上記の特許文献1ないし3に記載されたキャップは、いわゆるネジ式のものであって、回転させることにより容器の口部を開閉するように構成されている。したがって、その開閉操作は、一方の手で容器を固定した状態で、他方の手でキャップを回転させて行うことになり、容器の携帯性が良好であってもキャップの開閉操作性あるいは利便性が必ずしも十分に良好であるとは言い難い。
これに対して、特許文献4に記載されたキャップはネジによって容器の首部に取り付けられるものの、閉止部(開閉部)を押し上げれば、口部を開くことができるので、上記の特許文献1ないし3に記載されているキャップに比較して開閉操作が容易である。そのキャップを首部に取り付けておくための構造として、首部に環状突起を形成し、その環状突起にキャップの内面の一部を係合させておく構造が特許文献4に記載されている。このような構造の場合、キャップを首部に押し付けて首部に嵌合させることになる。その結果、キャップを容器の首部に取り付ける際にキャップに対しその軸線方向に圧縮荷重を掛けることになる。その場合、首部に嵌合させられる円筒状の部分と閉止部とを繋いでいる溝、すなわち脆弱手段である連続線状の薄肉部分に対しても荷重が作用するので、その連続線状の薄肉部分に亀裂が入り、あるいは部分的に破断する可能性がある。
また、特許文献4に記載されたキャップは、閉止部の内面に形成された環状の突起を口部の内側に嵌合させて口部の上部周辺だけを覆い口部を密閉するように構成されているから、容器から内容物を飲用する場合に唇が接触する首部の外周面を覆うことができず、あるいは覆い隠す面積が少なく、衛生面での改良の余地がある。また、特許文献4に記載されているキャップは、閉止部を押し上げるために指を掛ける突片部を備えているが、その突片部の突出長さは、意匠上あるいはキャップのハンドリング上の要請で長くすることが困難であり、そのため指を掛けにくく、開閉操作性を向上させるための改良の余地がある。
本発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、容器の首部に対して押し込んで取り付ける打栓式のキャップであって、その取付の際に、開閉部と円筒部との間に設けられている易破断部に亀裂あるいは破断が生じることのないキャップを提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、容器に形成されている首部に対して押し込まれて嵌合させられる円筒部と、その円筒部の上端側の周縁部の一部にヒンジ部を介して連結されかつ前記円筒部の上端側の周縁部の他の部分には、キャップ円筒部の壁厚より薄肉になるように形成されたスコア線を介して連結されて前記首部の先端に形成されている口部を封止する開閉部とを備えた打栓式開閉容易キャップにおいて、前記円筒部を前記首部に押し込む打栓力を前記開閉部の上側から作用させた場合に前記開閉部が前記円筒部に接近する方向に撓む薄肉弱化部が、前記開閉部の下端縁と前記円筒部の上端縁との間に設けられていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明の構成に加えて、前記薄肉弱化部は、前記円筒部の上端縁と前記開閉部の下端縁とを連結しかつこれら円筒部および開閉部より薄肉の部分を含み、前記スコア線は前記薄肉弱化部と開閉部との境界部分および/または薄肉弱化部と前記円筒部との境界部に連設(連なった状態に設ける)されていることを特徴とする打栓式開閉容易キャップである。
請求項3の発明は、請求項1または2の発明の構成に加えて、前記円筒部の上端縁と前記開閉部の下端縁との間に、前記円筒部の内部と外部とを連通させるように形成されたスリットを更に備え、前記薄肉弱化部は、前記スコア線の前記スリット側の端部に形成されていることを特徴とする打栓式開閉容易キャップである。
請求項4の発明は、請求項3の発明の構成に加えて、前記スリットは、前記円筒部の円周方向に直列に並んで複数形成され、それらのスリット同士の間に、前記円筒部の上端縁と前記開閉部の下端縁とを連結しかつこれら円筒部および開閉部より引っ張り強度が低くて破断し易いブリッジ部と前記スリットの幅を部分的に狭くするための盛り上げ部(もしくは段差部)とが形成されていることを特徴とする打栓式開閉容易キャップである。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明の構成に加えて、前記開閉部は、前記首部の中心軸線を挟んで前記ヒンジ部とは反対側で前記首部の外周面の一部を覆う筒状のカバー部を備え、指を掛けるための突片部が前記カバー部に設けられ、前記突片部の前記カバー部における円周方向での少なくとも一方の端部側に、前記カバー部の軸線方向に沿いかつ前記円筒部の上端縁に対向する前記カバー部の下端縁に到る縦スリットが形成されていることを特徴とする打栓式開閉容易キャップである。
請求項6の発明は、請求項5の発明の構成に加えて、前記突片部は、前記カバー部の上端部からカバー部の半径方向での外側に向けて突出して形成されていることを特徴とする打栓式開閉容易キャップである。
請求項7の発明は、請求項5または6の発明の構成に加えて、前記円筒部は、前記首部の中心軸線を挟んで前記カバー部とは反対側で前記首部の上端側から下方側まで延設されかつ前記首部の外周面の一部を覆うように立ち上がっている肉厚部を備え、その肉厚部の上端部に前記ヒンジ部が設けられ、前記スコア線は、前記ヒンジ部側の端部が前記首部の上端側に位置し、前記ヒンジ部から遠ざかるに従って徐々に前記首部の下端部側に位置するように湾曲した斜めの線状に形成されていることを特徴とする打栓式開閉容易キャップである。
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明の構成に加えて、前記首部には、前記円筒部を係合させて前記円筒部を前記首部に取り付ける第1の突条と、前記開閉部を該開閉部が前記口部を密閉した状態で係合させる第2の突条とが形成され、前記円筒部の内面には、前記第1の突条に前記円筒部が前記首部から抜けないように係合する第1係合部が形成され、前記開閉部には、前記第2の突条に前記首部の軸線方向で係合離脱可能に係合する第2係合部が形成されていることを特徴とする打栓式開閉容易キャップである。
本発明のキャップは、容器の首部に嵌合させられる円筒部と、首部の先端部に形成されている口部を実質的に開閉する開閉部とを備えており、その円筒部と開閉部とは、ヒンジ部によって連結されているとともに、円筒部の壁厚より薄肉になっている破断し易いスコア線によって区画されている。したがって、ヒンジ部とは反対側の部分を押し上げれば、スコア線で破断が生じるとともに薄肉弱化部にも破断が生じて開閉部が円筒部から引きちぎられ、ヒンジ部を中心に回転して口部が開かれる。また、これとは反対に、開閉部を円筒部側に戻せば、開閉部によって口部が封止される。その円筒部は、首部に被せた後、開閉部側から荷重を掛けて首部に強制的に嵌合させられるから、すなわち首部に押し込まれるから、キャップを首部に取り付ける際には、開閉部を円筒部側に押す作用が生じる。その場合、開閉部と円筒部との間に設けられている薄肉弱化部が撓み、開閉部を円筒部側に押す荷重の一部がここで吸収される。その結果、スコア線での応力の集中が緩和され、スコア線で破断もしくは亀裂が生じることが回避される。
本発明では、請求項2に記載してあるように、円筒部の上端縁と前記開閉部の下端縁とを薄肉弱化部で連結し、かつスコア線は、円筒部および開閉部より薄肉の部分を含み、前記スコア線は前記薄肉弱化部と開閉部との境界部分および/または薄肉弱化部と前記円筒部との境界部に連設されていることにより、円筒部を首部に押し込む際の荷重に基づく応力集中が薄肉弱化部で緩和され、その結果、スコア線での破断や亀裂が回避できる。さらに、開蓋時に薄肉弱化部に設けられたスコア線により容易に開蓋することができる。
また、本発明では、請求項3に記載してあるように、円筒部と開閉部との間にスコア線だけでなく、スリットを設けることができる。その場合、スコア線がスリットの部分で途切れることになるが、その部分に薄肉弱化部が形成されていることにより、円筒部を首部に押し込む際の荷重に基づく応力集中が、スコア線の端部で緩和され、その結果、スコア線での破断や亀裂が回避できる。
また、本発明では、請求項4に記載してあるように、スリットは、前記円筒部の円周方向に直列に並んで複数形成され、それらのスリット同士の間に、前記円筒部の上端縁と前記開閉部の下端縁とを連結しかつこれら円筒部および開閉部より低強度で破断し易いブリッジ部が形成され、および前記スリットの幅を部分的に狭くするための盛り上げ部もしくは段差部(以下、これらをまとめ盛り上げ部と記す)が形成されていることにより、盛り上げ部では、開閉部の下端縁との間隔が短くなっている。そのため、開閉部が円筒部側に押圧された場合、ブリッジ部を撓ませつつ開閉部が円筒部側に移動するが、盛り上げ部との間の寸法だけ移動した後は、盛り上げ部に接触し、それ以上には移動しない。すなわち、ブリッジ部に掛かる荷重およびその変形が盛り上げ部によって制限されて、ブリッジ部の破断が防止もしくは抑制されるようになっている。さらに、円筒部を首部に押し込む際の荷重に基づく応力集中が、前記スリットを形成することで剛性が弱まった前記スリット部周辺で緩和され、その結果、ブリッジ部での破断や亀裂が回避できる。
本発明における開閉部は、請求項5に記載してあるように、首部の外周面の一部を覆うカバー部を備えた形状とすることができ、このような構成であれば、容器に充填されている飲料を飲む際に唇を接触させる箇所をカバー部で覆っておくことができ、首部を清浄な状態に維持しやすく、衛生面での利点がある。また、指を掛ける突片部をそのカバー部に形成し、さらにその突片部の少なくとも一方の側部に縦スリットを形成することにより、開閉部を押し上げて開蓋する場合、突片部がカバー部の一部と共に撓むので、突片部に指を掛けやすく、あるいは指が掛かる領域が増大し、その結果、開閉部を開けやすくなる。
本発明における突片部は、請求項6に記載してあるように、前記カバー部の上端部からカバー部の半径方向での外側に向けて突出して形成することにより、開閉部を押し上げて開蓋する場合、突片部がカバーの一部と共に撓み、さらに、突片部が前記カバーの上端部にあるため、突片部を押し上げる力の方向が首部に向く方向でなく、ヒンジを支点として、キャップの開閉部が開蓋する方向へ向く、その結果、開閉部を開けやすくなる。
本発明では、請求項7に記載されているように、ヒンジ部が相対的に上側に位置し、それに伴って開閉部を円筒部から区画しているスコア線が、ヒンジ部側からこれとは反対側に向けて斜めに傾斜した線状になっているので、ヒンジを中心にして開閉部を回転させた場合に、開閉部が円筒部の外面に干渉しにくくなり、開閉操作性を向上させることができる。
そして、請求項8に記載されているように、前記首部には、前記円筒部を係合させて前記円筒部を前記首部に取り付ける第1の突条と、前記開閉部を該開閉部が前記口部を密閉した状態で係合させる第2の突条とが形成され、前記円筒部の内面には、前記第1の突条に前記円筒部が前記首部から抜けないように係合する第1係合部が形成され、前記開閉部には、前記第2の突条に前記首部の軸線方向で係合離脱可能に係合する第2係合部が形成されていることにより、再栓機能を構造的に設けることが困難である打栓式で射出成形による一体に形成されたヒンジ式キャップに再栓機能を設けることが可能となる。
つぎに、本発明をより具体的に説明する。本発明のキャップは、容器の飲み口あるいは取り出し口などの口部となる首部に取り付けられて、その口部を開閉するように構成されている。キャップは、射出成形、圧縮成形等従来公知の成形法により成形されるキャップに適用できるが、特に射出成形により、二次加工することなく成形されるものに有効である。キャップの成形に用いることができる樹脂としては、従来、樹脂キャップに用いられていたすべてのものを使用することができる。例えば、ポリエチレン、アイソタクティクポリプロピレン、エチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂や、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ABS樹脂あるいはポリカーボネート等の合成樹脂を挙げることができる。その容器は、主として飲料などの液体を充填するものであるが、本発明ではこれに限られない。また、容器は金属製、合成樹脂製、ガラス製、陶磁器製などのいずれであってもよい。首部は、その容器の本体部分から突出させて形成され、先端部が口部として開口している部分であり、円筒状をなすように形成されているのが一般的であるが、本発明ではこれに限られない。
本発明のキャップはその首部に取り付けられるように構成されており、特に首部の外周側に嵌め込んで首部に取り付けられるように構成されている。その一例を図1ないし図3に示してある。なお、キャップは図に示す状態で使用されるのが通常であるから、以下の説明では、図に示してある状態での上下をキャップの上下として説明する。
ここに示すキャップ1は、首部2に嵌合させられて首部2に取り付けられる部分として円筒部3を備えている。その円筒部3は、首部2に取り付けられた後、容器が廃棄されて再生される場合以外では、首部2から取り外す必要がないので、いわゆる抜け止めした状態で首部2に嵌合させれるようになっている。
ここで首部2の構造について説明すると、図4はその一例を示し、首部2は、容器4の本体部5における上部に突出して形成された円筒状の部分であり、その上端部が開口して口部6となっている。また、その首部2の下端部すなわち本体部5に近い箇所に、フランジ部7が形成されている。このフランジ部7は、キャップ1の下端部を突き当ててキャップ1の上下方向での位置を決める部分である。このフランジ部7よりも上側に第1突条部8と第2突条部9とが所定の間隔をあけて設けられている。これらの突条部8,9は、首部2を取り巻いた状態の環状突起であり、第1突条部8は、第2突条部9よりも大きく首部2から突出している。すなわち、第1突条部8の外径が、第2突条部9の外径より大きい。さらに、各突条部8,9の上面が、外周端側で下がっている傾斜面(あるいはテーパー面)となっているのに対して、各突条部8,9の下面は、首部2の中心軸線に垂直な平面にほぼ一致する水平面となっている。すなわち、各突条部8,9は抜け止め部として作用するように構成されている。
そして、首部2の上端面すなわち口部6の輪郭部は、首部2の板厚より広い幅になっており、また角部は滑らかな曲面に形成されている。これは、キャップ1によるシール性を確保するためであり、また唇が接触した場合の感触を良好にするためである。
キャップ1は、円筒部3に加えて、開閉部10を備えており、その円筒部3と開閉部10とを連結するヒンジ部11が設けられている。円筒部3は、図1ないし図3に示すように、首部2における前記フランジ部7に載っている状態に突き当てられるリング状の部分(以下、リング部と記す)3aと、そのリング部3aから軸線方向で上方に延びている立ち上がり部3bとを備えている。その立ち上がり部3bは、リング部3aの半周以下の範囲に設けられ、リング部3aと同様の曲率で湾曲した壁状の部分である。その上端部は首部2の上端部すなわち口部6に近い位置にまで到っている。その立ち上がり部3bの上端部にヒンジ部11が設けられている。
このヒンジ部11は、図3に示すように、円筒部3と開閉部10とを連結している薄い二本の帯状の部分(以下、帯状部11aと記す)であり、それらの帯状部11aは円筒部3および開閉部10と同一の素材で一体に形成されている。なお、それらの帯状部11a同士の間隔は、キャップ1の中心を中心とした開き角度(キャップ1の中心と各帯状部11aとを結んだ線がなす角度)が20〜70°程度に設定されている。このような角度に設定したことに伴う作用は後述する。
上記の立ち上がり部3bの上端縁は、ヒンジ部11に近い箇所から左右に延び、かつヒンジ部11に近い箇所を上端としてリング部3aに向けて次第に下がっている。すなわち、立ち上がり部3bにおける左右両側の部分の上端縁3cは、キャップ1の1/4周に満たない範囲の短い螺旋状になっている。
上記のヒンジ部11によって円筒部3に連結されている開閉部10は、前記口部6を覆って口部6を封止するためのものであり、図に示す例では、円形の上板部10aと上板部10aの周縁部から垂下しているカバー部10bとを備えている。上板部10aは前記口部6の外径より大きい円盤状の部分であり、その内面(下面)には、口部6に密着して嵌合する円筒状のプラグ部10cが一体に形成されている。このプラグ部10cは、例えば図5に示すように、円筒状の部分であってよいし、それ以外に口部6に密着して密封性が保たれるのであれば、このプラグ部10cは平坦形状でもよいし、凹凸形状でもよいし、これに限られない。さらに、上板部10aの下面で、プラグ部10cの外周側の部分には、首部2の上端面に密着させられる凸ビード10dが形成されている。この凸ビード10dは、首部2の上端面と同一径の環状の突条部であり、首部2の上端面に密着させられて、口部6の密閉状態を維持するように構成されている。
この上板部10aと一体のカバー部10bは、前述した円筒部3における立ち上がり部3bと同様の湾曲した壁状の部分であり、あるいは一部欠けた円筒状の部分である。したがって、このカバー部10bは、首部2の外周面のうち、首部2の中心軸線を挟んで前記ヒンジ部11とは反対側の部分、言い換えれば前記立ち上がり部3bによっては覆われていない部分を覆うように構成されている。このカバー部10bの構成を更に説明すると、カバー部10bは前述した円筒部3と共に、首部2を覆うように構成され、したがってその形状は、首部2の外面のうち、前記円筒部3によっては覆われていない部分を覆う形状になっている。具体的には、前記リング部3aのうち前記立ち上がり部3bが設けられていない箇所に対応する箇所、すなわち前記リング部3aのうち前記立ち上がり部3bが設けられていない箇所の上側に位置させられる部分は、リング部3aとほぼ等しい半径の筒状に形成され、その筒状の部分の左右から前記立ち上がり部3bに向けて延びている部分は、円筒部3aの曲率とほぼ等しい曲率で湾曲し、かつ立ち上がり部3bのリング部3aからの高さが前記ヒンジ部11に向けて次第に高くなっていることに倣って、首部2の軸線方向に測った高さ(あるいは幅)が次第に小さくなっている。すなわちカバー部10bの左右の部分の下端縁10eは、立ち上がり部3bにおける左右両側の部分の上端縁3cと平行になるように傾斜し、キャップ1の1/4周に満たない範囲の短い螺旋状になっている。
そして、円筒部3と開閉部10との境界部のうち、上述した立ち上がり部3bにおける左右両側の部分の上端縁3cとカバー部10bの左右の部分の下端縁10eとの間には、キャップ1の外面側からV字状に切り込まれ、残厚が円筒部3や開閉部10の肉厚より薄いスコア線12が形成されている(例えばスコア残厚0.1〜0.3mm)。このスコア線12は、開閉部10を円筒部3に対して押し上げることにより破断し、開閉部10が前記ヒンジ部11を中心にして回転できるようにするためのものであり、前記立ち上がり部3bにおける左右両側の部分の上端縁3cとカバー部10bの左右の部分の下端縁10eとの全長に亘って形成されている。このスコア線12の断面形状を図6に示してある。これは、図2のVI−VI線に沿う矢視断面図である。
上記の円筒部3と開閉部10との間のうちリング部3aとカバー部10bとの間に、キャップ1の内外に貫通したスリット13が形成されている。このスリット13は、言い換えれば、リング部3aと開閉部10(もしくはカバー部10b)とを区画する部分であって、前述した立ち上がり部3bにおける左右の上端縁3cおよびこれと平行になっているカバー部10bの左右の下端縁10eの下側の端部同士の間に、キャップ1の円周方向に沿って形成されている。スリット13は、図に示す例では、円周方向に直列に並んで複数形成されており、それらのスリット13同士の間は、細いブリッジ部15となっている。このブリッジ部15は、前述したスコア線12と共に、破断することにより、開閉部10が一旦開けられたことを示す機能を果たすものであり、幅および厚さ(すなわち太さ)が円筒部3や開閉部10の肉厚より小さく設定され、容易に破断するように構成されている。
一方、前述したスコア線12に隣接して薄肉弱化部14が設けられている。この薄肉弱化部14は、前記開閉部10を円筒部3側に押す荷重が作用した場合に、スコア線12での応力集中を緩和するためのものである。この薄肉弱化部14は、例えば図14に示す例のようにスコア線12の全体に亘って設けてもよく、図13に示す例のように部分的に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。図1ないし図3に示す例では、前述したスコア線12が、上記のスリット13に臨む箇所(スリット13に繋がる箇所)を一方の端部として形成されており、このスリット13側の端部のスコア線12に隣接して薄肉弱化部14が設けられている。
薄肉弱化部14は、要は、上方から開閉部10に荷重を加えた場合に、容易に撓む部分であり、その形状を図7に示してある。この図7は、図2(図13、図14)におけるVII−VII線に沿う矢視断面図であり、通常のスコア線12の場合にはV字状溝を構成している二つの側壁が互いに平行になっており、その結果、V字状溝の場合よりも溝の底部の幅が広くなっている。すなわち、通常のスコア線12の溝底よりも幅が広くなり、それに伴って残厚の薄い部分の面積が広くなり、その部分が薄肉弱化部14となっている。図7には薄肉弱化部14が形成されていない箇所におけるスコア線12(V字状溝)の断面形状を破線で併記してある。
薄肉弱化部は荷重を受けた際(打栓時)に撓むため応力(荷重)が集中せずに分散することで破断しない。薄肉弱化部14の好ましい条件は
5>Y≧3X [Y:薄肉弱化部幅、X:残厚]
である。なお、残厚は0.1〜0.3mmで0.1mm以下は打栓時に破断しやすく、0.3mm以上では開栓し難い。薄肉弱化部幅が5mm以上だと開栓し難い。
なお、図に示す例では、スコア線12を構成するV字状溝の一方の側壁がキャップ1の外面に対してほぼ垂直になっているのに対して他方の側壁がキャップ1の外面に対して垂直より小さい角度で交わるように傾斜している。具体的には、図2に符号Pを付してある面がこのような傾斜面となっている。これは、分割型を使用してキャップ1を射出成形する場合、分割型の一つが図2の右方向に移動することになるので、その際にアンダーカットになる部分での分割型の引っ掛かりを防止もしくは抑制するためである。
上述したように、開閉部10を円筒部3側から押し上げるように開閉部10に力を加えると、前述したブリッジ部15やスコア線12に破断が生じ、開閉部10がヒンジ部11を中心に回転する。その場合、開閉部10の各部分がヒンジ部11を中心にした円弧上を移動し、また開閉部10におけるカバー部10bおよび首部2が円筒状であるから、カバー部10bが首部2の外周面と干渉しないようにするために、スコア線12のスリット13側の端部における傾斜角度が20°以上になっている。ここで、この傾斜角度とは、スコア線12が前述したように螺旋状に湾曲しているので、そのスコア線12の接線と首部2の中心軸線に垂直な平面との間の角度である。
また、カバー部10bが首部2に干渉しないようにするために、スコア線12の前記スリット13側の端部すなわちスコア線12の破断の起点の位置が、前記ヒンジ部11の中心から首部2の円周方向に90°回った位置よりヒンジ部11側に設定されている。
前述したカバー部10bのうち、首部2の中心軸線を挟んでヒンジ部11とは反対側の部分に、指を掛けるための突片部(摘み部)16が形成されている。図1ないし図3に示す例では、その突片部16はカバー部10bの下端部に、カバー部10bからその半径方向で外側に突出して形成されている。そして、その突片部16を挟んだ左右の少なくとも一方(図示の例では両方)に縦スリット16aが形成されている。この縦スリット16aは、突片部16およびこれが形成されている部分が、他の部分から独立して撓むことを許容するため、またその撓みを生じ易くするために形成されたものであり、カバー部10bの下端縁から上側に所定の長さに亘ってカバー部10bを切除した状態(または切り裂いた状態)に形成されている。
そして、その突片部16およびこれが形成されている部分の撓みを容易にするために、突片部16の下側には前述したブリッジ部15は設けられていない。言い換えれば、カバー部10bの下端縁のうち突片部16の位置に一致する部分と前記リング部3aの上端縁との間にはスリット13が形成され、これらの部分同士は連結されていない。
なお、ブリッジ部15は開閉部10を押し上げることにより破断するように構成された強度の弱い部分であり、したがって圧縮力を受けた場合にも破断する可能性がある。そこで、スリット13の幅を部分的に狭くするための盛り上げ部もしくは段差部(以下、単に盛り上げ部と記す)17が形成されている。図8の(a)および(b)にその例を示してあり、前記リング部3aの上端縁のうち、前述した薄肉弱化部14に近い箇所および前記突片部16に対向する箇所のそれぞれは、僅かに高くなっていてこの部分が盛り上げ部17とされている。したがって、盛り上げ部17においては、カバー部10bの下端縁との間隔が短くなっている。そのため、開閉部10が円筒部3側に押圧された場合、ブリッジ部15を撓ませつつ開閉部10が円筒部3側に移動するが、盛り上げ部17との間の寸法だけ移動した後は、盛り上げ部17に接触し、それ以上には移動しない。すなわち、ブリッジ部15に掛かる荷重およびその変形が盛り上げ部17によって制限されて、ブリッジ部15の破断が防止もしくは抑制されるようになっている。
さらに、前記円筒部3を首部2に留め置くための構成、および開閉部10を閉止状態に留め置くための構成について説明すると、リング部3aの内周面には、首部2の外周面に形成されている第1突条部8の下側に係合するようにリング部3aの中心側に突出した第1係合部18が形成されている。この第1係合部18は、リング部3aの内周全体に繋がった環状の突部であってもよく、あるいは円弧状の短い突部であってもよい。また、第1係合部18の高さ方向での位置は、首部2に形成されている第1突条部8に係合した場合に、リング部3aを首部2におけるフランジ部7に密着させる程度の高さ位置であることが好ましい。
また、前記カバー部10bのうち前記突片部16が形成されている箇所の内面には、首部2に形成されている第2突条部9の下側に係合する第2係合部19が形成されている。この第2係合部19は、前述した縦スリット16aの間で、カバー部10bの下端部に沿って形成された突部である。その第2係合部19の上下方向での位置は、開閉部10の下面に形成されている前記プラグ部10cが口部6に密着した状態に嵌合し、かつ凸ビード10dが首部2の上端面に密着した状態で第2突状部9に係合し、その状態を維持する位置に設定されている。
つぎにこの発明に係るキャップ1の作用について説明する。上記のキャップ1は、上下左右の合計四つの分割型を用いた射出成形法により製造することができる。その成型時にスコア線12であるV字状溝の一方の側壁(図2での右側の側壁)Pが分割型を開く際のアンダーカットになるが、この側壁面は前述したように傾斜しているので、成型品を破損することなく型開きすることができる。こうして製造されたキャップ1は、図1ないし図3に示す形状であって、円筒部3と開閉部10とがスコア線12およびブリッジ部15を介して一体に連結された状態になっている。したがって、その全体としての形状は、前述した上板部10aを底板としたいわゆる有底円筒状である。その内部に容器4の首部2を挿入させた状態でキャップ1を首部2に押し込むと、その内面に成形されている第1係合部18が首部2の外周部に形成されている第2および第1の突状部9,8を順に乗り越え、また第2係合部19が第2突状部9を乗り越え、第1係合部18が第1突状部8に係合し、かつ第2係合部19が第2突状部9に係合する。その状態では開閉部10の下面に形成されているプラグ部10cが口部6の内側に密着して嵌合し、また凸ビード10dが首部2の上端面に密着し、こうして口部6が液密状態に封止される。
このようにしてキャップ1を容器4の首部2に取り付ける場合、上板部10aの上側から荷重を掛けることになり、これに対してリング部3aにはその内面の第1係合部18が首部2に形成されている各突状部9,8を乗り越える際の抵抗力が反力として作用する。その結果、開閉部10を円筒部3に近づける方向に荷重が作用する。その荷重は、スコア線12が形成されている箇所では、カバー部10bの左右の部分における下端縁10eと前記立ち上がり部3bにおける左右両側の部分の上端縁3cとを接近させ、これら両者の間の部分を圧縮する荷重となる。その荷重の一部によって薄肉弱化部14が撓む。すなわち、スコア線12に掛かる荷重の一部が薄肉弱化部14で受け持たれ、スコア線12への応力の集中がその分、緩和される。スコア線12への応力集中は特にスコア線12の始まりとなるスコア線開始部12aに応力が集中するためスコア線破断の起点となりやすい。よって、スコア線開始部12aに薄肉弱化部14を連設することでスコア線開始部12aへの応力集中が緩和される。そのために、キャップ1を首部2に取り付ける際にスコア線12に亀裂や破断が生じることが防止もしくは回避される。
また、開閉部10と円筒部3との間にはスコア線12やスリット13が設けられていてこれらの部分での圧縮方向での強度が弱い。したがって、キャップ1を首部2に取り付けるために開閉部10に荷重を掛けた場合、開閉部10が円筒部3に接近するように撓みが生じる。その結果、開閉部10におけるカバー部10bの下端縁10eが、リング部3aの上端縁3cに形成されている盛り上げ部17に当接すると、それ以上にはスリット13の間隔が狭くならない。その結果、スリット13同士の間に設けられているブリッジ部15の撓みが制限されるので、ブリッジ部15の破断や亀裂を防止もしくは回避することができる。すなわち、スコア線12やブリッジ部15のピルファープルーフ機能が損なわれることを回避することができる。
一方、口部6を開く場合には、前述した突片部16に指を掛けて開閉部10を押し上げる。その操作は、容器4を握っている手の親指によって行うことができる。突片部16が形成されている部分は縦スリット16aによってカバー部10bから離隔されており、またリング部3aとの間にブリッジ部15が形成されてないので、突片部16が形成されている部分を押し上げると、突片部16が上方かつ外方に撓むため、指が掛かり易くなる(指の掛かる範囲が拡大する)。また、カバー部10bの内面に形成されている第2係合部19が首部2に形成されている第2突条部9から外れる。そのため、開閉部10を押し開く操作性が良好になる。
開閉部10を押し上げることにより、前述したブリッジ部15が次第に破断し、またスコア線12におけるスリット13側の端部から次第に破断が進行し、ついにはスコア線12の全体が破断して開閉部10の大部分が円筒部3から引き離される。このようにして開閉部10がヒンジ部11を中心にして回転し、上板部10aの下面に形成されているプラグ部10cが口部6から抜け出て、口部6が開かれる。図9には口部6を開いている途中の状態を示し、また図10には開閉部10を完全に開いた状態を示してある。なお、開閉部10がヒンジ部11を中心にして回転する際にカバー部10bの左右の部分における下端縁10eが首部2のいずれの箇所にも干渉しないことは前述したとおりである。
開閉部10を円筒部3に繋いでいるヒンジ部11は、前述したように二本の帯状部11aによって形成されているから、開閉部10を口部6を封止している状態(図1ないし図3に示す状態)から開栓方向に回転させると、帯状部11aに撓みが生じる。これら二本の帯状部11aの間隔は、首部2の中心軸線(もしくはキャップ1の中心)を中心とした開き角度(中心角度)として20°〜70°の間隔に設定されているから、開閉部10を次第に開くと、二本の帯状部11aを接近させる方向の応力が生じる。その応力は、前記上板部10aが立ち上がり部3bの上方に一直線状に延びる位置に開閉部10が開いた状態で最大になる。したがって、この状態を越えて開閉部10が開いた場合(例えば図10に示す状態まで開いた場合)には、ヒンジ部11を構成している二本の帯状部11aに作用する応力によって、開閉部10はその開き状態に維持され、あるいは口部6を封止する方向への回転に対して抵抗力が作用する。そのため、例えば図10に示す状態まで開閉部10を開き、その状態が容器4を傾けて内容物を飲用する場合、あるいは他の容器に内容物を注ぐ場合、開閉部10が重力によって閉じ方向に回転することを防止もしくは抑制することができる。すなわち、内容物を取り出す際に開閉部10が邪魔になることがない。
口部6を再度封止するためには、開閉部10を口部6側に回転させ、その上板部10aの下面に形成されているプラグ部10cを口部6に密着嵌合させる。すなわち、開閉部10を元の位置に戻す。こうすることにより、カバー部10bの内面に形成されている第2係合部19が首部2に形成されている第2突条部9の下側に係合する。すなわち、開閉部10は口部6を封止した状態を維持する。この状態では、首部2のうち前記立ち上がり部3bによって覆われている箇所とは反対側の外周面が、開閉部10におけるカバー部10bによって覆われる。このカバー部10bによって覆われる部分は、容器4から内容物を直接飲用する場合に唇を接触させる部分であり、ここがカバー部10bによって覆われるので、その部分を清浄な状態あるいは衛生上良好な状態に維持することができる。
なお、本発明は上述した具体例に限定されない。すなわち、本発明は首部に取り付けられる円筒部と、その円筒部にヒンジ部を介して取り付けられている開閉部との間に、容易に破断するスコア線が形成され、かつ打栓時の圧縮荷重でスコア線で亀裂や破断が生じないように荷重の一部を受け持って撓む薄肉弱化部が設けられていればよく、これに加えて、スリットや盛り上げ部(あるいは段差部)およびブリッジ部、突片部(摘み部)および縦スリットなどの他の構成を設けることは任意である。したがって、各構成要素の組み合わせは特許請求の範囲に記載されているようになっていてよい。
また本発明では、例えば上述したスリット13を設ける構成に替えてスコア線12を設けてもよい。このような構成であれば、開閉部と円筒部とがスコア線を介して連結され、ヒンジ部の近傍を除いて両者の全体がスコア線を介して連結されることになる。したがって、薄肉弱化部はそのスコア線に隣接するいずれかの部分に設けてあればよい。また、指を掛ける摘み部となる突片部は、カバー部の下端縁に沿って設ける必要は特にはなく、例えば図11に示すように、縦スリット16aが設けられている範囲を超えた上側に突片部16を設けてもよい。さらに、縦スリットは突片部に隣接して設ける必要はなく、例えば図12に示すように、突片部16を横切るように縦スリット16aを設けてもよい。