以下、本発明の貯湯式給湯機の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は下記の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の貯湯式給湯機の一例を示す概略図である。同図に示す貯湯式給湯機130は、熱源機で沸き上げた湯を貯湯タンクに貯留し、ここから一般給湯先150と浴槽160とに湯を供給する機能を有するものであり、ヒートポンプユニット10と給湯機本体110とリモートコントローラ120とを備えている。以下、貯湯式給湯機130の各構成要素について説明する。
上記のヒートポンプユニット10は、冷媒を圧縮する圧縮機と、放熱器に相当する沸上げ用熱交換器と、膨張弁と、蒸発器と、これらを環状に接続する循環配管とを有する冷凍サイクル部(図示せず)を備え、後述する制御装置100による制御の下に動作して熱源機として機能する。上記の冷凍サイクル部では、二酸化炭素等の冷媒が圧縮機で圧縮されて高温、高圧となった後に沸上げ用熱交換器で放熱し、膨張弁で減圧され、蒸発器で吸熱してガス状態となって圧縮機に吸入される。
一方、給湯機本体110は、貯湯タンク20、給水管路30、貯湯用循環管路40、給湯管路50、一般給湯混合弁65、風呂給湯混合弁70、一般用給湯管路80、風呂用給湯管路90、および制御装置100等を有している。
上記の貯湯タンク20は、給水管路30から供給される水を貯留すると共にヒートポンプユニット10で沸き上げられた湯を貯留する積層式の貯湯タンクであり、その下部には給水管路30と貯湯用循環管路40の往き管40aが、また上部には貯湯用循環管路40の戻り管40bと給湯管路50がそれぞれ接続されている。この貯湯タンク20は、給水管路30からの給水により常に満水状態に保たれる。
貯湯タンク20の上部には、貯湯タンク20から給湯管路50に流入する湯の温度を検知するためのタンク温度センサ20aが取り付けられている。また、貯湯タンク20の周面部には、貯湯タンク20内の湯の温度を検知するための複数の沸上げ温度センサ(図示せず)が互いに異なる取付け高さをもって取り付けられている。
給水管路30は、市水等の水を貯湯タンク20、一般給湯混合弁65、風呂給湯混合弁70、および一般給湯先150に供給する管路であり、減圧弁23、給水温度センサ25、第1逆止弁27、第1給水管部30a、第2給水管部30b、および第3給水管部30cを有している。減圧弁23は、第1給水管部30aの途中に設けられて、水道等の水源(図示せず)からの水圧を所定値に減じる。給水温度センサ25は、第1給水管部30aでの減圧弁23の上流側に設けられて、該第1給水管部30a内の水の温度を検知する。第1逆止弁27は、第2給湯管部30bでの出水口側に配置されて、当該第2給湯管部20bでの水の逆流を防止する。
また、上記の第1給水管部30aは水源と貯湯タンク20とを繋ぐ。第2給水管部30bは、本発明でいう出水側が二股分岐した給水管路に相当し、減圧弁23の下流側で第1給水管部30aから分かれて該第1給水管部30aと一般給湯混合弁65および風呂給湯混合弁70の各々とを繋ぐ。第3給水管部30cは、減圧弁23の上流側で第1給水管部30aから分かれて該第1給水管部30aと一般給湯先150とを繋ぐ。第2給水管部30bでの二股分岐箇所の上流側に第1逆止弁27が設けられている。なお、図1には、一般給湯先150として1つの給湯栓が示されている。一般給湯先150には、サーモスタット付き混合水栓やシャワー等が接続されていてもよい。
貯湯用循環管路40は、貯湯タンク20の下部からヒートポンプユニット10中の沸上げ用熱交換器を経由して貯湯タンク20の上部に達する管路であり、貯湯用送水ポンプ35、往き管40a、および戻り管40bを有している。貯湯用送水ポンプ35は往き管40aに設けられており、該往き管40aは貯湯タンク20の下部と上記沸上げ用熱交換器とを繋ぐ。戻り管40bは、上記沸上げ用熱交換器と貯湯タンク20の上部とを繋ぐ。
給湯管路50は、本発明でいう出湯側が二股分岐した給湯管路に相当し、二股分岐箇所の上流側に第2逆止弁45を有している。この給湯管路50は、入湯側が貯湯タンク20の上部に接続され、二股分岐した出湯側での一方の流路が一般給湯混合弁65に、また他方の流路が風呂給湯混合弁70にそれぞれ接続されて、貯湯タンク20内の湯を一般給湯混合弁65と風呂給湯混合弁70とに導く。第2逆止弁45は、給湯管路50での上記分岐箇所の上流側に設けられている。
膨張水排出管路60は、給湯管路50での入湯側の端部で該給湯管路50から分かれて排出口(図示せず)に接続されており、この膨張水排出管路60の途中に圧力逃し弁55が取り付けられている。圧力逃し弁55は、湯の沸上げにより貯湯タンク20内の湯水が体積膨張を起こして当該貯湯タンク20の内圧が所定圧力を超えたときに開弁し、体積膨張により生じた膨張水(余剰水)を膨張水排出管路60から排出口へと排出して貯湯タンク20の内圧過上昇を防止する。
一般給湯混合弁65は電動式の弁であり、制御装置100により開度を調整されて、第2給水管部30bから供給される水と給湯管路50から供給される湯とを所定の混合比の下に混合する。同様に、風呂給湯混合弁70も電動式の弁であり、制御装置100により開度を調整されて、第2給水管部30bから供給される水と給湯管路50から供給される湯とを所定の混合比の下に混合する。これら一般給湯混合弁65と風呂給湯混合弁70とは、制御装置100により互いに別個に開度を制御することができるものであればよく、その構造は一体型、独立型等、適宜選定可能である。
一般用給湯管路80は、一般用流量センサ73と一般用温度センサ75とを有しており、一般給湯混合弁65と一般給湯先150とを繋ぐ。一般用流量センサ73は一般用給湯管路80での流量を検知し、一般用温度センサ75は一般用給湯管路80内の湯水の温度を検知する。図示の例では、一般用流量センサ73の下流側に一般用温度センサ75が設けられている。
風呂用給湯管路90は、電磁弁83と、風呂用流量センサ85と、風呂用温度センサ87とを有しており、風呂給湯混合弁70と浴槽160とを繋ぐ。電磁弁83は、制御装置100により開度を調整されて風呂用給湯管路90での流量を調節し、風呂用流量センサ85は風呂用給湯管路90での流量を検知し、風呂用温度センサ87は風呂用給湯管路90内の湯水の温度を検知する。図示の例では、電磁弁83と、風呂用流量センサ85と、風呂用温度センサ87とが風呂給湯混合弁70側からこの順番で設けられている。なお、浴槽160内には浴槽アダプタ155が取り付けられ、風呂用給湯管路90は当該浴槽アダプタ155に接続される。
制御装置100は、リモートコントローラ120から受信した指令または情報と、タンク温度センサ20a、各沸上げ温度センサ(図示せず)、給水温度センサ25、一般用流量センサ73、一般用温度センサ75、風呂用流量センサ85、または風呂用温度センサ87の検知温度とに応じて、ヒートポンプユニット10、貯湯用送水ポンプ35、一般給湯混合弁65、風呂給湯混合弁70、または電磁弁83の動作を制御する。
給湯機本体110を構成する上述の構成要素のうち、給水管路30、貯湯用循環管路40、膨張水排出管路60、一般用給湯管路80、および風呂用給湯管路90をそれぞれ除いた残りの構成要素は、外装ケース105に納められている。給水管路30、貯湯用循環管路40、膨張水排出管路60、一般用給湯管路80、および風呂用給湯管路90の各々は、その一部が外装ケース105の外部にまで延在している。
リモートコントローラ120は、複数の入力スイッチにより構成される操作部113と、液晶表示パネル等のフラットディスプレイパネルを用いて構成されて操作部113から入力された指令や情報、および制御装置100から受信した運転状況等の情報等を文字、図形、キャラクタ等で視覚表示する表示部115と、メッセージのアナウンスや警告音の再生等を行う報知部(図示せず)と備えている。当該リモートコントローラ120は、制御装置100に有線接続または無線接続されて、該制御装置100と通信する。
図示の例では制御装置100に1つのリモートコントローラ120のみが接続されているが、制御装置100には1以上の所望数のリモートコントローラを接続することができる。また、リモートコントローラ120は台所や浴室等、所望の場所に設置可能である。
上述の各構成要素を備えた貯湯式給湯機130は、給水管路30から貯湯タンク20に給水して該貯湯タンク20、貯湯用循環管路40、給湯管路50、一般用給湯管路80、および風呂用給湯管路90の各々が満水状態にされた後に使用に供され、貯湯タンク20内の水を湯に沸き上げる沸上げ運転、一般給湯先150への給湯運転、または浴槽160への給湯運転を適宜行う。
沸上げ運転は、例えばユーザがリモートコントローラ120から沸上げ開始指令を入力すると、あるいはユーザがリモートコントローラ120から入力した沸上げ開始時刻になると、制御装置100による制御の下にヒートポンプユニット10および貯湯用送水ポンプ35が起動され、開始される。ユーザは、希望する沸上げ温度および沸上げ湯量を予めリモートコントローラ120から入力しておく。
沸上げ運転が開始されると、制御装置100は、沸上げ湯量に対応した所定の沸上げ温度センサの検知温度を監視し、該検知温度が所定温度以上になると、上記沸上げ湯量以上の湯が貯湯タンク20に貯留されたと判断して沸上げ運転を停止させる。この間、貯湯タンク20の下部から貯湯用循環管路40の往き管40aに水が流入し、ヒートポンプユニット10内の沸上げ用熱交換器に通水されて該沸上げ用熱交換器で湯に沸き上げられる。沸上げ用熱交換器で沸き上げられた湯は、貯湯用循環管路40の戻り管40bを通って貯湯タンク20の上部から貯湯タンク20内に戻される。
一方、一般給湯先150への給湯運転は、一般給湯先150をユーザが開栓して一般用流量センサ73が所定流量(例えば1.5リットル/分)以上の水流を検知すると制御装置100による制御の下に開始される。当該給湯運転では、タンク温度センサ20aの検知温度と、給水温度センサ25の検知温度と、ユーザがリモートコントローラ120から入力した給湯設定温度に係る情報とに基づき、制御装置100が一般給湯混合弁65の開度(給湯管路50側の開口率および第2給水管部30b側の開口率)を調整して、給湯管路50からの湯と第2給水管部30bからの水との混合比を調整する。そして、一般用温度センサ75の検知温度に基づいて制御装置100が一般給湯混合弁65の開度を繰り返しフィードバック制御して、一般給湯先150での給湯温度をユーザの設定温度に調整する。
一般給湯先150への給湯運転は、ユーザが一般給湯先150を閉栓して一般用流量センサ73が上記所定流量以上の水流を検知しなくなると停止する。このとき、制御装置100は、一般給湯先150に同じ給湯設定温度で断続的に給湯するときでも給湯温度が安定するように、一般給湯混合弁65での開度を上記の給湯設定温度に対応した開度(以下、「安定給湯開度」という)に保つ。なお、図1においては、一般給湯先150への湯水の流れ方向を実線の矢印Aで示している。
また、浴槽160への給湯運転は、ユーザがリモートコントローラ120から湯張り開始指令、差し湯指令、足し湯指令等、浴槽160への給湯(水である場合を含む)に係る指令を入力すると、制御装置100が電磁弁83に開指令を出して開始される。当該給湯運転では、タンク温度センサ20aの検知温度と、給水温度センサ25の検知温度と、ユーザがリモートコントローラ120から入力した湯張り温度、差し湯温度、足し湯温度等の温度情報に基づき、制御装置100が風呂給湯混合弁70の開度(給湯管路50側の弁開度および第2給水管部30b側の弁開度)を調整して、給湯管路50からの湯と第2給水管部30bからの水との混合比を調整する。そして、風呂用温度センサ87の検知温度に基づいて制御装置100が風呂給湯混合弁70の開度を繰り返しフィードバック制御して、浴槽160への給湯温度をユーザの設定温度に調整する。
浴槽160への給湯運転は、風呂用流量センサ85の検知結果が湯張り湯量、差し湯湯量、または足し湯湯量等に達すると、あるいはリモートコントローラ120から浴槽160への給湯の停止を指示する指令が入力されると、制御装置100が電磁弁83に閉指令を出して停止する。上記の湯張り湯量、差し湯湯量、足し湯湯量等の給湯量情報は、リモートコントローラ120からユーザにより予め入力される。図1においては、浴槽160への湯水の流れ方向を実線の矢印Bで示している。また、浴槽160内の浴水を参照符号160aで示している。
上述のようにして一般給湯先150および浴槽160への給湯運転を行う貯湯式給湯機130は、一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯したときにおける一般給湯混合弁65の開度調整に特徴を有しているので、以下、制御装置100の構成および上記一般給湯混合弁65の開度調整について図2および図3を参照して詳述する。
図2は、図1に示した貯湯式給湯機での制御装置と該制御装置に接続された構成要素とを概略的に示すブロック図である。同図に示すように、貯湯式給湯機130(図1参照)の制御装置100は、送受信処理部91、制御部93、および記憶部95を有しており、ヒートポンプユニット10、タンク温度センサ20a、給水温度センサ25、貯湯用送水ポンプ35、一般給湯混合弁65、風呂給湯混合弁70、一般用流量センサ73、一般用温度センサ75、電磁弁83、風呂用流量センサ85、風呂用温度センサ87、およびリモートコントローラ120に接続されている。図2では図示を省略しているが、制御装置100は、前述した沸上げ温度センサの各々にも接続されている。
制御装置100を構成する上記の送受信処理部91は、ヒートポンプユニット10への指令の送信に係る処理、リモートコントローラ120からの指令や情報の受信および振り分けに係る処理、およびリモートコントローラ120への情報(例えば運転状況等)の送信に係る処理を行う。
制御部93は、送受信処理部91が振り分けてきたリモートコントローラ120からの指令や情報と、貯湯式給湯機130を構成する各センサの検知結果とに基づいて、沸上げ運転および給湯運転を総括的に制御する。また、上記各センサの検知結果に基づいて貯湯式給湯機130の運転状況等に係る情報を纏め、送受信処理部91の動作を制御して当該情報をリモートコントローラ120宛に送信させる。これらの処理を行うために、制御部93は、沸上げ制御部93a、給湯制御部93b、および計時部93cを有している。
上記の沸上げ制御部93aは、ユーザがリモートコントローラ120から入力して送受信処理部91により振り分けられてきた沸上げ開始時刻、沸上げ運転時の沸上げ温度、および沸上げ運転時の沸上げ湯量に係る各情報を記憶部95に格納する。そして、上記沸上げ開始時刻、沸上げ運転時の沸上げ温度、および沸上げ運転時の沸上げ湯量それぞれの情報と、各沸上げ温度センサ(図示せず)のうちの所定の温度センサの検知温度とを用いて、前述した沸上げ運転を制御する。
一方、給湯制御部93bは、ユーザがリモートコントローラ120から入力して送受信処理部91により振り分けられてきた一般給湯先150(図1参照)への給湯設定温度と、浴槽160(図1参照)への給湯設定温度(湯張り温度、差し湯温度、足し湯温度)に係る情報とを記憶部95に格納する。また、ユーザがリモートコントローラ120から入力して送受信処理部91により振り分けられてきた浴槽160(図1参照)への給湯量(湯張り湯量や足し湯湯量等)に係る情報も記憶部95に格納する。
当該給湯制御部93bは、上記の情報と、タンク温度センサ20a、給水温度センサ25、一般用流量センサ73、一般用温度センサ75、風呂用流量センサ85、または風呂用温度センサ87の検知結果とを用いて、前述した給湯運転を制御する。また、一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160への給湯が開始されると一般用温度センサ75の検知温度を監視し始め、一般用温度センサ75の検知温度が第1の条件値以上になると、該検知温度の上昇が一般給湯先150への微少流量の湯の給湯(パッキンの経年劣化等による漏水を含む)によるものであるのか、湯の回り込みによるものであるのかを判別する。なお、上記第1の条件値は例えばヒトが火傷を負うおそれのある温度であり、貯湯式給湯機130のメーカにより予め定められて記憶部95に格納される。
上記の判別を行うために、給湯制御部93bは、まず、浴槽160への給湯停止後にタンク温度センサ20a、給水温度センサ25、および一般用温度センサ75の各々の検知温度と、記憶部95に格納されている一般給湯先150への給湯設定温度に係る情報とに基づいて、一般給湯混合弁65の開度を第1の開度に調整する。当該第1の開度は、一般給湯混合弁65で湯と水を混合することで上記第1の条件値よりもある程度低温の湯が得られる開度であればよく、例えば前述した安定給湯開度とすることができる。
次いで、一般用温度センサ75の検知温度の変動値をとる。例えば、一般給湯混合弁65の開度を第1の開度に調整した後に一般用温度センサ75の検知温度に係る情報を取得し、その後、所定時間をあけて一般用温度センサ75の検知結果に係る情報を再び取得し、後から取得した情報に基づく検知温度と先に取得した情報に基づく検知温度との差を求めることで上記検知温度の変動値をとることができる。
一般給湯混合弁65の開度を第1の開度に調整した後、一般用温度センサ75の検知温度に係る情報を最初に取得してから次に取得するまでの待機時間は、例えば貯湯式給湯機130のメーカにより予め定められて記憶部95に格納される。給湯制御部93bは、一般用温度センサ75の検知温度に係る情報を最初に取得したときに計時部93cに計時を開始させ、該計時結果が上記の待機時間になると一般用温度センサ75の検知温度に係る情報を再び取得し、計時部93cの計時結果をクリアする。
一般給湯先150への給湯がないときには、上記の変動値は実質ゼロ(℃)になる。一方、一般給湯先150に湯が給湯されているときには、一般給湯混合弁65の開度を上記第1の開度にしたことにより一般給湯混合弁65での湯の混合比率が高くなるので、上記の変動値がゼロ(℃)よりも大きな値、例えば1.5(℃)以上となる。貯湯式給湯機130では、一般給湯先150に湯が微少流量給湯されていると判断すべき最小の変動値(以下、「第2の条件値」という)が例えばメーカにより予め定められて、記憶部95に格納される。給湯制御部93bは、当該第2の条件値と上記の変動値との大小関係を判別することで、浴槽160への給湯中に一般用温度センサ75の検知温度が第1の条件値以上になった原因が湯の回り込みにあるのか、一般給湯先への微少流量の湯の流れにあるのかを判別する。
そして、浴槽160への給湯中に一般用温度センサ75の検知温度が第1の条件値以上になった原因が一般給湯先150への微少流量の湯の流れにあると判断されたときには、一般用温度センサ75の検知温度と一般給湯先150への給湯設定温度に係る情報とに基づいて、一般用温度センサ75の検知温度が給湯設定温度となるように一般給湯混合弁65の開度をフィードバック制御する。その結果として、一般給湯先150からは上記給湯設定温度の湯が出湯することになる。浴槽160への給湯停止後にユーザが一般給湯先150で湯を消費するときに、高温の湯が出湯してしまうということが防止される。一方、浴槽160への給湯中に一般用温度センサ75の検知温度が第1の条件値以上になった原因が湯の回り込みにあると判断された場合には、一般給湯先150への給湯が開始されるまで、給湯制御部93bは一般給湯混合弁65の開度を調整しない。
図3は、浴槽への給湯時における風呂給湯混合弁への湯や水の回り込みの一例を示す概略図である。同図は、一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160(図1参照)に給湯したときに生じる湯や水の回り込みを示している。
例えば、浴槽160内の浴水160a(図1参照)の温度を下げる(温くする)ために浴槽160へ水を供給するときには、風呂給湯混合弁70の開度が水側全開にされて該風呂給湯混合弁70の出口が大気開放状態になることから、給湯管路50内の湯との間で圧力差が生じる。このとき、風呂給湯混合弁70での湯側は閉弁されてはいるものの、一般給湯混合弁65での湯側は該一般給湯混合弁65を安定給湯開度に保っていることから開弁状態になっている。そのため、図3中に一点鎖線の矢印BH2で示すように、給湯管路50からの湯が一般給湯混合弁65を通って風呂給湯混合弁70に回り込み、風呂用給湯管路90に流入する。
同様のことが、浴水160aの温度を上げるために浴槽160に高温の差し湯を供給するときにも起こる。この場合には、図3中に破線の矢印BC2で示すように、第2給水管部30bからの水が一般給湯混合弁65を通って風呂給湯混合弁70に回り込み、風呂用給湯管路90に流入する。なお、図3中の実線の矢印BH1は、給湯管路50から風呂給湯混合弁70に直接流入して風呂用給湯管路90に流出する湯の流れを示しており、実線の矢印BC1は、第2給水管部30bから風呂給湯混合弁70に直接流入して風呂用給湯管路90に流出する水の流れを示しており、参照符号「80」は一般用給湯管路を示している。
なお、上述した湯や水の回り込みは、例えば給湯管路50から第2給水管部30bへの湯の流入および第2給水管部30bから給湯管路50への水の流入を逆止弁のようなもので遮断するといった方法でも防止可能である。ただし、機械的手段により湯や水の回り込みを防止した場合には、当該機械的手段が経年劣化にしたときに部品の交換が必要になったり、給湯機本体110(図1参照)の小型化を図り難くなったりする。
浴槽160への給湯中に上述のような湯や水の回り込みが起きても、当該回り込みにより一般給側湯混合弁65の周りの配管に滞留したままとなる湯や水の量は少ない。仮に高温の湯の回り込みが起きても、一般給側湯混合弁65の周りの配管に高温の湯が多量に滞留することはないので、浴槽160への給湯停止後に一般給湯先150を開栓しても、高温の湯が出湯することはない。したがって、図2に示した給湯制御部93bは、前述した一般用温度センサ75の検知温度が第1の条件値以上になった原因が湯の回り込みにあると判断された場合には、一般給湯先150への給湯が開始されるまで一般給湯混合弁65の開度を調整しない。
図1に示した貯湯式給湯機130は、一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯したときに上述のようにして一般給湯混合弁65の開度を調整するので、一般用流量センサ73では検知できない微少流量の湯が浴槽160への給湯中に一般給湯先150に給湯されていたとしても、一般給湯先150から高温の湯が出湯してしまうことが防止される。また、浴槽160への給湯中に湯の回り込みが起きても、当該湯の回り込みを一般給湯先150への微少流量の湯の給湯と誤認しないので、浴槽160への給湯停止後に一般給湯先150に給湯したときに「給湯温度の落ち込み」が起きてしまうことが防止される。これらの理由から、貯湯式給湯機130では、浴槽160への給湯停止後に一般給湯先150に給湯するときの給湯温度が安定する。当該貯湯式給湯機130は、ユーザにとって使い勝手のよい給湯機である。
一般給湯先150への給湯停止中に浴槽160に給湯したときにおける一般給湯混合弁65の開度調整に係る手順は特に限定されるものではなく、種々の手順を採用することができる。以下、図1または図2で用いた参照符号を適宜引用しつつ図4を参照して、上記の手順の一例を具体的に説明する。
図4は、一般給湯先への給湯停止中に浴槽に給湯したときにおける一般給湯混合弁の開度調整に係る手順の一例を示すフローチャートである。図示の例では、貯湯式給湯機130の制御装置100(図1参照)がステップS1〜S19の処理を繰り返し行って、一般給湯混合弁65および風呂給湯混合弁70(図1参照)それぞれの開度を制御する。
最初に行われるステップS1は、一般給湯先150への給湯および浴槽160(図1参照)への給湯の各々が一定時間以上停止されている初期状態下で始められる。このステップS1では、一般用流量センサ73(図1参照)の検知結果に基づいて、一般給湯先150への給湯(以下、「一般給湯」と略記する)が行われているか否かを制御装置100の給湯制御部93b(図2参照)が判断する。当該ステップS1で一般給湯が行われていないと判断されたときには該ステップS1を繰り返し、一般給湯が行われていると判断されたときにはステップS2に進む。
ステップS2では、記憶部95(図2参照)に格納されている一般給湯先150への給湯設定温度に係る情報と、タンク温度センサ20a、給水温度センサ25、および一般用温度センサ75(図1参照)それぞれの検知温度とを用いて、一般給湯先150への給湯温度がユーザによる設定温度となるように給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を調整する。
次いで行われるステップS3では、一般用流量センサ73の検知結果に基づいて、一般給湯が停止されたか否かを給湯制御部93bが判断する。このステップS3で一般給湯が停止されていないと判断されたときにはステップS2に戻って該ステップS2以降を繰り返すことで一般給湯先150への給湯温度をフィードバック制御し、一般給湯が停止されたと判断されたときにはステップS4に進む。
ステップS4では、記憶部95に格納されている一般給湯先150(図1参照)への給湯設定温度に係る情報に基づいて、給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を予め定められた時間に亘って安定給湯開度に調整する。ステップS2で調整した一般給湯混合弁65の開度に係る情報を給湯制御部93bが記憶部95に格納し、該情報に基づいて、ステップS4で給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を安定給湯開度に調整するように貯湯式給湯機130(図1参照)を構成してもよい。
次いで行われるステップS5では、浴槽160への給湯(以下、「風呂給湯」と略記する)が行われているか否かを給湯制御部93bが判断する。この判断は、例えば給湯制御部93bが電磁弁83(図1参照)に開指令を出したか否かに基づいて行われる。当該ステップS5で風呂給湯が行われていないと判断されたときにはステップS6に進み、前述したステップS1におけるのと同様にして、一般給湯が行われているか否かを給湯制御部93bが判断する。そして、当該ステップS6で一般給湯が行われていると判断されたときにはステップS2に戻って該ステップS2以降を繰り返し、一般給湯が行われていないと判断されたときにはステップS4に戻って該ステップS4以降を繰り返す。
一方、上述のステップS5で風呂給湯が行われていると判断されたときにはステップS7に進んで、記憶部95に格納されている浴槽160への給湯設定温度に係る情報と、タンク温度センサ20a、給水温度センサ25、および風呂用温度センサ87(図1参照)それぞれの検知温度とを用いて、浴槽160への給湯温度がユーザによる設定温度となるように給湯制御部93bが風呂給湯混合弁70の開度を調整する。
次いで行われるステップS8では、一般用温度センサ75の検知温度と記憶部95に格納されている第1の条件値とに基づいて、一般用温度センサ75の検知温度が第1の条件値以上であるか否かを給湯制御部93bが判断する。このステップS8で一般用温度センサ75の検知温度が前述した第1の条件値以上ではない、すなわち第1の条件値未満であると判断されたときにはステップS9に進み、風呂給湯が停止されたか否かを給湯制御部93bが判断する。この判断は、例えば給湯制御部93bが電磁弁83に閉指令を出したか否かに基づいて行われる。当該ステップS9で風呂給湯が停止されていないと判断されたときにはステップS7に戻って該ステップS7以降を繰り返すことで浴槽160への給湯温度をフィードバック制御し、風呂給湯が停止されたと判断されたときにはステップS5に戻って該ステップS5以降を繰り返す。
また、上記のステップS8で一般用温度センサ75の検知温度が第1の条件値以上であると判断されたときにはステップS10に進み、風呂給湯中に一般給湯先150から高温の湯が出湯しないように、給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を調整して該一般給湯混合弁65での水の混合比率を増大させる。
次いで行われるステップS11では、前述したステップS9におけるのと同様にして、風呂給湯が停止されたか否かを給湯制御部93bが判断する。このステップS9で風呂給湯が停止されていないと判断されたときにはステップS7に戻って該ステップS7以降を繰り返すことで浴槽160への給湯温度をフィードバック制御し、風呂給湯が停止されたと判断されたときにはステップS12に進む。
ステップS12では、タンク温度センサ20a、給水温度センサ25、および一般用温度センサ75の各々の検知温度と、記憶部95に格納されている一般給湯先150への給湯設定温度に係る情報および前述した第1の開度に係る情報とに基づいて、給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を第1の開度に調整する。
次いで行われるステップS13では、給湯制御部93bが一般用温度センサ75から現在の検知温度αに係る情報を取得し、計時部93cに計時を開始させる。ステップS14では、計時部93cの計時時間が所定の時間に達するまで給湯制御部93bが待機する。当該時間が経過すると、給湯制御部93bが計時部93cの計時結果をクリアさせてステップS15に進み、一般用温度センサ75から現在の検知温度βに係る情報を給湯制御部93bが取得する。
ステップS16では、ステップS13で取得した検知温度αに係る情報と、ステップS15で取得した検知温度βに係る情報と、記憶部95に格納されている第2の条件値とに基づいて、浴槽160への給湯停止後における一般用温度センサ75の検知温度の変動値が第2の条件値以上であるか否かを給湯制御部93bが判断する。上記の変動値は、上記検知温度βと検知温度αとの差を給湯制御部93bが求めることにより算出される。
このステップS16で上記の変動値が第2の条件値以上であったときには、一般給湯先150に微少流量の高温の湯の給湯があるものと給湯制御部93bが判断するステップS17を行った後にステップS18に進み、一般給湯先150から高温の湯が出湯しないように、給湯制御部93bが一般給湯混合弁65の開度を調整して該一般給湯混合弁65での水の混合比率を増大させる。例えば、一般給湯混合弁65を水側全開にする。この後、ステップS1に戻って該ステップS1以降を繰り返す。
一方、ステップS16で上記の変動値が第2の条件値未満であったときには、浴槽160への給湯中に高温の湯の回り込みが生じたものと給湯制御部93bが判断するステップS19を行った後にステップS1に戻り、該ステップS1以降を繰り返す。したがって、浴槽160への給湯中に高温の湯の回り込みが生じたものと判断されたときには、一般給湯混合弁65の開度を調整することなく初期状態に戻る。
以上、本発明の貯湯式給湯機について実施の形態を挙げて説明したが、前述のように、本発明は上記の形態に限定されるものではない。本発明の貯湯式給湯機は、貯湯タンク内の湯を出湯側が二股分岐した給湯管路により一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに供給すると共に、水源からの水を出水側が二股分岐した給水管路により一般給湯混合弁と風呂給湯混合弁とに供給するタイプの貯湯式給湯機であって、下記の3つの機能を有しているものであれば基本的によく、これらの機能以外は適宜変更可能である。
上記3つの機能とは、浴槽への給湯中に一般給湯先へ微少流量の湯の供給があったか、湯の回り込みがあったかを判別する機能と、浴槽への給湯中に一般給湯先へ微少流量の湯の供給があったときには、一般給湯混合弁の開度を制御して一般給湯先から高温の湯が出湯してしまうのを防止する機能と、浴槽への給湯中に湯の回り込みがあったときには、一般給湯先で「給湯温度の落ち込み」が起こらないように、一般給湯混合弁での水の混合比が増大するような開度制御は行わない機能である。
一般給湯混合弁の開度を前述した第1の開度に調整した後に生じる一般用温度センサの検知温度の変動値が第2の条件値以上のとき、すなわち浴槽への給湯中に一般給湯先へ微少流量の湯の供給があったときの一般給湯混合弁の開度の調整は、実施の形態で説明したように調整する他に、一般用温度センサの検知温度が一般給湯先の給湯設定温度(ユーザによる設定温度)となるように一般給湯混合弁の開度をフィードバック制御することで調整してもよい。
本発明の貯湯式給湯機では、水を湯に沸き上げる熱源機としてヒートポンプユニット以外の熱源機、例えば電熱式のヒータやガス燃焼装置等を用いることもできる。熱源機は、その種類に応じて、貯湯タンクの外側または貯湯タンクの内側に配置される。また、貯湯タンクに貯留した湯を熱源として用いる熱交換器を設け、該熱交換器により浴槽や温水式床暖房装置で用いられて温度低下した湯を再加熱する機能を付加することもできる。本発明については、上述した以外にも種々の変形、修飾、組み合わせ等が可能である。