次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明の一実施形態に係る脱穀部30を備えるコンバイン1の全体構成について説明する。なお、コンバイン1は、脱穀部30に大豆や麦などの穀稈のすべてを投入して脱穀する全稈投入型コンバインである。
図1に示すように、コンバイン1には、機体フレーム2に対して、走行部10と、刈取部20と、脱穀部30と、選別部40と、穀粒貯溜部50と、排藁処理部60と、エンジン部70と、操縦部80とが備えられる。
走行部10は、機体フレーム2の下部に設けられる。走行部10は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置11などを有して、このクローラ式走行装置11により機体を前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
刈取部20は、機体フレーム2の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部20は、分草具21や、掻込リール22や、切断装置23や、搬送装置24などを有して、分草具21により圃場の穀稈を分草し、掻込リール22により分草後の穀稈を掻き込み、切断装置23により掻込後の穀稈の株元を切断し、搬送装置24により切断後の穀稈を左右略中央に横送した後に脱穀部30側へ搬送することができるように構成される。
脱穀部30は、機体フレーム2の左側部に設けられ、刈取部20の後方に配置される。脱穀部30は、図2、図3に示すように、扱胴31や、コンケーブ32などを有して、扱胴31およびコンケーブ32により刈取部20から搬送されてくる穀稈を後方へ送りながら脱穀し、その脱穀物を漏下させることができるように構成される。
選別部40は、機体フレーム2の左側部に設けられ、脱穀部30の下方に配置される。選別部40は、図2に示すように、揺動選別装置41や、風選別装置42や、穀粒搬送装置43などを有して、揺動選別装置41により脱穀部30から落下する脱穀物を穀粒や藁屑などに揺動選別し、風選別装置42により揺動選別後のものを更に穀粒と藁屑などとに風選別し、穀粒搬送装置43により選別後の穀粒を穀粒貯溜部50側へ搬送することができるように構成される。
この選別部40において、揺動選別装置41では、第一チャフシーブ411や、第二チャフシーブ412や、篩分部材413などが揺動選別装置本体414に備えられる。揺動選別装置本体414は、扱胴31の下方に配置され、その前部および後部に設けられる揺動機構415によって、第一チャフシーブ411や、第二チャフシーブ412や、篩分部材413などをともなって機体に対して揺動可能に設けられる。
第一チャフシーブ411および第二チャフシーブ412は、左右方向に等間隔ごとに横架された複数のチャフフィンを有してその角度を変更可能に構成され、それぞれ若干前低後高に傾斜した状態で前後に並置される。篩分部材413は、櫛状部材で構成され、第一チャフシーブ411の後端部に歯部を後方へ向けて設けられ、第二チャフシーブ412の前部の上方に位置するように配置される。
そして、揺動選別装置41は、揺動選別装置本体414を揺動させることによって、同時に第一チャフシーブ411や、第二チャフシーブ412や、篩分部材413などを揺動させて、脱穀部30から落下する脱穀物から穀粒を粗選別し、その粗選別後のものを風選別装置42に漏下させることができるようになっている。このときの漏下量は、第一チャフシーブ411および第二チャフシーブ412でそれぞれ複数のチャフフィンの角度が変更されることにより調節される。
風選別装置42では、唐箕ファン421や、一番コンベア422、二番コンベア423などが風選別装置本体424に備えられる。唐箕ファン421は、左右方向に横架された回転駆動軸を有して回転可能に構成され、風選別装置本体424の前端部に配置される。一番コンベア422および二番コンベア423は、左右方向に横架された回転駆動軸を有して回転可能に構成され、それぞれ唐箕ファン421の後方で風選別装置本体424の底部に前後に並置される。
そして、風選別装置42は、唐箕ファン421を回転駆動させることによって、選別風を起して後方へ送り、揺動選別装置41から落下する穀粒や藁屑に当てて、これらを比重選別し、そのうちの比重の重いものが選別風の影響を受けずに一番コンベア422へ落下するのに対して、比重の軽いものを選別風にて後方へ運んで、二番コンベア423へ落下させることができるようになっている。
風選別装置42は、また、一番コンベア422を駆動させることによって、この一番コンベア422で落下してきたものを一番物として風選別装置42の右側へ送って穀粒搬送装置43へ渡すとともに、二番コンベア423を駆動させることによって、この二番コンベア423で選別風にて運ばれたあとに落下してきたものを二番物として風選別装置42の右側へ送って二番還元装置44へ渡すことができるようになっている。
二番還元装置44には、二番搬送装置441と、二番処理装置442とが備えられる。二番搬送装置441は、揺動選別装置41および風選別装置42の右側方で前後方向に延設され、前高後低に傾斜した状態で配置される。二番処理装置442は、揺動選別装置41の前端部の上方に位置するように配置され、二番コンベア423と二番搬送装置441を介して接続される。
そして、二番還元装置44は、二番搬送装置441および二番処理装置442を駆動させることによって、二番搬送装置441で二番コンベア423から受けた二番物を二番処理装置442へ送り、二番処理装置442で二番搬送装置441から送られてくる二番物を、枝梗を除去するなどの処理を行ったあと、揺動選別装置41に落下させて戻すことができるようになっている。こうして、選別部40は、揺動選別装置41および風選別装置42を経た二番物を繰り返し選別することができるようになっている。
穀粒貯溜部50は、機体フレーム2の右側前後中央部に設けられ、脱穀部30および選別部40の右側方に配置される。穀粒貯溜部50は、穀粒タンク51や、穀粒排出装置52などを有して、穀粒タンク51により選別部40から搬送されてくる穀粒を貯溜し、穀粒排出装置52により貯溜中の穀粒を任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
排藁処理部60は、機体フレーム2の左側後上方に設けられ、脱穀部30および選別部40の後方に配置される。排藁処理部60は、排藁排出装置などを有して、この排藁搬送装置により脱穀部30からの脱穀済みの穀稈を排藁として外部へ排出するとともに、選別部40からの藁屑や塵埃などを外部へ排出することができるように構成される。
エンジン部70は、機体フレーム2の右側後部に設けられ、穀粒貯溜部50の後方に配置される。エンジン部70は、エンジンなどを有して、このエンジンの動力を各部の装置に適宜の伝動機構を介して供給し、エンジンにより各部の装置を駆動させることができるように構成される。
操縦部80は、機体フレーム2の右側前部に設けられ、穀粒貯溜部50の前方に配置される。操縦部80は、ステアリングハンドル81および変速レバーを含む各種の操作具や、操縦席や、キャビン82などを有して、操作具により各部の装置などを操作し、操縦席に操縦者を着座させ、キャビン82により操作具や操縦席を覆うことができるように構成される。
このようにして、コンバイン1は、操縦部80での操作具の操作に応じて、エンジン部70からエンジンの動力を各部の装置に供給して、走行部10で機体を走行させながら、刈取部20で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部30で刈取部20からの穀稈を脱穀し、選別部40で脱穀部30からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部50で選別部40からの穀粒を貯溜することができるように構成される。
次に、脱穀部30の構成について説明する。
図2、図3、図4に示すように、脱穀部30には、前後方向に延びる空間からなる扱室33が形成される。そしてこの扱室33に扱胴31とコンケーブ32とが内装される。扱室33において、扱胴31はその軸線方向を前後方向として、扱室33の前側で前方に開口する穀稈投入口331と、扱室33の後側で後方に開口する穀稈排出口との間にわたって設けられる。
扱胴31は、胴部311と、胴部311に取り付けられるインペラ312や複数の扱歯313などとを有して構成される。胴部311は、扱室33と同程度の前後長をもって円筒状に形成され、扱胴軸線方向に延伸される。ただし、胴部311の前端部だけは、他の部分と異なり面取りされた円筒状に形成される。
胴部311は、その前端部が扱室33の穀稈投入口331に臨み、後端部が扱室33の穀稈排出口を臨むように配置される。そして、胴部311は扱室33に扱胴軸線方向に架設された支軸34に支持され、この支軸34がエンジンの動力を得て回転駆動される場合に、支軸34を回転中心としてこれと一体的に回転可能とされる。
インペラ312は、螺旋状に形成され、胴部311の前端部の外周面に設けられる。一方、複数の扱歯313は、インペラ312の後方で、胴部311の前端部よりも後部側の外周面に扱胴径方向外側に突出するように設けられる。以下、前端部よりも後側部分の外周面を、胴部311の外周面として説明する。
扱歯313の取付位置は、図2で鎖線により示される、胴部311の外周面に設定された二種類の螺旋、即ち第一螺旋301と第二螺旋302とにより決定される。第一螺旋301と第二螺旋302とは、各々の巻き方向と、胴部311の外周面上において一周分の扱胴軸線方向の長さである螺旋ピッチとを次のようなものとして設定される。
すなわち、第一螺旋301と第二螺旋302とは、いずれも扱胴31の軸線と一致する前後方向に延伸する軸線を有して、互いの巻き方向は同一となり、互いの螺旋ピッチは異なるように設定される。第一螺旋301は、その螺旋ピッチが第二螺旋302の螺旋ピッチよりも小さくなるように設定され、胴部311の外周面を複数回にわたって周回するものとされる。
第二螺旋302は、その螺旋ピッチが第一螺旋301の螺旋ピッチよりも大きくなるとともに、胴部311の前後長に対して非常に大きくなるように設定され、胴部311の外周面を周回することなく、胴部311の後端部に達するものとされる。加えて、第二螺旋302は、複数、本実施形態においては、八つ備えられて、第二螺旋302同士は一定の間隔をとって略平行で交わらず、第一螺旋301とだけ交わるものとされる。
こうして、複数の扱歯313が、胴部311の外周面において、第一螺旋301に沿って等間隔ごとに配置されるとともに、第二螺旋302に沿って等間隔ごとに配置される。つまり、扱歯313が第一螺旋301と第二螺旋302との交点に位置するように配置される。この際に第一螺旋301の一周分に配置される扱歯313の数が、第二螺旋302の数とされる。
その結果、複数の扱歯313のうち、第一螺旋301のある周目における所定番に配置される扱歯313と、第一螺旋301の前または次の周目における同一番に配置される扱歯313とは、同一の第二螺旋302上において、扱胴軸線方向となる前後方向で隣り合うように並べられる。同時に、図4、図5に示すように、これらの互いに前後方向で隣り合う扱歯313は、扱胴31の正面視で、扱胴周方向に若干ずれて、即ち扱胴周方向の位相を互いに異ならせて並べられる。
つまり、複数の第二螺旋302のうち、同一の第二螺旋302上において、前後方向で隣り合う扱歯313の関係では、第一螺旋301のある周目に配置される扱歯313に対して、第一螺旋301の略一周後に配置される扱歯313が、扱胴31の正面視で、扱胴周方向に一定の間隔のずれをもって扱胴回転方向上手側に並べられる。これにより、これらの互いに前後方向で隣り合う扱歯313は、扱胴31の正面視で、互いの一部のみが重複するように配置される。
加えて、これらの互いに前後方向で隣り合う扱歯313は、後方に向かって繰り返し配置され、一つの第二螺旋302に沿って前後方向で扱胴31の軸線と平行とならない直線状に一列をなすように並べられる。この前後方向における扱歯313群の一列は第二螺旋302の数に応じて扱胴周方向に一定の間隔ごとに複数列配される。このようにして、胴部311の外周面において、各扱歯313の取付位置が第一螺旋301と第二螺旋302とにより決定される。
なお、前述の前後方向で隣り合う扱歯の先端部同士の間隔を、本実施形態においては、扱歯の取付位置を決定するための第一螺旋の螺旋ピッチと第二螺旋の螺旋ピッチとを一定とすることにより等しくしているが、双方または一方の螺旋ピッチを胴部の前後方向における任意範囲で他の範囲での螺旋ピッチよりも大きく、または小さくすることにより変更することもできる。
また、第一螺旋の巻き方向で隣り合う扱歯の先端部同士の間隔を、本実施形態においては、等しくしているが、第一螺旋の巻き方向で隣り合う扱歯の間に扱歯を追加で配置することにより短くすることや、第一螺旋の巻き方向に並べられる扱歯の一部を省くことにより長くすることもできる。
また、複数の扱歯を、本実施形態においては、第一螺旋かつ第二螺旋に沿った位置にだけ配置しているが、このような位置に加えて、第一螺旋と第二螺旋の双方または一方から外れた適宜の位置に配置することもできる。
図2、図3、図4に示すように、扱室33において、コンケーブ32は、その長手方向を前後方向、即ち扱胴軸線方向として、扱胴31の下方に配置され、扱胴31の下部を覆うように設けられる。コンケーブ32は、扱胴31の正面視で、円弧状に形成され、複数の分割コンケーブ320の集合体から構成される。
コンケーブ32は、本実施形態においては、扱胴軸線方向および周方向でそれぞれ二分割されるように、四枚の分割コンケーブ320の集合体から構成される。ただし、コンケーブは、複数の分割コンケーブの集合体と同様の構造をもつ単体で構成することも、異なる数の分割コンケーブの集合体から構成することも可能である。
分割コンケーブ320は、それぞれ同様の構造とされ、枠体321と篩い体322とを有して構成される。分割コンケーブ320は、扱胴軸線方向および周方向に二つずつ並設され、隣り合う分割コンケーブ320と枠体321同士が適宜の端面で接触して円弧をかたちづくるように、扱室33を形成する壁部に対して締結具などを介して取り付けられる。
図6、図7に示すように、枠体321には、前後の枠体形成片321F・321Bと、左右の枠体形成片321L・321Rとが備えられる。前後の枠体形成片321F・321Bは、それぞれ胴部311の外周面に沿って下方へ凸状に湾曲する部分円弧状の板状部材とされ、前後方向に所定間隔をとって設けられる。
左右の枠体形成片321L・321Rは、それぞれ前後方向に延伸する直線状の板状部材とされ、前後の枠体形成片321F・321Bの互いの左右端部間に架設される。こうして、枠体321は前後の枠体形成片321F・321Bと左右の枠体形成片321L・321Rとで枠状に構成される。
篩い体322には、複数の篩い体形成片322Aが備えられる。篩い体形成片322Aは前後方向に延伸する直線状の棒状部材、本実施形態においては、棒状部材のなかでも特に外周面を曲面とする円筒状部材とされる。複数の篩い体形成片322Aは、それぞれ左右の枠体形成片321L・321Rと平行に配置され、前後の枠体形成片321F・321Bの間にその湾曲方向に所定間隔ごとに架設される。
ここで、篩い体形成片322Aは、図8(a)に示すように、その内径が前後にわたって一定に、外径が前後の端部322Aaに限って小径になるように設定され、前後の端部付近が断面視凸状となるように構成される。一方、前後の枠体形成片321F・321Bは、篩い体形成片322Aの前後の端部322Aaと略同一の径をもった複数の貫通孔321Fa・321Baを湾曲方向に所定間隔ごと備えて構成される。
そして、篩い体形成片322Aの前後の端部322Aaがそれぞれ前後の枠体形成片321F・321Bの対応する貫通孔321Fa・321Baに嵌入される。これにより、篩い体形成片322Aが前後の枠体形成片321F・321Bの間にわたって設けられ、前後の枠体形成片321F・321Bに抜止されつつ、当該篩い体形成片322Aの軸線周りに回転自在に支持される。以下、篩い体形成片322Aの端部322Aaを除く扱胴31と対向する部分の外周面を、篩い体形成片322Aの外周面として説明する。
このような篩い体形成片322Aの支持構造において、篩い体形成片322Aは、図8(a)に示すように、その扱胴31と対向する部分の外径が前後の端部322Aaの外径に比べて適宜に大きく設定されて、図5に示すように、扱胴側外周面から扱胴31の外周面までの距離が前後の枠体形成片321F・321Bの扱胴側端面から扱胴31の外周面までの距離と等しくなるように配置される。つまり、篩い体形成片322Aはその扱胴側外周面が前後の枠体形成片321F・321Bの扱胴側端面と略同一面に位置するように配置される。
または、篩い体形成片322Aは、その扱胴31と対向する部分の外径が前後の端部322Aaの外径に比べて適宜に大きく設定されて、扱胴側外周面から扱胴31の外周面までの距離が前後の枠体形成片321F・321Bの扱胴側端面から扱胴31の外周面までの距離よりも短くなるように配置される。つまり、篩い体形成片322Aは扱胴側外周面が前後の枠体形成片321F・321Bの扱胴側端面よりも扱胴31に近接するように配置される。
言い換えれば、篩い体形成片322Aは、その扱胴31と対向する部分の外径が前後の端部322Aaの外径に比べて適宜に大きく設定されて、図5に示すように、扱胴側外周面が前後の枠体形成片321F・321Bの扱胴側端面から扱胴31側へぎりぎり突出しないように、または前後の枠体形成片321F・321Bの扱胴側端面よりも扱胴31側へ突出するように配置される。
以上のように、コンバイン1の脱穀部30は、前後方向の軸線回りに回転可能に配設される扱胴31と、扱胴31の下方に配設されるコンケーブ32とを備えるものであって、コンケーブ32は、扱胴31の胴部311の外周面に沿って下方へ凸状に湾曲させた前後の枠体形成片321F・321Bと、この前後の枠体形成片321F・321Bの左右の各端部間に架設する左右の枠体形成片321L・321Rとを有する枠体321と、扱胴軸線方向である前後方向に延伸する筒状の複数の篩い体形成片322Aを有する篩い体322とを備えて、各篩い体形成片322Aを、前後の枠体形成片321F・321Bの間に湾曲方向に所定間隔ごとに架設するとともに、これらの前後の枠体形成片321F・321Bに当該篩い体形成片322Aの軸線回りに回転自在に支持し、これらの篩い体形成片322Aの扱胴側外周面を、枠体321の前後の枠体形成片321F・321Bの扱胴側端面と略同一面とする構成とされる。
これにより、コンケーブ32で篩い体322の篩い体形成片322Aと、枠体321の前後の枠体形成片321F・321Bとの段差がなくなるため、脱穀作業時に、穀稈がコンケーブ32上で円滑に流される。したがって、コンケーブ32の篩い体322に対する穀稈の絡み付きや刺さり込みなどを抑制することが可能となり、脱穀部30での詰まりの発生を軽減することができる。また、脱穀部30での振動の発生を軽減することもできる。
コンバイン1の脱穀部30は、また、コンケーブ32は、篩い体322の各篩い体形成片322Aを円筒状に形成する構成とされる。
これにより、脱穀作業時に、コンケーブ32の篩い体322に穀稈が絡みにくくなる。したがって、脱穀部30での詰まりの発生を軽減することができる。また、篩い体形成片322Aにて穀粒を傷つけにくくすることができ、損傷粒の低減を図ることができる。そのうえ、篩い体形成片322Aを回転させやすして、コンケーブ32からの穀粒の漏下を促進させることが可能となり、汚粒の発生を抑制できる。
なお、篩い体形成片322Aの支持構造は、図8(b)に示すように、前後の枠体形成片321F・321Bの枠体内側に複数の環状の支持体325を固設して、この支持体325に各篩い体形成片322Aの端部322Aaを嵌入することより、篩い体形成片322を前後の枠体形成片321F・321Bに対して回転自在に支持することも可能である。
このような支持構造の場合には、前後の枠体形成片321F・321Bに、複数の貫通孔321Fa・321Baが篩い体形成片322Aの内径よりも小さい径をもって形成される。そのうえ、被覆体323F・323Bの被覆部323Fb・323Bbよりも枠体内側であって、篩い体形成片322Aの端部322Aa付近に、貫通孔322Adが形成される。
こうして、支持体325の内部と篩い体形成片322Aの内部とが連通された状態で、貫通孔321Fa・321Baにより支持体325の内部と外部とが連通されるとともに、貫通孔322Adにより篩い体形成片322の内部と外部とが連通される。
これにより、支持体325と枠体形成片の端部との間隙に塵埃が堆積したような場合に、前後の枠体形成片321F・321Bの貫通孔321Fa・321Baから支持体325の内部に向けて空気をエアガンなどにより送ることで、このような塵埃が簡単に除去可能とされ、塵による篩い体形成片322Aの回転停止の防止が図られる。
また、前述のような篩い体形成片322Aの支持構造において、複数の篩い体形成片322Aは、扱胴31の正面視で、図5に示すように、ある篩い体形成片322Aと、この篩い体形成片322Aに対して前後の枠体形成片321F・321Bの湾曲方向で隣り合う篩い体形成片322Aとの間隔が、扱胴31のある扱歯313の先端部と、この扱歯313に対して前後方向で隣り合う扱歯313の先端部との間隔と、扱胴周方向で同程度となるように並べられる。
そのため、ある篩い体形成片322Aが、ある扱歯313とともに、扱胴31の回転中心から扱胴径方向外側へ延伸される第一直線L1上に配置されるとき、ある篩い体形成片322Aに対して前後の枠体形成片321F・321Bの湾曲方向で隣り合う篩い体形成片322Aも、ある扱歯313に対して前後方向で隣り合う扱歯313とともに、扱胴31の回転中心から第一直線L1に対して扱胴周方向に所定角度ずれて扱胴径方向外側へ延伸される第二直線L2上に配置されることとなる。
つまり、ある篩い体形成片322Aが、扱胴31のある扱歯313の先端部と対向するように配置されるとき、ある篩い体形成片322Aに対して前後の枠体形成片321F・321Bの湾曲方向で隣り合う篩い体形成片322Aも、ある扱歯313に対して前後方向で隣り合う扱歯313の先端部と対向するように配置されることとなる。言い換えれば、互いに隣り合う篩い体形成片322Aは、扱胴31の前後方向で隣り合うそれぞれの扱歯313の先端部と同時に対向するように配置されることとなる。
このとき、扱胴31の正面視で、扱胴31の各扱歯313と、その扱歯313に対して前後方向で隣り合う扱歯313との扱胴周方向における間隔は、前述のように略同一に設定されていることから、各篩い体形成片322Aと、その篩い体形成片322Aに対して前後の枠体形成片321F・321Bの湾曲方向で隣り合う篩い体形成片322Aとの扱胴周方向における間隔も略同一に設定される。よって、複数の篩い体形成片322Aは前後の枠体形成片321F・321Bの湾曲方向で等間隔に並べられる。
なお、複数の篩い体形成片を、本実施形態においては、篩い体形成片同士の間隔が扱歯の先端部同士の間隔と同様に扱歯周方向で等間隔となるように並べているが、扱歯の先端部同士の間隔の変更に合わせて、篩い体形成片同士の間隔が一部の篩い体形成片同士の間隔では大きく、残りの篩い体形成片同士の間隔では小さくなるように不等間隔に並べることも可能である。
また、図9(a)に示すように、篩い体形成片322Aを支持する前後の枠体形成片321F・321Bの枠体外側に、それぞれ前後の被覆体323F・323Bを設けることも可能である。被覆体323F・323Bはそれぞれ同様の構造とされ、固定部323Fa・323Baと被覆部323Fb・323Bbとを有して構成され、図9(b)に示すように、断面視L字状に形成される。
固定部323Fa・323Baは、前後の枠体形成片321F・321Bと略同形状とされる。そして、固定部323Fa・323Baは、前後の枠体形成片321F・321Bに枠体外側から重なり合うように配置され、これらに対して湾曲方向に所定間隔ごとに締結具を介して着脱可能に固定される。
被覆部323Fb・323Bbは、前後の枠体形成片321F・321Bの湾曲方向の幅と同程度の幅をもって形成され、固定部323Fa・323Baの上端から枠体内側に向かって前後方向に延伸される。このときの被覆部323Fb・323Bbの前後幅は、前後の枠体形成片321F・321Bにおける篩い体形成片322Aの支持部分を覆うことができる程度に設定される。
このようにコンバイン1の脱穀部30は、また、コンケーブ32は、枠体321の前後の枠体形成片321F・321Bに、それぞれ篩い体322の各篩い体形成片322Aの回転支持部分を扱胴31側から覆う前後の被覆体323F・323Bを設ける構成ともされる。
これにより、脱穀作業時に、コンケーブ32で篩い体322の各篩い体形成片322Aの回転支持部分へ穀稈の茎などが絡み付きにくくなるとともに、土などが侵入しにくくなる。したがって、篩い体形成片322Aの回転支持部の耐久性の低下を抑制できるともに、篩い体形成片322Aの回転停止を防ぐことができる。
また、図10に示すように、篩い体322において、複数の篩い体形成片322Aのうち、少なくとも一つの篩い体形成片322Aをその外周面に突出部322Aeを有する形状としてもよい。この突出部322Aeは、篩い体形成片322Aと軸線を一致させる螺旋に沿って形成され、篩い体形成片322Aの前後両端部の間にわたって前後方向に配置される。
このようにコンバイン1の脱穀部30は、また、コンケーブ32は、篩い体322の複数の篩い体形成片322Aのうち、少なくとも一つの篩い体形成片322Aに、その篩い体形成片322Aと軸線を一致させる螺旋状の突出部322Aeを有する構成ともされる。
これにより、螺旋状の突出部322Aeを有する篩い体形成片322Aは、脱穀作業時に、扱胴31にて搬送される穀稈により、その他の突出部322Aeを有しない篩い体形成片322Aと比べて多く回転される。しかも、螺旋状の突出部322Aeを有する篩い体形成片322Aが二つ以上とされた場合には、それぞれが異なる回転速度で回転される。
したがって、搬送される穀稈の流れを速めてその停滞を防止することができるとともに、扱胴31への動力の低減を図ることができる。さらに、コンケーブ32からの穀粒の漏下を促進させて、汚粒の発生を抑制できる。また、扱歯313の移動方向に対する穀稈の角度を変えて、扱き残しを低減することが可能となる。
また、このような扱胴31およびコンケーブ32を設ける扱室33には、図2、図3、図4に示すように、複数の切刃35と、複数の送塵弁36とが設けられる。複数の切刃35は、扱胴31を構成する胴部311の上部の左側方に設けられ、胴部311の前端部から前後中央部に対する範囲にわたって扱胴軸線方向に所定間隔をとって並置される。この複数の切刃35が配置される前後方向での範囲は、具体的には、胴部311の外周面で最前位置に配置される扱歯313の近傍から選別部40における揺動選別装置41の第一チャフシーブ411の後端部近傍とされる。
各々の切刃35は、扱胴31の正面視で、扱歯313と重複可能なように胴部311に向かって延出されて、扱胴31の回転により扱歯313が周回する経路の間に配置され、扱胴31およびコンケーブ32による脱穀が行われる際に、穀稈を切断して短くすることができるようになっている。こうして、脱穀部30での穀稈に対する脱穀性能の向上が図られ、選別部40での脱穀物に対する第一チャフシーブ411の選別性能の向上が図られる。
一方、複数の送塵弁36は、扱胴31の胴部311の上方に左右方向に延出するように設けられ、胴部311の前端部から後部に対する範囲にわたって扱胴軸線方向に所定間隔をとって並置される。各送塵弁36は扱室33の天井面に回転可能に支持されて、その扱胴軸線方向に対する向きを変更可能とされるとともに、一端部で棒状部材37に連結されて他の送塵弁36と連動して回動可能とされる。
そして、複数の送塵弁36のうち、最前位置に配置される送塵弁36に、扱室33の外部に設けられた操作レバー38が接続されて、この操作レバー38の操作により複数の送塵弁36がその向きを一斉に変更されるようになっている。送塵弁36の向きは、操作レバー38がその近傍に設けられたレバーガイド39で所望の操作位置に固定されることによって、適切な向きに保持される。こうして、扱室33で穀稈の条件に応じてその滞留時間を調整することが可能とされ、脱穀部30での穀稈に対する脱穀性能の向上が図られる。