JP5316490B2 - 鋼矢板地下壁構造 - Google Patents
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また、RC壁を構築せずに鋼矢板単独で地下壁構造を形成した場合において、建築物に地震荷重が作用すると、鋼矢板の面内方向にせん断力が発生するため、せん断力が大きい場合は鋼矢板壁がせん断座屈を起し、大きな変形を発生したり、せん断剛性または耐力が低下してしまうという問題がある。
また、RC壁の築造を不要として耐震壁として機能させることができるため、従来のRC地下壁に比較して施工手間やコストを大幅に低減させることができ、工期短縮や施工コスト削減を図ることが可能となる。
ここで、補剛部材は、壁本体におけるせん断補剛に有効な高さに設定されていればよく、例えば、壁本体の面内方向にせん断力が作用した場合に圧縮領域となる位置や、個々の鋼矢板における局部座屈が予想される位置、壁本体としての全体座屈が予想される位置など、適宜に設定した位置に補剛部材が設けられていればよい。
このような構成によれば、鉛直部材および水平部材によって形成される骨組内に一体化した鋼矢板壁が形成された地下壁構造がせん断力を負担した際の圧縮領域(圧縮ブレース)と引張領域(引張ブレース)が、前記一体化した鋼矢板壁が柱などの鉛直部材および梁、床などの水平部材と接合する辺を四辺とする四角形の四隅を結ぶ対角線上をまたぐ位置に形成されるために、補剛部材は前記対角線上をまたぐ位置に複数配置されていることにより、壁本体のせん断剛性およびせん断耐力を向上させることができる。
このような構成によれば、前記凸部分の位置で、前記凹部分が前記補剛部材、前記フランジおよび前記一対のウェブによって閉じられるように、前記補剛部材の両側端縁が溶接接合によって固定されており、この補剛部材を壁本体の延長方向に設けることで、補剛部材がせん断力を負担することができ、壁本体のせん断剛性および耐力を向上させることができる。さらに、補剛部材が鋼矢板の前面側つまり地下空間に突出しないようにでき、地下空間の有効利用を図ることができる。
この場合、前記補剛部材は、梁、床などの水平部材と平行に形成されるとともに、その三方の端縁が前記フランジおよび一対のウェブに各々溶接接合によって固定されていてもよい。
このような構成によれば、鋼矢板の長手方向(上下方向)と交差する水平方向に平行な補剛部材をフランジおよびウェブに溶接接合することで、補剛部材をスチフナとして機能させ、鋼矢板のフランジやウェブの座屈を防止することができ、壁本体としてのせん断耐力を向上させることができる。さらに、補剛部材が鋼矢板の前面側つまり地下空間に突出しないようにでき、地下空間の有効利用を図ることができる。
また、補剛部材は水平方向に平行したが、水平方向に対して任意の角度で溶接接合によって固定されていてもよい。
このような構成によれば、隣り合う鋼矢板における第2フランジに跨って補剛部材を溶接接合することで、補剛部材の配置される数が増加されるために、より大きなせん断力を負担させることができる。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
図1、図2において、鋼矢板地下壁1は、前面側の空間である地下室空間Sと背面側の背面地盤Gとを区画する地中連続壁であって、地盤G中に打ち込まれる複数の鋼矢板2からなる壁本体3を備えて構成されている。また、地下室空間Sは、壁本体3で側方を囲まれるとともに、地下室床スラブ4と1階床スラブ5とによって上下が区画されている。さらに、壁本体3は、地下室空間S側に位置する柱Aと接続されている。
図5において、図中左方向から右方向に向かって水平力Pが1階床スラブ5位置に作用した場合、地盤Gにて支持される地下室床スラブ4位置に反力P’が作用し、壁本体3の壁面内にせん断力Qが発生する。このせん断力Qは、図5中右下がりのハッチで示す圧縮領域(圧縮ブレース)Cの圧縮力と、右上がりのハッチで示す引張り領域(引張りブレース)Tの引張り力とに分解される。これらの圧縮領域Cおよび引張り領域Tは、それぞれ壁本体3の壁面内における水平方向(上下方向)に対する対角線状に形成され、それぞれの領域C,Tの幅に応じた圧縮応力度や引張り応力度が生じるようになっている。また、鋼矢板2同士を連結する溶接部25には、隣り合う鋼矢板2を上下にずれさせるような縦方向のせん断力Rが生じており、このせん断力Rを上回るように溶接部25の溶接強度が設定されている。
また、補剛部材は水平方向に対して任意の角度で溶接接合によって固定されていてもよいが、水平方向に平行であるのが好ましい。これは一体化した鋼矢板壁に作用するせん断力が水平方向に作用するため、補剛部材は水平に取り付けられた場合がせん断力への抵抗面積が最も大きくなるため有効であるからである。
図6において、複数の鋼矢板2のうち、隣り合う2枚の鋼矢板2は、地下室空間Sの高さ範囲において溶接部25によって連結されている。そして、連結された2枚の鋼矢板2のそれぞれに補剛部材6が取り付けられている。
また、補剛部材6は、壁本体3の壁面平行方向に沿った鋼板で構成されるものに限らず、以下の図7に示す構造が採用可能である。
図7において、補剛部材6Aは、前記対角線上をまたぐように上下に所定間隔離隔して複数設けられ、壁本体3の壁面直交方向であり水平方向に平行かつ鋼矢板2の長手方向に直交した鋼板で構成されるとともに、その左右両側端縁をウェブ22に溶接接合した溶接部62と、壁面直交方向奥側の側端縁を第1フランジ21に溶接接合した溶接部63とによって鋼矢板2に固定されている。このような補剛部材6Aは、鋼矢板2を地盤Gに打ち込んでから地下室空間S側の地盤を掘削した後に露出した壁本体3の前面側に現場溶接によって鋼矢板2に固定されている。
すなわち、壁本体3の面内せん断力Qに対して圧縮領域Cおよび引張り領域Tとなる位置に補剛部材6,6Aを取り付けることで、圧縮力および引張り力の一部を補剛部材6,6Aで負担することができ、壁本体3のせん断剛性およびせん断耐力を向上させて耐震壁として機能させることができる。また、特に、圧縮領域Cにおいて、補剛部材6,6Aで鋼矢板2をせん断補剛することによって、鋼矢板2の第1フランジ21のせん断座屈を防止することができる。従って、複数の鋼矢板2で構成した壁本体3を耐震壁として利用することができることから、従来のRC地下壁を構築する場合と比較して、施工手間やコストを大幅に低減させることができ、工期短縮や施工コスト削減を図ることができる。
次に、本発明の第2実施形態の鋼矢板地下壁1Aを図8に基づいて説明する。
図8において、鋼矢板地下壁1Aは、補剛部材6の取付位置が前記第1実施形態と相違するものの、その他の構成は第1実施形態と略同様である。以下、相違点について詳しく説明する。
鋼矢板地下壁1Aの壁本体3において、複数の鋼矢板2のうち、柱A間にて隣り合う3枚の鋼矢板2が溶接部25によって連結され、この溶接部25を介して隣り合う鋼矢板2の継手部24を跨ぐ前面側に補剛部材6Bが取り付けられている。補剛部材6Bは、壁本体3の壁面平行方向に沿った鋼板で構成されるとともに、その両側端縁を隣り合う鋼矢板2の第2フランジ23に溶接接合した溶接部64によって鋼矢板2に固定されている。これらの補剛部材6Bは、図8に示すように、地下室空間Sにおける鋼矢板2の上下2箇所に配置されていればよい。
例えば、前記実施形態においては、鋼矢板地下壁1,1Aによって地盤と区画する地下空間を地下室空間Sとしたが、地下空間は地下室に限らず、適宜な空間であればよく、例えば、地下駐車場や駐輪場、地下鉄や道路等のトンネル、排水経路や配管経路等の地下溝などが適用可能である。
さらに、前記実施形態では、鋼矢板2の継手部24が地下空間側(前面側)に位置して設けられていたが、これに限らず、鋼矢板同士を連結する継手部が地盤側(背面側)に設けられていてもよいし、地下壁の壁厚方向中間位置に設けられていてもよい。
また、溶接部は継手同士を直接溶接してもよいし、アングル、チャンネルのような鋼材を介して溶接してあっても良く、鋼矢板間に作用する力を伝達するものであれば良い。
また、補剛部材6の長さ、板厚は、および鋼矢板に溶接接合により取り付ける場合の脚長は想定されるせん断力に十分抵抗可能なように設計されていればよい。
さらに、補剛部材6の材質は、母材と同等の強度とするかまたは設計上必要となる材料強度を有していればよい。
さらに、補剛部材は鋼矢板に溶接接合によって固定されるものに限らず、ボルトやリベットなどの適宜な固着手段によって鋼矢板に固定されるものであってもよい。
また、鋼矢板同士を連結する手段としては、溶接接合に限らず、ボルト接合やリベット接合などの適宜な接合手段を利用することが可能である。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (4)
- 地中に打ち込まれる鋼矢板からなる壁本体を備え、当該壁本体が、建物の水平方向に備えられる複数の水平部材と接合して地下空間を形成する鋼矢板地下壁構造であって、
前記地下空間において、前記鋼矢板のうち複数枚の隣り合う鋼矢板の継手同士が、前記複数の水平部材の深度方向の間の領域に渡って剛に連結されて一体化した鋼矢板壁を形成しており、かつ前記壁本体は凹の部分と凸の部分からなる凹凸部分を形成しており、
前記一体化した鋼矢板壁の四隅を結ぶ対角線上をまたぐ位置において、前記一体化した鋼矢板壁をせん断補剛する補剛部材が複数配置されたことを特徴とする鋼矢板地下壁構造。 - 請求項1に記載の鋼矢板地下壁構造において、
前記鋼矢板壁は、前記壁本体の延長方向に延びるフランジと、このフランジの両側端部に連続して前記壁本体の延長方向に対して直行する面内に向かって延びる一対のウェブとを少なくとも有して形成され、
前記補剛部材は、前記凸部分の位置で、前記凹部分が前記補剛部材、前記フランジおよび前記一対のウェブによって閉じられるように、前記補剛部材の両側端縁が溶接接合によって固定されていることを特徴とする鋼矢板地下壁構造。 - 請求項1に記載の鋼矢板地下壁構造において、
前記鋼矢板壁は、前記壁本体の延長方向に延びるフランジと、このフランジの両側端部に連続して前記壁本体の延長方向に対して直行する面内に向かって延びる一対のウェブとを少なくとも有して形成され、
前記補剛部材は、前記凹部分の位置で、前記補剛部材の三方の端縁のうち少なくとも二方が前記一対のウェブに各々溶接接合によって固定されているか、または、前記補剛部材の三方の端縁が前記フランジおよび一対のウェブに各々溶接接合によって固定されていることを特徴とする鋼矢板地下壁構造。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼矢板地下壁構造において、
前記鋼矢板壁は、前記壁本体の延長方向に延びるフランジと、このフランジの両側端部に連続して前記壁本体の延長方向に対して直行する面内に向かって延びる一対のウェブと、これらのウェブに連続して前記フランジと並行して延びる第2フランジとを少なくとも有して形成され、
前記補剛部材の一部が、その両側端縁が前記隣り合う鋼矢板における前記第2フランジに各々溶接接合によって固定されていることを特徴とする鋼矢板地下壁構造。
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