JP5316739B2 - 光学素子、およびこれを用いた液晶表示装置 - Google Patents

光学素子、およびこれを用いた液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、液晶組成物を用いて形成された位相差層を備える光学素子、及び該光学素子を表示側基板として備える液晶表示装置に関する。
近年、液晶表示装置は、薄型軽量、低消費電力という大きな利点を持つため、パーソナルコンピューターや携帯電話、電子手帳等の表示装置に積極的に用いられている。これらの液晶表示装置は、駆動用液晶材料の複屈折性を利用して光のスイッチングを行っている。したがって、液晶表示装置は駆動液晶の複屈折性に由来する視野角依存性が存在し、この問題を解決するために各種の位相差層形成フィルムが開発されている。この位相差層形成フィルムは通常、ポリアクリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース等のフィルムの延伸によって作製され、液晶セルの外側に設置される。
しかし上記位相差層形成フィルムは、通常、粘着剤を用いて基板へ貼り付けて用いられており、基板に塗布された上記粘着剤の屈折率が、位相差フィルムとは異なるため、ディスプレー表示面に乱反射を起こすという問題点があった。また特に該位相差フィルムを基板外側に貼り付けると、露出するフィルムが湿気を吸って膨張してしまうという問題があった。さらにまた位相差フィルムでは、ディスプレーの画素サイズに併せたパターンニングができず、さらに耐熱性が低いため、経時的な収縮による光学特性の変化等の問題があった。
これに対して、最近では重合性液晶や高分子液晶等の液晶材料を用いて液晶セルの内側に位相差層を形成する方法が提案されている。液晶セルの内側に位相差層を形成する場合には、該位相差層を形成する基材面に液晶材料を塗布することによって位相差層を形成する方法が採用されているが、予め基材の表面に予めラビング法、光配向法、イオンビーム法等の方法により配向膜を形成することによって、基材面に塗布される液晶材料の配向を所望の方向に容易に制御することが可能である(例えば特許文献1)。また特に、基材面に対して重合性液晶化合物を垂直に配向(ホメオトロピック配向)させて形成される位相差層では、該重合性液晶化合物の垂直配向を安定化させるため、各種の方法が検討されている(例えば特許文献2)。加えて、表示装置の薄型化、及び製造工程の減少を課題として、配向膜を用いずにホメオトロピック配向が得られる重合性液晶組成物の検討も行われている(例えば特許文献3)。
特開平10−319408号公報 特開平11−240890号公報 特表2004−524385号公報
上記重合性液晶化合物で構成される位相差層は、上述するとおり種々の長所を有するが、該位相差層を備える光学素子の取扱い工程中、あるいは製品化後の経時使用において、黄変してしまう場合があり問題であった。
本発明者は、上記位相差層の問題点を詳細に検討した結果、重合性液晶化合物を硬化させて作製した位相差層は、該位相差層の表面を洗浄するための遠紫外線洗浄工程で着色しやすく、また位相差層形成後、さらに形成される他の構成部材の製造工程として行われる焼成工程によっても黄変することがあること、及び、長期に亘り、太陽光に晒されることによっても位相差層が黄変するとことがあることがわかった。
上記位相差層は、光学素子内を透過する透過光の位相を調整し光学補償を行うための層であるが、該層が黄変する結果、設計どおりの色度が得られず、結果として該光学素子を備える表示装置においてカラー表示の色域を狭め、あるいは高品質な表示を提供できない場合がある。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、製造工程中の紫外線洗浄において位相差層表面に紫外線が照射されても黄変する事が無く、また長期間、太陽光に晒されても黄変する事がない位相差層を形成する事が可能な液晶組成物を用いて形成された位相差層を備える光学素子、該光学素子を備えた液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
本発明は、液晶組成物を用いて形成された位相差層を備える光学素子において、該位相差層を構成するための重合性液晶化合物と、紫外線や太陽光に晒されても該位相差層の黄変を防止するための黄変防止剤とを、少なくとも含有させた液晶組成物を用いて形成された位相差層を備える光学素子である
即ち本発明は、
重合性液晶化合物と、黄変防止剤とを含有する液晶組成物を用いて形成された位相差層を備える光学素子であり、上記黄変防止剤には、酸化防止剤が用いられており、加えて、上記液晶組成物には光重合開始剤などのほかの化合物が配合されている
そして、本発明は
光透過性を有する基板に直接または間接に位相差層が形成された光学素子であり、上記位相差層が、99.8〜80重量%(対固形物換算値)の(メタ)アクリロイル基含有重合性液晶化合物と、0.1〜10重量%(対固形物換算値)の黄変防止剤をなす酸化防止剤と、0.1〜10重量%(対固形物換算値)の光重合開始剤とを含有してなる液晶組成物を、基板上に塗布し硬化させて形成したものであり、
位相差層に含まれる(メタ)アクリロイル基含有重合性液晶化合物がホメオトロピック配向しており、
前記光学素子における位相差層を除いた構成層からなる基板をリファレンスとし、光源としてD65を用いて測定される上記位相差層の黄変度YI が1以下であり、且つ、該位相差層表面に対して遠紫外線を1000mJ/cm 照射した後、測定された黄色度YIと上記YI とから求められた黄変度△YIが、JIS K 7373の評価基準で1.5以下である、ことを特徴とする光学素子、
を要旨とするものである。
尚、本明細書において用いられるいくつかの用語について以下のとおり定義する。
「液晶組成物」とは、少なくとも重合性液晶化合物と黄変防止剤とを含み、さらに位相差層を形成するために用いられる他の物質が必要に応じて配合された混合物である組成物、及び上記混合物を溶媒に溶解もしくは懸濁させて調製した溶液状態である組成物の両方を意味する。ここで、黄変防止剤としては酸化防止剤を用いることができるほか、紫外線吸収剤及び酸化防止剤を混合して用いることもできる。また本明細書中、特に上述した「溶液状態である組成物」であり本発明の光学素子に備えられる位相差層の形成に用いられる液晶組成物のことを、便宜上「液晶組成物溶液」とも呼ぶ。
「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタアクリロイル基」の2つの官能基の総称として用いるものとする。尚、アクリロイル基の例としてはアクリレート基(アクリロイロキシ基)、メタアクリロイル基としてはメタクリレート基がある。
「対配合物換算値」とは、本発明の光学素子に備えられる位相差層の形成に用いられる液晶組成物が上記混合物である場合には、該混合物を構成する物質として配合される各配合物の総重量を100としたときの各配合物の重量比を意味し、本発明の光学素子に備えられる位相差層の形成に用いられる液晶組成物が上記配合物を溶媒で溶解あるいは混合した溶液である場合には、溶液の重量から溶媒の重量を引いた重量(即ち、溶媒に溶解或いは懸濁する前の各配合物の総重量)を100としたときの各配合物の重量比を意味する。
「位相差層」とは、光の位相差(リタデーション)変化に対して光学補償することができる位相差制御機能を有する層を意味する。
「ホメオトロピック配向」とは、位相差層を構成する液晶分子の光軸が基板面に対して垂直または略垂直に立ち上がっている配向状態をいう。また「位相差層がホメオトロピック配向している」とは、位相差層を構成する液晶分子が、ホメオトロピック配向していることをいう。尚、本発明において、液晶分子の理想的なホメオトロピック配向とは、位相差層の厚さ方向をz軸にしてxyz直交座標を想定したとき、x軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyはほぼ同じ値になり、かつ測定角度が0°の時の位相差値が4nm以下の場合をいい、好ましくは3.5nm以下の場合をいい、より好ましくは3nm以下の場合をいう。
本発明で用いられる液晶組成物には、黄変防止剤が含有されているため、この液晶組成物を用いて形成された位相差層は、紫外線や太陽光の照射によっても黄変することがない。したがって、例えば位相差層を備える光学素子を製造する工程において、紫外線洗浄処理を行った場合であっても、該位相差層が黄変することがない。
上記本発明で用いられる液晶組成物で形成した位相差層を備える光学素子であれば、黄変の心配がなく、優れた位相差機能を発揮し視野角改善効果に大きく寄与する。
特に本発明の光学素子においては、位相差層の黄色度YIが1以下であって、且つ、紫外線処理前後の黄変度がJIS K 7373に即して測定した際に、1.5以下とされおり、非常に優れた表示を提供することができる。
上記位相差層を備える本発明の光学素子を液晶表示装置の表示側基板として用いた場合、安定して優れた視野角改善効果が発揮され、色域の広い、高品質な画像表示を提供することができる。
以下に、本発明の光学素子に備えられる位相差層の形成に用いられる液晶組成物(本発明の液晶組成物という)、これを用いて形成された位相差層を備える光学素子、該光学素子を備える液晶表示装置の最良の形態について、順に説明する。
(液晶組成物について)
本発明の液晶組成物は、上述のとおり、重合性液晶化合物と、黄変防止剤とを少なくとも含有するものである。黄変防止剤は、より具体的には、後述する紫外線吸収剤、あるいは酸化防止剤が挙げられる。
尚、重合性液晶化合物により構成される位相差層が、黄変するメカニズムは明らかではないが、本発明者は以下のとおり推察する。
第一のメカニズムとして、活性酸素(フリーラジカル)の発生による有機物の酸化が生じていることが推察される。即ち、酸素分子が182nmの遠紫外線(deep UV)を吸収してオゾンになり、さらにこのオゾンが254nmの遠紫外線(deep UV)を吸収して活性酸素を発生することが知られているが、光学素子の製造工程中においても位相差層表面の紫外線洗浄工程などで使用する紫外線によって上記反応が起こり、結果として発生する活性酸素によって、位相差層の内部まで酸化する事により位相差層が黄変することが推察される。
また第二のメカニズムとしては、重合性液晶化合物のうち、分子内に芳香環を有する液晶化合物を使用する場合に、上記芳香環が遠紫外線を吸収し、励起された後、分子構造が変異することにより、液晶分子の吸収波長がシフトし、位相差層に黄変が生じると言う事が推察される。
重合性液晶化合物:
本発明の液晶組成物に用いる重合性液晶化合物としては、架橋性のネマチック液晶を用いることができ、架橋性ネマチック液晶としては例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキタセン基、イソシアネート基等の重合性基を少なくとも1個有するモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。このような重合性液晶化合物としては、下記化1に示す一般式(1)で表される化合物および下記化2に示す一般式(2)で表される化合物のうちの1種もしくは2種以上の混合物、化3、化4に示す化合物のうちの1種もしくは2種以上の混合物、またはこれらを組み合わせた混合物を用いることができる。特に、本発明における重合性液晶化合物を構成する架橋性ネマチック液晶分子の少なくとも1種が1分子中に1個または2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
Figure 0005316739
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化1に示す一般式(1)において、R1およびR2はそれぞれ水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲をより広くするにはR1またはR2が水素であることが好ましく、R1およびR2ともに水素であることがより好ましい。また一般式(1)におけるX及び一般式(2)のYは、水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基またはニトロ基のいずれであってもよいが、塩素またはメチル基であることが好ましい。また、一般式(1)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と芳香環と間のアルキレン基の鎖長を示すaおよびb並びに、一般式(2)におけるdおよびeは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)またはd=e=0である一般式(2)は安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、結晶性が高い。また、aおよびbあるいはdおよびeがそれぞれ13以上である一般式(1)または一般式(2)は、等方相転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物は、どちらについても液晶性を安定的に示す温度範囲(液晶相を維持する温度範囲)が狭いものとなり、上記複屈折率機能層組成液に用いるには好ましくない。
上記した化1〜化4では重合性液晶化合物のモノマーを例示したが、重合性液晶化合物のオリゴマーや重合性液晶化合物のポリマー等も、従来公知のもののなかから適宜選択して用いることができる。一般に、位相差層のリタデーション量及び配向特性は、重合性液晶化合物の複屈折Δnと、位相差層の膜厚により決定される。例えば、重合性液晶モノマーをホメオトロピック配向させてなる位相差層、いわゆる正のCプレートを形成する場合、重合性液晶モノマーのΔnは0.03〜0.20程度が好ましく、0.05〜0.15程度が更に好ましい。
重合性液晶化合物は、本発明の液晶組成物において、70重量%(対配合物換算値)以上、好ましくは75重量%(対配合物換算値)以上となるように含有されることが好ましい。添加量を70重量%(対配合物換算値)以上とすることにより液晶性が向上し、位相差層における重合性液晶化合物の配向不良の発生を無視し得る程度に低減することができる。重合性液晶化合物の添加が70重量%(対配合物換算値)以上では、液晶分子の配向性の観点から特に問題になることはないので、液晶組成物における他の添加剤の配合量とのバランスで、添加量を適宜決定することができる。
黄変防止剤:
本発明の液晶組成物には黄変防止剤が配合されるが、該黄変防止剤としては、例えば紫外線吸収剤、あるいは酸化防止剤が挙げられる。重合性液晶化合物を含有する液晶組成物に、さらに黄変防止剤を添加することにより、該液晶組成物を用いて形成された位相差層では、紫外線が照射され、あるいは太陽光に長時間晒された場合であっても、黄変することがない。かかる黄変防止のメカニズムについては明らかではないが、上述で推察する黄変のメカニズムにおいて、紫外線の吸収や酸化反応を上記黄変防止剤が有効に阻止するためであると考えられる。
上記紫外線吸収剤としては例えば、2−ヒドロキシ−オクチロキシベンゾフェノン(住友化学社製smisorb130)、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(シプロ化成社製SEESORB100)、2−ヒドロキシ―4−メトキシベンゾフェノン(シプロ化成社製SEESORB101)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸3水和物(シプロ化成社製SEESORB101S)、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン(シプロ化成社製SEESORB103)、2,2’4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン(シプロ化成社製SEESORB106)、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン(シプロ化成社製SEESORB107)、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−ブタン(シプロ化成社製SEESORB151)等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(シプロ化成社製SEESORB701)、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール(シプロ化成社製SEESORB703)、2−(3,5−ジ−tert−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(シプロ化成社製SEESORB704)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジル)メチルフェノール(シプロ化成社製SEESORB706)、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(シプロ化成社製SEESORB707)、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(シプロ化成社製SEESORB709)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、フェニルサリチエート(シプロ化成社製SEESORB201)、4−tert−ブチルフェニルサリチエート(シプロ化成社製SEESORB202)、エチル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(シプロ化成社製SEESORB501)、2’−エチルヘキシル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(シプロ化成社製SEESORB502)、2’,4’−ジ−tert−ブチルフェニル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(シプロ化成社製SEESORB712)等の紫外線吸収剤を用いる事ができる。
上記紫外線吸収剤は、特にその最大吸収波長が254nm付近であることが好ましい。最大吸収波長254nm付近を紫外線吸収剤を位相差層に含有せしめることによって、位相差層に紫外線を照射した際に、位相差層への遠紫外線の吸収を低減する事が出来、遠紫外線の吸収による分子構造の変異を原因とする位相差層の黄変を良好に防止することができるからである。
上記酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(エーピーアイコーポレーション社製ヨシノックスBHT)、4,4’−ブチリデンビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)(エーピーアイコーポレーション社製ヨシノックスBB)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(エーピーアイコーポレーション社製ヨシノックス2246G)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール(エーピーアイコーポレーション社製ヨシノックス425)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール(エーピーアイコーポレーション社製250)、1,1,3−トリス(2−メチル−4ヒドロキシ−5−ブチルフェニル)ブタン(エーピーアイコーポレーション社製ヨシノックス930)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(エーピーアイコーポレーション社製トミノックスSS)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(エーピーアイコーポレーション社製トミノックスTT)、トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](エーピーアイコーポレーション社製トミノックス917)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(エーピーアイコーポレーション社製ヨシノックス314)等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート(エーピーアイコーポレーション社製DLTP)、ジステアリルチオジプロピオネート(エーピーアイコーポレーション社製DSTP)、ジミリスチルチオジプロピオネート(エーピーアイコーポレーション社製DMTP)、ジトリデシルチオジプロピオネート(エーピーアイコーポレーション社製DTTP)等の硫黄系酸化防止剤、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(川口化学工業社製Antage 3C)、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(川口化学工業社製Antage 6C)、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(川口化学工業社製Antage AW)等のアミン系酸化防止剤を用いる事ができる。本発明において、黄変防止剤は異なる2種類以上を組み合わせて用いる事もできる。
上記黄変防止剤は、本発明の液晶組成物の含有量が、0.1〜10重量%(対配合物換算値)、好ましくは0.5〜3重量%(対配合物換算値)となるように添加する。尚、本明細書の以下の記載において、特に断りなく「重量%」と記載するときは、本発明の組成物における対配合物換算値を意味するものとする。上記黄変防止剤を0.1重量%以上添加することによって、位相差層に十分な耐黄変性を付与することが可能であり、また添加量を10重量%以下とすることで、黄変防止剤の添加により位相差層中の液晶分子の配向不良、あるいは位相差層の電気信頼性の低下を無視できる程度に抑えることができる。
本発明の液晶組成物に用いられる重合性液晶化合物と黄変防止剤との配合比は、100:5〜100:3であることが好ましい。上記黄変防止剤としては、紫外線吸収剤または酸化防止剤のどちらか、あるいは紫外線吸収剤及び酸化防止剤を混合して用いることができる。紫外線吸収剤及び酸化防止剤を混合して用いる場合には、これらの総和量が、上述する黄変防止剤の配合比の好ましい範囲にあればよい。
光重合開始剤:
本発明に用いられる重合性液晶化合物が光重合性である場合には、本発明の液晶組成物にさらに光重合開始剤を配合することができる。
上記光重合開始剤は、基板上に本発明の液晶組成物を塗布して位相差層を形成する際に、塗布された液晶組成物に紫外線等を照射し、該組成物中に含まれる重合性液晶化合物を重合させるための開始剤として働くものである。上記光重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を使用することができる。ラジカル重合性開始剤は紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、例えばベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体又はそれらのエステルなどの誘導体;キサントン並びにチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物等が挙げられる。より具体的な光重合開始剤の例としては、イルガキュアー184、イルガキュアー369、イルガキュアー651、イルガキュアー907(いずれもチバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)等のケトン系、ビイミダゾール系化合物等が好ましく用いられる。これらの光重合開始剤は、1種のみ又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないように、吸収波長の異なる開始剤を組み合わせることが好ましい。
上記光重合開始剤が配合された本発明の液晶組成物を基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜中に存在する重合性液晶化合物を配向させた後、該光重合開始剤の感光波長の光を該塗膜に照射することによって、配向した重合性液晶化合物同士を良好に架橋重合させることができる。
光重合開始剤は、液晶の配向を大きく損なわない範囲で添加することが必要であり、液晶組成物中の含有量が0.1〜10重量%(対配合物換算値)、好ましくは0.5〜8重量%(対配合物換算値)、より好ましくは1〜5重量%(対配合物換算値)、となるように添加する。2種以上の光重合剤を併用する場合には、用いられる光重合剤の総量の重量比が上記数値範囲内になるよう調整する。
重合性液晶化合物と、黄変防止剤と、光重合開始剤とから構成される本発明の液晶組成物において、これら3つの配合物の配合割合は、上述する好適な範囲の中で適宜調整することができ、また黄変防止剤としては、上記紫外線吸収剤または酸化防止剤のどちらか、あるいは紫外線吸収剤及び酸化防止剤を混合して用いることができる。特に、重合性液晶化合物が92重量%、紫外線吸収剤が3%、光重合開始剤が5%の割合で調整されることが望ましい。
溶媒:
本発明の液晶組成物は、基材上に直接塗布し配向させ硬化させることによって位相差層を形成するために用いることができる。かかる場合には、塗布性を向上させるために、本発明の液晶組成物のうち、特に、重合性液晶化合物や黄変防止剤などの配合物を溶媒で溶解せしめた液晶組成物溶液を用いることが好ましい。
溶媒としては上述した重合性液晶化合物や黄変防止剤等の固形分を溶解することが可能であり、かつ塗布する相手側素材の性能を阻害しないものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等を単独で又は2種以上を混合して使用することが可能である。単独の溶媒を使用しただけでは、重合性液晶化合物等の固形分の溶解性が不充分であるか、或いは塗布する相手方(即ち着色層表面等)の素材が侵される虞がある場合等には、2種以上の溶媒を混合使用することにより、これらの不都合を回避することができる。上記した溶媒のなかにあって、単独で用いる溶媒として特に好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒等が挙げられる。また同様に2種以上を混合して用いる溶媒として特に好ましいものは、エーテル類又はケトン類と、グリコール類との混合系が挙げられる。本発明の液晶組成物溶液の濃度は、組成物に含有させる固形分の溶解性や、該組成物を用いて形成される位相差層の所望の厚みにより異なるが、通常は1〜60重量%濃度、特には3〜40重量%濃度で調製されることが好ましい。尚、上記濃度は、液晶組成物溶液の重量から溶媒の重量を引いた重量を、液晶組成物溶液の総重量で除して100をかけて求めることができる。
その他の添加剤:
尚、本発明の液晶組成物には光重合開始剤のほか、その目的が損なわれない範囲で重合速度を制御可能に抑制する重合禁止剤を添加してもよく、また紫外線などの電磁波の吸収を補助するための増感剤を添加することもできる。重合禁止剤の例としては、p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、p−t−ブチルカテコール、ジ−t−ブチル・パラクレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトールまたはアセトアニジンアセテートなどを用いることができる。また界面活性剤、あるいは垂直配向助剤なども適宜添加することができる。
垂直配向助剤:
上記垂直配向助剤の添加は、本発明の液晶組成物を用いて、特に基材上面に直接または間接にホメオトロピック配向した位相差層を形成する際に有効である。即ち上記垂直配向助剤の存在により、配向膜の存在なしに、液晶組成物を基材上面に直接塗布し、該液晶組成物中に含有される重合性液晶化合物を垂直配向(ホメオトロピック配向)させることが可能である。このように、垂直配向した液晶化合物を架橋重合させ固定化させることにより、液晶分子の光軸が位相差層の法線方向を向くとともに常光線屈折率よりも大きな異常光線屈折率を位相差層の法線方向に有する、いわゆる正のCプレートを形成することができる。
垂直配向助剤の例としては、例えばレシチンや第四級アンモニウム界面活性剤などの垂直に整列したアルキル鎖またはフルオロカーボン鎖を有する表面カップリング剤、HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、DMOAP(N,N−ジメチル−N−オクタデシル−3−アミノプロピルトリメトキシシリルクロリド)、N−パーフルオロオクチルスルホニル−3−アミノプロピルトリメチルアンモニウムヨージド、長鎖アルキルアルコールまたはシランポリマーなどを挙げることこができる。
(光学素子について)
本発明の液晶組成物は、上述のとおり紫外線を照射され、焼成工程に供され、あるいは太陽光に長時間晒されても黄変することのない位相差層を形成することが可能である。したがって該位相差層を有する本発明の光学素子は、設計どおりの優れた色度を得ることができ高品質の画像を提供することが可能であって、且つその品質が維持される。そして本発明の光学素子を備える液晶表示装置は、優れた視野角改善効果を発揮する。以下、位相差層を設けた光学素子について図面に基づき例示的に説明する。
図1は本発明の一実施態様を示す光学素子1である。光学素子1を形成するには、まず光透過性の基板2上に、着色層3を設け、次いで着色層3上に本発明の液晶組成物溶液を塗布し、該液晶組成物溶液中に含有される重合性液晶化合物を所望の方向に配向させ、次いで架橋重合させて固定化させて位相差層4を形成する。さらに位相差層4の上面に、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された複数のスペーサー9を任意の間隔で配列させて、本発明の光学素子1が形成される。
尚、図1に示す光学素子1には保護層を形成していないが、本発明において、着色層3と位相差層4との間、或いは位相差層4の上面などの任意の位置に保護層を形成してもよい。また液晶表示装置に用いられる駆動用液晶材料の種類などを勘案し、一般的に知られる液晶表示装置の表示側基板に用いられる機能層を、適宜、本発明の光学素子内に形成してよい。下記に、図1に示す本発明の光学素子1を用いて、各層の構成及び形成方法について説明する。
光透過性を有する基板:
本発明に用いられる基板2は光透過性を有し、光学的に等方性のものが好ましいが、必要に応じて局所的に光学的異方性または遮光性の領域を設けることもできる。また光透過率は光学素子の用途に応じて適宜選定可能である。具体的には、無機材料又は有機材料により形成された板、シート又はフィルムを用いることができる。上記無機材料としては、ガラス、シリコン、もしくは石英等が挙げられる。中でも液晶ディスプレー用として本発明の光学素子を用いる場合には、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスを基板として用いることが好ましい。また熱膨張性が小さく寸法安定性が良好であり、高温加熱処理における作業性が優れるという観点からは石英が好ましい。一方、上記有機基材としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、もしくはシンジオタクティック・ポリスチレン等、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、もしくはポリエーテルニトリル等、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、もしくはポリノルボルネン系樹脂等、または、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリプロピレン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、もしくは熱可塑性ポリイミド等からなるものを挙げることができるが、一般的なプラスチックからなるものも使用可能である。光透過性の基板2の厚さについても、用途に応じて、例えば5μm〜3mm程度のものが使用される。
着色層:
着色層3は、光透過性の基板2上に所定波長領域の可視光を遮光するブラックマトリクス5を形成し、次いで所定波長領域の可視光を透過する着色画素である赤(R)のサブ画素6、緑(G)のサブ画素7、青(B)のサブ画素8を順次設けて形成される。
ブラックマトリクス5は、着色画素である赤(R)のサブ画素6、緑(G)のサブ画素7、青(B)のサブ画素8(以下、単に「着色画素6、7、8」ともいう)同士の重なり合いを防止するとともに、着色画素間の隙間を埋めて、近接する着色画素間からの光の漏れ(漏れ光)を抑制する等の働きを有する。したがって、ブラックマトリクス5は、光透過性の基板2上において着色画素6、7、8の配置が予定される位置に対応する領域を、各着色画素毎に平面視上区画化するように形成される。そして、着色画素6、7、8は、それぞれ、ブラックマトリクス5により区画化された領域を平面視上被覆するようにして配置される。
ブラックマトリクス5は、例えば、金属クロム薄膜やタングステン薄膜等、遮光性又は光吸収性を有する金属薄膜を所定形状に光透過性の基板2面上にパターニングすることにより形成することができる。また、ブラックマトリクス5は、インクジェット方式等により、黒色樹脂等の有機材料を所定形状に印刷することによりを形成することも可能である。
上記ブラックマトリクス5に次いで形成される着色画素6、7、8は、赤色、緑色、青色各々について各色の波長帯の光を透過させる着色画素を所定のパターンに配置して形成される。着色画素を構成する赤(R)のサブ画素6、緑(G)のサブ画素7、青(B)のサブ画素8の配置形態としては、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型等種々な配置パターンを選択することができる。より具体的には、各色の着色画素6、7、8毎に、着色材料を溶媒に分散させた着色材料分散液の塗膜を、例えばフォトリソグラフィー法で、所定形状にパターニングすることで形成することができる。また別の方法としては、着色画素6、7、8毎に、インクジェット方式等により、着色材料分散液を所定形状に塗布することによっても形成することができる。加えて、これら赤(R)のサブ画素6、緑(G)のサブ画素7、青(B)のサブ画素8に代えて、各色の補色の波長帯の光を透過させる着色画素を用いることも可能である。
尚、本発明における着色層3は、上述で例示した3色のサブ画素を備える場合に限定されるものではない。例えば4色以上の着色画素から構成されていてもよいし、あるいは単色または2色備えて構成されてもよい。またこれにあわせて、ブラックマトリクス5を省略することも可能である。
着色層3を形成後位相差層4を形成する前に、着色層3の表面を遠紫外線洗浄処理或いはコロナ処理といった表面改質処理を行うことが一般的である。かかる処理を行うことにより、着色層表面に塗布される液晶組成物、特にはこれに含まれる重合性液晶化合物に対する濡れ性を改善することができ望ましい。
上記遠紫外線洗浄処理を行う場合、紫外線照射量は500mJ/cm〜3000mJ/cm、より好ましくは900mJ/cm〜3000mJ/cmの範囲で行われる。500mJ/cm以下の照射量では、基板表面に十分な濡れ性を付与する事ができず、3000mJ/cm以上の照射量では、光学素子が変色するといった不具合がある。
位相差層:
次に、位相差層4について説明する。本発明の光学素子1における位相差層4は、着色層3上面に本発明の液晶組成物を塗布し、液晶組成物中の重合性液晶化合物をホメオトロピック配向させ、架橋重合させることによって上記重合性液晶化合物をホメオトロピック配向した状態で固定化させて形成することができる。このとき液晶組成物を着色層3表面に塗布しやすいように、溶液状態の液晶組成物、即ち液晶組成物溶液を用いることが望ましい。
液晶組成物溶液を着色層3上に塗布する方法としては、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、静電印刷法、無版印刷法といった各種印刷方法や、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、バーコート法、ディップコート法、キスコート法、スプレーコート法、ダイコート法、コンマコート法、インクジェット法といった塗工方法、あるいはこれらを組合せた方法を適宜用いることができる。
そして液晶組成物溶液が塗布された塗布基板(以下、単に「塗布基板」ともいう。また塗布された基板の表面に形成された層を「塗膜」ともいう。)を乾燥させる。乾燥は、大気圧下で自然乾燥してもよいが、特に密閉容器内で圧力約1.5×10−1Torr以下に下げ減圧乾燥処理することにより液晶組成物溶液中の溶媒を気化させることが望ましい。
上記減圧乾燥処理において、乾燥と同時に液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物を基板面に対して垂直方向に配列させる、即ちホメオトロピック配向させることが可能である。かかる方法では、塗布基板を減圧状態とすることで塗膜を過冷却状態にすることができ、塗膜中に含まれる重合性液晶化合物をホメオトロピック配向させ、次いでこの状態を保持したままこの塗布基板を室温程度にする。これにより重合性液晶化合物を、以後の工程で架橋反応させるまで、効率よくホメオトロピック配向させた状態に維持することができる。さらに残存する溶媒を除去するとともに塗膜に含まれる重合性液晶化合物の配向を確実にするために塗布基板を焼成してもよい。焼成方法は、特に限定されるものではないが、例えばホットプレート上に塗布基板を設置し、70℃〜120℃の温度範囲で、2分間〜30分間程度焼成することができる。
尚、上述は、本発明の液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物をホメオトロピック配向させる配向処理を限定するものではない。重合性液晶化合物をホメオトロピック配向させる配向処理として一般的に知られる方法、例えば、上記塗膜に対し所定方向から電場や磁場を負荷する方法等を適宜選択して使用することもできる。
次に、上記塗膜においてホメオトロピック配向した重合性液晶化合物を架橋重合させ、該配向を固定化させる。この架橋反応は、塗膜表面に光を照射することで進行する。このとき、上記塗膜に照射する光の波長は、この塗膜を構成する液晶組成物の吸収波長に応じて適宜選択される。より具体的には、液晶組成物に含まれる光重合開始剤の吸収波長に応じて適宜選択される。尚、上記塗膜に照射する光は、単色光に限らず、重合性液晶化合物の感光波長を含む一定の波長域を持った光であってもよい。具体的には、紫外線などの活性放射線を照射することが一般的である。例えば、紫外線を照射して重合性液晶化合物を架橋硬化させる場合は、波長200〜500nm程度の紫外線が照射されることが一般的である。紫外線源としては高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。照射光量は重合性液晶化合物の種類や組成、光重合開始剤の種類や量等によっても異なるが、通常、10〜3000mJ/cm2程度である。
重合性液晶化合物の架橋反応は、液晶が液晶相から等方相へ相転移する温度よりも1〜10℃低い温度まで塗布基板を加熱しながら架橋反応を行うことが好ましい。こうすることで、この架橋反応の際に液晶のホメオトロピック配向の乱れを低減することができる。また、この観点から、架橋反応を行う温度は、液晶が液晶相から等方相へ相転移する温度よりも3〜6℃低い温度であることがより好ましい。
また重合性液晶化合物の架橋反応の別の方法として、不活性ガス雰囲気中で、上記塗布基板を液晶相温度にまで加熱しながら重合性液晶化合物の感光波長の光を塗膜に照射することもできる。この方法では、不活性雰囲気下で液晶分子が架橋されており、空気雰囲気下で液晶分子が架橋される場合に比べ、基板から離れた位置にある液晶分子(すなわち塗膜表面に近傍する液晶分子)のホメオトロピック配向の乱れを抑制することができる点で好ましい。
重合性液晶化合物の架橋反応のさらなる別の方法として、不活性ガス雰囲気中または空気雰囲気中で、上記塗布基板を液晶相温度まで加熱しながら重合性液晶化合物の感光波長の光を塗膜に照射して架橋反応を部分的に進行させ(部分的架橋工程という)、部分的架橋工程の後、液晶が結晶相となる温度(Tc)まで上記塗布基板を冷却し、この状態でさらに感光波長の光を該塗布基板の塗膜に照射して架橋反応を進行させて完了させることもできる。尚、上記した温度Tcは、架橋反応を進行させる前の塗布基板において液晶分子が結晶相となる温度である。
上記部分的架橋工程では、温度Tcまで塗布基板を冷却しても、その塗膜に含まれる重合性液晶化合物のホメオトロピック配向性が維持される程度に、架橋反応が進行している。従って、部分的架橋工程における架橋反応の進行の程度は、塗膜に含まれる重合性液晶化合物5の種類や、その塗膜の膜厚などに応じて適宜選択されるが、おおよそ、重合性液晶化合物の架橋度が5〜50となるまで架橋反応を進行させることが好ましい。
以上により、光透過性の基板2上に、着色層3と、重合性液晶化合物がホメオトロピック配向及び架橋し該配向が固定化されてなる位相差層4とを有する基材が形成される。上述では、本発明の一実施態様として、光透過性の基板2、着色層3、位相差層4が順に形成された光学素子1について説明したが、本発明の構成はこれに限定されず、例えば透明基板、位相差層、着色層が順に形成された光学素子を除外するものではなく、また着色層3を備えず、基板2と位相差層4とからなる光学素子であってもよい。尚、位相差層4の厚み特に制限はないが、生産性等を考慮して通常、0.5〜10μm程度が好ましい。
また上記説明では、重合性液晶化合物をホメオトロピック配向させて位相差層4を形成した例を示したが、本発明の光学素子における位相差層は所謂、正のCプレートに限定されるものではない。例えば、本発明の液晶組成物を用いて、液晶分子の光軸が位相差層と並行するとともに常光線屈折率よりも大きな異常光線屈折率を位相差層の面内方向に有する、いわゆる正のAプレートとして位相差層を形成することができる。かかる場合、ラビング処理などを施した水平配向膜による配向規制力を重合性液晶化合物に負荷するか、または空気界面に対する液晶分子の表面自由エネルギーを抑制するためのレベリング剤を液晶組成物に添加することで該液晶分子を水平配向させることができる。
さらにまた本発明の液晶組成物を用いて、液晶分子の光軸が位相差層と並行するとともに常光線屈折率よりも小さな異常光線屈折率を位相差層の法線方向に有する、いわゆる負のCプレートを作成することができる。上記負のCプレートは、該液晶組成物に含有される重合性液晶化合物にコレステリック規則性を付与してカイラルネマチック液晶構造を実現させた位相差層を意味する。具体的には、上記正のAプレートと同様に重合性液晶化合物を水平配向させた上に、公知のカイラル剤を添加するとよい。尚、本発明で用いるカイラル剤は、特に架橋性を有することを必須とするものではないが、得られる位相差層の熱安定性等を考慮すると、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物と重合し、重合性液晶化合物にコレステリック規則性を付与した状態を固定化することが可能な架橋性能を有するカイラル剤を用いることが好ましい。そのようなカイラル剤としては、特に、その分子構造の両末端に架橋性官能基が存在するものが、位相差層の耐熱性を向上させる上でより好ましい。
位相差層表面の遠紫外線洗浄処理:
上述のとおり位相差層4を形成した後、位相差層4の表面を遠紫外線洗浄処理することが一般的である。紫外線洗浄処理により、位相差層4の表面を清浄にし、且つ後工程において位相差層4の表面に塗布されるスペーサー9形成用組成物の濡れ性を向上させることができる。
上記遠紫外線洗浄処理は、下記の通り行われる。
上記遠紫外線洗浄処理を行う場合、紫外線照射量は500mJ/cm〜3000mJ/cm、より好ましくは900mJ/cm〜3000mJ/cmの範囲で行われる。500mJ/cm以下の照射量では、基板表面に十分な濡れ性を付与する事ができず、3000mJ/cm以上の照射量では、表面粗度が悪化し、平坦性に問題を生じる恐れがある。
従来、上記紫外線処理を行うことによって、位相差層の黄変が生じる場合があったが、本発明は、黄変防止剤の含有する液晶組成物によって位相差層を形成しているため、該黄変防止剤の作用によって位相差層の黄変が防止される。
本発明の光学素子1は、上記基材における位相差層4上にさらにスペーサー9が形成されて完成される。
スペーサー:
スペーサー9は、多官能アクリレートを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー等の材料からなる光硬化性の感光性塗料を、位相差層4の上に塗布してこれを乾燥させ、さらにスペーサー9の形成予定位置に対応したマスクパターンを介して該塗料を露光硬化させた後、未硬化部分をエッチング除去し、さらに全体を焼成することにより形成される。
尚、本発明の光学素子内に、保護層を設ける場合には、該保護層は多官能アクリレートを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー等の材料からなる透明樹脂材料、あるいは多官能エポキシを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー等の材料からなる透明樹脂塗料を塗布、乾燥、硬化させて形成することができる。
以上により得られた本発明の光学素子は、黄変が非常に少なく、上記基材を液晶表示装置に用いた場合に、安定して優れた視野角改善効果を発揮する。
尚、上述では本発明の一実施形態である光学素子1について説明したが、本発明の光学素子は必ずしも着色層及びスペーサーを備える必要はない。また本発明の光学素子を液晶表示装置における表示側基板として用いた際に必要とされる部材、例えば透明導電膜などを備えることを否定するものではない。本発明の光学素子は、少なくとも透明基板と位相差層とを有することが必要であり、特に、位相差層中に黄変防止剤が含有されており、この結果、該位相差層の黄変が防止されていることが重要である。
(液晶組成物及び位相差層の評価について)
本発明の液晶組成物により形成される位相差層は、紫外線や太陽光の影響により黄変しないことが重要であり、また位相差層の機能が充分発揮されるために良好な配向性が実現されていることが重要である。したがって本発明の液晶組成物を用いて形成された位相差層は、配向性評価、色度の測定、及び黄変の評価によって総合的に評価される。
また本発明の液晶組成物は、ガラス基板上に該液晶組成物を用いて位相差層を形成し、これをサンプルとして上記位相差層と同様に色度の測定、及び黄変の評価を行うことによって、黄変の問題のない位相差層を形成可能な液晶組成物であることが評価される。
本発明において、液晶組成物の黄変評価試験を行う場合には、ガラス基板上に直接、試験に供される液晶組成物を塗布し、所望の方向に配向させた後、紫外線を20mW/cmで10秒照射して上記液晶組成物溶液に含有される重合性液晶化合物を架橋重合させ、次いで230℃のオーブン内において30分焼成して膜厚1.0μmの位相差層を有する積層体を光学素子のサンプルとし、上記ガラス基板をリファレンスとして、後述する方法と同様に黄色度YI及び黄変度△YIを算出することにより評価することができる。
配向性評価:
本発明の光学素子1における位相差層が良好に垂直配向しているか否かは、光学素子の光漏れの有無により評価することができる。具体的には、以下の光透過試験を行い、その透過光の有無を肉眼で観察することにより評価することができる。
即ち、光学素子1を、偏光顕微鏡においてクロスニコル状態に設置した2枚の偏光板の間に設置する。その状態で光を透過させ、いわゆる黒表示の状態にして偏光顕微鏡で観察することにより、光漏れの有無を確認することができる。光漏れのない光学素子は、該光学素子における位相差層が良好にホメオトロピック配向していることを示し、該光学素子を液晶表示装置の表示側基板に用いた場合には、コントラストに優れた高品質な表示の提供に寄与することができる。一方、光漏れのある光学素子は、該光学素子における位相差層の配向が乱れていることを示し、該光学素子を液晶表示装置の表示側基板に用いた場合には、コントラストが悪く、充分な表示品質を提供できない虞がある。
上記光透過試験において、光漏れがない、あるいは光漏れが無視し得る程度であるという状態は、図2に参考として示すとおり、光学素子全面において肉眼では光の透過が確認されず、黒色状態にあることをいう。尚、図2は、透明基板上に、赤色着色画素単色の着色層が形成され、該着色層の表面を紫外線洗浄後、その表面上に本発明の液晶組成物を用いて位相差層が形成されてなる本発明の光学素子を上記光透過試験に供した際の写真である。これに対し、光透過試験において光漏れがあるという状態は、図3に対称例として示すとおり、上記黒表示の状態にした環境であっても光学素子全面が薄明るく、肉眼でも光の透過が確認される状態をいう。
位相差層の黄色度の測定及び黄変度の評価:
本発明の液晶組成物を用いて形成された位相差層、及び本発明の光学素子における位相差層の黄色度は、光学素子における位相差層以外の構成層をリファレンスとして測定することができる。より具体的には、ガラス基板と位相差層とからなる光学素子においては該ガラス基板をリファレンスとし、またガラス基板と着色層と位相差層とからなる光学素子では、ガラス基板と着色層とからなる積層体をリファレンスとして、位相差層の黄色度を求めることができる。
また位相差層の黄変度△YIは、後述する紫外線処理前後の黄色度の変化で評価することができる。具体的には、紫外線処理前後の位相差層の黄変度をJIS K 7373で評価することにより判断することができる。
以下により具体的に、位相差層の黄色度及び黄変度の測定について説明する。
まず、ガラス基板上に少なくとも位相差層を有する光学素子をサンプルとし、該光学素子における位相差層を除いたものをリファレンスとして該位相差層の色度を、光源としてD65を用い、測色機(オリンパス光学工業社製、商品名「OSP−SP200」)で測定する。上記測定により得られた三刺激値X、Y、Z値から下記式(式1)を用いて黄色度(YI)を算出する。
YI=100(1.2985X−1.1335Z)/Y (式1)
次に、位相差層に対して遠紫外線を1000mJ/cm照射した後、位相差層の色度を光源としてD65を用い、測色機(オリンパス光学工業社製、商品名「OSP−SP200」)で測定する。得られたX、Y、Z値から下記式(式2)を用いて黄色度(YI)を算出し、更に黄変度(ΔYI)を下記式(3)によって算出する。
YI=100(1.2985X−1.1335Z)/Y (式2)
ΔYI=YI−YI (式3)
ここで、YIは紫外線処理後の位相差層の黄色度を表し、YIは紫外線処理前の位相差層の黄色度を表す。本発明における位相差層は、紫外線処理前における黄色度YIが1以下であり、且つ紫外線処理によっても黄変の無いものである。上記位相差層では、常に望ましい黄色度が維持されるので、該位相差層を備える光学素子を液晶表示装置の表示側基板に用いた場合は、色域の広い、優れた高品質な表示の提供に寄与するので好ましい。一方、黄変のある位相差層を液晶表示装置の表示側基板に用いた場合は、液晶表示装置の色域を狭め、十分な表示品質を提供できない虞がある。
上記位相差層の黄変度評価において、黄変がない、あるいは黄変が無視し得る程度であるという状態は、JIS K 7373の黄変度評価方法において、黄変度が1.5以下で有る状態にあることをいう。
(本発明の液晶表示装置)
本発明の光学素子1は液晶表示装置の表示側基板として用いることができる。図4に示す液晶表示装置12は、観察者側(図中上方に相当)に設置される表示側基板13に本発明の光学素子1を用い、表示側基板13と液晶駆動側基板14とがスペーサー9を介して対向しており、両基板の間に駆動用液晶材料15を封入して駆動用液晶層16が構成されている。ここで、位相差層4は光学素子1の光透過性の基板2と、液晶駆動側基板14を構成する透明基板31との間に挟まれるよう配置され、いわゆるインセル型をなす。また光透過性の基板2の着色層3とは反対側面には、透明導電膜21及び正のAプレート22が順に積層された機能層20が形成されている。そして表示側基板13の外側面には直線偏光板23が、液晶駆動側基板14の外側面には直線偏光板32が積層されている。
液晶表示装置12がIPSモードの場合には、表示側基板13の側の直線偏光板23と、液晶駆動側基板14の側の直線偏光板32とは、互いの透過軸が直交するように配置される。
液晶駆動側基板14は、透明基板31のインセル側(駆動用液晶材料15の封入される側)に駆動用回路33と、これにより電圧の負荷量を制御される駆動用電極34とが設けられている。
尚、上述する液晶表示装置12は、本発明の一実施態様にすぎず、かかる構成により本発明の液晶表示装置が限定されるものではない。本発明の液晶表示装置は、少なくとも、本発明の光学素子を表示側基板とし、該表示側基板と液晶駆動側基板とがスペーサーを介す等して対面し、両者の間に駆動用の液晶材料が封入されて構成されていることが重要である。かかる構成によれば、本発明の液晶組成物を用いて形成された位相差層が、基板間に存在する、いわゆるインセル型として実施されるため有利である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
上記化4に示す化合物(a)〜(d)を用い、下記組成の組成物Aを調製した。組成物Aは、特表2004−524385号公報の記載に準じ、以下に掲げる材料を混合することにより調製した。尚、以下に示す組成物Aにおける各物質の重量比は、組成物Aの総重量に対する各物質の重量比である。
液晶組成物A
化合物(a) 32.67重量%
化合物(b) 18.67重量%
化合物(c) 21.00重量%
化合物(d) 21.00重量%
ドデカノール 1.02重量%
BHT 0.04重量%
イルガキュアー907 5.60重量%
次に、上記組成物Aに対して、黄変防止剤として紫外線吸収剤2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(シプロ化成社製SEESORB201)を3重量%(対配合物換算値)添加し、本発明の液晶組成物を得た。尚、上記紫外線吸収剤2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(シプロ化成社製SEESORB201)の最大吸収波長は、250nmをやや下回る程度であり、本発明における紫外線吸収剤の最大吸収波長として好ましい254nm付近に相当し、254nmの紫外線を良好に吸収可能である。
次いで、上記液晶組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で溶解し、濃度20%の液晶組成物溶液を得た。
次に適当な洗浄処理を施し、清浄とした透明基板として100×100mm、厚み0.7mmのガラス板(コーニング社製1737ガラス)を用意した。次に、スピンコーター(ミカサ社製 商品名1H−360S)を用いて上記液晶組成物溶液を透明基板上にスピンコーティングした後、減圧乾燥した。続いて空気雰囲気下において、超高圧水銀灯を有する紫外線照射装置(ハリソン東芝ライティング社製、「商品名TOSCURE 751」)により紫外線を20mW/cmで10秒照射して上記液晶組成物溶液に含有される重合性液晶化合物を架橋させた。最後に230℃のオーブン内に、上記架橋処理が終了した基材を設置し、30分焼成して膜厚1.0μmの位相差層を有する本発明の光学素子を形成した。得られた位相差層の配向状態は、偏光顕微鏡の直交ニコル観察により確認し、問題なく配向している事が確認された。
(評価1)
黄色度YIの測定及び黄変度評価
実施例1で得られた光学素子の黄色度YI及び黄変度△YIを、上記「位相差層の黄色度の測定及び黄変度の評価」に記載の方法に基づき測定した。尚、黄色度YIを測定する際には、実施例1に用いたガラス板(コーニング社製1737ガラス)をレファレンスとして使用した。
実施例1での位相差層の黄色度YIは、0.5、黄変度は0.8であり、実施例1の光学素子における位相差層は、紫外線処理前においてその透明性が確保されており、且つ紫外線処理後においても黄変していない事が確認された。
実施例2
添加する紫外線吸収剤を2’,4‘−ジ−tert−ブチルフェニル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(シプロ化成社製SEESORB712)に変えた以外は、実施例1と同様に光学素子を作製した。得られた位相差層の配向状態は、偏光顕微鏡の直交ニコル観察により確認し、問題なく配向している事が確認された。尚、2’,4’−ジ−tert−ブチルフェニル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(シプロ化成社製SEESORB712)の最大吸収波長は約270nmであり、本発明における紫外線吸収剤の最大吸収波長として好ましい254nm付近に相当し、254nmの紫外線を良好に吸収可能である。
実施例2に関し、上記評価1に準じて評価を行った。その結果、黄色度YIは、0.6、黄変度は0.8であり、実施例2の光学素子における位相差層は紫外線処理前においてその透明性が確保されており、且つ紫外線処理後においても黄変していない事が確認された。
実施例3
添加する黄変防止剤を紫外線吸収剤から酸化防止剤4,4’−ブチリデンビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)(エーピーアイコーポレーション社製ヨシノックスBB)に変えた以外は、実施例1と同様に光学素子を作製した。得られた位相差層の配向状態は、偏光顕微鏡の直交ニコル観察により確認し、問題なく配向している事が確認された。
実施例3に関し、上記評価1に準じて評価を行った。その結果、黄色度YIは、0.6、黄変度は1.1であり、実施例3の光学素子における位相差層は紫外線処理前においてその透明性が確保されており、且つ紫外線処理後においても黄変していない事が確認された。
実施例4
添加する酸化防止剤を、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール(エーピーアイコーポレーション社製250)に変えた以外は、実施例1と同様に光学素子を作製した。得られた位相差層の配向状態は、偏光顕微鏡の直交ニコル観察により確認し、問題なく配向している事が確認された。
実施例4に関し、上記評価1に準じて評価を行った。その結果、黄色度YIは、0.6、黄変度は1.2であり、実施例4の光学素子における位相差層は紫外線処理前においてその透明性が確保されており、且つ紫外線処理後においても黄変していない事が確認された。
比較例1
黄変防止剤を用いなかった以外は実施例1と同様にして光学素子を作製し比較例1とした。得られた位相差層の配向状態は、偏光顕微鏡の直交ニコル観察により確認し、問題なく配向している事が確認された。
比較例1に関し、上記評価1に準じて評価を行った。その結果、黄色度YIは0.7、黄変度が2.1であり、比較例1の光学素子は黄変している事が確認された。
上記紫外線処理は、光学素子製造工程における位相差層の洗浄処理として行われる遠紫外線洗浄処理に相当するところ、実施例1〜4は、いずれも紫外線処理前における黄色度YIが1以下であり、且つ上記紫外線処理によっても黄変しないことが示された。これに対し、黄変防止剤を含まない液晶組成物で作成された位相差層を備える比較例1では、上記紫外線処理によって該位相差層の黄変が確認された。これにより液晶組成物中の酸化防止剤の存在によって、位相差層の黄変が防止されることが示された。
(表1)
Figure 0005316739
本発明の光学素子の一実施態様を示す縦断面略図である。 クロスニコル状態で光学素子の光漏れを観察したときの光漏れのない光学素子の表面写真図である。 クロスニコル状態で光学素子の光漏れを観察したときの光漏れのある光学素子の表面写真図である。 本発明の光学素子を用いた液晶表示装置の一実施態様を示す縦断面略図である。
符号の説明
1 光学素子
2 透明基板
3 着色層
4 位相差層
5 ブラックマトリクス
6 赤のサブ画素
7 緑のサブ画素
8 青のサブ画素
9 スペーサー

Claims (2)

  1. 光透過性を有する基板に直接または間接に位相差層が形成された構造を有する光学素子であって、
    上記位相差層が、99.8〜80重量%(対固形物換算値)の(メタ)アクリロイル基含有重合性液晶化合物と、0.1〜10重量%(対固形物換算値)の黄変防止剤をなす酸化防止剤と、0.1〜10重量%(対固形物換算値)の光重合開始剤とを含有してなる液晶組成物を、基板上に塗布し硬化させて形成したものであり、
    位相差層に含まれる(メタ)アクリロイル基含有重合性液晶化合物がホメオトロピック配向しており、
    前記光学素子における位相差層を除いた構成層からなる基板をリファレンスとし、光源としてD65を用いて測定される上記位相差層の黄変度YI が1以下であり、且つ、該位相差層表面に対して遠紫外線を1000mJ/cm 照射した後、測定された黄色度YIと上記YI とから求められた黄変度△YIが、JIS K 7373の評価基準で1.5以下である、ことを特徴とする光学素子。
  2. 表示側基板と、これに対向する駆動液晶側基板と、これら基板間に駆動用液晶材料を封入して形成される駆動用液晶層とを備える液晶表示装置であって、上記表示側基板として請求項1に記載の光学素子が用いられていることを特徴とする液晶表示装置。
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