カーボン社製のカーボンブラック「TB#A700F」(商標)(平均1次粒径62nm、pH3)10質量部を加え、50℃の温度条件下で攪拌しながら13kPaに減圧して脱泡し、粘稠な液体状の樹脂組成物Bを得た。
[実施例1]
図1に示す中空円筒状の導電性支持体(鉄製、直径:160mm、肉厚:10mm)上で、製造例1で得られた樹脂組成物Aを、あらかじめ50℃に加温しておき、中空円筒状支持体を3rpmで回転させながら、ドクター塗工法によって厚さ1mmになるように、配置した。次に、導電性支持体及び樹脂組成物Aを回転させながら、図1のように中空円筒状の導電性支持体の外側からハイデック社製の加熱用コイルを用いて高周波誘導加熱を行った。加熱の条件は、樹脂組成物が配置された中空円筒状導電性支持体を20rpmで回転させながら、樹脂の温度を140℃となるように15分保持し、樹脂組成物を硬化させ、樹脂層とした。このとき、円筒状支持体と加熱用コイルの距離は10mmであった。そして、中空円筒状の支持体と樹脂層を25℃になるまで空冷した。
得られた製造原版の樹脂層の表面にはべとつきはなかった。未硬化樹脂の厚みは2μmであった。また、得られた製造原版の樹脂層の厚みのばらつきは50μmであった。ここで、厚みのばらつきは、得られた製造原版の樹脂層の厚さをノギス(ミツトヨ社製)により直径を測定し、樹脂層の厚みを下式から算出し、最も厚い部分と最も薄い部分との差を算出した。
樹脂層の厚み=(樹脂層配置後の直径−樹脂層配置前の支持体の径)/2
[実施例2]
ニッケル製の中空円筒状の導電性支持体を用いた以外は、実施例1と同様の条件で製造原版を製造した。得られた製造原版の樹脂層の表面にはべとつきはなかった。未硬化樹脂の厚みは2μmであった。また、厚みのばらつきは70μmであった。
[実施例3]
樹脂組成物Bを用いた以外は実施例1と同様の条件で製造原版を製造した。得られた製造原版の樹脂層の表面にはべとつきはなかった。未硬化樹脂の厚みは2μmであった。また、得られた製造原版の樹脂層の厚みのばらつきは70μmであった。
(比較例1)
導電性支持体として非導電性支持体の繊維強化プラスチックを用いた以外は実施例1と同様の条件で製造原版の製造を試みた。しかし、高周波誘導加熱では樹脂組成物を加熱できず、樹脂組成物は硬化しなかった。
(比較例2)
加熱方法として、いすゞ製作所社製の恒温槽「EPR−1440−2T」を用いて温度140℃、30分保持し、樹脂組成物を硬化させた以外は、実施例1と同様の条件で製造原版を製造した。得られた製造原版の樹脂層の表面はべとつき、未硬化樹脂の厚みは32μmあった。また、得られた硬化物は厚みのばらつきは2mmであった。
各実施例で得られた製造原版は、樹脂層の表面にべとつきはなく、かつ樹脂層の厚みが均一であった。各比較例においては、樹脂が硬化しない、硬化しても表面のべとつきがあり、樹脂層の厚みが均一でなかった。以上より、本実施例の製造方法により得られた印刷原版は、経済性に優れ、製造原版の生産性が高く、印刷原版の樹脂層の表面がべとつかず、樹脂層の厚さが均一であった。
本発明により得られる印刷原版及び印刷版は、グラビア印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷等の各種印刷版;電子部品の導体、半導体、絶縁体のパターン形成用材料;光学部品の反射防止膜、カラーフィルター、(近)赤外線カットフィルター等の機能性材料のパターン形成用材料;液晶ディスプレイあるいは有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の表示素子の製造における配向膜、下地層、発光層、電子輸送層、封止材層の塗膜・パターン形成用材料;プラズマディスプレイパネルの電極印刷用材料;版面形成用材料等として、産業上の利用可能性がある。
10,10a,10b 導電性支持体
20,20a,20b 樹脂組成物
30,30a,30b 高周波誘導加熱用コイル(加熱用コイル)
40,40a,40b インバーター
50a 保持部
60a ドクターブレード
62a サイドダム

Claims (9)

  1. 熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体の表面上に配置する工程と、
    前記導電性支持体を高周波誘導加熱することにより、前記熱硬化性樹脂組成物を前記導電性支持体と接する面側から加熱し硬化させて、前記導電性支持体上に前記熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる樹脂層を形成する工程と、
    を含む印刷原版の製造方法。
  2. 前記導電性支持体は、中空円筒状支持体である請求項1に記載の印刷原版の製造方法。
  3. 前記熱硬化性樹脂組成物は、樹脂と、不飽和結合を有する有機化合物と、を含む請求項1又は2に記載の印刷原版の製造方法。
  4. 前記熱硬化性樹脂組成物は、熱重合開始剤を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷原版の製造方法。
  5. 前記熱硬化性樹脂組成物は、カーボンブラックを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の印刷原版の製造方法。
  6. 熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体の表面上に配置する工程と、
    前記導電性支持体を高周波誘導加熱することにより、前記熱硬化性樹脂組成物を前記導電性支持体と接する面側から加熱し硬化させて、前記導電性支持体上に前記熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる樹脂層を形成する工程と、
    前記樹脂層に、レーザー彫刻若しくは電子彫刻、又はその両方を用いて印刷パターンを形成する工程と、
    を含む印刷版の製造方法。
  7. 導電性支持体と、
    前記導電性支持体の表面上に形成された、樹脂層と、を含み、
    前記樹脂層は、前記導電性支持体を高周波誘導加熱することによって、前記導電性支持体の表面上に配置された、熱硬化性樹脂組成物が、前記導電性支持体と接する面側から加熱されて硬化することにより形成された、印刷原版。
  8. 中空円筒状の導電性支持体と、
    前記導電性支持体を保持する保持部と、
    前記導電性支持体の外周表面上に、熱硬化性樹脂組成物を配置する手段と、
    前記導電性支持体を高周波誘導加熱する加熱用コイルと、
    を少なくとも備える印刷原版の製造装置。
  9. 前記導電性支持体を周方向に回転させる手段を、さらに備える請求項8に記載の印刷原版の製造装置。
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