以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態におけるロールオーババルブ1の概略構成を示す縦断面図である。
本実施形態のロールオーババルブ1は、例えば二輪車等の車両に搭載されるものであり、燃料タンクの外部で車両本体等に固定され、図1に示すように、燃料タンク8から外部に延びて燃料タンク8の内の上部空間から燃料タンク8の外部へ燃料蒸気を排出するための排出経路に介装されるものである。ロールオーババルブ1は、図1に示すような姿勢で車両に搭載される。
ロールオーババルブ1は、ハウジング2、ハウジング2内に設けられた弁体30、ウェイト40、スプリング50、およびスプリング60を備えている。ハウジング2は、例えば樹脂製であり、筒状部である円筒部11を有するケース10と、円筒部11の下方開口端部に装着されたキャップ20とにより構成されている。
ケース10は、軸線が上下方向に延びる円筒部11と、円筒部11の上方端を塞ぐように設けられた天井部12と、天井部12から上方に向かって立設された円筒部11と軸線を同一とするパイプ部13とが一体成形されている。天井部12の中央部には、上方に向かうほど通路断面積が小さくなるテーパ孔14が設けられており、円筒部11内の空間とパイプ部13内の通路空間とを連通している。テーパ孔14内面の上部領域が弁体30が着座するための弁座15となっている。
天井面12の下面には、テーパ孔14の周囲に、上方に向かって環状に陥没した環状溝部12aが形成されている。この環状溝部12aは、テーパ孔14回りの成形品樹脂量を減少させて、ケース10成形加工時の成形収縮等によって弁座15となるテーパ孔14内面が変形することを抑止するために設けられている。
ケース10の円筒部11は、内方に向かって立設され上下方向に延びる3つ以上のリブ16を有している。リブ16は、上方に位置する上部リブ16aの方が、下方に位置する下方リブ16bよりも内方への突出高さが高くなっており、上部リブ16aと下部リブ16bとの間に段部16cが形成されている。
キャップ20は、円盤状の平板部21と、平板部21の外周側縁部から上方に立設した嵌合円筒部22と、平板部21から下方に向かって立設された嵌合円筒部22と軸線を同一とするパイプ部23と、嵌合円筒部22よりも中心側において平板部21から上方に立設された嵌合円筒部22と軸線を同一とする円筒部24とが一体成形されている。
嵌合円筒部22は、ケース10の円筒部11の下方縁部の内側に嵌合する円筒部であり、円筒部11の下方縁部の内面と嵌合円筒部22の外面とを圧接しながら溶着を行って、ケース10とキャップ20とが接合されている。ケース10とキャップ20との接合は、溶着によらず、接着によるものであってもよいし、クリップ等の締結部材での締結によるものであってもよい。
キャップ20のパイプ部23内の通路空間と円筒部24内の通路空間とは、平板部21を貫通して連通している。また、円筒部24は、上端面にウェイト40の下端面が当接可能となっているとともに、周方向において複数箇所に切欠き部が形成されている。したがって、円筒部24の上端面へのウェイト40の当接の有無に係わらず、円筒部24の内側の空間と外周側の空間とは常時連通している。
上方端に天井部12が設けられ、下方端にキャップ20の平板部21が設けられたケース10の円筒部11の内側には、円筒部11の軸線方向に変位可能な弁体30およびウェイト40が配設されている。
弁体30は、例えば樹脂製であり、筒状部11の軸線方向に直交する方向に拡がる円盤部32と、円盤部32の外周部から下方に延びる円筒部33と、円盤部32の中央部から上方に突出したニードル部31とが一体成形されている。円盤部32には、下面側の中央に下方に向かって突出した円柱形状の凸部32aが形成されている。弁体30のニードル部31、円筒部33、および凸部32aは、全て軸線が同一となるように配設されている。
前述した円筒部11のリブ16の上部リブ16aは、弁体30の円筒部33の外周面に沿う位置にまで立設しており、弁体30が変位する際には、円筒部11の内面の一部である上部リブ16aの内方先端面に弁体30の円筒部33の外周面が摺接して、弁体30を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
弁体30のニードル部31は略円錐形状をなしており、弁体30が円筒部11の軸線方向の上方へ最も変位した場合には、ニードル部31の先端部近傍がテーパ孔14内の弁座15に着座して、円筒部11内の空間とパイプ部13内の通路空間とを遮断するようになっている。ニードル部31は、弁体30における実質的な弁体部である。
弁体30の円筒部33には、周方向の複数箇所に(例えば2〜4箇所に)下方に延びる腕部34が設けられ、腕部34の下方側の端部には内方に向かって突出した係止爪35が形成されている。腕部34は、円筒部33周方向におけるそれぞれの両側に、円筒部33の下端から上方に切欠き溝部が延びることで形成されている。すなわち、腕部34は、軸線方向において円筒部33の延在範囲内に形成されている。
係止爪35は、上面部が後述するウェイト40に係止する係止面36であり、係止爪35の下面部には、下方に向かうほど径外方向に位置する傾斜面37が形成されている。係止面36は、円筒部11軸線方向の上方を向いた第1面部に相当する。
弁体30の円盤部32には、ニードル部31よりも外周側に、上下方向に貫通する貫通孔38が形成されている。貫通孔38は、弁体30の弁座15への着座領域以外に形成されていることになる。貫通孔38は、弁体30の係止爪35の配設位置に対応して設けられており、係止爪35を円筒部33軸線方向から円盤部32上に投影した領域を全て含むように形成されている。換言すれば、弁体30を上方側から見たときには、貫通孔38を通して係止爪35が全て見えるように、貫通孔38が形成されている。このような貫通孔38を設けることで、係止爪35を備える弁体30のアンダカット構造を解消して、簡易な構成の金型で弁体30を成形することが可能である。
弁体30よりも下方に配設されたウェイト部材に相当するウェイト40は、例えば金属製であり、弁体30とは別体であるとともに、弁体30に比較して重量が大きくなっている。ウェイト40は、上下方向(筒状部11の軸線方向)に延びる円柱形状の大径部41と、大径部41よりも小径の円柱形状であり大径部41の下端から下方に突出した下方小径部42と、大径部41よりも小径の円柱形状であり大径部41の上端よりも上方に位置する上方小径部43と、上方小径部43よりも小径であり大径部41と上方小径部43とを繋ぐ円柱形状の首部44とが、全ての軸線を同一として一体形成されている。
前述した円筒部11のリブ16の下部リブ16bは、ウェイト40の大径部41の外周面に沿う位置にまで立設しており、ウェイト40が変位する際には、円筒部11の内面の一部である下部リブ16bの内方先端面にウェイト40の大径部41の外周面が摺接して、ウェイト40を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
このように、リブ16は、弁体30およびウェイト40の円筒部11軸線方向への変位を案内するものであるので、3つ以上形成する必要がある。安定した軸線方向の変位のためには、円筒部11の周方向においてほぼ均等に6〜8つ形成することが好ましい。
大径部41の下面部、すなわち、大径部41と下方小径部42との段部には、内径が下方小径部42の外径よりも若干大きいコイル状のスプリング50の上端が常時接している。スプリング50の下端は、キャップ20の平板部21の上面のうち嵌合円筒部22と円筒部24との間の部位に接している。スプリング50は、常時圧縮状態で用いられ、ウェイト40を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢するウェイト部材付勢手段に相当する。
上方小径部43の下面部は、首部44との接続部の周囲が前述した弁体30の係止爪35の係止面36と係止する係止面46となっている。係止面46は、円筒部11軸線方向の下方を向いた第2面部に相当する。
図1からも明らかなように、弁体30の係止爪35の内側を向いた先端部は、ウェイト40の上方小径部43の外周面よりも内方に位置し、首部44の外周面よりも外方に位置して首部44の外周面から離れている。また、弁体30の円筒部33の内径はウェイト40の上方小径部43の外径よりも大きくなっており、円筒部33の内周面と上方小径部43の外周面とは離れている。したがって、弁体30とウェイト40とが係止するときには、軸線方向に対峙する係止面36と係止面46とが係止し、他の部位は接触しないようになっている。
上方小径部43には、上面部の中央から円柱状の空間を形成するように下方に向かって凹んだ凹部43aが形成されている。弁体30とウェイト40との間には、コイル状のスプリング60が介装されている。凹部43aは、内径がスプリング60の外径よりも若干大きくなっており、凹部43aの底面にスプリング60の下端が接している。一方、弁体30の凸部32aは、外径がスプリング60の内径よりも若干小さくなっており、弁体30の円盤部32の凸部32aの周囲に、スプリング60の上端が接している。スプリング60は、常時圧縮状態で用いられ、弁体30をウェイト40に対して円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢する弁体付勢手段に相当する。
弁体30とウェイト40とをスプリング60を介装して組み付けるときには、弁体30とウェイト40とを相対的に近づけていくと、弁体30の係止爪35の傾斜面37がウェイト40の上方小径部43の上方の外周角部に当接し、腕部34が外方に撓んで、係止爪35が押し広げられる。そして、弁体30とウェイト40とを更に近づけていくと、弁体30の係止爪35がウェイト40の上方小径部43を乗り越え、腕部34の撓みが解消して、上述した係止面36と係止面46とが係止関係が形成される。弁体30とウェイト40とは、所謂スナップフィット構造により組み付けられて係止関係が形成される。
上述した構成のロールオーババルブ1は、図1で図示した姿勢で車両に固定され、ケース10のパイプ部13には、燃料タンク8から外部へ延びる燃料ホース9のうち上流部となる燃料ホース9aが装着され、キャップ20のパイプ部23には燃料ホース9のうち下流部となる燃料ホース9bが装着される。これにより、ロールオーババルブ1のハウジング2の内部は、燃料ホース9の内部とともに、燃料タンク8の内部から燃料タンク8の外部へ燃料蒸気を排出するための排出経路となる。
図1に示すように、車両が転倒等により傾斜していない場合、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していないときには、ウェイト40の自重がスプリング50の付勢力(ウェイト40を上方に押す荷重)に打ち勝ってスプリング50を圧縮し、ウェイト40はハウジング2内の最下部に位置する。弁体30はスプリング60によって上方に向かって付勢されているが、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46とが係止して弁体30の上方への変位が禁止され、弁体30は弁座15から離れて開弁状態を形成している。
これにより、燃料タンク8の内部から外部へ、燃料ホース9a内、パイプ部13内、テーパ孔14、円筒部11内のリブ16間、円筒部24の切欠き部、円筒部24内、パイプ部23内、燃料ホース9b内が、燃料蒸気の排出経路となる。したがって、燃料タンク8内から燃料蒸気が排出される場合には、ハウジング2内では、円筒部11内を車両の上方側である軸線方向の一方から車両の下方側である軸線方向の他方へ燃料蒸気が流通する。
図1に示す状態から車両が転倒等により傾斜していくと、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していくと、ウェイト40の自重(厳密には、ウェイト40、スプリング60、弁体30の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に減少し、スプリング50の付勢力によってウェイト40がキャップ20から徐々に離れていく(図1図示上方に変位していく)。弁体30はスプリング60によって弁座15方向に付勢されており、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46との係止関係が維持されているので、弁体30はウェイト40とともに変位する。
車両が傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図2(a)に示すように、弁体30が図示上方へ最大変位して弁体30が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト40の大径部41の上面はリブ16の段部16cから離れている。
車両が更に傾斜を続けると、図2(b)に示すように、弁体30は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト40は大径部41の上面がリブ16の段部16cに当接するまで変位を続ける。図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態の間では、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46とは離れ、弁体30とウェイト40とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体30とウェイト40とが相対的に変位しているときには、弁体30とウェイト40とは接触していない。
車両の傾斜が回復していくと、ウェイト40の自重(厳密には、ウェイト40、スプリング60、弁体30の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に増大して、スプリング50の付勢力に打ち勝ってスプリング50を圧縮させ、弁体30は弁座15から離れて図1に示す状態に戻る。
上述の構成のロールオーババルブ1によれば、弁体30は、車両非傾斜時の上方である円筒部11軸線方向の一方を向いた係止面36を有し、弁体30より重いウェイト40は、弁体30の係止面36よりも円筒部11軸線方向の上方側において下方である円筒部11軸線方向の他方を向いた係止面46を有しており、車両の傾斜角度が所定角度以下である場合には、弁体30が弁座15から離れており、弁体30の係止面36がウェイト40の係止面46に係止している。
したがって、燃料タンク8が急激に冷却される等して燃料タンク8内に大きな負圧が発生し、ハウジング2の円筒部11内に下方から上方へ向かう空気の上昇流が発生したとしても、ウェイト40は弁体30よりも重量が大きく、弁体30の係止面36がウェイト40の係止面46に係止しているので、弁体30は浮き上がり難い。このようにして、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46との係止構造という比較的簡素な構造で、燃料タンク8内に大きな負圧が発生した場合であっても、弁体30の弁座15への貼り付きを防止することできる。
また、弁体30は、弁座15に着座する着座領域以外の部位に、円筒部11の軸線方向に貫通する貫通孔38が形成されている。したがって、燃料タンク8内に大きな負圧が発生してハウジング2の円筒部11内に空気の上昇流が発生したとしても、弁体30の貫通孔38に空気を流通させることができ上昇流による上方への付勢力は小さいので、弁体30は極めて浮き上がり難い。このようにして、燃料タンク8内に大きな負圧が発生した場合であっても弁体30の弁座15への貼り付きを確実に防止することできる。さらに、車両転倒等による傾斜状態で閉弁され排出を抑止されて燃料ホース9a内やパイプ部13内に滞留していた液体燃料が、車両転倒等の傾斜状態からの復帰にともなって円筒部11内に流入したときに、弁体30に貫通孔38が形成されていることで容易に下方に流出させて外部へ排出することができる。
車両が転倒等により傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図2(a)に示すように、弁体30が図示上方へ最大変位して弁体30が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト40の大径部41の上面はリブ16の段部16cから離れている。
車両が更に傾斜を続けると、図2(b)に示すように、弁体30は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト40は大径部41の上面がリブ16の段部16cに当接するまで変位を続ける。図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態の間では、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46とは離れ、弁体30とウェイト40とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体30とウェイト40とが相対的に変位しているときには、弁体30とウェイト40とは接触していない。
また、ハウジング2の円筒部11内には、変位規制部であるリブ16の段部16cが形成されており、段部16cにウェイト40が当接してウェイト40の車両非傾斜時の上方である軸線方向の一方への変位を軸線方向の所定位置で規制する。弁体30およびウェイト40が閉弁方向に変位したときには、図2(a)に示すように、弁体30が弁座15に着座した時点では、ウェイト40の大径部41の上面はリブ16の段部16cから離れており変位を規制されていない。弁体30着座後も、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46とが離れて、図2(b)に示すように、リブ16の段部16cに当接するまでウェイト40が変位を続ける。この間、弁体30は、スプリング60により弁座15への着座状態を維持する。
したがって、弁体30が弁座15に着座するときに、弁体30よりも重量が大きいウェイト40による衝撃荷重が弁体30と弁座15との着座部に加わることを防止できる。これにより、弁体30と弁座15との着座部の形状が変形する等して閉弁時のシール性能が低下することを抑制できる。
このような、弁体30着座時のウェイト40衝撃回避の構成は、図1に示した状態において、弁体30の着座領域と弁座15との軸線方向距離をA、弁体30円盤部32の下面とウェイト40上方小径部43の上面との軸線方向距離をB、ウェイト40大径部41上面とリブ16段部16cとの軸線方向距離をCとしたときに、A<C、および、A+B>Cの両者の関係を満たすように各種寸法関係を設定することで達成される。
また、弁体30およびウェイト40は、いずれも、円筒部11の軸線方向に変位する際には、円筒部11の内面であるリブ16の先端部に摺接して軸線方向に案内され、弁体30が弁座15から離れているときには、係止面36と係止面46とが係止する係止部のみで接しており、弁体30が弁座15に着座し弁体30とウェイト40とが相対的に変位しているときには、弁体30とウェイト40とは接触していない。したがって、弁体30とウェイト40とが相対的に変位しているときに、ウェイト40が弁体30に荷重を印加することはなく、閉弁時のシール性能が低下することを確実に抑制できる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図3および図4に基づいて説明する。
本第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、弁体およびウェイト部材の構成が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図3は、本発明を適用した第2の実施形態におけるロールオーババルブ1の概略構成を示す縦断面図である。
図3に示すように、本実施形態では、弁体130は、例えば樹脂製であり、筒状部11の軸線方向に直交する方向に拡がる円盤部32と、円盤部32の外周部から下方に延びる円筒部33と、円盤部32の中央部から上方に突出したニードル部31と、円筒部33の下端から全周に亘って径外方向に突出したフランジ部135とが一体成形されている。弁体130のニードル部31、円筒部33およびフランジ部135は、軸線が同一となるように配設されている。本実施形態では、弁体130のフランジ部135の上面が、円筒部11軸線方向の上方を向いた第1面部に相当する係止面136となっている。
弁体130よりも下方に配設されたウェイト部材に相当するウェイト140は、例えば金属製であり、弁体130とは別体であるとともに、弁体130に比較して重量が大きくなっている。
ウェイト140は、上下方向(筒状部11の軸線方向)に延びる円柱形状の本体部141と、本体部141に対して軸線を同一として本体部141の上面より若干下方にかしめ固定された環状プレート145とにより構成されている。本体部141には、上端面の中央から下方に向かって円柱形状の空間を形成するように凹んだ上方凹部142と、下端面の中央から上方に向かって内径の異なる2段の円柱状の空間を形成するように凹んだ下方凹部143とが形成されている。上方凹部142の底面の中央部と下方凹部143の底面の中央部との間には、両凹部間を連通するように貫通する貫通孔144が形成されている。両凹部142、143および貫通孔144も、軸線を本体部141の軸線と同一としている。
本実施形態では、ウェイト140の下方凹部143の段部143aよりも下方部位の内径は、ウェイト部材付勢手段であるスプリング50の外径よりも若干大きくなっており、スプリング50の上端は、常時段部143aに接している。
ウェイト140の上方凹部142は、内径が弁体130のフランジ部135の外径よりも大きくなっており、上方凹部142の内周面とフランジ部135の外周面とは離れている。上方凹部142の上端部に配設された環状プレート145は、外径が上方凹部142の内径よりも大きく、内径は上方凹部142の内径よりも小さくなっており、本体部141により外周縁部の少なくとも周方向の複数箇所をかしめられて本体部141に固定されている。環状プレート145の上面は、本体部141の上面よりも若干下方に位置している。
環状プレート145の内径は、弁体130の円筒部33の外径よりも大きく、環状プレート145の内周面と円筒部33の外周面とは離れている。また、環状プレート145の内径は、フランジ部135の外径よりも小さくなっている。本実施形態では、ウェイト140の環状プレート145の下面が(具体的には、下面のうち内周縁部が)、円筒部11軸線方向の下方を向いた第2面部に相当する係止面146となっている。
したがって、弁体130とウェイト140とが係止するときには、軸線方向に対峙する係止面136と係止面146とが係止し、他の部位は接触しないようになっている。
また、弁体130の円筒部33の内径は、スプリング60の外径よりも若干大きくなっており、スプリング60の上端は、円筒部33の内側において円盤部32の下面に常時接している。本体部141の上方凹部142の底面に形成された貫通孔144の内径は、スプリング60の内径よりも若干小さくなっており、スプリング60は貫通孔144の開口周縁部において上方凹部142の底面に常時接している。
本実施形態においても、円筒部11のリブ16は、弁体130およびウェイト140の円筒部11軸線方向への変位を案内するように形成されている。弁体130が変位する際には、円筒部11の内面の一部である上部リブ16aの内方先端面に弁体130の円筒部33の外周面が摺接して、弁体130を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。また、ウェイト140が変位する際には、円筒部11の内面の一部である下部リブ16bの内方先端面にウェイト140の本体部141の外周面が摺接して、ウェイト140を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
なお、本実施形態では、ウェイト140がハウジング2内の最下部に位置するときには、ウェイト140の下面が嵌合円筒部22の上面に当接するようになっている。そこで、嵌合円筒部22には、周方向の複数箇所に上面側から凹んだ切欠き部を形成し、ウェイト140の下面が嵌合円筒部22の上面に当接している場合であっても、この切欠き部を介して、リブ16間の空間とウェイト140下方の空間とを連通するようになっている。
上述した構成の本実施形態のロールオーババルブ1は、図3で図示した姿勢で車両に固定され、車両が転倒等により傾斜していない場合、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していないときには、ウェイト140の自重がスプリング50の付勢力(ウェイト140を上方に押す荷重)に打ち勝ってスプリング50を圧縮し、ウェイト140はハウジング2内の最下部に位置する。弁体130はスプリング60によって上方に向かって付勢されているが、弁体130の係止面136とウェイト140の係止面146とが係止して弁体130の上方への変位が禁止され、弁体130は弁座15から離れて開弁状態を形成している。
これにより、燃料タンク8の内部から外部へ、燃料ホース9a内、パイプ部13内、テーパ孔14、円筒部11内のリブ16間、嵌合円筒部22の切欠き部、円筒部24内、パイプ部23内、燃料ホース9b内が、燃料蒸気の排出経路となる。したがって、燃料タンク8内から燃料蒸気が排出される場合には、ハウジング2内では、円筒部11内を車両の上方側である軸線方向の一方から車両の下方側である軸線方向の他方へ燃料蒸気が流通する。
図3に示す状態から車両が転倒等により傾斜していくと、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していくと、ウェイト140の自重(厳密には、ウェイト140、スプリング60、弁体130の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に減少し、スプリング50の付勢力によってウェイト140がキャップ20から徐々に離れていく(図3図示上方に変位していく)。弁体130はスプリング60によって弁座15方向に付勢されており、弁体130の係止面136とウェイト140の係止面146との係止関係が維持されているので、弁体130はウェイト140とともに変位する。
車両が傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図4(a)に示すように、弁体130が図示上方へ最大変位して弁体130が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト140の本体部141の上面はリブ16の段部16cから離れている。
車両が更に傾斜を続けると、図4(b)に示すように、弁体130は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト140は本体部141の上面がリブ16の段部16cに当接するまで変位を続ける。図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態の間では、弁体130の係止面136とウェイト140の係止面146とは離れ、弁体130とウェイト140とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体130とウェイト140とが相対的に変位しているときには、弁体130とウェイト140とは接触していない。
車両の傾斜が回復していくと、ウェイト140の自重(厳密には、ウェイト140、スプリング60、弁体130の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に増大して、スプリング50の付勢力に打ち勝ってスプリング50を圧縮させ、弁体130は弁座15から離れて図3に示す状態に戻る。
上述の構成のロールオーババルブ1によれば、弁体130は、車両非傾斜時の上方である円筒部11軸線方向の一方を向いた係止面136を有し、弁体130より重いウェイト140は、弁体130の係止面136よりも円筒部11軸線方向の上方側において下方である円筒部11軸線方向の他方を向いた係止面146を有しており、車両が傾斜角度が所定角度以下である場合には、弁体130が弁座15から離れており、弁体130の係止面136がウェイト140の係止面146に係止している。
したがって、燃料タンク8が急激に冷却される等して燃料タンク8内に大きな負圧が発生し、ハウジング2の円筒部11内に下方から上方へ向かう空気の上昇流が発生したとしても、ウェイト140は弁体130よりも重量が大きく、弁体130の係止面136がウェイト140の係止面146に係止しているので、弁体130は浮き上がり難い。このようにして、弁体130の係止面136とウェイト140の係止面146との係止構造という比較的簡素な構造で、燃料タンク8内に大きな負圧が発生した場合であっても、弁体130の弁座15への貼り付きを防止することできる。
車両が転倒等により傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図4(a)に示すように、弁体130が車両非傾斜時の車両上方へ最大変位して弁体130が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト140の本体部141の上面はリブ16の段部16cから離れている。
車両が更に傾斜を続けると、図4(b)に示すように、弁体130は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト140は本体部141の上面がリブ16の段部16cに当接するまで変位を続ける。図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態の間では、弁体130の係止面136とウェイト140の係止面146とは離れ、弁体130とウェイト140とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体130とウェイト140とが相対的に変位しているときには、弁体130とウェイト140とは接触していない。
また、ハウジング2の円筒部11内には、変位規制部であるリブ16の段部16cが形成されており、段部16cにウェイト140が当接してウェイト140の車両非傾斜時の上方である軸線方向の一方への変位を軸線方向の所定位置で規制する。弁体130およびウェイト140が車両上方側である閉弁方向に変位したときには、図4(a)に示すように、弁体130が弁座15に着座した時点では、ウェイト140の本体部141の上面はリブ16の段部16cから離れており変位を規制されていない。弁体130着座後も、弁体130の係止面136とウェイト140の係止面146とが離れて、図4(b)に示すように、リブ16の段部16cに当接するまでウェイト140が変位を続ける。この間、弁体130は、スプリング60により弁座15への着座状態を維持する。
したがって、弁体130が弁座15に着座するときに、弁体130よりも重量が大きいウェイト140による衝撃荷重が弁体130と弁座15との着座部に加わることを防止できる。これにより、弁体130と弁座15との着座部の形状が変形する等して閉弁時のシール性能が低下することを抑制できる。
このような、弁体130着座時のウェイト140衝撃回避の構成は、第1の実施形態と同様に、図3に示した状態において、弁体130の着座領域と弁座15との軸線方向距離をA、弁体130のフランジ部135の下面とウェイト140の上方凹部142の底面との軸線方向距離をB、ウェイト140本体部141上面とリブ16段部16cとの軸線方向距離をCとしたときに、A<C、および、A+B>Cの両者の関係を満たすように各種寸法関係を設定することで達成される。
また、弁体130およびウェイト140は、いずれも、円筒部11の軸線方向に変位する際には、円筒部11の内面であるリブ16の先端部に摺接して軸線方向に案内され、弁体130が弁座15から離れているときには、係止面136と係止面146とが係止する係止部のみで接しており、弁体130が弁座15に着座し弁体130とウェイト140とが相対的に変位しているときには、弁体130とウェイト140とは接触していない。したがって、弁体130とウェイト140とが相対的に変位しているときに、ウェイト140が弁体130に荷重を印加することはなく、閉弁時のシール性能が低下することを確実に抑制できる。
また、ウェイト140の上方凹部142の底面には貫通孔144が形成されて、上方凹部142内と下方凹部143内とは貫通孔144を介して連通している。すなわち、ウェイト140の中心には軸線方向に延びる貫通路が形成されている。したがって、車両転倒等による傾斜状態で閉弁され排出を抑止されて燃料ホース9a内やパイプ部13内に滞留していた液体燃料が、車両転倒等の傾斜状態からの復帰にともなって円筒部11内へ流入し、ウェイト140の上方凹部142内に浸入したとしても、ウェイト140の貫通構造により容易に下方に流出させて外部へ排出することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図5および図6に基づいて説明する。
本第3の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、弁体、ウェイト部材およびウェイト部材付勢手段等の構成が異なる。なお、第1、第2の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図5は、本発明を適用した第3の実施形態におけるロールオーババルブ1の概略構成を示す縦断面図である。
図5に示すように、本実施形態では、弁体230は、例えば樹脂製であり、筒状部11の軸線方向に延びる円柱部232と、円柱部232の上端中央部から上方に突出したニードル部31と、円柱部232の下端から全周に亘って径外方向に突出したフランジ部235と、円柱部232の下端中央部から下方に突出した略円錐台形状の凸部239とが一体成形されている。弁体230のニードル部31、円柱部232、フランジ部235、および凸部239は、軸線が同一となるように配設されている。本実施形態では、弁体230のフランジ部235の上面が、円筒部11軸線方向の上方を向いた第1面部に相当する係止面236となっている。
弁体230の外周側に配設されたウェイト部材に相当するウェイト240は、例えば金属製であり、弁体230とは別体であるとともに、弁体230に比較して重量が大きくなっている。
ウェイト240は、上下方向(筒状部11の軸線方向)に延びる円筒部241と、円筒部241に対して軸線を同一として円筒部241の内周面から全周に亘って径内方向に突出した環状凸部242とが一体的に形成されている。
本実施形態では、ウェイト240の円筒部241のうち環状凸部242よりも下方部位の内径は、弁体230のフランジ部235の外径よりも大きくなっており、円筒部241の内周面とフランジ部235の外周面とは離れている。
環状凸部242の内径は、弁体230の円柱部232の外径よりも大きく、環状凸部242の内周面と円柱部232の外周面とは離れている。また、環状凸部242の内径は、フランジ部235の外径よりも小さくなっている。本実施形態では、ウェイト240の環状凸部242の下面が、円筒部11軸線方向の下方を向いた第2面部に相当する係止面246となっている。
したがって、弁体230とウェイト240とが係止するときには、軸線方向に対峙する係止面236と係止面246とが係止し、他の部位は接触しないようになっている。
本実施形態では、ウェイト部材付勢手段と弁体付勢手段とは共通の付勢手段であるコイル状のスプリング250からなり、弁体230よりも下方においてウェイト240の内側に配設されている。スプリング250は、外径が弁体230のフランジ部235の外径よりも小さく、内径が弁体230の凸部239の上方基端部の外径よりも大きくなっている。そして、スプリング250の上端は、弁体230のフランジ部235の下面に常時接しており、スプリング250の下端は、キャップ20の平板部21の上面のうち嵌合円筒部22と円筒部24との間の部位に接しており、スプリング250は常時圧縮状態で用いられている。
したがって、スプリング250は、弁体230を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢するとともに、弁体230が弁座15から離れており係止面236と係止面246とが接しているときには、弁体230のフランジ部235を介してウェイト240を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢する。
本実施形態では、円筒部11は、内方に向かって立設され上下方向に延びる3つ以上のリブ216を有している。リブ216は、突出高さが均一となっており、ウェイト240の円筒部11軸線方向への変位を案内するように形成されている。ウェイト240が変位する際には、円筒部11の内面の一部であるリブ216の内方先端面にウェイト240の円筒部241の外周面が摺接して、ウェイト240を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
また、ケース10の天井部12の下面には、円筒部11の軸線方向に直交する断面が円弧状をなし下方に向かって突出した複数の垂下壁212が形成されている。複数の垂下壁212は、周方向に置いて相互に間隔を空けて配設されている。複数の垂下壁212は、円筒部11と軸線を同一としてケース10の天井部12から下方に向かって突出した円筒部に、下方側の先端部から上方側の基端部に向かって複数のスリットを形成してなる壁部ということもできる。この垂下壁212は、弁体230の円筒部11軸線方向への変位を案内するように形成されている。弁体230が変位する際には、ケース10の内面の一部である垂下壁212の内側面に弁体230の円柱部232の外周面が摺接して、弁体230を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
上述した構成の本実施形態のロールオーババルブ1は、図5で図示した姿勢で車両に固定され、車両が転倒等により傾斜していない場合、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していないときには、ウェイト240の自重がスプリング250の付勢力(ウェイト240を上方に押す荷重)に打ち勝ってスプリング250を圧縮し、ウェイト240はハウジング2内の最下部に位置する。弁体230はスプリング250によって上方に向かって付勢されているが、弁体230の係止面236とウェイト240の係止面246とが係止して弁体230の上方への変位が禁止され、弁体230は弁座15から離れて開弁状態を形成している。
これにより、燃料タンク8の内部から外部へ、燃料ホース9a内、パイプ部13内、テーパ孔14、垂下壁212間、円筒部11内のリブ216間、嵌合円筒部22の切欠き部、円筒部24内、パイプ部23内、燃料ホース9b内が、燃料蒸気の排出経路となる。したがって、燃料タンク8内から燃料蒸気が排出される場合には、ハウジング2内では、円筒部11内を車両の上方側である軸線方向の一方から車両の下方側である軸線方向の他方へ燃料蒸気が流通する。
図5に示す状態から車両が転倒等により傾斜していくと、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していくと、ウェイト240の自重(厳密には、ウェイト240、弁体230の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に減少し、スプリング250の付勢力によってウェイト240がキャップ20から徐々に離れていく(図5図示上方へ変位していく)。弁体230の係止面236とウェイト240の係止面246との係止関係が維持されているので、弁体230はウェイト240とともに変位する。
車両が傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図6(a)に示すように、弁体230が図示上方へ最大変位して弁体230が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト240の円筒部241の上面はケース10の天井部12の下面から離れている。
車両に更に衝撃等が加わった場合、図6(b)に示すように、弁体230は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト240は、スプリング250による付勢はなくなるが、円筒部241の上面が天井部12の下面に当接するまで慣性力により変位を続ける。図6(a)に示す状態から図6(b)に示す状態の間では、弁体230の係止面236とウェイト240の係止面246とは離れ、弁体230とウェイト240とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体230とウェイト240とが相対的に変位しているときには、弁体230とウェイト240とは接触していない。
車両の傾斜が回復していくと、ウェイト240の自重(厳密には、ウェイト240、弁体230の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に増大して、スプリング250の付勢力に打ち勝ってスプリング250を圧縮させ、弁体230は弁座15から離れて図5に示す状態に戻る。
上述の構成のロールオーババルブ1によれば、弁体230は、車両非傾斜時の上方である円筒部11軸線方向の一方を向いた係止面236を有し、弁体230より重いウェイト240は、弁体230の係止面236よりも円筒部11軸線方向の上方側において下方である円筒部11軸線方向の他方を向いた係止面246を有しており、車両が傾斜角度が所定角度以下である場合には、弁体230が弁座15から離れており、弁体230の係止面236がウェイト240の係止面246に係止している。
したがって、燃料タンク8が急激に冷却される等して燃料タンク8内に大きな負圧が発生し、ハウジング2の円筒部11内に下方から上方へ向かう空気の上昇流が発生したとしても、ウェイト240は弁体230よりも重量が大きく、弁体230の係止面236がウェイト240の係止面246に係止しているので、弁体230は浮き上がり難い。このようにして、弁体230の係止面236とウェイト240の係止面246との係止構造という比較的簡素な構造で、燃料タンク8内に大きな負圧が発生した場合であっても、弁体230の弁座15への貼り付きを防止することできる。
車両が転倒等により傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図6(a)に示すように、弁体230が車両非傾斜時の車両上方へ最大変位して弁体230が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト240の円筒部241の上面は天井部12の下面から離れている。
車両に更に衝撃等が加わった場合、図6(b)に示すように、弁体230は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト240は円筒部241の上面が天井部12の下面に当接するまで変位を続ける。図6(a)に示す状態から図6(b)に示す状態の間では、弁体230の係止面236とウェイト240の係止面246とは離れ、弁体230とウェイト240とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体230とウェイト240とが相対的に変位しているときには、弁体230とウェイト240とは接触していない。
また、ハウジング2内には、変位規制部である天井部12が形成されており、天井部12にウェイト240が当接してウェイト240の車両非傾斜時の上方である軸線方向の一方への変位を軸線方向の所定位置で規制する。弁体230およびウェイト240が車両上方側である閉弁方向に変位したときには、図6(a)に示すように、弁体230が弁座15に着座した時点では、ウェイト240の円筒部241の上面は天井部12から離れており変位を規制されていない。弁体230着座後も、弁体230の係止面236とウェイト240の係止面246とが離れて、図6(b)に示すように、天井部12に当接するまでウェイト240が変位を続けることが可能である。この間、弁体230は、スプリング250により弁座15への着座状態を維持する。
したがって、弁体230が弁座15に着座するときに、弁体230よりも重量が大きいウェイト240による衝撃荷重が弁体230と弁座15との着座部に加わることを防止できる。これにより、弁体230と弁座15との着座部の形状が変形する等して閉弁時のシール性能が低下することを抑制できる。
このような、弁体230着座時のウェイト240による衝撃回避の構成は、図5に示した状態において、弁体230の着座領域と弁座15との軸線方向距離をA、ウェイト240円筒部241上面と天井部12下面との軸線方向距離をCとしたときに、A<Cの関係を満たすように各種寸法関係を設定することで達成される。
また、弁体230は、円筒部11の軸線方向に変位する際には、ケース10の内面である垂下壁212の内側面に摺接して軸線方向に案内され、ウェイト240は、円筒部11の軸線方向に変位する際には、ケース10の内面であるリブ216の先端部に摺接して軸線方向に案内される。そして、弁体230が弁座15から離れているときには、弁体230とウェイト240とは係止面236と係止面246とが係止する係止部のみで接しており、弁体230が弁座15に着座し弁体230とウェイト240とが相対的に変位しているときには、弁体230とウェイト240とは接触していない。したがって、弁体230とウェイト240とが相対的に変位しているときに、ウェイト240が弁体230に荷重を印加することはなく、閉弁時のシール性能が低下することを確実に抑制できる。
また、スプリング250は、弁体230を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢するとともに、弁体230が弁座15から離れており係止面236と係止面246とが接しているときには、弁体230のフランジ部235を介してウェイト240を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢する共通の付勢手段となっている。したがって、第1、第2の実施形態のロールオーババルブよりも、スプリングの数を低減することができる。
また、ウェイト240の円筒部241のうち環状凸部242よりも下方部位の内径は、弁体230のフランジ部235の外径よりも大きくなっており、環状凸部242の内径は、弁体230の円柱部232の外径よりも大きくなっている。したがって、弁体230をウェイト240の内側に図示下方側から挿入して、図5に図示する状態に配設することができる。本実施形態のロールオーババルブ1を組み立てる際には、ケース10の円筒部11のキャップ装着口からケース10内にウェイト240、弁体230、スプリング250を順に挿設した後、ケース10に対してキャップ20を装着するという一方向組付けを行うことが可能である。
なお、上述した本実施形態の構成説明では省略していたが、弁体230の係止面236とウェイト240の係止面246が係止した際には、両係止面236、246の係止部は周方向における全周に亘って連続しておらず、弁体230とウェイト240との間に流体が流通可能な通路が形成されていることが好ましい。これによれば、車両転倒等による傾斜状態で閉弁され排出を抑止されて燃料ホース9a内やパイプ部13内に滞留していた液体燃料が、車両転倒等の傾斜状態からの復帰にともなって円筒部11内へ流入し、弁体230とウェイト240との間に浸入したとしても、両係止面236、246の係止部の流体通路を介して容易に下方に流出させて外部へ排出することができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について図7および図8に基づいて説明する。
本第4の実施形態は、前述の第3の実施形態と比較して、弁体とウェイト部材との係止構造等が異なる。なお、第1〜第3の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図7は、本発明を適用した第4の実施形態におけるロールオーババルブ1の概略構成を示す縦断面図である。
図7に示すように、本実施形態では、弁体330は、例えば樹脂製であり、筒状部11の軸線方向に直交する方向に拡がる円盤部32と、円盤部32の外周部から下方に延びる円筒部33と、円盤部32の中央部から上方に突出したニードル部331と、円筒部33の下端から全周に亘って径外方向に突出したフランジ部335とが一体成形されている。本実施形態のニードル部331は、円柱状部の先端に同一径の半球状部を設けた形状をなしており、半球状部の外周面が弁座15への着座領域となっている。
弁体330のニードル部331、円盤部32、円筒部33、およびフランジ部335は、軸線が同一となるように配設されている。本実施形態では、弁体330のフランジ部335の上面が、円筒部11軸線方向の上方を向いた第1面部に相当する係止面336となっている。
弁体330の外周側に配設されたウェイト部材に相当するウェイト340は、例えば金属製であり、弁体330とは別体であるとともに、弁体330に比較して重量が大きくなっている。
ウェイト340は、上下方向(筒状部11の軸線方向)に延びる円筒形状をなしている。ウェイト340の外径は軸線方向において均一となっているものの、内周面の軸線方向の途中に段部が形成されて、内径は上方側よりも下方側の方が大きくなっており、上方側の小内径部341と下方側の大内径部342とが一体的に形成された構造となっている。
本実施形態では、ウェイト340の大内径部342の内径は、弁体330のフランジ部335の外径よりも小さく、円筒部33の外径よりも大きくなっており、大内径部342の内周面と円筒部33の外周面とは離れている。
ウェイト340の小内径部341の内径は、弁体330のニードル部331の外径より大きいばかりでなく、ケース10の後述する円筒部312の外径よりも大きくなっている。これにより、小内径部341の内周面とニードル部331の外周面とは離れているとともに、小内径部341の内周面と円筒部312の外周面とは離れている。
本実施形態では、ウェイト340の下端面が、円筒部11軸線方向の下方を向いた第2面部に相当する係止面346となっている。したがって、弁体330とウェイト340とが係止するときには、軸線方向に対峙する係止面336と係止面346とが係止し、他の部位は接触しないようになっている。なお、弁体330のフランジ部335には、ウェイト340の係止面346と重ならない領域に、上下方向に(筒状部11の軸線方向に)貫通する貫通孔39が形成されている。
本実施形態では、ウェイト部材付勢手段と弁体付勢手段とは共通の付勢手段であるコイル状のスプリング250からなり、弁体330の円筒部33の内側に配設されている。スプリング250は、外径が弁体330の円筒部33の内径よりも小さくなっている。そして、スプリング250の上端は、弁体330の円盤部32の下面に常時接しており、スプリング250の下端は、キャップ20の平板部21の上面のうち嵌合円筒部22と円筒部24との間の部位に接しており、スプリング250は常時圧縮状態で用いられている。
したがって、スプリング250は、弁体330を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢するとともに、弁体330が弁座15から離れており係止面336と係止面346とが接しているときには、弁体330のフランジ部335を介してウェイト340を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢する。
本実施形態では、第3の実施形態と同様に、円筒部11の内面に設けられた複数のリブ216は、ウェイト340の円筒部11軸線方向への変位を案内するように形成されている。ウェイト340が変位する際には、円筒部11の内面の一部であるリブ216の内方先端面にウェイト340の外周面が摺接して、ウェイト340を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
ケース10の天井部12の下面には、円筒部11の軸線方向に延びる円筒部312が形成され、円筒部312の内部は、天井部12よりも上方に設けられたパイプ部13内の通路空間と連通する通路空間となっている。円筒部312内の通路空間は、円筒部312の下端部近傍(下端より若干上方)において縮径されており、この縮径部の下方のテーパ面が弁座15となっている。
円筒部312の内周面のうち弁座15よりも下方には、内方に向かって立設され上下方向に延びる3つ以上のリブ312aを有している。リブ312aは、突出高さが均一となっており、弁体330の円筒部11軸線方向への変位を案内するように形成されている。円筒部312の内面の一部であるリブ312aの内方先端面に弁体330のニードル部331の外周面が摺接して、弁体330を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
ケース10の天井部12の下面には、下方に向かって立設され径方向に延びる複数のリブ12cが形成されている。本実施形態では、リブ12cは、円筒部11のリブ216の上端から連続して延びるように設けられている。リブ12cの下方先端部は、本実施形態における変位規制部に相当する。
上述した構成の本実施形態のロールオーババルブ1は、図7で図示した姿勢で車両に固定され、車両が転倒等により傾斜していない場合、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していないときには、ウェイト340の自重がスプリング250の付勢力(ウェイト340を上方に押す荷重)に打ち勝ってスプリング250を圧縮し、ウェイト340はハウジング2内の最下部に位置する。弁体330はスプリング250によって上方に向かって付勢されているが、弁体330の係止面336とウェイト340の係止面346とが係止して弁体330の上方への変位が禁止され、弁体330は弁座15から離れて開弁状態を形成している。
これにより、燃料タンク8の内部から外部へ、燃料ホース9a内、パイプ部13内、円筒部312内、リブ312a間、貫通孔38、39、円筒部24内、パイプ部23内、燃料ホース9b内が、燃料蒸気の排出経路となる。また、円筒部11内のリブ216間も、貫通孔38、39と並列な排出経路となる。したがって、燃料タンク8内から燃料蒸気が排出される場合には、ハウジング2内では、円筒部11内を車両の上方側である軸線方向の一方から車両の下方側である軸線方向の他方へ燃料蒸気が流通する。
図7に示す状態から車両が転倒等により傾斜していくと、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していくと、ウェイト340の自重(厳密には、ウェイト340、弁体330の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に減少し、スプリング250の付勢力によってウェイト340がキャップ20から徐々に離れていく(図7図示上方へ変位していく)。弁体330の係止面336とウェイト340の係止面346との係止関係が維持されているので、弁体330はウェイト340とともに変位する。
車両が傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図8(a)に示すように、弁体330が図示上方へ最大変位して弁体330が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト340の上面は、ケース10の天井部12のリブ12cから離れている。
車両に更に衝撃等が加わった場合、図8(b)に示すように、弁体330は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト340は、スプリング250による付勢はなくなるが、ウェイト340の上端面が天井部12のリブ12cに当接するまで慣性力により変位を続ける。図8(a)に示す状態から図8(b)に示す状態の間では、弁体330の係止面336とウェイト340の係止面346とは離れ、弁体330とウェイト340とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体330とウェイト340とが相対的に変位しているときには、弁体330とウェイト340とは接触していない。
車両の傾斜が回復していくと、ウェイト340の自重(厳密には、ウェイト340、弁体330の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に増大して、スプリング250の付勢力に打ち勝ってスプリング250を圧縮させ、弁体330は弁座15から離れて図7に示す状態に戻る。
上述の構成のロールオーババルブ1によれば、弁体330は、車両非傾斜時の上方である円筒部11軸線方向の一方を向いた係止面336を有し、弁体330より重いウェイト340は、弁体330の係止面336よりも円筒部11軸線方向の上方側において下方である円筒部11軸線方向の他方を向いた係止面346を有しており、車両が傾斜角度が所定角度以下である場合には、弁体330が弁座15から離れており、弁体330の係止面336がウェイト340の係止面346に係止している。
したがって、燃料タンク8が急激に冷却される等して燃料タンク8内に大きな負圧が発生し、ハウジング2の円筒部11内に下方から上方へ向かう空気の上昇流が発生したとしても、ウェイト340は弁体330よりも重量が大きく、弁体330の係止面336がウェイト340の係止面346に係止しているので、弁体330は浮き上がり難い。このようにして、弁体330の係止面336とウェイト340の係止面346との係止構造という比較的簡素な構造で、燃料タンク8内に大きな負圧が発生した場合であっても、弁体330の弁座15への貼り付きを防止することできる。
車両が転倒等により傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図8(a)に示すように、弁体330が車両非傾斜時の車両上方へ最大変位して弁体330が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト340の上面は天井部12の下面にあるリブ12cから離れている。
車両に更に衝撃等が加わった場合、図8(b)に示すように、弁体330は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト340は上面が天井部12のリブ12cに当接するまで変位を続ける。図8(a)に示す状態から図8(b)に示す状態の間では、弁体330の係止面336とウェイト340の係止面346とは離れ、弁体330とウェイト340とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体330とウェイト340とが相対的に変位しているときには、弁体330とウェイト340とは接触していない。
また、ハウジング2内には、変位規制部である天井部12のリブ12cが形成されており、リブ12cにウェイト340が当接してウェイト340の車両非傾斜時の上方である軸線方向の一方への変位を軸線方向の所定位置で規制する。弁体330およびウェイト340が車両上方側である閉弁方向に変位したときには、図8(a)に示すように、弁体330が弁座15に着座した時点では、ウェイト340の上面は天井部12のリブ12cから離れており変位を規制されていない。弁体330着座後も、弁体330の係止面336とウェイト340の係止面346とが離れて、図8(b)に示すように、天井部12のリブ12cに当接するまでウェイト340が変位を続けることが可能である。この間、弁体330は、スプリング250により弁座15への着座状態を維持する。
したがって、弁体330が弁座15に着座するときに、弁体330よりも重量が大きいウェイト340による衝撃荷重が弁体330と弁座15との着座部に加わることを防止できる。これにより、弁体330と弁座15との着座部の形状が変形する等して閉弁時のシール性能が低下することを抑制できる。
このような、弁体330着座時のウェイト340による衝撃の回避の構成は、図7に示した状態において、弁体330の着座領域と弁座15との軸線方向距離をA、ウェイト340上面と天井部12のリブ12c下方先端面との軸線方向距離をCとしたときに、A<Cの関係を満たすように各種寸法関係を設定することで達成される。
また、弁体330は、円筒部11の軸線方向に変位する際には、ケース10の内面である円筒部312のリブ312aの内方先端部に摺接して軸線方向に案内され、ウェイト340は、円筒部11の軸線方向に変位する際には、ケース10の内面であるリブ216の内方先端部に摺接して軸線方向に案内される。そして、弁体330が弁座15から離れているときには、弁体330とウェイト340とは係止面336と係止面346とが係止する係止部のみで接しており、弁体330が弁座15に着座し弁体330とウェイト340とが相対的に変位しているときには、弁体330とウェイト340とは接触していない。したがって、弁体330とウェイト340とが相対的に変位しているときに、ウェイト340が弁体330に荷重を印加することはなく、閉弁時のシール性能が低下することを確実に抑制できる。
また、スプリング250は、弁体330を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢するとともに、弁体330が弁座15から離れており係止面336と係止面346とが接しているときには、弁体330のフランジ部335を介してウェイト340を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢する共通の付勢手段となっている。したがって、第3の実施形態と同様に、第1、第2の実施形態のロールオーババルブよりも、スプリングの数を低減することができる。
また、ウェイト340の大内径部342の内径は、弁体330の円筒部33の外径よりも大きくなっており、小内径部341の内径は、弁体330のニードル部331の外径よりも大きくなっている。したがって、弁体330をウェイト340の内側に図示下方側から挿入して、図7に図示する状態に配設することができる。本実施形態のロールオーババルブ1を組み立てる際には、ケース10の円筒部11のキャップ装着口からケース10内にウェイト340、弁体330、スプリング250を順に挿設した後、ケース10に対してキャップ20を装着するという一方向組付けを行うことが可能である。
また、弁体330には、円盤部32に貫通孔38が設けられ、フランジ部335に貫通孔39が設けられている。弁体330は、弁座15に着座する着座領域およびウェイト340との係止領域以外の部位に、円筒部11の軸線方向に貫通する貫通孔38、39が形成されている。したがって、燃料タンク8内に大きな負圧が発生してハウジング2の円筒部11内に空気の上昇流が発生したとしても、弁体330の貫通孔38、39に空気を流通させることができ上昇流による上方への付勢力は小さいので、弁体330は極めて浮き上がり難い。さらに、車両転倒等による傾斜状態で閉弁され排出を抑止されて燃料ホース9a内やパイプ部13内に滞留していた液体燃料が、車両転倒等の傾斜状態からの復帰にともなって円筒部11内に流入したときに、弁体330に貫通孔38、39が形成されていることで容易に下方に流出させて外部へ排出することができる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について図9および図10に基づいて説明する。
本第5の実施形態は、前述の第4の実施形態と比較して、弁体およびウェイト部材の構造が異なる。なお、第1〜第4の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図9は、本発明を適用した第5の実施形態におけるロールオーババルブ1の概略構成を示す縦断面図である。
図9に示すように、本実施形態では、弁体430は、例えば樹脂製であり、筒状部11の軸線方向に直交する方向に拡がる円盤部32と、円盤部32の外周部から下方に延びる円筒部33と、円盤部32の中央部から上方に突出したニードル部331と、円盤部32の下面と円筒部33の内面とを接続して補強する複数の補強リブ434とが一体成形されている。
弁体430のニードル部331、円盤部32、および円筒部33は、軸線が同一となるように配設されている。本実施形態では、弁体430の円盤部32の上面のうち外周側の縁部が、円筒部11軸線方向の上方を向いた第1面部に相当する係止面436となっている。
弁体430の上方側に配設されたウェイト部材に相当するウェイト440は、例えば金属製であり、弁体430とは別体であるとともに、弁体430に比較して重量が大きくなっている。
ウェイト440は、上下方向(筒状部11の軸線方向)に延びる円筒形状をなしている。ウェイト440の外径および内径はそれぞれ軸線方向において均一となっており、軸線方向のいずれの位置においてもドーナツ型の同一断面形状を有する円筒体である。
本実施形態では、ウェイト440の内径は、弁体430のニードル部331の外径より大きいばかりでなく、ケース10の円筒部312の外径よりも大きくなっており、ウェイト440の内周面と円筒部312の外周面とは離れている。
本実施形態では、ウェイト440の下端面が、円筒部11軸線方向の下方を向いた第2面部に相当する係止面446となっている。したがって、弁体430とウェイト440とが係止するときには、軸線方向に対峙する係止面436と係止面446とが係止し、他の部位は接触しないようになっている。
なお、弁体430の円盤部32に設けた貫通孔38は、ウェイト440の係止面446と重ならない領域に、すなわち、軸線方向から見たときにウェイト440の内周面より内側となる部位に、複数(本例では4つ)形成されている。複数の貫通孔38は、周方向において均等に配設されている。
本実施形態では、ウェイト部材付勢手段と弁体付勢手段とは共通の付勢手段であるコイル状のスプリング250からなり、弁体430の円筒部33の内側に配設されている。スプリング250は、外径が、複数の補強リブ434の円盤部32への接続部の内接円の径とほぼ同一となっている。そして、スプリング250の上端は、弁体430の円盤部32の下面に常時接しており、スプリング250の下端は、キャップ20の平板部21の上面のうち嵌合円筒部22と円筒部24との間の部位に接しており、スプリング250は常時圧縮状態で用いられている。
したがって、スプリング250は、弁体430を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢するとともに、弁体430が弁座15から離れており係止面436と係止面446とが接しているときには、弁体430の円盤部32を介してウェイト440を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢する。
本実施形態では、第3、第4の実施形態と同様に、円筒部11の内面に設けられた複数のリブ216は、ウェイト440の円筒部11軸線方向への変位を案内するように形成されている。ウェイト440が変位する際には、円筒部11の内面の一部であるリブ216の内方先端面にウェイト440の外周面が摺接して、ウェイト440を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
なお、本実施形態では、弁体430が変位する際にも、円筒部11の内面の一部であるリブ216の内方先端面に弁体430の円筒部33の外周面が摺接して、弁体430を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
ケース10の天井部12の下面から円筒部11の軸線方向に延びる円筒部312の下端部近傍には、円筒部312内の通路空間が下端面に向かって徐々に広がるテーパ面が形成されており、このテーパ面が弁座15となっている。
ここで、ケース10の天井部12が(具体的には天井部12の下面が)、本実施形態における変位規制部に相当する。
上述した構成の本実施形態のロールオーババルブ1は、図9で図示した姿勢で車両に固定され、車両が転倒等により傾斜していない場合、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していないときには、ウェイト440の自重がスプリング250の付勢力(ウェイト440を上方に押す荷重)に打ち勝ってスプリング250を圧縮し、ウェイト440はハウジング2内の最下部(変位可能な最下方位置)に位置する。弁体430はスプリング250によって上方に向かって付勢されているが、弁体430の係止面436とウェイト440の係止面446とが係止して弁体430の上方への変位が禁止され、弁体430は弁座15から離れて開弁状態を形成している。
これにより、燃料タンク8の内部から外部へ、燃料ホース9a内、パイプ部13内、円筒部312内、ウェイト440の内側空間の下方部分、貫通孔38、円筒部33内、円筒部24内、パイプ部23内、燃料ホース9b内が、燃料蒸気の排出経路となる。したがって、燃料タンク8内から燃料蒸気が排出される場合には、ハウジング2内では、円筒部11内を車両の上方側である軸線方向の一方から車両の下方側である軸線方向の他方へ燃料蒸気が流通する。
図9からも明らかなように、この排出経路は、ハウジング2内において比較的軸線近傍にあり、燃料蒸気をほぼ直線的に流通することができる。なお、円筒部11内のリブ216間も、貫通孔38と並列な排出経路とすることが可能である。
図9に示す状態から車両が転倒等により傾斜していくと、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していくと、ウェイト440の自重(厳密には、ウェイト440、弁体430の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に減少し、スプリング250の付勢力によって弁体430およびウェイト440が図9図示上方へ変位していく。弁体430の係止面436とウェイト440の係止面446との係止関係が維持されているので、弁体430はウェイト440とともに変位する。
車両が傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図10(a)に示すように、弁体430が図示上方へ最大変位して弁体430が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト440の上面は、ケース10の天井部12から離れている。
車両に更に衝撃等が加わった場合、図10(b)に示すように、弁体430は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト440は、スプリング250による付勢はなくなるが、ウェイト440の上端面が天井部12の下面に当接するまで慣性力により変位を続ける。図10(a)に示す状態から図10(b)に示す状態の間では、弁体430の係止面436とウェイト440の係止面446とは離れ、弁体430とウェイト440とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体430とウェイト440とが相対的に変位しているときには、弁体430とウェイト440とは接触していない。
車両の傾斜が回復していくと、ウェイト440の自重(厳密には、ウェイト440、弁体430の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に増大して、スプリング250の付勢力に打ち勝ってスプリング250を圧縮させ、弁体430は弁座15から離れて図9に示す状態に戻る。
上述の構成のロールオーババルブ1によれば、弁体430は、車両非傾斜時の上方である円筒部11軸線方向の一方を向いた係止面436を有し、弁体430より重いウェイト440は、弁体430の係止面436よりも円筒部11軸線方向の上方側において下方である円筒部11軸線方向の他方を向いた係止面446を有しており、車両が傾斜角度が所定角度以下である場合には、弁体430が弁座15から離れており、弁体430の係止面436がウェイト440の係止面446に係止している。
したがって、燃料タンク8が急激に冷却される等して燃料タンク8内に大きな負圧が発生し、ハウジング2の円筒部11内に下方から上方へ向かう空気の上昇流が発生したとしても、ウェイト440は弁体430よりも重量が大きく、弁体430の係止面436がウェイト440の係止面446に係止しているので、弁体430は浮き上がり難い。このようにして、弁体430の係止面436とウェイト440の係止面446との係止構造という比較的簡素な構造で、燃料タンク8内に大きな負圧が発生した場合であっても、弁体430の弁座15への貼り付きを防止することできる。
車両が転倒等により傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図10(a)に示すように、弁体430が車両非傾斜時の車両上方へ最大変位して弁体430が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト440の上面は天井部12の下面から離れている。
車両に更に衝撃等が加わった場合、図10(b)に示すように、弁体430は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト440は上面が天井部12の下面に当接するまで変位を続ける。図10(a)に示す状態から図10(b)に示す状態の間では、弁体430の係止面436とウェイト440の係止面446とは離れ、弁体430とウェイト440とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体430とウェイト440とが相対的に変位しているときには、弁体430とウェイト440とは接触していない。
また、ハウジング2は、変位規制部である天井部12を有しており、天井部12にウェイト440が当接してウェイト440の車両非傾斜時の上方である軸線方向の一方への変位を軸線方向の所定位置で規制する。弁体430およびウェイト440が車両上方側である閉弁方向に変位したときには、図10(a)に示すように、弁体430が弁座15に着座した時点では、ウェイト440の上面は天井部12の下面から離れており変位を規制されていない。弁体430着座後も、弁体430の係止面436とウェイト440の係止面446とが離れて、図10(b)に示すように、天井部12の下面に当接するまでウェイト440が変位を続けることが可能である。この間、弁体430は、スプリング250により弁座15への着座状態を維持する。
したがって、弁体430が弁座15に着座するときに、弁体430よりも重量が大きいウェイト440による衝撃荷重が弁体430と弁座15との着座部に加わることを防止できる。これにより、弁体430と弁座15との着座部の形状が変形する等して閉弁時のシール性能が低下することを抑制できる。
このような、弁体430着座時のウェイト440による衝撃の回避の構成は、図9に示した状態において、弁体430の着座領域と弁座15との軸線方向距離をA、ウェイト440上面と天井部12の下面との軸線方向距離をCとしたときに、A<Cの関係を満たすように各種寸法関係を設定することで達成される。
また、弁体430は、円筒部11の軸線方向に変位する際には、ケース10の内面であるリブ216の内方先端部に摺接して軸線方向に案内され、ウェイト440も、円筒部11の軸線方向に変位する際には、ケース10の内面であるリブ216の内方先端部に摺接して軸線方向に案内される。そして、弁体430が弁座15から離れているときには、弁体430とウェイト440とは係止面436と係止面446とが係止する係止部のみで接しており、弁体430が弁座15に着座し弁体430とウェイト440とが相対的に変位しているときには、弁体430とウェイト440とは接触していない。したがって、弁体430とウェイト440とが相対的に変位しているときに、ウェイト440が弁体430に荷重を印加することはなく、閉弁時のシール性能が低下することを確実に抑制できる。
また、スプリング250は、弁体430を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢するとともに、弁体430が弁座15から離れており係止面436と係止面446とが接しているときには、弁体430の円盤部32を介してウェイト440を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢する共通の付勢手段となっている。したがって、第3、第4の実施形態と同様に、第1、第2の実施形態のロールオーババルブよりも、スプリングの数を低減することができる。
また、ウェイト440の内径は、円筒部312の外径および弁体430のニードル部331の外径のいずれよりも大きくなっている。したがって、本実施形態のロールオーババルブ1を組み立てる際には、ケース10の円筒部11のキャップ装着口からケース10内にウェイト440、弁体430、スプリング250を順に挿設した後、ケース10に対してキャップ20を装着するという一方向組付けを行うことが可能である。
また、弁体430には、円盤部32に貫通孔38が設けられている。弁体430には、弁座15に着座する着座領域およびウェイト440との係止領域以外の部位に、円筒部11の軸線方向に貫通する貫通孔38が形成されている。したがって、燃料タンク8内に大きな負圧が発生してハウジング2の円筒部11内に空気の上昇流が発生したとしても、弁体430の貫通孔38に空気を流通させることができ上昇流による上方への付勢力は小さいので、弁体430は極めて浮き上がり難い。
このとき、車両非傾斜時の燃料蒸気の排出経路が空気導入経路となるが、弁体430の貫通孔38を軸線方向から見たときにウェイト440の内周面より内側となる部位に形成すること等により、空気導入経路を、ハウジング2内において比較的軸線近傍として、空気をほぼ直線的に上昇させることができる。したがって、上昇空気流によって、弁体430およびウェイト440が一層浮き上がり難く、弁体430の弁座15への貼り付きを確実に防止することできる。
さらに、車両転倒等による傾斜状態で閉弁され排出を抑止されて燃料ホース9a内やパイプ部13内に滞留していた液体燃料が、車両転倒等の傾斜状態からの復帰にともなって円筒部11内に流入したときに、弁体430に貫通孔38が形成されていることで容易に下方に流出させて外部へ排出することができる。
このとき、車両非傾斜時の燃料蒸気の排出経路が液体燃料排出経路となるが、弁体430の貫通孔38を軸線方向から見たときにウェイト440の内周面より内側となる部位に形成すること等により、液体燃料排出経路を、ハウジング2内において比較的軸線近傍として、液体燃料をほぼ直線的に下方に流通することができる。したがって、液体燃料の排出が極めて容易である。
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
上記各実施形態では、ハウジング2を構成する円筒部11、パイプ部13、23は、車両非傾斜時の車両上下方向(鉛直方向)に延びていたが、これに限定するものではなく、円筒部11が車両非傾斜時の車両上下方向に延びていれば、例えば、パイプ部13、23は、鉛直方向に対して傾斜する方向に延びるものであってもよい。
また、車両非傾斜時において円筒部11が鉛直方向から若干傾斜する方向に延びるように、ロールオーババルブ1を車両に搭載するものであってもよい。
また、上記各実施形態では、ハウジング2の筒状部は円筒部11であったが、これに限定されるものではなく、例えば、横断面が楕円形状の筒状部であってもかまわない。
また、上記第1、第2の実施形態では、弁体付勢手段であるスプリング60は、弁体とウェイトとの間に介装されて弁体を上方に押し上げるように付勢するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、スプリング60の下端をハウジング2のキャップ20に接するように配設するものであってもよい。
また、上記第1、第2の実施形態では、リブ16の段部16cを変位規制部とし、上記第3、第5の実施形態では、天井部12の下面を変位規制部とし、上記第4の実施形態では、天井部12のリブ12cを変位規制部としていたが、ウェイト部材の変位規制部はこれらに限定されるものではない。例えば、第3の実施形態においては、垂下壁212の下方先端部を変位規制部としてもかまわない。
また、上記各実施形態では、弁体30、130、230、330、430が弁座15から離れているときには、第1面部である係止面36、136、236、336、436と第2面部である係止面46、146、246、346、446とは、面接触して係止していたが、これに限定されるものではない。弁体が弁座から離れているときには、第1面部と第2面部とは少なくとも一部が接触して(当接して)係止していればよく、例えば、第1面部と第2面部との一部同士が点接触もしくは線接触して係止しているものであってもよい。
また、上記第1、第5の実施形態では、弁体に貫通孔38を設け、上記第4に実施形態では弁体に貫通孔38、39を設け、これらの貫通孔は、いずれもハウジング2の円筒部11の軸線方向に沿って(軸線と平行に)形成されていたが、これに限定されるものではない。貫通孔は、実質的に円筒部11の軸線方向に弁体を貫通するように形成されていればよい。すなわち、貫通孔は弁体を車両の上下方向に(車両の上方側である軸線方向の一方から車両の下方側である軸線方向の他方へ)貫通していればよい。例えば、貫通孔は、円筒部11の軸線に対して傾斜していてもよいし、円筒部11の軸線に対してねじれの位置にあってもかまわない。
また、上記各実施形態では、ハウジング2は、ケース10とキャップ20とにより構成されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、3つ以上の部材を組み合わせて構成するものであってもかまわない。
また、上記各実施形態では、ロールオーババルブ1は、燃料タンク8の外部において車両本体に固定されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、燃料タンク8内に搭載されるものであってもよい。
また、上記各実施形態では、ロールオーババルブ1を流通した燃料蒸気は、燃料ホース9bを介して直接外部に排出されるようになっていたが、ロールオーババルブ1よりも下流側の排出経路にキャニスタを配設するものであってもかまわない。
また、上記各実施形態では、ロールオーババルブ1が取り付けられる車両は二輪車であったが、これに限定されるものではない。例えば、芝刈り機であってもよいし、三輪もしくは四輪のバギー車両(小型の全地形対応車)であってもかまわない。