JP5267843B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
ただし、vはモータに印加される電圧、iはモータ電流、pは微分演算子である。
岩田昭寿他、「位置推定精度に依存しないオンラインパラメータ同定法を用いたシンクロナスリラクタンスモータのセンサレス制御」、電気学会論文誌 D,124巻12号、2004年
たとえば、二相固定座標系αβにおけるα軸方向のインダクタンスLαは、定数L0,L1およびロータ回転位置θを用いて、次式(4)によって表すことができる。
したがって、この式に基づいて、同定されたインダクタンスLαから、ロータ回転位置θを推定することができる。
そこで、この発明では、ロータ回転位置とインダクタンスとの関係をロータ回転速度別に記憶したテーブルが設けられている。そして、ロータ回転速度取得手段によって検出または推定されたロータ回転速度に応じて前記テーブルが参照され、同定されたインダクタンスに対応するロータ回転位置が導出される。これにより、ロータの回転速度に依存する位置推定誤差を低減できるから、ロータ回転位置をより正確に推定することができる。こうして位置推定精度が高められる結果、モータを精度良く制御することができ、効率的にトルクを出力させることができる。
ロータ回転速度取得手段は、たとえば、位置推定手段によって求められた推定回転位置に対して時間微分を施すことによってロータ回転速度を求めるものであってもよい。また、モータへの印加電圧に対してFFT(高速フーリエ変換)等の周波数分析を行い、モータに印加される指令電圧の周波数に基づいてロータ回転速度を求めるものであってもよい。この場合、モータへの印加電圧に対してフィルタ処理を行うことで、パラメータ同定用参照信号成分を除去し、このパラメータ同定用参照信号成分を除去した信号に対して周波数分析を行うことが好ましい。
そこで、この発明では、ロータ回転位置とインダクタンスとの関係をモータ電流別に記憶したテーブルが設けられている。そして、モータ電流取得手段によって取得されたモータ電流に基づいて前記テーブルを参照し、同定されたインダクタンスに対応するロータ推定回転位置が導出される。これにより、モータにトルク発生のための電流を供給しているときでも、ロータ回転位置を正確に推定できる。したがって、位置推定精度が高められ、モータを精度良く制御することができるから、効率的にトルクを出力させることができる。
モータ電流取得手段は、モータ電流を検出する電流センサを含むものであってもよいし、モータからトルクを発生させるために設定される電流指令値を取得するものであってもよい。
そこで、この発明では、ロータ回転位置とインダクタンスとの関係を温度別に記憶したテーブルが設けられている。そして、モータ温度取得手段によって取得されたモータ温度に基づいて前記テーブルが参照され、同定されたインダクタンスに対応するロータ推定回転位置が導出される。これにより、モータが高温のときでも、ロータ回転位置を正確に推定できる。したがって、位置推定精度が高められ、モータを精度良く制御することができるから、効率的にトルクを出力させることができる。
請求項4記載の発明は、前記参照信号が、M系列信号である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置である。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に操舵補助力を与えるモータ3(電動モータ)と、このモータ3を駆動制御するモータ制御装置5とを備えている。モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルクに応じてモータ3を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。
マイクロコンピュータ7は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、電流指令値生成部11と、PI(比例積分)制御部12と、指示電圧生成部13と、γδ/αβ座標変換部14と、αβ/UVW座標変換部15と、PWM制御部16と、UVW/αβ座標変換部17と、αβ/γδ座標変換部18と、偏差演算部19と、位置推定部21と、パラメータ同定部22と、参照信号生成部23と、加算部24とを備えている。
UVW/αβ座標変換部17は、三相検出電流IUVWを、二相固定座標系(α−β)上での電流IαおよびIβ(以下、これらをまとめていうときには「二相検出電流Iαβ」という。)に座標変換する。二相固定座標系(α−β)とは、ロータ50の回転中心を原点として、ロータ50の回転平面内にα軸およびこれに直交するβ軸を定めた固定座標系である(図2参照)。座標変換された二相検出電流Iαβは、αβ/γδ座標変換部18に与えられる。
αβ/UVW座標変換部15は、α軸指示電圧Vα *およびβ軸指示電圧Vβ *を三相固定座標系の指示電圧、すなわち、U相、V相およびW相の指示電圧VU *,VV *,VW *(以下、これらをまとめていうときには「三相指示電圧VUVW」という。)に変換する。
このような構成によって、舵取り機構2に結合された操作部材としてのステアリングホイール(図示せず)に操舵トルクが加えられると、これがトルクセンサ1によって検出される。そして、その検出された操舵トルクに応じた電流指令値Idqが電流指令値生成部11によって生成される。この電流指令値Idqと二相検出電流Iγδとの偏差が偏差演算部19によって求められ、この偏差を零に導くようにPI制御部12によるPI演算が行われる。この演算結果に対応した二相指示電圧Vγδが指示電圧生成部13によって生成され、これが、座標変換部14,15を経て三相指示電圧VUVWに変換される。そして、PWM制御部16の働きによって、その三相指示電圧VUVWに応じたデューティ比で駆動回路8が動作することによって、モータ3が駆動され、電流指令値Idqに対応したアシストトルクが舵取り機構2に与えられることになる。こうして、操舵トルクに応じて操舵補助を行うことができる。電流センサ9によって検出される三相検出電流IUVWは、座標変換部17,18を経て、電流指令値Idqに対応するように二相回転座標系(γ−δ)で表された二相検出電流Iγδに変換された後に、偏差演算部19に与えられる。
パラメータ同定部22は、二相検出電流Iαβおよび二相指示電圧Vαβに基づいて、モータパラメータを同定する。この実施形態では、同定されるモータパラメータは、電機子巻線抵抗RおよびインダクタンスLを含む。より詳しくは、パラメータ同定部22は、α軸インダクタンスLα、β軸インダクタンスLβ、αβ軸間インダクタンスLαβを同定する。この場合に、パラメータ同定部22は、一般的なモータの式に補償項εを導入した次式(3)のモータモデルに基づいて、パラメータ(R、Lおよびε)を同定する。ただし、vはモータ3に印加される電圧(この実施形態ではv=Vαβ)、iはモータ電流(この実施形態ではi=Iαβ)、pは微分演算子である。
このモータモデルを用いてパラメータ同定を行うことにより、構造誤差や外乱等に起因する電流iの変動の影響は、補償項εに分離され、パラメータR,Lには及ばない。したがって、モータパラメータR,Lを高精度に同定することができる。
位置推定部21は、パラメータ同定部22によって同定されるパラメータに基づいて、ロータ50の回転位置を推定する。
Lα=L0+L1cos2θ …(4)
Lβ=L0−L1cos2θ …(5)
Lαβ=L1sin2θ …(6)
ただし、L0,L1はインダクタンスの成分であり、d軸インダクタンスLdおよびq軸インダクタンスLqを用いて次のように表される。
L1=(Ld−Lq)/2 …(8)
したがって、α軸インダクタンスLα、β軸インダクタンスLβ、αβ軸間インダクタンスLαβをパラメータ同定部22で同定すると、これらを用いて、位置推定部21は、次式(9)に基づいて推定回転位置θ^を求めることができる。
図3は、マイクロコンピュータ7によるロータ回転位置推定演算の流れを説明するためのフローチャートであり、主として、位置推定部21、パラメータ同定部22および参照信号生成部23によって所定の制御周期毎に繰り返し実行される処理の流れが示されている。
一方、パラメータ同定部22は、UVW/αβ座標変換部17が生成する二相検出電流Iαβ(モータからの応答)と、加算部24が生成する参照信号が重畳された二相指示電圧Vαβとに基づいて、モータパラメータを同定する(ステップS2)。このとき、パラメータ同定部22は、前記式(3)によって表される補償項εを有するモータモデルに基づいて、モータパラメータを同定する。
図4は、モータモデルに補償項εを導入することによる効果を説明するための図である。図4(a)は、補償項εを導入した式(3)のモータモデルを用いてパラメータ同定を行ったときの平均位置推定誤差であり、図4(b)は補償項εを用いない一般的なモータモデル(式A参照)を用いてパラメータ同定を行ったときの平均位置推定誤差である。これらの図4(a)および図4(b)には、各ロータ回転位置に対する位置推定誤差の平均値が示されている。
前述の第1の実施形態では、パラメータ同定部22によって同定されたモータパラメータに基づいて、位置推定部21で式(9)により表される演算を行って、推定回転位置θ^を求めるようにしている。これに対して、この実施形態では、モータパラメータの各値に対応する推定回転位置θ^を予め求めて作成したテーブルがテーブル格納部21Aに格納されている。位置推定部21は、このテーブルを用いることによって、パラメータ同定部22によって同定されたモータパラメータに対応する推定回転位置θ^を求める。
具体的には、ロータ停止時には、α軸インダクタンスLαとロータ回転位置θとの関係は、式(4)に表される関係にあり、この関係は、図6に示すとおりである。しかし、ロータ50が回転しているときには、式(4)で表される関係が厳密に成立するわけではない。つまり、モータパラメータとロータ回転位置θとの関係は、ロータ回転速度ωに依存する。
そこで、この実施形態では、図1に示されている構成に加えて、回転速度演算部30と、通電時間演算部31とが設けられている。回転速度演算部30は、位置推定部21によって求められた推定回転位置θ^に対して時間微分演算を行うことによってロータ回転速度ωを演算する。より具体的には、回転速度演算部30は、たとえば、今制御周期で求められた推定回転位置θ^と前制御周期で求められた推定回転位置θ^との差を求めることで、現時刻における推定回転速度をロータ回転速度ωとして求める。通電時間演算部31は、モータ3への通電時間を積算して、積算通電時間を求める。ただし、通電時間演算部31は、モータ3への通電が行われていない非通電状態の継続時間(非通電時間)が予め定める閾値(たとえば、10秒)に達したときに、積算通電時間をリセットするように動作する。これにより、モータ3への非通電時間が長くなってモータ3の温度が低くなれば、積算通電時間がリセットされるから、積算通電時間とモータ3の温度との対応関係を保持することができる。
位置推定部21に備えられているテーブル格納部21Aには、モータパラメータ(たとえば、インダクタンス)と、ロータ回転速度ωと、積算通電時間と、電流指令値Idqと、推定回転位置θ^との関係を表すテーブルが格納されている。つまり、モータパラメータと推定回転位置θ^との対応関係を、種々のロータ回転速度ω毎、種々の積算通電時間毎、および種々の電流指令値Idq毎に予め測定し、その測定結果を表すテーブルがテーブル格納部21Aに格納されている。むろん、測定の代わりに、磁界解析によってそれらの間の関係を事前に求めてテーブルを作成することもできる。
たとえば、前述の第2の実施形態では、ロータ回転位置の推定に用いるテーブルは、ロータ回転速度ω、積算通電時間および電流指令値Idqに応じた変動を全て加味した推定回転位置θ^が導出されるように作成されているが、これらのうちの一つまたは任意の2つの組み合わせに応じた変動を加味するようにテーブルを作成してもよい。つまり、テーブル格納部21Aには、ロータ回転速度ω、モータパラメータおよび推定回転位置θ^の関係を表すテーブルを格納してもよい。また、積算通電時間、モータパラメータおよび推定回転位置θ^の関係を表すテーブルを格納してもよい。さらに、電流指令値Idq、モータパラメータおよび推定回転位置θ^の関係を表すテーブルを格納してもよい。またさらに、ロータ回転速度ω、積算通電時間、モータパラメータおよび推定回転位置θ^の関係を表すテーブルを格納したり、ロータ回転速度ω、電流指令値Idq、モータパラメータおよび推定回転位置θ^の関係を表すテーブルを格納したり、積算通電時間、電流指令値Idq、モータパラメータおよび推定回転位置θ^の関係を表すテーブルを格納したりしてもよい。
Claims (4)
- ロータと、このロータに対向するステータとを備え、車両の舵取り機構に操舵補助力を与えるモータと、
前記モータを制御するためのモータ制御装置とを含む電動パワーステアリング装置であって、
前記モータ制御装置が、
前記ステータにパラメータ同定用の参照信号を注入する参照信号注入手段と、
前記参照信号に対する前記モータの応答を検出するモータ応答検出手段と、
このモータ応答検出手段により検出されるモータの応答に基づき、v=(R+pL)i+ε(ただし、vはモータに印加される電圧、Rはステータ巻線抵抗、Lはモータのインダクタンス、pは微分演算子、iはモータ電流、εは電流応答に依存しない補償項)で表されるモータモデルに基づいて、パラメータとしての前記ステータ巻線抵抗R、前記インダクタンスLおよび前記補償項εの同定を行うパラメータ同定手段と、
このパラメータ同定手段によって同定されたパラメータに基づいて前記ロータの推定回転位置を求める位置推定手段と、
前記ロータの回転速度を検出または推定するロータ回転速度取得手段とを含み、
前記位置推定手段は、ロータ回転位置とインダクタンスとの関係をロータ回転速度別に記憶したテーブルを含み、前記ロータ回転速度取得手段によって取得されるロータ回転速度に応じて前記テーブルを参照し、前記パラメータ同定手段によって同定されたインダクタンスに対応するロータ回転位置を導出するものである、
電動パワーステアリング装置。 - 前記モータ制御装置が、モータ電流を取得するモータ電流取得手段をさらに含み、
前記位置推定手段は、ロータ回転位置とインダクタンスとの関係をモータ電流別に記憶したテーブルを含み、前記モータ電流取得手段によって取得されるモータ電流に応じて前記テーブルを参照し、前記パラメータ同定手段によって同定されたインダクタンスに対応するロータ回転位置を導出するものである、請求項1記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記モータ制御装置が、前記モータの温度を検出または推定するモータ温度取得手段をさらに含み、
前記位置推定手段は、ロータ回転位置とインダクタンスとの関係をモータの温度別に記憶したテーブルを含み、前記モータ温度取得手段によって取得されるモータの温度に応じて前記テーブルを参照し、前記パラメータ同定手段によって同定されたインダクタンスに対応するロータ回転位置を導出するものである、請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記参照信号が、M系列信号である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
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