JP5402350B2 - 導電性ペーストの製造方法および導電性ペースト - Google Patents
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Description
このような導電性ペーストにおいては、導電性粉末として、銀粉や銅粉が一般的に使用されてきた。これらのうち銀粉は、優れた導電性が容易に得られ、導電性の信頼性も高いものの高価であり、マイグレーションが起きやすいという欠点を有していた。一方、銅粉は、銀粉よりも安価であり、マイグレーションも起きにくい反面、容易に酸化されて導電性が低下したり、導電性が不安定になったりしやすいという問題があった。
すなわち、この工程では、分散機としてロールミルが一般に使用されるが、その際に、銀メッキ銅粉はロール間で押し潰され、変形しやすい。すると、このような変形に伴って、銀メッキが割れたり剥離したりして、銅粉の表面が露出してしまうことがあった。このように露出した銅表面は酸化されやすいため、導電性ペーストの導電性の低下を生じやすい。さらに、このように露出した銅表面は活性が高いため、保存時に触媒的に作用して結着樹脂の反応を促し、導電性ペーストの粘度上昇やゲル化を引き起こし、保存安定性を低下させやすい。
ここで特に、銀メッキ銅粉の原料銅粉として電解銅粉を使用した場合には、電解銅粉は樹枝状であるためにロール間で押し潰されて変形し、箔状になりやすく、銅表面の露出による導電性および保存安定性の低下が顕著であった。
前記銀メッキ銅粉は、原料銅粉に銀をメッキする第1のメッキ工程と、
銀メッキされた原料銅粉を解砕する解砕工程と、
解砕された解砕粉に銀をメッキする第2のメッキ工程とを経て製造されることを特徴とする。
前記原料銅粉としては、電解銅粉を含有するものを使用できる。
前記第1のメッキ工程では、前記原料銅粉100質量部に対して、5〜10質量部の銀をメッキし、前記第2のメッキ工程では、前記原料銅粉100質量部に対して、5〜20質量部の銀をメッキすることが好ましい。
前記結着樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂を使用できる。
前記銀メッキ銅粉を10質量%以上含有する前記導電性粉末100質量部に対して、前記結着樹脂を10〜35質量部使用することが好ましい。
本発明の導電性ペーストは、前記の製造方法で製造されたことを特徴とする。
本発明の導電性ペーストの製造方法は、銀メッキ銅粉を含有する導電性粉末を結着樹脂中に分散させる導電性ペーストの製造方法であって、まず、銀メッキ銅粉を製造する。
銀メッキ銅粉は、原料銅粉に銀をメッキする第1のメッキ工程と、第1のメッキ工程で銀メッキされた原料銅粉を解砕する解砕工程と、解砕された解砕粉に再度銀をメッキする第2のメッキ工程とを有する製造工程により製造される。
第1のメッキ工程では、原料銅粉の表面に銀をメッキする。
原料銅粉としては特に制限はなく、例えば、アトマイズ法で製造されたアトマイズ銅粉や、水溶液中の銅化合物を還元剤で還元析出した還元銅粉などを使用することもできるが、これらは高価であるため、より安価な電解銅粉を使用することが好適である。電解銅粉は、硫酸銅などの電気分解により製造された樹枝状の銅粉である。
また、コストの点からは、原料銅粉として、安価な電解銅粉のみを使用することが好適であるが、場合によっては、電解銅粉とともにアトマイズ銅粉や還元銅粉を適宜併用してもよい。
置換メッキ法(銀置換メッキ)の場合には、例えば、炭酸アンモニウムとEDTAと水からなる水溶液と、原料銅粉とを混合して銅分散液を調製し、この銅分散液中に、硝酸銀などの銀メッキ原料の水溶液を攪拌しながら添加する方法が挙げられる。その後、得られた分散液をろ過、洗浄、乾燥することにより、銀がメッキされた原料銅粉を得ることができる。
また、第1のメッキ工程の前には、原料銅粉の表面の酸化膜除去のために、原料銅粉を例えば硫酸水溶液などであらかじめ酸洗浄しておくことが好ましい。
ついで、第1のメッキ工程で得られた銀メッキされた原料銅粉(以下、第1メッキ済み銅粉ということもある。)を解砕し、解砕粉とする解砕工程を行う。
解砕工程とは、例えば、アトライター、ボールミル、ジェットミルなどの解砕機を用いた工程であり、例えばボールミルを用いた場合には、第1メッキ済み銅粉100質量部に対してステアリン酸などの滑剤0.1〜2質量部を加えて、毎分20〜90回転で、30〜180分間回転させるなどの条件で解砕すればよい。
なお、充填密度は、タップ密度を指標として評価でき、タップ密度が大きいと充填密度も大きくなる。十分な導電性を得るためには、解砕粉のタップ密度が好ましくは3.5〜4.5g/cm3、より好ましくは3.7〜4.2g/cm3となるように、解砕工程を行う。
上述の解砕工程により、充填密度の高い粒子形状の解砕粉が得られるが、この解砕粉は、解砕により部分的に原料銅粉の表面が露出した状態になっている。そのため、第2のメッキ工程において、このような解砕粉に対して再度銀をメッキする。
メッキ方法としては、第1のメッキ工程と同様に、無電解メッキ方法、電解メッキ法など、公知のメッキ方法が挙げられ、第1のメッキ工程ですでに説明した具体的手法などにより、銀をメッキすることができる。
なお、第1のメッキ工程と第2のメッキ工程での合計のメッキ量としては、原料銅粉100質量部に対して、銀10〜30質量部の範囲が好ましい。
ついで、上述のようにして製造された銀メッキ銅粉を含有する導電性粉末を結着樹脂中に分散させる工程により、導電性および保存安定性に優れた導電性ペーストを製造することができる。
導電性粉末としては、少なくとも、上述した各工程を経て製造された銀メッキ銅粉を含有するものであればよく、銀メッキ銅粉のみからなるものであっても、他の導電性粉末を含むものであってもよい。他の導電性粉末としては、銀、スズ、鉛、ビスマス、亜鉛、インジウム、ニッケル、金などの金属や、これらの中から選ばれる2種以上の合金などが挙げられる。また、カーボンブラックも使用できる。
このような他の導電性粉末は、銀メッキ銅粉よりも高価である場合が多いため、これを使用する場合でも、導電性粉末中に銀メッキ銅粉を10質量%以上含有させることによって、導電性ペーストとしての性能を維持しつつ、そのコストを低下させることができる。
熱硬化性樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、1分子中に1個以上のグリシジル基を有する液状エポキシ化合物などのエポキシ樹脂;不飽和ポリエステル樹脂などのポリエステル樹脂;ウレタン樹脂;レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などのフェノール樹脂;イミド樹脂などが好適に使用される。また、結着樹脂には、これらの熱硬化性樹脂を硬化させる硬化剤が含まれていてもよく、アミン系エポキシ硬化剤、酸無水物系エポキシ硬化剤、イソシアネート系硬化剤、イミダゾール系硬化剤などが挙げられる。これら熱硬化性樹脂、硬化剤はいずれも、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
結着樹脂の配合量には特に制限はないが、導電性粉末100質量部に対して、10〜35質量部の範囲が好適である。なお、硬化剤を使用する場合には、この硬化剤の量も結着樹脂の量に含める。
以上のような製造方法で製造された導電性ペーストは、種々の用途に使用できるが、プリント基板、特に、プリント基板の回路形成への使用に適している。導電性ペーストを例えばフィルムや基板などの基材に印刷し、結着樹脂が熱硬化性である場合にはその後加熱処理して硬化することにより、導電性粉末同士が高分散した状態で互いに接続し、導電性とのその信頼性の良好な回路を製造できる。
加熱処理には、ボックス式熱風炉、連続式熱風炉、マッフル式加熱炉、近赤外線炉、遠赤外線炉、真空加熱プレスなどの公知の装置が使用できる。
すなわち、解砕工程を備えているため、原料銅粉として樹枝状の電解銅粉を使用した場合でも、最終的に得られる銀メッキ銅粉を充填密度の高い粒子形状とすることができる。このような形状の銀メッキ銅粉は、後に結着樹脂に分散させる工程において、ロールミルなどの分散機のロール間に挟まれた場合でも、変形しにくい。そのため、このような変形に起因する銀メッキの割れ、剥離が起こりにくくなり、原料銅粉の表面の露出を防ぐことができ、導電性および保存安定性に優れた導電性ペーストを製造することができる。
また、原料銅粉の露出した表面は活性が高いため、保存時に触媒的に作用して結着樹脂の反応を促し、導電性ペーストの粘度上昇やゲル化を引き起こし、保存安定性を低下させやすい。特に、結着樹脂として熱可塑性樹脂よりも反応性の高い熱硬化性樹脂を使用した場合には、わずかな原料銅粉の露出によっても、粘度上昇やゲル化が起こり易い傾向があった。しかしながら、このような露出を防止することにより、結着樹脂として熱硬化性樹脂を使用した場合であっても、粘度上昇やゲル化を抑え、導電性ペーストの保存安定性を向上させることができる。
[実施例1]
下記(1)および(2)のようにして導電性ペーストを製造し、下記(3)のようにして評価した。
導電性ペーストの配合と、評価結果を表にまとめる。
(1)銀メッキ銅粉の製造
(酸洗浄)
原料銅粉である樹枝状の電解銅粉(三井金属鉱業(株)製、商品名「MF−D2」、径10μm)60gに対して、洗浄水として約5質量%の硫酸水溶液100mlを加えて、20℃で10分間攪拌後、ろ過して酸洗浄を行った。その後、ろ液が中性になるまで洗浄を繰り返した。具体的には、洗浄水を合計で3L用いて、酸洗浄を6回行った。
(第1のメッキ工程)
ついで、酸洗浄済みの原料銅粉を容積1Lのポリ容器に移し、この中に、炭酸アンモニウム31.5g、EDTA63g、水250gからなる水溶液を加えて、銅分散液を調製した。そして、この銅分散液中に、硝酸銀5.25gと水32.4gからなる水溶液を攪拌しながら添加し、銀置換メッキを行った。
ついで、銀置換メッキ後の分散液をろ過、洗浄、乾燥して、原料銅粉100質量部に対して、5質量部の銀がメッキされた原料銅粉を得た。
こうして銀がメッキされた原料銅粉について、マイクロトラックHRA(日機装(株)製)を用いて、50%粒径(D50%)を測定したところ、8.39μmであった。また、これについて下記の方法でタップ密度を測定したところ、2.99g/cm3であった。
[タップ密度]
(i)銀メッキされた原料銅粉(試料)100gをロートで100mlのメスシリンダーに静かに落とす。
(ii)メスシリンダーをタップ密度測定器に載せて、落差距離20mm、60回/分の速さで600回落下させ、試料を圧縮する。圧縮後の試料の容積を測る。
(iii)圧縮後の容積(cm3)で、試料の質量(g)を除することにより、タップ密度(g/cm3)が算出される。
ついで、第1のメッキ工程で得られた第1メッキ済み銅粉100質量部に対して、滑剤であるステアリン酸0.1質量部を添加し、これをボールミル中で解砕し、解砕粉を得た。解砕の条件は、20℃、回転数:毎分30回転とし、60分間とした。
また、こうして得られた解砕粉について、マイクロトラックHRA(日機装(株)製)を用いて、50%粒径(D50%)を測定したところ、8.04μmであった。また、これについて上記の方法でタップ密度を測定したところ、3.85g/cm3であった。
このように解砕工程を経ることにより、タップ密度が上昇し、充填密度も向上していることが示唆された。
(第2のメッキ工程)
ついで、解砕工程で得られた解砕粉を容積1Lのポリ容器に移し、上述の第1のメッキ工程と同様の方法で銀置換メッキを行い、銀メッキ銅粉を得た。
なお、第2のメッキ工程では、原料銅粉100質量部に対して、5質量部の銀をメッキした。
このようにして最終的に得られた銀メッキ銅粉は、原料銅粉100質量部に対して、10質量部の銀をメッキしたものである。
上述のようにして製造した銀メッキ銅粉100質量部と、結着樹脂として、ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)、商品名「バイロン550」)を固形分として18質量部および硬化剤(ブロックイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネート2516」))を固形分として4.5質量部と、溶剤であるブチルセロソルブアセテート(表中BCAと表記。)47質量部とを加え、銀メッキ銅粉と他の成分とが馴染むようにプレミックスした。その後、このプレミックス物を3本ロールミルで分散し、導電性ペーストを得た。
上述のようにして得られた導電性ペーストについて、下記の評価を行った。
(i)導電性の評価(比抵抗)
導電性ペーストをガラス板に塗布し、150℃の恒温器中で30分間保持して、硬化、乾燥させ、サンプルとした。このサンプルを室温に戻してから、導電性ペーストから形成された塗膜についてデジタルマルチメーターで抵抗を測定し、下記式にて比抵抗を求めた(試験前比抵抗)。
また、導電性ペーストを23℃で60日間保存してから、これを同様にしてガラス板に塗布し、150℃の恒温器中で30分間保持して、硬化、乾燥させ、サンプルとした。このサンプルを室温に戻してから、同様にしてその塗膜について抵抗を測定し、比抵抗を求めた(試験後比抵抗)。
比抵抗=R×S/l(Ω・cm)
(式中、R:デジタルマルチメーターの抵抗値、S:導電性ペーストからなる塗膜の断面積、l:電極間距離)
(ii)保存安定性の評価
導電性ペーストを23℃で60日間保存した前後の粘度を測定し、下記式にて粘度変化率を求めた。表中、初期粘度が保存前、保存性試験後粘度が保存後の粘度である。
粘度の測定は、導電性ペーストを23±2℃の温度に調節し、ブルックフィールドBM型粘度計(東京計器(株)製)により行った。
粘度変化率(%)=(保存後の粘度−保存前の粘度/保存前の粘度)×100
表に示すように配合を変更して、実施例1と同様にして導電性ペーストを製造し、評価した。
なお、実施例9および10は、結着樹脂として熱可塑性樹脂を使用した例であり、その他の実施例は、熱硬化性樹脂(硬化剤を併用。)を使用した例である。
銀メッキ銅粉を製造する際、第1のメッキ工程後、解砕工程と第2のメッキ工程とを行わずに、銀メッキ銅粉を得た。メッキ量としては、原料銅粉100質量部に対して、銀10質量部とした。
この銀メッキ銅粉を用いた以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを製造し、評価した。
比較例1の2倍のメッキ量、すなわち、原料銅粉100質量部に対して、20質量部の銀を第1のメッキ工程でメッキした以外は、比較例1と同様にして、銀メッキ銅粉、導電性ペーストを製造し、評価した。
第1のメッキ工程後、実施例1と同様の条件の解砕工程を行った以外は、比較例1と同様にして、銀メッキ銅粉、導電性ペーストを製造し、評価した。
第1のメッキ工程を省略し、原料銅粉である電解銅粉に対して解砕工程を行い、その後、第2のメッキ工程を行って銀メッキ銅粉を得た。メッキ量としては、原料銅粉100質量部に対して、銀10質量部とした。
この銀メッキ銅粉を用いた以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを製造し、評価した。
第1のメッキ工程後、解砕工程を省略し、第2のメッキ工程を行って、銀メッキ銅粉を得た。メッキ量としては、原料銅粉100質量部に対して、第1のメッキ工程および第2のメッキ工程それぞれで、銀を各5質量部とした。
この銀メッキ銅粉を用いた以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを製造し、評価した。
ポリエステル樹脂:東洋紡績(株)製、商品名「バイロン550」
イソシアネート系硬化剤:日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネート2516」
レゾール型フェノール樹脂:住友ベークライト(株)製、商品名「スミラックPC−1」
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート828」
イミダゾール系硬化剤:四国化成工業(株)製、商品名「2P4MHZ」
フレーク銀粉:(株)フェロ・ジャパン製、商品名「SF78」
カーボンブラック:エボニック デグサ ジャパン(株)製、商品名「プリンテックスL」
Claims (6)
- 銀メッキ銅粉を含有する導電性粉末を結着樹脂中に分散させる導電性ペーストの製造方法であって、
前記銀メッキ銅粉は、原料銅粉に銀をメッキする第1のメッキ工程と、
銀メッキされた原料銅粉を解砕する解砕工程と、
解砕された解砕粉に銀をメッキする第2のメッキ工程とを経て製造されることを特徴とする導電性ペーストの製造方法。 - 前記原料銅粉は、電解銅粉を含有することを特徴とする請求項1に記載の導電性ペーストの製造方法。
- 前記第1のメッキ工程では、前記原料銅粉100質量部に対して、5〜10質量部の銀をメッキし、前記第2のメッキ工程では、前記原料銅粉100質量部に対して、5〜20質量部の銀をメッキすることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペーストの製造方法。
- 前記結着樹脂は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペーストの製造方法。
- 前記銀メッキ銅粉を10質量%以上含有する前記導電性粉末100質量部に対して、前記結着樹脂を10〜35質量部使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペーストの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする導電性ペースト。
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