JP5279826B2 - 異なるユーザによって使用される補聴器間で会話グループを構築する補聴器システム - Google Patents

Description

この発明は，異なるユーザによって使用される複数の補聴器間で会話グループを構築（確立）するシステム（a system for establishing a conversation group）に関する。

多くの状況において，少人数のグループの人たちは騒がしい環境においてコミュニケーションを図る必要がある。これは，パーティや会議において，広い室内で対になってまたは少人数のグループで集まって会話する場合にあてはまる。また，ダイニングやカフェテリアにおいて別々のテーブルに人々が集まる場合にもあてはまる。老人ホームの娯楽室において何人かがテレビを見たり，少人数で世間話をしたり，他方，ほかの人達がテーブルの周りにすわってトランプしているような場合等もあてはまる。

このような状況において外部雑音が問題となることがあり，上記の対のまたは少人数のグループの人たちのそれぞれは，自分たちの内部の会話からの音を大きくしつつ，好ましくはあらゆる邪魔な外部雑音を抑制することに，特に関心を持つ。

このような背景のもと，この発明は上述の問題を克服するシステムおよび方法を提供することを目的とする。

この発明によると，この目的は，異なるユーザによって使用される他の補聴器システムとともに会話グループを構築（確立）するように構成された補聴器システムによって達成され，上記補聴器システムは，関連リレー装置とともに用いられる（with associated relay device）補聴器を備え，上記リレー装置は上記補聴器と無線通信し，かつ第２の補聴器システムと無線通信するように構成されており，上記リレー装置は上記会話グループに参加可能な他の補聴器システムに関する情報を受信しかつ提示するように構成されており，上記リレー装置は上記会話グループへの受入れ（参加）のために上記第２の補聴器システムを選択する手段を備えている。

ここで，上記会話グループに参加している補聴器によってピックアップされるあらゆる音は，全行程を空気中伝播するのではなく，他の参加者に直接に無線送信することができる。したがって，あらゆる発話者からの音は，空気中を最大１〜２メートル伝播させてその後に他の補聴器のマイクロフォンによってピックアップさせるのではなく，その人物の口元から１５ｃｍ程度だけ離れた自己の補聴器によってピックアップして，会話グループに参加している他の補聴器に無線送信することができる。したがって，ピックアップされる前の音の減衰および邪魔な雑音の影響が大幅に低減され，発話の明瞭性が増大する。特に，リレー装置を用いることによって，通常の補聴器の内部送信機および受信機が可能な範囲（距離）（range）よりも長い範囲にわたって，この邪魔の少ない音を送信することができる。これらの送信機および受信機が１〜３メートル以上といった長い範囲にわたって通信するには，その送信機および受信機には，かなりの電流ドレインが，電源すなわち補聴器内の電池に課されることになる。したがって，リレー装置を用いることによって，補聴器の低電力狭範囲通信（low power, short range communication）を利用することができ，かつ他の補聴器および補聴器システムと強力な通信（high power communication）を行うことができる。このように，リレー装置への短い範囲（距離）の通信が必要とされるだけであるので，補聴器における送信パワーすなわち送信機の電力消費を最小限に抑えることができる。他方，リレー装置は一般に補聴器に比べてサイズが大きく，したがってより大きい容量の電池を搭載することができ，より強力な通信を共有通信ユニットと順に行うことができる。

この発明の好ましい実施態様において，上記システムは上記第２の補聴器システムまでの範囲（距離）を検出し，上記範囲検出に基づいて，上記会話グループに受入れる上記第２の補聴器システムを自動的に選択する手段を備えている。対面しているような互いに近いユーザの補聴器システム間で，自動的に会話グループを構築することができる。

この発明の特に好ましい実施態様において，上記リレー装置は上記補聴器を操作するための遠隔制御装置（a remote control）（リモートコントロール）内に統合されている。補聴器のユーザは，通常，遠隔制御装置を携帯しているので，この構成にメリットがある。したがって，必要なときに上記リレー装置を容易に利用することができる。さらに，遠隔制御装置は，一般に，補聴器それ自体と比較して共有通信ユニットと通信するために十分な容量の電池を搭載できるサイズを持つ。

他の好ましい実施態様において，上記他の補聴器システムに関する情報を受信しかつ提示する手段は，表示装置および／または音信号を発生する（emitting）手段を備え，これにより視覚的（映像的）および／または音響的提示が提供される。

他の好ましい実施態様では，上記リレー装置は，ローカル・エリア・ネットワークを用いて無線通信を構築するように構成されている。無線ローカル・エリア・ネットワークは，特に構築が簡単で，かつ比較的安価であるので，幅広い支持を獲得している。したがって，複数の補聴器ユーザの間で会話グループを構築することが便利になることがよくある場所の占有者にとって，未だ構築されていない場合に，必要な基盤整備を容易に構築できる。

他の好ましい実施態様では，上記リレー装置は，上記ローカル・エリア・ネットワークの存在を検出しかつ提示する手段を備え，したがってその存在の提示の受信に基づいて，ユーザはローカル・エリア・ネットワークとの無線接続を選択的に構築することができる。

好ましい実施態様では，上記ローカル・エリア・ネットワークの存在を検出しかつ提示する手段は，表示装置および／または音信号を出力する手段を備え，したがって可視的または音響的提示が提供される。

この発明の他の好ましい実施態様では，上記リレー装置は，上記ローカル・エリア・ネットワークとの接続が確立されている他の補聴器システムを提示する手段を備え，かつそのような補聴器システムを上記会話グループに受入れるための選択手段を備えている。この結果，この発明による補聴器システムのユーザは，上記リレー装置によって提供される潜在的な参加者の提示に基づいて，意図された参加者とともに，特定の会話グループを選択的に寄せ集めることができる。単に会話グループに参加している者に近いだけの非参加者を除外することができる。

他の好ましい実施態様において，上記ローカル・エリア・ネットワークとの接続が確立されている他の補聴器システムを提示する手段は，表示装置および／または音信号を発生する手段を備えており，これによりリレー装置は上述した提示をシンプルかつ直接的に提供することができる。

他の好ましい実施態様において，上記リレー装置は，上記他の補聴器システムと直接無線通信（direct wireless communication）を構築するように構成されている。近い位置のあらゆる補聴器システム間で会話グループを形成することができるという利点がもたらされる。

さらに好ましい実施態様において，上記補聴器は，ユーザの外耳道中において音をピックアップするマイクロフォンを備えている。特に補聴器のイヤプラグによって環境雑音から遮断される外耳道内において，補聴器ユーザの発話がピックアップされるので，非常に騒がしい環境において有利であり，好ましくは追加マイクロフォンが用いられる。

さらに他のこの発明による好ましい実施態様において，上記リレー装置は，少なくとも一つの内蔵マイクロフォン，好ましくは指向性マイクロフォンを備えている。補聴器ユーザが自分のリレー装置を自分の目の前に自分に向けて配置することができ，そうすることで，自分の補聴器の内蔵マイクロホンではなく，指向性マイクロフォンを自分の発話に向けることができる。しかしながら，さらに重要なのは，補聴器を使用していない者が会話グループに参加できるようにもなることである。たとえば，他の参加者の一人からリレー装置を借りて正面に配置すると，上記リレー装置を介してその人物の発話を他の補聴器ユーザが聞くことができる。

この発明の第２の態様はさらに，補聴器および関連リレー装置を備えた補聴器システムと，異なるユーザによって使用される複数の他の補聴器システムとの間で会話グループを構築する方法に関し，この方法は，上記リレー装置を用いて上記他の補聴器システムの存在を検出し，上記リレー装置において上記他の補聴器システムについての情報を受信し，上記リレー装置の使用によって上記他の補聴器システムの存在を提示し，上記リレー装置を用いて，上記会話グループへの受入れのために所望の数の上記他の補聴器システムを選択する各ステップを含む。

以下，この発明を，非限定的実施例に基づいて，概略的図面を参照しつつ，より詳細に説明する。

無線ローカル・エリア・ネットワークを用いた二つの会話グループからなるこの発明による複数の補聴器システムの状況を概略的に示している。 直接通信を用いた二つの会話グループからなるこの発明による複数の補聴器システムの状況を示している。 図１において使用されている補聴器システムを概略的に示している。

図１および図２の双方に，複数台の補聴器ＨＡ１，ＨＡ２，ＨＡ３，ＨＡ４およびＨ５が，それぞれ符号１，２，３，４，５が付されて示されている。補聴器１，２，３，４，５のそれぞれに，符号１１，１２，１３，１４および１５が付与されているリレー装置ＲＣ１，ＲＣ２，ＲＣ３，ＲＣ４およびＲＣ５がそれぞれ関連付けられており，これによってこの発明による対応する数の補聴器システムが形成されている。概略的にのみ示されている補聴器１，２，３，４，５は，一つの補聴器であっても，両耳システムであってもよく，両耳システムの場合には二つの補聴器が一つのそれぞれのリレー装置１１，１２，１３，１４，１５を共有する。これらの図において，図示されている補聴器システムの数は作図の便宜上５つであるが，実際上はいくつであってもよい。補聴器１，２，３，４，５とそのそれぞれのリレー装置１１，１２，１３，１４，１５との間の通信は，個別の無線通信２１，２２，２３，２４，２５を介して行われる。無線通信２１，２２，２３，２４，２５は双方向であって，低電力で動作し，狭い範囲でのみ行われる。典型的には，この範囲は１〜２メートルよりも狭く（短く），たとえば面と向かって話しをしている他のユーザに対応する補聴器システムなど，同一周波数上で近接通信する補聴器システム間の他の無線通信２１，２２，２３，２４，２５を妨害しないようになっている。すなわち，通常，他人を物理的に近づける程度に自然な限界があるので，この単純な空間的分割を利用して，他の通信を妨げる可能性が少ないかなりの低いパワーで各通信を行うことが好ましいところではあるが，当業者であれば，無線通信を互いに妨害しあうのを回避する他の手段があることも理解しよう。このような例として，たとえば，割り当てられたタイムスロットにおいて通信を実行する時分割（temporal separation），異なる割当て周波数上で通信を実行する周波数分割，またはこれらの両方の組み合わせがある。このような低出力リレー・システムの一例が，国際公開ＷＯ２００６／０７４６５５に記載されている。このシステムでは，リレー装置はコンピュータと双方向で通信する遠隔制御装置であり，上記コンピュータから補聴器に音声を送ることができる。

図１にはさらに，上記リレー装置１１，１２，１３，１４，１５が，通信リンク３１，３２，３３，３４，３５を用いてローカル・エリア・ネットワーク６のルータ１０と無線通信している様子が示されている。ローカル・エリア・ネットワークへの無線通信は，好ましくはＩＥＥＥ８０２．１１ａ／ｂ／ｇのいずれかの規格に基づくが，ローカル・エリア・ネットワークへの他の無線アクセス方式を想定することもできる。

ＩＥＥＥ８０２．１１ａ／ｂ／ｇ規格に基づく無線ローカル・エリア・ネットワーク，すなわちＷＬＡＮは，個人宅および公共の場所において幅広く利用されており，このような無線ローカル・エリア・ネットワークを提供するルータは，市場において低価格で容易に入手することができる。ルータ１０は最大可能範囲がおおよそ１０〜１００メートル，たとえば３０メートルである。したがって，ルータ１０を介した通信は，直接リンクと比べてかなり広範囲に利用可能となる。

概して，この明細書における用語「ローカル・エリア・ネットワーク」は，上述した無線方式ルータまたは他の適切な無線アクセス手段のような，少なくとも１つのベース・ユニットによる無線通信によって，適用範囲が提供されることを意味する。さらに，構成要素（コンポーネント）が「ローカル・エリア・ネットワーク上に存在する」と言及されている場合，その構成要素は，上記ベース・ユニットを用いたハンドシェイク手順を実行していると理解される。

さらに図１において，２つの会話グループが構築されていることが，破線によって示されている。一の会話グループは，補聴器１および２のそれぞれのリレー装置１１および１２を含み，これらは無線ローカル・エリア・ネットワーク６を通じて互いに通信する。他の全体で独立した会話グループは補聴器３，４，５のリレー装置１３，１４，１５を含み，リレー装置１３，１４，１５は同じローカル・エリア・ネットワーク６を介して互いに通信する。

この明細書における以下の記述では，補聴器１に基づく補聴器システムを参照する。特段明示しない限り，以下の説明は，補聴器２，３，４または５を含む他の補聴器システムにおいても同様に適用されることを当業者は理解しよう。

この発明による補聴器システムが図１のＷＬＡＮ６のような無線ローカル・エリア・ネットワークの範囲内に存在すると，これが補聴器システム，より詳細にはリレー装置１１によって検出される。ローカル・エリア・ネットワークの存在は，好ましくはユーザの自己のリレー装置１１の表示装置７上に提示され，ユーザはそのローカル・エリア・ネットワークに接続することができる。複数のローカル・エリア・ネットワークが同時に存在する場合，ユーザはその中から適切なものを選択することができる。たとえば，家と会社のように，いくつかの特定の無線ローカル・エリア・ネットワークの間をユーザが頻繁に移動するような場合には，自動的かつ優先的な接続を設けてもよい。すなわち，ユーザが自宅のローカル・エリア・ネットワークの範囲内にいるときには，自宅のローカル・エリア・ネットワークと，たとえば近隣のローカル・エリア・ネットワークとの選択を行う必要なしに，自宅のローカル・エリア・ネットワークに自動的に接続される。

これに代えて，ローカル・エリア・ネットワークの存在を，ユーザのリレー装置１１によって引起こされる音信号，たとえば，音（a sound），一連音（a sound sequence），または音声メッセージ（a spoken message）によって提示するようにしてもよい。この音信号は，リレー装置１１からのトリガ・コマンドに基づいて補聴器１から発生させてもよいし，リレー装置１１自体から発生させてもよい。後者の場合，リレー装置１１には音信号を発生するスピーカ（図示略）が設けられる。複数のローカル・エリア・ネットワークが同時に存在する場合，利用可能なローカル・エリア・ネットワークの数に対応する回数だけ同一の信号をリピートすることによって，これを音信号に反映させてもよいし，利用可能なローカル・エリア・ネットワークの数に対応する数の異なる音を，音信号に反映させてもよい。

ローカル・エリア・ネットワークに接続されると，その特定のローカル・エリア・ネットワーク上の他のユーザの存在を示す情報が，リレー装置１１の表示装置７に表示されることによって，ユーザに提示される。特定のローカル・エリア・ネットワーク上に存在するユーザの視覚的表現に代えてまたは加えて，たとえば，補聴器１またはリレー装置１１からユーザに送られる音声合成の使用によって，または上述したローカル・エリア・ネットワーク（一または複数）の存在を提示するのと同様にして，音声表現してもよい。

これによって，無線ローカル・エリア・ネットワークを通した無線通信が可能な他の補聴器システムを，ユーザは把握することができる。好ましくは，リレー装置１１は，ユーザの名前など，補聴器システムの分かりやすい識別情報を設定することができ，これにより他のユーザがそのユーザを容易に識別することができる。これに代えて，コンピュータなどの制御ユニット８が，補聴器システムのユニークな識別子に対応する分かりやすい名前を保存しておき，現在利用可能な，または無線ローカル・エリア・ネットワークにログオンしている潜在的参加者（potential participants）を，追跡できるようにしてもよい。このオプションも図１に示されている。制御ユニット８とローカル・エリア・ネットワーク６の無線ルータとの間の接続は無線である必要はなく，ケーブル接続９を介したものであってもよい。図３に示すリレー装置１１は，特に，スフェンド（Svend），クヌド（Knud）およびValdemar（ヴァルデマール）という人物に属する３つの異なる補聴器システムが示されている。これらの人物が，パーソナル会話グループの参加者として選択可能な人物である。表示装置７上のメニュー・システムと組み合わせて押しボタン７１，７２，７３，７４，７４，７５を用いることによって，ユーザはメニュー操作を行い，この選択を行うことができる。この選択実行のやり方の詳細は当業者が十分に把握している範囲内であって，この発明の一部を構成するものではない。したがって，当業者であれば，英数字パッドや，指でタッチする画面を，タイプ入力やメニュー操作に用いることができることを理解しよう。さらに，この発明の焦点は会話グループの構築であるが，表示装置７に他の項目を表示すること，特に，補助マイクロフォン・ユニットや，オーディオ・ストリーミング装置など，無線ローカル・エリア・ネットワーク上の他の関連装置を表示することを排除するものではないことを，当業者であれば理解しよう。会話グループの構築（確立）は，互いの同意の下に，互いの補聴器システムを選択する二以上のパーティによって簡単に成立させることができる。これに代えて，所望の参加者のリレー装置の表示装置上にリクエストを提示して所望の参加者の選択を促し，会話グループを構築する前に確認されなければならないようにしてもよい。

特定のローカル・エリア・ネットワーク６上の他のすべてのユーザをリレー装置１１の表示装置７上に示すのではなく，補聴器システムのすぐ近くに存在する他の補聴器システムのみを表示すると，多くの場合に有利である。これは，たとえば，高齢者福祉施設内の状況に当てはまり，そこでは，多数の補聴器ユーザは，ユーザの自室に一人でいるか，または娯楽室に他のユーザとともにいるかに関わらず，同一の無線ローカル・エリア・ネットワーク６を共有することが多い。ここで，娯楽室にいない，または娯楽室の向こう側で会話している他のユーザが，会話の相手として興味を示し，引いては会話グループに参加するとは考えにくい。

この状況において，リレー装置１１は，会話グループに参加者になりそうな（as likely）他の補聴器システムを検出し，その識別情報を検出する近接検出器（a proximity detector）を備えてもよい。近接検出器は，あらかじめ選択された距離，たとえば２〜１０メートル，好ましくは３メートルよりも近いシステムをカバーするように設定される。

これを達成する他の好ましい方法は，リレー装置１１内に，他の補聴器２および対応するリレー装置１２の間で送信される信号強度および個別コードを検出する手段を組込むことである。無線ローカル・エリア・ネットワーク６上の存在とともに，これを検出することによって，ユーザのリレー装置１１のディスプレイ７上において上記ユーザに提示される利用可能な参加者の数が削減される。これに代えて，リレー装置１１は，トランスポンダに適合されてもよく（could be fitted with a transponder），または個別の検出周波数を利用してもよい。

近接検出の利用は，補聴器システムに近接して存在する他の補聴器システムと共に会話グループを自動的に構築する可能性をもたらす。すなわち，２つ以上の補聴器システムが近接して存在する場合に，個々のユーザの介入がなくても，会話グループを自動的に構築することができる。この場合，ユーザは，補聴器の会話グループ機能を操作する方法を習得する必要がなく，上述の構成はユーザにとって有利であるが，いくつかの欠点があり，好ましさの程度が若干劣る。このような欠点の一つはプライバシーの喪失であり，この場合，通り過ぎる補聴器ユーザのいずれもが，プライベートであるにもかかわらずに会話を聞きとれるという，拡張された可能性を得ることになる。また，多数の補聴器システムが互いに近接している場合，たとえば，人が行列している場合やカクテル・パーティーに参加している場合に，望ましくない形で会話グループが拡大することになる。すなわち，会話グループのあらゆる参加者は，会話グループ内にさらに他の補聴器システムを包含し，ひいては，さらなる参加者を受入れることになり，あまりに多くの参加者が存在するため，対話を改善するという点において無意味な大きさにまで，会話グループが拡張されてしまう。

リレー装置１１は，一つ以上のマイクロフォン７６，たとえば，指向性マイクロフォンも含むのが好ましい。これによって，補聴器の内蔵マイクロフォンのみに頼らずに，対話を改善することができる。すなわち，補聴器ユーザが，自分のリレー装置１１を発話している人物の手前に置いて，その人物に向ければ，ユーザおよび会話グループの他の参加者は，発話している人物が補聴器ユーザではない場合であっても，その人物の発話をよりよく聞き取ることができる。他の補聴器ユーザのために，ユーザは，マイクロフォン７６を持つリレー装置１１を自分の前に配置して，自分自身の方に向けてもよい。自分が所有している補聴器の内蔵マイクロフォンではなく，リレー装置１１の指向性マイクロフォンを利用することによって，ユーザの声の良好な音響受信，すなわち，指向性によって騒音が低減された音響受信を実現することができる。これらの任意選択の構成には，もちろん，リレー装置１１が，関連（対応）する補聴器１からあまり遠くへ離れていない場合に限られるという制限がある。上述したように，補聴器を使用しない人物がリレー装置１１を借用した場合に，貸し手が他の参加者からの通信を受取れなくなるような状況が生じうるからである。

当然に，音は，補聴器の通常のマイクロフォンでもピックアップすることができる。さらに，補聴器１が，外耳道内すなわち補聴器１のイヤプラグと鼓膜との間の空洞内において音をピックアップする追加のマイクロフォンを含むタイプである場合は，非常に騒々しい環境において，この追加のマイクロフォンを利用することができる。この場合，補聴器ユーザの発話は，特に，補聴器のイヤプラグによって周囲騒音から遮断される外耳道内においてピックアップされ，リレー装置１１を介して会話グループの他の参加者に送信される。また，外耳道内において鼓膜の前で音をピックアップするようにマイクロフォンを配置すると，より効率よく周囲雑音を抑制できるというメリットももたらされる。複数のマイクロフォンを組合わせることもできる。外耳道内で音をピックアップするマイクロフォンの配置に関するさらなる説明については，国際公開ＷＯ ００／２８７８３，ＷＯ ００／２８７８４，米国特許第４５４８０８２号を参照されたい。

この発明は，元来，補聴器ユーザの間に会話グループを構築して，ユーザ相互の意思伝達を改善するためになされたものであるが，会話グループ内に他の装置を包含することを排除するものではない。したがって，無線ローカル・エリア・ネットワークとの通信を実現できるマイクロフォン・ユニットが会話グループ内に包含されてもよい。これによって，たとえば，会議における講演者は，従来のＦＭシステムではなく，会議室の無線ローカル・エリア・ネットワーク６を利用して，補聴器ユーザに演説できるようになる。また，聴覚障害を持つ子供がいる個人宅において，両親は，無線ローカル・エリア・ネットワークを用いて通信を行えるこのようなマイクロフォン・ユニットを利用して，家庭内で，上記無線ローカル・エリア・ネットワークを介して子供とコミュニケーションを図ることができる。このようなマイクロフォン・ユニットは，好ましくは，会話グループに参加する補聴器システムの表示および／または選択を行う手段も含む。同様に，上記手段では，既に説明したように，この発明に係る補聴器システムのリレー装置１１のディスプレイ７上に選択可能な参加者として表示される。

無線ローカル・エリア・ネットワーク６がインターネットにもさらに接続される場合に，補聴器システムを利用して，インターネットを経由せずに，他の遠隔装置とのコンタクトを確立することも可能である。したがって，たとえば，無線ローカル・エリア・ネットワークに接続された遠隔装置１１またはコンピュータに適切なプロトコルが実装されている場合，補聴器１は，ＩＰ電話のヘッドセットとして利用されてもよい。このようなプロトコルを実装する方法は当業者に知られている。

図２を参照して，図２は他の実施例を示しており，直接無線相互通信をするように構成されている，異なる補聴器システムのリレー装置１１，１２，１３，１４，１５が示されている。この無線通信は，国際公開ＷＯ２００６／０７４６５５において中央コンピュータと通信するように示されている，たとえばブルートゥースのような適切な無線通信とすることができる。しかしながら，国際公開ＷＯ２００６／０７４６５５は，両耳補聴器とリレー装置との間の通信を取り扱っており，異なる補聴器システムの間の相互通信を何ら開示していず，このようなシステムを適合して直接相互通信できるようにすることを何ら開示していない。

図１と同様，破線で示す二つのグループが構築されている。図示されているように，二つの補聴器１，２に関連するリレー装置１１，１２はブルートゥース接続のような無線接続を介して双方向通信を確立しており，このためプライベート会話グループを形成している。これに対応して，３つの補聴器３，４，５に関連するリレー装置１３，１４，１５は，ブルートゥースのような双方向接続８１，８２，８３を複数用いて，リレー装置１１，１２とは独立にプライベート会話グループを構築している。

ブルートゥースは，典型的には１０メートル未満の通信範囲内のあらゆる装置と自動的に接続する能力を提供する。逆に言えば，上記範囲内にあるあらゆるブルートゥース装置を検出することができ，かつリレー装置１１上に表示させることができ，これにより，構築される会話グループに対する，参加者の手動選択のオプションが提供される。しかしながら，好ましくは，他の補聴器のような関連装置のみが選択可能に表示される。もちろん，このことは，ブルートゥースが可能なマイクロフォン・ユニットまたはオーディオ・ストリーミング装置などの他の関連装置を表示装置７に表示することを排除するものではない。

Claims (15)

1. 補聴器および補聴器と関連付けられているリレー装置を備えた補聴器システムにおいて，
   上記補聴器システムは，異なるユーザによって使用される他の補聴器システムとともに会話グループを構築するように構成されており，
   上記補聴器システム中の上記リレー装置は，上記リレー装置が関連づけられている上記補聴器と無線通信しかつ上記他の補聴器システム中のリレー装置と無線通信するように構成されており，
   上記リレー装置は，そのリレー装置から所定の通信範囲内に存在する，上記会話グループに参加可能な他の補聴器システムに関する情報を受信しかつ提示するように構成されており，
   上記リレー装置は，提示された上記会話グループに参加可能な他の補聴器システムの中から，上記会話グループに参加させるべき他の補聴器システムを選択する手段を備えており，
   上記補聴器システムを持つ発話者からの音を，その発話者の補聴器システム中の上記補聴器が備えるマイクロフォンによってピックアップして，それを上記選択手段によって選択された上記会話グループに参加している他の補聴器システムに無線送信するものである，
   補聴器システム。
2. 上記リレー装置は，上記リレー装置から所定距離よりも近くにある上記他の補聴器システムを検出する近接検出器，および上記近接検出器によって検出された他の補聴器システムを，上記会話グループへ参加させるべき他の補聴器システムとして自動的に選択する手段をさらに備えている，請求項１に記載の補聴器システム。
3. 上記リレー装置は，上記補聴器を操作するための遠隔制御装置内に統合されている，請求項１または２に記載の補聴器システム。
4. 上記他の補聴器システムに関する情報を受信しかつ提示する手段は，表示装置および／または音信号を発生する手段を備えている，請求項１から３のいずれか一項に記載の補聴器システム。
5. 上記リレー装置は，ローカル・エリア・ネットワークを用いて無線通信を構築するように構成されている，請求項１から４のいずれか一項に記載の補聴器システム。
6. 上記リレー装置は，上記ローカル・エリア・ネットワークの存在を検出しかつ提示する手段を備えている，請求項５に記載の補聴器システム。
7. 上記ローカル・エリア・ネットワークの存在を検出しかつ提示する手段は，表示装置および／または音信号を発生する手段を備えている，請求項６に記載の補聴器システム。
8. 上記リレー装置は，上記ローカル・エリア・ネットワークとの接続が確立されている他の補聴器システムを提示する手段を備え，かつ上記会話グループに受入れるためにそのような補聴器システムを選択する手段を備えている，請求項５から７のいずれか一項に記載の補聴器システム。
9. 上記ローカル・エリア・ネットワークとの接続が確立されている他の補聴器システムを提示する手段は，表示装置および／または音信号を発生する手段を備えている，請求項８に記載の補聴器システム。
10. 上記リレー装置は，上記他の補聴器システムのリレー装置と直接無線通信を構築するように構成されている，請求項１から９のいずれか一項に記載の補聴器システム。
11. 上記補聴器は，ユーザの外耳道中において音をピックアップするマイクロフォンを備えている，請求項１から１０のいずれか一項に記載の補聴器システム。
12. 上記リレー装置は，少なくとも一つの内蔵マイクロフォンを備えている，請求項１から１１のいずれか一項に記載の補聴器システム。
13. 補聴器および補聴器と関連付けられているリレー装置を備えた補聴器システムと，異なるユーザによって使用される複数の他の補聴器システムとの間で会話グループを構築する方法であって，
    上記リレー装置から所定の通信範囲内に存在する，上記リレー装置を備えた上記他の補聴器システムの存在を検出し，
    上記リレー装置において上記他の補聴器システムについての情報を受信し，
    上記リレー装置の使用によって上記他の補聴器システムの存在を提示し，
    上記リレー装置を用いて，提示された他の補聴器システムの中から，上記会話グループへ参加させるべき所望の数の上記他の補聴器システムを選択し，
    上記補聴器システムを持つ発話者からの音を，その発話者の補聴器システム中の上記補聴器が備えるマイクロフォンによってピックアップして，それを選択した上記会話グループに参加している他の補聴器システムに無線送信する，
    方法。
14. 上記リレー装置を用いてローカル・エリア・ネットワークの存在を検出し，上記ローカル・エリア・ネットワークの存在を提示し，上記ローカル・エリア・ネットワークに選択的に接続する，請求項１３に記載の方法。
15. 上記リレー装置から所定距離よりも近くにある上記他の補聴器システムを検出する近接検出器によって検出された他の補聴器システムが，上記会話グループへ参加させるべき他の補聴器システムとして自動的に選択される，請求項１３または１４に記載の方法。

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