(実施形態1)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる制御方法が適用される電動車両用駆動装置の全体構成を示す概略平面図、図2は、電動車両用駆動装置の制御系を示すブロック図である。これらの図に示される電動車両用駆動装置は、ハイブリッド型自動車からなる電動車両1(以下、単に車両1という)を駆動するための駆動装置として構成されている。具体的に、この電動車両用駆動装置は、発電用の動力源として設けられたガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等からなるエンジン2と、必要時にエンジン2を始動するとともに、エンジン2から駆動力を得て発電を行うジェネレータ3と、このジェネレータ3で発電された電力を蓄える蓄電装置としてのバッテリ9と、走行用の動力源として設けられ、上記バッテリ9から電力の供給を受けて車両1を駆動する電動モータ5と、上記バッテリ9からの供給電力を交流に変換して上記ジェネレータ3および電動モータ5を駆動する第1インバータ11および第2インバータ12と、これら各部を統括的に制御するコントローラ15(本発明にかかる制御手段に相当)とを備えている。
上記電動モータ5は、ギヤトレイン6および差動装置7を介してドライブシャフト8と連動連結されており、これらギヤトレイン6、差動装置7、およびドライブシャフト8を含む動力伝達経路を経由することにより、上記電動モータ5の駆動力が、上記ドライブシャフト8に連結された左右一対の駆動輪16に伝達されるようになっている。なお、当実施形態の車両1では、その前後左右に備わる4つの車輪のうち2つが駆動輪16であり、残りの車輪は従動輪17である。
上記電動モータ5は、例えば3相の交流同期モータ等からなり、必要時にバッテリ9から第2インバータ12を介して電力の供給を受けることにより、上記ギヤトレイン6等を介してドライブシャフト8および駆動輪16を駆動する一方、減速時や下り坂走行時等には、上記ドライブシャフト8から駆動力を得て発電を行い、その発電電力を上記バッテリ9に蓄電するように構成されている。
上記ジェネレータ3は、エンジン2の始動時にバッテリ9から第1インバータ11を介して電力の供給を受けることにより、エンジン2のクランク軸を強制回転させてエンジン2を始動するスタータとしての機能、および、エンジン2のクランク軸から駆動力を得て発電するオルタネータとしての機能の両方を兼ね備えたものである。
上記コントローラ15は、周知のCPU、ROM、RAM、およびI/O(入出力インターフェース)等からなり、このうちROMには、車両1の運転に必要な各種制御プログラム等があらかじめ格納されている。なお、RAMには制御プログラムの実行に必要な種々のワークメモリが格納されている。
図2に示すように、上記コントローラ15には、車両1の各部に設けられた種々のセンサ類が電気的に接続されている。具体的に、コントローラ15には、車両1の走行速度(車速)を検出する車速センサ30と、ドライバーにより踏み込み操作される図外のアクセルペダルの開度TVOを検出するアクセル開度センサ31と、エンジン2のクランク軸の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ32と、ジェネレータ3の軸回転速度を検出するジェネレータ回転速度センサ33と、バッテリ9からジェネレータ3に入力される入力電流またはジェネレータ3で発電されてバッテリ9に出力される出力電流を検出するジェネレータ電流センサ34と、電動モータ5の軸回転速度Nを検出するモータ回転速度センサ35と、電動モータ5の入出力電流を検出するモータ電流センサ36と、バッテリ9の残容量を検出するバッテリセンサ37とがそれぞれ接続されており、これら各センサ30〜37により検出された各種制御情報が上記コントローラ15に電気信号として入力されるようになっている。
そして、上記コントローラ15は、上記各センサ30〜37からの入力情報に基づいて種々の演算を実行し、その結果に基づいて上記エンジン2、ジェネレータ3、電動モータ5、およびインバータ11,12等の動作を統括的に制御する。そして、このようにコントローラ15によって各部が制御されることにより、当実施形態の車両1では、ドライバーのアクセル操作等に基づき電動モータ5が駆動制御されて車両1の走行速度等が調節されるとともに、例えばバッテリ9の残容量が少なくなったとき等に、エンジン2の始動およびジェネレータ3による発電が行われ、その発電電力がバッテリ9に補充されるように構成されている。
また、上記コントローラ15には、ラジオチューナやCDプレーヤー等が内蔵されたオーディオ装置40が電気的に接続されている。
図3は、上記ジェネレータ3、電動モータ5、およびインバータ11,12の回路図である。本図に示すように、上記電動モータ5の各相(U相、V相、W相)には、直列に接続された第1巻線L1および第2巻線L2からなる2つの巻線がそれぞれ設けられており、これら各相の巻線L1,L2への通電状態を切り替える手段として、上記第2インバータ12には、巻線切替スイッチ50(本発明にかかる巻線切替手段に相当)が設けられている。そして、この巻線切替スイッチ50によるスイッチング動作に応じて、上記第2インバータ12からの電流Imが上記第1および第2巻線L1,L2の両方を流れる状態と、このうちの第1巻線L1のみに電流Imが流れる状態との間で通電状態が切り替わるようになっている。なお、以下では、上記第1・第2巻線L1,L2の両方に電流Imが流れるように切替制御したときの巻線切替スイッチ50の状態を非作動状態、上記第1巻線L1のみに電流Imが流れるように切替制御したときの巻線切替スイッチ50の状態を作動状態とする。
また、上記第2インバータ12には、当該インバータ12による電動モータ5の駆動電圧Vdcを上昇させるための昇圧回路52が設けられている。この昇圧回路52は、第1および第2のスイッチング素子Sw1,Sw2を有しており、これら両スイッチング素子Sw1,Sw2がOFF状態にあるときには、上記駆動電圧Vdcが上昇することはないが、上記第1スイッチング素子Sw1がOFF状態とされかつ第2スイッチング素子Sw2がスイッチング制御(ON/OFFの繰り返し制御)されると、そのスイッチング制御の動作周期に応じた所定の上昇幅で上記駆動電圧Vdcが増大されるようになっている。一方で、例えば車両1が減速状態となり、電動モータ5がドライブシャフト8から駆動力を得て発電を行う際には(つまり回生ブレーキが行われる際には)、上記とは逆に、第1スイッチング素子Sw1がスイッチング制御されて第2スイッチング素子Sw2がOFF状態とされる。なお、以下では、上記第1・第2スイッチング素子Sw1,Sw2をともにOFFにしたときの昇圧回路52の状態を非作動状態、駆動電圧Vdcを昇圧するために上記第2スイッチング素子Sw2をスイッチング制御したときの昇圧回路52の状態を作動状態とする。
図4(a)〜(c)は、上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の作動状態に応じた電動モータ5の出力特性を示す図である。具体的に、図4(a)に示される特性線A1は、巻線切替スイッチ50および昇圧回路52がともに非作動であるときに得られる出力特性を示し、図4(b)に示される特性線A2は、巻線切替スイッチ50が作動しかつ昇圧回路52が非作動であるときに得られる出力特性を示し、図4(c)に示される特性線A3は、巻線切替スイッチ50が非作動でかつ昇圧回路50が作動したときに得られる出力特性を示している。
図4(a)および図4(b)を比較すると分かるように、上記巻線切替スイッチ50を作動させることにより、第1巻線L1のみに電流が流れるように通電状態を切り替えた状態(特性線A2)では、巻線切替スイッチ50を非作動として第1・第2両巻線L1,L2の両方に電流を流すようにした場合(特性線A1)と比べて、電動モータ5の軸トルクTは低下するものの、より高い回転速度まで電動モータ5を駆動できるようになる。これは、以下の理由による。
すなわち、電動モータ5の第1および第2の巻線L1,L2に電流が流れているとき、この電動モータ5には、図3に示すように、モータ回転速度Nに応じた誘起電圧Vaが発生するが、この誘起電圧Vaがインバータ12から印加される駆動電圧Vdcよりも小さい間は、その電位差によりインバータ12側から電動モータ5へと電流Imが流れる。ただし、この状態からさらにモータ回転速度Nが上昇し、上記誘起電圧Vaが駆動電圧Vdcと略等しくなると、電動モータ5に電流Imが流れなくなり、図4(a)の特性線A1の限界ラインALに示すように、電動モータ5のトルクTが急低下する。そこで、電流Imが流れなくなる前に、上記巻線切替スイッチ50を作動させて、電流Imが第2巻線L2を迂回して第1巻線L1にのみ流れるようにすれば、その分だけ電動モータ5の誘起電圧Vaを低下させることができる。これにより、上記限界ラインALよりも高回転側の領域においても、インバータ12と電動モータ5の間に電位差を生じさせることができ、より高回転側まで電動モータ5を駆動できるようになる。ただし、上記のように巻線切替スイッチ50を作動させることにより、第1巻線L1のみに電流Imが流れるように通電状態を切り替えると、電流Imが流れる巻線の長さが短くなる分、電動モータ5の最大トルクについては低下することになる。
また、図4(a)および図4(c)を比較すると分かるように、昇圧回路52を作動させることにより、電動モータ5の駆動電圧Vdcを強制的に上昇させた状態(特性線A3)では、より大きな誘起電圧Vaに打ち勝って電動モータ5に電流Imを流すことができるため、上記昇圧回路52を作動させなかった場合(特性線A1)と比べて、より高回転側まで電動モータ5を駆動できるようになる。この場合、巻線切替スイッチ50を作動させた図4(b)の特性線A2の場合と異なり、巻線の長さは変化しないため、電動モータ5の最大トルクは低下せず、昇圧前と同じレベルに維持される。
以上のように、当実施形態では、巻線切替スイッチ50および昇圧回路52をともに非作動とすることにより、特性線A1に示すような低回転寄りの出力特性が得られるように電動モータ5を制御した状態から、上記巻線切替スイッチ50を作動させて巻線L1,L2への通電状態を切り替えるか、もしくは、上記昇圧回路52を作動させて駆動電圧Vdcを昇圧することにより、上記電動モータ5の出力特性を、特性線A2またはA3に示すような高回転寄りの出力特性に切り替えるようにしている。なお、以下では、特性線A1のような低回転寄りの出力特性が得られるように電動モータ5を制御した状態を「低速モード」、特性線A2,A3のような高回転寄りの出力特性が得られるように電動モータ5を制御した状態を「高速モード」と称する。特に、図4(b)の特性線A2に示すように、巻線切替スイッチ50を用いて巻線L1,L2の通電状態を切り替えることにより出力特性を高回転側に拡大した場合を「巻線切替方式の高速モード」、図4(c)の特性線A3に示すように、昇圧回路52を用いて駆動電圧Vdcを増大させることにより出力特性を高回転側に拡大した場合を「昇圧方式の高速モード」と称する。
なお、図4(a)〜(c)以外の制御態様として、巻線切替スイッチ50および昇圧回路52をともに作動させることにより、電動モータ5の出力特性をさらに高回転側まで拡大させることも可能である。ただし、以下では、このように巻線切替スイッチ50および昇圧回路52をともに作動させる場合については特に説明せず、図4(a)〜(c)に示したような3種類の特性線A1〜A3の間で出力特性を切り替える例を前提として説明を進める。
図5は、上記図4(a)〜(c)の特性線A1〜A3を重ねて示した電動モータ5の特性図である。なお、この図5では、低速モード時の特性線A1を実線で、昇圧方式の高速モード時の特性線A2を破線で、巻線切替方式の高速モード時の特性線A3を一点鎖線で示している。本図において、特性線A1よりも高速側で、かつ特性線A2とA3との重複部分に設定された領域Cは、巻線切替方式の高速モードまたは昇圧方式の高速モードのいずれでも対応可能な運転領域を示しており、以下では、この領域を共通領域Cと称する。
上記共通領域Cでは、電動モータ5の出力特性を、巻線切替方式の高速モードまたは昇圧方式の高速モードのいずれに切り替えてもよいが、当実施形態では、車両1に備わる特定の装置の状態に応じて、上記両高速モードのうちのいずれか一方に選択的に出力特性を切り替えるようにする。具体的に、当実施形態では、上記特定の装置として、エンジン2やオーディオ装置40等の状態(例えばエンジン2のON/OFFやオーディオ装置40の音量等)が判定され、その判定結果に基づいて、上記巻線切替方式の高速モードまたは昇圧方式の高速モードのいずれかが選択される。
図5において特性線A1,A2の重複部分に設定されたラインPは、電動モータ5の運転状態が上記共通領域Cに移行しつつあることを判定するための切替ラインであり、この切替ラインPを境として、上記電動モータ5の出力特性が低速モードから高速モードに切り替えられるようになっている。すなわち、図5の矢印D1に示すように、上記電動モータ5の運転状態が上記切替ラインPを横切って共通領域Cに移行しつつあると判定されたときに、上記電動モータ5の出力特性が、上記特性線A1で示される低速モードから、特性線A2,A3で示される2つの高速モードのうちのいずれかに切り替えられるようになっている。
再び図2に戻って、上記のような電動モータ5の出力特性の切り替えに関するコントローラ15の機能についてより具体的に説明する。本図に示すように、上記コントローラ15は、その機能要素として、第1判定手段15a、第2判定手段15b、および切替手段15cを有している。
上記第1判定手段15aは、エンジン2、オーディオ装置40、巻線切替スイッチ50、および昇圧回路52といった各種装置の状態に関する所定の判定を行うものである。具体的に、上記第1判定手段15aは、上記エンジン2が停止しているか否か、上記オーディオ装置40の音量が所定値以下であるか否か、上記オーディオ装置40のソース(オーディオソース)としてラジオが選択されているか否か、上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52が故障しているか否かといった各種判定を実行する。
上記第2判定手段15bは、上記電動モータ5の運転状態が、図5に示した切替ラインPよりも高回転側の領域に移行したか否かを判定するものである。具体的に、上記第2判定手段15bは、上記電動モータ5の回転速度Nと、アクセル開度TVO等から定まる現時点での要求トルクとに基づいて、現時点での電動モータ5の運転状態が図5の特性図上でどの位置に相当するかを特定し、その位置と上記切替ラインPとを比較することにより、図5の矢印D1に示すように、上記電動モータ5の運転状態が切替ラインPより高回転側に移行したか否かを判定する。
上記切替手段15cは、上記電動モータ5の出力特性を低速モードと高速モードとの間で切り替える制御を実行するものである。具体的に、上記切替手段15cは、電動モータ5が低速モードにあるときに、上記第2判定手段15bによって電動モータ5の運転状態が図5の切替ラインPよりも高回転側の領域に移行したことが確認されると、上記第1判定手段15aにより判定されたエンジン2やオーディオ装置40等の状態に基づいて、上記電動モータ5の出力特性を、上記低速モードから、上記巻線切替方式の高速モードまたは昇圧方式の高速モードのいずれかに選択的に切り替えるように構成されている。
次に、以上のように構成されたコントローラ15により実行される制御動作の具体的内容について、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、ここでは特に、電動モータ5の出力特性が低速モードから高速モードに切り替えられる際の制御動作について述べる。このため、当フローチャートが開始される前提として、電動モータ5の出力特性は当初低速モードに設定されているものとする。
図6のフローチャートがスタートすると、コントローラ15は、まず、アクセル開度センサ31およびモータ回転速度センサ35の検出値に基づいて、電動モータ5の回転速度Nおよびアクセルペダルの開度TVOを読み込むとともに(ステップS1)、ここで読み込まれたアクセル開度TVO等に基づいて、現時点での電動モータ5の要求トルクを算出する制御を実行する(ステップS2)。
次いで、コントローラ15は、上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の両方または一方が故障しているか否かを判定する制御を実行する(ステップS3,S4)。具体的には、まずステップS3で上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の両方が故障しているか否かを判定し、ここでNOと判定された場合に、次のステップS4で上記両装置のいずれか一方が故障しているか否かを判定する。なお、これらのステップでの故障判定は、上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52に対し、例えばテスト用の操作信号等を送信し、その信号に対する反応結果等に基づき行うことができる。
上記ステップS3,S4でNOと判定されて巻線切替スイッチ50および昇圧回路52がともに正常であることが確認された場合、コントローラ15は、エンジン2が停止中(OFF)であること、オーディオ装置40の音量が所定値より小さいこと、および、オーディオソースとしてラジオが選択されていること(つまりラジオがONであること)という3つの条件のいずれかが成立するか否かを判定する制御を実行する(ステップS5)。具体的には、上記エンジン回転速度センサ32により検出されるエンジン2の回転速度に基づいてエンジン2が停止中か否かを判定するとともに、オーディオ操作用の図外の操作スイッチ等からの入力信号に基づいて、音量が小さいか否か、またはラジオがONか否かを判定する。
上記ステップS5でYESと判定された場合、つまり、エンジンOFF、オーディオ音量小、ラジオONのいずれかの条件が成立することが確認された場合、コントローラ15は、上記ステップS1で読み込まれたモータ回転速度N、および上記ステップS2で算出された要求トルクに基づいて、現時点での電動モータ5の運転状態を特性し、特定された運転状態が、図5に示した切替ラインPよりも高回転側にあるか否かを判定する制御を実行する(ステップS6)。
そして、上記ステップS6でYESと判定されて切替ラインPよりも高回転側にあることが確認されると、コントローラ15は、上記巻線切替スイッチ50を作動させることにより、電動モータ5の出力特性を、当初の低速モードから、図5の特性線A2で示した巻線切替方式の高速モードに切り替える制御を実行する(ステップS7)。一方、上記ステップS6でNOと判定された場合には、上記のような切り替え動作を行うことなくリターンし、電動モータ5の出力特性を低速モードのまま維持する。
また、上記ステップS5でNOと判定された場合、つまり、エンジンOFF、オーディオ音量小、ラジオONのいずれかの条件も成立しなかった場合、コントローラ15は、まず上記ステップS6と同様に、電動モータ5の運転状態が上記切替ラインPよりも高回転側にあるか否かを判定する(ステップS8)。そして、ここでYESと判定された場合に、上記昇圧回路52を作動させることにより、上記電動モータ5の出力特性を、当初の低速モードから、図5の特性線A3で示した昇圧方式の高速モードに切り替える制御を実行する(ステップS9)。一方、上記ステップS8でNOであればそのままリターンして、上記電動モータ5の出力特性を低速モードのまま維持する。
次に、上記ステップS4でYESと判定された場合、つまり、上記巻線切替スイッチ50または昇圧回路52のいずれか一方が故障していた場合の制御動作について説明する。この場合、コントローラ15は、例えば車室内のインストルメントパネル等に設けられた図外の液晶表示部等に、上記ステップS4で故障と判定された側の部品に関する所定の警告(例えば点検が必要である旨の表示等)を表示した後(ステップS10)、上記ステップS6,S8と同様に、電動モータ5の運転状態が上記切替ラインPよりも高回転側にあるか否かを判定する制御を実行する(ステップS8)。
そして、このステップS8でYESと判定された場合に、上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52のうち正常な方を作動させることにより、上記電動モータ5の出力特性を低速モードから高速モードに切り替える制御を実行する(ステップS12)。すなわち、巻線切替スイッチ50が正常であれば、当該スイッチ50を作動させることにより、図5の特性線A2で示した巻線切替方式の高速モードに出力特性を切り替える一方、昇圧回路52が正常であった場合には、特性線A3で示した昇圧方式の高速モードに出力特性を切り替える。
最後に、上記ステップS3でYESと判定された場合の制御動作について説明する。この場合は、上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52がともに故障しているため、これら巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の両方が故障している旨の警告が行われ(ステップS13)、高速モードへの切り替えは不可能であるため実行されない。
以上説明したように、本発明の第1実施形態にかかる電動車両用駆動装置は、車両1の駆動輪16を回転駆動する電動モータ5の出力特性を、低回転寄りの運転領域に対応した低速モードから、これよりも高回転寄りの運転領域まで対応可能な高速モードへと切り替える手段として、上記電動モータ5に備わる巻線L1,L2への通電状態を切り替える巻線切替スイッチ50と、上記電動モータ5の駆動電圧Vdcを昇圧する昇圧回路52とを備えている。そして、当実施形態では、このような電動車両用駆動装置に対する制御として、車両に備わる特定の装置の状態に関する所定の判定を行うステップ(S3〜S5)と、上記電動モータ5の運転状態が所定の切替ラインPよりも高回転側の領域に移行したことを判定するステップ(S6,S8,S11)と、ここで高回転側の領域に移行したことが確認された場合に、その前に判定された上記特定の装置の状態に基づいて、上記電動モータ5の出力特性を、上記巻線切替スイッチ50を用いた巻線切替方式の高速モード、または上記昇圧回路52を用いた昇圧方式の高速モードのいずれかに選択的に切り替えるステップ(S7,S9,S12)とが、上記コントローラ15により実行されるようになっている。このような構成によれば、巻線切替方式の高速モード、および昇圧方式の高速モードという2種類の高速モードが存在する場合に、これら両高速モードを各種状況により適正に使い分けられるという利点がある。
すなわち、上記第1実施形態では、電動モータ5の運転状態が切替ラインPよりも高回転側の領域に移行したときに、上記電動モータ5の出力特性を、車両1に備わる特定の装置(例えばエンジン2やオーディオ装置40等)の状態に基づいて、上記2種類の高速モードのうちのいずれかに選択的に切り替えるようにしたため、これら両高速モードの特性の違いを考慮した上で、その選択を車両1に関する種々の状況に応じて適正に実行することができ、各種状況ごとに車両1をより細やかに駆動制御できるという利点がある。
例えば、上記第1実施形態では、図6のステップS5〜S7に示したように、エンジン2が停止中であるという条件が成立すると、高速モードとして巻線切替方式の高速モードを選択するようにした。この構成によれば、エンジン2の停止中は昇圧回路52が作動しないため、この昇圧回路52の動作音が乗員の耳障りになるのを効果的に防止できるという利点がある。
すなわち、昇圧回路52の作動時には、回路中のリアクタンス成分等による電気的な動作音が比較的大きいレベルで発生することから、エンジン2が停止中であるために車室内が比較的静かな状況で上記昇圧回路52を作動させると、その動作音が相対的に大きく感じられ、乗員が違和感を覚えてしまうおそれがある。これに対し、上記第1実施形態のように、エンジン2が停止中のときに巻線切替方式の高速モードを選択するようにした場合には、高速モード時に昇圧回路52を作動させる必要がないため、この昇圧回路52の動作音が乗員の耳障りになるのを効果的に防止でき、車室内の音的環境をより向上させることができるという利点がある。
同様に、上記第1実施形態では、オーディオ装置40の音量が小さい場合にも、巻線切替方式の高速モードを選択するようにした。この構成によれば、オーディオ装置40の音量が小さく車室内が比較的静かな状況で、上記昇圧回路52が作動してその動作音が乗員の耳障りになるのを効果的に防止できるという利点がある。
また、上記第1実施形態では、オーディオソースとしてラジオが選択されている場合にも、巻線切替方式の高速モードを選択するようにしたため、上記昇圧回路52の動作時に発生する電磁気ノイズによりラジオの音質が悪化するのを効果的に防止できるという利点がある。
すなわち、昇圧回路52の作動時には、回路中に流れる電流に応じてある程度のレベルの電磁気ノイズが発生するため、ラジオの作動中に上記昇圧回路52を作動させてしまうと、上記電磁気ノイズによりラジオ電波の受信が妨げられ、ラジオの音質が悪化するおそれがある。これに対し、上記第1実施形態のように、ラジオの作動中に巻線切替方式の高速モードを選択するようにした場合には、高速モード時に上記昇圧回路52を作動させる必要がないため、この昇圧回路52から発生する電磁気ノイズによりラジオ電波の受信に影響が及ぶのを効果的に防止でき、ラジオの音質を良好に維持できるという利点がある。
また、上記第1実施形態では、巻線切替スイッチ50および昇圧回路52が故障しているか否かを判定し(ステップS3,S4)、いずれか一方が故障している場合(ステップS4でYESの場合)には、正常な方を作動させて電動モータ5の出力特性を高速モードに切り替えるようにしたため(ステップS12)、上記巻線切替スイッチ50または昇圧回路52のいずれかが故障していたとしても、正常な方を用いて適正に高速モードへの切り替えを実行できるという利点がある。
なお、上記第1実施形態では、ラジオ等が内蔵されたオーディオ装置40が車両1に装備されている場合に、このオーディオ装置40の音量やラジオのON/OFFに基づいて、巻線切替方式の高速モードまたは昇圧方式の高速モードのいずれか一方を選択するようにしたが、例えば車両1にテレビが装備されている場合には、上記昇圧回路52による電磁気ノイズがテレビ電波の受信の妨げになるのを防止するために、テレビがONであるときには巻線切替方式の高速モードを選択することが望ましい。
(実施形態2)
図7は、本発明の第2実施形態にかかる車両用駆動装置の全体構成を示すブロック図である。本図に示される車両用駆動装置には、第1温度センサ61および第2温度センサ62が設けられており、これら各温度センサ61,62とコントローラ15とが電気的に接続されている。
上記第1温度センサ61は、第2インバータ12の巻線切替スイッチ50の温度T1を検出するものであり、上記第2温度センサ62は、同インバータ12の昇圧回路52の温度T2を検出するものである。これら各温度センサ61,62により検出された温度T1,T2は、電気信号としてそれぞれ上記コントローラ15に入力される。
なお、当実施形態において、上記各温度センサ61,62が設けられている点以外の他の構成については、上記第1実施形態の場合と同様である。
図8は、上記電動モータ5の出力特性を低速モードから高速モードに切り替える際に上記コントローラ15により実行される制御の内容を示すフローチャートである。このフローチャートがスタートすると、コントローラ15は、まず、アクセル開度センサ31、モータ回転速度センサ35、および第1・第2温度センサ61,62の検出値に基づいて、電動モータ5の回転速度N、アクセルペダルの開度TVO、巻線切替スイッチ50の温度T1、および昇圧回路52の温度T2を読み込むとともに(ステップS21)、読み込まれたアクセル開度TVO等に基づいて、現時点での電動モータ5の要求トルクを算出する制御を実行する(ステップS22)。
次いで、コントローラ15は、上記第1実施形態のフローチャート(図6)におけるステップS3,S4と同様に、上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の両方または一方が故障しているか否かを判定する制御を実行する(ステップS23,S24)。なお、これら両ステップS23,S24のいずれかでYESと判定された場合に実行される制御動作(ステップS30〜S33)については、上記第1実施形態におけるステップS10〜S13と同様であるため、ここではその説明を省略する。
上記ステップS23,S24でともにNOと判定されて上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の両方が正常であることが確認された場合、コントローラ15は、上記ステップS21で読み込まれた巻線切替スイッチ50の温度T1が、昇圧回路52の温度T2より大きいか否かを判定する制御を実行する(ステップS25)。
上記ステップ25でYESと判定されてT1>T2であることが確認された場合、コントローラ15は、上記ステップS21で読み込まれたモータ回転速度N、および上記ステップS22で算出された要求トルクとに基づいて、現時点での電動モータ5の運転状態が、特性図上の切替ラインP(図5)よりも高回転側にあるか否かを判定する制御を実行する(ステップS26)。
そして、上記ステップS26でYESと判定されて切替ラインPよりも高回転側にあることが確認されると、コントローラ15は、上記昇圧回路52を作動させることにより、電動モータ5の出力特性を、当初の低速モードから、図5の特性線A3で示した昇圧方式の高速モードに切り替える制御を実行する(ステップS27)。すなわち、上記ステップS25での比較の結果、巻線切替スイッチ50の温度T1の方が昇圧回路52の温度T2よりも高いことが確認されているため、このことを受けて、上記ステップS27では、相対的に温度が低く熱的負荷がより小さいと予想される昇圧回路52を作動させることにより、電動モータ5の出力特性を昇圧方式の高速モードに切り替える。
一方、上記ステップS25でNOと判定されてT1≦T2であることが確認された場合、コントローラ15は、まず上記ステップS26と同様に、電動モータ5の運転状態が上記切替ラインPよりも高回転側にあるか否かを判定し(ステップS28)、ここでYESと判定された場合に、上記巻線切替スイッチ50を作動させることにより、電動モータ5の出力特性を、当初の低速モードから、図5の特性線A2で示した巻線切替方式の高速モードに切り替える制御を実行する(ステップS29)。すなわち、ここでは巻線切替スイッチ50の温度T1の方が低く、その熱的負荷がより小さいと予想されるため、この巻線切替スイッチ50を用いた巻線切替方式の高速モードを選択する。
以上のように、本発明の第2実施形態では、巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の温度T1,T2に基づいて、両者のうちどちらの熱的負荷が大きいかを判定し(ステップS25)、電動モータ5の運転状態が高回転領域に移行したときに、上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52のうち、熱的負荷が小さいと判定された方を作動させることにより出力特性を高速モードに切り替えるようにした(ステップS27,S29)。このような構成によれば、巻線切替スイッチ50および昇圧回路52のうちの一方のみに大きな熱的負荷がかかることに起因した故障の発生を効果的に防止でき、これらの部品を含む駆動装置全体の信頼性をより向上させることができるという利点がある。
(実施形態3)
図9は、本発明の第3実施形態にかかる電動車両用駆動装置の全体構成を示すブロック図である。本図に示される車両用駆動装置には、車両1の加減速度αを検出するGセンサ70が設けられており、このGセンサ70とコントローラ15とが電気的に接続されている。
また、上記コントローラ15には、車両1の運転履歴データを記憶する運転履歴記憶手段15dが内蔵されている。この運転履歴記憶手段15dは、車両1の運転中に、上記Gセンサ70により検出された加減速度αの他、車速センサ30により検出された車速Vやモータ回転速度センサ35により検出されたモータ回転速度N等のデータを上記運転履歴データとして逐次記憶するものである。
なお、当実施形態において、上記Gセンサ70および運転履歴記憶手段15dが設けられている点以外の他の構成については、上記第1実施形態の場合と同様である。ただし、当実施形態の第1判定手段15aは、上記運転履歴記憶手段15dにより記憶された運転履歴データに基づいて、ドライバーの運転傾向に関する所定の判定を行うものとして設けられている。
図10は、上記電動モータ5の出力特性を低速モードから高速モードに切り替える際に上記コントローラ15により実行される制御の内容を示すフローチャートである。このフローチャートがスタートすると、コントローラ15は、まず、アクセル開度センサ31およびモータ回転速度センサ35の検出値に基づいて、電動モータ5の回転速度Nおよびアクセルペダルの開度TVOを読み込むとともに、車両1の過去の運転履歴データを上記運転履歴記憶手段15dから読み込む制御を実行する(ステップS41)。また、読み込まれたアクセル開度TVO等に基づいて、現時点での電動モータ5の要求トルクを算出する制御を実行する(ステップS42)。
次いで、コントローラ15は、上記第1実施形態のフローチャート(図6)におけるステップS3,S4と同様に、上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の両方または一方が故障しているか否かを判定する制御を実行する(ステップS43,S44)。なお、これら両ステップS43,S44のいずれかでYESと判定された場合に実行される制御動作(ステップS50〜S53)については、上記第1実施形態におけるステップS10〜S13と同様であるため、ここではその説明を省略する。
上記ステップS43,S44でともにNOと判定されて上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の両方が正常であることが確認された場合、コントローラ15は、上記ステップS41で読み込まれた運転履歴データに基づいて、自車両を運転しているドライバーが比較的緩やかな加減速(緩加減速)を好んで運転しているか否かを判定する制御を実行する(ステップS45)。具体的には、上記運転履歴記憶手段15dに記憶された過去の運転履歴データから、例えば加減速度αの絶対値が所定値以上となるような急加速または急減速が行われた頻度を求め、この頻度が所定の閾値より小さければ、緩やかな加減速を好むドライバーであると判定する。
上記ステップS45でYESと判定されて緩やかな加減速を好むドライバーであることが確認された場合、コントローラ15は、上記ステップS41で読み込まれたモータ回転速度N、および上記ステップS42で算出された要求トルクとに基づいて、現時点での電動モータ5の運転状態が、特性図上の切替ラインP(図5)よりも高回転側にあるか否かを判定する制御を実行する(ステップS46)。
そして、上記ステップS46でYESと判定されて切替ラインPよりも高回転側にあることが確認されると、コントローラ15は、上記昇圧回路52を作動させることにより、電動モータ5の出力特性を、当初の低速モードから、図5の特性線A3で示した昇圧方式の高速モードに切り替える制御を実行する(ステップS47)。
一方、上記ステップS45でNOと判定されて緩やかな加減速を好むドライバーでないこと、つまりドライバーが急加速または急減速を特に気にせず運転していることが確認された場合、コントローラ15は、まず上記ステップS46と同様に、電動モータ5の運転状態が上記切替ラインPよりも高回転側にあるか否かを判定し(ステップS48)、ここでYESと判定された場合に、上記巻線切替スイッチ50を作動させることにより、電動モータ5の出力特性を、当初の低速モードから、図5の特性線A2で示した巻線切替方式の高速モードに切り替える制御を実行する(ステップS49)。
以上のように、本発明の第3実施形態では、運転履歴記憶手段15dに記憶された過去の運転履歴データに基づいて、ドライバーが比較的緩やかな加減速を好んで運転しているか否かを判定し(ステップS45)、ここで緩やかな加減速を好んで運転していることが確認されると、高回転時の出力特性として、昇圧回路52を用いた昇圧方式の高速モードを選択するようにした(ステップS47)。このような構成によれば、ドライバーが緩やかな加減速を好んで運転しているときに、出力特性の切り替え時に生じるショックが比較的小さいレベルに抑えられるため、このような切替ショックに起因してドライバーが違和感を覚えるのを効果的に防止できるという利点がある。
すなわち、低速モードから高速モードへの切り替え時に、巻線切替方式の高速モードを選択した場合には、上記巻線切替スイッチ50の作動に伴い巻線の長さが瞬時に切り替わることにより、電動モータ5のトルク値が一時的に変動して車両1にある程度のショックが発生すると考えられる。このとき、仮にドライバーが緩やかな加減速を好む人物であれば、このようなドライバーは上記のような切替ショックを気にするものと考えられる。
これに対し、上記第3実施形態のように、ドライバーが緩やかな加減速を好んで運転している状況で昇圧方式の高速モードを選択するようした場合には、巻線切替方式の高速モードを選択した場合に比べて切替ショックが小さいレベルで済むため、緩やかな加減速を好むドライバーに対し比較的大きな切替ショックが伝わってドライバーが違和感を覚えるのを効果的に防止でき、嗜好に応じた快適な運転環境をドライバーに提供できるという利点がある。
なお、上記第3実施形態では、過去の運転履歴データに基づいてドライバーが比較的緩やかな加減速を好んで運転しているか否かを判定し、その判定結果に基づいて、昇圧方式の高速モードまたは巻線切替方式の高速モードのいずれかを選択するようにしたが、いずれの高速モードを選択すべきかの判断基準となり得るドライバーの運転傾向であれば、上記のような事項に限らず判定要素として採用可能である。例えば、ドライバーが比較的緩やかな操舵速度でステアリングを操作する傾向にあるか否かを判定するようにしてもよい。そして、このような傾向にあると判定された場合には、やはり上記のような切替ショックを気にするドライバーであると考えられるため、上記高速モードへの切り替え時には昇圧方式の高速モードを選択すればよい。
(実施形態4)
図11は、本発明の第4実施形態にかかる電動車両用駆動装置の全体構成を示すブロック図である。本図に示される車両用駆動装置には、モード選択スイッチ80および走行モードスイッチ81が設けられており、これら各スイッチ80,81とコントローラ15とが電気的に接続されている。
上記モード選択スイッチ80は、電動モータ5の運転状態が高回転領域に移行したときに、電動モータ5の出力特性を、巻線切替方式の高速モードまたは昇圧方式の高速モードのいずれに切り替えるかを、好みに応じて択一的に選択するためのスイッチである。
上記走行モードスイッチ81は、車両1の駆動特性を好みに応じて変更するためのスイッチである。具体的に、この走行モードスイッチ81は、アクセルペダルの踏み込み時に力強い加速感が得られること等を重視して電動モータ5を駆動制御するスポーツモードと、急な加減速によるギクシャク感等を極力抑制するように電動モータ5を駆動制御するコンフォートモードと、これらの中間の性質を有する通常モードとの間で車両1の駆動特性を切り替え可能に構成されている。
なお、当実施形態において、上記モード選択スイッチ80および走行モードスイッチ81が設けられている点以外の他の構成については、上記第1実施形態の場合と同様である。
図12は、上記電動モータ5の出力特性を低速モードから高速モードに切り替える際に上記コントローラ15により実行される制御の内容を示すフローチャートである。このフローチャートがスタートすると、コントローラ15は、まず、モータ回転速度Nおよびアクセル開度TVOを読み込むとともに(ステップS61)、読み込まれたアクセル開度TVO等に基づいて、現時点での電動モータ5の要求トルクを算出する制御を実行する(ステップS62)。
次いで、コントローラ15は、上記第1実施形態のフローチャート(図6)におけるステップS3,S4と同様に、上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の両方または一方が故障しているか否かを判定する制御を実行する(ステップS63,S64)。なお、これら両ステップS43,S44のいずれかでYESと判定された場合に実行される制御動作(ステップS75〜S78)については、上記第1実施形態におけるステップS10〜S13と同様であるため、ここではその説明を省略する。
上記ステップS63,S64でともにNOと判定されて上記巻線切替スイッチ50および昇圧回路52の両方が正常であることが確認された場合、コントローラ15は、上記モード選択スイッチ80から入力される操作信号に基づき、高回転時に切り替えるべき出力特性として、巻線切替方式の高速モードが選択されているか否かを判定する制御を実行する(ステップS65)。
上記ステップS65で巻線切替方式が選択されていることが確認された場合、コントローラ15は、上記走行モードスイッチ81から入力される操作信号に基づいて、車両1の駆動特性としてスポーツモードが選択されているか否かを判定し(ステップS66)、ここでNOと判定された場合には、さらに、上記駆動特性としてコンフォートモードが選択されているか否かを判定する制御を実行する(ステップS67)。
上記ステップS66でYESと判定されてスポーツモードが選択されていることが確認された場合、コントローラ15は、図13に示すように、高速モード切り替え時の基準となる切替ラインPを、矢印Xのように高回転側にシフトさせることにより、電動モータ5の出力をより重視した位置に切替ラインPを再設定する制御を実行する(ステップS68)。すなわち、切替ラインPは、通常、電動モータ5の効率等を考慮した実線の位置に設定されているが、スポーツモードでは、出力を重視する観点から、上記切替ラインPを高回転側にシフトさせてより高回転領域まで低速モードを持続させるようにする。
一方、上記ステップS67でYESと判定されてコンフォートモードが選択されていることが確認された場合、コントローラ15は、上記切替ラインPを、図13の矢印Yのように低回転側にシフトさせることにより、高速モード切り替え時の低ショック性をより重視した位置に切替ラインPを再設定する制御を実行する(ステップS69)。すなわち、モータ回転速度Nが比較的低いうちに出力特性を高速モードに切り替えた方が、切り替え時のショックを低減できるため、滑らかな走行を重視する上記コンフォートモードでは、上記切替ラインPを低回転側にシフトさせて上記切替ショックの低減を図るようにする。
なお、上記ステップS66,S67でいずれもNOと判定された場合、つまり車両1の駆動特性として通常モードが選択されている場合には、図13の実線で示す通常位置に上記切替ラインPが設定される。
以上のようにして切替ラインPの設定が終了すると、コントローラ15は、上記ステップS61で読み込まれたモータ回転速度N、および上記ステップS62で算出された要求トルクとに基づいて、現時点での電動モータ5の運転状態が、上記ステップS68〜S70のいずれかで設定された切替ラインPよりも高回転側にあるか否かを判定する制御を実行する(ステップS71)。
そして、上記ステップS71でYESと判定されて切替ラインPよりも高回転側にあることが確認されると、コントローラ15は、上記巻線切替スイッチ50を作動させることにより、電動モータ5の出力特性を、当初の低速モードから、図13の特性線A2で示す巻線切替方式の高速モードに切り替える制御を実行する(ステップS72)。
次に、上記ステップS65でNOと判定された場合、つまり、高回転時の出力特性として昇圧方式の高速モードが選択されている場合の制御動作について説明する。この場合、コントローラ15は、現時点での電動モータ5の運転状態が、あらかじめ設定された切替ラインPよりも高回転側にあるか否かを判定し(ステップS73)、ここでYESと判定された場合に、上記昇圧回路52を作動させることにより、電動モータ5の出力特性を、当初の低速モードから、図13の特性線A3で示す昇圧方式の高速モードに切り替える制御を実行する(ステップS74)。
以上のように、本発明の第4実施形態では、高回転時の出力特性として巻線切替方式の高速モードまたは昇圧方式の高速モードのいずれが選択されているかを、モード選択スイッチ80の操作状態に基づき判定し(ステップS65)、電動モータ5の出力特性を低速モードから高速モードに切り替える際には、上記モード選択スイッチ80により選択された方の高速モードを選択するようにした(ステップS72,S74)。このような構成によれば、電動モータ5が高回転領域に移行したときに、性質の異なる2つの高速モードのうち、ドライバーがモード選択スイッチ80を用いて選択した方の高速モードに電動モータ5の出力特性を切り替えることにより、ドライバーの好みに応じて適正に電動モータ5の駆動を制御できるという利点がある。
特に、上記第4実施形態では、モード選択スイッチ80により巻線切替方式の高速モードが選択されている場合に、走行モードスイッチ81によりスポーツモードが選択されていることが確認されると(ステップS66でYESであると)、高速モード切り替え時の基準となる切替ラインPを出力重視の位置(高回転側)にシフトさせるようにしたため(ステップS68)、ドライバーの運転嗜好に応じてより適正に電動モータ5の駆動を制御できるという利点がある。
すなわち、スポーツモードが選択されている状況では、ドライバーがスポーツ性(つまり力強い加速感が得られること等)を重視して車両1を運転していると考えられるため、上記のように切替ラインPを出力重視の位置にシフトすれば、この新たな切替ラインPを基準に電動モータ5の出力特性を高速モードに切り替えることにより、スポーツ性を重視するドライバーの運転嗜好に応じたより適正なタイミングで上記高速モードへの切り替えを実施でき、よりスポーツ性に富んだ優れたドライバビリティを上記ドライバーに提供できるという利点がある。
さらに、上記第4実施形態では、上記走行モードスイッチ81によりコンフォートモードが選択された場合(ステップS67でYESの場合)に、高速モード切り替え時の低ショック性を重視した位置(低回転側)に上記切替ラインPをシフトさせるようにしたため(ステップS69)、ドライバーが快適性を重視していると考えられる状況で、このドライバーの運転嗜好に応じたより適正なタイミングで上記高速モードへの切り替えを実施でき、切り替え時のショックがより小さい快適な運転環境を上記ドライバーに提供できるという利点がある。
なお、上記第4実施形態では、高回転時の出力特性として巻線切替方式の高速モードが選択されている場合(ステップS65でYESの場合)において、走行モードスイッチ81による選択結果がスポーツモードかコンフォートモードかであれば、図13に示すように切替ラインPをシフトさせる一方、昇圧方式の高速モードが選択されている場合(ステップS65でNOの場合)には、上記のような切替ラインPのシフトを行わないようにしたが、昇圧方式が選択されている場合でも、必要に応じて切替ラインPをシフトさせるようにしてもよい。ただし、電動モータ5の出力特性を昇圧方式の高速モードに切り替える際には、巻線切替方式の高速モードに切り替える場合と異なり、切替ラインPの位置を変更してもそのことによる影響(例えば切替ショック等への影響)は小さいと考えられるため、昇圧方式が選択されているときに切替ラインPをシフトさせる意味は少ないと考えられる。
また、上記第4実施形態では、車両1の駆動特性を好みに応じて切り替えるための走行モードスイッチ81を設け、この走行モードスイッチ81の操作状態に基づいて、ドライバーがスポーツ性を重視して運転しているか、または快適性を重視して運転しているかを判定するようにしたが、例えば、上記第3実施形態のように、車両1の運転履歴を記憶する手段(図9の運転履歴記憶手段15dに相当するもの)がコントローラ15に内蔵されている場合には、この記憶手段に記憶された運転履歴データに基づいて、上記のようなドライバーの運転傾向(嗜好)を判定するようにしてもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態について上記第1〜第4の実施形態を例に挙げつつ説明したが、本発明はこのような例に限らず、その具体的構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上記各実施形態では、エンジン2と電動モータ5とを動力源として併用したハイブリッド型自動車に対して本発明の制御方法を適用した例について説明したが、本発明の制御方法は、電動モータ5を動力源の少なくとも一部として用いた電動車両であれば、特にその種類を問わず適用可能である。