JP5268495B2 - オフライン教示データの作成方法及びロボットシステム - Google Patents
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Description
一方、ロボットシステムによる溶接、塗装、バリ取り、切断など各種作業を行なうときに、作業品質や作業効率向上の観点から、ワークに対する作業具の動作を途切れさせることなく連続して行なうように、作業を設定することが増えてきている。このような場合にロボットの動作範囲を超える作業領域であっても、連続して作業させるために、ロボットの位置を連続して変更するスライダが用いられることが一般的である。この時、作業位置に応じてロボットの動作範囲内に納まるようにスライダ位置を適切に設定することで、連続した作業を実現することができる。さらに、ロボット作業においては、ワークを支持するとともに、溶接に適した姿勢にワークを位置決めするポジショナが用いられることがある。
特許文献1には、作業ツールの動作範囲が広く取れて最も自由に制御可能なロボット姿勢(基本姿勢)をとることができるように、スライダの位置を算出し決定する方法が開示されている。この技術でのロボットの基本姿勢は、ワーク径に応じて実験等により予め得られるものとなっている。
すなわち、特許文献1の技術は、ある程度形状が決まっているワーク(鋼管)であって、周囲の干渉物等の影響を受けにくいレイアウトの場合は有効な可能性と思われるが、周囲との干渉などがあり、ロボットの基本姿勢やその近傍で位置決めができない時、又はロボットが非常に厳しい姿勢を取らざるを得ないような時に、スライダの位置を決定できるものとはなっていない。
このような従来技術が適用できない場合には、オフライン教示においては、画面又は干渉チェック機能等を用いて、オペレータが総合的に判断したりして、スライダ位置とロボット姿勢とを決定するように操作する。この修正作業には多大な時間と労力が費やされていた。
本発明に係るオフライン教示データの作成方法は、垂直6軸多関節型のロボットの据付ベースを移動させると共に冗長軸が2本以上存在するスライダを動作させながらワークに対して連続した作業を行なうロボットシステムのオフライン教示データの作成方法であって、前記ワークでの作業位置を設定する初期設定ステップと、前記ロボットの動作基点であるロボット原点を通り且つ当該ロボットの先端部が含まれる探索平面を設定するステップと、前記探索平面内に設定された複数個の格子点のそれぞれが前記ワーク上の作業位置に合致するように前記スライダの位置を設定して、そのスライダの位置における各格子点の評価値を算出する評価値算出ステップと、前記評価値に基づいて前記スライダの位置を決定し、決定されたスライダの位置を前記ロボットのオフライン教示データとして採用する決定ステップと、を有していて、前記評価値算出ステップは、ロボットのリンク同士の角度に関し同一直線上に位置する状態からのズレ量、ロボットの各軸の動作最大可動値からのズレ量、ワークに対するロボットの干渉量、スライダ及び各軸の動作範囲からのズレ量、スライダ及び各軸の前回位置からのズレ量、のいずれかを含む評価関数を用いて、各格子点の評価値を計算することを特徴とする。
なお、探索平面における格子点は、計算負荷を考慮して、連続的なものではなく離散的であることが好ましい。例えば、探索にするのに十分に細かい、かつ、過度の計算負荷にならない離散的な格子点であることが好ましい。
以上のことを精説すれば、まず、本発明に係るオフライン教示データの作成方法によれば、ロボット原点を通る探索平面内にて設定された格子点をワーク上の作業位置に一致させて、評価値を算出することができるものとなっている。この評価値は、ワークに対する干渉又はニアミスの程度が反映された評価関数を設定することで得られているため、評価値が最大又は最小となる格子点に対応するようにスライダの位置を決定することができる。つまり、スライダの適切な位置を自動的かつ効率的に決定することが可能となる。
ところで、スライダの適切な教示点を自動的かつ効率的に算出するにあたっては、ロボットの先端が動き得る空間内の全ての位置に対して評価関数を求め、その結果により、スライダの教示点を決定することが考えられる。しかしながら、この手法を採用した場合、教示点を算出するために必要とされる計算量は莫大なものとなり、計算時間も長時間に及ぶことになる。
斯かる難点を解決するために、本発明では、複数個の離散的な格子点が設定された探索平面を設定し、その探索面を用いて、各離散格子点の評価値を算出するようにしている。これにより、少ない計算負荷のもと、ロボットと同期するスライダの適切な教示点を、自動的かつ効率的に作成することが可能となる。
こうすることで、スライダの適切な位置が決定不可能な場合には、作業位置を中心として探索平面を回転させる。回転させた探索平面を用いて各格子点の評価値を算出して、スライダの適切な位置を決定することができる。
さらに、前記評価値算出ステップは、前記決定ステップにてスライダ位置が決定できなかった場合に、スライダ位置が決定できなかった探索平面に対して平行移動させた探索平面を設定して、各格子点の評価値を算出するものであってもよい。
さらに、前記ロボットシステムは、前記ワークを姿勢変化可能に把持するポジショナを備え、前記評価値算出ステップは、前記決定ステップにてスライダ位置が決定できなかった場合に、前記ポジショナによるワークの姿勢を変更して、各格子点の評価値を算出するものであってもよい。
上記した移動経路算出方法が採用された本発明のロボットシステムは、垂直6軸多関節型のロボットと、該ロボットが搭載され且つ冗長軸が2本以上存在するスライダと、前記ロボット及びスライダを制御する制御装置と、前記ロボット及びスライダのオフライン教示データを作成する作成装置とを備えており、前記作成装置は、前記ワークでの作業位置を設定する初期設定部と、前記ロボットの動作基点であるロボット原点を通り且つ当該ロボットの先端部が含まれる探索平面を設定し、該探索平面内に設定された複数個の格子点のそれぞれが前記ワーク上の作業位置に合致するように前記スライダの位置を設定して、そのスライダの位置における各格子点の評価値を算出する評価値算出部と、前記評価値に基づいて前記スライダの位置を決定し、決定されたスライダの位置を前記ロボットのオフライン教示データとして採用する決定部と、を有していて、前記評価値算出部は、ロボットのリンク同士の角度に関し同一直線上に位置する状態からのズレ量、ロボットの各軸の動作最大可動値からのズレ量、ワークに対するロボットの干渉量、スライダ及び各軸の動作範囲からのズレ量、スライダ及び各軸の前回位置からのズレ量、のいずれかを含む評価関数を用いて、各格子点の評価値を計算するように構成されていることを特徴とする。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。さらに、以下においては、溶接ロボットを例示し説明するが、本発明は、このような型式、軸数及び用途のロボットに限定して適用されるものではない。
[第1実施形態]
図1に示す斜視図を参照して、本実施形態に係るロボットシステム1の全体構成について説明する。
溶接ロボット2は、垂直多関節型の6軸のロボットであり、作業具として先端部に溶接トーチ21が設けられている。据付ベース側(基端側)はスライダ3上に配備されている。
スライダ3は、ワークWに対して前後方向を向くX軸、上下方向を向くZ軸、XーZ軸に直交するY軸の三軸方向に移動可能となっている。
制御装置5では、あらかじめ動作を教示したオフライン教示データ(教示プログラム)に従って溶接ロボット2を制御する。教示データは制御装置に附帯している教示ペンダント51を使用して作成する場合や、パソコンを利用したオフライン教示システム6を使用して事前に作成される。オフライン教示システム6により作成された教示データは磁気ディスクやメモリ装置などを介して制御装置に受け渡しを行ったり、データ通信により制御装置に教示データを転送してもよい。
図2にワークWの概略図を示す。本実施形態においては、ワークWに対して、6つの溶接点Q1〜Q6(作業位置Q1〜Q6)を設定すると共に、各溶接点Q1〜Q6を繋ぐ連続した5本の溶接線を設定する。ポジショナ4のワークWの取付け面の中心座標(ワーク原点)を基準として、各頂点(溶接点)の(x,y,z)の値は、例えば、Q1(800,−1300,40)、Q2(900,−1100,40)、Q3(500,−600,40)、Q4(−500,−600,40)、Q5(−900,−1100,40)、Q6(−800,−1300,40)(単位mm)である。
図3には、オフライン教示データの作成ための制御ブロックが示されている。この制御ブロックは、スライダ位置決定部60(決定部)を有している。
スライダ位置決定部60は、ワークWの形状情報などに基づいて、溶接位置などを設定する初期位置設定部61と、溶接トーチ21の先端座標を入力し逆変換により溶接ロボット2の関節角を求めるロボット逆変換部62とを有している。さらに、スライダ3が動作範囲であるか否か等を含む評価関数を用いて各格子点における評価値を算出する評価値算出部63を有している。
これらの初期位置設定部61、ロボット逆変換部62、評価値算出部63、評価値判定部64、探索平面変更部65及びポジショナ姿勢変更部66が、互いに関連して動作することにより、スライダ位置決定部60が、このロボットシステム1におけるスライダ3の位置を決定する。
まず、ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、読込んだワークWの形状情報などに基づいて溶接線を設定する。このとき、図2に示すような、6つの溶接点Q1〜Q6(作業位置Q1〜Q6)及び5本の溶接線が設定される。
S101にて、指定された溶接位置に対する溶接トーチ21の姿勢及び溶接条件を、施工情報に基づいて設定する。
これらのS100からS102までの処理は、図3の初期位置設定部61により行なわれる。なお、上述した処理以外を用いて、これらの初期位置を設定しても構わない。
S105にて、演算装置は、溶接ロボット2の逆変換が可能であるか否かを判定する。このとき、溶接ロボット2が溶接点Qiに対して、指定されたトーチ姿勢で逆変換できるか否かが判定される。溶接ロボット2の逆変換が可能であると判定されると(S105にてYES)、処理はS106へ移される。もしそうでないと(S105にてNO)、処理はS120へ移される。
S106における評価関数について精説すれば、例えば、溶接ロボット2のリンクがそれに繋がるリンクに対して180°の角度(同一直線上に位置する)を有している場合には、そのリンクは特異姿勢にあるとし、その姿勢は避けるべきとされている。そこで、特異姿勢からの余裕度として、リンク同士の角度が180°からどれくらい離れているかを採用することができる。また、ロボット軸が例えば、+90°〜−90°までの可動範囲にあるとした場合、軸の角度を85°にすることは可動範囲内にあるとはいえ、あまり好ましい状況とは言い難い。そこで、各軸の動作範囲からの余裕度として、最大可動値からのズレ量を評価関数に採用することができる。さらには、溶接点Qi−1におけるスライダ3の位置や各軸の角度と、当該格子点でのスライダ3の位置や各軸の角度との差をみて、その差があまりにも大きくなる(スライダ3が大きく動いたり各軸が大きく回動する)ことは好ましくない。そこで、スライダ3などの前回位置からのズレ量を評価関数とすることができる。
S108の処理は、全ての格子点の評価値が全体的に低いときに抽出された最高評価値を用いる不具合を回避するためである。なお、S107の処理を省き、S108で各格子点毎の評価値が閾値を越えているか否かを判定してもよい。ある閾値を越えた時点で、その格子点を実現できるスライダ3の位置を教示データとするようにしてもよい。こうすることで、パソコン6における計算量を大幅に少なくすることができる。
S109にて、評価値が最高値のスライダ位置を教示データとする。
S110にて、演算装置は、全ての溶接点についての処理(スライダ位置決定の処理)が済んでいるか否かを判定する。全ての溶接点について処理済であると判定されると(S110にてYES)、このスライダ位置決定処理は終了する。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS111へ移される。S111にて、次の溶接点を処理対象として、処理をS103へ戻す。これらのS109からS111までの処理は、図3のスライダ位置決定部60により行なわれる。
このS131の処理は、図3のポジショナ姿勢変更部66により行なわれる。
要約するならば、以上述べたスライダ位置決定部60における処理は、以下の3通りの手順を通り、その結果、スライダ3の位置、すなわち教示データが決定される。
(i) 探索平面を回転させることなくスライダ3の位置を決定できた場合の動作
溶接線、溶接トーチ21の姿勢、溶接条件、ポジショナ4の初期位置が設定される(S100〜S102)。
ここで、S100〜S102が初期設定ステップであり、S103〜S106が評価値算出ステップであって、S107〜S109が決定ステップである。
(ii) スライダ3の適切な位置が決定できなかった場合
上述のように処理しても、ある溶接点において、スライダ3の適切な位置が決定できなかった場合(S105にてNO、又は、S108にてNO)、この溶接点に対して、この溶接点を基準に探索平面を所定の角度(±30°)の範囲で順次(2°ずつ)回転される(S121)。
(iii) 探索平面を回転させてもスライダ3の適切な位置が決定できなかった場合
上述のように探索平面を回転させ全ての探索平面についての処理が終わった際に、ある溶接点において、スライダ3の適切な位置が決定できなかった場合(S120にてYES)、この溶接点に対して、ポジショナ4の姿勢を変更する(S130)。このようにポジショナ4の姿勢を変えて、全ての姿勢についての処理を終えるまで(S132にてYESと判定されるまで)、各探索平面上の各格子点について評価値が算出され、スライダ3の適切な位置が決定される(S103〜S109)。
そこで、ポジショナ4の姿勢を変更し、再度、教示データの作成を行うと、溶接点Q1,Q5に対応するスライダ3の位置が決定される。その状態は図8に示すようであり、溶接ロボット2がアプローチできる空間が確保できていることがわかる。かかる溶接点Q1,Q5のスライダ位置の決定に伴い、溶接点Q6はポジショナ姿勢の変更無く、スライダ3の位置が再決定されている。
2 溶接ロボット
3 スライダ
4 ポジショナ
5 制御装置
6 オフライフ教示システム(パソコン)
Claims (4)
- 垂直6軸多関節型のロボットの据付ベースを移動させると共に冗長軸が2本以上存在するスライダを動作させながらワークに対して連続した作業を行なうロボットシステムのオフライン教示データの作成方法であって、
前記ワークでの作業位置を設定する初期設定ステップと、
前記ロボットの動作基点であるロボット原点を通り且つ当該ロボットの先端部が含まれる探索平面を設定するステップと、
前記探索平面内に設定された複数個の格子点のそれぞれが前記ワーク上の作業位置に合致するように前記スライダの位置を設定して、そのスライダの位置における各格子点の評価値を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値に基づいて前記スライダの位置を決定し、決定されたスライダの位置を前記ロボットのオフライン教示データとして採用する決定ステップと、
を有していて、
前記評価値算出ステップは、ロボットのリンク同士の角度に関し同一直線上に位置する状態からのズレ量、ロボットの各軸の動作最大可動値からのズレ量、ワークに対するロボットの干渉量、スライダ及び各軸の動作範囲からのズレ量、スライダ及び各軸の前回位置からのズレ量、のいずれかを含む評価関数を用いて、各格子点の評価値を計算することを特徴とするオフライン教示データの作成方法。 - 前記評価値算出ステップは、前記決定ステップにてスライダ位置が決定できなかった場合に、前記作業位置を中心として回転させた探索平面を設定して、各格子点の評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載のオフライン教示データの作成方法。
- 前記ロボットシステムは、前記ワークを姿勢変化可能に把持するポジショナを備え、
前記評価値算出ステップは、前記決定ステップにてスライダ位置が決定できなかった場合に、前記ポジショナによるワークの姿勢を変更して、各格子点の評価値を算出することを特徴とする請求項2に記載のオフライン教示データの作成方法。 - 垂直6軸多関節型のロボットと、該ロボットが搭載され且つ冗長軸が2本以上存在するスライダと、前記ロボット及びスライダを制御する制御装置と、前記ロボット及びスライダのオフライン教示データを作成する作成装置とを備えており、
前記作成装置は、前記ワークでの作業位置を設定する初期設定部と、
前記ロボットの動作基点であるロボット原点を通り且つ当該ロボットの先端部が含まれる探索平面を設定し、該探索平面内に設定された複数個の格子点のそれぞれが前記ワーク上の作業位置に合致するように前記スライダの位置を設定して、そのスライダの位置における各格子点の評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づいて前記スライダの位置を決定し、決定されたスライダの位置を前記ロボットのオフライン教示データとして採用する決定部と、
を有していて、
前記評価値算出部は、ロボットのリンク同士の角度に関し同一直線上に位置する状態からのズレ量、ロボットの各軸の動作最大可動値からのズレ量、ワークに対するロボットの干渉量、スライダ及び各軸の動作範囲からのズレ量、スライダ及び各軸の前回位置からのズレ量、のいずれかを含む評価関数を用いて、各格子点の評価値を計算するように構成されていることを特徴とするロボットシステム。
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