以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、実施の形態1に係るプレス成形品を説明するための斜視図、図2は、プレス成形品の部分増肉部を説明するための断面図、図3は、部分増肉部に隣接する非増肉部を説明するための断面図である。
実施の形態1に係るプレス成形品(部品)120は、開断面をする略多角形状長尺物であり、ハット状断面を有し、1方向(長手方向)に延びている。プレス成形品120は、離間している一対の側壁部124と、側壁部124の端部同士を連結する連結壁部126とを有し、板状のブランクを、プレス成形することで得られる。プレス成形品120の長さ(長手方向に沿った長さ)は、開断面における側壁部124に対応する部位(高さ)および連結壁部126に対応する部位(幅)の合計長さより、大きい。
プレス成形品120は、剛性または強度が必要な局所部位に配置される部分増肉部(長手方向の一部分)132を有する。なお、側壁部124と連結壁部126との間に位置し、側壁部124と連結壁部126を連結するコーナー部は、円弧状である。なお、符号122は、側壁部124の縁部である。
部分増肉部132は、プレス成形品120の長手方向と交差する周方向に延長しており、部分増肉部132の側壁部124および連結壁部126は、非増肉部136の側壁部124および連結壁部126に比べ、その板厚が増加している。板厚の増加は、プレス成形の際に、ブランクの一部を押込むことで発生する材料流動によって、引き起こされている。
そのため、薄肉の板状のブランクを適用しても、板厚が増加している部分増肉部132によって、剛性または強度が確保されるため、プレス成形品120の軽量化を図ることが可能である。また、部分増肉部132は、突合せ溶接が適用されるテーラードブランクに比較し、良好な生産性を有するプレス成形によって形成されるため、プレス成形品120は、製造コストが低減されたものとなる。なお、部分増肉部132の硬度は、プレス成形による加工硬化(圧縮応力)によって、非増肉部136の硬度より大きくなっている。
図4は、実施の形態1に係るプレス成形品が適用されるサスペンション部品を説明するための平面図、図5は、図4の線V−Vに関する断面図である。
サスペンション部品140は、中空状の略矩形断面を有し、縁部が互いに溶接された上部サイドメンバ142および下部サイドメンバ144を有する。上部サイドメンバ142および下部サイドメンバ144は、開断面をする略多角形状長尺物であり、プレス成形品120を適用することで、サスペンション部品140の軽量化および製造コストの低減を図ることが可能である。
剛性または強度が必要な局所部位は、例えば、アーム等の別部品を締結するためのブラケット146が固定される部位である。つまり、プレス成形品120の部分増肉部132にブラケット146が固定されるため、良好な固定強度を確保することが可能である。特に、固定に溶接が適用される場合、疲労強度が向上するため、好ましい。
次に、実施の形態1に係るブランクおよびプレス成形品の製造装置を説明する。
図6は、実施の形態1に係るブランクを説明するための斜視図、図7は、実施の形態1に係るプレス成形品の製造装置を説明するための断面図、図8は、図7の線VIII−VIIIに関する断面図、図9は、図7に示される下型を説明するための斜視図である。
実施の形態1に係る製造装置は、板状のブランク100からプレス成形品120を得るためのプレス成形型を有する。プレス成形型は、ブランク100の一部を押込むことで、板厚の増加を引き起こす材料流動を発生させることによって、部分増肉部132を形成することが可能である。
詳述すると、実施の形態1に係る製造装置に投入されるブランク(予備成形体)100は、圧延材をプレス成形して形成される開断面をする長尺状の予備成形体であり、その形状は、プレス成形品120の形状に対応しており、離間している一対の側壁部104と、側壁部104の端部同士を連結する連結壁部106とを有する。なお、側壁部104と連結壁部106との間に位置し、側壁部104と連結壁部106を連結するコーナー部は、円弧状である。
ブランク100は、プレス成形品120の部分増肉部132および非増肉部136に対応する増肉予定部112および増肉非予定部116を有する。増肉予定部112を含んでいる周方向領域は、周長延長部位を有しており、前記周方向領域の断面周長は、プレス成形品120の部分増肉部132を含んでいる周方向領域の断面周長より長くなっており、押込まれるブランク100の一部は、周長延長部位である。したがって、板厚の増加を引き起こす材料流動を、容易に発生させることが可能である。
実施の形態1に係る周長延長部位は、側壁部104の縁部102の端面(側壁部104における連結壁部側と反対側の端面)に配置され、当該端面から突出するように形成される延長部(突出部)114から構成される。延長部114は、圧延材を打抜くことで安価に形成することが可能であり、好ましい。しかし、延長部114を、機械加工によって形成することも可能である。なお、実施の形態1においては、増肉予定部112を含んでいる周方向領域の断面周長は、増肉非予定部116を含んでいる周方向領域の断面周長よりも長い。
プレス成形型は、近接離間自在に配置される上型(ダイ部)160および下型(パンチ部)170と、側方型180とを有する。上型160は、プレス成形品120の外面形状に対応する内面部を有するダイ部である。下型170は、プレス成形品120の内面形状に対応する外面部を有するパンチ部であり、上型160との間にブランク100が間に配置されて、型締めされる。上型160および下型170の成形面における、ブランク100の側壁部104と連結壁部106との間のコーナー部に対応する部位は、材料流動を考慮して、円弧状断面を有する。上型160における前記円弧状断面の部位は、前記コーナー部を連結壁部側に案内することによって、連結壁部106を撓ませる案内手段を構成する。
下型170は、配置されたブランク100の縁部102に沿って延長する段差部(当接面)172を有する。ブランク100の延長部114は、上型160および下型170の型締めの際に、下型170の段差部172と当接して押込まれることで、板厚の増加を引き起こす材料流動を発生させる。
ブランク100の増肉予定部112を含んでいる周方向領域に対応する上型160および下型170により形成されるキャビティの断面厚は、材料流動による増肉を考慮して、設定されている。つまり、型締め時におけるキャビティの断面厚は、材料流動を許容するように、ブランク100の板厚より大きく設定されている。
側方型180は、ブランク100の長手方向の両方の端面108と当接するように位置決めされ、上型160および下型170の側方に配置される。側方型180は、型締めされてプレス成形される際に、ブランク100の端面108の移動を制止することによって、ブランク100の長手方向に関する材料流動を抑制するための抑制手段である。
次に、実施の形態1に係るプレス成形品の製造方法を説明する。
図10は、部分増肉部の形成過程を説明するための断面図、図11は、図10に示されるブランクの延長部の押込み過程を示している断面図、図12は、部分増肉部に隣接する非増肉部の形成過程を説明するための断面図である。
本製造方法は、板状のブランク100からプレス成形品120を得るためのプレス成形工程を有する。当該プレス成形工程は、ブランク100を用意する用意工程と、上型160および下型170の間(成形型内)にブランク100を配置する配置工程と、上型160および下型170の型締め動作の途中で、上型160および下型170によりブランク100を押圧することにより、連結壁部106を、成形型内の隙間で撓ませる撓み工程と、連結壁部106を撓ませた状態から、連結壁部106(撓ませた部位)を上型160および下型170により挟み込むとともに、側壁部104を、当側壁部104の長さ方向両側から、上型160および下型170により圧縮することにより、側壁部104および連結壁部106の両方の板厚を増加させる増肉工程とを含んでいる。
詳述すると、まず、ブランク100が、下型170に配置される。ブランク100の延長部114は、下型170の段差部172と当接する。増肉非予定部116を含んでいる周方向領域は、延長部114を含んでいる周方向領域より断面周長が短いため、下型170の段差部172から離間している。
型締めしてプレス成形するために、下型170に向かって上型160が降下すると、上型160の内面部は、下型170に配置されるブランク100の連結壁部106と当接する。上型160の型締め力は、ブランク100の延長部114を、下型170の段差部172に向かって押圧するため、延長部114が変形する(図11参照)。
型締め動作に伴って、上型160の内面部と下型170の外面部の頂面との間(隙間)には、材料流動を許容する空間が存在し、当該空間には、ブランク100の連結壁部106が位置する。つまり、型締めの途中において、連結壁部106と下型170との隙間は、側壁部104と下型170との隙間よりも大きく設定されている。そのため、延長部114の材料は上方に流動し、押込まれる。
この際、連結壁部106を上型160に当接させるとともに、側壁部104における連結壁部106と反対側の端面を、下型170の段差部172に当接させ、下型170の段差部172および上型160によって側壁部104を押圧することにより、側壁部104から連結壁部106に作用する押圧力によって連結壁部106を撓ませる。つまり、側壁部104を、上型160および下型170により支持すると共に、連結壁部106を、上型160により下型側に押し込むことにより、連結壁部106の中央部を、下型側に撓ませる(湾曲部が形成される)。この際、上型160の成形面における、ブランク100の側壁部104と連結壁部106との間のコーナー部に対応する部位は、前記コーナー部を連結壁部側に案内する。したがって、コーナー部から連結壁部への材料流入を促進することができる。
その後、連結壁部106を撓ませた状態から、連結壁部106を、その撓み方向すなわち上型160および下型170の型閉じ方向から、上型160および下型170により挟み込むことにより、連結壁部106をその撓み方向から圧縮する。それとともに、側壁部104を、側壁部104の長さ方向両側から、上型160および下型170により圧縮することにより、連結壁部106の湾曲部が消失し、側壁部104および連結壁部106の両方の板厚を増加させる。このように両方の壁部の板厚を増加させる際、実施の形態1では、連結壁部106を、図10における断面の長さ方向両側から上型160および下型170によって直接圧縮することができないが、連結壁部106を撓ませることにより連結壁部106の板厚増加分の材料を連結壁部106側に送り込むことができ、このように連結壁部106に材料を送り込んだ状態で連結壁部106を型閉じ方向から圧縮することで連結壁部106の板厚を効果的に増加させることができる。
延長部114は、増肉予定部112を含んでいる周方向領域の縁部102に位置し、かつ、材料流動による増肉を考慮した型締め時におけるキャビティの断面厚が設定されているため、延長部114の材料流動は、増肉予定部112の板厚の増加を引き起こす(図10参照)。これにより、プレス成形品120の部分増肉部132が形成される。
また、上型160および下型170の側方には、側方型180が位置している。側方型180は、ブランク100の端面108と当接し、端面108の移動を制止する。延長部114の材料は、ブランク100の長手方向に流動することが抑制されるため、周方向に主として流動する。つまり、周方向領域の板厚が、効率的に増加する。
一方、ブランク100の増肉非予定部116を含んでいる周方向領域は、プレス成形品120の非増肉部136を含んでいる周方向領域と略一致し、かつ、延長部114を有していない。そのため、下型170の段差部172によって押込まれることはなく、板厚の増加を引き起こす材料流動は、発生せず、板厚は増加しない(図12参照)。これにより、プレス成形品120の非増肉部136が形成される。
図13は、押込み比とプレス成形結果との関係を説明するための図表である。
押込み比は、ブランク100における増肉予定部112および延長部114を含んでいる周方向領域の断面周長を、プレス成形品120における部分増肉部132を含んでいる周方向領域の断面周長によって減じ、さらに部分増肉部132を含んでいる周方向領域の断面周長によって除した値である。
押込み比は、材料流動量と対応するため、押込み比を大きく設定すると、増肉効果が向上する。しかし、図13に示されるように、押込み比が30%では良好な成形性を示すが、32%になると、プレス成形品120の部分増肉部132の連結壁部126に、座屈が発生する。
つまり、押込み比の設定が大き過ぎると、プレス成形の際、上型160の内面部と下型170の外面部の頂面との間に生成される空間に、材料が過剰に流入し、ブランク100の連結壁部106に過度の湾曲部が形成される。当該湾曲部は、延ばされず、消失しないため、座屈を発生させる。したがって、座屈の発生を避けるために、押込み比は、30%以下とすることが好ましい。
図14〜16は、実施の形態1に係る変形例1〜3を説明するための断面図である。
剛性または強度を必要とする局所部位が小さい場合、ブランクの延長部の形状や、上型および下型の内面形状、型締め時におけるキャビティの断面厚等を調整することによって、プレス成形品の部分増肉部132が周方向領域の一部のみを占めるようにすることも好ましい。
例えば、図14に示されるように、サスペンション部品140のサイズに比較し、小さいブラケット147が適用される場合、ブラケット147が溶接により取付けられる部位およびその近傍のみに、部分増肉部132を配置することによって、サスペンション部品140の軽量化を効率的に達成することが可能である。
また、ナット148が締結手段として固定される場合、ナット148の根元の強度向上のために、補強プレートが適用される。しかし、図15に示されるように、ナット148が溶接により取付けられる部位に部分増肉部132を配置することによって、補強プレートを廃止することが可能である。
さらに、別部品を締結するため、図16に示されるように、部分増肉部132に穴部149を形成することも可能である。部分増肉部132は、非増肉部136に比較し、穴部149の形成が容易であり、好ましい。特に、穴部149にタップ加工を施し、ナット148の代替として利用する場合、ナット148を廃止することが可能である。
以上のように、実施の形態1に係る製造方法によれば、側壁部および連結壁部の両方の板厚が増加した部分増肉部を有するプレス成形品が製造される。そのため、薄肉のブランクを適用しても、部分増肉部によって、プレス成形品の剛性または強度が確保されるため、プレス成形品の軽量化を容易に図ることが可能である。また、部分増肉部は、突合せ溶接が適用されるテーラードブランクに比較し、良好な生産性を有するプレス成形によって形成されるため、製造コストが低減される。
また、実施の形態1に係るプレス成形品によれば、側壁部および連結壁部の両方の板厚が増加している部分増肉部を有し、当該部分増肉部は、剛性あるいは強度が必要な局所部位に配置されている。そのため、部分増肉部の周辺部が薄肉であっても、部分増肉部によって、プレス成形品の剛性または強度が確保されるため、プレス成形品の軽量化を容易に図ることが可能である。また、部分増肉部は、突合せ溶接が適用されるテーラードブランクに比較し、良好な生産性を有するプレス成形によって形成されているため、製造コストが低減される。
また、実施の形態1に係る製造装置によれば、下型および上型を含んでいる複数の成形型によってブランクをプレス成形することにより、側壁部および連結壁部の両方の板厚が増加している部分増肉部を有するプレス成形品を製造することが可能である。そのため、薄肉のブランクを適用しても、部分増肉部によって、プレス成形品の剛性または強度が確保されるため、プレス成形品の軽量化を容易に図ることが可能である。また、板厚が増加した部分は、突合せ溶接が適用されるテーラードブランクに比較し、良好な生産性を有するプレス成形によって形成されるため、製造コストが低減される。したがって、プレス成形品の軽量化および製造コストの低減を図ることが可能である。
したがって、実施の形態1は、プレス成形品の軽量化および製造コストの低減を図ることが可能である。
また、実施の形態1における周長延長部位は、ブランクの側壁部の縁部に配置される延長部から構成されるため、特に、プレス成形品の側壁部を効率的に増肉させることが可能である。
部分増肉部の硬度は、非増肉部の硬度より大きい。これは、プレス成形による加工硬化(圧縮応力)によって、硬度が増加しているためである。
ブランクのコーナー部に対応する上型の成形面の部位は、円弧状断面を有しており、ブランクのコーナー部を連結壁部側に案内するため、連結壁部を効率的に増肉させることが可能である。
側方型によって、延長部の材料がブランクの長手方向に流動することが抑制され、周方向に主として流動するため、周方向領域の板厚を効率的に増加させることができる。
なお、延長部を、ブランクの長手方向の端面部に配置したり、一方の側面のみに配置したりすることも可能である。また、延長部を、ブランクの長手方向に間をあけて複数配置することも可能である。この場合、プレス成形品は、その長手方向に間をあけて配置される部分増肉部を有することなる。
ブランクの増肉予定部を含んでいる周方向領域の断面周長は、増肉非予定部を含んでいる周方向領域の断面周長より長い形態に限定されない。つまり、ブランクの延長部は、隣接する増肉非予定部を含んでいる周方向領域の縁部から突出している形状に限定されず、プレス成形品の形状に応じて、縁部と同一平面状に位置させたり、縁部より後退した形状(凹部形状)を有することも可能である。この場合、下型の段差部に、延長部と当接する突出部位を設けることによって、延長部を押込むことが可能である。
次に、実施の形態2を説明する。
図17は、実施の形態2に係るプレス成形品の製造装置を説明するための分解図、図18は、図17に示される下型を説明するための斜視図である。なお、以後において、実施の形態1と同様の機能を有する部材については類似する符号を使用し、重複を避けるため、その説明を省略する。
実施の形態2に係るプレス成形品の製造装置は、下型(パンチ部)270に配置されたブランク(予備成形体)200の連結壁部206の撓み量を抑制する抑制機構を有する点で、実施の形態1に係るプレス成形品の製造装置と概して異なる。
抑制機構は、貫通孔291、パッド部(支持部材)292、ストッパ293、スプリング機構294、支持部材295およびピン部材298を有する。貫通孔291は、下型270の頂部に配置される。パッド部292は、貫通孔291から出没自在に配置されかつ貫通孔291から突出する方向に付勢される。パッド部292の付勢力は、下型270と上型260の型締め力より小さい。
パッド部292は、上型(ダイ部)260の降下に伴って貫通孔291の内部に向かって後退するため、下型270と上型260の型締めに影響を及ぼさない。また、下型270に配置されたブランク200の連結壁部206は、上型260の内面部によって押圧されているため、パッド部292によって支持されることによって、拘束される。
したがって、プレス成形の初期において、上型260の内面部とパッド部292との間に生成される空間は、一定に維持され、ブランク200の連結壁部206が、延長部(突出部)214からの材料流動によって過度に湾曲することが避けられ、撓み量が抑制されるため、連結壁部106の座屈を抑制することが可能である。つまり、押込み比を大きくした場合であっても、ブランク200の連結壁部206の座屈を抑制し、プレス成形品の部分増肉部のさらなる増肉化を図ることが可能である。
ストッパ293は、下型270の貫通孔291におけるパッド部292の後退を制止するための制止手段であり、貫通孔291に配置される縮径部からなり、その径は、パッド部292の径より小さい。ストッパ293の位置は、制止されたパッド部292の端面と、下型270の頂部とが同一平面に位置するように、設定される。したがって、ブランク200の連結壁部206の材料が貫通孔291に流入することが抑制され、貫通孔291に対応する跡あるいは窪み部の形成が防がれる。
スプリング機構294は、パッド部292の付勢力を発生させために使用される付勢力発生手段である。スプリング機構294は、構造が単純であり好ましいが、例えば、アクチュエータや油圧シリンダによって、代用することも可能である。なお、符号254は、スプリング機構294が配置されているプレス成形型の基部を示している。
支持部材295は、基部296およびシャフト部297を有し、パッド部292とスプリング機構294との間に配置される。基部296は、下型270の下方に位置し、下型270と当接自在に配置される。シャフト部297は、下型270の貫通孔291に挿通されており、かつ、パッド部292を分離自在に支持している。
シャフト部297の長さは、基部296が下型270と当接した状態で、パッド部292が下型270の貫通孔291から突出するように、設定される。シャフト部297は、パッド部292と連結されていないため、パッド部292の後退がストッパ293によって制止された場合にあっても、支持部材295は、後退を継続することが可能である。
ピン部材298は、支持部材295の基部296に相対しかつ上型260から突出するように配置されている。ピン部材298は、上型260が型締めのために降下すると、支持部材295の基部296と当接し、支持部材295を降下させる。その結果、支持部材295のシャフト部297の上方に位置するパッド部292は、ブランク200の連結壁部206を支持しながら、降下することになる。つまり、抑制機構は、上型260および下型270の型締めと、パッド部292によるブランク200の連結壁部206の支持とを連動させるための連動機構を有する。
次に、実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法を説明する。
図19は、図18に示される上型の降下を説明するための断面図、図20は、図19に続く、上型と抑制機構のピン部材との当接を説明するための断面図、図21は、図20に続く、ブランクの連結壁部に形成される湾曲部を説明するための断面図、図22は、図21に続く、湾曲部に形成される平坦部を説明するための断面図、図23は、図22に続く、湾曲部の消失を説明するための断面図である。
本製造方法は、ブランク200の連結壁部206の撓み量を抑制することによって、連結壁部206の座屈を抑制する点で、実施の形態1に係るプレス成形品の製造方法と概して異なる。
詳述すると、まず、ブランク200が、下型270に配置される。ブランク200の延長部214は、下型270の段差部272と当接する。パッド部292は、支持部材295を介してスプリング機構294によって付勢されており、下型270の貫通孔291から突出している。
型締めしてプレス成形するために、下型270に向かって上型260が降下する(図19参照)。上型260から突出するように配置されるピン部材298は、支持部材295の基部296と当接する(図20参照)。この際、上型260の内面部とパッド部292との間には、空間が存在する。
そして、上型260の内面部が、下型270に配置されるブランク200の連結壁部206と当接すると、上型260の型締め力は、ブランク200の延長部214を、下型270の段差部272に向かって押圧するため、延長部214が変形する。
型締め動作に伴って、連結壁部206を上型260に当接させるとともに、側壁部204における連結壁部206と反対側の端面を、下型270の段差部272に当接させ、下型270の段差部272および上型260によって側壁部204を押圧することにより、側壁部204から連結壁部206に作用する押圧力によって連結壁部206の中央部を、下型側に撓ませる(湾曲部が形成される)。この際、上型260の成形面における、ブランク200の側壁部204と連結壁部206との間のコーナー部に対応する部位は、前記コーナー部を連結壁部側に案内する。
その後、連結壁部206を撓ませた状態から、連結壁部206を上型260および下型270により挟み込むとともに、側壁部204を、側壁部204の長さ方向両側から、上型260および下型270により圧縮することにより、連結壁部206の湾曲部が消失し、側壁部204および連結壁部206の両方の板厚を増加させる。
一方、上型260の降下の途中において、パッド部292は、連結壁部206を支持し、上型260の内面部とパッド部292との間に生成される空間aを一定に維持しながら、上型260の動作と連動して後退する(図21参照)。
そして、上型260の降下が継続すると、パッド部292は、ブランク200の連結壁部206の湾曲部を変形させ、平坦部Fを発生させる(図22参照)。そのため、ブランク200の連結壁部206が過度に変形することが妨げられ、湾曲部が座屈することが抑制される。
上型260の降下がさらに継続すると、パッド部292の付勢力は、下型270と上型260の型締め力より小さいため、パッド部292は、下型270の貫通孔291に後退し、ストッパ293によって制止される。パッド部292を支持していた支持部材295のシャフト部297は、パッド部292から離間し、支持部材295は、後退を継続する。これにより、上型260の内面部とパッド部292との間に生成される空間が、徐々に縮小し、ブランク200の連結壁部206の湾曲部は、上型260によって押圧されて、消失する(図23参照)。
なお、ストッパ293によって制止されたパッド部292の端面と、下型270の頂部とは、同一平面に位置するため、得られたプレス成形品に、貫通孔291に対応する跡あるいは窪み部が形成されることが防がれる。
以上のように、実施の形態2は、押込み比を大きくした場合であっても、ブランクの連結壁部の撓み量を抑制することによって、ブランクの座屈を抑制することが可能であり、実施の形態1に比較し、プレス成形品の部分増肉部のさらなる増肉化を図ることが可能である。
次に、実施の形態3を説明する。
図24は、実施の形態3に係るブランクを説明するための斜視図、図25は、実施の形態3に係るプレス成形品の製造装置を説明するための断面図、図26は、図25に示される下型を説明するための斜視図である。
実施の形態3に係るブランク(予備成形体)300は、連結壁部306における上型側の面に、当該上型側の面(外側面)から膨出するように形成される張出し部315を有する。張出し部315は、プレス成形品の部分増肉部に対応する増肉予定部312を含んでいる周方向領域に位置し、当該周方向領域の断面周長を、プレス成形品の部分増肉部を含んでいる周方向領域の断面周長より長くしている。
つまり、張出し部315は、周長延長部を構成しており、側壁部104の縁部102に配置される延長部114によって構成される実施の形態1と異なっており、後述されるように、プレス成形品の連結壁部を効率的に増肉させることが可能である。なお、張出し部315は、圧延材からブランク300を成形する際に、同時に形成することが、生産性およびコストの点で好ましい。
実施の形態3に係るプレス成形品の製造装置は、近接離間自在に配置される上型(ダイ部)360および下型(パンチ部)370と、側方型380とを有する。下型370は、配置されたブランク300の縁部302に沿って延長する段差部(当接面)372を有する。側方型380は、上型360および下型370の側方に配置され、かつ、ブランク300の端面308と相対するように位置決めされる。
実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法においては、まず、ブランク300が、下型370に配置される。ブランク300の縁部302は、下型370の段差部372と当接する。
型締めしてプレス成形するために、下型370に向かって上型360が降下すると、上型360の内面部は、下型370に配置されるブランク300の連結壁部306に配置される張出し部315と当接する。上型360の型締め力は、張出し部315を、下型170の内面部に向かって押圧する。一方、ブランク300の縁部302の端面308は、下型370の段差部372によって制止されている。
その結果、張出し部315は変形し、張出し部315の材料が、ブランク300の連結壁部306および側壁部304に流動し、増肉予定部312の板厚の増加を引き起こすこととなる。つまり、部分増肉部を有するプレス成形品が得られる。この際、張出し部315は、連結壁部306に配置されているため、プレス成形品の連結壁部が、効率的に増肉されることとなる。
図27は、実施の形態3の変形例を説明するための斜視図である。
張出し部315は、実施の形態1に係る延長部114に対して排他的ではない。例えば、周長延長部位を、張出し部315および延長部114によって構成することも可能である。この場合、プレス成形品の連結壁部および側壁部を、効率的に増肉させることが可能である。
以上のように、実施の形態3は、実施の形態1と同様に、プレス成形品の軽量化および製造コストの低減を図ることが可能である。また、実施の形態3における周長延長部位は、ブランクの連結壁部に配置される張出し部から構成されるため、特に、プレス成形品の連結壁部を効率的に増肉させることが可能である。
なお、張出し部を、ブランクの長手方向の端面部に配置することも可能である。また、張出し部を、ブランクの長手方向に間をあけて複数配置することも可能である。この場合、プレス成形品は、その長手方向に間をあけて配置される部分増肉部を有することなる。
剛性または強度を必要とする局所部位が小さい場合、張出し部の形状や型締め時におけるキャビティの断面厚を調整することによって、プレス成形品の部分増肉部が周方向領域の一部のみを占めるようすることが好ましい。例えば、張出し部を小さくし、プレス成形品の連結壁部の一部にのみ、部分増肉部を形成することで、プレス成形品の軽量化を、効率的に達成することが可能である(実施の形態1の変形例1〜3参照)。
次に、実施の形態4を説明する。
図28は、実施の形態4に係るブランクを説明するための斜視図、図29は、実施の形態4に係るプレス成形品の製造装置を説明するための分解図である。
実施の形態4に係るブランク(予備成形体)400は、側壁部404における上型側に、当該上型側から膨出するように形成される張出し部415を有しており、連結壁部406に配置される張出し部315を有する実施の形態3に係るブランク300と概して異なる。
実施の形態4に係るプレス成形品の製造装置は、上型(ダイ部)460、下型(パンチ部)470および側方型(不図示)を有する。
上型460は、第1横向き型490、第2横向き型495および上方型465を含んでいる複数の分割型を有する。第1および第2横向き型490,495は、第1分割型であり、近接離間自在に配置されかつ一体となってプレス成形品の外面形状に対応する内面部を有する。上方型465は、第2分割型であり、第1および第2横向き型490,495を介し、下型470に相対しており、第1および第2横向き型490,495を駆動し、上型460および下型470の型締め力を発揮させるために使用される。
第1横向き型490は、側壁部491、延長部493および斜面492を有する。側壁部491は、張出し部415と相対し、かつプレス成形品の側壁部の外面形状に対応する内面部を有する。延長部493は、ブランクの連結壁部406と相対し、かつプレス成形品の連結壁部の外面形状に対応する内面部を有する。斜面492は、側壁部491と延長部493を連結するコーナー部の外周に配置されている。延長部493と下型470の頂面との間の型締め時におけるキャビティの断面厚は、材料流動による増肉を考慮して、ブランク400の板厚より大きく設定されている。
第2横向き型495は、斜面497および側壁部496を有する。斜面497は、上方のコーナー部の外周に配置される。斜面497および第1横向き型490の斜面492は、離間する方向に傾斜している。
側壁部496は、張出し部415と相対しかつプレス成形品の側壁部の外面形状に対応する内面部を有する。側壁部496の高さは、第1横向き型490の側壁部491の高さと略一致しており、第2横向き型495は、第1横向き型490の延長部493と下型470の段差部(当接面)472との間に形成される空間に、挿入自在である。
第1および第2横向き型490,495が近接する際の停止位置は、材料流動による増肉を考慮して、設定されている。つまり、停止位置における側壁部491,496と下型470との間の型締め時におけるキャビティの断面厚は、ブランク400の板厚より大きく設定されている。
したがって、第1および第2横向き型490,495が互いに近接するように駆動されると、第1横向き型490の側壁部491および第2横向き型495の側壁部496は、張出し部415と当接し、張出し部415を押込むことで、板厚の増加を引き起こす材料流動を発生させる。この際、張出し部415は、側壁部404に配置されているため、プレス成形品の側壁部が、効率的に増肉させられることとなる。
上方型465は、断面凹部状であり、基部および基部の両端から延長する突出部を有し、かつ、第1および第2横向き型490,495に対して近接離間自在である。上方型465の突出部は、第1および第2横向き型490,495の斜面492,497に対応する斜面466,467を有する。
上方型465が下型470に対して近接すると、その突出部の斜面466,467は、第1および第2横向き型490,495の斜面492,497と当接するため、斜面492,497を近接する方向に押圧する。その結果、第1および第2横向き型490,495は、互いに近接するように駆動され、張出し部415と当接し、押込む。
実施の形態4に係る製造装置は、上方型465の下型470に対する近接と、第1および第2横向き型490,495の張出し部415に対する当接とを連動させるための連動機構を有する。特に、本連動機構は、斜面466,467,492,497の当接を利用しており、構造が単純化されている点で好ましい。なお、第1および第2横向き型490,495のそれぞれに、独立した駆動機構あるいは駆動装置を適用することも可能である。
次に、実施の形態4に係るプレス成形品の製造方法を説明する
図30は、図29に示される上型の降下を説明するための断面図、図31は、図30に続く、ブランクの側壁部に形成される湾曲部を説明するための断面図、図32は、図31に続く、湾曲部の消失を説明するための断面図である。
まず、ブランク400が、下型470に配置される。ブランク400の縁部402は、下型470の段差部472と当接する。
第1および第2横向き型490,495が、ブランク400の外側に配置される。この際、第1横向き型490の側壁部491および延長部493は、ブランクの一方の張出し部415および連結壁部406と相対し、第2横向き型495の側壁部496は、他方の張出し部415と相対するように位置決めされる。側壁部491と延長部493と間に位置し、側壁部491と延長部493とを連絡するコーナー部は、円弧状断面の成形面を有する。当該コーナー部は、ブランク400の側壁部404と連結壁部406との間のコーナー部に対応しており、ブランク400のコーナー部を側壁部側に案内することによって、側壁部404を撓ませる案内手段を構成する。
型締めしてプレス成形するために、下型470に向かって上方型465が降下すると、上方型465の斜面466,467は、下型470の上方に位置する第1および第2横向き型490,495の斜面492,497と当接する(図30参照)。
上方型465の型締め力は、斜面466,467を介し、斜面492,497を近接する方向に押圧し、第1および第2横向き型490,495を互いに近接するように駆動する。
第1横向き型490の側壁部491と下型470の外面部の側面との間、および、第2横向き型495の側壁部496と下型470の外面部の側面との間には、材料流動を許容する空間が存在し、当該空間には、ブランク400の張出し部415が位置する。つまり、型締めの途中において、側壁部404と下型470との隙間は、連結壁部406と下型470との隙間よりも大きく設定されている。そのため、張出し部415の材料は、側方に流動し、押込まれる。
この際、第1横向き型490の側壁部491および第2横向き型495の側壁部496によって側壁部404を押圧するとともに、連結壁部406を第1横向き型490の延長部493に当接させることにより、連結壁部406から側壁部404に作用する押圧力によって側壁部404を撓ませる(図31参照)。
つまり、連結壁部406を、第1横向き型490の延長部493と下型470により支持すると共に、側壁部404を、第1横向き型490の側壁部491および第2横向き型495の側壁部496により下型側に押し込むことにより、側壁部404の中央部を、下型側に撓ませる(湾曲部が形成される)。この際、第1横向き型490の前記コーナー部は、ブランク400の前記コーナー部を側壁部側に案内する。
その後、上方型465の降下が継続すると、第1横向き型490の側壁部491と第2横向き型495の側壁部496とがさらに近接し、第1および第2横向き型490,495の側壁部491,496と下型470の外面部との間に生成される空間が縮小する(図32参照)。つまり、側壁部404を撓ませた状態から、側壁部404を第1横向き型490の側壁部491、第2横向き型495の側壁部496および下型470により挟み込むとともに、連結壁部406を、連結壁部406の長さ方向両側から、第1横向き型490の側壁部491および第2横向き型495の側壁部496により圧縮することにより、側壁部404の湾曲部が消失し、側壁部404および連結壁部406の両方の板厚を増加させる。これにより、部分増肉部を有するプレス成形品が得られる。
この際、張出し部415は、側壁部404に配置されているため、プレス成形品の側壁部が効率的に増肉させられることとなる。また、第1横向き型490の延長部493とブランクの連結壁部406との間の型締め時におけるキャビティの断面厚は、材料流動を許容するように設定されているため、張出し部415の材料がスムーズに流入し、プレス成形品の連結壁部が効率的に増肉させられることとなる。
以上のように、実施の形態4は、実施の形態1と同様に、プレス成形品の軽量化および製造コストの低減を図ることが可能である。また、実施の形態4における周長延長部位は、ブランクの側壁部に配置される張出し部から構成されるため、特に、プレス成形品の側壁部を効率的に増肉させることが可能である。
なお、張出し部を、ブランクの端面に配置に配置したり、一方の側面のみに配置したりすることも可能である。また、張出し部を、ブランクの長手方向に間をあけて複数配置することも可能である。この場合、プレス成形品は、その長手方向に間をあけて配置される部分増肉部を有することなる。
剛性または強度を必要とする局所部位が小さい場合、張出し部の形状や型締め時におけるキャビティの断面厚を調整することによって、プレス成形品の部分増肉部が周方向領域の一部のみを占めるようすることが好ましい。例えば、張出し部を小さくし、プレス成形品の連結壁部の一部にのみ、部分増肉部を形成することで、プレス成形品の軽量化を、効率的に達成することが可能である(実施の形態1の変形例1〜3参照)。
次に、実施の形態5を説明する。
図33は、実施の形態5に係るブランクを説明するための斜視図、図34は、実施の形態5に係るプレス成形品の製造装置を説明するための断面図、図35は、図34に示される下型を説明するための斜視図である。
実施の形態5は、予備成形されていない平板状板材(素材)からなるブランク500が適用される点で、実施の形態1と概して異なる。
ブランク(予備成形体)500は、中央延長部506および中央延長部506の側方に位置する側方延長部504を有する。中央延長部506は、プレス成形品の連結壁部に対応する。側方延長部504は、プレス成形品の側壁部に対応する。また、ブランク500は、プレス成形品の部分増肉部および非増肉部に対応する増肉予定部512および増肉非予定部516を有する。増肉予定部512を含んでいる周方向領域は、縁部502に配置される延長部(突出部)514を有しており、前記周方向領域の断面周長は、プレス成形品の部分増肉部を含んでいる周方向領域の断面周長より長くなっている。
プレス成形型は、ブランク500の予備成形機能を有しており、近接離間自在に配置される上型(ダイ部)560および下型(パンチ部)570と、側方型(不図示)とを有する。
下型570は、下型基部571、分割型574およびスプリング機構576を有する。下型基部571は、側方に沿って延長する段差部(当接面)572と、スプリング機構576を収容するための凹部575とを有する。
分割型574は、型締め時、ブランク500の中央延長部506と当接し、上型560の内面部に押込むことで、ブランク500を成形する。これにより、ブランク500は、プレス成形品の形状に対応し、縁部、縁部から延長する側壁部および側壁部を連結する連結壁部を有することとなる、一方、段差部572は、予備成形されたブランク500の延長部514が、当接して押込まれることで、板厚の増加を引き起こす材料流動を発生させる。
スプリング機構576は、分割型574の下方に位置する下型基部571の凹部575に配置されており、分割型574を上方に付勢している。分割型574の付勢力は、型締め力より小さく設定されている。
次に、実施の形態5に係るプレス成形品の製造方法を説明する。
図36は、予備成形過程の開始を説明するための断面図、図37は、図36に続く、予備成形過程の完了を説明するための断面図、図38は、図37に示されるブランクを説明するための斜視図、図39および図40は、図37に続く、部分増肉部の形成過程の途中および完了を説明するための断面図である。
本製造方法のプレス成形工程においては、まず、ブランク500が、上型560と下型570との間に配置される。ブランク500の中央延長部506は、下型570の分割型574と当接する(図34および図35参照)。
型締めしてプレス成形するために、下型570に向かって上型560が降下すると、上型560の端面562は、ブランク500の側方延長部504と当接する。上型560の型締め力は、ブランク500の側方延長部504を、下方に向かって押圧し、側方延長部504を変形させる(図36参照)。
上型560の降下が継続すると、ブランク500は、下型270の外面部に沿った形状(ハット状断面)に予備成形される(図37および図38参照)。これにより、ブランク500は、縁部、縁部から延長する側壁部および側壁部を連結する連結壁部を有することとなり、延長部514は、下型基部571の段差部572と当接する。
上型560の降下がさらに継続すると、上型560の型締め力は、ブランク500の延長部514を、下型基部571の段差部572に向かって押圧するため、延長部514が変形する。延長部514の材料は上方に流動し、押込まれる(図39および図40参照)。この際、延長部514は、増肉予定部512を含んでいる周方向領域の縁部に位置し、かつ、材料流動による増肉を考慮した型締め時におけるキャビティの断面厚が設定されているため、延長部514の材料流動は、増肉予定部512の板厚の増加を引き起こす。なお、分割型574の付勢力は、型締め力より小さく設定されており、延長部514の変形に伴って降下するため、延長部514の変形に干渉しない。
以上のように、実施の形態5においては、上型560と下型570との間に板状のブランク100を配置し、型締めすることによって、板状のブランク100からハット状断面
を有する予備成形体を成形する予備成形工程と、撓み工程と、増肉工程とが、一回の型締め動作によって順に連続的に実行される。したがって、生産性を向上させ、製造コストのさらなる低減を図ることが可能である。
次に、実施の形態6を説明する。
図41は、実施の形態6に係るプレス成形品を説明するための斜視図、図42は、実施の形態6に係るブランクを説明するための斜視図、図43は、実施の形態6に係る下型を説明するための斜視図である。
実施の形態6は、連結壁部の構成に関し、実施の形態1と概して異なる。実施の形態6に係るプレス成形品の連結壁部126は、部分増肉部132の縁部に配置される貫通孔138を有し、ブランク(予備成形体)の連結壁部106は、増肉予定部112の縁部に配置される貫通孔118を有する。
ブランクの貫通孔118は、プレス成形品の貫通孔138に対応しており、また、圧縮応力の伝達を阻害する構造を有する。貫通孔118は、断面厚の増加を引き起こす材料の周辺部への流動を抑制するための抑制手段を構成しており、部分増肉部132の増肉効率を向上させる機能を有する。
貫通孔118の形状は、特に限定されないが、プレス成形の際の応力集中を避けるためには、円形状であることが好ましい。また、延長部114および貫通孔118は、圧延材からブランクを成形する際、打抜き加工によって形成することが、生産性およびコストの点で好ましい。しかし、延長部114および貫通孔118を、機械加工によって別途形成することも可能である。ブランクは、圧延材から成形されることに限定されず、例えば、鋳造品を適用することも可能である。
実施の形態6に係るブランクは、貫通孔118を除けば実施の形態1に係るブランクと略一致しているため、実施の形態1に係るプレス成形品の製造装置および製造方法を適用し、実施の形態6に係るプレス成形品を製造することが可能である。そのため、実施の形態6に係るプレス成形品の製造装置および製造方法の説明は、重複を避けるため、省略する。
以上のように、実施の形態6においては、断面厚の増加を引き起こす材料の周辺部への流動が、単純な構造を有する貫通孔によって抑制されるため、実施の形態1に比較し、良好な増肉効率を有する。また、貫通孔が、ブランクの連結壁部に配置されているため、プレス成形品の連結壁部を効率的に増肉させることが可能である。さらに、周長延長部位が、ブランクの側壁部の縁部に配置される延長部から構成されるため、プレス成形品の側壁部を効率的に増肉させることが可能である。
貫通孔は、ブランクの側壁部に配置したり、連結壁部および側壁部の両方に配置したりすることも可能である。また、貫通孔を、部分増肉部と別の部品との固定面に位置するように配置することも好ましい。この場合、別の部品が補強材としての機能を発揮するため、プレス成形品の剛性に対する貫通孔の影響を抑制すること可能である。貫通孔は、ブランクの側壁部の縁部に配置したり、一方の縁部のみに配置したりすることも可能である。貫通孔のサイズおよび設置数は、ブランクの増肉予定部およびプレス成形品の部分増肉部のサイズおよび形状に応じて、適宜設定することが好ましい。
次に、実施の形態7を説明する。
図44は、実施の形態7に係る下型を説明するための斜視図である。
実施の形態7は、プレス成形品の製造装置および製造方法に関し、実施の形態6と概して異なり、下型270に配置されたブランク(予備成形体)の連結壁部206の撓み量を抑制する抑制機構を有している。実施の形態7に係るプレス成形品の製造装置および製造方法は、実施の形態2に係るプレス成形品の製造装置および製造方法が適用されているため、実施の形態7に係るプレス成形品の製造装置および製造方法の説明は、重複を避けるため、省略する。
以上のように、実施の形態7においては、押込み比を大きくした場合であっても、貫通孔218を有するブランクの連結壁部206をパッド部292によって支持し、その撓み量を抑制することによって、ブランクの座屈を抑制することが可能であり、実施の形態6に比較し、プレス成形品の部分増肉部のさらなる増肉化を図ることが可能である。
次に、実施の形態8を説明する。
図45は、実施の形態8に係るブランクを説明するための斜視図、図46は、実施の形態8に係る下型を説明するための斜視図、図47は、実施の形態8の変形例を説明するための斜視図である。
実施の形態8は、ブランク(予備成形体)の連結壁部の構成に関し、実施の形態6と概して異なる。実施の形態8に係るブランクの連結壁部306は、張出し部315を有しており、実施の形態3に係るブランク300に対応している。また、貫通孔318は、張出し部315に隣接し、かつ連結壁部306増肉予定部312の縁部に位置している。貫通孔318は、圧縮応力の伝達を阻害することによって、増肉予定部312から増肉非予定部への流動を抑制するため、プレス成形品の連結壁部の増肉効率を向上させる。
張出し部315は、図47に示されるように、実施の形態6に係る延長部114に対して排他的ではない。例えば、周長延長部位を、張出し部315および延長部114によって構成することも可能である。この場合、プレス成形品の連結壁部および側壁部を、効率的に増肉させることが可能である。
なお、実施の形態8に係るプレス成形品の製造装置および製造方法は、実施の形態3に係るプレス成形品の製造装置および製造方法が適用されるため、実施の形態8に係るプレス成形品の製造装置および製造方法の説明は、重複を避けるため、省略する。
以上のように、実施の形態8は、実施の形態6と同様に、プレス成形品の軽量化および製造コストの低減を図ることが可能である。また、実施の形態8における周長延長部位は、ブランクの連結壁部に配置される張出し部から構成されるため、特に、プレス成形品の連結壁部を効率的に増肉させることが可能である。
次に、実施の形態9を説明する。
図48は、実施の形態9に係るブランク(予備成形体)を説明するための斜視図である。
実施の形態9は、ブランクの張出し部の構成に関し、実施の形態8と概して異なる。実施の形態9に係るブランクの張出し部415は、側壁部404に配置されており、実施の形態4に係るブランク400に対応している。また、貫通孔418は、連結壁部406の増肉予定部412の縁部に位置している。貫通孔418は、圧縮応力の伝達を阻害することによって、増肉予定部412から増肉非予定部への流動を抑制するため、プレス成形品の連結壁部の増肉効率を向上させる。
なお、実施の形態9に係るプレス成形品の製造装置および製造方法は、実施の形態4に係るプレス成形品の製造装置および製造方法が適用されるため、実施の形態9に係るプレス成形品の製造装置および製造方法の説明は、重複を避けるため、省略する。
以上のように、実施の形態9は、実施の形態6と同様に、プレス成形品の軽量化および製造コストの低減を図ることが可能である。また、実施の形態9における周長延長部位は、ブランクの側壁部に配置される張出し部から構成されるため、特に、プレス成形品の側壁部を効率的に増肉させることが可能である。
次に、実施の形態10を説明する。
図49は、実施の形態10に係るブランクが有するスリットを説明するための斜視図、図50は、実施の形態10に係るプレス成形工程を説明するための斜視図である。
実施の形態10は、材料の流動を抑制する抑制手段がスリット618によって構成される点で、抑制手段が貫通孔118によって構成される実施の形態6と概して異なる。なお、実施の形態10に係るプレス成形品の製造装置は、実施の形態6に係るプレス成形品の製造装置と略一致するため、その説明は繰り返さない。
スリット618は、ブランク(予備成形体)600の増肉予定部612の縁部に配置され、側壁部604および連結壁部606を延長しており、側壁部604および連結壁部606を経由する圧縮応力の伝達を阻害することが可能である。増肉予定部612を含んでいる周方向領域の縁部602には、周長延長部位を構成する延長部(突出部)614が配置されており、増肉予定部612を含んでいる周方向領域の断面周長は、増肉非予定部(周辺部)616を含んでいる周方向領域の断面周長よりも長い。
したがって、プレス成形工程において、ブランク600の延長部614が、下型の段差部に向かって押圧されることで、延長部614が変形し、その材料は上方に流動する。この際、延長部614は、増肉予定部612を含んでいる周方向領域の縁部602に位置し、かつ、材料の流動による増肉を考慮した型締め時におけるキャビティの断面厚が設定されているため、延長部614の材料の流動は、増肉予定部612の断面厚の増加を引き起こす。
一方、増肉予定部612の縁部には、スリット618が位置している。スリット618は、圧縮応力の伝達を阻害することによって、増肉予定部612から増肉非予定部616への流動を抑制する(図50参照)。スリット618は、側壁部604および連結壁部606を延長しているため、連結壁部606を経由する材料流動に加えて、側壁部604を経由する材料流動も抑制する。つまり、側壁部604を経由して分散していた材料も、連結壁部606に流入することとなる。したがって、プレス成形品の連結壁部の増肉効果を、さらに向上させることが可能である。
以上のように、実施の形態10は、単純な構造を有するスリットが側壁部および連結壁部に配置されており、連結壁部を経由する材料流動に加えて、側壁部を経由する材料流動も抑制されるため、実施の形態6と比較し、プレス成形品の連結壁部の増肉効果を向上させることが可能である。
なお、スリットは、圧延材からブランクを成形する際に、打抜き加工によって形成することが、生産性およびコストの点で好ましい。しかし、スリットを、機械加工によって別途形成することも可能である。スリットの幅および長さは、ブランクの増肉定部およびプレス成形品の部分増肉部のサイズおよび形状に応じて、適宜設定することが好ましい。
また、スリットを、部分増肉部と別の部品との固定面に位置するように配置することも好ましい。この場合、別の部品が補強材としての機能を発揮するため、プレス成形品の剛性に対するスリットの影響を抑制すること可能である。必要に応じ、スリットを、溶接などによって接合し、剛性を確保することも可能である。さらに、スリットを、側壁部および連結壁部の一方のみに配置したり、側壁部の一方のみに配置したりすることも可能である。
次に、実施の形態11を説明する。
図51は、実施の形態11に係るブランクを説明するための斜視図、図52は、図51に示される凹部を説明するための断面図である。
実施の形態11は、材料の流動を抑制する抑制手段が凹部718によって構成される点で、スリット618によって構成される実施の形態10と概して異なる。なお、実施の形態11に係るプレス成形品の製造装置は、実施の形態6に係るプレス成形品の製造装置と略一致するため、その説明は繰り返さない。
凹部718は、薄肉部からなり、ブランク(予備成形体)700の増肉予定部712の縁部の内面に配置され、側壁部704および連結壁部706を延長しているため、側壁部704および連結壁部706を経由する圧縮応力の伝達を阻害することが可能である。凹部718は、スリット618に比べ、剛性に対する影響が少ない点で好ましい。増肉予定部712を含んでいる周方向領域の縁部702には、周長延長部位を構成する延長部(突出部)714が配置されており、増肉予定部712を含んでいる周方向領域の断面周長は、増肉非予定部716を含んでいる周方向領域の断面周長よりも長い。
したがって、プレス成形工程において、ブランク700の延長部714が、下型の段差部に向かって押圧されることで、延長部714が変形し、その材料は上方に流動する。この際、延長部714は、増肉予定部712を含んでいる周方向領域の縁部702に位置し、かつ、材料の流動による増肉を考慮した型締め時におけるキャビティの断面厚が設定されているため、延長部714の材料の流動は、増肉予定部712の断面厚の増加を引き起こす。
一方、増肉予定部712の縁部には、凹部718が位置している。凹部718は、圧縮応力の伝達を阻害することによって、増肉予定部712から増肉非予定部(周辺部)716への流動を抑制する。凹部718は、側壁部704および連結壁部706を延長しているため、連結壁部706を経由する材料流動に加えて、側壁部704を経由する材料流動も抑制する。
つまり、側壁部704を経由して分散していた材料も、連結壁部706に流入することとなるため、プレス成形品の連結壁部の増肉効果を、さらに向上させることが可能である。なお、凹部718は、連結壁部706からの材料流動により縮小するため、プレス成形品の部分増肉部(長手方向の一部分)732に残留する凹部738は、ブランク700の凹部718に比べ、小さくなる。
図53〜55は、実施の形態11に係る変形例1〜3を説明するための断面図であり、プレス成形前後の凹部を示している。
ブランク700の増肉予定部712に相対する上型の内面部位に、凹部を形成し、増肉予定部712と上型の内面部位との間の隙間を大きくすることで、材料の流動および増肉を許容する空間を、増肉予定部712の上方に関して拡大させることが可能である。この場合、上面が増肉した部分増肉部732が得られる(図53参照)。なお、符号736は、非増肉部を示している。
また、増肉予定部712に相対する下型の内面部位に凹部を形成し、増肉予定部712と下型の内面部位との間の隙間を大きくすることで、材料の流動および増肉を許容する空間を、増肉予定部712の下方に関して拡大させることが可能である。この場合、下面が増肉した部分増肉部732が得られる(図54参照)。
さらに、増肉予定部712に相対する上型および下型の内面部位に凹部を形成し、増肉予定部712と上型の内面部位との間の隙間および増肉予定部712と下型の内面部位との間の隙間を大きくすることで、材料の流動および増肉を許容する空間を、増肉予定部712の上方および下方に関して拡大させることが可能である。この場合、上面および下面が増肉した部分増肉部732が得られる(図55参照)。
図56は、実施の形態11に係る変形例4を説明するための断面図であり、プレス成形前後の凹部を示している。
目的とするプレス成形品において、凹部718の残留が好ましくない場合、凹部718の形状を調整することによって対処することが可能である。例えば、凹部718を浅く形成する場合、連結壁部706からの材料流入によって凹部718を消失させ、プレス成形品の部分増肉部732が凹部738を有しないようにすることが可能である。
以上のように、実施の形態11に係る凹部は、単純な構造を有し、実施の形態10に係るスリットに比較し、剛性に対する影響が少ないため、実施の形態10と比較し、プレス成形品の剛性確保が容易である。
なお、凹部は、圧延材からブランクを成形する際に、プレス成形によって形成することが、生産性およびコストの点で好ましい。しかし、凹部を、機械加工によって別途形成したり、ブランクに鋳造を適用する場合には、鋳造時に一括して凹部を形成したりすることも可能である。凹部の幅および長さは、ブランクの増肉予定部およびプレス成形品の部分増肉部のサイズおよび形状に応じて、適宜設定することが好ましい。
また、凹部を、部分増肉部と別の部品との固定面に位置するように配置することも好ましい。この場合、別の部品が補強材としての機能を発揮するため、プレス成形品の剛性に対する凹部の影響を抑制すること可能である。さらに、凹部を、ブランクの外面に配置したり、側壁部および連結壁部の一方のみに配置したり、側壁部の一方のみに配置したりすることも可能である。また、複数の凹部を、周方向に間をあけて配置することも可能である。
次に、実施の形態12を説明する。
図57は、実施の形態12に係るブランクを説明するための斜視図、図58は、図57に示される屈曲部を説明するための断面図である。
実施の形態12は、材料の流動を抑制する抑制手段が屈曲部818によって構成される点で、抑制手段が凹部738によって構成される実施の形態11と概して異なる。なお、実施の形態12に係るプレス成形品の製造装置は、実施の形態6に係るプレス成形品の製造装置と略一致するため、その説明は繰り返さない。
屈曲部818は、ブランク(予備成形体)800の増肉予定部812の縁部の外面に配置され、側壁部804および連結壁部806を延長しており、側壁部804および連結壁部806を経由する圧縮応力の伝達を阻害することが可能である。屈曲部818は、薄肉部からなる凹部718に比べ、剛性にする影響が少ない点で好ましい。屈曲部818の断面形状は、特に限定されないが、変形が容易である形状、例えば、なだらかな円弧形状とすることで、プレス成形品における残留跡を消失(あるいは縮小)させることが好ましい。
増肉予定部812を含んでいる周方向領域の縁部802には、周長延長部位を構成する延長部(突出部)814が配置されており、増肉予定部812を含んでいる周方向領域の断面周長は、増肉非予定部(周辺部)816を含んでいる周方向領域の断面周長よりも長い。
したがって、プレス成形工程において、ブランク800の延長部814が、下型の段差部に向かって押圧されることで、延長部814が変形し、その材料は上方に流動する。この際、延長部814は、増肉予定部812を含んでいる周方向領域の縁部802に位置し、かつ、材料の流動による増肉を考慮した型締め時におけるキャビティの断面厚が設定されているため、延長部814の材料の流動は、増肉予定部812の断面厚の増加を引き起こす。
一方、増肉予定部812の縁部には、屈曲部818が位置している。屈曲部818は、圧縮応力の伝達を阻害することによって、増肉予定部812から増肉非予定部816への流動を抑制する。屈曲部818は、側壁部804および連結壁部806を延長しているため、連結壁部806を経由する材料流動に加えて、側壁部804を経由する材料流動も抑制する。つまり、側壁部804を経由して分散していた材料も、連結壁部806に流入することとなるため、プレス成形品の連結壁部の増肉効果を、さらに向上させることが可能である。なお、屈曲部818は、上型および下型に押圧されて変形し、消失(あるいは縮小)する。
図59〜61は、実施の形態12に係る変形例1〜3を説明するための断面図であり、プレス成形後の屈曲部を示している。
ブランク800の増肉予定部812に相対する上型の内面部位に、凹部を形成し、増肉予定部812と上型の内面部位との間の隙間を大きくすることで、材料の流動および増肉を許容する空間を、増肉予定部812の上方に関して拡大させることが可能である。この場合、上面が増肉した部分増肉部(長手方向の一部分)832が得られる(図59参照)。なお、符号836は、非増肉部を示している。
また、増肉予定部812に相対する下型の内面部位に凹部を形成し、増肉予定部812と下型の内面部位との間の隙間を大きくすることで、材料の流動および増肉を許容する空間を、増肉予定部812の下方に関して拡大させることが可能である。この場合、下面が増肉した部分増肉部832が得られる(図60参照)。
さらに、増肉予定部812に相対する上型および下型の内面部位に凹部を形成し、増肉予定部812と上型の内面部位との間の隙間および増肉予定部812と下型の内面部位との間の隙間を大きくすることで、材料の流動および増肉を許容する空間を、増肉予定部712の上方および下方に関して拡大させることが可能である。この場合、上面および下面が増肉した部分増肉部832が得られる(図61参照)。
以上のように、実施の形態12に係る屈曲部は、単純な構造を有し、実施の形態11に係る凹部に比較し、剛性に対する影響が少ないため、実施の形態11と比較し、プレス成形品の剛性確保が容易である。
なお、屈曲部は、圧延材からブランクを成形する際に、プレス成形によって形成することが、生産性およびコストの点で好ましい。しかし、ブランクに鋳造を適用する場合には、鋳造時に一括し屈曲部を形成することも可能である。屈曲部の大きさおよび長さは、ブランクの増肉予定部およびプレス成形品の部分増肉部のサイズおよび形状に応じて、適宜設定することが好ましい。
また、屈曲部を、ブランクの内面に配置したり、側壁部および連結壁部の一方のみに配置したり、側壁部の一方のみに配置したりすることも可能である。さらに、複数の屈曲部を、周方向に間をあけて配置することも可能である。
次に、実施の形態13を説明する。
図62は、実施の形態1に係るプレス成形品を説明するための斜視図、図63は、実施の形態13に係るブランクを説明するための斜視図、図64は、図63に示されるブランクの断面図である。
実施の形態13に係るプレス成形品(部品)920は、開断面をする略多角形状長尺物であるが、直線状に延長しておらず、長手方向に湾曲したL字状湾曲部および当該湾曲部の両側から直線状に延長する部位を有する点で、実施の形態1に係るプレス成形品120と異なっている。また、L字状湾曲部には、剛性または強度が必要な局所部位に配置される部分増肉部(長手方向の一部分)932が配置されている。部分増肉部932の側壁部924および連結壁部926は、非増肉部936の側壁部924および連結壁部926に比べ、その板厚が増加している。なお、湾曲部は、L字状に限定されず、例えば、C字状、鋭角状、なだらかな円弧状とすることも可能である。
プレス成形品920を得るための実施の形態13に係るブランク(予備成形体)900は、長手方向の形状および開断面の形状に関し、実施の形態1に係るブランク100と概して異なる。つまり、ブランク900は、プレス成形品920の形状に対応し、L字状湾曲部を有しており、長手方向に直線状に延長していない。また、ブランク900における側壁部904と連結壁部906を連結するコーナー部905、および、連結壁部906は、なだらかな円弧状断面を有する。コーナー部905および連結壁部906は、連続的(なめらか)に繋がっており、一体として、半円状断面を呈している。
コーナー部905は、上記のように、実施の形態1に係るブランク100と比較し、明確な稜線を構成しておらず、側壁部904から連結壁部906への塑性流動性が、実施の形態1に比較し、向上している。
また、ブランク900の増肉予定部912は、L字状湾曲部に位置しており、増肉予定部912を含んでいる周方向領域の縁部902には、周長延長部位を構成する延長部914(突出部)が配置されている。
なお、実施の形態13に係るプレス成形品920の製造装置は、上型および下型の成形面の長手方向の形状が異なる点を除けば、実施の形態1に係るプレス成形品100の製造装置と略一致するため、重複を避けるため、その説明は繰り返さない
図65は、実施の形態13に係るプレス成形品の製造方法における部分増肉部の形成過程を説明するための断面図である。
実施の形態13に係るプレス成形品の製造方法においては、まず、ブランク900が、下型970に配置される。ブランク900の延長部914は、下型(パンチ部)970の段差部(当接面)972と当接する。なお、増肉非予定部916を含んでいる周方向領域は、延長部914を含んでいる周方向領域より断面周長が短いため、下型970の段差部972から離間している。
型締めしてプレス成形するために、下型970に向かって上型(ダイ部)960が降下すると、上型960の内面部は、下型970に配置されるブランク900の連結壁部906と当接する。上型960の型締め力は、ブランク900の延長部914を、下型970の段差部972に向かって押圧するため、延長部914が変形する。
上型960の内面部と下型970の外面部の頂面との間(隙間)には、材料流動を許容する空間が存在するため、型締め動作に伴って、延長部914の材料は上方に流動し、押込まれる。
この際、連結壁部906を上型960に当接させるとともに、側壁部904における連結壁部906と反対側の端面を、下型970の段差部972に当接させ、下型970の段差部972および上型960によって側壁部904を押圧することにより、側壁部904から連結壁部906に作用する押圧力によって連結壁部906を撓ませる。つまり、側壁部904を、上型960および下型970により支持すると共に、連結壁部906を、上型960により下型側に押し込むことにより、連結壁部906の中央部を、下型側に撓ませる(湾曲部が形成される)。そして、上型960の成形面における、ブランク900の側壁部904と連結壁部906との間のコーナー部905に対応する部位は、コーナー部905を連結壁部側に案内する。
なお、ブランク900のコーナー部905および連結壁部906は、なだらかな円弧状断面を有し、一体として、半円状断面を呈しており、明確な稜線を構成しておらず、側壁部904から連結壁部906への塑性流動性が向上している。そのため、増肉予定部912がL字状湾曲部に位置しているが、連結壁部906への材料流入が容易に引き起こされる。つまり、稜線の存在による材料流入の規制がないため、連結壁部906の増肉の抑制が避けられる。
その後、連結壁部906を撓ませた状態から、連結壁部906を上型960および下型970により挟み込むとともに、側壁部904を、側壁部904の長さ方向両側から、上型960および下型970により圧縮することにより、連結壁部906の湾曲部が消失し、側壁部904および連結壁部906の両方の板厚を増加させる。
図66は、実施の形態13に係る変形例1を説明するための断面図である。
連結壁部906の形状は、円弧状断面を有する形態に限定されず、略平坦な中央部位906Aと、円弧状断面を有しかつコーナー部905に連結される外周部位906Bとを有することも可能である。この場合、コーナー部905および連結壁部906の外周部位906Bは、明確な稜線を構成しないように、連続的(なめらか)に繋がり、一体として、大きな円弧状断面を形成するように設定される。
図67は、実施の形態13に係る変形例2を説明するための斜視図である。
周長延長部位は、延長部914によって構成する形態に限定されず、張出し部915を適用することも可能である。この場合、張出し部915は、連結壁部906における上型側の面に、当該上型側の面(外側面)から膨出するように形成され、連結壁部906を効率的に増肉させる。なお、張出し部915は、塑性流動性を考慮して、なだらかな曲面によって構成し、明確な稜線を有しないようにすることが好ましい。
図68は、実施の形態13に係る変形例3を説明するための斜視図である。
張出し部915は、延長部914に対して排他的ではく、張出し部915および延長部914の両者によって周長延長部位を構成することも可能である。この場合、連結壁部906および側壁部904を、効率的に増肉させることが可能である。
以上のように、実施の形態13は、実施の形態1に比較し、側壁部から連結壁部への塑性流動性が向上しているため、例えば、L字状湾曲部に位置する連結壁部であっても、その増肉を効果的に促進することができる。したがって、湾曲部を有するプレス成形品の軽量化および製造コストの低減を図ることが可能である。
次に、実施の形態14を説明する。
図69は、実施の形態14に係るプレス成形品を説明するための断面図、図70は、実施の形態14に係るプレス成形品の製造装置を説明するための断面図、図71は、図70に示されるブランクおよび下型を説明するための斜視図である。
実施の形態14に係るプレス成形品(部品)1020は、側壁部1024の肉厚が一定でない点で、実施の形態1に係るプレス成形品120と異なっており、側壁部1024は、連結壁部1026の肉厚と略同一の肉厚を有する側壁縁側部位1024Bと、側壁縁側部位1024Bの肉厚より薄い肉厚を有する側壁コーナー側部位1024Aを有する。
したがって、プレス成形品1020は、側壁部1024における相対的に厚肉である側壁縁側部位1024Bの存在によって剛性または強度を確保する一方、相対的に薄肉である側壁コーナー側部位1024Aの存在によって、軽量化を図ることがさらに容易となる。
プレス成形品1020を得るための実施の形態14に係るブランク(予備成形体)1000は、実施の形態1に係るブランク100と略一致しているため、重複を避けるため、その説明は繰り返さない。
実施の形態14に係るプレス成形品1020の製造装置は、型締め時におけるキャビティの形状に関し、実施の形態1に係るプレス成形品100の製造装置と概して異なる。
詳述すると、下型1070の外面部は、プレス成形品1020の連結壁部1026および側壁部1024の内面に対応する連結壁成形面1076および側壁成形面1074を有する。上型1060の内面部は、プレス成形品1020の連結壁部1026および側壁部1024の外面に対応する連結壁成形面1067および側壁成形面1064を有する。
側壁成形面1064は、側壁部1024の側壁コーナー側部位1024Aおよび側壁縁側部位1024Bに対応する側壁コーナー側成形面1064Aおよび側壁縁側成形面1064Bを有する。側壁縁側成形面1064Bは、上型1060の抜き方向を考慮し、側壁コーナー側成形面1064Aに対して窪んでおり、かつ、側壁縁側成形面1064Bと側壁コーナー側成形面1064Aとは、なだらかな傾斜面によって連続的に連結されている。
上型1060の連結壁成形面1067と下型1070の連結壁成形面1076との間において型締め時において形成されるキャビティは、プレス成形品1020の連結壁部1026の形状に対応するように、設定されている。つまり、キャビティの断面厚は、プレス成形品1020の連結壁部1026の形成するための材料流動を許容するように設定されている。
上型1060の側壁成形面1064と下型1070の側壁成形面1074との間において型締め時において形成されるキャビティは、プレス成形品1020の側壁部1024の形状に対応するように、設定される。
詳述すると、上型1060の側壁縁側成形面1064Bと下型1070の側壁成形面1074との間のキャビティの断面厚は、上型1060の側壁コーナー側成形面1064Aと下型1070の側壁成形面1074との間のキャビティの断面厚より大きく、かつ、上型1060の連結壁成形面1067と下型1070の連結壁成形面1076との間のキャビティの断面厚と略一致するように設定されている。
図72は、実施の形態14に係るプレス成形品の製造方法における部分増肉部の形成過程を説明するための断面図である。
実施の形態14に係るプレス成形品の製造方法においては、まず、ブランク1000が、下型1070に配置される。ブランク1000の延長部(突出部)1014は、下型1070の段差部1072と当接する。なお、延長部1014は、増肉予定部1012を含んでいる周方向領域の縁部1002にが配置されている。また、増肉非予定部1016を含んでいる周方向領域は、延長部1014を含んでいる周方向領域より断面周長が短いため、下型1070の段差部1072から離間している。
型締めしてプレス成形するために、下型(パンチ部)1070に向かって上型(ダイ部)1060が降下すると、上型1060の内面部は、下型1070に配置されるブランク1000の連結壁部1006と当接する。上型1060の型締め力は、ブランク1000の延長部1014を、下型1070の段差部1072に向かって押圧するため、延長部1014が変形する。
上型1060の内面部と下型1070の外面部の頂面との間(隙間)には、材料流動を許容する空間が存在するため、型締め動作に伴って、延長部1014の材料は上方に流動し、押込まれる。
この際、連結壁部1006を上型1060に当接させるとともに、側壁部1004における連結壁部1006と反対側の端面を、下型1070の段差部1072に当接させ、下型1070の段差部1072および上型1060によって側壁部1004を押圧することにより、側壁部1004から連結壁部1006に作用する押圧力によって連結壁部1006を撓ませる。つまり、側壁部1004を、上型1060および下型1070により支持すると共に、連結壁部1006を、上型1060により下型側に押し込むことにより、連結壁部1006の中央部を、下型側に撓ませる(湾曲部が形成される)。そして、上型1060の成形面における、ブランク1000の側壁部1004と連結壁部1006との間のコーナー部1005に対応する部位は、コーナー部1005を連結壁部側に案内する。
その後、連結壁部1006を撓ませた状態から、連結壁部1006を上型1060および下型1070により挟み込むとともに、側壁部1004を、側壁部1004の長さ方向両側から、上型1060および下型1070により圧縮することにより、連結壁部1006の湾曲部が消失し、側壁部1004および連結壁部1006の両方の板厚を増加させる。
この際、上型1060の側壁縁側成形面1064Bと下型1070の側壁成形面1074との間のキャビティの断面厚は、上型1060の側壁コーナー側成形面1064Aと下型1070の側壁成形面1074との間のキャビティの断面厚より大きく、かつ、上型1060の連結壁成形面1067と下型1070の連結壁成形面1076との間のキャビティの断面厚と略一致するように設定されている。したがって、連結壁部1006の湾曲部が消失する材料の流動によって、前記キャビティに材料が満たされる。これにより、プレス成形品1020の側壁部1024は、連結壁部1026の肉厚と略同一の肉厚を有する側壁縁側部位1024Bと、側壁縁側部位1024Bの肉厚より薄い肉厚を有する側壁コーナー側部位1024Aを有することとなる。
図73は、実施の形態14に係る変形例1を説明するための断面図である。
プレス成形品1020の連結壁部1026の肉厚は、側壁縁側部位1024Bの肉厚と略同一とする形態に限定されず、側壁縁側部位1024Bの肉厚より小さくすることも可能である。この場合、上型1060の連結壁成形面1067と下型1070の連結壁成形面1076との間のキャビティの断面厚を、上型1060の側壁縁側成形面1064Bと下型1070の側壁成形面1074との間のキャビティの断面厚より小さくする。
なお、実施の形態14とその変形例1とを組み合わせることで、プレス成形品1020の連結壁部1026の肉厚を部分的に変化させる(異ならせる)ことも可能である。また、プレス成形品1020の側壁部1024における厚肉部が占める割合(側壁コーナー側部位1024Aに対する側壁縁側部位1024Bの割合)を、適宜変更することも可能である。
図74および図75は、実施の形態14に係る変形例2およびを変形例3を説明するための断面図である。
プレス成形品1020の開断面の形状は、略矩形に限定されない。例えば、上型1060の内面部および下型1070の外面部を適宜変更することで、側壁部1024が傾斜しかつ連結壁部1026が若干湾曲した山形状開断面を有するプレス成形品に、実施の形態14およびその変形例1を適用することも可能である。
以上のように、実施の形態14は、側壁部の連結壁部側と反対側の端面周辺部の板厚を、連結壁部側の端面周辺部の板厚より大きくすることが可能であり、剛性または強度を確保する一方、軽量化を図ることがさらに容易となる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。
例えば、実施の形態1に係る変形例1〜3を、実施の形態2〜4や実施の形態6〜9に適用したり、実施の形態2を、実施の形態3およびその変形例に適用したり、実施の形態10〜12を、実施の形態6〜9に適用したり、実施の形態11に係る変形例1〜3を、実施の形態6〜10に適用したり、することも可能である。実施の形態6および10〜12を、実施の形態13および実施の形態14に適用することも可能である。
また、材料の流動を抑制する抑制手段は、圧縮応力の伝達を阻害する構造を有しておれば、貫通孔、スリット、凹部および屈曲部に、特に限定されない。
プレス成形品は、サスペンション部品に適用する形態に限定されず、他の車両用構造部材に適用することも可能である。他の車両用構造部材は、例えば、リンク部品、ブラケット部品、サイドシルアウターレインフォース等のボディ本体部品、ラダーフレーム等のフレーム部材である。
ブランクおよびプレス成形品の側壁部および連結壁部は、略平面形状に限定されず、湾曲形状や屈曲形状を有することも可能である。また、側壁部の一端が相互に連結され、連結壁部を有しないアングル形状のブランクおよびプレス成形品に適用することも可能である。さらに、剛性または強度が必要な局所部位として、他の構造部材が溶接される部位を適用することも可能である。