JP5408014B2 - 接触角の測定方法およびこれを用いたナノインプリント方法 - Google Patents
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Description
上記のナノインプリント技術の一つの方法として、光インプリント法が知られている。この光インプリント法では、例えば、基板表面に被加工物として流動性を有する光硬化性の樹脂液滴を供給し、この樹脂液滴に所望の凹凸構造を有するモールドを押し当てて樹脂層とする。そして、この状態で樹脂層に光を照射して硬化させ、その後、モールドを樹脂層から引き離す。これにより、モールドが有する凹凸が反転した凹凸構造(凹凸パターン)を被加工物である樹脂層に形成することができる(特許文献2)。このような光インプリントは、従来のフォトリソグラフィ技術では形成が困難なナノメートルオーダーの微細パターンの形成が可能であり、次世代リソグラフィ技術として有望視されている。
しかし、このようなナノインプリント方法では、モールドが基板表面に対向する領域全体に樹脂液滴を押し広げてモールドの凹部を埋めるのに長い時間を要する場合があり、スループットの低下を生じるという問題があった。このような問題を解決するために、基板表面に樹脂液滴を供給するときに、樹脂液滴の数が最大となる(隣接する樹脂液滴の間隔が最小となる)ように必要な樹脂量を分配することが提案されている(特許文献3)。
一方、ノズルの先端から液滴へ一定流量の液体を押し出して液滴の界面を変化させ、また、ノズルの先端から液滴の液体を引き込み液滴の界面を変化させることにより、前進接触角、後退接触角を計測する従来の接触角の測定方法では、上記のような固体(測定対象物)の制限がない。しかし、このような測定方法では、本来ならば、ノズル先端部は液滴の中心部にあって、側方から液滴を観察したときに、左右対称に形状変化するのが好ましいが、機械精度の問題や、固体表面の形状、ノズルと液滴との濡れ性により、液滴の形状変化は左右対称になるとは限らない。このため、前進接触角、後退接触角を得るためには、得られた計測データと計測画像を確認し、人間が値の真偽を判定せざるを得ず、個人の主観により測定値がばらつくという問題があった。また、液滴を大きくすることにより、ノズルの影響を抑制して左右対称に形状変化させることができるが、液滴が大きくなると、液滴の自重により計測値の誤差が大きくなるという問題があった。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、測定誤差が抑制でき、計測再現性のある接触角の測定方法と、この接触角の測定方法で得られた値を用いて高精細なパターン形成を高スループットで安定して行えるナノインプリント方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記ノズルの先端部から前記液滴の周縁部までの距離が均一ではないときに、前記液滴の周縁部のうち、前記ノズルの先端部までの距離が最大となる部位における接触角を計測するような構成とした。
また、本発明のナノインプリント方法では、樹脂層に気泡が混入することが防止され、また、モールドの凹部への樹脂の充填が速やかに行われ、高精細なパターンを高スループットで安定して形成することができる。
[接触角の測定方法]
図1は、本発明の接触角の測定方法の一実施形態の手順を示すフローチャートである。
本発明では、まず、ノズル先端から固体表面に液体を吐出、あるいは、固体表面上の液滴をノズル先端から引き込む(ステップ1(S−1))。
本発明で使用するノズルは、注射針、ガラス毛細管、樹脂製細管等を挙げることができ、例えば、内径が0.1〜2.0mmの範囲にあり、外径が内径に対して0.1〜1.0mm大きいノズルを使用することができ、接触角を測定する対象液体に応じて、適宜選択することができる。ノズルの内径が0.1mm未満であると、下記のような適正な液量での吐出、あるいは、引き込みが困難になったり、液流が強く、接触角の測定精度に悪影響を与えることがあり、また、ノズルの内径が2.0mmを超えると、ノズルの外径が大きくなり、接触角の測定精度に悪影響を与えることがある。但し、ノズル形状は計測を行う液体の粘度、揮発性等の性質に応じて設定されるものであり、上記の数値範囲に限定されるものではない。
ノズルの材質は、計測する液体の極性や溶解性により適宜選択され、金属、合金、ガラス、セラミックスや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の樹脂、および、これらの複合材のいずれであってよい。
また、ノズル先端から固体表面へ液体を吐出する方向、あるいは、固体表面上の液滴をノズル先端から引き込む方向は、固体表面に対して90°であることが好ましく、少なくとも90±2°の範囲となるように設定する。吐出方向、引き込み方向が上記の範囲を超えて固体表面に対して傾斜すると、ノズル先端からの液流、あるいは、ノズル先端への液流が液滴の全方位で均等にならず、液滴の形状変化に差異が生じ易くなり、接触角の測定精度に悪影響を与えることとなり好ましくない。
そして、ノズル先端部と液滴の中心位置が一致している場合は、前進接触角および後退接触角を時間毎に計測し(ステップ3(S−3))、次いで、時間に対する計測値の変化が無い(0次関数)、あるいは、1次の関数となる領域と、それ以外の領域とに分割し(ステップ5(S−5))、この分割した閾値を前進接触角あるいは後退接触角とする(ステップ6(S−6))。閾値の算出については、後述する。
尚、ノズル先端部と液滴の中心位置が一致しているか否かの判定は、ノズルの先端部(内径中心)から液滴の周縁部までの距離の観察し、最小距離が最大距離の90%以上であれば、ノズル先端部と液滴の中心位置が一致していると判定し、90%未満である場合を、ノズル先端部と液滴の中心位置が一致していないと判定する。
図2は、本発明の接触角の測定方法において、前進接触角を測定する場合を説明するための時間に対する接触角の変化を示すグラフである。本発明の前進接触角の測定では、ノズル先端から一定流量の液体を固体表面に吐出して液滴を形成しながら、液滴の側方を観察して固体表面に対する液滴の接触角を所定の時間毎、例えば、0.001〜1.000秒間隔で計測する。この計測時間間隔は、液滴の大きさや液体の吐出量を考慮して適宜設定する。図2は、このような時間T(秒)に対する接触角θ(度)の計測値の変化を示すグラフである。図2に示される例では、測定開始から時間を追うことに接触角θが増大するが、その増大量も変化している。そして、接触角θの計測値に着目すると、時間に対する計測値θの変化が1次の関数(図2の直線L1)となる領域A2と、それ以外の領域A1とに分割される。本実施形態では、その閾値となる接触角θを前進接触角θaとする。尚、領域A2は、時間に対する計測値θの変化が無い(0次関数)領域となる場合もある。また、測定時間は、例えば、1〜10秒間の範囲で、上記の領域A2が明確に現れるように設定することができる。
液滴の側方を観察することによる固体表面に対する液滴の接触角の測定は、例えば、固体表面に平行な方向から液滴をCCDカメラ等で拡大撮影し、画像信号をコンピュータで処理して求めることができる。
図4は、本発明の接触角の測定方法を説明するための液滴とノズルの位置関係を示す図である。図4において、液滴1の周縁部2から、液滴1内に位置するノズル11の先端部11aまでの距離を測定することにより液滴1とノズル11との位置関係を検出する。尚、図4では、ノズル11の先端部11aを鎖線で示している。
ここで、図5は、ノズル先端部と液滴の中心位置が一致していない場合の液滴を側方から示す図面であり、図5(A)はノズル11の先端部11aから液滴へ液体を吐出している状態、図5(B)は液滴1をノズル11の先端部11aから引き込んでいる状態を示している。液滴1は、ノズル11からの液流、あるいは、ノズル11への液流の影響を受けるため、図示のように、ノズル11の先端部11aの位置と液滴1の中心位置が一致していない場合、液滴の両端側の形状変化が異なるものとなる。また、図6は、図5同様に、ノズル先端位置と液滴の中心位置が一致していない場合であって、ノズルに対する液の濡れ性が高い(付着力が高い)場合の液滴を側方から示す図面であり、図6(A)はノズル11の先端部11aから液滴へ液体を吐出している状態、図6(B)は液滴1をノズル11の先端部11aから引き込んでいる状態を示している。この場合、液滴1は、ノズル11からの液流、あるいは、ノズル11への液流の影響に加えて、ノズル11の先端部11aおよびその近傍への付着力の影響を受けるため、図示のように、液滴の両端側の形状変化が異なるものとなる。
液滴1の周縁部2からノズル11の先端部11aまでの距離の測定は、例えば、固体表面上の液滴1を固体表面に垂直な方向からCCDカメラ等で拡大撮影し、画像信号をコンピュータで処理して求めることができる。
また、ノズルの先端部位置が液滴の中心ではないときに、液滴の周縁部のうち、ノズル先端部までの距離が最大となる部位において液滴の側方を観察して接触角を計測することにより、液滴の形状変化へのノズルの影響を抑制し、固体と液滴との相互作用による接触角をより正確に測定することができる。
上記の接触角の測定方法は、本発明の一例であり、この実施形態に限定されるものではない。例えば、固体と液滴との関係から、ノズル先端位置と液滴の中心位置が一致することが明らかな場合には、上記のフローチャートのステップ2(S−2)を経由することなく、ステップ1(S−1)からステップ3(S−3)に移行することができる。
図7は、本発明のナノインプリント方法の実施形態を説明するための工程図である。
本実施形態では、ナノインプリント用の基板21上に被加工物として光硬化性の樹脂41を供給する(図7(A))。次に、樹脂41にモールド(型部材)31のパターン領域(凹部が形成されている領域)を押し当て、基板21とモールド31との間に樹脂層42を形成する(図7(B))。
次いで、モールド41側から樹脂層42に光を照射して硬化させて樹脂層42′とする(図7(C))。次に、硬化した樹脂層42′からモールド31を引き離すことにより、モールド31が有する凹凸パターンが反転した凹凸構造43が被加工物である樹脂層42′に転写形成される(図7(D))。
上記の基板の表面処理、モールドの表面処理としては、異なる材料からなる薄膜形成、異なる材料のドープ、表面改質等が挙げられる。
異なる材料からなる薄膜形成による表面処理は、基板やモールドを構成する材料とは異なる材料の薄膜を表面に形成するものであり、薄膜形成方法は材料に応じて適宜選択することができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等により金属薄膜を形成したり、スピンコート法、ディップコート法、気相塗布法等により有機膜を形成することができる。
また、表面改質による表面処理は、プラズマ照射等により行うことができる。例えば、フッ化物を含むガスによるプラズマを照射することで、樹脂に対するモールドの離型性を向上させることができる。また、基板にプラズマを照射することで表面粗さを制御し、樹脂に対する基板の密着性を向上させることができ、使用するガスは基板材料により適宜選択することができる。
上述の実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
固体として、材質がSiである基板を準備した。この基板は、RCA洗浄を施した後、ポリカーボネート製の密閉容器に収納し、クラス1000のクリーンルーム内で1週間保管したものである。
(前進接触角の測定)
上記の基板上に、内径0.4mm、外径0.5mmのステンレス製のノズルから純水を吐出して1.0μLの液滴を形成した。ノズル先端から基板表面への純水の吐出方向は、基板表面に対して90°とした。
この液滴を、基板表面に垂直な方向からCCDカメラで拡大撮影し、画像信号をコンピュータで処理することにより、ノズル先端部から液滴の周縁部までの距離を観察した。その結果、ノズル先端部から液滴の周縁部までの最小距離は、最大距離の約96%であり、ノズル位置と液滴の中心位置が一致していると判定した。
次に、上記の前進接触角を計測した基板表面に位置する純水の液滴を、上記ノズル先端から一定流量(0.1μL/秒)で引き込み、この液滴について、上記のように、ノズル先端部から液滴の周縁部までの距離を観察した。ノズル先端部から液滴の周縁部までの最小距離は、最大距離の約96%であり、ノズル位置と液滴の中心位置が一致していると判定した。
そこで、基板表面に位置する純水の液滴を、上記ノズル先端から一定流量(0.1μL/秒)で引き込みながら、液滴の側方を観察して固体表面に対する液滴の接触角を100m秒毎に計測し、時間T(秒)に対する接触角θ(度)の計測値を下記の表2に示した。そして、この測定値から、時間に対する計測値θの変化が1次の関数となる領域B2と、それ以外の領域B1とに分割される閾値(図3参照)を平均二乗法を用いて算出し、この閾値を後退接触角θrとして下記の表3に示した。
固体として、材質がSiであり、実施例1で用いた基板と同様の過程を経た後、計測前にバッファードフッ酸にて自然酸化膜を除去した基板を準備した。
(前進接触角の測定)
上記の基板上に、内径0.4mm、外径0.5mmのステンレス製のノズルから純水を吐出して1.0μLの液滴を形成した。ノズル先端から基板表面への純水の吐出方向は、基板表面に対して90°とした。
この液滴について、実施例1と同様にして、ノズル先端部から液滴の周縁部までの距離を観察した。その結果、ノズル先端部から液滴の周縁部までの最小距離は、最大距離の約64%であり、ノズル位置と液滴の中心位置が一致していないと判定した。
そこで、接触角を計測する部位を、液滴の周縁部のうち、ノズル先端部までの距離が最大となる部位に設定した。そして、この部位とノズル位置とを結ぶ直線に垂直な方向(図4に矢印aで示される方向)から液滴の側方を観察し、1.0μL/秒の流量でノズル先端から純水を基板表面に吐出しながら、基板表面に対する液滴の接触角を100m秒毎に計測した。そして、時間T(秒)に対する接触角θ(度)の計測値から、時間に対する計測値θの変化が1次の関数となる領域A2と、それ以外の領域A1とに分割される閾値(図2参照)を平均二乗法を用いて算出し、この閾値を前進接触角θaとして下記の表4に示した。
次に、上記の前進接触角を計測した基板表面に位置する純水の液滴を、上記ノズル先端から一定流量(0.1μL/秒)で引き込み、この液滴について、実施例1と同様にして、ノズル先端部から液滴の周縁部までの距離を観察した。ノズル先端部から液滴の周縁部までの最小距離は、最大距離の約64%であり、ノズル位置と液滴の中心位置が一致していないと判定した。
そこで、接触角を計測する部位を、液滴の周縁部のうち、ノズル先端部までの距離が最大となる部位に設定した。そして、この部位とノズル位置とを結ぶ直線に垂直な方向(図4に矢印aで示される方向)から液滴の側方を観察し、ノズル先端から上記の一定流量で純水を引き込みながら、基板表面に対する液滴の接触角を100m秒毎に計測した。そして、時間T(秒)に対する接触角θ(度)の計測値から、時間に対する計測値θの変化が1次の関数となる領域B2と、それ以外の領域B1とに分割される閾値(図3参照)を平均二乗法を用いて算出し、この閾値を後退接触角θrとして下記の表4に示した。
このような前進接触角θa、θa′と後退接触角θr、θr′の測定を3サンプルにて各3回、合計9回行った。また、前進接触角θa、θa′と後退接触角θr、θr′の測定結果の平均値と3σ(σ:標準偏差)を算出して表4に示した。
また、これらの計測値のバラツキを3σを求めて比較したところ、本発明により実施した計測値は1°以内にバラツキが収まるのに対し、従来の接触角の測定方法では15°以上のバラツキがあり、本発明の接触角の測定方法に比べて精度が劣ることが確認された。
2…液滴の周縁部
2a…ノズルまでの距離が最大となる部位
11…ノズル
11a…ノズル先端部
21…インプリント用の基板
31…モールド
41…樹脂
42…樹脂層
Claims (3)
- ノズル先端から一定流量の液体を固体表面に形成した液滴に吐出して該液滴の界面を変化させながら、液滴の側方を観察して固体表面に対する液滴の接触角を所定の時間毎に計測し、時間に対する計測値の変化が無い、あるいは、時間に対する計測値の変化が1次の関数となる領域と、それ以外の領域との閾値となる計測値を前進接触角とし、また、固体表面に位置する液滴の液体をノズル先端から一定流量で引き込みながら、液滴の側方を観察して固体表面に対する液滴の接触角を所定の時間毎に計測し、時間に対する計測値の変化が無い、あるいは、時間に対する計測値の変化が1次の関数となる領域と、それ以外の領域との閾値となる計測値を後退接触角とすることを特徴とする接触角の測定方法。
- 前記ノズルの先端部から前記液滴の周縁部までの距離が均一ではないときに、前記液滴の周縁部のうち、前記ノズルの先端部までの距離が最大となる部位における接触角を計測することを特徴とする請求項1に記載の接触角の測定方法。
- 基板上に樹脂を供給し、該樹脂にモールドのパターン領域を押し当て、モールドと基板との間に位置する樹脂層の所定領域を硬化させ、次いで、硬化した樹脂層から前記モールドを引き離す工程を有し、
請求項1または請求項2に記載の接触角の測定方法により基板に対する樹脂の前進接触角θa1と後退接触角θr1を測定したときに、これらにθa1−θr1≧30°となる関係が成立し、また、請求項1または請求項2に記載の接触角の測定方法によりモールドに対する樹脂の前進接触角θa2と後退接触角θr2を測定したときに、これらにθa2−θr2≧10°となる関係が成立し、さらに、前記後退接触角θr1と前記後退接触角θr2との間にθr1>θr2となる関係が成立するように、基板の表面処理、樹脂材料の選定、モールド材料の選定、および、モールドの表面処理の少なくとも1種を実施することを特徴とするナノインプリント方法。
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