以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係るセンサを用いた地震計8の設置状況を模式的に示す図である。なお、地震計8においては、その制御やメンテナンスのために流体を用いるために、地表から地震計8に流体を導入・導出するための構成が設けられるものであるが、図1においてはこれを図示省略している。
地震計8の設置においては、まず地盤2に対して掘削技術によって、直径およそ10cmから20cm、深さ1000〜7000m程度の坑を堀り、当該坑に対してケ−シング3を施し、このケ−シング3内に一台或いは、例えば1000m〜2000m程度の間隔で複数の地震計8を設置するようにしている。このケ−シング3内に図1においては地震計8を3つ設置した状況を模式的に示している。ケーシング3内には地下水1が充満することとなるので、地下深くに設置される地震計8には相当の水圧がかかることとなる。また、地下深くに設置される地震計8は、地熱によって高温環境下に置かれることとなり、地中から発生する硫化水素の影響を受けることとる。
ケ−シング3内に充満している水1の中で地震計8を固定するために、地震計8には、ケーシングの内壁部に向けて可動するクランパ部を有しており、このクランパ部を地上からの操作することで、地震計8をケ−シング3内の所望位置で固定させる。
それぞれの地震計8で取得された検知情報を伝送する光ファイバ(光通信ケ−ブル)や、それぞれの地震計8に対して流体を供給するための配管などは地震計接続ライン4に収納されており、これを介して行われる。地盤2に深く設置された地震計8が検知した加速
度、傾斜、方位及び圧力は光信号として地震計接続ライン4及び屋外用光通信ケ−ブル5を介して、光測定器6に伝送される。
光測定器6からの電気的出力はパーソナルコンピュータ7にてソフト処理(数学的処理、経時的処理や警報処理光測定器へのコマンド処理や上位システムへの出力処理等を含む)を受けて情報化される。パーソナルコンピュータ7は、CPUによる演算装置や、ROM、HDDなどの記憶手段などを備える、現在広く普及しているものを用いることができる。
地震計接続ライン4内に収納される、光ファイバ(光通信ケ−ブル)としては高温・高圧・高負荷・高腐食性雰囲気に曝されるので高価とならざるを得ないが、屋外用光通信ケ−ブル5は一般の物でよい。但し、震計接続ライン4内に収納される光ファイバと、屋外用光通信ケ−ブル5の光ファイバとは、光ファイバとしての光学的特性(モ−ド、コア径、クラッド径等)が極力同じ方が良い。同じであれば、接続方法として、一般的なコネクタや融着を利用することができるからである。逆に、光学的特性が異なるような場合は、光信号の変換装置が必要となり、高価なシステムとなってしまう。
地震計接続ライン4の地震計8間で接続する場合も同様である。勿論、各地震計8毎に、ラインを使い分ける場合には、地震計8間の接続は必要ない。この場合は、光測定器6の内部に光スイッチを内蔵するタイプを使用するか、屋外用光通信ケ−ブル5と光測定器6の間に光チャンネルセレクタ(図示しない)を設ける必要がある。なお、地中への杭は裸杭のままではなく、岩盤崩落を防止するために鉄製のケ−シング3が適用される。
次に、上記地震計8で採用されている本発明のセンサにおいて、歪みや温度を検知する原理について説明する。図2はFBG加工部を有する光ファイバによって歪み・温度を検出する原理を説明する図である。図2において上段に示されるものは、FBG加工部が設けられた光ファイバの断面を模式的に示すものである。この光ファイバにはFBG1加工部27及びFBG2加工部28の2つのFBG加工部が設けられており、この光ファイバに入射光20を導入した場合を想定して説明する。
光ファイバは裸ファイバのコア26、裸ファイバのクラッド25及び耐熱樹脂被覆24から構成される。一般的な光ファイバの樹脂被覆の被覆材料はUV樹脂であるが、本発明の実施形態に係るセンサでは、より高温に耐えるものとしてシリコン、テフロンやポリイミド等の耐熱樹脂被覆24で被覆されている耐熱光ファイバが用いられる。本発明の実施形態に係るセンサは、このため、地中の高温環境における耐熱性や硫化水素による腐食に対する耐性が向上する。
上記のような耐熱光ファイバに、歪みや温度を検知するためのFBG(Fiber Bragg Grating)加工部を設けるようにするが、このFBG加工処理を施す一般的な方法を以下に説明する。光ファイバに水素吸収をさせてから、樹脂被覆24を除去し裸ファイバ(石英系ガラス)に、マスクを介して通過した紫外線レーザーの干渉光を当てて裸ファイバ中にOH基を生じさせる。FBG加工部は長さ約10mm、干渉光の格子間隔は約0.5μで約2000本である。マスクを変えることにより異なる干渉光の格子間隔をえることができ、その結果、光ファイバの所定区間毎に、異なる光学特性のFBG加工部を種々作り込むことが可能である。
干渉光照射後に、樹脂被覆24をリコートし、脱水素処理を行う。OH基の存在するところは屈折率が変化することとなる。上記のようにマスクを使い分けることにより、光学特性が異なるFBG1加工部27及びFBG2加工部28を得ることができる。
図2(a)は入射光20の波長分布を示すものであり、図2(b)はFBG1加工部27における反射光の波長を示す図であり、図2(c)はFBG2加工部28における反射光の波長を示す図であり、図2(d)は、透過光23の波長分布を示すものである。
入射光20としては図2(a)に示すように広い波長範囲(例えば1520nm〜1620nmのレ−ザ光)の光源から裸ファイバのコア26に入射される。このような入射に対して、先のようなグレーティング部を光ファイバ伝送路中に作り込む加工処理を行うことによって、FBG1加工部27では図2(b)に示すλ1のみが反射され、FBG2加
工部28では図2(c)に示すλ2のみが反射されるようになる。
その結果、(d)に示すように、光ファイバの透過光23は、入射光20の波長分布から、λ1とλ2が欠けたスペクトラムになる。各FBG部で反射した反射光λ1とλ2は入射側に戻ってくる。分光器(図示しない)で測定することによって、入射側では図2(e)に示すような二つのピ−クがあるスペクトラムを得ることができる。
ここで、上記のようなFBG加工部において、応力による歪や、温度変化に伴う歪みが生じると、図2(f)に示すように図2(e)で生じていた二つのピ−クがシフトする。より具体的には、FBG加工部における歪みによって、FBG1加工部27に伴う反射光λ1は反射光λ3にシフトし、FBG2加工部28に伴う反射光λ2は反射光λ4にシフトする。
FBG加工部を有する光ファイバのセンシング技術では、この波長シフト量が歪や温度の変量を表すことになる。ここで、歪の変量1μεに対し波長シフト量は約1.2pmであり、温度の変量1℃に対し波長シフト量は約12pmである。本発明の実施形態に係るセンサ、地震計では、上記のようなFBG加工部における、応力による歪や、温度変化に伴う歪みで、グレーティング部での反射光の波長がシフトすることを利用して、傾きや加速度、方位、振動等を検出しようとするものである。
次に、以上のような測定原理に基づくセンサの測定系について説明する。図3は本発明の実施形態に係るセンサの光学的測定システムの構成の一例を説明する図である。
図3に示す光学的測定システムにおいては、光ファイバ通信ケ−ブル32中に、異なる格子間隔でグレーティングが形成された2つのFBG加工部31が設けられている。(したがって、2つのFBG加工部31における反射波長は互いに異なっている。)また、このような2つのFBG加工部31は、被固定物30に取り付けられており、例えば、被固定物30における2箇所の伸張などを測定することが想定されている。被固定物30にFBG加工部31を取り付ける際には、FBG加工部31(グレーティング部)を含む区間の両端部のみを、FBG加工部31にテンションがかかるように取り付けるようにすることで、被固定物30の伸張などがFBG加工部31に伝達されるようにしている。
FBG用光測定器33は、レ−ザ光源36から発射されたレ−ザ光を分光器35、光スイッチ34を通して光通信ケ−ブル32に入射させる。入射光は、光通信ケ−ブル32で伝送され、被固定物30に取り付けられている2つのFBG加工部31まで到達する。そして、FBG加工部31からの反射光は光スイッチ34及び分光器35を通り、光波長測定ユニット37にて波長が測定される。一方、2つのFBG加工部31を透過した透過光についても、光スイッチ34を切り換えることで、分光器35→光波長測定ユニット37によって測定を行うことができる。
このような光学的測定システムの構成によれば、光スイッチ34によりル−プ化されているので、光通信ケ−ブル32に入射させる入射光を、逆の一端から入射させるような測
定も可能である。光通信回路の障害が発生した場合にはル−プ化による逆測定も可能であることは安全率が2倍になりメンテナンス上は極めて有効である。光通信ケ−ブル32とFBG用光測定器33の間に光チャンネルセレクタ(図示しない)を設けて多チャンネル化することもできる。安全率が向上することは言うまでもないが、多チャンネル化する分だけ測定に時間を要することになるので、動的な測定をする場合は留意する必要がある。
なお、レ−ザ光源36としては、連続発光する光源、パルス発光する光源のいずれも用いることができるが、後者の場合には、時分割処理を行い、反射光などを観測することとなる。
次に、FBG加工部を被固定物30に取り付ける際の固定方法についてより具体的に説明する。図4は本発明の実施形態に係るセンサにおける光ファイバの固定方法を説明する図である。耐熱光ファイバ61のFBG加工部を被固定物30に固定し、高温雰囲気下でこれを測定しようとするとき、耐熱光ファイバ61と被固定物30とをそのまま接着剤にて固定すると、精度良く測定を行うことはできない。その理由は、歪発生に伴う光ファイバの張力の増加と樹脂被覆24と接着剤の軟化により固定力が低下する点にある。固定力が低下すると、裸ファイバのクラッド25と樹脂被覆24の滑り、樹脂被覆24と接着剤の滑りが発生し易くなるためである。
そこで、本発明の実施形態に係るセンサでは、耐熱光ファイバ61におけるFBG加工部31(グレーティング部)を含む区間の両端部を、被固定物30に固定する場合に、金属管60を介して行うようにしている。図4は耐熱光ファイバ61と金属管60とを断面的にみた図であり、図4(A)→図4(B)→図4(C)の順で工程が進んでいく様子を示している。
図4(A)では、耐熱光ファイバ61の所望区間に金属管60を挿通した工程を示している。金属管60としては、その内径が耐熱光ファイバ61の外径より大きいものが用いられており、金属管60と耐熱光ファイバ61との間には、図示するような間隙62が設けられる。
次の図4(B)では、金属管60の周囲から応力をかけて、耐熱光ファイバ61とカシメ部63を形成する工程を示している。このようなカシメ工程によって、カシメ部63では間隙62が無くなるとともに光ファイバ樹脂の圧出部64ができる。このようなカシメ工程によれば、樹脂被覆24及び光ファイバ樹脂の圧出部64が樹脂のテ−パ部を形成することとなる。そして、耐熱光ファイバ61の動きに対して樹脂のテ−パ部は剪断力を発生することにより固定力を大きくできる。
図4(C)は、テ−パ部以外の間隙62に耐熱接着剤65を注入して固定力をさらに増加させる工程を示している。このような間隙62への耐熱接着剤65の注入工程は必要に応じて行い得る。
耐熱ファイバ61の被覆樹脂24の材質としてはシリコン、テフロンやポリイミド等であり、比較的耐熱性、耐腐食性が良好なものである。しかしながら、長期間に渡り使用する場合は、樹脂の漸次進行する熱分解により発生するガスや樹脂そのものを製造する際に使用する有機系溶媒の残存により発生するガス中に含まれる水素によって光ファイバの伝送損失が増加する場合がある。従って、本発明の実施形態に係るセンサを高温下使用する際には、使用する温度以上で予め熱処理してガス発生原を除去しておくことが望ましい。
次に、上記のように金属管60が固着された耐熱ファイバ61を被固定物30に固定する方法についてより詳しく説明する。図5は本発明の実施形態に係るセンサにおける光フ
ァイバの固定方法を説明する図である。
図5は耐熱光ファイバ61と金属管60と被固定物30とを断面的にみた図であり、図5(A)→図5(B)→図5(C)の順で工程が進んでいく様子を示している。図5(A)は、耐熱光ファイバ61におけるFBG加工部70(グレーティング部)を含むように、金属管60を耐熱光ファイバ61に挿通して、FBG加工部70の区間の両端部において、カシメ部63を形成する工程を示している。
図5(B)は、金属管60のカシメ部63が形成された近傍を被固定物30に対して、固定部71で固定する工程を示している。金属管60と被固定物30との固定部71は、被固定物30が金属である場合はハンダ、溶接やセラミックボンド等の耐熱接着剤による固定部とする。このような固定部71が設けられた本発明に係るセンサ、地震計によれば、高温環境下における信頼性が向上する。
図5(C)は、耐熱光ファイバ61における両方のカシメ部63の間の金属管60を除去し光ファイバ露出部72を設ける工程を示している。金属管60自身が被固定物30の変状に対して、支持構造として働き、正確な測定値が得られない場合は、この間の可撓性が必要である。このようなことが想定されない場合には、図5(B)に示すような状態でも、測定を行うことができる。図5(B)に示す状態で、測定を行うことができる場合には、金属管60によって、FBG加工部70(グレーティング部)を適切に保護できるメリットがある。
次に、FBG加工部70(グレーティング部)を含む耐熱ファイバ61を被固定物30に固定する他の態様について説明する。図6は本発明の実施形態に係るセンサにおける光ファイバの被覆処理部の固定方法を説明する図である。図6は耐熱光ファイバ61と被固定物30とを断面的にみた図であり、図6(A)→図6(B)の順で工程が進んでいく様子を示している。
図6(A)は耐熱光ファイバ61の所定の位置の樹脂被覆24を除去し、裸ファイバのクラッド26に金属の溶射やメッキ等で金属被膜を形成し光ファイバの被覆処理部90を形成する工程を示している。このように図6に示す固定方法においては、金属管60を使用せず、金属被膜を利用する。
図6(B)は光ファイバの被覆処理部90と被固定物30との間を固定する固定部91を設ける工程を示している。このような固定部91は、被固定物30が金属である場合はハンダ、溶接やセラミックボンド等の耐熱接着剤を用いる固定部とする。図6に示す工程方法では、金属管60の支持構造としての影響を考慮する必要がないので、高感度の測定が可能になる。
これまでに説明してきた要素技術を用いることで、以下に説明する本発明の実施形態に係るセンサ、地震計を実現することができる。次に、本発明の実施形態に係るセンサを加速度計や傾斜計として用いる構成について具体的に説明する。
図7は本発明の実施形態に係るセンサによる加速度計及び傾斜計の構造を示す図である。このような加速度計及び傾斜計においては、インコロイ(登録商標)製の耐圧容器100内に、傾斜や加速をセンシングのための構成が収容されておいる。耐圧容器100内のコイルスプリング105(弾性部材)の一端側には、耐圧容器100の中空部の内壁部が固定されており、コイルスプリング105の他端側には錘103が固定されている。このような錘103は、耐圧容器100の傾きや加速に対して可動可能となっており、錘103の動きによってコイルスプリング105が弾性変形するようになっている。
耐圧容器100の光ファイバ導入管101から、複数のFBG加工部が設けられた耐熱光ファイバ61が耐圧容器100内に導入される。耐圧容器100に加速度や傾斜が加わると、錘103によってコイルスプリング105が弾性変形するが、本発明の実施形態に係るセンサは、この弾性変形を歪検知用FBG加工部104で検知し、この検知結果に基づいて、加速度や傾斜を求めるようにしている。
耐熱光ファイバ61としては、シリコン、テフロンやポリイミド等によって被覆されたものが用いられており、これにより本発明の実施形態に係るセンサやこれを用いた地震計は、地中の高温環境における耐熱性や、硫化水素による腐食に対する耐性が良好となる。
耐圧容器100内には、コイルスプリング105の弾性変形を検出するために歪検知用FBG加工部104が、そして、耐圧容器100内の温度を検出するために温度検知用FBG加工部102が設けられる。ここで、歪検知用FBG加工部104、温度検知用FBG加工部102としては、歪みを受けていない状況におけるFBG部による反射波長がそれぞれ異なるものが用いられる。そして、本発明の実施形態に係るセンサにおいては、異なる反射波長をモニタすることによって、それぞれのFBG加工部の応力による歪みや温度(による歪み)を独立的に検知することができるようになっている。また、歪検知用FBG加工部104をコイルスプリング105に固定する方法についてはこれまでに説明した任意の方法を採用することができる。
図7に示す例では、4つの歪検知用FBG加工部104が、それぞれの歪検知用FBG加工部104を含む区間の両端部でテンションがかけられた状態でコイルスプリング105に固定され、1つの温度検知用FBG加工部102が、テンションがかからない状態で配設されている。歪検知用FBG加工部104は、コイルスプリング105の外周囲を略4等分するように配され、それぞれのFBG部が鉛直方向となるように、4つ取り付けられている。
なお、図7に示す実施形態においては、歪検知用FBG加工部104を、コイルスプリング105の外周囲を略4等分するように配するようにしたが、コイルスプリング105などの弾性部材の弾性変形を検出するために、弾性部材に取り付ける歪検知用FBG加工部の数、及び、歪検知用FBG加工部を弾性部材に取り付ける態様は、この他の態様であってもよい。
本発明の実施形態に係るセンサにおいては、コイルスプリング105の弾性変形を歪検知用FBG加工部104で検知し、この検知結果に基づいて、パーソナルコンピュータ7が所定の演算を行うことによって、耐圧容器100の傾斜状況や、耐圧容器100に加えられた加速度などを導出することが可能となる。なお、この演算を行う際には、温度検知用FBG加工部102によって、温度の影響のみによるFBG部の歪みを検知し、この温度検知用FBG加工部102の検知結果を用いて温度補正を行うようにしている。このように、本発明に係るセンサ及びそのセンサを用いた地震計によれば、温度を検知するための温度検知用FBG加工部102が設けられているので、FBG加工部の温度変化に伴う補正を行うことが可能となり、高温環境下でも精度の高い計測を行うことが可能となるのである。
このように、本発明に係るセンサ及びそのセンサを用いた地震計によれば、温度を検知するための、歪検知用とは、異なる温度検知用FBG加工部102が設けられているので、温度変化に伴う補正を行うことが可能となる。
ところで、高圧環境下では、耐熱光ファイバ61のガラス部に水素が侵入しOH基を作
り、その光学特性を劣化させてしまう、という問題がある。そこで、センサを高圧環境下で用いる場合には、耐圧容器100内にアルゴンガス、窒素ガスなどのガスをパージすることによって、耐熱光ファイバ61のメンテナンスを行うようにする。洗浄ガス導入管107は、耐熱光ファイバ61のメンテナンス用ガスを耐圧容器100内に導入するためのものであり、洗浄ガス排出管106はガスを耐圧容器100から排気するために用いるものである。
以上のように構成される本発明の実施形態に係るセンサによれば、鉛直方向に対する傾斜及び加速度は4個の歪検知用FBG加工部104の変状を総合的に評価することによって求めることが可能である。歪検知用FBG加工部104の温度補正は温度検知用FBG加工部102の検出する温度によって行う。この温度検知用FBG加工部102は固定せずフリ−な状態(ぶら下がり状態等)で、歪を受けない状態で設置されている。
本発明の実施形態に係るセンサを、傾斜計、加速度形として用いる場合の手順について説明すると、まず、耐圧容器100を地上で水平状態とし、この状態でそれぞれの歪検知用FBG加工部104からの反射波長を初期値として登録しておく。この初期値についての温度依存性がある場合には、センサを地中などにセットする前に、予め測定しておく必要がある。地中に設置後、耐圧容器100が振動を受ける前は4方向の出力値から傾斜が測定できる傾斜計になる。振動を受けた場合は錘103の慣性と耐圧容器100の相対的な動きをFBG用光測定器33で波長シフト量として測定する。パーソナルコンピュータ7などにて歪値とした後、加速度値に変換処理する。振動数、振幅、振動エネルギ−等の解析も必要に応じて行う。なお、計側周波数範囲は、コイルスプリング105の弾性定数や錘103の質量等を調整することで設定する。
なお、地中で本発明の実施形態に係るセンサを用いる場合には、硫化水素を含む水、高温、高圧や、これらに伴う樹脂の熱分解、水素発生等などの予測し得ない要因がある。光ファイバは容易に水素を吸収し伝送損失を増加させ、通信性能が劣化する。これを防止しするために、洗浄ガス排出管106、洗浄ガス導入管107を用いて、アルゴンや窒素等の洗浄ガスを流す。光スペクトラムアナライザで水素吸収による吸収損失は容易に測定可能であるので、吸収損失の進行状況に合わせて、定期的且つ間欠的に洗浄することも可能である。
次に、FBG加工部(グレーティング部)が形成されている耐熱光ファイバ61をスプリングコイルなどの弾性部材に固定する種々の態様について説明する。図8は本発明の実施形態に係るセンサにおけるコイルスプリングへの歪検知用FBG加工部の固定方法を説明する図である。
図8(A)乃至図8(C)のいずれの場合についても、上部のスプリングコイルバネ支持部40(任意のもの。例えば、錘などの自由端側)にコイルスプリングの一端が、下部のスプリングコイルバネ支持部40(任意のもの。例えば、容器などの固定端側)にコイルスプリングの他端が固定されている場合について説明している。
図8(A)はスプリングコイル長軸方向と平行の方向に歪検知用FBG加工部41を設置した例である。スプリングコイルに、歪検知用FBG加工部を取り付ける際には、スプリングコイルの弾性変形に伴い、歪検知用FBG加工部に応力がかかるような形態で、取り付けを行う。このような歪検知用FBG加工部41によれば、スプリングコイルの長軸方向の弾性変形を直接的に検出することが可能となる。
図8(A)の態様で歪検知用FBG加工部をスプリングコイルに取り付ける場合には、図5(C)に示すような歪検知用FBG加工部が金属管60から露出したタイプのもの、
又は、図6(B)に示すようなFBG加工部70の近傍に金属管60がなく、可撓性に優れたタイプのものを採用することが望ましい。図8(A)に示すように、歪検知用FBG加工部41をスプリングコイル長軸方向と平行の方向に取り付けることで、スプリングコイルの弾性変形を高感度で検出することが可能となる。
図8(B)はスプリングコイルのコイルスパイラル方向と略平行な方向に歪検知用FBG加工部42を設置した例である。この場合においても、スプリングコイルに歪検知用FBG加工部を取り付ける際には、スプリングコイルの弾性変形に伴い、歪検知用FBG加工部に応力がかかるような状態で、すなわち、歪検知用FBG加工部が宙ぶらりで、弛んだ状態とならないように、取り付けを行う。このような歪検知用FBG加工部42によれば、コイルスパイラル方向の伸張を検出することが可能となる。図8(B)に示すように、歪検知用FBG加工部42をコイルスパイラル方向と略平行な方向に取り付けた場合には、広範囲にわたるスプリングコイルの弾性変形を検出することが可能となる。
図8(C)は金属管46にてスプリングコイル44を作製し、金属管46の中空状内部に歪検知用FBG加工部43を設置した例である。この場合、スプリングコイル44の金属管46中空状内部に、歪検知用FBG加工部43が形成された耐熱光ファイバ61を挿通した上で、この耐熱光ファイバ61に該中空状内部でテンションがかかった状態で、スプリングコイル44の両端部と耐熱光ファイバ61とを(耐熱性)接着剤などで一体的に封止するようにして形成する。また、スプリングコイル44の両端部は、それぞれに対応するスプリングコイルバネ支持部40と固定し、固定部45とする。このように設置された歪検知用FBG加工部43によれば、スプリングコイル44の全体的な弾性変化を検出することが可能となる。図8(C)に示すように、歪検知用FBG加工部43を金属管46のスプリングコイル44に封止し取り付けた場合には、スプリングコイル全体の平均的な歪検知が可能であり安定した測定用に適している。
いずれの場合も被固定物30に直接固定することは困難であり、スプリングコイルバネ支持部を介して固定する方法が望ましい。図8(C)の場合の固定部は光ファイバ、金属管と支持板の固定部45とする方が望ましい。
さて、本発明に係るセンサや地震計をケ−シング3内で安定的に固定させるために、クランパ部を設けることは前述したが、このようなクランパ部においても、これまで説明した歪検知用FBG加工部を採用することにより、機能性に優れるものを提供することができるようになる。以下、説明する。図9は本発明の実施形態に係る地震計で用いる、同じ圧力によって動作するクランプ部を有するクランパの構造を示す図である。
クランパのケーシングとなる耐圧容器100には、クランプ部53と中空可動ロッド54とストッパ55とが一体となった部材が設けられており、耐圧容器100に送り込まれる流体(気体、液体のいずれも利用可)によって、耐圧容器100外の圧力に抗して、当該部材がA方向に動作し、ケーシング3などにクランプ部53が圧接することにより、耐圧容器100自身を安定的に固定するものである。なお、図9の例では、前記部材は2つ設けられているが、これは任意の数設けることができる。また、クランプ部53の形状は、ケーシング3の内壁に沿うような形状とすることもできる。ストッパ55は、A方向への動作を規制するものである。
耐圧容器100と中空可動ロッド54との間にはシ−ル56が設けられることによって、気密を保ちながらも中空可動ロッド54が摺動することができるようになっている。また、耐圧容器100には、耐圧容器100に流体を送り込むための流体導入管51と、耐圧容器100から流体を排出させるための流体排出管50が設けられている。また、耐圧容器100には光ファイバ導入管101が設けられており、耐熱光ファイバ61を耐圧容
器100内部に導入することができるようになっている。
耐圧容器100内に導入された光ファイバ導入管101には、計3つのFBG加工部が設けられている。耐熱光ファイバ61は、中空可動ロッド54を挿通されることによって、クランプ部53内の中空部に圧力検知用FBG加工部52を配すると共に、温度検知用FBG加工部102を耐圧容器100内の空間に応力がかからない状態で配するようにしている。圧力検知用FBG加工部52はクランプ部53内の中空部に固定されており、クランプ部53がケーシング3などに圧接することによって生じるクランプ部53の変形を検知するものであり、温度検知用FBG加工部102は耐圧容器100内の温度を検知するものである。
ここで、2つの圧力検知用FBG加工部52、温度検知用FBG加工部102としては、歪みを受けていない状況におけるFBG部による反射波長がそれぞれ異なるものが用いられる。そして、本発明の実施形態に係るクランパにおいては、異なる反射波長をモニタすることによって、それぞれのクランプ部53が受ける応力や温度(による歪み)を独立的に検知することができるようになっている。
以上のような、流体排出管50、流体導入管51と光ファイバ導入管101を備えた耐圧容器100の内部に流体圧力で移動するクランプ部53、中空可動ロッド54及びストッパ55を有してなり、地震計等の杭への固定装置として機能するクランパによれば、坑内で地震計を安定的に設置することできる。
また、クランプ部53の内部には圧力検知用FBG加工部52が設置してあり、坑に充満している水1の水圧を測定するとともに、クランプ部53が動き、裸杭もしくはケ−シング3に押しつけられた時点で圧力変動を感知する。中空可動ロッド54と耐圧容器100との間には設けられているシ−ル56部材としては、オ−リングもしくはラビリンスパッキンで、シ−ル56の材質としてはテフロンもしくは金属が望ましい。耐圧容器100内の圧力が外圧より大きい場合は、クランプ部53はストッパ55に当たるまでA方向に押し出され、小さい場合は、A’方向にクランプ部53が耐圧容器100の壁に当たるまで縮む。流体排出管50及び流体導入管51は地上まで繋がっており、耐圧容器100内の圧力調整は地上にて行う。また、温度検知用FBG加工部102が耐圧容器100内に設置されているので、耐圧容器100内の温度のモニタ及び圧力検知用FBG加工部52で検知する圧力値の補正を行うことが可能となる。クランパ機構は複数方向に押し出される構造で、クランパの外側の接触部の形状は裸杭もしくはケ−シング3の内側形状とほぼ同一であることが望ましい。
次に、クランパの他の実施形態について説明する。図10は本発明の実施形態に係る地震計で用いる独立した圧力によって動作する複数のクランプ部を有するクランパの構造を示す図である。図10に実施形態において、図9と同様の参照番号が付された構成は同様のものであり、機能も同じであるので説明を割愛する。図10に示すクランパが、先の実施形態に係るクランパと相違する点は、耐圧容器100が圧力隔壁81によって隔てられると共に、圧力隔壁81によって隔てられた空間のそれぞれに、独立してクランプ部53に関連する構造が設けられている点である。
図10に示すようなクランパにおいては、それぞれの独立空間内の圧力を調整することで、2つのクランプ部53のそれぞれをA−A’方向、B−B’方向に独立して動作させることが可能となる。なお、図10に示す実施形態においては、耐圧容器100内を2つの独立した空間とするものであるが、耐圧容器100内に2つより多い独立空間を設けるようにしてもよい。
図9に示すクランパ構造は同圧力による単一クランパであるが、図10に示すものは、耐圧容器100内に圧力隔壁81を設けることにより各々異なる圧力で動かすことのできるクランパ構造である。クランパ機構は複数方向に押し出される構造で、クランプ部53の外側の接触部の形状は裸杭もしくはケ−シング3の内側形状とほぼ同一であることが望ましい。
次に、本発明に係るセンサを方位計として用いる実施形態について説明する。図11は本発明の実施形態に係るセンサによる方位計の構造を示す図である。センサを方位計として用いる場合、センシング部を内包するケーシングとしては、非磁性体で構成される非磁性体圧力容器113を用いる。この非磁性体圧力容器113の互いに向き合う内壁のそれぞれにスプリング力調整部111を配し、これらに2つのコイルスプリング105の一端を固定し、2つのコイルスプリング105の他端には磁針盤112を、互いのコイルスプリング105で挟むようにして固定する。光ファイバ導入管101から導入された耐熱光ファイバ61には、計3つのFBG加工部を設けておき、2つは歪検知用として利用するために、それぞれのコイルスプリング105に固定(歪検知用FBG加工部104)し、1つは温度検知用として応力を受けない状態で非磁性体圧力容器113内の空間に配する(温度検知用FBG加工部102)。なお、歪検知用FBG加工部104をコイルスプリング105に取り付ける方法としては、図8(B)で説明した方法を用いることが好ましいが、図8(A)や図8(C)で説明した方法ももちろん採用することができる。
ここで、2つの歪検知用FBG加工部104、温度検知用FBG加工部102としては、歪みを受けていない状況におけるFBG部による反射波長がそれぞれ異なるものが用いられる。そして、本発明の実施形態に係るセンサにおいては、異なる反射波長をモニタすることによって、それぞれのFBG加工部の応力による歪みや温度(による歪み)を独立的に検知することができるようになっている。
なお、2つのコイルスプリング105はスプリング力調整部111を介して非磁性体圧力容器113内に取り付けるようにしているが、2つのコイルスプリング105を非磁性体圧力容器113内壁に直接的に取り付けることも可能である。また、歪検知用FBG加工部104をより多く、コイルスプリング105に配するようにすれば、より確度高く方位を検出することが可能となる。
以上のように構成される方位計においては、非磁性体圧力容器113が設置される状況に応じて、磁針盤112がX方向又はY方向に回転することとなる。すると、2つのコイルスプリング105が弾性変形することとなる。より具体的には、磁針盤112が回転すると、上側のコイルスプリング105が縮み、下側のコイルスプリング105が伸びる状態となるか、あるいは、上側のコイルスプリング105が伸び、下側のコイルスプリング105が縮む状態となる。2つのコイルスプリング105に設けられている歪検知用FBG加工部104によって、これらのコイルスプリング105の変形を検知し、さらに温度検知用FBG加工部102からの温度検知情報で補正を行い、磁針盤112の回転状況を把握することがで、図11に示すセンサを方位計として用いることが可能となる。
図11に示す方位計は、光ファイバ導入管101、洗浄ガス導入管107(図示せず)洗浄ガス排出管106(図示せず)を備えた非磁性体圧力容器112内に、歪検知用FBG加工部を取り付けてあるコイルスプリング114を鉛直方向に2個設け、その間に磁針盤112を挟み込んで方位計としたものである。コイルスプリング105にはスプリング力調整部111を設け、上下方向のスプリング力をなるべく小さい力でバランスとるように調整している。磁針盤112、コイルスプリング105及びスプリング力調整部111は一体化する。上下のコイルスプリング105のスパイラル方向は必要とされる精度と強度によって使い分けることが好ましい。非磁性体圧力容器113内には温度検知用FBG
加工部102も設置されている。
次に、本発明に係るセンサを加速度計として用いる実施形態について説明する。図12は本発明の実施形態に係るセンサによる加速度計の構造を示す図である。なお、図12に示す加速度計は、基本的に一軸方向の加速度を検出することを想定している。さて、このようなセンサを加速度計として用いる場合、センシング部を内包するケーシングとしては、インコロイ(登録商標)製の耐圧容器100を用いる。この耐圧容器100の互いに向き合う内壁のそれぞれにスプリング力調整部111を配し、これらに2つのコイルスプリング105の一端を固定し、2つのコイルスプリング105の他端には錘103を、互いのコイルスプリング105で挟むようにして固定する。光ファイバ導入管101から導入された耐熱光ファイバ61には、計3つのFBG加工部を設けておき、2つは歪検知用として利用するために、それぞれのコイルスプリング105に固定(歪検知用FBG加工部104)し、1つは温度検知用として応力を受けない状態で耐圧容器100内の空間に配する(温度検知用FBG加工部102)。なお、歪検知用FBG加工部104をコイルスプリング105に取り付ける方法としては、図8(A)で説明した方法を用いることが好ましいが、図8(B)や図8(C)で説明した方法ももちろん採用することができる。
ここで、2つの歪検知用FBG加工部104、温度検知用FBG加工部102としては、歪みを受けていない状況におけるFBG部による反射波長がそれぞれ異なるものが用いられる。そして、本発明の実施形態に係るセンサにおいては、異なる反射波長をモニタすることによって、それぞれのFBG加工部の応力による歪みや温度(による歪み)を独立的に検知することができるようになっている。
なお、2つのコイルスプリング105はスプリング力調整部111を介して耐圧容器100内に取り付けるようにしているが、2つのコイルスプリング105を耐圧容器100内壁に直接的に取り付けることも可能である。また、歪検知用FBG加工部104をより多く、コイルスプリング105に配するようにすれば、精度高く加速度を検出することが可能となる。
以上のように構成される加速度計においては、耐圧容器100が受ける加速度に応じて、錘103がC−C’方向に変位することとなる。すると、2つのコイルスプリング105が弾性変形することとなる。2つのコイルスプリング105に設けられている歪検知用FBG加工部104によって、これらのコイルスプリング105の変形を検知し、さらに温度検知用FBG加工部102からの温度検知情報で補正を行い、耐圧容器100の加速度を把握することがで、図12に示すセンサを加速度計として用いることが可能となる。
図12に示す加速度計は、光ファイバ導入管101、洗浄ガス導入管107(図示せず)洗浄ガス排出管106(図示せず)を備えた耐圧容器100内に、歪検知用FBG加工部を取り付けてあるコイルスプリング114を鉛直方向に2個設け、その間に錘103を挟み込んだ構成とした加速度計である。コイルスプリングのスプリング力調整部111を設け、上下方向のスプリング力は計測しようとする加速度範囲を考慮してバランスとる。錘103、コイルスプリング105及びスプリング力調整部111は一体化する。上下のコイルスプリング105のスパイラル方向は必要とされる精度と強度によって使い分ける。耐圧容器100内には温度検知用FBG加工部102が設置されている。
次に、本発明に係るセンサを加速度計として用いる他の実施形態について説明する。図13は本発明の実施形態に係るセンサによる傾斜計/加速度計の構造を示す図である。図12に示す加速度計の実施形態では、一軸方向に係る加速度を検出するものであったのに対して、図13に示す実施形態は3軸方向について加速度を検出するものである。また、図13(A)と図13(B)とは歪検知用FBG加工部104をコイルスプリング105
に固定する方法が異なり、その他は同一の構成となっている。
このような3軸方向の加速度計においては、ケーシングとしてインコロイ(登録商標)製の略立方体形状をなす耐圧容器100を用いる。この耐圧容器100内に設けられている略立方体形状の空間の、6つの内壁のそれぞれにコイルスプリング105の一端を固定し、それぞれのコイルスプリング105の他端には錘103を固定する。図13において、紙面に対して垂直な方向にもコイルスプリング105が設けられているものであり、したがって、錘103は耐圧容器100の6つの内壁から延在する6つのスプリングで支えられている状態となる。
光ファイバ導入管101から導入された耐熱光ファイバ61には、計7つのFBG加工部を設けておき、6つは歪検知用として利用するために、それぞれのコイルスプリング105に固定(歪検知用FBG加工部104)し、1つは温度検知用として応力を受けない状態で耐圧容器100内の空間に配する(温度検知用FBG加工部102)。
なお、歪検知用FBG加工部104をコイルスプリング105に取り付ける方法としては、図8(A)(図13(A)に対応)に示した方法、又は図8(B)(図13(B)に対応)に示した方法のいずれについても用いることができる。なお、歪検知用FBG加工部104をより多く、コイルスプリング105に配するようにすれば、精度高く加速度を検出することが可能となる。
ここで、6つの歪検知用FBG加工部104、温度検知用FBG加工部102としては、歪みを受けていない状況におけるFBG部による反射波長がそれぞれ異なるものが用いられる。そして、本発明の実施形態に係るセンサにおいては、異なる反射波長をモニタすることによって、それぞれのFBG加工部の応力による歪みや温度(による歪み)を独立的に検知することができるようになっている。
以上のように構成される加速度計においては、耐圧容器100が受ける加速度に応じて、錘103が3次元的に変位することとなる。すると、6つのコイルスプリング105が弾性変形することとなる。そして、6つのコイルスプリング105に設けられている歪検知用FBG加工部104によって、それぞれのコイルスプリング105の変形具合を検知し、さらに温度検知用FBG加工部102からの温度検知情報で補正を行い、耐圧容器100の加速度を把握することがで、図13に示すセンサを3軸方向の加速度計として用いることが可能となる。
図13に示すセンサは、光ファイバ導入管101、洗浄ガス導入管107(図示せず)洗浄ガス排出管106(図示せず)を備えた耐圧容器100内に、図12に示すコイルスプリング114を鉛直方向、東西方向及び南北方向に各々2個、合計6個設け、中央部に錘103を挟み込んでいる傾斜計/加速度計である。コイルスプリングのスプリング力調整部111(図示せず)を設けた構成とすることもできる。各々の方向のスプリング力は計測しようとする傾斜/加速度範囲を考慮してバランスとる。錘103、コイルスプリング114及びスプリング力調整部111は一体化する。温度検知用FBG加工部102も設置されている。図13(A)は各々のコイルスプリング105で、コイル長軸方向に歪検知用FBG加工部120、121、122を設置した場合を示している。また、図13(B)は各々のコイルスプリング105で、コイルスパイラル方向に歪検知用FBG加工部42を設置した場合を示している。図13(A)は高感度に傾斜/加速度を検出する用途に、また、図13(B)は広範囲に傾斜/加速度を検出する用途に、と使い分けることができる。図8(C)で示したタイプの、6つのスプリングコイル44を用いて、3軸の傾斜/加速度を構成することもでき、この場合、安定測定用として用途として利用できる。
次に、地震計8のより詳しい構造について説明する。図14は本発明の実施形態に係るセンサを用いた地震計(ハイブリッド型高温用地震計)の構造を示す図である。
このような地震計8は、上段から、図11に示す方位計130、図10に示すクランパ131、図13に示す傾斜計/加速度計132及び図7に示す傾斜計/加速度計133が一体的に接合された構造となっている。これまで説明した高温環境下で用いることができる複数のセンサを一体としたことから、これをハイブリッド型高温用地震計と称することもできる。
なお、方位計130に設けられる洗浄ガス排出管106、洗浄ガス導入管107及び光ファイバ導入管101、クランパ131に設けられる流体排出管50、流体導入管51及び光ファイバ導入管101、傾斜計/加速度計132に設けられる洗浄ガス排出管106、洗浄ガス導入管107及び光ファイバ導入管101、傾斜計/加速度計133に設けられる洗浄ガス排出管106、洗浄ガス導入管107及び光ファイバ導入管101は全て図示省略している。
ところで、方位計130、クランパ131、傾斜計/加速度計132、傾斜計/加速度計133のそれぞれに用いる耐熱光ファイバ61はそれぞれ独立したものを用いることもできるし、全て、又はいずれかを共用することもできる。耐熱光ファイバ61を独立的に設けるようにすれば、構成は複雑となるが、互いのセンサの故障時に、それぞれのセンサがバックアップとして機能するので安全度が増すこととなる。一方、耐熱光ファイバ61を共用する形で用いれば構成は単純とすることができるが、前記のような安全度は低減することとなる。
同様のことは、洗浄ガス排出管106、洗浄ガス導入管107などの配管についても、言えることであり、それぞれの配管を独立的に設けるようにすれば、構成は複雑となるが、互いのセンサの故障時に、それぞれのセンサがバックアップとして機能するので安全度が増すこととなる。一方、配管を共用する形で用いれば構成は単純とすることができるが、前記のような安全度は低減することとなる。
なお、洗浄ガス排出管106、洗浄ガス導入管107などの配管系は共通仕様よりも単独仕様の方が望ましい。一つの測定機構が破壊を受けた時、即全ての測定機構が使用不能になることを防止するためである。
また、上記のような地震計8(ハイブリッド型高温用地震計)によれば、方位計や傾斜計を有するものであるので、設置状況を的確に把握することが可能となる。
次に、上記のような地震計8に耐熱光ファイバや上記配管系を導くための地震計接続ライン4について説明する。図15は本発明の実施形態に係る地震計で用いる地震計接続ラインの構造を示す図である。図15は地震計接続ライン4の断面部を示している。図15に示すように、地震計接続ライン4の外層150内には、高圧流体の搬送管151、洗浄用ガスの搬送管152、光ファイバ用のジャケット管153がそれぞれ設けられ、さらに光ファイバ用のジャケット管153の中には耐熱光ファイバ61が配されるようになっている。図15(B)は、図15(A)に比べて、より多くの搬送管やジャケット管を配するようにした場合の構造を示すものである。
図15に示す地震計接続ライン4(特に耐熱光ファイバ61は高温・高圧・高負荷・高腐食性雰囲気に曝されるので高価とならざるを得ないが、)は、高温・高圧・高負荷・高腐食性雰囲気に曝されことになる。光ファイバによる高温用地震計を用いて、高精度化・
広範囲適用化且つ長期間安定化した観測システムを実現するには、適切な地震計接続ライン4の適用は不可欠である。複数の金属管を目的別に使い分け、耐熱性、耐硫化水素性、耐圧性、耐負荷性を得るために以下の点に着目して構成することが好ましい。
(1)耐熱性100℃〜最大250℃を確保するために、外層150の材質はテフロンとする。また、耐熱光ファイバ61の樹脂被覆24の材質は、シリコン、テフロンもしくはポリイミドとする。長期的安定性を必要とする場合は、予め地震計8の適用温度以上で脱ガス処理を実施した耐熱樹脂被覆を適用する。
(2)耐硫化水素性を確保するために外層150はテフロン、金属管で構成する高圧流体の搬送管151、洗浄用ガスの搬送管152の材質はインコロイ(登録商標)とする。
(3)耐圧性及び耐負荷性についてはインコロイ(登録商標)の高温における機械的特性を評価し、金属管外径と肉厚を決定する。200℃、地中2000m(水圧約20MPa)の場合、外径2.4mm、肉厚0.5mmの4本で適用可能である。
(4)光ファイバ導入管、高圧流体配管系、洗浄ガス配管系の使い分けを考慮すると少なくとも5管、好ましくは15管以上が望ましい。
(5)耐負荷性については、別途テンションメンバとしての吊り線ケ−ブルを適用する場合は金属管の外径及び肉厚は小さくすることができる。しかしながら、吊り線ケ−ブルの耐硫化水素性に留意する必要がある。
次に、以上のように構成される地震計8を含む計測システムに、さらに分布型ファイバセンサを適用することによって、より広範な観測を行うことを可能とする実施形態について説明する。まず、上記のような分布型ファイバセンサの原理について説明する。図16は分布型光ファイバセンサの原理を説明する図であり、光ファイバに所定周波数のパルス光を入射したときの後方散乱光の周波数分布を示す図である。このような後方散乱光の種類としては、図示するように、レイリー散乱光、ブルリアン散乱光、ラマン散乱光が知られており、特にブルリアン散乱光は光ファイバの歪みによって、ラマン散乱光は光ファイバの温度によって、それぞれ散乱光の周波数がシフトすることが知られており、次の実施形態ではこのような現象を利用するものである。
図17は本発明の実施形態に係る地震計への分布型光ファイバセンサの適用例を示す図である。なお、図17は先の実施形態において説明した地震計接続ライン4と同等のものの斜視図であり、本実施形態では、このような地震計接続ライン4が地震計8の接続のために用いられている。
図17においては、高圧流体の搬送管151や、一部の光ファイバ用のジャケット管153については図示省略している。図17に示す実施形態においては、地震計接続ライン4の外層150外周にその長手方向に沿うようにして、耐熱光ファイバ61を挿通した金属管160を併設するようにしている。このような金属管160中の耐熱光ファイバ61には、レーザパルス光を定期的な間隔で入射し、その後方散乱光であるブルリアン散乱光を時分割で観測する。このような観測によって、金属管160のどの位置(どの深さ)でどのような応力を受けたかを把握することができるようなるため、地盤変状や地滑りなどの観測に好適なものとなる。
これは、ブリルアン後方散乱光を検出手段とした、歪に関する線分布センシングを行う実施形態であり、鉄製ケ−シング(外層150)の外側に金属管160入り耐熱光ファイバ歪センサを取り付けることにより、ケ−シングの変状をモニタすることが可能となる。これによれば、地震前後の変状把握に好適なものである。
また、光ファイバ用のジャケット管153内の耐熱光ファイバ61にも、レーザパルス光を定期的な間隔で入射し、その後方散乱光であるラマン散乱光を時分割で観測する。このような観測によって、地震計接続ライン4のどの位置(どの深さ)でどの程度の温度で
あるのかを把握することができるようなるため、地盤変状や地滑りなどの観測に好適なものとなる。
これは、ラマン後方散乱光を検出手段とした温度に関する線分布センシングを行う実施形態であり、光ファイバ用のジャケット管153内の光ファイバ1本をこれに供することができる。これまで説明した地震計8によれば、地震計8が設置された場所のみの温度を観測することとなるが、ラマン後方散乱光を用いた観測によれば、ボアホ−ル内(あるいは、ケーシング3内)の鉛直方向の温度分布を観測することができるようになる。
以上、本発明に係るセンサ及びそのセンサを用いた地震計によれば、第1のグレーティング部を有する光ファイバとして、耐熱光ファイバが用いられるので、地中の高温環境における耐熱性や硫化水素による腐食に対する耐性が向上する。
また、本発明に係るセンサ及びそのセンサを用いた地震計によれば、光ファイバのグレーティング部を含む区間の両端部を、耐熱性接着剤によって弾性部材に固定したので、高温環境下における耐久性・信頼性が向上する。
また、本発明に係るセンサ及びそのセンサを用いた地震計によれば、温度を検知するための第2のグレーティング部が設けられているので、光ファイバにおけるFBG加工部の温度変化に伴う補正を容易かつ高精度で行うことが可能となる。
また、本発明に係る地震計によれば、方位計や傾斜計を有するものであるので、設置状況を把握することが可能となる。
なお、本明細書においては、本発明に係るセンサを地震計として用いることを中心に説明したが、本発明に係るセンサは津波の計測などに用いても好適なものである。