JP5241730B2 - 光電場増幅素子を用いたプローブ - Google Patents

光電場増幅素子を用いたプローブ Download PDF

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Description

本発明は、光電場を増幅する光電場増幅素子を用いたプローブに関する。
各種の光学素子に関して、光電場を増幅する手段が研究・開発されており、金、銀、銅などの金属微粒子を用いるものが知られているが、これを超える増幅を行える手段が要求されるにいたった。
本発明はこのような実情に鑑み、ナノロッドが光励起力の増幅機能を有する点を発見し、それを利用した素子とプローブを提供することを目的とした。
発明1のプローブはラマン散乱分光に用いる金属からなるプローブであって、その本体の表面に、導電層と絶縁層とが積層されてなるナノロッドからなり、前記ナノロッドの組成がWO (2.5≦x≦3)である、光電場を増幅する光電場増幅素子が一個または複数、立設されてなり、前記光電場増幅素子が、酸化タングステンナノロッドを大気中でレーザ照射することによって局所的に酸化させて得られたものであり、10 10 以上のラマン散乱増強効果を示し、単分子のラマン散乱が検出可能であることを特徴とする。
発明2のプローブは、ラマン散乱分光に用いる金属からなるプローブであって、その本体の表面に、導電層と絶縁層とが積層されてなるナノロッドからなり、前記ナノロッドの組成がWO (2.5≦x≦3)である、光電場を増幅する光電場増幅素子が一個または複数、立設されてなり、前記光電場増幅素子が、酸化タングステンナノロッドを炭素または一酸化炭素存在下で加熱することによって局所的に還元させて得られたものであり、10 10 以上のラマン散乱増強効果を示し、単分子のラマン散乱が検出可能であることを特徴とする。
発明3のプローブは、発明1または発明2のプローブにおいて、前記光電場増幅素子が、WO (2.5≦x≦3)の組成であり、直径10〜100nmで長さ100nm〜30μmのロッド状の酸化タングステン結晶であることを特徴とする。
発明4のプローブは、発明1または発明2のプローブにおいて、前記光電場増幅素子が、結晶内に{001}Crystallographic shear構造を有し、原子層レベルの導電面が絶縁体層で隔たれたナノギャップ構造を持つことにより高いラマン散乱増強効果を示す酸化タングステンナノロッドであることを特徴とする。
発明5のプローブは、発明1または発明2のプローブにおいて、酸化タングステンナノロッドのラマン散乱増強効果により、水溶液中で1nM以下の希薄な濃度で存在する分子の検出できることを特徴とする。
発明6のプローブは、発明1または発明2のプローブにおいて、酸化タングステンナノロッドのラマン散乱増強効果により、水溶液中で単分子の分子振動を検出できることを特徴とする。
発明7のプローブは、発明1または発明2のプローブにおいて、酸化タングステンナノロッドに光を照射することによってナノロッド近傍に存在する分子を光あるいは熱によって励起することにより化学反応を局所的に引き起こすことを特徴とする。
本発明のプローブに用いる光電場増幅素子によれば、それ自体であるいは母体に接着することで、従来にはない高い光電場増幅を実現できる。
また、上記光電場増幅素子を結晶成長させて表面に立設することでナノギャップ間隔が均一化させることできるので、長期間安定してラマン散乱の増強効果を得ることができる。また、ギャップの間隔は結晶成長時に決まるので、成長条件によりギャップの間隔を制御可能である。
さらに、本発明のプローブによれば、ラマン散乱分光が飛躍的に増強され、従来では不可能であった様々な高精度分析が可能になる。
図1は、酸化タングステンナノロッドの構造を示す模式図である。 図2は、増強ラマン散乱の従来技術を示す模式図である。 図3は、W11酸化タングステンナノロッドの結晶構造を示す模式図である。 図4は、W14酸化タングステンナノロッドの結晶構造を示す模式図である。 図5は、W1849酸化タングステンナノロッドの結晶構造を示す模式図である。 図6は、W14酸化タングステンナノロッドの結晶構造を示す模式図である。 図7は、酸化タングステンのCS構造の模式図である。 図8は、酸化タングステンナノロッドプローブを用いて得られたSi基板上ナノワイヤの走査トンネル顕微鏡像(1μm×1μm)の図である。 図9は、酸化タングステンナノロッドの作製方法の模式図である。 図10は、金属プローブ先端に成長した酸化タングステンナノロッドのSEM像の図である。 図11は、本発明の酸化タングステンナノロッド先端を示すTEM写真である。 図12は、電解質水溶液中における分子の吸脱着をナノロッドプローブによる増強ラマンにより観察するためのセットアップの模式図である。 図13は、電解質水溶液中におけるローダミン6G分子の吸脱着によるブリンキングを観察したときの図である。 図14は、酸化タングステンナノロッド上のドーパミン分子のラマンスペクトルを示す図である。 図15は、吸着COのラマンマッピング(単一分子レベルのCOを検出)を示す図である。 図16は、吸着13COおよび吸着12COのラマン散乱スペクトルを示す図である。 図17は、吸着CO分子のピーク強度の時間依存性(ブリンキングを示している)を示すグラフである。 図18は、ナノロッドによる局所反応誘起前後の光学顕微鏡像の図である。 図19は、ナノロッドによる局所反応誘起により生成したアモルファスカーボンのラマン散乱スペクトルを示す図である。 図20は、酸化タングステンナノロッドに球状のアモルファスカーボンが付着していることを示すSEM像の図である。 図21は、酸化タングステンナノロッドに付着したアモルファスカーボンのラマン散乱スペクトルを示す図である。 図22は、酸化タングステンナノロッドを先端に一本だけ取り付けた原子間力顕微鏡ティップの光学顕微鏡像の図である。
以下、本発明の光電場増幅素子を用いたプローブの実施形態について詳細に説明する。
本発明者らは、酸化タングステンナノロッドが光電場増強効果を持つことを見出し、この効果を利用した各種の母材に適用することで、その機能を大幅に向上することができた。本明細書において、「ナノロッド」とは直径が10〜100nmで長さが100nm〜30μmのロッド状結晶のことをいう。
本発明で用いる光電場増幅素子は、光電場を増幅する素子であって、導電層と絶縁層とが積層されて構成される。以下においては、酸化タングステンナノロッドからなる光電場増幅素子を中心に説明する。
図1は、酸化タングステンナノロッドの構造を示す模式図である。図1に示すように、酸化タングステンナノロッドにはロッドの長軸に平行方向に酸素欠損面が形成されている。この酸素欠損面が原子レベルの薄さを持つ導電面となっている。また、導電面同士は数nmの厚さの絶縁体(WO)で隔てられており、このようなナノサイズの層状構造が光電場増強に大きく寄与しているのではないかと考えられる。それは、従前より知られた以下のような金、銀、銅などの金属微粒子による効果より推測しえる。
ナノメータースケールの金属微粒子には局在表面プラズモンが存在し、この表面プラズモンを光照射によって励起することによって、金属微粒子表面には著しく増強された局在電磁場が形成される。この増強された電磁場の効果で金属微粒子表面に吸着した分子のラマン散乱強度も著しく増強される。通常のラマン散乱分光では、その散乱断面積が10-30cm/moleculeと非常に小さいため微量分子の検出は不可能である。しかし、金、銀、銅などの金属微粒子を用いた表面増強ラマン散乱を用いると1010〜1015という非常に大きな増強効果が得られ、単一分子のラマン散乱が検出可能となる。特に著しい増強効果が得られるのは、金属微粒子が複数個凝集した際に形成する微粒子間のナノギャップ部分であることが知られている。図2に、増強ラマン散乱の従来技術(金属微粒子)を模式図で示す。
従来、単一分子レベルの増強ラマン散乱分光を可能にする電場増強を与えるのは金、銀の微粒子に限られていた。しかも、微粒子が凝集することによってできるナノギャップにおいてのみ単一分子ラマン分光は実現できる。
本発明では酸化タングステンナノロッドの結晶構造自体に導電面が絶縁層で隔てられた構造が含まれており、結晶構造内にナノギャップが存在する。この構造により、著しく大きな電場増強効果が期待でき、実際に酸化タングステンナノロッドを用いて単一分子ラマン分光を実現した。
タングステンの中間酸化物はxが2から3の間で様々な値をとる。バルク結晶の場合には酸素分圧とアニール温度を制御することによって組成を制御することが可能であるが、ナノロッドのような微結晶では組成制御は難しい。実際に様々な組成の酸化タングステンナノロッドが報告されている。
今回の光電場増強効果を特に顕著に示す構造は図3、図4の{001}CS(Crystallographic shearの略。以下同じ)構造であると考えられる。図3はW11酸化タングステンナノロッドの結晶構造を示す模式図、図4はW14酸化タングステンナノロッドの結晶構造を示す模式図である。このCS構造では、酸素欠損により結晶内に剪断構造が生じている。この{001}CS構造の一般式はW3n-1(nは整数)であり、最小のnは2である。n=2,3,4,5,6に対応する化学式はW=WO2.5,W=WO2.67,W11=WO2.75,W14=WO2.8,W17=WO2.83であり、n列ごとに欠損面が入っていることを表している。
さらに大きいnの値をとることも可能であり、また、様々なnの値が1つのナノロッド内で混在する場合もある。従って、WOのxの値は2.5から3の間でほぼ連続的に変化可能と考えられる。
これに対し図5に示すW1849=WO2.72酸化タングステンナノロッド構造はより複雑なネットワーク構造を持っている。このW1849は、γ酸化タングステンとよばれ、安定な中間酸化物の一つである。この酸化物も導電性があるので{001}CS構造ではないが光電場増強効果を有すると考えられる。
図6に示すネットワーク構造のW14酸化タングステンナノロッドについては導電性に関するデータがないが、この構造も光電場増強効果を有すると考えられる。
また、酸素欠損の量が少ない場合、すなわちより大きいxの場合には{102}CS構造、{103}CS構造という{001}CS構造とは別の方向に酸素欠損面が入る構造が現れることもバルク結晶では知られている。{102}CS構造はxの値が2.93〜2.98の領域で現れる。{103}CS構造はxの値が2.87〜2.93の領域で現れる。この場合の電気伝導特性は{102}CS構造は半導体的、{103}CS構造は金属的であるが、いずれも抵抗率は高い。したがって{102}CS構造、{103}CS構造は、あまり大きな電場増強効果は示さないと考えられる。図7は、酸化タングステンのCS構造の模式図である。
次に、本発明の光電場増幅素子を用いたプローブについて説明する。
本発明のプローブは、ラマン散乱分光に用いる金属からなるプローブであって、その本体の表面に前述の光電場増幅素子が一個または複数(多数)立設されて構成される。以下、光電場増幅素子が酸化タングステンナノロッドである場合を中心に説明する。
酸化タングステンナノロッドは先鋭化された金属プローブの先端に成長させることができる。さらに増強ラマンの活性サイトはナノロッド先端に存在するので、これを固体表面に近接させて走査すれば、光を走査する方法では得ることができない光の回折限界を超えた空間分解能で、表面に存在する分子の情報が得られる。プローブを用いた増強ラマン散乱は金や銀のプローブを用いて実現されているが、単分子ラマン散乱を実現できるほどの増強度は得られていない。また、微粒子集合体をプローブ先端にその構造を保ったまま取り付けるのは困難であり実現されていない。本発明の酸化タングステンナノロッドを用いたプローブは、この単分子ラマン散乱の実現を可能にする。
酸化タングステンナノロッドを実際の走査プローブ顕微鏡のプローブとして用いることができることはすでに確認しており、図8に酸化タングステンナノロッド(直径20nm:長さ300nm)をプローブとして用いて得られたSi基板上ナノワイヤの走査トンネル顕微鏡像(1μm×1μm)を示す。
本発明のプローブに用いる酸化タングステンナノロッドは、図9に模式的に示す作製方法により作製することができる。基材としては、例えば電解研磨法によって尖鋭化したタングステンを用いる。このタングステン上にタングステン箔から酸化タングステンを蒸着することによって成長させる。超高真空槽内を5×10−7〜5×10−5Torrの範囲の圧力の酸素で満たし、その条件でタングステン箔を1000〜1300℃に加熱することによって酸化タングステンを昇華させる。この酸化タングステンを600〜800℃に加熱したタングステン上に蒸着することによって、WOナノロッドを成長させることができる。WOナノロッドは基材であるタングステンに対してエピタキシャルな成長を示す。従来のナノロッド作製方法では、このようなエピタキシャルな成長方法は行われておらず、生成するWOナノロッドのxの値は多岐にわたる。本成長方法では、エピタキシャルな成長であることと、超高真空槽を用いたクリーンな方法であるため比較的組成の揃ったWOナノロッドを作製することができる。図10に、金属プローブ先端に成長した酸化タングステンナノロッドの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。また、図11に、本発明の酸化タングステンナノロッド先端を示す透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。
次に、本発明のプローブの応用例について述べる。すべての応用例について、WOナノロッドの中で{001}CS構造を持つもの(x=2.5〜3)が使用可能である。可視光領域であれば、どの波長でも増強効果を示す。特に500nm付近で高い増強効果を示すが、このピーク波長はナノロッドの構造を制御することによって、調節することができると考えられる。
[蛍光顕微鏡による単一分子検出]
単一分子検出が可能な方法として色素分子を用いた蛍光顕微鏡法があるが、あらかじめ色素分子によるマーキングが必要である。
色素分子の褪色により長時間の観察が困難、光の回折限界を超えた位置分解能は得られない、などの問題点がある。本発明の酸化タングステンナノロッドを用いたセンサーによる増強ラマン散乱分光を用いれば、これらの問題点を解決した単一分子検出が可能になり、さらにその分子が存在している環境に関する詳細な情報が得られると考えられる。
[分子識別プローブ(センサー)]
酸化タングステンナノロッドの著しく大きい光電場増強効果を用いると単一分子のラマンスペクトルが得られる。ラマンスペクトルが得られれば分子構造が明らかになるので、プローブ先端に存在する極微量分子を同定、識別できる。また、プローブを走査することにより微量分子のマッピングを行うことができる。酸化タングステンナノロッドは水溶液中、有機溶媒中でも安定であるので、微量分子の3次元的な分布を原子分子スケールの非常に高い空間分解能で得ることができる。実際に水溶液中にnMレベルで存在する微量ローダミン6G分子をラマンスペクトルから識別することができている。このプローブは非常に広い範囲の応用が考えられる。例えば、生物分野では、微量タンパク質、生体信号伝達物質の同定、DNA塩基配列の解読、生体細胞内の物質輸送過程の解明などに応用できる。また、化学分野では、触媒反応における局所活性サイトの解明、反応中間体の同定による反応機構解明、燃料電池の電極表面解析などに応用できる。
図12に示すように、酸化タングステンナノロッドが成長したタングステンティップを電解質水溶液に浸漬し、作用極とし、対極に白金ワイヤ、参照極に銀ワイヤを用いて電気化学的に作用極の電位を制御しつつ、ティップ先端に成長しているナノロッドの中の一本にレーザ光を照射し、ラマン散乱を観察した。ここで使用しているナノロッドはあらかじめ大気中で波長514.5nm、強度0.5mW/μmでレーザ照射することにより、ナノロッド先端付近で特に大きなラマン散乱の増強効果が得られるようにしてあるものである。
図12に示すように、電解質溶液には1nMの非常に微量なローダミン6G分子が存在している。作用極の電位を−100mV vs Ag/AgClにすることによりローダミン6G分子の単分子吸脱着がブリンキングとして観察される。図13は1360cm−1付近のピークの強度を時間の関数でプロットしたものである。図13の下図で現れるピークはWOxナノロッドへ単分子が吸着することによるものである。図13の下図のそれぞれのピークで得られるローダミン6G分子のスペクトルはピークの強度比、波数が毎回異なる値を示し、この結果からも単分子レベルの吸脱着を観察していることが分かる。
一方、ドーパミン分子は神経細胞のシナプスにおいて情報伝達に使われる分子の一つである。0.1M NaCl + 50μM ドーパミン水溶液に僅かに酸化した酸化タングステンナノロッドを浸漬してナノロッド先端のラマン散乱分光を行った。実際の実験配置はローダミン6G分子のブリンキングを観察したときと同様である。図14に示すようにナノロッド表面に吸着したドーパミン由来のピークが観察されている。
[同位体識別プローブ]
従来の金、銀微粒子では、ナノギャップは微粒子間に一個のみ存在するが、ナノロッド内ではナノギャップが積層した構造を作ることができ、従来よりも大きいラマン散乱の増強度を得ることができる。従来、単一分子ラマン散乱分光が可能な分子は、分子自体が共鳴効果によって大きなラマン散乱断面積を有する色素分子に限られていたが、酸化タングステンナノロッドでは色素分子ではない一酸化炭素分子でも単一分子ラマンの検出に成功している。図15に、吸着COのラマンマッピング(単一分子レベルのCOを検出)の説明図を示す。実際に炭素の同位体を用いて、12COと13COを1:1の割合で酸化タングステンナノロッドに吸着させた場合に、ある一つの増強ラマン活性サイトでは、どちらか一方の同位体のみが観察されることから、単分子レベルの検出が可能であることを証明した。図16に、吸着12COと吸着13COのラマンスペクトルを示す。このように、ラマン分光は振動分光であるため、質量の異なる同位体元素を振動数の違いから識別できる。このプローブを用いると微量サンプルの年代測定が可能になる。また、CO分子についてブリンキングも観察された。図17に、吸着CO分子のピーク強度の時間依存性を示す。ブリンキングとは、ピーク強度、波数が時間と共に変動する現象であり、単分子ラマンの直接的な証拠とされている。このような単一分子検出が可能な特に著しい電場増強を示すナノロッドは成長したナノロッドをわずかに酸化あるいは還元することによって実現できる。酸化タングステンナノロッドの局所酸化は大気中で0.1mW/μm〜10mW/μmの強度でスポット径1μmに絞ったレーザ光を照射することによって行うことができる。
[局所化学反応誘起素子]
酸化タングステンナノロッドに光を照射することによってナノロッド近傍に存在する分子を光あるいは熱によって励起することにより化学反応を局所的に引き起こす。実際にオイル中でナノロッドに光照射することによって局所的にアモルファスカーボンを形成した実験結果がある。応用例としては生体細胞内での局所化学反応誘起、局所的な細胞破壊、癌治療が挙げられる。
オイル(ポリブテン60%,ジアリールアルカン40%)中において酸化タングステンナノロッドの先端部分にスポット径1μm、強度0.8mWでレーザ照射(514.5nm)を行うと光学顕微鏡像(図18)に見られるように黒いスポット(右側の図)が現れる。このスポット部分のラマン散乱スペクトルを観察すると図19に示すようなアモルファスカーボンに特徴的なピークが現れる。これは、オイルを構成する分子が光または熱によって分解したことを表している。ナノロッドが存在しない領域で同じ強度の光を照射しても反応は起こらないことから、有機分子の分解は酸化タングステンナノロッドによって誘起されていることが分かる。
タングステンティップ上に成長させた酸化タングステンナノロッドを光学顕微鏡下でシリコン基板に接触させることによって、ナノロッドに力を加え機械的に切断し、シリコン基板上に分散させた。光学顕微鏡像(図18)は100倍の油浸対物レンズを用い、ナノロッドをオイルに浸漬させた状態で観察した。
[光触媒としての使用]
酸化タングステンナノロッド表面自体に触媒活性が存在する。図20のSEM像に示すように酸化タングステンナノロッド表面には大気中でアモルファスカーボンが生成する。ナノロッドに付着している球状のものがアモルファスカーボンである。図21に付着しているものがアモルファスカーボンであることを示すラマン散乱スペクトルを示す。これは大気中の有機分子が分解することによって生成したものと考えられる。このアモルファスカーボンの生成は光照射によって促進されるので、酸化タングステンナノロッドを可視光領域の光で利用できる光触媒として用いることができる。
[原子間力顕微鏡ティップへの固定]
局所分子プローブとして使用する場合に酸化タングステンナノロッドプローブを原子間力顕微鏡のプローブとして用いることは重要である。タングステン基板上に多数成長させた酸化タングステンナノロッドの中の1本を光学顕微鏡下で微動ステージを用いて原子間力顕微鏡(AFM)のティップ先端に接触させる。その後、図22に示すようにナノロッドとティップの接点にレーザを照射することによってナノロッドをティップに固定できる。
次に、本発明の実施例を述べる。
実施例1
基材として先端を電解研磨法により先鋭化させたタングステン多結晶ワイヤで根本の太さが0.25mm、長さ20mmのものを用いた。図9に模式的に示すようなセットアップで、超高真空槽内を圧力6×10−6Torrの酸素で満たし、その条件でタングステン箔(厚さ0.02mm:蒸着源)を1250℃に加熱して酸化タングステンを昇華させた。この酸化タングステンを730℃に加熱したタングステン基材上に蒸着させ、10時間の成長時間でWOナノロッドを成長させた。
WO、WO等の正規組成以外の中間酸化物のxの値をラマンスペクトルから求める方法は確立していないので、酸化タングステンのラマンスペクトルのピークがxの値に応じて、異なる波数に現れることを利用して、そのピークを基に推測した(以下、同様)。以下で示す酸化タングステンナノロッドの長さおよび直径は得られたナノロッドの平均値を示したものである。
上記で作製したWOナノロッドに、酸素欠損面の秩序化のためのアニールを780℃で、30分施した(処理1−1)。WOナノロッドのxは2.6〜2.9、長さ4μm、直径50nmであった。
次に、このWOナノロッドについてラマン散乱増強度を求めた。ラマン散乱増強度は、ローダミン6G(表1ではRで示す)を用いて前述の方法で測定を行い、バルク結晶が与えるピークと単層の吸着種のピークの強度比から求めた(以下、同様)。その結果、ラマン散乱増強度は2×10であった。
さらに、このWOナノロッドについて、前述した次の応用例への適用の可否を調べた。
(1)分子識別プローブ(単層程度の感度)
(2)分子識別プローブ(単一分子の感度)
(3)同位体識別プローブ(単層程度の感度)
(4)同位体識別プローブ(単一分子の感度)
(5)局所化学反応誘起プローブ
(6)光触媒の高効率化
その結果、(1)、(3)、(5)、(6)への適用が可であることが確認できた。
表1に、実施例で作製したサンプルの実験結果を示し、表2に、実施例のサンプルを用いた結果を示す。
実施例2
実施例1と同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに、上記処理1−1に加え、WOナノロッド表面の反応性を抑えることを目的として、WOナノロッド表面にWSの膜を作るための硫化処理を、780℃で20分、圧力5×10−5Torr(HS)の条件で施した(処理2)。このWOナノロッドのxと寸法は実施例1のものと同じであった。
このWOナノロッドについて、実施例1と同様にして、ラマン散乱増強度を求めた。その結果、1×10であった。さらに、このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例3
実施例1と同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに、上記のような処理は施さなかった。このWOナノロッドのxと寸法は実施例1のものと同じであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例4
実施例1において、基材として単結晶(110)〔表1では「単」で示す〕を用いた以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに、上記のような処理は施さなかった。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じ、長さ2μm、直径30nmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例5
実施例1において、基材として単結晶(110)を用い、タングステン箔の加熱温度を1200℃とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに、上記のような処理は施さなかった。このWOナノロッドのxと寸法は実施例1のものと同じであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例6
実施例1において、タングステン箔の加熱温度を1200℃とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、酸素欠損面の秩序化のためのアニールを850℃で、60分施した(処理1−2)。このWOナノロッドのxと寸法は実施例1のものと同じであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例7
実施例1において、タングステン箔の加熱温度を1200℃とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、水素(D)によるナノロッドの還元処理を圧力10−3Torrで60分施した(処理3)。このWOナノロッドのxと寸法は実施例1のものと同じであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例8
実施例1において、タングステン箔の加熱温度を1200℃とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理1−1を施した。このWOナノロッドのxと寸法は実施例1のものと同じであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例9
実施例1において、酸素圧力を7×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1200℃とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理1−1及び処理2を施した。このWOナノロッドのxと直径は実施例1のものと同じ、長さは5μmであった。このWOナノロッドについて、実施例1と同様にして、ラマン散乱増強度を求めた。その結果、1×10であった。さらに、このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例10
実施例1において、酸素圧力を7×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1200℃とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに、上記のような処理は施さなかった。このWOナノロッドのxと直径は実施例1のものと同じ、長さは5μmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例11
実施例1において、酸素圧力を7×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1110℃とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに、上記のような処理は施さなかった。このWOナノロッドのxと寸法は実施例1のものと同じであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例12
実施例1において、酸素圧力を7×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1110℃とし、成長時間を20時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに、上記のような処理は施さなかった。このWOナノロッドのxと直径は実施例1のものと同じ、長さは5μmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例13
実施例1において、酸素圧力を7×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1120℃とし、成長時間を20時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理1−2を施した。このWOナノロッドのxと直径は実施例1のものと同じ、長さは5μmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例14
実施例1において、酸素圧力を7×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1120℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間は20時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに、上記のような処理は施さなかった。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じで、長さは10μm、直径は75nmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例15
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1110℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を20時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理2を施した。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じで、長さは10μm、直径は75nmであった。このWOナノロッドについて、実施例1と同様にして、ラマン散乱増強度を求めた結果、1×10であった。また、このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例16
実施例1において、酸圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1100℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を20時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理は施さなかった。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じで、長さは10μm、直径は75nmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例17
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1100℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、メタノールによる還元処理を600℃で圧力1×10−4Torrの条件で施した(処理4)。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じで、長さは3μm、直径は30nmであった。このWOナノロッドについて一酸化炭素を用いる方法によりラマン散乱増強度を求めた。ラマン散乱増強度は、単分子が観察されたことから、単分子観察に必要とされている増強度1×1010以上とした。また、このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、(1)〜(6)のすべてに対し適用が可であることが確認された。
実施例18
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1100℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、1μm径に絞ったレーザ光を大気中でWOナノロッドに比較的高い強度で照射することによってナノロッドを局所的に酸化する処理をArレーザ(514.5nm)を1mW/μmで照射して行った(処理5)。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じで、長さは3μm、直径は30nmであった。このWOナノロッドについて実施例17と同様にしてラマン散乱増強度を求めたところ、1×1010以上であった。また、このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、(1)〜(6)のすべてに対し適用が可であることが確認された。
実施例19
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1100℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、COによる還元処理を室温、圧力1Torrで3時間施した(処理6)。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じで、長さは3μm、直径は40nmであった。このWOナノロッドについて実施例17と同様にしてラマン散乱増強度を求めたところ、1×1010以上であった。また、このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、(1)〜(6)のすべてに対し適用が可であることが確認された。
実施例20
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1100℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間は5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記した処理は施さなかった。このWOナノロッドのxと寸法は実施例1のものと同じであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例21
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1100℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理5を施した。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じであった。このWOナノロッドについて実施例17と同様にしてラマン散乱増強度を求めたところ、1×1010以上であった。また、このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、(1)〜(6)のすべてに対し適用が可であることが確認された。
実施例22
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1130℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理は施さなかった。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じ、長さは2μm、直径は30nmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例23
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1200℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理は施さなかった。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じ、長さは2μm、直径は30nmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例24
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1200℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理5を施した。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じ、長さは3μm、直径は30nmであった。このWOナノロッドについて実施例17と同様にしてラマン散乱増強度を求めたところ、1×1010以上であった。また、このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、(1)〜(6)のすべてに対し適用が可であることが確認された。
実施例25
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1250℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理は施さなかった。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じ、長さは4μm、直径は40nmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例26
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1250℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、上記処理5を施した。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じ、長さは4μm、直径は40nmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例27
実施例1において、酸素圧力を5×10−6Torrとし、タングステン箔の加熱温度を1250℃とし、基材の温度を最初は730℃とし、最後は850℃とし、その間は比例して昇温させ、成長時間を5時間とした以外は同様にしてWOナノロッドを作製した。このWOナノロッドに対し、大気にさらすことによって表面に付着するカーボンを用いた還元処理を行い、その後650℃で真空アニールした(処理7)。このWOナノロッドのxは実施例1のものと同じ、長さは4μm、直径は40nmであった。このWOナノロッドについて、前述した応用例への適用の可否を調べたところ、実施例1と同様な結果が得られた。
比較例1
実施例1で用いた基材をそのまま用いて前述した応用例への適用の可否を調べたところ、いずれにも適用ができないことが確認された。

Claims (7)

  1. ラマン散乱分光に用いる金属からなるプローブであって、その本体の表面に、導電層と絶縁層とが積層されてなるナノロッドからなり、前記ナノロッドの組成がWO (2.5≦x≦3)である、光電場を増幅する光電場増幅素子が一個または複数、立設されてなり、前記光電場増幅素子が、酸化タングステンナノロッドを大気中でレーザ照射することによって局所的に酸化させて得られたものであり、10 10 以上のラマン散乱増強効果を示し、単分子のラマン散乱が検出可能であることを特徴とするプローブ。
  2. ラマン散乱分光に用いる金属からなるプローブであって、その本体の表面に、導電層と絶縁層とが積層されてなるナノロッドからなり、前記ナノロッドの組成がWO (2.5≦x≦3)である、光電場を増幅する光電場増幅素子が一個または複数、立設されてなり、前記光電場増幅素子が、酸化タングステンナノロッドを炭素または一酸化炭素存在下で加熱することによって局所的に還元させて得られたものであり、10 10 以上のラマン散乱増強効果を示し、単分子のラマン散乱が検出可能であることを特徴とするプローブ。
  3. 請求項1または2に記載のプローブにおいて、前記光電場増幅素子が、WO (2.5≦x≦3)の組成であり、直径10〜100nmで長さ100nm〜30μmのロッド状の酸化タングステン結晶であることを特徴とするプローブ。
  4. 請求項1または2に記載のプローブにおいて、前記光電場増幅素子が、結晶内に{001}Crystallographic shear構造を有し、原子層レベルの導電面が絶縁体層で隔たれたナノギャップ構造を持つことにより高いラマン散乱増強効果を示す酸化タングステンナノロッドであることを特徴とするプローブ。
  5. 請求項1または2に記載のプローブにおいて、酸化タングステンナノロッドのラマン散乱増強効果により、水溶液中で1nM以下の希薄な濃度で存在する分子の検出をするためのプローブ。
  6. 請求項1または2に記載のプローブにおいて、酸化タングステンナノロッドのラマン散乱増強効果により、水溶液中で単分子の分子振動を検出するためのプローブ。
  7. 求項1または2に記載のプローブにおいて、酸化タングステンナノロッドに光を照射することによってナノロッド近傍に存在する分子を光あるいは熱によって励起することにより化学反応を局所的に引き起こすためのプローブ。
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