JP5351452B2 - 高い緩衝性能を有する履物 - Google Patents
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Description
これらの特許文献で開示された緩衝パーツは、熱可塑性樹脂製の柔軟なケーシング(チューブ)の内部にゲル状の緩衝機能材を充填した状態で、ケーシングの両端を封入したものであり、このような構造に因み、緩衝資材を汎用的なものとし得る点で相応の効果を奏している。しかしながら、この種の緩衝資材やこれを装着した履物にあっては、以下のような点でまだ改良の余地があった。
しかしながら、この種の緩衝資材や履物にあっては、常に緩衝性能の向上が求められ、且つまた、より一層の低コスト化も併せて要求されており、更なる改良・開発が進められていた。
ソールに緩衝パーツを組み込んで成る履物であって、
この緩衝パーツは、
可撓性を有するケーシングと、
この内部に収容され、主に緩衝機能材として機能する超変形吸振体とを具えて成るものであり、
更に前記ケーシングは、パーツに加えられた圧縮荷重を、荷重方向とほぼ直交する方向への超変形吸振体の膨らみ変形として逃がす変形許容部構造を具え、
また超変形吸振体とケーシングとの境界面は、少なくとも一部が固着されて成るものであり、
ソールを通してパーツに圧縮荷重が加わった際には、前記変形許容部構造における超変形吸振体の膨らみ変形によって、この圧縮荷重を吸収し、また圧縮荷重が解除された後には、超変形吸振体が初期付与形状に復元するものであり、
更に前記ケーシングは、少なくとも一方の端部が開口された筒状に形成されて成り、この開口端部では超変形吸振体がケーシングと隙間なく設けられる部位があり、
また前記変形許容部構造における超変形吸振体の膨らみ変形には、少なくとも、ケーシングの開口端部からパーツの外部に張り出す突出変形を含むことを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツは、超変形吸振体が500%以上の伸び率を有することを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツのケーシングは、一本の筒状の単体、もしくは複数本の筒体を並列状に並べた連続体として形成されることを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツのケーシングが、複数本の筒体を並列状に並べた連続体として構成される場合には、隣り合う筒体の隔壁を介在させないようにしたことを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツのケーシングは、両端部が開口されて成り、且つこれら両端部の開口断面積が異なるように形成されることを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツが装着されるソールには、緩衝機能を付与したい部位に受入空間が形成され、装着時には、この空間に緩衝パーツを設けて成るものであり、
また、この受入空間には、ケーシング端部における超変形吸振体の突出変形を許容する変形可能空間が併せて形成されることを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツが装着されるソールには、緩衝機能を付与したい部位に受入空間が形成され、装着時には、この空間に緩衝パーツを設けて成るものであり、
また、この受入空間には、ケーシング端部において超変形吸振体が突出変形した際に接触する当接面が形成されるものであり、この接触によって超変形吸振体の以降の突出変形が制限されるようにしたことを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツは、圧縮荷重が作用する方向から視て馬蹄形の湾曲状態で、ソールに装着されるものであり、
この際、前記ケーシングには、馬蹄内周側と馬蹄外周側とにおいて、適宜の肉厚差が設けられ、この肉厚差によって装着前から緩衝パーツに予め曲げ癖が付与されることを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツは、圧縮荷重が作用する方向から視て馬蹄形の湾曲状態で、ソールに装着されるものであり、
この際、前記ケーシングは、馬蹄内周側または馬蹄外周側のうち少なくとも一方が蛇腹状に形成され、圧縮荷重に抗することなく緩衝パーツが潰れ変形を起こすようにしたことを特徴として成るものである。
前記ソールには、緩衝パーツの中央付近に対して凸状を成す押込材が設けられ、ソールから緩衝パーツに荷重が加わった際には、この押込材の押圧作用によって緩衝パーツの中央部を強く押し込み、超変形吸振体のケーシング端部からの突出変形を大きく張り出させるようにしたことを特徴として成るものである。
前記ソールには、緩衝パーツに対し、このものが視認される側にレンズを設け、このレンズ効果によって、超変形吸振体のケーシング端部からの突出変形を拡大して外観目視させるようにしたことを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツは、ソールに装着した状態で、少なくとも一部が外部から目視可能な状態に取り付けられるものであり、
また、前記ケーシング及び超変形吸振体は、透明または半透明の素材によって形成されるとともに、更に超変形吸振体は、屈折率が異なる二種以上の素材で形成され、
超変形吸振体に適用される二種以上の素材が外観目視されるようにしたことを特徴として成るものである。
前記ケーシングまたはソールの受入空間には、予め適宜の印刷が施されて成り、
緩衝パーツがソールに装着された状態で、この印刷が外観目視されるようにしたことを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツは、ソールへの装着状態で、ケーシング端部における超変形吸振体の外部への突出変形が外観目視可能な状態に取り付けられることを特徴として成るものである。
前記ソールの当接面には、予め適宜の印刷が施されて成り、圧縮荷重によって超変形吸振体がケーシング端部から外部に突出し、この当接面に接触した際に、初めて印刷が外観目視される、または無負荷時とは異なった印刷が外観目視されるようにしたことを特徴として成るものである。
前記緩衝パーツは、ソールに対して複数設置されるものであって、
各緩衝パーツに作用する荷重の差異に対応して、超変形吸振体の突出変形の張出量が相違することを利用して、
ソールの各部位に作用する荷重の偏りを、各緩衝パーツにおける超変形吸振体のケーシング端部からの突出変形の大小によって外部に標示するようにしたことを特徴として成るものである。
前記ソールに掛かる荷重の偏りを外部に標示するにあたっては、正反対の荷重の掛かり方を異なる色で標示するようにしたことを特徴として成るものである。
まず請求項1記載の発明によれば、履物に加わった圧縮荷重を、緩衝パーツによって超変形吸振体の膨らみ変形として逃がすため、単に衝撃を吸収するだけでなく、超変形吸振体の膨らみ方(変形)を制御することにより、衝撃力の弱め方をコントロールすることができ、このような特性を具備した履物を提供できる。例えば、ケーシングの両端を開口させ、ここで超変形吸振体を自由に突出変形させる場合、両端部の開口面積を異ならせれば、超変形吸振体の膨らみ変形(突出変形)は大きな開口面積の方が起こり易いため、大きな開口面積の方に、より多くの荷重(衝撃)を逃がすことができる。
因みに、従来の履物に適用されていたチューブ状の緩衝資材は、エアを適用したものにしても、ゲルを適用したものにしても、これらをチューブ内に充填・密封したものが多かったため、チューブが圧縮されることに伴い、ある程度の緩衝力は得られても、すぐに圧縮限界に達してしまい、とてもチューブが完全潰れの状態(圧縮を受けたチューブ同士がほぼ密着するペシャンコ状態)になるまで想定されていなかった。すなわち、従来の緩衝資材は封止形態であるが故に、チューブが完全潰れ状態になるまで緩衝機能を持たせることは意図していなかったが(充填物が密閉空間に封入された構造であるため、チューブが完全に潰れる前に急激に反発力が上がってしまっていた)、本発明に適用する緩衝パーツは、超変形吸振体の膨らみ変形によって衝撃を吸収・緩和するため、チューブが完全潰れを起こすまで緩衝性能をコントロールすることができ、また緩衝特性そのものも適宜設定することができるものである。
また本発明によれば、ケーシングは、少なくとも一方の端部が開口され、この開口端部において超変形吸振体を外部に突出変形させて衝撃を吸収するため、この突出変形によって高い緩衝性能(衝撃吸収性)をユーザにアピールすることができる。すなわち、例えば本発明に係る緩衝パーツをスポーツシューズに取り付けた場合、ケーシング端部における突出変形を外観目視できるようにしておけば、ユーザはシューズの高い緩衝性能を、超変形吸振体の突出変形として認識できる(実際に目で見て実感できる)ものである。なお、一般に、スポーツシューズ等は、デザイン性とともに機能性が重視される商品であり、単にユーザが見た目だけのデザインで商品を選ぶのではなく、実際に緩衝パーツが装着されている部位を手や指等で押してみて、その緩衝性能を確かめてみることが多いため、このような高い緩衝性能が人の感覚として実感できるものは、その商品価値が高いものとなる。
また、ケーシングは、少なくとも一方の端部が開口状態に形成されるため、この端部については熱溶着等の封止を必要とせず、緩衝パーツひいては履物を低コストで製造することができる。
なお、隔壁がない連続体タイプの緩衝パーツの場合、ケーシングの肉厚を単体のものよりも薄くすることで、更に衝撃吸収性を高めることができる。また、このような隔壁のない連続体タイプの緩衝パーツは、製造段階では通常の二次元的な押出成形で形成したものであっても、装着時には三次元的に柔軟に撓み得るため、履物の種々の変形に追従できるものである。
なお、ケーシングの両端部の開口断面積を異ならせるには、緩衝パーツ(ケーシング)の一端側のみを斜めにカットする手法や、両端を真っ直ぐにカットしながらも一端側のみに更に小孔を開口する手法、あるいはケーシング全体をテーパ筒状に形成する手法等が挙げられる。
なお、馬蹄内周側のみを蛇腹状に形成した場合には、蛇腹状の内側で衝撃吸収性の向上を図りながら、装着状態で視認面となる馬蹄外周側は、形状をほぼそのまま維持できるため、デザイン性を向上させることができる。もちろん蛇腹状に形成する部位は、馬蹄内周側だけに限らず、馬蹄外周側も可能であり、内・外周ともに蛇腹状に形成した場合には、超変形吸振体の高い緩衝性能をよりダイレクトに発揮させることができ、また緩衝に要する時間も短縮できる(緩衝特性を制御することにつながる)。
またケーシングを蛇腹状に形成しながら、ケーシングの馬蹄内周側と馬蹄外周側とで肉厚差を設けることも可能であり(例えば馬蹄内周側の肉厚を馬蹄外周側よりも薄くする)、この場合には緩衝パーツに曲げ癖を付与しながら、潰れ易さや、外観目視(デザイン性)を考慮した緩衝パーツひいては履物が得られるものである。
なお、ここでの変形とは、履物に圧縮荷重が加えられた際の超変形吸振体の膨らみ変形の他、緩衝パーツを断面方向で見た場合に超変形吸振体が偏平に押し潰される変形、あるいは圧縮荷重が解除された時の戻り変形(復元)、更には履物を履いた人の体重移動による撓み変形などが挙げられる。
また超変形吸振体は、履物を履いた人の動作により伸縮、押し潰し、撓みなど種々の変形をきたすものであるから、超変形吸振体が一種のレンズ効果を生み、このような種々の変形によって、もともとの印刷を多彩に変化させて外観目視させ得るものである(例えば拡大、縮小、ぼやけ等)。このため、緩衝パーツが高い緩衝性能をアピールすることにとどまらず、履物としての見栄えを変化させるというデザイン的な面白さも同時に演出できる。
因みに、緩衝パーツが取り付けられる履物は、購入時にユーザが直接手に取ることが多い商品であり、このような場合、通常、ユーザは購入時に緩衝パーツ部分を押して、その緩衝性能を確かめるのが一般的である。そのため、このような緩衝性能に直結する超変形吸振体の突出変形が直接目視できるものは、高い商品価値をアピールできるものとなる。もちろん、超変形吸振体の突出変形が目視できるだけでなく、この変形部分に直接、ユーザが触れることができるものであれば、更に履物の機能性(もしくは高い性能を持った履物)を、より一層強くユーザにアピールすることができる。
また、ケーシング2と超変形吸振体3とは、少なくとも、その境界面の一部が固着されて成り、これにより圧縮荷重が除去された際に、超変形吸振体3が元の位置、より詳細には超変形吸振体3をケーシング2に対する初期位置に戻すものである。
なお、超変形吸振体3については、具体的な物性値等を後に詳細に述べるが、これ自体が極めて柔らかく、且つ大きな伸び率を有しており、例えば二つ折り状態(いわば完全潰れ状態)に折り曲げても千切れずに復元するため「超」を付している。
因みに、超変形吸振体3について、本明細書で記述した伸び率は、JIS K6251 (加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方)に準拠して測定した数値であり、測定にあたってはダンベル型の規定形状の試料(本願ではダンベル3号を使用)を引張試験機で引張り、元の長さに対してどのくらい伸びたかを求めたものである。
ケーシング2は、一例としてBASF社製のTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)またはアクリル系エラストマーを適用するものであり、これは高透明・低硬度な素材である。なお、ここでは緩衝パーツ1を製造するにあたり、超変形吸振体3及びケーシング2とを溶融状態で同時に押し出す「同時押出成形」によって形成することを想定しているため、上記素材は、超変形吸振体3との硬度差を少なくでき、同時押出成形が行い易い点でも好ましい素材である。
因みに、一本のチューブ単体(例えば円筒)でケーシング2を形成し、これを緩衝パーツ1に適用する場合には、例えばケーシング2の外径(最外径)は10〜13mm程度で、肉厚(外皮厚)は0.5〜1.0mm程度である。また、何本かのチューブを並列状につなげた連続体でケーシング2を形成し、これを緩衝パーツ(これを一本のチューブ単体の緩衝パーツ1と区別したい場合に「連続体タイプの緩衝パーツ1A」とする)に適用する場合には、例えば連設幅が30〜40mm程度で、連続体(緩衝パーツ1A)の高さが6〜8mm程度で、ケーシング2の肉厚(外皮厚)は0.2〜0.5mm程度である(連続体タイプの緩衝パーツ1Aの方が、肉厚が薄い)。
また、上述したようにケーシング2と超変形吸振体3との境界面は少なくとも一部が固着されるが、同時押出成形によって緩衝パーツ1を製造する場合には、この成形によって自然に上記境界面が固着されるものである。
もちろん押出成形以外の製造手法によって緩衝パーツ1を得ることも可能であり、その場合には、必ずしも上記境界面を全て固着する必要はなく、部分的、より詳細には、ケーシング2の端部(変形許容部構造4に隣接する部位)を固着することが好ましい。それは、超変形吸振体3を初期位置に確実に復元させる目的、ケーシング2に対する超変形吸振体3の移動(ズレ)を防止する目的、境界面からの異物混入を防ぎ、緩衝パーツ1としての強度を保つ目的等によるものである。
なお、変形許容部構造4における超変形吸振体3の膨らみ変形としては、ケーシング2の端部から外部に必ずしも突出しない変形(はみ出ない変形)も含むものである。すなわち、例えば図5(b)に示すように、超変形吸振体3の両端部を最初から凹陥状態に形成したような場合には、圧縮荷重を受けて超変形吸振体3が外方への膨らみ変形を起こしても、この変形が最初の凹陥状態を補う状態となるだけで(埋め合わせるような状態になるだけで)、外観的には超変形吸振体3がケーシング2の端部から外部に何も突出していないかのような状態を呈するものである。
更に、本明細書における「変形許容部構造4における超変形吸振体3の膨らみ変形」、もしくは「圧縮荷重とほぼ直交する方向への超変形吸振体3の膨らみ変形」とは、ケーシング2の端部における膨らみ変形(上記「突出変形」及び「非突出変形」)だけでなく、ケーシング2内における超変形吸振体3の膨らみ変形も含むものである。すなわち、これは例えば図5(c)に示すように、ケーシング2の内部に、超変形吸振体3が存在しない部位を形成するものであり(ここをフリー空間11とする)、このフリー空間11に小孔等のエアー通路12を形成し、このフリー空間11で超変形吸振体3の膨らみ変形を行わせるものである。因みに、上記エアー通路12は、ケーシング2内における超変形吸振体3の膨らみ変形と復元とをスムーズに行わせるための構成であり、従ってエアー通路12を形成する際には、ケーシング2の側周面に等間隔に複数形成されることが好ましい(例えば図5(c)では4等配で形成)。
なお、押出成形工程の中でフリー空間11を併せて形成するには、超変形吸振体3の溶融樹脂の供給(金型への送り込み)だけを一時的に停止させることによって、形成し得るものである。
因みに上記図5(b)に示すように、圧縮荷重を受けても、超変形吸振体3の両端部がともにケーシング2の端部から外方に突出していないものは、本発明に関連する参考例となり、両端部のうちいずれか一方が、外部に突出する場合に本発明の実施例となる。
まず、上記図5(a)に示した実施例は、緩衝パーツ1(ケーシング2)の両端を双方とも軸方向にほぼ垂直にカットし、同じ開口面積(開口部の断面積)を有するように形成したものである。従って、この場合、緩衝パーツ1に均等に圧縮荷重が作用すれば、圧縮荷重による超変形吸振体3の突出変形も両サイドで同じように生じ、衝撃(圧縮荷重)も緩衝パーツ1の両側にほぼ均等に逃がすことになる。
また、図6(e)は、一端のみを開口したケーシング2(上記図6(b)の状態)の閉鎖端部に小孔13を形成したものであり、これも超変形吸振体3の突出変形は、開口端部側の方が起こり易いため、当該端部側に圧縮荷重を大きく逃がし得るものである。なお、この実施例は、押出成形を考慮したものであって、長尺の押出部材を適宜の長さに切断するカット工程(端部カット)において、二回に一度、潰しながらカットを行えば、端部に小孔13を有した本実施例の緩衝パーツ1が得られるものである(押出成形時に一挙に小孔13も形成できるものである)。
また、図6(f)は、ケーシング2の両端を軸方向にほぼ垂直に開口させながら(上記図5(a)の状態)、一方の開口端部付近に小孔13を形成したものである。この場合には、小孔13を形成した端部側の開口面積が大きくなるので、当該端部側に圧縮荷重を大きく逃がし得るものである。
なお、このような傾斜カットを全カット工程において同じ傾斜角度で行った場合には、例えば図6(h)に示すように、側面から視て平行四辺形状の緩衝パーツ1が得られるのであり、また一回のカット工程毎に傾斜角度を交互に変えて傾斜カットを行った場合には、例えば図6(i)に示すように、側面から視て台形状(等脚台形状)の緩衝パーツ1が得られるものである(ただし、図6(h)・(i)は、両端部の開口面積が同じであるため、どちらの端部に、より多くの荷重を逃がすという思想はない)。
因みに、隔壁16がない連続体タイプの緩衝パーツ1Aは、一般的な押出成形で形成したものであっても、超変形吸振体3の性状、ケーシング2の肉厚の薄さ、隔壁16がないこと等に因み、三次元的に充分に撓み得るものである。
なお、超変形吸振体3を屈折率の異なる二種以上の透過素材で形成する場合、ケーシング2への収容形態としては、例えば図8(a)・(b)に示すように、断面の中心から等分(等配)するように、交互に二種の超変形吸振体3を配置するだけでなく、図8(c)に示すように、一方の超変形吸振体3が円形で、他方がこれを覆うような三日月形にする等、全く異なる形状同士で収容することも可能である。
また、ケーシング2の断面を円形とした場合であっても、例えば図9(b)に示すように、その内部(断面)を上下に二等分するような仕切壁17を形成し、この上下空間に異なった超変形吸振体3を収容することも可能である。なお、本実施例は仕切壁17があることから、この形成方向(横方向)には潰れにくいものであり、このため横方向からの圧縮には形状的に抗するものであり、結果として上下方向の潰れのみを許容するような構造となり、この点では上記図9(a)と類似した構造と言える。
また緩衝パーツ1に加わった衝撃を、緩衝パーツ1の断面においても吸収し得る他の実施例としては、例えば図9(e)に示すように、ケーシング2の肉厚部分を二重の同心円状に形成し、この二重同心円の間に超変形吸振体3を収容する実施例も考えられる。本実施例の場合、緩衝パーツ1の最も中心部が空洞状に形成されるため(ここを空洞部18とする)、圧縮荷重が加わった際には、緩衝パーツ1(ケーシング2の最内周部)が空洞部18側に弾性的に撓むことが考えられ、これによっても衝撃を吸収できるようにしたものである。
なお、このような形態(被接着面の内側を波パターン状もしくはジグザグ状に形成する構成)は、一本のチューブ単体の緩衝パーツ1に限定されるものではなく、連続体タイプの緩衝パーツ1A、特に上記図7の(d)・(f)等においても、見栄えを向上させたい場合に極めて有効な形態(構成)である。
因みに、光の屈折という観点からすれば、被接着面の内側をウェーブ状に形成するよりも、ジグザグ状に形成した方が、より好ましいかも知れないが、本願では上述したように押出成形による製造を念頭においており、そのため実際の製造段階(押出成形)では、ジグザグ状の先端に必然的に最小Rが形成されるため、波パターン状が現実的と考えられる。
なお、図10に示した実施例では、超変形吸振体3が収容されない空間は、その両端を開口したままでもよいし(非充填区画をエアが自由に出入りする状態)、両端を封止してエアクッションとして利用することも可能である。因みに、上記図9(e)も、ケーシング2内に超変形吸振体3を全充填しない実施例に該当するものである。また、このような実施例では、ケーシング2内に収容する超変形吸振体3を少量にしながらも、デザイン的には全充填と変わらない外観が獲得できる点、あるいは履物Sの軽量化が図れる点で効果を奏するものである(緩衝パーツ1を外観目視させる思想については後述する)。
緩衝パーツ1をスポーツシューズ等の履物Sに装着する場合、ストレート状に製造した(押出成形した)緩衝パーツ1を、そのままの直線状態で装着することもあるが、圧縮荷重(衝撃)の大きさやその掛かり方等によっては、圧縮荷重が作用する方向(平面)から視て馬蹄形ないしはU字状(C字状)の湾曲状態で装着することも多い。特に、スポーツシューズの場合には、着地の際、履物Sを履いた人の足(踵部)に大きな荷重(衝撃)が掛かるため、例えば図2に示すように、踵部においては緩衝パーツ1を馬蹄形の湾曲状態で取り付け、圧縮荷重を極力広い面積で受けるようにすることが好ましい。なお、緩衝パーツ1を馬蹄形の湾曲状態に装着する場合には、上述したように、真っ直ぐに形成しておいた緩衝パーツ1を組み付け時に初めて曲げてもよいが、組み付け性等を考慮すると、押出成形時に(製造段階で)予め緩衝パーツ1に曲げ癖を付けておくことが好ましい。
また、スポーツシューズ等にあっては、対象スポーツ等によって、踵部に掛かった衝撃をどの方向に逃がすのか設定したい場合がある。例えばランニングシューズの場合には、踵部に掛かる衝撃を吸収・緩和しながら、これをその後の蹴り出し動作につなげるように(シューズを履いた人がスムーズに次なる蹴り出し動作に移れるように)、踵部に掛かった荷重をトゥ側(つま先側)に逃がすことが考慮される。
まず図11(a)に示す実施例は、テーパ状の緩衝パーツ1をストレート状態でスポーツシューズ(履物S)に装着したものであり、シューズのイン側に緩衝パーツ1の大径部(開口端部の広い方)を向け、且つ緩衝パーツ1の小径部(開口端部の狭い方)をアウト側に向けるように装着した実施例である。本実施例では、圧縮荷重を受けた緩衝パーツ1がイン側に潰れ易いため、踵部に掛かった衝撃をイン側に大きく逃がす緩衝特性を意図したものである。また、本実施例では、例えば緩衝パーツ1の各両端の開口面積(比率)を設定しておくことにより、どちらの端部にどの程度の割合で衝撃を逃がすかも、概ね設定できるものである。
また図11(b)に示す実施例は、テーパ状の緩衝パーツ1をストレート状態で二つ組み合わせて装着したものであり、図11(a)の状態に対し、別の緩衝パーツ1を、トゥ側(つま先側)に大径部、踵側に小径部を向けるように装着したものである。本実施例では、圧縮荷重を受けた各緩衝パーツ1がイン側とトゥ側とに潰れ易いため、踵部に掛かった衝撃をイン側とトゥ側とに逃がす緩衝特性を意図するものである。
また図11(d)に示す実施例も、テーパ状の緩衝パーツ1を馬蹄形に湾曲設置したものであるが、全体的には両方の開口端部をイン側に向けながら、トゥ側に広い端部側を位置させ、踵側に狭い端部側を位置させた実施例である。本実施例では、トゥ側と踵側とを比べるとトゥ側に潰れ易いため、踵部に掛かった圧縮荷重を主にトゥ側に逃がす緩衝特性となる。ただ、本実施例では、緩衝パーツ1の両方の開口端部をイン側に向けているため、衝撃はイン側にも幾分逃げるもの(逃げ易い)と考えられる。
これに対し、一般にコートを使用した球技、例えばバスケットボール、ハンドボール、バレーボール、テニス、バドミントン、卓球、サッカー、ラグビー等では、前方のみならず、横、後ろ方向の動きも含め全方向に強烈な引張伸び・圧縮等の剪断応力が掛かるため図11(h)のような設置が適する。
もちろん、肉厚差を設けた押出成形手法に加え、このような状態に成形した押出成形品を、肉厚の薄い方を内側にして巻き取るようにしたり(適宜冷却することも可能)、肉厚の薄い方を内側にするようなアールを予め金型(フォーミングダイ)に付与しておくこと等により、所望の曲げ癖を確実に緩衝パーツ1に付与することができるものである。更に、組み付け以前に緩衝パーツ1に曲げ癖を付けておく思想は、緩衝パーツ1の組み付け作業性や取り付け状態の持続性なども高めるものである。
一方、これに対し図1(e)は、緩衝パーツ1の馬蹄内周側のみを蛇腹状に形成した実施例であり、馬蹄外周側は円弧状に形成している。これは、馬蹄内周側においては圧縮荷重による潰れ易さ、つまり超変形吸振体3の高い緩衝性能を素早く発揮させる一方、馬蹄外周側においては装着時の外観目視の見栄え向上を考慮したものである。なお、図1(f)は、緩衝パーツ1の馬蹄外周側のみを蛇腹状に形成した実施例であり(馬蹄内周側は円弧状に形成)、馬蹄外周側において超変形吸振体3の高い緩衝性能を素早く発揮させるように意図したものである。
例えばスポーツシューズの場合、緩衝パーツ1が取り付けられるソール30は、一例として図1(a)、図2(a)に示すように、複数の部材が積層状態に接合されて成るものであり、これらを下方に位置するものから各々アウターソール31、ミッドソール32、インナーソール33とする。更に、上記ミッドソール32は、下方からアウターベース32a、ミッドベース32b、インナーベース32cが積層されて成り、緩衝パーツ1は、例えばこのアウターベース32aとミッドベース32bとの間に組み込まれる。より具体的には、アウターベース32aに溝状の受入空間36が形成され、ここに緩衝パーツ1を収めるように取り付ける。なお、アウターベース32aには、例えば図2(b)〜(d)に示すように、切り欠き状の露見部37が部分的に形成され、装着後の緩衝パーツ1が少なくとも一部、外観目視できるように形成されるが、露見部37は必ずしも切り欠き状に形成される必要はなく、透明または半透明な素材つまり透過状(レンズ状)の充実部材で形成されても構わない。
またケーシング2及び超変形吸振体3を、透明または半透明な素材で形成した場合には、例えば図12(b)・(c)に示すように、緩衝パーツ1・1Aが組み込まれる履物S(ソール30)の奥の面(受入空間36)またはケーシング2の奥側に、予め印刷Pを施しておき、これをケーシング2及び超変形吸振体3を通して、上記露見部37から外観目視させることが可能である。この場合、単に印刷Pが透けて見えるというだけでなく、超変形吸振体3を凸レンズ状の断面に形成すれば、外観者には印刷Pを拡大状態で目視させることが可能である。また緩衝パーツ1は圧縮荷重が掛かった場合や荷重が除去された場合等において様々に変形するため、その都度、超変形吸振体3の厚さ等が変化し、無負荷の非変形状態と変形状態とでは、印刷Pの見え方が変わるというデザイン的な面白さを演出し得るものである。因みに、このような外観目視時における印刷Pの見え方の相違も、緩衝パーツ1の存在ひいては履物Sが有する高い緩衝性能をより一層強調し、ユーザにインパクトを与え得るものである。
また、図12(f)・(g)は、連続体タイプの緩衝パーツ1Aを履物S(ソール30)に仕込んだ実施例であり、靴底側から印刷Pが外観目視できるように考慮したものである。すなわち、上記図12(a)〜(e)は、主にシューズの側周面から印刷Pを外観目視させることを意図した実施例であるのに対し、図12(f)・(g)では、例えば蹴り出しによって地面から離れたシューズを、後方に位置する外観者から印刷Pが視えるようにした実施例である。
なお、図12(f)・(g)では、印刷Pと緩衝パーツ1Aとの間に空間が形成されており、これは圧縮荷重(衝撃)によって緩衝パーツ1Aが変形する際の逃げ代(変形時の逃げ代)になる空間であるが、緩衝パーツ1Aが印刷面に密着することで、印刷Pの見え方を異なったものにさせる効果もある。また、この空間は、シューズの計量化にも寄与するものである。なお、本図中、符号19は、緩衝パーツ1を下方から受ける透過可能な保持部材であり、例えばTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)等で形成される。
もちろん、超変形吸振体3の突出変形を外観目視させると同時に、緩衝パーツ1の表面やその奥部に施した印刷Pを外観目視させることも可能であり、その場合には、ユーザに高い緩衝性能を、更に強烈にアピールすることができるものである。
なお、超変形吸振体3の端部を自由に突出変形させ得る上記実施例は、このような外観上の利点だけでなく、超変形吸振体3の突出変形を全く規制しないため、緩衝パーツ1に加わった圧縮荷重を素早く緩衝させ得るという緩衝特性(機能上の特徴)を有するものである。
ここで超変形吸振体3が突出変形して当接面39(履物S)と接触(当接)した際に初めて印刷Pが外観目視される場合の基本構造を、図13(c)に基づいて説明する。本図では、超変形吸振体3を、透明または半透明の素材で形成するものであり、緩衝パーツ1が突出変形した際に接触する当接面39には、予め適宜の印刷P(ここでは「GEL」という標示(文字))を施しておく。また、無負荷時には緩衝パーツ1を当接面39(印刷面)から幾らか離して設置しておき、この離反状態では、緩衝パーツ1(超変形吸振体3)を通して印刷Pが見えないものとする。このような状態から、緩衝パーツ1に圧縮荷重が掛かり、超変形吸振体3が突出変形し、当接面39に接触すると、当接面39に施されていた印刷Pが超変形吸振体3を通して初めて見えるものである。なお、ここでは印刷Pが超変形吸振体3の軸方向から透過状態に浮かび上がる状況を図示したが、必ずしも目視方向は超変形吸振体3の軸方向に限定されるものではない。
また、本実施例においては超変形吸振体3(緩衝パーツ1)の突出変形を外観目視し易くするために(顕著に視認させるために)、超変形吸振体3の端部付近に、光を取り込む採光部40が形成されるが、この採光部40からでも超変形吸振体3の突出変形や当接面39の印刷を外観目視させることも可能であり、従ってその場合には、この採光部40も露見部37に相当する。
また、図13(e)に示す実施例は、ケーシング2の両端部が斜めにカットされた緩衝パーツ1(図6(i)参照)を、履物S(ソール30)に馬蹄形に湾曲設置した実施例である。ここで緩衝パーツ1は、ストレートな状態では概ね台形を成し、このものの斜めカットの長い方を馬蹄外周側に位置させるように設置するものである。すなわち、本実施例は、斜めカットの断面に光を当てたいが、ミッドソール32への固定や、外観的な見栄えを考慮した場合に、断面を露出させることが必ずしも好ましくないことがあり、このような場合に好適な実施例である。換言すれば、本図のような緩衝パーツ1の設置形態を採れば、馬蹄外周側(シューズの外縁側)に斜めカットの長い方がくる配置となるため、固定力強化、見栄え向上が同時に達成できるものである。因みに、ここではシューズの側部から光を取り込む採光部40を、露見部37としても機能させ、ここから外観目視させる構成を採っている。
また図14(b)は、離反状態では薄く見えていた適宜の色(印刷P)が、接触状態で濃くなって見える実施例を示している。
また図14(c)は、離反状態では、ほぼ中央に濃く見えていた印刷P(特に色は問わない)が、接触状態では全体的に広がり且つ淡くなって見える実施例を示している。
また図14(d)は、離反状態では、小さく見えていた印刷P(ここでは「A」という文字)が、接触状態では拡大状態で見える実施例を示している。この場合、圧縮荷重を受けた超変形吸振体3が一種の凸レンズの作用を担うと考えられる。
また図14(e)は、離反状態では、大きく見えていた印刷P(ここでは「A」という文字)が、接触状態では縮小状態で見える実施例を示している。因みに図14(e)の実施例は、上記図5(b)に示したように、緩衝パーツ1を、端面が凹んだ形状(一種の凹レンズ形状)に形成した場合に想定される印刷Pの見え方と考えられる(もちろん超変形吸振体3の素材や、焦点距離等の条件にも影響すると考えられる)。
図15に示す実施例は、本発明に係る緩衝パーツ1を、ランニングシューズ等の履物Sの踵部に、左右一対(イン側とアウト側)、仕込んだ状態を想定しており、これは履物S(ソール30)の左右に掛かる荷重(変形)の相違つまり荷重の偏りを、左右の超変形吸振体3の突出変形として外観目視させるようにした一種のバランスインジケータである。すなわち、これはソール30に作用する荷重が必ずしも均一でないことや、各緩衝パーツ1に作用する荷重の差異に応じて超変形吸振体3の突出変形(張出量)が相違すること等を利用したものであり、ソール30に作用する荷重の偏りを、各緩衝パーツ1における超変形吸振体3の突出変形の大小によって外部に標示するようにしたものである。
なお、図15(a)ではソール30に荷重が均等に作用した場合、左右いずれの緩衝パーツ1も突出変形をほとんど起こさないように図示したが、荷重の掛かり方によっては、左右の緩衝パーツ1が双方とも少しずつ突出変形を起こすことも考えられ、その場合には、図15(b)に示すように、赤と青が同じ数ずつ標示される。
また、上記図15では、緩衝パーツ1を2個一対で設けるように示したが、3個以上設けても構わない。また、その場合には、荷重の偏りを更に細かく標示することが可能である。
また上記図16に示した思想(超変形吸振体3の突出量を大きく見せる、もしくは突出量そのものを大きくさせる思想)は、バランスインジケータの場合に限定されるものではなく、超変形吸振体3の突出変形を外観目視させる場合や、これを利用して印刷Pを見せる場合などにも適用できるものである。
また図17に示すグラフは、これらの緩衝資材に圧縮荷重を加えて行った際の緩衝特性を示すグラフであり、縦軸は緩衝資材の「見掛け硬さ」を示し、横軸は緩衝資材の断面方向での「潰れ度合い」を示している。ここで、「見掛け硬さ」とは、適用素材(部材)そのものの硬度とは異なるものであり(そのために見掛け硬さとした)、無負荷時の状態の緩衝資材の硬さ(見掛け硬さ)を0と仮定して示している。また、「潰れ度合い」とは、緩衝資材の特定断面(例えば圧縮荷重が最も大きく作用する断面)において考慮した場合の、断面方向の潰れ度合い(潰れ量)を示すものである。
しかし、図17(a)では完全封止であるため、ある程度、潰れた段階で、内部に封入されている緩衝機能材の逃げ場がなくなり、もうこれ以上は衝撃を吸収し切れない限界に達する(これを「潰れ限度」とする)。この潰れ限度に達すると緩衝資材は、いわゆるパンパンに張った状態となり、以降、見掛け硬さも急激に上昇するものである。このように完全封止タイプの緩衝資材は、内部に緩衝機能材が充填され、しかも両端が完全に封止されているため、比較的早い段階で「潰れ限度」に到達するものである。つまり、完全封止タイプの緩衝資材は、最初は、徐々に圧縮荷重を吸収するが、潰れ限度に至るまでが比較的短い緩衝特性と考えられる。
しかし、図17(b)の該緩衝資材は、内部に何も充填されていないので、対向するチューブの内面が完全に密着した状態で「潰れ限度」に到達するものであり、このときの潰れ度合いとしては完全封止タイプよりも大きい値と考えられる。逆に言えば、上記完全封止タイプの緩衝資材では、内部に緩衝機能材が充填され、しかも封止されていたので、チューブの対向内面が完全に密着する以前の段階で「潰れ限度」に到達していたものである。また緩衝資材は、通常、この潰れ限度までの範囲内で緩衝部材として用いられるため、「潰れ限度」は、緩衝設定限界とも言える。
このように単なる中空タイプの緩衝資材は、端部が開放状態であり、且つ充填物もないために、同じ圧縮荷重でも完全封止タイプよりも潰れ度合いが大きく(潰れ易く)、「潰れ限度」は、グラフ上、右下位置にずれたように現れる。因みに、単なる中空タイプの緩衝資材の場合には、「潰れ限度」が、本明細書の〔背景技術〕で述べた「完全潰れ」と一致するものである。
なお、本発明に係る緩衝パーツ1では、圧縮荷重がある程度までに至ると、ケーシング2の端部から超変形吸振体3が突出変形するが、実際に、どの程度の圧縮荷重が掛かった際に突出変形が起こるかは、荷重の掛かり方や、ケーシング2や超変形吸振体3の素材、緩衝パーツ1の断面形状や全体構造などにより異なるものである。
その後、「潰れ限度」に達し、見掛け硬さが急上昇することは上記緩衝資材と同様であるが、ケーシング2内に収容(充填)されている超変形吸振体3が極めて高い伸び率を有するため、「潰れ限度」は、単なる中空タイプとほぼ同じ程度の潰れ度合いまで耐えられるものである(実際には超変形吸振体3が存在するため、本発明に係る緩衝パーツ1の「潰れ限度」の方が、グラフ上、単なる中空タイプよりも幾らか左にずれると考えられる)。
なお、ここでは溶融した樹脂原料を金型から押し出す押出成形を適用するものであり、特に、超変形吸振体3がケーシング2の内部に収容される構造であることに因み、超変形吸振体3の外側からケーシング2の溶融原料を同時に押し出し、上記緩衝パーツ1・1Aを製造するものである。
まず押出機6aは、原料となるペレット状の樹脂を溶融し、これを金型6b内に送り込むものであって、一例として略筒状を成す押出機本体61に対して、樹脂原料の投入口となるホッパ62と、ホッパ62から本体内に供給された樹脂原料を加熱、溶融するヒータ(図示略)と、溶融した原料をその回転力で金型6bに押し込むスクリュー63とを具えて成るものである。
なお、ここでは、押出機6aを少なくとも二基用いるものであり、これはケーシング2内に超変形吸振体3を収容した構造を採ることに起因する。つまりケーシング2用の樹脂を送り込む押出機6aと、超変形吸振体3用の樹脂を送り込む押出機6aとを具備するものである。
なお、同じ金型6bを使用しても、例えば前記スクリュー63の回転速度を調整すること等により、溶融樹脂の押込圧力を制御し、ケーシング2や超変形吸振体3の肉厚を変化させることができる。更には、部分的に超変形吸振体3のみの送り込みを停止させることもでき、これにより上記図5(c)に示したようなフリー空間11を有した緩衝パーツ1を押出成形で製造することができる。
成形機6cは、冷却槽65を具え、この中で金型6b(フォーミングダイ64)から押し出された成形品(緩衝パーツ1)を冷却し、押出成形品の形状を安定化させるものである。
また引取機6dは、前記冷却槽65(成形機6c)を通過した長尺状の成形品を引き出すものであって、例えば上下一対で回転するローラベルトによって成形品を挟み込んで引き取るものである。なお、引取機6dは、溶融樹脂が金型6bに送り込まれてから成形されるまでの一連の過程、すなわち押出機6a、金型6b、成形機6c(冷却槽65)をスムーズに経由するように、その引取力(引抜力)が調整される。このため、押出機6aから金型6bに送り込まれた溶融樹脂が、金型6bによって賦形され、その後、冷却槽65(成形機6c)で形状の安定化が図られ、引取機6dに至るまでの流れが安定して行えるものである。
因みに、上記図6(e)に示したような、一方の端部のみに小孔13が開口された緩衝パーツ1を得るには、真っ直ぐカットを行う際、二回に一回の割合で、端部を潰しながらカットすることで上記緩衝パーツ1が得られるものである。
また、緩衝パーツ1を馬蹄形の湾曲状態で履物Sに装着するのであれば、組み付け段階でストレート状の緩衝パーツ1を初めて曲げるのではなく、製造段階で押出成形品に曲げ癖を付与しておくことが好ましく、これには例えば上述したように押出成形時に緩衝パーツ1の断面における肉厚を異ならせて成形を行うものであり、これに適宜以下の手法を適用することが好ましい。すなわち、肉厚差を設けた押出成形に加え、予め金型6b(フォーミングダイ64)を適宜のR状に形成しておき、長尺状の押出成形品に適宜のR付けを行ったり、あるいはストレート状に成形した押出成形品を、肉厚の薄い方を内側とするように巻き取り(適宜冷却することが可能)、巻き癖を付ける手法等が採用できる。
また、このような同時押出成形では、ケーシング2と超変形吸振体3との境界面が自然に固着されるため、別途、固着する工程が不要となり、製造工程全体を簡略化できる。更に、押出成形であるため、一例として直径2mm程度の細い径の緩衝パーツ1であっても製造できる。逆に言えば、例えば、内部が空洞であるホース状のケーシング2に、超変形吸振体3を充填しても本発明に係る緩衝パーツ1を製造することはできるが、このような後詰め手法では、ケーシング2の内径が細いと(例えば2mm程度)、超変形吸振体3を充填することが極めて困難であり、ケーシング2の内径に制限があったが、押出成形ではこのようなものでも製造できる。
1A 緩衝パーツ(連続体タイプ)
2 ケーシング
3 超変形吸振体
4 変形許容部構造
6 押出成形機
6a 押出機
6b 金型
6c 成形機
6d 引取機
6e 切断機
11 フリー空間
12 エア通路
13 小孔
16 隔壁
17 仕切壁
18 空洞部
19 保持部材
30 ソール
31 アウターソール
32 ミッドソール
32a アウターベース
32b ミッドベース
32c インナーベース
33 インナーソール
36 受入空間
37 露見部
38 変形可能空間
39 当接面
40 採光部
41 フレネルレンズシート
42 樹脂製の凸レンズ
43 押込材
61 押出機本体
62 ホッパ
63 スクリュー
64 フォーミングダイ(ダイス)
65 冷却槽
66 カッタ
67 押圧部材
AD 接着剤
S 履物
P 印刷
Claims (17)
- ソールに緩衝パーツを組み込んで成る履物であって、
この緩衝パーツは、
可撓性を有するケーシングと、
この内部に収容され、主に緩衝機能材として機能する超変形吸振体とを具えて成るものであり、
更に前記ケーシングは、パーツに加えられた圧縮荷重を、荷重方向とほぼ直交する方向への超変形吸振体の膨らみ変形として逃がす変形許容部構造を具え、
また超変形吸振体とケーシングとの境界面は、少なくとも一部が固着されて成るものであり、
ソールを通してパーツに圧縮荷重が加わった際には、前記変形許容部構造における超変形吸振体の膨らみ変形によって、この圧縮荷重を吸収し、また圧縮荷重が解除された後には、超変形吸振体が初期付与形状に復元するものであり、
更に前記ケーシングは、少なくとも一方の端部が開口された筒状に形成されて成り、この開口端部では超変形吸振体がケーシングと隙間なく設けられる部位があり、
また前記変形許容部構造における超変形吸振体の膨らみ変形には、少なくとも、ケーシングの開口端部からパーツの外部に張り出す突出変形を含むことを特徴とする、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツは、超変形吸振体が500%以上の伸び率を有することを特徴とする請求項1記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツのケーシングは、一本の筒状の単体、もしくは複数本の筒体を並列状に並べた連続体として形成されることを特徴とする請求項1または2記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツのケーシングが、複数本の筒体を並列状に並べた連続体として構成される場合には、隣り合う筒体の隔壁を介在させないようにしたことを特徴とする請求項3記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツのケーシングは、両端部が開口されて成り、且つこれら両端部の開口断面積が異なるように形成されることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツが装着されるソールには、緩衝機能を付与したい部位に受入空間が形成され、装着時には、この空間に緩衝パーツを設けて成るものであり、
また、この受入空間には、ケーシング端部における超変形吸振体の突出変形を許容する変形可能空間が併せて形成されることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツが装着されるソールには、緩衝機能を付与したい部位に受入空間が形成され、装着時には、この空間に緩衝パーツを設けて成るものであり、
また、この受入空間には、ケーシング端部において超変形吸振体が突出変形した際に接触する当接面が形成されるものであり、この接触によって超変形吸振体の以降の突出変形が制限されるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツは、圧縮荷重が作用する方向から視て馬蹄形の湾曲状態で、ソールに装着されるものであり、
この際、前記ケーシングには、馬蹄内周側と馬蹄外周側とにおいて、適宜の肉厚差が設けられ、この肉厚差によって装着前から緩衝パーツに予め曲げ癖が付与されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツは、圧縮荷重が作用する方向から視て馬蹄形の湾曲状態で、ソールに装着されるものであり、
この際、前記ケーシングは、馬蹄内周側または馬蹄外周側のうち少なくとも一方が蛇腹状に形成され、圧縮荷重に抗することなく緩衝パーツが潰れ変形を起こすようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記ソールには、緩衝パーツの中央付近に対して凸状を成す押込材が設けられ、ソールから緩衝パーツに荷重が加わった際には、この押込材の押圧作用によって緩衝パーツの中央部を強く押し込み、超変形吸振体のケーシング端部からの突出変形を大きく張り出させるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記ソールには、緩衝パーツに対し、このものが視認される側にレンズを設け、このレンズ効果によって、超変形吸振体のケーシング端部からの突出変形を拡大して外観目視させるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツは、ソールに装着した状態で、少なくとも一部が外部から目視可能な状態に取り付けられるものであり、
また、前記ケーシング及び超変形吸振体は、透明または半透明の素材によって形成されるとともに、更に超変形吸振体は、屈折率が異なる二種以上の素材で形成され、
超変形吸振体に適用される二種以上の素材が外観目視されるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記ケーシングまたはソールの受入空間には、予め適宜の印刷が施されて成り、
緩衝パーツがソールに装着された状態で、この印刷が外観目視されるようにしたことを特徴とする6、7、8、9、10、11または12記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツは、ソールへの装着状態で、ケーシング端部における超変形吸振体の外部への突出変形が外観目視可能な状態に取り付けられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記ソールの当接面には、予め適宜の印刷が施されて成り、圧縮荷重によって超変形吸振体がケーシング端部から外部に突出し、この当接面に接触した際に、初めて印刷が外観目視される、または無負荷時とは異なった印刷が外観目視されるようにしたことを特徴とする請求項7、8、9、10、11、12、13または14記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記緩衝パーツは、ソールに対して複数設置されるものであって、
各緩衝パーツに作用する荷重の差異に対応して、超変形吸振体の突出変形の張出量が相違することを利用して、
ソールの各部位に作用する荷重の偏りを、各緩衝パーツにおける超変形吸振体のケーシング端部からの突出変形の大小によって外部に標示するようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15記載の、高い緩衝性能を有する履物。
- 前記ソールに掛かる荷重の偏りを外部に標示するにあたっては、正反対の荷重の掛かり方を異なる色で標示するようにしたことを特徴とする請求項16記載の、高い緩衝性能を有する履物。
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