以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
[第1の実施形態]
1−1.全体構成の説明
図1は、本発明によるカメラシステムを示すブロック図である。ここでは、ディジタルスチルカメラを具体的な例とした。カメラ1は、ズーミングレンズ3,補正レンズ4,フォーカシングレンズ5,閃光部6,光学ファインダ7,シャッタ8,撮像素子9,制御部10,閃光回路部11,ズーミングレンズ駆動部12,ズーミングレンズ位置検出部13,振れ補正回路部14,フォーカシングレンズ駆動部15,フォーカシングレンズ位置検出部16,シャッタ駆動部17,操作部18,外部液晶モニタ19,集音部30,不揮発性記憶媒体31,操作音発生部32を備えている。
制御部10は、ワンチップマイクロコンピュータ等で構成され、本カメラ1の全制御を受け持つ。制御部10は、機能の上で主制御部10aと振れ制御部10bとに分かれているが、実態は1つの制御手段で構成されている。ただし、これに限られるものではない。例えば、主制御部10aをさらにいくつかの制御ブロックとすることや、複数のワンチップマイクロコンピュータ等で構成することも可能である。また、振れ制御部10bを独立したワンチップマイクロコンピュータ等とし、それぞれの制御ブロックをシリアル通信等で通信し、同様な動作を行うようにしても良い。
鏡筒1b内に設けられたズーミングレンズ3,振れ補正の為の補正レンズ4およびフォーカシングレンズ5は、撮影光学系を構成する。撮像光学系は、被写体からの光をカメラボディ1aに設けられた撮像素子9に結像する。撮像素子9を制御する主制御部10aは、撮像素子9からの信号を画像処理し、撮影結果等を外部液晶モニタ19に表示する。また、主制御部10aは、必要に応じて撮影画像をフラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体31に記憶させ、或いは、不揮発性記憶媒体31から記憶された撮影画像の読み出しを行う。
ズーミングレンズ駆動部12は、ズーミングレンズ3を撮影光軸2の方向に駆動する。ズーミングレンズ位置検出部13は、ズーミングレンズ3の位置を検出する。主制御部10aは、検出されたズーミングレンズ3の位置に基づいてズーミングレンズ3を撮影光軸2の方向に駆動し、撮影光学系の撮影焦点距離を変える。
フォーカシングレンズ駆動部15は、フォーカシングレンズ5を撮影光軸2の方向に駆動する。フォーカシングレンズ位置検出部16は、フォーカシングレンズ5の位置を検出する。主制御部10aは、検出されたフォーカシングレンズ5の位置に基づいてフォーカシングレンズ5を撮影光軸2の方向に駆動し、撮像素子9の撮像面に結像された被写体像のピント状態を調整する。主制御部10aは、撮像素子9に結像された被写体像のピント検出を公知の技術を用いて行う。例えば、撮像素子9から得られた撮像画像に基づいてコントラスト量を検出し、コントラスト量が極値となるフォーカシングレンズ5の位置をピント位置と判断する。
主制御部10aは、シャッタ駆動部17を用いてシャッタ8を制御し、必要なタイミングでシャッタ8の開閉を行う。フラッシュ撮影を行う場合、主制御部10aは、閃光回路部11を通じてキセノン管等を用いた閃光部6を必要なタイミングで発光させる。また、主制御部10aに接続された操作部18を用いることで、ユーザによる撮影モード等の情報の入力および設定が可能である。設定した撮影モード等の情報は、外部液晶モニタ19により表示することができる。
主制御部10aは、集音部30から得られた本カメラ1の周囲音を集音して不揮発性記憶媒体31へ記憶させたり、あるいは、集音されたデータを不揮発性記憶媒体31から読み出したりすることができる。主制御部10aは、音圧ブザー、或いは、スピーカ、及び、その駆動回路等を用いた操作音発生部32により、本カメラ1の電源(不図示)を起動した時や操作部18を操作した場合、セルフタイマ撮影時や撮影時にそれぞれに応じた音を発生させることができる。
1−2.補正レンズ駆動機構
次に、補正レンズ4の駆動機構および位置検出機構に関して記す。図2は駆動機構を示す模式図である。駆動機構は、可動部21に保持された補正レンズ4を、撮影光軸2に垂直な平面内で互いにほぼ直交する方向にシフトさせるものである。カメラ1の鏡筒部1bの部材に固定された固定部20と可動部21との間には、摺動ボール22が配設されている。可動部21が付勢バネ23により固定部20方向に付勢されることにより、固定部20と可動部21との間に摺動ボール22が把持される。
本実施の形態では、摺動ボール22と付勢バネ23とが、それぞれ3対設けられている。各摺動ボール22が、固定部20と可動部21との間を転がる、或いは、摺動することで、補正レンズ4は撮影光軸2(図1参照)と略垂直な平面内を滑らかに移動することができる。なお、可動部21には摺動ボール22を取り囲むように可動部突起21a,21bが設けられ、固定部20には固定部突起20a,20bが設けられている。これらの突起により、摺動ボール22が所望の位置範囲内に止まると共に、可動部21の可動範囲が制限される。
図3は、補正レンズ4の可動範囲の一例を示す図である。補正レンズ4は、可動部突起21a、21b及び固定部突起20a、20bにより、一辺の長さを2×LRrangeとする正方形状の可動範囲400内に移動を限定される。なお、本実施形態では、補正レンズ4の可動範囲400の形状を正方形としたが、これに限定されるものではなく、長方形型でも、或いは、略正8角形型等でも構わない。
次に、図4を用いて、補正レンズ4の位置検出機構、及び、補正レンズ4の撮影光軸2に対して垂直平面に駆動する機構について説明する。図4は、補正レンズ4の駆動機構と位置検出機構を模式的に示した図である。可動部21に設けられた位置検出用マグネット43と固定部20に設けられたホール素子44とを互いに対向するように配置し、ホール素子44の感度軸方向の磁束が補正レンズ4の移動にほぼ比例して変化するよう構成する。一般的に、ホール素子は磁束がゼロであるときほぼ出力がゼロとなり、磁束の大きさに比例してその出力電圧が変化する。従って、ホール素子44の出力を確認することで、補正レンズ4の位置が検出可能となる。
可動部21に駆動用マグネット41を、固定部20にコイル40を対向するように配置し、又、固定部20のコイル40とは逆面にヨーク42を配置する。コイル40に流す電流に比例して可動部21に電磁力が発生し、補正レンズ4を駆動する。上記構成の補正レンズ4の位置検出機構及び駆動機構は、直交する2軸(一方をX軸、他方をY軸とする)方向それぞれに設けられている。それにより、補正レンズ4を撮影光軸2と直交する平面内で可動範囲400内の任意の位置に駆動するとともに、補正レンズ4の位置を検出することが可能となる。
1−3.操作部18
図5は本カメラ1の背面側を示す図であり、本発明に関わる操作部18の各部材、及び、各種モードの設定に必要な外部液晶モニタ19の配置例を示したものである。また、図6は、主制御部10aを含む制御部10と操作部18との接続を表す回路図である。後述するように、操作部18を構成する各種釦はそれぞれが図6の各スイッチ(以下、SWと略す)に連動し、各釦が操作されるとその該当するSWがオンする。
図6に示す各SWは、主制御部10aと同一な電源VDDに抵抗でプルアップされ、かつ、主制御部10aに接続されている。これにより、各種釦が操作されていない場合、その該当するSWはオフで、主制御部10aにHighレベルを出力する。また、各種釦が操作されると、その該当するSWがオンとなり、主制御部10aにLowレベルを出力する。これにより、主制御部10aは、各種SWの信号レベルによって、そのSWに該当する釦の操作を認識可能となる。
レリーズ釦20は、その押し込みストロークの中程まで押し込むことにより半押しSW120aがオンし、そこからさらに深く押し込むことにより全押しSW120bがオンするよう構成されている。本レリーズ釦20を押し込むことにより、後述する撮影動作を開始する等の動作が行われる。制御部10は、全押しSW120bがオンとなると、操作者が撮影指示の操作を行ったと判断する。同様に、メイン釦21はメインSW121に、メニュー釦23はメニューSW123に連動している。ズームレバー22は、左に倒すことでズームダウンSW122aがオンし、右に倒すことでズームアップSW122bがオンする。また、メイン釦21を押すことにより、後述する通り本カメラ1の動作を開始、或いは、終了する。
メニュー釦23を押すと、後述するように外部液晶モニタ19に設定メニューが表示され、マルチセレクタ24により各種モード等の設定を行うことが可能となる。ズームレバー22を左に倒すと、ズーミングレンズ3が駆動されて撮影焦点距離がワイド側にされ、逆に、ズームレバー22を右に倒すと撮影焦点距離が同テレ側にされる。マルチセレクタ24は、複数の釦とそれに連動するSWにより構成されている。中央のマルチセレクタ釦24aがマルチ選択(中央)SW124aに、右側のマルチセレクタ釦24bがマルチ選択(右)SW124bに、上側のマルチセレクタ釦24cがマルチ選択(上)SW124cに、左側のマルチセレクタ釦24dがマルチ選択(左)SW124dに、下側のマルチセレクタ釦24eがマルチ選択(下)SW124eに連動している。
2.各種モードの設定
次に、上述した各種釦を操作して設定される各種モードについて説明する。撮影モードを始めとする本発明に関する各種モード、各種撮影条件、その他の設定、及び、変更は、メニュー釦23、マルチセレクタ24および外部液晶モニタ19により行われる。ユーザは、まず、メニュー釦23を押し、外部液晶モニタ19に図7に示すような設定メニューを表示する。なお、図7は設定メニューの一例を示したものであり、これに限定されるものではない。
次に、マルチセレクタ24のマルチセレクタ釦24cおよびマルチセレクタ釦24eを操作することで、外部液晶モニタ19に表示される現在選択されている部分(図7の例では太線の矩形枠で囲まれた部分であって、“振れ補正機能”が選択されている)を移動させ、変更、設定したい項目を選ぶ。そして、マルチセレクタ24のマルチセレクタ釦24bまたはマルチセレクタ釦24dを操作することで、選ばれている項目(図7の例では、“振れ補正機能”)の設定を変更、設定する。図7に示す例では、現在は矩形枠で囲まれた設定となっており、マルチセレクタ釦24b、マルチセレクタ釦24dを押し込むことで、“ON”,“OFF”の設定を変えることができる。主制御部10aは、メニュー釦23およびマルチセレクタ24のユーザ操作をそれに連動した各SWのオン/オフで認識し、その結果を外部液晶モニタ19に表示をさせて、各種モード、各種撮影条件、その他の設定、及び、変更を行う。
3.振れ制御部10bおよび振れ補正回路部14の説明
3−1.振れ検出
次に、振れ制御部10bおよび振れ補正回路部14について、図8を参照して説明する。振動ジャイロ200a,200bは、その角速度の検出方向が補正レンズ4の位置検出方向のX軸方向,Y軸方向となるようカメラ1内に配置されている。振動ジャイロ200a,200bはカメラ1の振動を検出し、その検出結果を振動ジャイロ処理部201a、201bを通じて振れ制御部10bに出力する。振れ制御部10bは、振動ジャイロ処理部201a、201bのアナログ信号をディジタル値に変換するA/D変換器(不図示)をその内部に備えている。そして、振動ジャイロ処理部201a、201bからの出力をA/D変換器でディジタル値に変換し、そのディジタル信号に基づいてカメラ1に生じたX軸方向、及び、Y軸方向の振れ角速度を検出する。
なお、具体的回路形態、及び、検出方法としては、公知な技術として、例えば、本出願人出願の公開特許公報『特開平11−344340』による技術を用いることができる。また、検出された振れ角速度は、例えば、本出願人出願の公開特許公報『特開平9−80512』等の公知技術により、角速度のディメンジョンを積分し、位置のディメンジョンに変換することで、カメラ1に生じた振れを適正に補正する為の補正レンズ4の目標位置(以下、単に目標位置Lcとする)を算出する。
3−2.補正レンズ位置検出
補正レンズ4の位置検出は、X軸用のホール素子44a及びY軸用のホール素子44bの出力をそれぞれホール素子処理回路部202a、202bにより処理し、振れ制御部10bに出力することで行われる。振れ制御部10bは、ホール素子処理部202a、202bのアナログ信号をディジタル値に変換するA/D変換器(不図示)をその内部に備えている。そして、ホール素子処理部202a、202bからの出力をA/D変換器によりディジタル値に変換し、X軸方向及びY軸方向の補正レンズ4の位置(以下、補正レンズ位置Lr(X)、及び、補正レンズ位置Lr(Y)と記す)を検出する。或いは、後述するハードウェア制御部206a、206bのA/D変換部251aによるホール素子処理部202a、202bの出力のA/D変換値を、振れ制御部10bに読み出して補正レンズ位置Lr(X)、及び、補正レンズ位置Lr(Y)を得る。
ホール素子処理部202a、202bを具体的な回路図を用いてさらに説明する。図9は、X軸方向の検出用ホール素子44aに関するホール素子処理部202aの、具体的な回路図の一例を示したものである。Y軸方向のホール素子処理部202bも同様である。図9に示される通り、ホール素子44aは、等価的に抵抗Rh1、Rh2、Rh3、Rh4のブリッジ回路として表すことができる。
一般的に、ホール素子は、磁界がゼロの時に抵抗Rh1、Rh2、Rh3、Rh4が一定のバランス状態にあり、出力Vhout−とVhout+の間の電位差はほぼゼロとなる。この状態で磁界を加えると、抵抗Rh1、Rh2、Rh3、Rh4の比率が変化し、出力Vhout−とVhout+との間に電位差が生じる。出力Vhout−とVhout+との間の電位差は、磁界の大きさに比例すると共に、ホール素子に流れる電流、具体的には、入力Vhin+からVhin−に流れる電流にも比例する。
従って、図9に示される通り、ホール素子44aは、演算増幅器OP301a、D/A変換器305a、トランジスタTr304a及び抵抗R311aにより構成される定電流回路によって定電流駆動される。抵抗R311aの抵抗値をr331a、D/A変換器305aの出力Vhi電圧の値をvh_iとすると、D/A変換器305aの出力Vhi電圧に比例した一定電流ihでホール素子44aを駆動することができる。ここで、電流ihは式(1)のように表される。このことから、製造上の個々に異なる感度特性を有し、かつ、温度により変化するホール素子44aの感度バラツキを、D/A変換器305aの出力電圧Vhiを適切に設定することで所望の感度に調整することができる。
ih≒vh_i/r331a …(1)
図9の基準電源Vhrefおよび演算増幅器OP302aで構成される回路は、ホール素子44aの一方の出力Vhout−電圧を基準電圧vhrefに保つよう動作する。基準電源Vhrefの基準電圧vhrefは、例えば、三端子レギュレータ等によりを生成される。演算増幅器OP303a、D/A変換器306a、抵抗R312a、R313a、R314aおよびコンデンサC315aで構成される回路は、ホール素子44aの出力Vhout−とVhout+との間の電位差を作動反転増幅して出力すると共に、OP302aによって基準電圧vhrefに保たれた出力Vhout−を基準に、D/A変換器306aの出力Vhoffset電圧を反転加算増幅して出力する。
抵抗R312a、R313a、R314aの抵抗値をそれぞれr312a、r313a、r314aとし、基準電圧vhrefを基準とするホール素子44aの出力Vhout+電圧およびD/A変換器306aの出力Vhoffset電圧をvhout、vhoffsetとすると、ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)の電圧vhout(X)は、式(2)で示される。なお、G0=r314a/r312a、G1=r314a/r313aである。
vhout(X)≒vhref−G0×(vhout)−G1×vhoffset
…(2)
以上のことから、D/A変換器306aを操作し、その出力Vhoffset電圧vhoffsetを可変させることで、ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)のオフセット電圧を調整することができる。
理想的なホール素子の出力電圧は、磁界がゼロの場合にゼロとなるが、実際には、ホール素子44aを構成する抵抗Rh1、Rh2、Rh3、Rh4に製造上のアンバランスが生じたり、使用温度が変化したりすることにより、出力Vhout−とVhout+との間の電位差はゼロとならない。また、演算増幅器303aの入力オフセット電圧も生じる。さらに、補正レンズ4の位置検出機構の寸法バラツキにより、補正レンズ4の可動範囲中央でホール素子44aの感度軸方向の磁界が必ずしもゼロとならない。
以上のことから、本ホール素子処理部202aの出力Vhoutは、必ずしも所望の電圧とはならない。こうした場合、D/A変換器306aを操作して出力Vhoffset電圧vhoffsetを可変させることで、ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)を所望の電圧にオフセット調整することができる。
上述したD/A変換器305a、306aは共に振れ制御部10bに接続されていて、振れ制御部10bにより制御される。このことにより、ホール素子駆動電流ihを調整するとともに、ホール素子44aの感度バラツキ、温度変動による感度変化およびホール素子44aのオフセット電圧を始めとするホール素子処理部202aの出力Vhout(X)に含まれるオフセット電圧を調整することができる。
図10は、これらの調整の様子を示したものである。振れ制御部10bは、D/A変換器305aを操作して出力Vhiの電圧を可変することで、ホール素子処理部202aの出力電圧vhoutの補正レンズ位置Lrに対する変化量(図10のグラフの傾きに相当)を変化させることができる。また、振れ制御部10bは、D/A変換器306aを操作して出力Vhoffsetの電圧を変えることで、ホール素子処理部202aの出力電圧vhoutをシフトさせることができる。これらの調整により、ホール素子処理部202aから所望の出力を得ることが可能となる。図10では、補正レンズ4の可動範囲(補正レンズ位置Lr±LRrangeの範囲)において、ホール素子処理部の出力は、Vadj−からVadj+までの所望の出力範囲となるように調整されている。
なお、抵抗R312aの抵抗値r312aを小さくし過ぎると、ホール素子44aの出力Vhout+から抵抗R312aに流れる電流が大きくなり、これが誤差となってホール素子出力の検出リニアリティに影響を与える為、適切な値にする必要がある。また、コンデンサC315aは、補正レンズ4の位置検出に不要な高周波ノイズを除去するためのもので、適切な容量値に設定する。
3−3.補正レンズ4の駆動
補正レンズ位置が検出され目標位置Lcが算出されると、それに基づいてカメラ1に生じた振れを補正するように補正レンズ4の駆動量が算出される。補正レンズ4の駆動量については、後述するようにソフトウェア制御用の駆動量Ds(X)とハードウェア制御用の駆動量Dh(X)とが算出される。駆動量の算出方法については後述するとして、ここでは、図8に戻って補正レンズ4の駆動方法について説明する。補正レンズ4の駆動量が算出されたならば、実際に補正レンズ4を動かす為に、算出された駆動量に基づいてコイル40a、40bに通電を行う。なお、補正レンズ4の駆動は、X軸とY軸との2軸について駆動制御が行われるが、同様であるため、以下ではX軸に関してのみ記載する。
算出された駆動量Ds(X)および駆動量Dh(X)は、振れ補正回路部14の切替え部205aに送られる。切替え部205aは、振れ制御部10bからの切替え信号aにより駆動量Ds(X)および駆動量Dh(X)のいずれか一方を選択し、選択した駆動量をPWM変換部204aに出力する。なお、切替え信号aによって、駆動量Ds(X)と駆動量Dh(X)とをどのような条件で切り替えるかについては後述する。
PWM変換部204aは、切替え部205aで切り替えられた補正レンズ4の駆動量を公知の技術によりPWM(PULSE WIDTH MODULATION)波形に変換する。変換されたPWM波形は、公知な技術による駆動部203aによってコイル(X)40aを通電する。駆動部203aには一般的にH−BRIDGE型がよく用いられ、コイル40aはPWM波形により効率良く駆動される。なお、駆動部203aには、パワー系の電源VPが供給されていて、この電源VPによりコイル40aが通電される。
4.駆動量演算の説明
次に、補正レンズ4の駆動量の算出方法に関して述べる。本実施の形態では、補正レンズ4の駆動量として、2種類の駆動量すなわちソフトウェア制御用の駆動量Ds(X)とハードウェア制御用の駆動量Dh(X)とを算出する。そして、これらを所定の条件で切り替えて使用する。まず、ソフトウェア制御およびハードウェア制御の具体的な方法について説明する。
4−1.ソフトウェア制御
ソフトウェア制御の場合には、振れ制御部10bによるソフトウェアにより補正レンズ4の駆動量Dhを算出し、その駆動量Dhに基づいて補正レンズ4を駆動する。この場合、振れ検出部の出力を基に算出される目標位置Lcは、カメラ1に生じた手振れにより時々刻々と変化し、また、補正レンズ4の位置Lrも変化する。従って、補正レンズ4をリアルタイムに制御する必要があり、後述する駆動量の算出もリアルタイムに制御する必要がある。具体的には、振れ制御部10bで行われる駆動量の演算は、十分短い間隔である所定時間間隔(これを制御サンプリング間隔tsと言うこととする)で行うこととする。
図11は、振れ制御部10bで行われる駆動量Ds(X)の算出方法を示すブロック図である。以下、X軸についてのみ説明する。Y軸についても同様であるため、説明は省略する。まず、補正レンズ4の目標位置Lc(X)と補正レンズ位置Lr(X)との差△L(X)を算出する。△Lは、目標位置に対する補正レンズ4の実際の位置との差であるから、制御誤差に相当する。
△L(X)=Lc(X)−Lr(X) …(3)
次に、式(4)〜(6)に示すように、制御誤差△L(X)に基づいて比例項駆動量Dprop、積分項駆動量Dinteおよび微分項駆動量Ddiffをそれぞれ算出する。そして、式(7)のようにそれらを加算することにより、補正レンズ4の駆動量Ds(X)を算出する。
Dprop=Kprop×△L(X) …(4)
Dinte=Kinte×Σ(△L(X)) …(5)
Ddiff=Kdiff×(今回の△L(X)−前回の△L(X)) …(6)
Ds(X)=Dprop+Dinte+Ddiff …(7)
ここで、本演算は制御サンプリング間隔ts毎に行われるので、式(5)におけるΣ△L(X)は制御誤差△Lを所定間隔tsで積算することを意味し、これはほぼ積分と見なせる。同様に、式(6)における前回の△L(X)とは、制御サンプリング間隔tsに関して一つ前の△L(X)を意味している。そのため、式(6)の「今回の△L(X)−前回の△L(X)」は所定間隔ts間の制御誤差△Lの変化量を意味し、これはほぼ微分と見なせる。従って、式(4)〜(7)で駆動量を算出し、算出された駆動量で補正レンズ4を制御することをPID(比例−積分−微分)制御と言う場合がある。なお、Σ△L(X)の初期値は、補正レンズ制御を開始する直前でゼロとする。また、前回の△L(X)の初期値は、補正レンズ制御を開始する直前での補正レンズ位置Lr(X)とする。
図12は、振れ制御部10bのソフトウェアによる駆動量演算のタイミングの具体例を示すタイミングチャートである。まず、タイミングt91において、補正レンズ4の目標位置Lc(X)の算出および値の更新が行われる。タイミングt92では、補正レンズ位置Lr(X)の算出および値の更新が行われる。この目標位置Lc(X)と補正レンズ位置Lr(X)に基づいて、タイミングt93から補正レンズ4の駆動量Ds(X)の算出が開始され、タイミングt94においてその算出が完了する。以上の一連の動作が、制御サンプリング間隔ts毎に切り返し行われる。図12のタイミングt91’、t92’、t93’、t94’は次のタイミングの一連の動作を示す。
4−2.ハードウェア制御
ハードウェアによる制御を行う場合には、図8に示すX軸用のハードウェア制御部206aおよびY軸用のハードウェア制御部206bを用いて行う。以下、X軸についてのみ説明する。Y軸についても同様であるため、説明は省略する。ハードウェア制御部206aは振れ制御部10bからクロックφsの供給を受け、そのクロックφsを基にしてタイミング/パラメタ制御部253aにより補正レンズ4の駆動量の演算を所定間隔で繰り返し行う。ここでは、この所定間隔を制御サンプリング間隔thと呼ぶことにする。なお、本実施形態では、クロックφsを振れ制御部10bから供給されるとしたが、公知の技術、例えば、水晶発振子あるいはセラミック発振子等を用いて発振させて生成しても構わない。また、タイミング/パラメタ制御部253aは、このようなタイミングの制御と、後述する振れ制御部10bからのパラメタの設定等の動作も行う。
A/D変換部251aは、ホール素子処理部202aの出力をA/D変換する。ここで、A/D変換部251aで変換されたディジタル値は、補正レンズ位置Lrに相当する。一方、振れ制御部10bからは、ディジタル値の目標位置Lc(X)が目標位置設定間隔thcで周期的に設定される。減算器254aは、式(4)と同様の演算を行って制御誤差△L(X)を算出する。なお、目標位置設定間隔thcは、駆動量演算の際の制御サンプリング間隔thと異なっていても構わない。制御誤差△L(X)は駆動量演算部252aに送られ、駆動量演算部252aにおいて制御誤差△L(X)から補正レンズ4の駆動量Dh(X)が演算される。
次に、駆動量演算部252aの具体例を、図13を用いて説明する。図13は、駆動量演算部252aの具体例のブロック図を示したものである。制御誤差△L(X)は、駆動量ゲイン部500aによりGh倍に増幅された後、ディジタルフィルタ部501aに送られる。このGhはハードウェア制御ゲイン値であって、振れ制御部10bから設定される。ディジタルフィルタ部501aでは、入力されたディジタル値に、例えば、図13で示される特性を有する公知の技術で構成されるディジタルフィルタを施し、それを補正レンズ4の駆動量Dh(X)として出力する。
図13で示されるハードウェア制御ゲイン値Ghとディジタルフィルタにおけるゲインおよび位相の周波数特性は、図2および図4等で示される補正レンズ4の駆動メカニズムの特性に合わせて変更され、タイミング/パラメタ制御部253aを通じて振れ制御部10bから設定される。一般的に、本実施形態に示される補正レンズ駆動メカニズムでは、高周波に対して応答性が悪く、周波数が高くなるほどゲインが減少し位相が遅れる場合が多い。図13に示す例では、これを補うべく、中域周波数からゲインを上昇させると共に位相を進めている。
次に、図14を用いて駆動量Dh(X)が算出されるタイミングに関して説明する。図14は、補正レンズ駆動量Dh(X)の演算のタイミングの具体例を示すタイミングチャートである。補正レンズ駆動量Dh(X)の演算は、ハードウェア制御部206aのタイミング/パラメタ制御部253aによって制御される制御サンプリング間隔th毎に繰り返される。
タイミングt1では、A/D変換器251aによりホール素子処理部202aの出力がA/D変換されて補正レンズ位置Lr(X)が算出される。タイミングt1aでは、振れ制御部10bから異なるタイミングで設定される補正レンズ4の目標位置Lc(X)と、タイミングt1で得られた補正レンズ位置Lr(X)とから、補正レンズ4の駆動量Dh(X)が駆動量演算部252aの動作により素早く演算される。以上のタイミングt1〜t2における一連の動作が、所定の制御サンプリング間隔th毎に繰り返される。
振れ制御部10bから設定される補正レンズ4の目標位置Lr(X)は、間隔thcで設定される。図14に示した例では、間隔thcは駆動量Dh(X)の算出間隔である制御サンプリング間隔thよりも長いが、一致させても構わない。具体的な数値を上げて説明すると、振れ制御部10bから設定する補正レンズ4の目標位置Lc(X)の設定間隔thcは、1ms程度でよいであろう。人間がカメラを手持ちして撮影を行う場合の手振れの支配的な周波数の上限は、10〜20Hz程度であり、これに対して1ms間隔であれば十分といえる。
一方、ハードウェアにより算出される駆動量Dh(X)はほとんど瞬時に算出することができるので、補正レンズ4の制御サンプリング間隔thは、例えば、0.1msや0.05ms、或いはそれ以下とすることができる。そのため、制御系として高周波まで制御特性をのばすことができ、補正レンズ4の制御性が大きく向上する。
これに対し、振れ制御部10bによるソフトウェア制御では、演算速度は振れ制御部10bの処理能力により支配され、補正レンズ4の駆動量Ds(X)を算出する間隔tsが思うように上げられない。具体的な数値を上げれば、ソフトウェアによる制御の場合、制御サンプリング間隔tsは1ms程度であり、補正レンズ4の制御性を優先しても早くて0.5ms程度とされる場合が多い。また、振れ制御以外の処理も行わなければならない場合には、さらに困難な状況になる。しかし、本実施の形態では、ハードウェア制御部206aにより補正レンズ4を制御することで制御性の向上を図りつつ、振れ制御部10bによる目標位置Lc(X)の設定を手振れの支配的周波数上限に合わせてゆっくりとした間隔で設定することができる為、振れ制御部10bの負荷も低減できる。
4−3.ハードウェア制御の他の実施形態
以上、ハードウェア制御部206aを説明してきたが、ハードウェア制御部206a、特に、駆動量演算部252aは必ずしもロジック演算である必要はない。ここでは、ハードウェア制御部206aをアナログ回路で実現したものを図15に示す。図15は、図8におけるハードウェア制御部206aを、主にアナログハードウェアにより実現したものである。
補正レンズ4の目標位置Lc(X)は、上述した実施の形態と同様に、振れ制御部10bによって一定周期thc毎に設定する。目標位置Lc(X)はD/A変換器401aに入力され、アナログ信号に変換される。このD/A変換器401aの出力とホール素子処理部202aの出力とは、公知技術で生成された基準電圧Vrdrefを基準に、演算増幅器OP403、抵抗R411、R412、R413によって反転加算増幅される。
このように、図15に示す例では、演算増幅器OP403、抵抗R411、R412、R413による反転加算増幅器を用いているのに対し、上述したハードウェア制御では、図8の減算器254aを用いて補正レンズ位置Lr(x)と目標位置Lc(X)とを減算して制御誤差△L(X)を算出している。そのため、補正レンズ位置Lr(X)と目標位置Lc(X)との減算値が算出されるようにするために、振れ制御部10bは、D/A変換器401aに設定する目標位置Lc(X)を、符号を反転して設定するようにした。或いは、OP403、抵抗R411、R412、R413による反転加算器を減算増幅器に変えても構わない。
次に、こうして得られた制御誤差△L(X)に相当するOP403の出力に対して、抵抗R414、R415およびコンデンサC421とで構成される回路により、図13におけるディジタルフィルタ501aと同等の処理を行う。具体的には、中域周波からゲインを上昇させると共に位相を進めて、次段の入力である演算増幅器404の+入力に入力する。演算増幅器OP404、抵抗R416、R417及びコンデンサC422で構成される回路は非反転増幅器を構成し、OP404の+入力に入力された信号を、非反転増幅すると共に抵抗R417とコンデンサC422の定数で決まる不要な高周波をカットする。そして、OP404の出力はA/D変換器402aでA/D変換され、駆動量Dh(X)とされる。
5.カメラのモードと補正レンズ制御
本実施の形態のカメラでは、振れ補正の際の補正レンズ4の駆動制御方法として、ソフトウェア制御による駆動とハードウェア制御による駆動との2種類の方法を用いることができる。そして、カメラの設定条件や撮影条件に応じてこれらの制御方法を切り替えるようにした。以下では、カメラの設定条件や撮影条件に応じた制御パターンについて説明する。
表1は、ソフトウェア制御およびハードウェア制御の利点および欠点をまとめたものである。
補正レンズ4をソフトウェア制御する場合、制御部10の振れ制御部10bのソフトウェアにより行う。図11で説明したように、補正レンズ4の駆動量Ds(X)、Ds(Y)の演算は所定時間ts毎に行われる。ところで、制御部10はワンチップマイクロコンピュータ等で構成され、振れ制御部10bは、上述したように補正レンズ4の制御以外に振れ検出、補正レンズ位置検出、その他、振れ補正に伴う種々の処理を行わなければならない。また、主制御部10aに関しては、カメラ1の振れ補正以外の処理を行う必要がある。そのため、制御部10に対するこのような処理負荷の影響により、制御サンプリング間隔tsを短くすることは非常に困難となる。
具体的には、制御サンプリング間隔tsは、1msか短くて0.5ms程度が限界となる。制御サンプリング間隔tsを短くすると制御帯域が上がり、補正レンズ4の制御性が向上するが、上述した理由により制御サンプリング間隔tsを短くするのが困難であるため、ソフトウェア制御により補正レンズ4の制御性を向上させるのは非常に難しい。
一方、ハードウェア制御においては、補正レンズ4の駆動量の演算をハードウェア(ロジック回路、又は、アナログ回路)により実現しているので、演算時間を非常に短くすることができる。その結果、制御サンプリング間隔tsを短くすることで、制御帯域を上げ、制御性を大きく向上させることができる。また、補正レンズ4の駆動量の演算をハードウェア制御で行う分だけ、振れ制御部10bの処理の負荷は低減される。
ただし、ハードウェア制御により補正レンズ4を制御すると、制御帯域が上げられ、高周波帯域まで補正レンズ4を制御駆動する為、高周波な振動や制御音が生じやすい。また、可動部21および固定部20の摺動面や摺動ボール22面で発生する摺動音や振動、さらには、付勢バネ23の響き等が発生し易い。また、ソフトウェア制御の方が、設計段階での設計変更や、問題点の対応がし易い。ハードウェア制御では、前述の回路をディスクリート部品で組めばまだ設計変更し易いが、部品点数が増えるため、IC化するのが一般的になる。IC化した場合、設計途中での変更が困難になる。また、少しずつ仕様のことなる複数の製品への対応についても、臨機応変な対応が困難となる。
そこで、本実施形態では、ソフトウェア制御およびハードウェア制御双方の利点を有効に利用し、かつ、欠点を補うことにより、これまでにない補正レンズ4の制御性を得つつ、かつ、制御音や振動の低減を図るようにした。また、振れ制御部10bの処理負荷低減をはかり、設計途中での変更や機種による仕様の相違に臨機応変に対応できるようにした。以下、具体的な実施形態を示し、説明する。
5−1.カメラシステムと補正レンズ制御方法
まず、複数の少しずつ仕様の異なる製品への対応を記す。表2は、異なるカメラシステムと異なるカメラシーケンス毎に、補正レンズ4をソフトウェア制御するかハードウェア制御するかの一例を示したものである。
ここでは、撮影シーケンスとして、撮影準備中、撮影中(静止画)、撮影中(動画)とに代表される3つに分けて考える。
撮影準備中とは、本カメラ1の電源が投入され、レリーズ釦20をオンする直前までを表す。撮影中とは、レリーズ釦20をオンし、実際の撮影が行われている間とする。そして、これを静止画の撮影と動画の撮影とに大きく分ける。ここで、本実施形態によるカメラ1のようなディジタルスチルカメラでは、静止画の撮影には最も高い振れ補正性能レベルが要求され、補正レンズ制御性も高くなければならない。これに対し、撮影準備中には、後述する撮像素子9の撮影結果をリアルタイムに外部液晶モニタ19に表示する。このモニタ画表示においては、実際の動画撮影のように不揮発性記憶媒体31への画像データの記録が行われない。これは、ビデオカメラの撮影と同様、外部液晶モニタ19に表示されるのはリアルタイムに撮影されている動画(モニタ画)である。このような場合と実際の動画撮影も含め、このような条件下においては振れ補正性能に対してそれほど高い精度は要求されず、ユーザの目に被写体が違和感なく見えればよい。従って、補正レンズ4の制御性も高い精度を要求されない場合が多い。
以上のことを踏まえ、まず、振れ制御部10bを含む処理部10の能力により制御を切り替える場合について考える。制御部10の処理能力が高いカメラシステムでは、補正レンズ4の駆動量演算の制御サンプリング間隔を短くすることができ、十分な補正レンズ4の制御性が得られる。よって、撮影準備中、撮影中(静止画)、撮影中(動画)とも補正レンズ4の制御をソフトウェア制御により行う。逆に、振れ制御部10bを含む制御部10の処理能力が低いカメラシステムでは、補正レンズ4の駆動量演算の制御サンプリング間隔を短くすることができないため、十分な補正レンズ4の制御性が得られない。よって、撮影準備中、静止画撮影中および動画撮影中のいずれの場合も、補正レンズ4の制御をハードウェア制御により行う。
次に、撮影中の処理負荷の軽重で切り替える場合について考える。振れ制御部10bを含む処理部10の撮影中の処理負荷が重いシステムでは、外部液晶モニタ19にモニタ画が表示される撮影準備中には、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御し、静止画撮影中および実際の動画が撮影されているときにはハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。逆に、振れ制御部10bを含む処理部10の撮影中における処理負荷が軽いシステムでは、撮影準備中、静止画撮影中および動画撮影中のいずれにおいてもソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
図2及び図4に示した補正レンズ4の駆動制御ユニットメカの制御音、制御振動等に関しては、それらが補正レンズ4を駆動制御する場合に大きいか否かにより制御を切り替える。制御音、制御振動等が大きい場合には、撮影準備中、静止画撮影中および動画撮影中のいずれにおいてもソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、制御音、制御振動等が中程度の場合には、作動時間が短いために音や振動が目立ちにくい静止画撮影中のみにおいて、制御性の良いハードウェア制御で補正レンズ4を制御する。逆に、作動時間が長くて音や振動が目立ちやすい撮影準備中および動画撮影中においては、ソフトウェア制御で補正レンズ4を制御する。また、制御音、制御振動等が小さくて目立たない駆動制御ユニットの場合には、撮影準備中、静止画撮影中および動画撮影中のいずれにおいてもハードウェア制御で補正レンズ4を制御する。
5−2.カメラの撮影シーンと補正レンズ制御方法
次に、カメラ1の撮影条件や各種モード設定に応じて、最適な補正レンズ4の制御方法を選択する場合について説明する。表3、表4は一例を示したものである。なお、その効果を明確にするため、補正レンズ4の駆動制御メカ機構の制御音は中程度の駆動ユニットを使用した場合を想定する。この場合、ソフトウェア制御では、補正レンズ4の制御音や制御振動は目立ちづらいが、補正レンズ4の制御性は十分とは言えない。一方、ハードウェア制御では、補正レンズ4の制御性は十分確保できるものの、制御音や制御振動は少し耳障りとなる。
(1)撮影焦点距離
撮像素子9の撮像面上での像振れ量は、撮影焦点距離に比例して大きくなる。そのため、撮影焦点距離が長くなるほど振れ補正性能、特に、補正レンズ4の制御性に関してより高性能であることが要求される。従って、撮影焦点距離が長くなるほど補正レンズ4をハードウェア制御とした。また、動画撮影時には、集音部30によりカメラ周囲の音を同時に録音する等を想定し、ソフトウェア制御とした。尚、表3では、具体的に示された撮影焦点距離は135換算で、数値は1つの例である。又、撮影焦点距離は、図1に於けるズーミングレンズ位置検出部13によりズーミングレンズ3の位置を検出して行う。
(2)ディジタルズーム
ディジタルズームが作動している場合には、撮像素子9により得られた撮像画像の一部を切り出し、ディジタル補完して拡大撮影する、また、ディジタルズーム作動時の撮影準備中に、外部液晶モニタ19に撮影画像を動画表示させる場合には、上記拡大撮影された画像が表示されることになる。そのような場合には、さらに高い振れ補正性能が要求されるので、振れ補正性能を優先して、全ての場合で補正レンズ4をハードウェア制御とする。
(3)撮影倍率および被写体距離
撮影倍率が大きくなる、或いは、被写体距離が近づくと、以下のような理由から、振れ補正効果がなくなることが知られている。すなわち、振れ補正機構を有するカメラは、一般的に、カメラに生じた振れ角速度を検出し、その検出された振れを補正するものであるが、角度の振れではない光軸に直行する方向の振れは検出できなく、補正できない。また、光軸方向(ピント方向)の振れも同様である。その場合、振れ補正性能は大きく劣化する。
そこで、本実施形態では、撮影倍率が大きくなった場合、及び、被写体距離が近づいた場合には、補正レンズ4の制御性よりも補正レンズ4の制御音を優先すべきとの考えから、補正レンズ4をソフトウェア制御により行うこととしている。又、このような撮影シーンでは、虫等の生き物を近づいて撮影するシーンも想定され、その場合にも、ソフトウェア制御を行うことにより静音化をはかるのが良いといえる。
なお、被写体距離は、例えば、フォーカシングレンズ位置検出部16により得られたフォーカシングレンズ5の位置により一意的に求めても良い。また、フォーカシングレンズ5の位置と被写体距離との関係がズーミングレンズ3の位置により変化する光学系の場合には、フォーカシングレンズ位置検出部16により得られたフォーカシングレンズ5の位置と、ズーミングレンズ位置検出部13により得られたズーミングレンズ3の位置とにより算出する。一方、撮影倍率は、フォーカシングレンズ位置検出部16により得られたフォーカシングレンズ5の位置と、ズーミングレンズ位置検出部13により得られたズーミングレンズ3の位置とにより算出する。
(4)補正レンズシフト量撮像面倍率
補正レンズシフト量撮像面倍率は、補正レンズ4の単位移動量当たりの撮像面光軸移動量を表すものであり、補正レンズ4が単位量移動した時の撮影光軸2の変化により、撮像素子9面上の撮像がどれだけシフトするかを示すものである。例えば、1枚の単レンズで補正レンズを含む撮影光学系が構成されるとした場合、補正レンズシフト量撮像面倍率は1であり、補正レンズ4の移動量と撮像素子面上の像の移動量が一致する。しかし、補正レンズシフト量撮像面倍率は撮影光学系により異なり、一般的に、ズーミングレンズ3の位置である撮影焦点距離や、フォーカシングレンズ5の位置である被写体距離により変化する。
補正レンズシフト量撮像面倍率が大きい場合、補正レンズ4の制御誤差が撮像面に及ぼす影響も大きくなる。具体的には、補正レンズシフト量撮像面倍率が2.0であれば、補正レンズ4の制御誤差は撮像素子9面上で2.0倍される。従って、補正レンズシフト量撮像面倍率が大きくて補正レンズ4の制御誤差が大きい程、補正レンズの制御性を向上させなければならない。本実施形態では、表3に示される通り、補正レンズシフト量撮像面倍率が所定値より大きい場合には、補正レンズ4の制御性がより要求されるのでハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。逆に、所定値より小さい場合には、静音化を優先してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
また、撮影準備中及び動画撮影時と、静止画撮影時とでは、その補正レンズ4の制御性に要求されるレベルが異なることや、動画の撮影時にはカメラ周囲の音を同時に録音する等が想定されることから、ソフトウェア制御/ハードウェア制御の切替えポイントを変えることとした。なお、上述したように、補正レンズシフト量撮像面倍率は撮影光学系の状態により決まるものであって、主制御部10aは、フォーカシングレンズ位置検出部16で検出されるフォーカシングレンズ5の位置と、ズーミングレンズ位置検出部13で検出されるズーミングレンズ3の位置とに基づいて補正レンズシフト量撮像面倍率を得る。
(5)撮影秒時
主制御部10aは、公知の技術により、撮像素子9により得られた撮像結果から被写体の明るさを特定し、撮影に適した撮影秒時を決定する。本実施形態では、決定された撮影秒時が所定値以上の高速秒時である場合にはハードウェア制御により補正レンズ4を制御し、所定値以下の低速秒時である場合にはソフトウェア制御により補正レンズ4を制御するよう切り替える。すなわち、決定された撮影秒時に応じて、補正レンズ4の制御を、ハードウェア制御およびソフトウェア制御のいずれかに切り替える。
これは、補正レンズ4の制御音は、制御する時間が短い場合にはユーザに聞こえにくいことから、高速秒時の場合には、その制御性を重視して補正レンズ4をハードウェア制御により制御する。一方、低速秒時では、補正レンズ4を制御している時間が長くなって制御音がユーザに聞こえやすくなる。また、補正レンズ4の制御誤差は高周波成分が支配的であるが、撮影秒時が長くなれば長くなるほどこの高周波成分の制御誤差は積分されて影響が小さくなることから、低速秒時ではそれほど制御性を重視する必要もなくなる。そうしたことから、低速秒時では、静音性を重視し、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。なお、動画撮影時と静止画撮影時とを比較すると、補正レンズ4の制御性に要求されるレベルが異なることや、動画撮影時にはカメラ周囲の音を同時に録音する等が想定されることから、動画撮影時と静止画撮影時とでは、ソフトウェア制御/ハードウェア制御の切替えポイントを変えることとした。
(6)フォーカスモード
フォーカスモードに関しては、条件としてマクロAF、通常のモード、遠距離AFおよび無限遠のモードを考える。マクロAFとは、主に撮影被写体がカメラ1に極近い場合に用いるモードで、フォーカシングレンズ5をより移動させ、極近い被写体にまでピントを合わせることのできるモードである。この場合、当然、フォーカシングレンズ5の移動量が大きくなり、撮像素子9面のピントを合わせる時間は長くなる。逆に、遠距離AFは、撮像素子9面のピントの合う被写体距離範囲を限定し、遠距離近辺でピントを合わせることのできるモードである。当然、フォーカシングレンズ5の移動する範囲は限定され、撮像素子9面のピントを合わせる時間は短縮される。通常のモードはマクロAFと遠距離AFとの中間的なものであり、フォーカシングレンズ5の移動範囲をマクロAFと遠距離AFとの中間的な範囲に制限し、ピントを合わせる時間も中間的なオールラウンドなモードである。無限遠のモードは、強制的にフォーカシングレンズ5を無限被写体にピントが合う位置に移動させるモードである。
本実施形態では、マクロAFに設定された場合には、補正レンズ4をソフトウェア制御により制御する。撮影倍率および被写体距離と補正レンズ4の制御方法の切替えにおいて説明したように、被写体距離が近い場合には振れ補正性能は劣化する。従って、被写体距離が近い撮影を前提としたマクロAFの場合、虫等の生き物を近づいて撮影するシーンが想定されるので補正レンズ4の制御音を優先し、補正レンズ4をソフトウェア制御により行うこととしている。
逆に、遠距離AFまたは無限遠のモードに設定された場合には、風景写真を撮影するケースが多い。そうした風景被写体には細かい被写体が多く含まれるので、空間周波数に非常に高周波な成分が多く含まれることになる。そのため、風景被写体を解像よく撮影するには補正レンズ4の制御性を高めなければならない。従って、この遠距離AFまたは無限遠のモードでは、補正レンズ4の制御性を重視し、ハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。通常のモードの場合には、マクロAFと遠距離AF、及び、無限遠のモードとの中間とし、静止画の撮影時には、補正レンズ4の制御性を重視してハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。一方、撮影準備中及び動画撮影時には、静音化を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(7)フラッシュ撮影モード
フラッシュ撮影モードにおける条件としては、発光禁止、スローシンクロ、オート、赤目低減および強制発光を考える。強制発光のモードは、撮影時に常に閃光部6を光らせ、フラッシュ撮影を行うモードである。逆に、発光禁止のモードは、被写体の明るさ等に関わらず、常に閃光部6を光らせないで撮影を行うモードである。オートのモードは、公知の技術により、撮像素子9から得られた撮像結果から被写体の輝度を得るなどして、被写体が暗い場合には閃光部6を光らせてフラッシュ撮影を行うモードである。赤目低減のモードは、フラッシュ撮影時に生じる人物の目が赤く写る赤目現象を低減するモードであり、公知の技術により、撮影直前で閃光部6を数回微量な発光を行う等により赤目現象を低減する。スローシンクロのモードは、夜景を背景とした人物撮影等を想定し、オートのモードの撮影秒時を低速秒時に設定したものである。
発光禁止のモードに設定された場合、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。本モードは、例えば、フラッシュ撮影が禁止されている美術館や、フラッシュ撮影が禁止されると共に静寂性を重視した撮影が必要な場合に利用される。本モードでは、補正レンズ4の制御音を極力抑える為に、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。スローシンクロのモードに設定された場合には、撮影秒時が、前述の通り低速秒時となる場合が多い。そのため、補正レンズ4の制御誤差の影響が小さくなることから、静音性を重視し、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。強制発光のモードは、昼間の屋外などの顔に影がかかる場合にフラッシュ撮影することで顔を適正に撮影する等に用いられることが多い。従って、撮影秒時は高速秒時となる場合が多いので補正レンズ4の制御性を重視し、補正レンズ4をハードウェアにより制御する。
オートと赤目低減のモードに設定された場合には、撮影秒時の範囲が高速から比較的低速まで含むが、スローシンクロの場合ほど低速秒時には至らないことが想定される。そのため、これらのモードでは、スローシンクロと強制発光の場合の中間的なオールラウンドなものとされる。具体的には、静止画撮影時には、補正レンズ4の制御性を重視してハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、撮影準備中及び動画撮影時には、それ程制御性を重視する必要がないことから、静音性を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(8)記録画素数モード
ここでは、記録画素数モード1と記録画素数モード2との2つに分けて考える。記録画素数モード1では、撮影された画像の記録画素数を設定する。条件としては、記録画素数が最も小さいスモール、記録画素数が最も大きいラージ、スモールとラージとの中間レベルであるミドルとに分類する。一方、記録画素数モード2は、撮影された画像を記録する際の画角形状を設定すると共に、各画角形状に対する記録画素数も設定する。表3に示す例では、設定条件としてL版/はがきサイズ、ワイド、通常の3つの設定を有し、L版/はがきサイズ設定では画角形状はL版/はがき形状に、ワイド設定では画角形状は16:9の縦横アスペクト比に、通常設定では画角形状は4:3の縦横アスペクト比に設定される。また、記録画素数に関しては、一般的に、L版/はがきサイズではL版プリントされることを想定し、記録画素数を小さく設定する。通常設定では、記録画素数を最も大きい設定とし、ワイド設定ではそれらの中間の記録画素数とする。
従って、ラージおよび通常の設定では、記録画素数が大きいことが前提であるため補正レンズ4の制御誤差を極力小さく抑えることが必要となり、制御性を重視したハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。逆に、スモール及びL版/はがきサイズに設定された場合には、ラージや通常の設定の場合ほどの制御性は必要なく、静音化を重視したソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、ミドル及びワイドの設定では、これらの中間的なものとする。具体的には、静止画撮影時には、補正レンズ4の制御性を重視したハードウェア制御により補正レンズ4を制御し、撮影準備中および動画撮影時には、それ程制御性を重視する必要がないことから、静音性を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(9)記録画像圧縮率モード
記録画像圧縮率モードは、有限な記録容量を有する不揮発性記憶媒体31に画像を記録する際の画像圧縮率を示す。一般的に、撮影により得られた画像のデータ量は大きいので、データ量を圧縮して記録する。ノーマルが最も圧縮率が高く、従って、画像圧縮により画像の細部の情報が失われ、画質は低下する。スーパーファインは最も圧縮率が低く、画像の細部情報が保たれるため画質が最も良い。ファインは、ノーマルとスーパーファインとの中間的な圧縮率となる。
従って、低圧縮により画像細部情報が保たれて高画質なスーパーファインでは、補正レンズ4の制御誤差を極力小さく抑えることが必要となり、制御性を重視したハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。逆に、高圧縮により画像細部情報が失われて画質が低下するノーマルでは、スーパーファインほどの制御性は必要なく、静音化を重視したソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、ファインの設定では、それらの中間レベルの圧縮率および画質であり、これらの中間的な制御とする。具体的には、静止画撮影時には、補正レンズ4の制御性を重視したハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、撮影準備中及び動画撮影時には、静止画撮影時ほどの制御性を重視する必要がないことから、静音性を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(10)ISO感度モード
ISO感度は、一般的に、高感度に設定するほど暗い被写体に露出が合い、撮影秒時が高速となる一方で、画質にノイズが生じて粒子が粗くなる。逆に、低感度に設定する程、ノイズが小さく高画質が得られる。従って、ISO感度を高画質な画像が得られる低感度、例えば、表3のISO100以下に設定した場合には、補正レンズ4の制御誤差を極力小さく抑えることが必要なので、制御性を重視したハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。逆に、粒子が粗く、あまり高画質が得られない高感度、例えば、表3のISO800以上に設定した場合には、それほどの補正レンズ4の制御性は必要なく、静音化を重視したソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
また、それらの中間レベルの画質がえられる中感度、例えば、表3のISO200〜400に設定した場合、これらの中間的な制御とする。被写体の輝度等に基づいて公知の技術により自動的にISO感度を設定するオートの場合にも、同様の制御とする。具体的には、静止画撮影時には、補正レンズ4の制御性を重視したハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、撮影準備中及び動画撮影時には、それ程制御性を重視する必要がないことから、静音性を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(11)ホワイトバランス
ホワイトバランス処理は、撮影被写体を照らしている光源に合わせて、撮影された画質の色味が見た目に近い色で撮影されるようにする為のものである。公知の技術により、光源の種類をカメラ自体が自動的に特定するオートと、ユーザがマニュアルで設定するモードとを有する。自動設定およびマニュアル設定における光源の種類は、太陽光、曇り、蛍光灯および電球である。制御部10は、光源の種類毎に定められているホワイトバランスのパラメータを用いて不図示の画像処理回路にホワイトバランス処理を実行させる。想定される被写体の明るさはこの光源の順序で暗くなり、撮影秒時もこの順序で低速秒時となる傾向にある。従って、自動設定またはマニュアル設定された光源の種類が電球である場合には、撮影秒時が低速秒時となる場合が多く、補正レンズ4の制御誤差の影響が小さくなる。そこで、このような場合には、静音性を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
また、設定された光源の種類が、太陽光または曇りである場合には、撮影秒時は高速秒時となる場合が多い。そのため、補正レンズ4の制御性を重視して補正レンズ4をハードウェア制御により制御する。設定された光源の種類が蛍光灯である場合には、撮影秒時が電球の場合まで低速秒時には至らないことを想定し、電球と太陽光または曇りである場合との中間的なオールラウンドな制御とする。具体的には、静止画撮影時には補正レンズ4の制御性を重視して、ハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、撮影準備中および動画撮影時には、それ程制御性を重視する必要がないことから、静音性を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(12)外部液晶モニタによる撮影画像モニタのオン/オフ
本実施の形態のカメラ1は、撮影準備中にユーザが光学ファインダ7を用いて構図を決定することもできるし、外部液晶モニタ19に表示された撮像素子9の撮影画像を用いて構図を決定することもできる。外部液晶モニタ19による撮影画像の表示はオン/オフすることができ、オフされた場合には、光学ファインダ7を用いて構図を決定する。この場合、ユーザはカメラ1に顔を近づけて撮影を行うこととなり、補正レンズ4の制御音が耳障りとなりやすい。この場合には、静音性を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
これに対して、外部液晶モニタ19による撮影画像モニタをオンした場合には、外部液晶モニタ19による撮影画像を見るために、ユーザはカメラ1から比較的顔を遠ざけて撮影を行うこととなる。この場合には、補正レンズ4の制御音がそれほど耳障りとならないので、静音性より制御性を重視し、静止画撮影時および撮影準備中にはハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、動画の撮影時には、それ程制御性を重視する必要がないことや、カメラ周囲の音を同時に録音する等が想定されることから、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(13)操作音のオン/オフ
カメラ1は、例えば音圧ブザーやスピーカ等を用いた操作音発生部32により、メイン釦21を操作してカメラ1を起動させるカメラ起動時、操作部18の各種釦、レバー、セレクタ類を操作する操作部材操作時、セルフタイマ撮影時及びレリーズ釦20を操作して撮影動作が行われた時に、それぞれに応じた作動音を発生させることができる。また、これらの操作音のオン/オフを切り替えることができる。
これらのカメラ起動時音、操作部材操作時、撮影時シャッタの各操作音がオフされた場合には、ユーザがカメラの作動音に対して静音化を望んでいる場合が多いと考え、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。一方、各操作音をオンしている場合には、ユーザがカメラの作動音に対してそれほど静音化を望んでいないと解釈して制御性を重視し、静止画撮影時及び撮影準備中にはハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、動画撮影時には、それ程制御性を重視する必要がないことや、カメラ周囲の音を同時に録音する等が想定されることから、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(14)セルフタイマモード
セルフタイマを用いて撮影する場合には、本カメラ1は、三脚など固定される場合が多く、ユーザは、手振れのない高画質な撮影を期待する。従って、セルフタイマモードがオンされ、セルフタイマ撮影を行う場合には、制御性を重視してハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。一方、セルフタイマモードがオフされ、通常の撮影を行う場合には、静音化を優先してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(15)連写モード
連写とは、全押しSW120bがONである間に、複数回の撮影を連続して行うことである。連写を行う場合、シャッタ8が撮影駒毎に開閉され、その駆動音が発生する。また、撮影駒毎にフォーカシングレンズ5を駆動してピントを再調整する場合には、フォーカシングレンズ5の駆動音が発生する。そのため、連写を行う場合には、補正レンズ4の制御音はそれらの音にかき消され、制御音が耳障りとならない場合が多い。従って、連写モードが連写に設定された場合には、制御性を重視してハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。一方、通常、つまり、単写撮影の場合には、静音化を優先してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(16)手振れ補正モード
カメラ1は、手振れ補正モードのオン/オフを切替えることができる。手振れ補正モードオンとしては、撮影時のみ補正モード、常時補正モード、流し撮りモードの3つのモードが存在する。
撮影時のみ補正モードは、撮影準備中には振れ補正を行わずに、撮影時に補正を行うモードである。常時補正モードは、撮影準備中も撮影時も振れ補正を行うモードである。
撮影時のみ補正モードと常時補正モードは、ユーザが操作部18を操作することに基づいて制御部10により設定される。
流し撮りモードは、流し撮りによってカメラが振られる方向である流し撮り方向については振れ補正は行わずに、流し撮り方向と垂直な方向について振れ補正を行うモードである。流し撮りモードが設定される場合は次の2通りある。
1つ目は、ユーザが操作部18を操作することに基づいて制御部10により設定される場合である。ユーザの手動設定により流し撮りモードが設定された場合は、制御部10は水平方向を流し撮り方向として設定する。
2つ目は、ユーザの手動設定により撮影時のみ補正モードや常時補正モードが設定されていたとしても、制御部10がカメラ1の移動を検出することにより流し撮りモードに移行する場合である。流し撮りの自動検出により流し撮りモードが設定された場合は、制御部10はカメラ1の移動方向を流し撮り方向として設定する。
流し撮りの自動検出は、公知の技術を用いて行う。例えば、制御部10が振動ジャイロ200a、200bの出力に基づいてカメラ1が一定の方向に振られているか否かの判定を行う。そして、制御部10は、流し撮りモードを設定するとともに、振動ジャイロ200a、200bの出力に基づいてカメラ1の移動方向を判定し、この移動方向を流し撮り方向として設定する。
手振れ補正モードがオフされた場合、手振れ補正は行われず、補正レンズ4は光学性能がより得られるその可動範囲の略中央の所定位置に制御される。手振れ補正モードがオンの場合には、検出された手振れに応じて補正レンズ4を移動させているが、手振れ補正モードがオフの場合には補正レンズ4は所定位置に制御され続けるので、補正レンズ4の制御音は手振れを補正している場合に比較して小さい。従って、この場合には、ハードウェア制御により補正レンズ4を制御し、補正レンズ4の制御性を重視しつつ静音化を保つ。なお、撮影準備中および動画撮影中においては、手振れ時の画像変化を滑らかにする目的で、ソフトウェア制御としても良い。
手振れ補正モードがオンされて常時補正モードである場合、静止画撮影時には、制御性を重視してハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、撮影準備中及び動画撮影時には、静止画撮影時ほど制御性を重視する必要がないので、静音化を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。なお、制御性よりも静音化が重視される場合には、静止画撮影時においてもソフトウェア制御を行うようにしても良い。
撮影時のみ手振れ補正が行われる撮影時のみ補正モードの場合、撮影準備中は前述したように補正レンズ4が制御範囲の略中央に制御され、補正レンズ4の制御音は小さい。そのため、撮影準備中は、ハードウェア制御により補正レンズ4を制御し、制御性を重視しつつ静音化を保つ。
静止画撮影時には、制御性を重視してハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。動画撮影時には、静止画撮影時ほど制御性を重視する必要がないことから、静音化を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
また、流し撮りモードである場合には、流し撮り方向は、補正レンズ4が制御範囲の略中央に制御され、振れ補正の制御音は小さい。その為、常にハードウェア制御により補正レンズ4を制御し、制御性を重視しつつ静音化を保つ。一方、流し撮り方向と垂直な方向(非流し撮り方向)は、静止画撮影時は制御性を重視し、ハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。また、撮影準備中及び動画撮影時における非流し撮り方向は、静止画撮影時ほど制御性を重視する必要がないことから、静音化を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(17)動画撮影時フレームレート
動画撮影時フレームレートとは、動画撮影時の1秒間に撮影するフレーム数の設定である。動画撮影時フレームレートが高いほど滑らかな動作撮影を行うことができるが、記録されるデータ数が大きくなる。逆に、動画撮影時フレームレートが低いほど動きが粗い撮影結果となるが、記録されるデータ数は小さくなる。従って、動画撮影時フレームレートが高い場合には、滑らかで手振れ補正効果の高い撮影を行う為、制御性を重視したハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。逆に、動画撮影時フレームレートが低い場合には、動きが粗い撮影結果しか得られないので、それ程高い手振れ補正の効果を得る必要がなく、静音化を重視してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。
(18)動画撮影時録音の有無
次に、動画撮影時録音をするか否かと補正レンズ4の制御方法切替えに関して記す。動画撮影と同時に録音を行う場合、補正レンズ4の制御音が録音されて耳障りとなる為、静音化を優先してソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。動画撮影と同時に録音を行わない場合には、制御性を重視してハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。
上述したように、撮影条件や各種モード設定に関して、補正レンズ4の制御方法をハードウェア制御とするかソフトウェア制御とするかの選択例をきめ細かく説明した。しかし、表3、表4に示される撮影条件や各種モード設定等は、同時に組み合わせることができないケースも存在する。
例えば、表3によれば、撮影焦点距離が150mm以上の場合の静止画の撮影時には、ハードウェア制御により補正レンズ4を制御する。一方、撮影倍率が1/1倍以上である場合には、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御する。しかし、撮影焦点距離が150mm以上で、かつ、撮影倍率が1/1倍以上の場合に、ハードウェア制御およびソフトウェア制御のどちらで補正レンズ4を制御するかについては、カメラ1の製品としての性質に応じてケースバイケースで対応する必要がある。
6.シーケンス具体例
次に、本発明に関わるカメラ1の作動シーケンスの具体例を述べる。
6−1.撮影準備中
ユーザが、本カメラ1のメイン釦21を押した時のカメラ1の動作について説明する。図16は、メイン釦21を押し、それに連動したメインSW121がオンした時の主に制御部10により行われる動作を示すタイミングチャートである。尚、補正レンズ4の制御に関する部分はX軸方向とY軸方向の2つ存在するが、同様の動作であるため、図16ではY軸のみ記載した。
図16中の二重線で示される制御範囲上限と制御範囲下限は、振れ補正時に振れ制御部10bが算出する目標位置Lc(X)の取り得る範囲(制御範囲)を示している。即ち、振れ制御部10bは振動ジャイロ200a,200bの検出した値がいかに大きな値であったとしても、制御範囲を越えた目標位置Lc(X)を設定することはない。この制御範囲は、後述するカメラの設定状態や撮影条件に基づいて、振れ制御部10bにより設定される。そのため、駆動部203a,203b、およびコイル40a,40bにより駆動される補正レンズ4の位置は、設定された制御範囲内に制限される。
図3を用いて制御範囲の一例について説明する。破線にて示される撮影準備中および動画撮影時の制御範囲800は、撮影準備中および動画撮影時における制御範囲の一例を示している。また、破線にて示される静止画撮影時の制御範囲801は、静止画撮影時における制御範囲の一例を示している。振れ制御部10bは、制御範囲(撮影準備中および動画撮影時の制御範囲800、静止画撮影時の制御範囲801)を可動範囲400の内側の範囲として設定する。また、本実施形態においては補正レンズ4の可動範囲の中央と制御範囲の中央が一致している。
タイミングt10に於いてメインSW121がオンすると、主制御部10aは、タイミングt11に於いて、本カメラ1の駆動部203a、203bの電源VP、及び、少なくとも振れ補正回路部14を動作させる電源を含む各種電源(不図示)を投入し、カメラ1が後述の動作を行える状態とする。次に、振れ制御部10bは、タイミングt11で投入された電源が少なくとも安定し、振動ジャイロ200a、200b、及び、振動ジャイロ処理部201a、201bの出力が安定するタイミングt12から、カメラ1に生じた振れの検出を開始する。振れ検出は、振動ジャイロ処理部201a、201bの出力に基づいて、前述した方法により行われる。
タイミングt13では、主制御部10aは、ズーミングレンズ位置検出部13によりズーミングレンズ3の位置をモニタし、ズーミングレンズ駆動部12により、ズーミングレンズ3を現在の所定の初期位置から所定のワイド端位置に駆動させる。タイミングt14では、振れ制御部10bは、カメラのモード設定や撮影条件に応じて切替え信号a、bを操作し、補正レンズ4の制御をソフトウェア制御とするかハードウェア制御とするかを切り替える。これにより、図8に示す切替え部205a、205bが作動し、ソフトウェア制御による駆動量Dh(X)、Dh(Y)か、ハードウェア制御による駆動量Ds(X)、Ds(Y)のどちらか一方が選択される。
タイミングt15では、振れ制御部10bは、現在の補正レンズ4の位置を初期値として、補正レンズ4の目標位置Lc(X)を所定の傾きVc0でその制御範囲中央に向けて変化させる。振れ制御部10bの切替え信号a、bにて、ソフトウェア制御に切り替えた場合には、振れ制御部10bは、ソフトウェアによる駆動量Ds(X)、Ds(Y)の算出を所定の制御サンプリング間隔ts毎に行う。駆動量Ds(X)、Ds(Y)の算出は、ソフトウェア制御の項で述べた方法により、補正レンズ4の目標位置Lc(X)、Lc(Y)と、ホール素子処理部202a、202bから得られた補正レンズ位置Lr(X)、LR(Y)とに基づいて行われる。算出された駆動量Ds(X)、Ds(Y)は切替え部205a、205bに出力される。そして、その駆動量Ds(X)、D(Y)に基づき、PWM変換部204a、204b、及び、駆動部203a、203bを通じてコイル40a、40bが駆動される。その結果、ソフトウェア制御による補正レンズ4の制御が行われる。
一方、切替え信号a、bにて、ハードウェア制御に切り替えた場合には、振れ制御部10bは、所定の間隔thc毎に、この所定の傾きVc0で変化させた補正レンズ4の目標位置Lc(X)、Lc(Y)をハードウェア制御部206a、206bに設定する。ハードウェア制御部206a、206bは、より高速な制御サンプリング間隔th毎に駆動量Dh(X)、Dh(Y)を算出する。算出された駆動量Dh(X)、Dh(Y)は、切替え部205a、205bに出力される。そして、算出された駆動量Dh(X)、Dh(Y)に基づき、PWM変換部204a、204b、及び、駆動部203a、203bを通じてコイル40a、40bを駆動する。その結果、ハードウェア制御による補正レンズ4の制御が行われる。上述した、タイミングt15からの動作により、補正レンズ4は、徐々にその制御範囲中央にセンタリングされてゆく。
センタリングとは、補正レンズ4をその制御範囲の略中央部に移動する処理のことである。制御範囲の中央部とは、図3の原点に相当する位置である。なお、センタリングは補正レンズ4を厳密に制御範囲の中央部に移動するものでなくても良く、装置の機械的な誤差や制御誤差による多少の誤差は許容するものとする。なお、制御範囲の中央と可動範囲の中央との位置がほぼ一致するのであれば、補正レンズ4をその可動範囲の略中央部に移動することによりセンタリング処理を行うことにしてもよい。
補正レンズ4がその制御範囲中央にセンタリングされると、振れ制御部10bは、タイミングt17からは、カメラ1に生じた振れを補正するように目標位置Lc(X)、Lc(Y)を設定して補正レンズ4の制御を開始する。具体的には、既にタイミングt14で設定されている切替え信号a、bに従い、振動ジャイロ処理部201a、201bにより検出された振れに応じて設定された補正レンズ4の目標位置Lc(X)、Lc(Y)に、補正レンズ4がソフトウェア制御、或いは、ハードウェア制御されることで、撮像素子9の振れが補正される。但し、補正レンズ4の目標位置Lc(X)、Lc(Y)は、共に図16の2重線で描かれている制御範囲上限から制御範囲下限の範囲内に制限され、その範囲内に補正レンズ4が制御される。
その後、振れ制御部10b及び振れ補正回路部14による補正レンズ4の制御が少なくとも安定したタイミングt18において、主制御部10aは、撮像素子9により逐次撮像された画像の外部液晶モニタ19への逐次表示を開始する。この撮像画像の外部液晶モニタ19への逐次画表示を、以降、“モニタ画表示”と呼ぶこととする。モニタ画表示において、撮像素子9により逐次撮像された画像がリアルタイムに表示される。
ここで、カメラ1は、撮像素子9により撮像された画像をリアルタイムに外部液晶モニタ19に映し出す。他方、補正レンズ4は、タイミングt15の時点で、その自重の為に重力方向の可動範囲端に落下した状態にある。そこで、本実施形態では、少なくとも外部液晶モニタ19による“モニタ画表示”が開始されるまでに、補正レンズ4をその制御範囲中央にセンタリングし、その後、振れ補正を開始して“モニタ画表示”を開始するようにしている。
次に、タイミングt19からは、撮像素子9による撮像画像のコントラストに基づいて、フォーカシングレンズ位置検出部16によるフォーカシングレンズ5の位置をモニタするとともに、フォーカシングレンズ駆動部15によりフォーカシングレンズ5を駆動して、撮像素子9面上における被写体像のピント調整を開始する。ここで、ピント調整の開始を、振れ補正が開始された少なくとも後のタイミングt19としているのは、以下のような理由からである。撮像素子9による撮像画像のコントラストによりピント位置を見つけてピント調整を行う本実施形態のようなカメラでは、振れ補正により撮像素子9面の振れが補正されることにより撮像画像のコントラストが向上し、ピント調整精度が向上する。
また、ズームレバー22が操作され、ズームダウンSW122a、或いは、ズームアップSW122bがオンすると、それに応じて、主制御部10aは、ズーミングレンズ位置検出部13によりズーミングレンズ3の位置を検出し、ズーミングレンズ駆動部12によりズーミングレンズ3を駆動して撮影焦点距離を変更する。これは、図16のタイミングt20に相当する。
6−2.撮影時の動作
次に、ユーザがレリーズ釦20を全押しして撮影を行う場合について説明する。
6−2−1.各種モードと撮影時の動作
本実施形態では、撮影直前で補正レンズを制御範囲の略中央部へセンタリングするか否か、撮影時の補正レンズの制御範囲を拡大するか否か、及び、撮影直後に補正レンズを制御範囲の略中央部へセンタリングするか否かを、撮影シーン、撮影条件、各種モード等の条件で切り替える。
(1)撮影前の補正レンズ4のセンタリング
まず、撮影直前に補正レンズ4を制御範囲の略中央部へセンタリングする場合、および、センタリングしない場合における利点および欠点を、表5に一覧として示した。
振れ補正機能を備えた本実施形態の様なカメラの光学設計は、本来、補正レンズ4を振れ補正時に大きくシフトさせた場合でも光学性能の劣化が小さくなるように設計される。しかし、製造コストを優先させたりスペースを優先したりする為、補正レンズ4を大きくシフトしたときに、撮像素子9面周辺での解像、像湾曲等の光学性能劣化が大きくなり易い。従って、光学性能面から考えると、あまり振れ補正時の補正レンズ4の制御範囲を大きくするのは好ましくない。
撮影直前に補正レンズ4を制御範囲の略中央部へセンタリングする場合の利点は、補正レンズ4を撮影前に制御範囲の略中央部にセンタリングしてから振れ補正を行うため、撮影時に、補正レンズ4が制御範囲の略中央部近辺で振れ補正される確率が高く、光学性能の劣化に対して有利なことである。また、撮影時に、制御範囲の略中央部近辺から振れ補正が開始される為、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用でき、比較的大きな振れまで補正が可能となる点である。しかし、補正レンズ4のセンタリングに要する時間だけ、レリーズタイムラグが長くなる。また、補正レンズ4を制御範囲の略中央部にセンタリングするため、撮影前に外部液晶モニタ19に表示された撮像画像の構図に対して、実際に撮影された画像の構図が変化してしまう。
一方、撮像前に補正レンズ4をセンタリングしない場合の利点は、上記の補正レンズ4をセンタリングする場合の逆となり、センタリングしない分だけレリーズタイムラグが短くなり、又、撮影前の構図と撮影された画像の構図のずれはほとんど発生しない。
(2)撮影時の補正レンズの制御範囲
本実施の形態のカメラ1では、撮影シーン、撮影条件および各種モードにより、補正レンズ4の制御範囲を撮像時に変化させるか否かを切り替える。しかし、制御範囲を変化させるか否かにより、表6に示すような欠点、利点がある。
光学性能は、撮像時の補正レンズ4の制御範囲を一定に保てば劣化しづらいが、大きな振れには対応しづらい。これに対して、撮像時の補正レンズ4の制御範囲を拡大した場合、大きな振れには対応可能となるが、大きな振れが発生して補正レンズ4を大きくシフトさせると光学性能劣化が大きくなる。
図17は、撮影準備中と撮影時の補正レンズ4の制御範囲の一例を示したものである。図17の例では、静止画の撮影時に撮影準備中に比べ、補正レンズ4の制御範囲を2倍程度拡大している。ここでは、動画撮影時の制御範囲を撮影準備中と同一としたが、静止画の撮影時と同じようにしても構わないし、又、これら3つをそれぞれ最適な範囲に設定しても構わない。また、図17の例では、撮影焦点距離が長くなるほど補正レンズ4の制御範囲を広げているのは、撮影焦点距離が長いほど撮像面上における像の振れ量が大きく、補正レンズ4の制御範囲も広げる必要があるからである。なお、参考として、本カメラ1の撮影焦点距離が最も長い(テレ端)場合の補正レンズ4の可動範囲と制御範囲との関係を、図3に示す。
(3)撮影後の補正レンズのセンタリング
次に、撮影後に補正レンズ4を制御範囲の略中央部へセンタリングする場合、および、センタリングしない場合における利点および欠点を、表7に一覧として示した。
補正レンズ4を撮影後に制御範囲の略中央部にセンタリングした場合、補正レンズ4を制御範囲の略中央部にセンタリングした分だけ撮像面上において被写体像がシフトする。その結果、撮影された撮像画の構図と、その後行われる外部液晶モニタ19に表示された撮像画像のモニタ画の構図との間に、変化が生じてしまうという欠点がある。一方、補正レンズ4を制御範囲の略中央部にセンタリングし、そこから振れ補正が再開される為、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用される。そのため、振れ補正の効果により、外部液晶モニタ19によりモニタされるモニタ画像が安定する。
逆に、補正レンズ4を撮影後に制御範囲の略中央部にセンタリングしない場合、撮影された撮像画の構図と、その後行われる外部液晶モニタ19に表示された撮像画像のモニタ画の構図との間に、ほとんど構図差はなくなる。また、補正レンズ4のセンタリングを行う時間分だけ、連写速度が向上する。しかし、撮影後、振れ補正を再開するタイミングにおいて補正レンズ4が制御範囲端近辺にあると、比較的小さな振れが印加された場合でも容易に補正レンズ4が制御範囲端に達してしまい、振れ補正がきかなくなるという欠点がある。
(4)撮影シーンと撮像前後のセンタリング、撮像中の制御範囲
本実施形態では、以上説明したように、撮影直前に補正レンズを制御範囲の略中央部へセンタリングするか否か、撮影時の補正レンズの制御範囲を拡大するか否か、及び、撮影後に補正レンズを制御範囲の略中央部へセンタリングするか否かに際して、各々の場合の利点を有効に用い、かつ、欠点を補うことにより、これまでにない振れ補正性能およびカメラ性能を得ることができる。
次に、各種モードと、撮影直前に補正レンズを制御範囲の略中央部へセンタリングするか否か、撮影時の補正レンズの制御範囲を拡大するか否か、及び、撮影直後に補正レンズを制御範囲の略中央部へセンタリングするか否かの具体例を表8、表9に示した。
《レリーズ優先モードと撮像前後のセンタリング》
動きの速い被写体、例えば、動物写真、昆虫写真であるとか、又、表現豊かな子供の写真を撮ろうとする時、レリーズタイムラグが問題となる場合がある。被写体の一瞬のシャッタチャンスを捕らえ、この時を逃さず撮影する為には、レリーズ釦20を操作し、実際にシャッタが切れて撮影が行われるまでの時間を極力短くする必要がある。正確には、撮像素子9の撮像動作が開始されるまでの時間を極力短くする必要がある。レリーズ優先モードは、こうした撮影シーンの為に設けられたモードである。
レリーズ優先モードの場合には、撮影直前での補正レンズ4の制御範囲の略中央部へのセンタリングを行わず、レリーズタイムラグを短縮する。また、こうした動きのある撮影シーンでは、振れが大きくなるケースが多い為、撮影動作を開始する前に補正レンズ4の制御範囲を拡大する。さらに、こうした撮影シーンでは、撮影後にさらにもう一枚撮影するケースが多々あり、自分の子供のかわいい仕草をさらにもう一枚さらにもう一枚ととり続けるようなケースが想定される。そのような場合、撮影後に補正レンズ4を制御範囲の略中央部にセンタリングして次の撮影に備え、振れ補正の効果をより早く安定させる。撮影後に補正レンズ4をセンタリングさせる為、センタリングされたその位置から振れ補正が再開され、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用される。その結果、外部液晶モニタ19によりモニタされるモニタ画には、より早く振れ補正の効果が発揮される。
一方、非レリーズ優先モードの場合には、撮影直前での補正レンズ4の制御範囲の略中央部へのセンタリングを行い、より大きな手振れにも対応できるようにする。また、撮影時の制御範囲の拡大を行うことで、制御範囲の上限から下限まで有効に使用でき、比較的大きな振れまで補正が可能となる。撮影後は、外部液晶モニタ19に表示される撮影結果の画角とモニタ画の画角とのずれによる違和感を与えないように、補正レンズ4のセンタリングを行わない。
なお、非レリーズ優先モードの場合の変形例として、撮影時の制御範囲を変更しないような設定でも良い。この場合、撮影前センタリングを行って補正レンズ4を制御範囲の略中央部へと移動させるようにしているので、振れがそれほど大きくなければ撮影時の制御範囲を拡大しなくても十分対応ができる。
《画質優先モードと撮像前後のセンタリング》
本カメラ1は、撮影画質を優先して撮影するモードと、手振れの補正効果を優先して撮影するモードとを有する。画質優先モードは、手振れしない条件での撮影シーンを想定したモードである。手振れしない条件とは、カメラをしっかりと構えている場合や、明るい屋外での撮影であるとか、三脚に固定して撮影する等である。こうした場合には、手振れは小さく、補正レンズ4は、撮影が開始される直前でその制御範囲の略中央部近辺にいる場合が多い。
従って、撮影光学系の性能は十分に得られるとして、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わない。補正レンズ4のセンタリングを行わない為、レリーズタイムラグが短縮され、かつ、撮影準備中の撮影画角と撮影結果の画角も変化しなくなる。撮影時の補正レンズ4の制御範囲については拡大せず、必要最小限の範囲とすることで撮影光学系の光学性能劣化を防ぐ。また、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行わないことで、撮影結果の画角と、撮影後に再開される外部液晶モニタ19によるモニタ画の画角とのずれを防ぎ、撮影前後のユーザへの違和感が極力抑えられる。
一方、手振れ優先モード時には、手振れ効果を最大限に発揮し、手振れ失敗写真の発生確率を極力抑える必要がある。こうした場合には、手振れが大きいため、補正レンズ4は、撮影が開始される直前でその制御範囲の略中央部近辺にいない場合が多い。従って、レリーズタイムラグや上述した構図の変化に対応するよりも、より大きな手振れに対応すべきと考え、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行う。又、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大することで、より大きな手振れに対応する。なお、この場合には、大きな手振れに合わせて大きく補正レンズ4を移動させることにより生じる光学性能の劣化は、犠牲にする。
又、撮影後には、補正レンズ4のセンタリングを行い、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用する。それにより、大きな手振れが生じている場合にも、撮影後の外部液晶モニタ19によりモニタされるモニタ画に対して、振れ補正の効果を発揮することができる。但し、この場合には、撮影結果の画角と撮影後に再開される外部液晶モニタ19による再開されたモニタ画と間の画角のずれは、犠牲にせざるを得ない。
《撮影焦点距離》
一般的に、焦点距離が長くなるほど、撮像素子9の撮像面上における像の振れ量は大きくなることが知られている。本カメラ1に一定の振れ角θvが印加された場合、撮像面上で生じる像の振れ量Lvは、撮影焦点距離をfmmとすると次式(8)で与えられる。従って、同じ振れを補正するためには、撮影焦点距離が長くなるほど補正レンズ4の移動量を大きくする必要がある。一方、補正レンズ4の可動範囲は有限であり、あまりにも大きい可動範囲を設けると、本カメラ1の鏡筒1bが大きくなり、コストアップや光学性能劣化につながる。
Lv≒fmm×tanθv …(8)
本実施形態では、焦点距離が所定値より長い場合、例えば、150mm以上の場合には、撮影が開始される直前で補正レンズ4をその制御範囲の略中央部にセンタリングし、より大きな手振れに対応できるようにする。これにより、撮影時に、補正レンズの位置が制御範囲中央近辺で振れ補正が行われ、光学性の劣化も抑えられる。又、ディジタルズームが作動している場合、撮像素子9により得られた撮像画像の一部を切り出し、ディジタル補完して拡大して撮影する。撮影準備中に外部液晶モニタ19により撮影画像を動画表示させる場合には、撮像素子9の撮影画像が大きく拡大される。そのような場合、光学性の劣化がより顕著に表れ易いので、撮影前に補正レンズ4をセンタリングする。
一方、焦点距離が所定値より短い場合には、撮影が開始される直前で、補正レンズ4のセンタリングを行わない。すなわち、撮影前と撮影された写真の構図が変化しないことを優先する。焦点距離が短い場合には、補正レンズ4は少ない移動量で十分大きな振れ量まで対応できる。又、記念写真等の撮影では撮影焦点距離が短い場合が多く、撮影前と撮影された写真の構図が変化しないことが望まれる。又、補正レンズ4を撮影前にセンタリングしないことで、レリーズタイムラグを短くすることもできる。
焦点距離が所定値より長い場合には、前述と同様、同じ大きさの振れを補正するためにはより補正レンズ4を移動する必要があるため、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大する。逆に、焦点距離が所定値より短い場合には、少ない移動量で十分大きな振れ量まで対応できる為、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大せず光学性能を優先する。ディジタルズームが作動している場合には、撮影画像が大きく拡大される為、より光学性の劣化が顕著に表れ易い。そのため、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大せず光学性能を優先する。
また、焦点距離が所定値より長い場合には、前述の通り、同じ大きさの振れを補正するためには補正レンズ4の移動量をより大きくする必要がある。その為、撮影が終了した時点で、補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合が多い。よって、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行い、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用できるようにする。その結果、大きな手振れが生じていた場合にも、撮影後の外部液晶モニタ19によりモニタされるモニタ画に対して、振れ補正の効果を発揮することができる、但し、この場合には、撮影結果の画角と撮影後のモニタ画の画角との間のずれは犠牲になる。
逆に、焦点距離が所定値より短い場合には、補正レンズ4の移動量は小さく、撮影後に補正レンズ4がその制御範囲の略中央部付近にいる可能性が大きいので、撮影後の補正レンズ4のセンタリングは行わない。そのため、撮影結果の画角と撮影後に再開されるモニタ画との間の画角のずれがほとんどなく、ユーザに違和感を与えなくてすむ。又、ディジタルズームが作動している場合には、撮影画像が大きく拡大される為、撮影結果の画角と撮影後に再開されるモニタ画との間の画角のずれがユーザに違和感を与えるため、撮影後の補正レンズ4のセンタリングは行わない。
《撮影倍率、被写体距離》
前述の通り、撮影倍率が大きくなる、或いは、被写体距離が近づくと、振れ補正効果がなくなることが知られている。そこで、本実施形態では、撮影倍率が大きくなった場合、及び、被写体距離が近づいた場合には、虫等の生き物等の動きのある被写体を撮影することが多いと想定し、レリーズタイムラグを優先する。また、近い被写体を拡大、クローズアップ撮影を行う場合を考慮し、撮影前と撮影画の画角変化を極力抑えることとした。よって、撮影倍率が所定値より大きくなる、或いは、被写体距離が所定値より近くなる場合には、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わないようにした。表8の例では、撮影倍率の所定値は1/1で、被写体距離の所定値は0.3mである。
逆に、撮影倍率が所定値より小さい、或いは、被写体距離が所定値より遠い場合には、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行う。この場合、風景写真等、空間周波数の高い、つまり、細かい被写体を撮影することが多くなることから、振れ補正性能および光学性を優先し、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行うこととする。
また、撮影倍率が所定値より大きくなる、或いは、被写体距離が所定値より近くなる場合には、上述したように、虫等の動きの速い被写体を撮影する場合が多いと想定される。その場合、被写体に合わせて本カメラ1を動かすなどして、大きな振れが発生することが多いことから、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大し、大きな振れに対する補正ができるようにする。逆に、撮影倍率が所定値より小さくなる、或いは、被写体距離が所定値より遠い場合には、風景写真等の空間周波数の高い、つまり、細かい被写体を撮影することが多くなることから、光学性を優先して撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大しない。
又、撮影倍率が所定値より大きくなる、或いは、被写体距離が所定値より近くなる場合には、例えば、動物写真、昆虫写真であるとか、又、表現豊かな子供の写真等が想定される。そのような動きのある被写体を撮影する場合、撮影に失敗する等して、1回の撮影では満足行かず、さらに撮影後にもう一枚、もう一枚と撮影するケースが多々ある。そこで、撮影後に補正レンズ4を制御範囲の略中央部にセンタリングし、次の撮影に備え、振れ補正の効果をより早く安定させるようにする。この場合、撮影後に補正レンズ4をセンタリングさせる為、センタリングされたその位置から振れ補正が再開され、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用される。その結果、外部液晶モニタ19によりモニタされるモニタ画に対して、より早く振れ補正の効果が発揮される。
逆に、撮影倍率が所定値より小さい、或いは、被写体距離が所定値より遠い場合には、風景写真等が想定される。そこで、撮影結果と撮影後に再開される外部液晶モニタ19によるモニタ画との間の画角のずれが、ユーザに違和感を与えないようにする為、撮影後の補正レンズ4のセンタリングは行わない。
《補正レンズシフト量撮像面倍率》
補正レンズシフト量撮像面倍率が所定値以上である場合、補正レンズ4の移動量に対して撮像面上の像の移動量が大きく、撮影前の構図と撮影結果の構図との間の変化が大きい。そのため、補正レンズ4の撮影直前でのセンタリングは行わない。逆に、補正レンズシフト量撮像面倍率が所定値以下の場合には、撮影前の構図と撮影結果の構図との間の変化が比較的小さく、又、光学性能を優先させる。よって、補正レンズ4の撮影直前でのセンタリングを行う。補正レンズシフト量撮像面倍率が所定値以上である場合には、所定の大きさの振れを補正するのに必要な補正レンズ4の移動量は小さくて済む。そのため、撮影時の補正レンズ4の制御範囲は拡大せず、光学性能を優先する。
逆に、補正レンズシフト量撮像面倍率が所定値以下である場合には、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大し、十分大きな振れに対応させる。この場合、前述の通り、同じ大きさの振れを補正するために、補正レンズ4の移動量をより大きくする必要がある。そのため、撮影が終了した時点で、補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合が多い。そこで、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行い、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用する。その結果、大きな手振れが生じていた場合にも、撮影後の外部液晶モニタ19によりモニタされるモニタ画に対して、より早く振れ補正の効果を発揮できるようにする。
補正レンズシフト量撮像面倍率が所定値以上である場合、補正レンズ4の移動量は小さく、撮影後に補正レンズ4がその制御範囲の中央部付近にいる可能性が大きいので、撮影後の補正レンズ4のセンタリングは行わない。その結果、撮影結果の画角と撮影後に再開される外部液晶モニタ19によるモニタ画との間の画角のずれがほとんどなく、ユーザに違和感を与えなくてすむ。
《撮影秒時》
撮影秒時が所定値より短い場合、撮影が一瞬で行われる為、撮影中の補正レンズ4の移動量は小さい。従って、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わないことにより、撮影前と撮影結果の構図変化がないこと、及び、レリーズタイムラグを優先する。又、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大を行わないことによって、不必要な光学劣化を防ぐ。逆に、撮影秒時が所定値より長い場合、撮影中に補正レンズ4が長い時間移動し、撮影中に移動する補正レンズ4の移動量は大きくなる。そのため、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わせ、又、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大することで、より大きな振れにまで振れ補正の効果を得やすくする。
また、撮影秒時が所定値より長い場合、その長い撮影秒時の間に補正レンズ4が大きく移動し、撮影が終了した時点で、補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合が多い。そこで、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行い、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用する。それにより、大きな手振れが生じていた場合にも、撮影後の外部液晶モニタ19によりモニタされるモニタ画に対して、より早く振れ補正の効果が発揮されるようにする。
逆に、撮影秒時が所定値より短い場合、撮影が一瞬で行われる為、補正レンズ4の移動量は小さく、撮影後に補正レンズ4がその制御範囲の中央部付近にいる可能性が大きい。そのため、撮影後の補正レンズ4のセンタリングは行わない。その結果、撮影結果の画角と撮影後に再開される外部液晶モニタ19によるモニタ画の画角との間のずれがほとんどなく、ユーザに違和感を与えなくてすむ。
《フォーカスモード》
マクロAFは、カメラ1に撮影被写体が極近い場合に多く用いるモードであり、前述の通り、被写体距離が近づくと振れ補正効果がなくなることが知られている。一方で、虫等の生き物等の動きのある被写体を撮影することが多い。そのことから、レリーズタイムラグを優先するとともに、近い被写体の拡大撮影およびクローズアップ撮影を行う場合を考慮して、撮影前と撮影画の画角変化を極力抑えるようにする。そのために、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わないようにする。
逆に、通常モード、遠距離AFモードおよび無限遠モードの時には、被写体が遠く、また、空間周波数に高周波な成分が多く、具体的には、細かい被写体が多く含まれる。このような被写体を解像よく撮影するには、補正レンズ4の制御性を高めなければならない。従って、このケースでは、光学性能を優先し、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行うようにする。
又、カメラ1に撮影被写体が極近い場合に多く用いるマクロAF時には、虫等の動きの速い被写体を撮影する場合が多いことを考慮する。この場合には、被写体に合わせて本カメラ1を動かすことで、大きな振れが発生することが多い。このことから、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大し、大きな振れにも振れ補正が可能なようにする。逆に、通常モード、遠距離AFモードおよび無限遠モードの時には、風景写真等の空間周波数が高くて細かい被写体を撮影することが多くなることから、光学性を優先し、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大しない。
又、マクロAF時には、例えば、動物写真、昆虫写真であるとか、又、表現豊かな子供の写真等が想定される。そのような動きのある被写体を撮影する場合、撮影に失敗する等して、1回の撮影では満足行かず、さらに撮影後にもう一枚、もう一枚と撮影するケースが多々ある。そこで、撮影後に補正レンズ4を制御範囲の略中央部にセンタリングし、次の撮影に備え、振れ補正の効果をより早く安定させるようにする。この場合、撮影後に補正レンズ4をセンタリングさせる為、センタリングされたその位置から振れ補正が再開され、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用される。その結果、外部液晶モニタ19によりモニタされるモニタ画に対して、より早く振れ補正の効果が発揮される。
通常モード、遠距離AFモード、無限遠モード時には、風景写真等を考慮し、撮影結果と撮影後に再開される外部液晶モニタ19によるモニタ画の画角のずれがユーザに違和感を与えないようにする。そのため、撮影後の補正レンズ4のセンタリングは行わない。
《フラッシュ撮影モード》
発光禁止のモードは、美術館等のようにフラッシュ撮影が禁止された場所での撮影に用いられることが多く、発光禁止のモードに設定された場合には低速秒時となる場合が多い。また、スローシンクロのモードに設定された場合にも、夜景を背景とした人物撮影等を想定しているので、撮影秒時が低速秒時となる場合が多い。したがって、発光禁止のモードに設定された場合、及び、スローシンクロのモードに設定された場合には、撮影中に補正レンズ4が長い時間移動し、撮影中に移動する補正レンズ4の移動量が大きくなる。そのため、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わせ、又、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大することで、より大きな振れにまで振れ補正の効果を得やすくする。
強制発光のモードは、昼間の屋外などの顔に影がかかる場合にフラッシュ撮影することで顔を適正に撮影する等に用いられることが多い。従って、撮影秒時は高速秒時となる場合が多く、撮影が一瞬で行われる為、撮影中の補正レンズ4の移動量は小さい。従って、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングをせず、撮影前と撮影結果の構図変化がないこと、及び、レリーズタイムラグを優先する。また、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大を行わないことで、不必要な光学劣化を防ぐ。
オートと赤目低減のモードに設定された場合には、撮影秒時の範囲が高速から比較的低速まで含むが、スローシンクロの場合ほど低速秒時には至らないことが想定される。そのため、これらのモードでは、スローシンクロと強制発光の場合の中間的なオールラウンドなものとされる。撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わせて、比較的大きな振れにまでは対応させるとともに、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大をせず、不必要な光学劣化は避ける。
また、撮影秒時が長くなることが想定される発光禁止のモードに設定された場合、及び、スローシンクロのモードに設定された場合には、その長い撮影秒時の間に補正レンズ4が大きく移動し、撮影が終了した時点で補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合が多い。そこで、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行い、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用するようにする。それにより、大きな手振れが生じていた場合にも、撮影後の外部液晶モニタ19によりモニタされるモニタ画に対して、より早く振れ補正の効果を発揮できるようになる。
逆に、オートと赤目低減と強制発光のモードに設定された場合には、発光禁止のモードおよびスローシンクロのモードに設定された場合程には低速秒時には至らない。そのため、撮影中に移動する補正レンズ4の移動量は小さく、撮影後に補正レンズ4がその制御範囲の中央部付近にいる可能性が大きいので、撮影後の補正レンズ4のセンタリングは行わない。その結果、撮影結果の画角と撮影後に再開される外部液晶モニタ19によるモニタ画との間の画角のずれがほとんどなく、ユーザに違和感を与えなくてすむ。
《記録画素数モード、及び、記録画像圧縮率モード》
表8のスモール、又は、L版/はがきサイズのように記録画素数モードが所定値より小さい場合、及び、表8のノーマルのように記録圧縮率が高い場合には、連写速度、及び、撮影前、撮影結果、及び、撮影後の構図の変化が少ないことを優先することとする。そして、そのような場合には、補正レンズ4の撮影直前、及び、撮影後のセンタリングを行わず、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大を行わない。
記録画素数モードが所定値より小さい場合、及び、記録圧縮率が高い場合には、前述の通り、撮影画像が粗く記録されたり、高圧縮により画像の細部情報が失われたりするため、さほど光学性能を発揮させる必要はない。逆に、何れの場合も撮影結果のデータファイルサイズが小さくなるため、撮影結果の不揮発性記憶媒体31への書き込み時間が短くなる。そのため、撮影が終了してから撮影結果の不揮発性記憶媒体31への書き込みが終了し、次の撮影が行われるまでの時間が一般的に短くて済む。
記録画素数が所定値より小さい場合、及び、記録圧縮率が高い場合には、撮影直前、及び、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行わず、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大を行わない。その結果、次の撮影が行われるまでの時間がさらに短くて済み、連写速度性能を向上する。また、連写時の撮影前、撮影結果、及び、撮影後の構図がほとんど変化せず、ユーザに違和感を与えなくてすむ。
逆に、記録画素数が所定値より大きい場合、及び、記録圧縮率が低い場合には、より高い光学性能、及び、より大きな振れに対応する為に、補正レンズ4の撮影直前、及び、撮影後にセンタリングを行い、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大を行う。表8の例では、ミドル、ラージ、又は、ワイド、通常のモードが記録画素数が所定値より大きい場合に対応し、ファインおよびスーパーファインのモードが記録圧縮率が低い場合に対応する。
《ISO感度モード》
ISO感度は、一般的に、高感度に設定する程、暗い被写体に露出が合い、撮影秒時が高速となる一方、画質にノイズが生じて粒子が粗くなる。従って、ISO感度が所定値以上の高い場合(表8では、ISO800以上)には、撮影画像にノイズが生じ、粒子が粗くなる。そのため、さほど光学性能を発揮させる必要はなく、撮影秒時も高速となり、撮影時の補正レンズの移動量も小さくて済む。そこで、連写速度、及び、撮影前、撮影結果、及び、撮影後の構図の変化が少ないことを優先することとし、補正レンズ4の撮影直前、及び、撮影後のセンタリングを行わず、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大を行わない。
逆に、ISO感度が所定値以下の低い場合(表8では、ISO400以下)、及び、ISO感度が自動で設定され、所定値以下となる場合があるオートでは、ノイズが小さく高画質が得られる。また、より撮影秒時が低秒時となる場合が多い。そこで、より高い光学性能、及び、より大きな振れに対応する為、補正レンズ4の撮影直前、及び、撮影後のセンタリングを行い、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大を行う。
《ホワイトバランス》
制御部10は、光源の種類あるいは光源の種類に応じたホワイトバランス処理のパラメータに基づいて、センタリングを行うか否かと撮影時における制御範囲の拡大を行うか否かについて決定する。前述の通り、自動設定、或いは、マニュアル設定される光源の種類は、太陽光、曇り、蛍光灯、及び、電球であり、想定される被写体の明るさはこの順序で暗くなる。従って、撮影秒時もこの順序で低速秒時となる傾向にある。そのため、自動設定、或いは、マニュアル設定された光源の種類が、太陽光、或いは、曇りである場合には、撮影秒時が高速である場合が多く、撮影が一瞬で行われる為、撮影中の補正レンズ4の移動量は小さい。従って、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングをせず、撮影前と撮影結果の構図変化がないこと、及び、レリーズタイムラグを優先する。また、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大を行わず、不必要な光学劣化を防ぐ。
又、撮影が一瞬で行われる場合が多い為、補正レンズ4の移動量は小さく、撮影後に補正レンズ4がその制御範囲の中央部付近にいる可能性が大きい。その為、撮影後の補正レンズ4のセンタリングは行わないこととする。その結果、撮影結果の画角と撮影後に再開される外部液晶モニタ19によるモニタ画の画角との間のずれがほとんどなく、ユーザに違和感を与えなくてすむ。
逆に、自動設定、或いは、マニュアル設定された光源の種類が、電球または蛍光灯である場合には、撮影秒時が長くなることが想定され、撮影中に補正レンズ4が長い時間移動し、撮影中の補正レンズ4の移動量が大きくなる。そのため、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わせ、又、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大することで、より大きな振れにまで振れ補正の効果を得やすくする。
又、その長い撮影秒時の間に補正レンズ4が大きく移動し、撮影が終了した時点で、補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合が多い。よって、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行う。その結果、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用することで、大きな手振れが生じていた場合にも、撮影後の外部液晶モニタ19によりモニタされるモニタ画に対し、より早く振れ補正の効果を発揮できるようになる。
《外部液晶モニタによる撮影画像モニタ》
外部液晶モニタによる撮影画像モニタをオンに設定した場合には、撮影画像モニタ19のモニタ画を確認することにより、十分な振れ補正の効果を確認した上でレリーズすることができる。この場合、撮影結果は、十分な振れ補正の効果が得られ易い。一方、外部液晶モニタによる撮影画像モニタをオフに設定した場合、ユーザは、光学ファインダ7を用いて構図を決定することになる。この場合、振れ補正の効果が分かり難く、ユーザが外部液晶モニタ19をモニタしながら、本カメラ1に加えられる手振れを小さく抑えて撮影することができない為、本カメラ1に比較的大きな手振れが印加された状態で撮影されることが多い。
又、構図を変更した直後等においては、補正レンズ4は、その制御範囲端近辺にいる場合が多い。従って、外部液晶モニタ19による撮影画像モニタをオフに設定した場合には、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わせ、又、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大することで、より大きな振れにまで振れ補正の効果を得やすくする。尚、ユーザは、光学ファインダ7により構図をモニタしている為、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わせても、撮影前と撮影結果の構図の差異は気づき難い。
又、撮影後、比較的大きな手振れが印加された状態で撮影がなされると、撮影の間に補正レンズ4が大きく移動し、撮影が終了した時点で、補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合が多い。そのため、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行い、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用できるようにすることで、より早く、次の撮影時も大きな手振れに対応できるようにする。
外部液晶モニタ19による撮影画像モニタをオンに設定した場合には、撮影画像モニタにより、十分な振れ補正の効果を確認し、本カメラ1に加えられる手振れを比較的小さく抑えて撮影することができる。また、構図を変更した直後等、補正レンズ4がその制御範囲端近辺にいて、十分に振れ補正の効果が得られない場合には、補正レンズ4が略中央位置に戻るのをしばらく待って、振れ補正効果が十分得られてからレリーズすることが可能である。従って、この場合には、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わせず、又、撮影時の補正レンズ4の制御範囲は拡大しない。これにより、十分な光学性能と振れ補正の効果を得た上で、撮影前と撮影結果の構図の差異がほとんどない撮影を行うことができる。
又、前述の通り、撮影後、比較的本カメラ1に印加される手振れを抑えて撮影がなされる場合が多い為、撮影の間に補正レンズ4は大きくは移動せず、撮影が終了した時点で、補正レンズ4がその制御範囲中央部近辺にいる可能性が高い。そのため、撮影後の補正レンズ4のセンタリングは行わない。これにより、撮影結果の画角と撮影後に再開される外部液晶モニタ19によるモニタ画の画角との間のずれがほとんどなく、ユーザに違和感を与えなくてすむ。
《セルフタイマモード》
セルフタイマを用いて撮影する場合には、本カメラ1は、三脚など固定される場合が多く、本カメラ1に印加される手振れは小さい。そのため、撮影直前で補正レンズ4はその制御範囲中央部近辺にいる可能性が高く、又、ユーザは、撮影前に決定した構図と撮影結果の構図が同一であること、及び、高画質な撮影を期待する。従って、セルフタイマモードがオンされてセルフタイマ撮影を行う場合には、撮影前と撮影結果の構図の変化のないこと、及び、光学性能を優先することとから、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わせず、又、撮影時の補正レンズ4の制御範囲は拡大しない。
又、セルフタイマモードでは、本カメラ1は三脚に固定され、本カメラ1に印加される手振れは非常に小さい。その為、撮影の間に補正レンズ4はほとんど移動せず、撮影が終了した時点で、補正レンズ4がその制御範囲中央部近辺にいる可能性が高い。従って、撮影後の補正レンズ4のセンタリングは行わない。これにより、撮影結果の画角と撮影後に再開される外部液晶モニタ19によるモニタ画の画角との間のずれがほとんどなく、ユーザに違和感を与えなくてすむ。
一方、セルフタイマモードがオフされて通常の撮影を行う場合には、本カメラに手振れが印加されるため、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行い、補正レンズ4がその制御範囲の略中央部から撮影時の振れ補正を行わせる。また、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大し、より大きな振れに対応できるようにする。さらにまた、撮影の間に補正レンズ4が大きく移動し、撮影が終了した時点で補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合に対応すべく、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行う。それにより、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用できるようになり、次の撮影時も大きな手振れにもより早く対応できるようになる。
《連写モード》
連写モードを使用する場合、比較的高速秒時で使用されることが多く、又、より高速な駒速で、何枚もユーザの意図する構図で撮影することが望まれる。従って、連写モード時には、レリーズタイムラグ、及び、構図の変化がないようにするとともに、駒速を優先する。そのため、撮影直前、及び、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行わせない。また、比較的高速秒時で使用されることが多いため、撮影時に移動する補正レンズ4の移動量は小さく済む。よって、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大させないようにすることで、撮影時の光学性能の劣化を防ぐことができる。
一方、通常のモード、つまり、連写を行わない場合には、これと逆で、ユーザは、1回の撮影で良い写真を得ようと考えていることが想定される。従って、より成功写真の確率を高めるために振れ補正性能を優先し、より大きな振れにまで対応すべく、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行って、補正レンズ4をその制御範囲の略中央部から撮影時の振れ補正を行わせる。それにより、撮影光学系の光学性能劣化を抑えつつ、また、撮影時の補正レンズ4の制御範囲が拡大され、より大きな振れにまで対応できる。
また、撮影の間に補正レンズ4が大きく移動し、撮影が終了した時点で補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合に対応すべく、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行う。それにより、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用できるようになり、次の撮影時も大きな手振れにもより早く対応できるようになる。
《手振れ補正モード》
撮影準備中には振れ補正を行わず、撮影時のみ振れ補正を行うモードに設定された場合、撮影準備中には振れ補正を行わないため、撮影直前で補正レンズ4は制御範囲の略中央部にある。従って、補正レンズ4のセンタリングを行わない。そのため、撮影光学系の光学性能劣化を抑えつつ、大きな振れにまで対応でき、又、レリーズタイムラグを短くすることができる。
一方で、撮影準備中に外部液晶モニタ19で手振れの効果を確認できない為、前述のように本カメラ1に印加される手振れは比較的大きい。従って、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大し、より大きな振れに対応できるようにする。又、撮影後には、補正レンズ4をセンタリングする。そのため、撮影準備中に外部液晶モニタ19で手振れの効果を確認できない本場合にも、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用できるようにすることで、次の撮影時にも大きな手振れにより早く対応できるようにする。
又、撮影準備中を含む常時振れ補正を行うモードでは、比較的大きな振れにまで対応すべく、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行い、補正レンズ4の制御範囲の略中央位置から撮影時の振れ補正を行わせる。それにより、撮影光学系の光学性能劣化を抑えつつ、比較的大きな振れにまで対応できる。また、撮影時の補正レンズ4の制御範囲は変更しないで、不必要な光学性劣化を防ぐ。さらにまた、撮影の間に補正レンズ4が大きく移動し、撮影が終了した時点で補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合に対応すべく、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行う。それにより、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用できるようになり、次の撮影時も大きな手振れにより早く対応できるようになる。
又、流し撮りモード時の流し撮り方向は、撮影直前で振れ補正が行われていない為、撮影直前で補正レンズ4は制御範囲の略中央位置にある。従って、補正レンズ4のセンタリングを行わず、又、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大せずに撮影光学系の光学性能を確保する。撮影時に、補正レンズ4は制御範囲の略中央位置にあり、撮影後にも補正レンズ4のセンタリングを行わず、次の撮影時に対応することができる。
一方、流し撮りモード時の非流し撮り方向では、流し撮り時に手振れが非常に大きくなることを考慮に入れる。そして、より成功写真の確率を高めるために振れ補正性能を優先し、より大きな振れにまで対応すべく撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行って、補正レンズ4の制御範囲の略中央位置から撮影時の振れ補正を行わせる。それにより、撮影光学系の光学性能劣化を抑えつつ、大きな振れにまで対応する。また、非流し撮り方向において撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大することで、より大きな振れに対応できるようにする。
なお、この流し撮りにおける補正レンズ4の制御範囲の拡大幅は、通常の静止画撮影の拡大幅より大きい値が設定される。
このような構成により、流し撮りのように大きな手振れが発生するような場合は、手振れ補正性能を重視した撮影が行われる。
さて、補正レンズ4の位置が中心から離れれば離れるほど光学性能は劣化してしまう。通常の静止画撮影においては流し撮りほど大きな手振れが発生しないと推定されるので、本カメラ1では手振れ補正の性能よりも光学性能を重視し、補正レンズ4の制御範囲の拡大幅を流し撮りの場合より小さい値にすることとした。
又、撮影の間に補正レンズ4が大きく移動し、撮影が終了した時点で補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合に対応すべく、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行う。それにより、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用できるようになり、次の撮影時も大きな手振れにより早く対応できるようになる。
一方、手振れ補正モードがオフである場合、手振れが非常に小さくなる撮影条件での使用が想定される。例えば、三脚に固定された条件で撮影する等が想定される。このような場合、撮影前、撮影結果、及び、撮影後の構図の変化を極力抑え、かつ、レリーズタイムラグ、撮影光学性能を優先する。手振れ補正モードがオフである為、撮影直前での補正レンズ4はその制御範囲の略中央部に位置している。その為、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わず、また、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大を行わない。撮影時に、補正レンズ4は制御範囲の略中央部にあり、撮影後にも補正レンズ4のセンタリングを行わず、次の撮影時に対応するようにする。
《動画/静止画撮影設定》
本カメラ1は、レリーズ釦20を全押しして行われる撮影を、静止画と動画のどちらかに設定できる。動画撮影時には、レリーズ釦20を全押しして開始される動画撮影と、その前の撮影準備中に行われている外部液晶モニタ19によるモニタ画との構図に変化がないように、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わない。また、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大もせず、撮影後も補正レンズ4のセンタリングを行わない。その結果、動画撮影が開始されると、滑らかに動画撮影に移行し、レリーズ前、動画撮影中、及び、動画撮影後の撮影画像が同一の感触となり、違和感がない。なお、動画撮影において、大きな振れに対応すべく制御範囲の拡大し、次の静止画や動画の撮影時に大きな手振れに対応できるように撮影後センタリングをするようにしても良い。
一方、静止画撮影時はこの逆で、より成功写真の確率を高める為に、振れ補正性能を優先する。さらに、大きな振れにまで対応すべく、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行い、補正レンズ4の可動範囲の略中央位置から撮影時の振れ補正を行わせることで、撮影光学系の光学性能劣化を抑えつつ、大きな振れにまで対応させる。又、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大し、さらに大きな振れに対応できるようにする。さらにまた、撮影の間に補正レンズ4が大きく移動し、撮影が終了した時点で補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合に対応すべく、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行う。それにより、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用できるようになり、次の撮影時も大きな手振れにより早く対応できるようになる。
《構図優先モード》
本カメラ1は、カメラ1を三脚固定して風景写真を撮影する、或いは、撮影を許可された絵画等を構図を正確に決めて撮影する場合等の為に、構図優先モードを有する。構図優先モードに設定されると、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行わず、撮影時の補正レンズ4の制御範囲の拡大をせず、撮影後も補正レンズ4のセンタリングを行わない。その結果、リーズ前の外部液晶モニタ19によるモニタ画、撮影結果、及び、撮影後の外部液晶モニタ19によるモニタ画の画角の変化を極力抑えることができる。
一方、非構図優先モードでは、逆に、より成功写真の確率を高める為に振れ補正性能を優先する。さらに、大きな振れにまで対応すべく、撮影直前での補正レンズ4のセンタリングを行い、補正レンズ4の制御範囲の略中央部から撮影時の振れ補正を行わせる。その結果、撮影光学系の光学性能劣化を抑えつつ、大きな振れにまで対応できる。また、撮影時の補正レンズ4の制御範囲を拡大し、さらに大きな振れに対応できるようにする。さらにまた、撮影の間に補正レンズ4が大きく移動し、撮影が終了した時点で補正レンズ4がその制御範囲周辺まで移動している場合に対応すべく、撮影後の補正レンズ4のセンタリングを行う。それにより、補正レンズ4の制御範囲の上限から下限まで有効に使用できるようになり、次の撮影時も大きな手振れにより早く対応できるようになる。
以上説明してきた撮影条件や各種モード設定により、撮像前後のセンタリング、撮像中の制御範囲に関してきめ細かく説明してきたが、表8、表9に示される撮影条件や各種モード設定等は、同時に組み合わせることができないケースも存在する。例えば、表8によれば、撮影焦点距離が150mm以上の場合には、撮影前の補正レンズ4のセンタリングを行うが、一方、撮影倍率が1/1倍以上である場合には、撮影前の補正レンズ4のセンタリングを行わない。そして、撮影焦点距離が150mm以上で、かつ、撮影倍率が1/1倍以上のケースでは、撮影前の補正レンズ4のセンタリングを行うか否かについては、本カメラ1の製品としての性質に応じてケースバイケースで対応するものとする。
6−2−2.撮影時の具体例
ユーザがレリーズ釦20を全押しし、全押しSW120bがオンした場合の本カメラ1の具体的な作動を、図18を参照して説明する。なお、レリーズ釦20を全押しする時点では、図16に於けるタイミングt17以降行われている動作状態にあるものとする。具体的には、振動ジャイロ処理部201a、201bにより検出された振れに応じて設定された補正レンズ4の目標位置Lc(X)、Lc(Y)に、設定された切替え信号a、bに従ってソフトウェア制御またはハードウェア制御され、撮像素子9の振れが補正される状態にあるものとする。
主制御部10aは、タイミングt30に於いて、全押しSW120bがオンしたことを認識すると、タイミングt31に於いて、外部液晶モニタ19による撮像素子9による画像のモニタ表示を停止し、タイミングt32にて撮像素子9の動作を一旦停止する。なお、図18において、目標位置Lc(Y)は点線で示され、補正レンズ位置Lr(Y)は実線で示されている。
タイミングt32に続くタイミングt33は、撮像直前での補正レンズ4のセンタリングを行う場合のセンタリング開始タイミングを表している。撮像直前での補正レンズ4のセンタリングを行うか否かは、前項6−2−1.各種モードと撮影時の動作に基づいて決定される。撮像直前での補正レンズ4のセンタリングを行う場合、タイミングt33に於いて、振れ制御部10bは、補正レンズ4の目標位置Lc(x)、Lc(Y)を現在の補正レンズ4の位置を初期値として、所定の傾きVc0でその制御範囲中央に向けて変化させる。なお、図18の符号“イ”で示す部分の曲線が、撮像直前での補正レンズ4のセンタリングを行う場合の目標位置Lc(Y)および補正レンズ位置Lr(Y)を示している。その結果、現在、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御している場合には、ソフトウェア制御により、ハードウェア制御により補正レンズ4を制御している場合には、ハードウェア制御により、補正レンズ4が、徐々にその制御範囲中央にセンタリングされてゆく。
逆に、撮像直前での補正レンズ4のセンタリングを行わない場合には、図18の符合“ロ”で示すように補正レンズ4のセンタリングを行わないで、後述するタイミングt34の動作を行う。なお、図18では、センタリングするか否かを同一の図に記載したため、タイミングt33からタイミングt34の間を単に待っているように描かれているが、その必要はなく、タイミングt33からのセンタリングを行わず、直接、タイミングt34からの動作を行う。
次に、補正レンズ4がその制御範囲中央にセンタリングされると、振れ制御部10bは、タイミングt34おいて、これから行われる撮像動作時に、補正レンズ4の制御をハードウェア制御するかソフトウェア制御するかを切り替える。具体的には、振れ制御部10bは、5−2.カメラの撮影シーンと補正レンズ制御方法において説明したカメラの設定状態や撮影条件に応じて切替え信号a、bを操作し、補正レンズ4の制御をソフトウェア制御とするかハードウェア制御とするかを切り替える。
これにより、図8に於ける切替え部205a、205bが作動し、ソフトウェア制御による駆動量Ds(X)、Ds(Y)か、ハードウェア制御による駆動量Dh(X)、Dh(Y)かのどちらか一方が選択される。そして、選択された駆動量に基づき、PWM変換部204a、204b、及び、駆動部203a、203bを通じてコイル40a、40bが駆動される。その結果、設定したソフトウェア制御、或いは、ハードウェア制御のどちらかによる補正レンズ4の制御が行われる。
次に、タイミングt35に於いて、振れ制御部10bは、6−2−1.各種モードと撮影時の動作において説明したカメラの設定状態や撮影条件に基づいて、補正レンズ4の制御範囲を拡大するか否かを決定する。そして、拡大すると決定された場合には、補正レンズ4の制御範囲を拡大する。図18では、補正レンズ4の制御範囲を拡大する場合の例を2重線で示し、制御範囲を変更せずに本レリーズ釦20を全押しする前の状態を維持する場合を2重点線で示す。
次いで、タイミングt36からは、振れ制御部10bは、補正レンズ4の目標位置Lc(X)、Lc(Y)を設定し、本カメラ1に生じた振れを補正するように補正レンズ4の制御を開始する。具体的には、振動ジャイロ処理部201a、201bにより検出された振れに応じて、補正レンズ4の目標位置Lc(X)、Lc(Y)を設定する。そして、その目標位置Lc(X)、Lc(Y)に、タイミングt35で設定された切替え信号a、bの設定に従い、補正レンズ4をソフトウェア制御、或いは、ハードウェア制御し、撮像面上における像の振れを補正する。
タイミングt37において、主制御部10aは、撮像素子9による撮像動作を開始する。その後、必要な撮影秒時が終了すると、タイミングt38に於いてシャッタ8を閉じ始め、タイミングt40でシャッタ8が完全に閉じて撮像動作が終了する。このシャッタ8が閉じるまでのタイミングt38からタイミングt39の間に、閃光部6を作動させフラッシュ撮影を行う場合には、必要なタイミング(図18の例では、タイミングt39)で、閃光回路部11を作動させ、閃光部6を発光させる。
次に、主制御部10aは、タイミングt40でシャッタ8が閉じきって撮像動作が終了すると、タイミングt41に於いて、撮像素子9の撮像動作を終了し、タイミングt42から撮像素子9の撮像画像の読み出しを開始する。一方、振れ制御部10bは、少なくとも主制御部10aにより、シャッタ8が完全に閉じきって撮像が終了した後のタイミングt43に、今まで行っていた振れ補正動作を終了する。具体的には、補正レンズ4の目標位置Lc(X)、Lc(Y)を今時点の値に保持させ、その位置に補正レンズ4を制御する。
主制御部10aは、タイミングt42から開始した撮像素子9の撮像画像を読み出しがタイミングt44にて終了すると、その撮像結果をタイミングt45から外部液晶モニタ19に表示させる。以下では、この表示を“撮影画表示”と呼ぶことにする。さらに、主制御部10aは、タイミングt46から、閉じているシャッタ8を開き始め、元の状態に戻し始める。
タイミングt45から始められた“撮影画表示”はタイミングt52に終了し、タイミングt53に“モニタ画表示”に戻されるが、その前に、振れ制御部10bは、タイミングt47に於いて、補正レンズ4の制御をハードウェア制御するかソフトウェア制御するかをレリーズ釦20の全押し前(図18のタイミングt30以前)の状態に切り替える。具体的には、振れ制御部10bは切替え信号a、bを操作し、補正レンズ4の制御をソフトウェア制御とするかハードウェア制御とするかを切り替える。
これにより、図8に於ける切替え部205a、205bが作動し、ソフトウェア制御による駆動量Ds(X)、Ds(Y)か、ハードウェア制御による駆動量Dh(X)、Dh(Y)のどちらか一方が選択される。そして、選択された駆動量によりPWM変換部204a、204b、及び、駆動部203a、203bを通じてコイル40a、40bが駆動され、設定したソフトウェア制御、或いは、ハードウェア制御のどちらかによる補正レンズ4の制御が行われる。
次いで、前項6−2−1.各種モードと撮影時の動作において説明したカメラの設定状態や撮影条件に基づいて、撮像直後での補正レンズ4のセンタリングを行う場合には、振れ制御部10bは、タイミングt48に於いて、補正レンズ4の目標位置Lc(x)、Lc(Y)を、現在の補正レンズ4の位置を初期値として所定の傾きVc0でその制御範囲中央に向けて変化させる。この動作は、図18の符合“ト”で示す部分に相当する。このことにより、現在、ソフトウェア制御により補正レンズ4を制御している場合にはソフトウェア制御により、ハードウェア制御により補正レンズ4を制御している場合にはハードウェア制御により、補正レンズ4が、徐々にその制御範囲中央にセンタリングされてゆく。
逆に、撮像直後での補正レンズ4のセンタリングを行わない場合には、振れ制御部10bは、補正レンズ4のセンタリングを行わないで、後述するタイミングt49の動作を行う。この動作は、図18の符合“ヘ”で示す部分に相当する。なお、図18では、センタリングするか否かを同一の図に記載したため、タイミングt48からタイミングt49の間を単に待っているように描かれているが、その必要はなく、タイミングt48からのセンタリングを行わず、直接、タイミングt49からの動作を行っても構わない。
振れ制御部10bは、図18の符合“ト”で示すように補正レンズ4のセンタリングを行った場合、制御範囲中央部へのセンタリングが少なくとも完了したタイミングt49に於いて、図18の符号“ヘ”の場合には補正レンズ4の制御範囲中央部へのセンタリングを行わずタイミングt49に於いて、拡大された補正レンズ4の制御範囲を、本レリーズ釦20の全押しされる前(図18のタイミングt30以前)の状態に戻す。
次いで、タイミングt50からは、振れ制御部10bは、補正レンズ4の目標位置Lc(X)、Lc(Y)を設定し、本カメラ1に生じた振れを補正するように補正レンズ4の制御を開始する。具体的には、振動ジャイロ処理部201a、201bにより検出された振れに応じて、補正レンズ4の目標位置Lc(X)、Lc(Y)を設定する。そして、その目標位置LcX)、Lc(Y)に、タイミングt47で設定された切替え信号a、bの設定に従い、補正レンズ4をソフトウェア制御、或いは、ハードウェア制御し、撮像面上における像の振れを補正する。
主制御部10aは、タイミングt50で振れ補正が再開されると、タイミングt51から撮像素子9の動作を再開し、外部液晶モニタによる“撮影画表示”を終了する。そして、タイミングt53から撮像素子9の撮像画の“モニタ画表示”を再開させる。
以上説明した通り、本実施の形態では、レリーズ釦20が全押しされて行われる撮影時に、撮影前の補正レンズのセンタリングの有無切替え、撮影後の補正レンズのセンタリングの有無切替え、撮影中の補正レンズ制御のソフトウェア制御/ハードウェア制御の切替え、及び、撮影中の補正レンズ制御範囲の切替えを行うことが可能となった。
まず、撮影前の補正レンズのセンタリングの有無切替えについて。補正レンズ4の制御範囲中央部へのセンタリングを行った場合、撮像中の振れ補正が開始されるタイミングt36で、常に補正レンズ4が制御範囲中央部にある状態から振れ補正が開始される。そのため、補正レンズ4のシフト量が大きくなるほど悪化する光学性能を極力保ちつつ、かつ、大きな振れに対して振れ補正が可能となる。
図18の例では、符合“ロ”で示すように、補正レンズ4の撮像前のセンタリングしない場合には、撮像中の補正レンズ4の移動範囲が制御範囲中央部から下側に偏り、光学性能が劣化する。又、撮像前に補正レンズ4のセンタリングを行わなかった場合、符合“ニ”(撮像中に補正レンズ4の制御範囲を変えない場合)、或いは、符合“ホ”で示すようにそれ以上振れ補正ができなくなってしまう。しかし、補正レンズ4の撮像前にセンタリングする場合(符合“イ”に相当)は、符合“ハ”(撮像中に補正レンズ4の制御範囲を変えない場合)まで、或いは、図18の例では、撮像期間中全て振れ補正が可能となっている。
逆に、撮影前の補正レンズのセンタリングを行わない場合(図18の“ロ”に相当する)には、補正レンズ4を制御範囲中央部にセンタリングする時間(図18のタイミングt33からタイミングt34までの時間Tr1)がいらなくなり、レリーズ釦20を全押ししてから実際に撮像されるまでの時間(図18のタイミングt30からタイミングt37までの時間Tr0)、つまり、レリーズタイムラグが大幅に縮まり、シャッタチャンスを逃しにくくなる。
次に、撮影後の補正レンズのセンタリングの有無切替えについて。撮影後の補正レンズのセンタリングを行った場合(図18の“ト”に相当)には、その後(図18のタイミングt50から)に再開される振れ補正は、補正レンズ4の制御範囲中央部の位置から再開されるので、タイミングt53から再開される“モニタ画表示”の見栄えが良い。図18の例では、撮像後の補正レンズ4のセンタリングを行わなかった場合(図18の“ヘ”に相当)は、補正レンズ4の位置が上側に偏り、“チ”に於いて、その制御範囲上限を超えて振れ補正がそれ以上できなくなっている。一方、撮影後の補正レンズのセンタリングを行わない場合(図18の“へ”に相当)には、図18に於ける補正レンズ4の制御範囲中央部へのセンタリング(タイミングt48から49まで)が必要なくなり、撮影を連続的に繰り返す連写時には、この連写速度(単位時間当たりの撮影枚数)が向上するという効果もある。
撮影中の補正レンズ制御のソフトウェア制御/ハードウェア制御の切替えに関して。撮影中の補正レンズ4の制御を、ソフトウェア制御で行った場合には、補正レンズ4の制御音を小さくできる。逆に、ハードウェア制御で行った場合には、補正レンズ4の制御性が向上し、振れ補正性能が向上する。また、前述した5−2.カメラの撮影シーンと補正レンズ制御方法に従って、撮影中の補正レンズ制御のソフトウェア制御/ハードウェア制御を切り替えることで、より多くの撮影シーン、撮影状況に対応が可能となる。
撮影中の補正レンズ制御範囲の切替えについて。前項6−2−1.各種モードと撮影時の動作に基づき、撮像中の振れ補正性能を優先し、補正レンズ4の制御範囲を拡大する。この場合には、制御範囲を拡大しない場合にそれ以上は振れ補正できなかったケース(図18に示す“ハ”の場合)でも、振れ補正を正常におこなうことができ、より大きな振れにも対応することができるようになる。
逆に、撮像中の振れ補正性能よりも光学性能を優先したい撮影シーンでは、補正レンズ4の制御範囲の拡大を行わないようにし、撮影時の光学性能を保つようにする。この場合、撮影後に補正レンズ4の制御範囲中央へのセンタリングを行う際の、センタリングにかかる時間が節約できる。また、撮影を連続的に繰り返す連写時には、次の連写時における撮影前の補正レンズ4のセンタリング(図18のタイミングt33に相当)の量が小さくて済み、センタリングにかかる時間が節約できるため、連写速度(単位時間当たりの撮影枚数)が向上するという効果もある。このように、本カメラ1は、各種条件でその最適なものにこれらの切替えを行うことができるので、種々多様な撮影条件に対応でき、撮影シーンが大きく広がることとなる。
本発明は、これ以外にも種々多岐な応用が可能である。上述した第1実施形態では、振れ補正に撮影光学系の振れ補正レンズ4により撮影光軸2の方向を変えたが、例えば、可変頂角プリズム等を用いて撮影光軸2の方向を変えるようにしても良い。また、撮像結果を本カメラ1の外部に表示させる手段として外部液晶モニタ19を用いたが、必ずしも液晶モニタに特定されるものではない。例えば、エレクトロクロニズム表示素子、プラズマ表示素子、その他の平面型ディスプレイ等が使用できる。又、光学ファインダ7の替わりに、液晶モニタ等を組み込み込んだファインダ等を用いることもできる。
また、振動ジャイロ200a、200bにより本カメラ1に生じた手振れによる角速度を検出したが、これに限らない。振動ジャイロの替わりに加速度センサを使用し、カメラ1に生じた加速度を検出し、これを2回積分することで本カメラ1に生じた位置のディメンションの振れを検出するよう構成することもできる。或いは、撮像素子9により得られた撮像結果により直接撮像面に生じた振れを検出するような公知技術が提案されており、この技術を用い、得られた撮像面振れ量を打ち消すように補正レンズ4を駆動することもできる。
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態では、振動ジャイロ200a、200bにより得られた振れに応じ、撮影光学系の一部で構成される補正レンズ4を、撮影光軸2に対して直行する平面方向にシフト駆動することで、撮像素子9に生じた振れを打ち消すようにしているが、振れ補正方法としては、このような構成に限らない。図19は、本発明に係るカメラの第2の実施の形態を示すブロック図である。図19に示すカメラでは、振れにより撮影光軸2が変化して生じた像振れ量にたいして、撮像素子9自体をシフト移動させることにより振れ補正するようにした。なお、図19において、図1で示されるカメラ1の構成と同一部分は同一の番号で示す。また、以下では、上述した第1の実施のカメラ1と異なる部分を中心に説明する。
図1に示すカメラ1では、撮影レンズの一部の補正レンズ4を撮影光軸2に直行する2軸方向に、振れ補正回路部14を用いてシフト駆動する構成をとっていた。一方、図19に示すカメラ1ではレンズ4は固定しておき、その代わりに、振れ補正回路部14により、撮像素子9を撮影光軸2と直交する2軸方向(図19では、X軸、Y軸と記す方向)にシフト駆動するようにした。撮像素子9を撮影光軸2に垂直な平面内の互いに略直交する方向にシフトさせる機構については、図2および図4に示した機構を応用することができる。
具体的には、図2、図4に於ける補正レンズ4の替わりに撮像素子9を配置する。摺動ボール22が固定部材20および固定部材21の面を転がりまたは摺動することで、撮影光軸2と略垂直な平面内を、撮像素子9を所定の可動範囲内で滑らかにシフト移動させることができる。また、コイル40に電流を流すことにより可動部21に電磁力が発生し、撮像素子9を撮影光軸2と直行する2軸方向に駆動可能となる。ホール素子44からは、撮像素子9の位置変化に応じた信号が得られ、これを処理することで撮像素子9の位置を検出することができる。
振れ補正回路部14については、図8で示した回路をそのまま使用可能である。その場合、ホール素子44a、44bからは撮像素子9の位置に応じた信号が得られ、ホール素子処理回路部202a、202bにより得られる出力は、撮像素子9の位置となる。以降、前述の説明を含め、図2から図18、及び、その説明内容に於ける補正レンズ位置Lrを、撮像素子位置と読み替えれば、撮像素子9を検出された振れに応じてシフト駆動する振れ補正カメラにも応用可能なことが容易に分かり、又、本実施形態で示された本発明に関わるカメラの作動が実現可能となる。
[第3の実施形態]
また、本発明に係るカメラは、上述したディジタルスチルカメラ、特に、コンパクトディジタルスチルカメラに限定されるものではなく、銀塩フィルムカメラにも、或いは、一眼レフカメラにも応用可能である。図20は、本発明をディジタル一眼レフカメラシステムに応用した一例を示すものである。図20に示すカメラ701は、ボディ部701aと、それに着脱可能に構成されるレンズ部701bとから成る。
図20で示されるディジタル一眼レフカメラシステムと図1で示される前述のコンパクトディジタルスチルカメラ(カメラ1)との対応関係は、以下のようになっている。すなわち、図20で示されるカメラ701が図1で示されたカメラ1に、以下同様に、ボディ部701aがボディ1aに、レンズ部701bが鏡筒1bに、撮影光軸702が撮影光軸2に、ズーミングレンズ703がズーミングレンズ3に、補正レンズ704が補正レンズ4に、フォーカシングレンズ705がフォーカシングレンズ5に、閃光部706が閃光部6に、ファインダ707が光学ファインダ7に、シャッタ708がシャッタ8に、撮像素子709が撮像素子9に、レンズ制御部710とボディ主制御部810が制御部10に、レンズ主制御部710aとボディ主制御部810が主制御部10aに、振れ制御部710bが振れ制御部10bに、閃光回路部711が閃光回路部11に、ズーミングレンズ駆動部712がズーミングレンズ駆動部12に、ズーミングレンズ位置検出部713がズーミングレンズ位置検出部13に、振れ補正回路部714が振れ補正回路部14に、フォーカシングレンズ駆動部715がフォーカシングレンズ駆動部15に、フォーカシングレンズ位置検出部716がフォーカシングレンズ位置検出部16に、シャッタ駆動部717がシャッタ駆動部17に、操作部718が操作部18に、外部液晶モニタ719が外部液晶モニタ19に、集音部730が集音部30に、不揮発性記憶媒体731が不揮発性記憶媒体31に、操作音発生部732が操作音発生部32にそれぞれ対応する。
尚、図1のカメラ1に於ける制御部10は、図20に於けるカメラ701では、レンズ部701b内の機能を制御するレンズ制御部710と、ボディ部701a内の機能を制御するボディ主制御部810とに分かれている。レンズ制御部710、及び、ボディ主制御部810は、ワンチップマイクロコンピュータ等により構成できる。レンズ制御部710とボディ主制御部810とは、公知の技術、例えばシリアル通信等により双方のデータ等を交換し、図1に於ける制御部10と同様の機能を実現する。又、図20の本カメラ701では、ファインダ707は、ボディ主制御部810によりファインダ用液晶モニタ707aを駆動して、撮像素子709から得られた撮像画等を表示する構成となっている。ユーザは、ファインダ用液晶モニタ707aに表示された撮像画等を、ファインダ用光学系707bを介して観察することができる。
また、図20に於けるカメラ701では、図2に示される補正レンズ4のシフト機構を使用し、図4に於ける補正レンズ4の駆動、位置検出機構を用いている。以下同様に、図2以降図18までの図、及び、その説明してきた動作がそのままカメラ701に応用可能である。さらに、第2の実施の形態で示したような、検出された振れに応じて撮像素子9を移動させて振れ補正させる構成を、図20の一眼レフカメラに応用しても良い。また、ソフトウェア制御とハードウェア制御とを切り替える代わりに、駆動量の演算を行うロジックハードウェアまたはアナログハードウェアを2つ備え、一方を他方よりも高速なものとし、それらを切り替えて用いるようにしても良い。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
以上説明したように、本実施の形態のカメラシステムでは、カメラシステムの設定状態または撮影条件に基づいて、振れ補正部が配置し得る範囲である第1範囲の変更を行うか否かを決定したり、第1範囲を変更する際の変更量を決定したりしているので、シチュエーションに応じた適切な振れ補正をより効果的に行うことができる。カメラシステムの設定状態または撮影条件としては、例えば、(a)操作者による撮影指示操作に基づく撮影の開始前にセンタリング手段によるセンタリングを行うか否かの設定状態、(b)振れ補正部の移動量と撮像面上の像移動量との関係であるシフト量撮像面倍率、(c)撮像面が被写体光に露光される時間である撮影秒時、(d)設定されているフォーカスモードの種類、(e)設定されている閃光撮影モードの種類、(f)セルフタイマ撮影が行われるセルフタイマモードのオンオフ状態、(g)撮影を複数回連続して行う連写撮影モードのオンオフ状態および(h)振れ補正のオンオフ状態などがある。
1、701 カメラ:1a、701a ボディ:1b、701b 鏡筒:2、702 撮影光軸:3、703 撮影光学系(ズーミングレンズ):4、704 撮影光学系(補正レンズ):5、705 撮影光学系(フォーカシングレンズ):6、706 閃光部:7 光学ファインダ:707 ファインダ:707a ファインダ用液晶モニタ:707b ファインダ用光学系:8、708 シャッタ:9、709 撮像素子:10 制御部:710 レンズ制御部:810 ボディ主制御部:10a 主制御部:710a レンズ主制御部:10b、710b 振れ制御部:11、711 閃光回路部:12、712 ズーミングレンズ駆動部:13、713 ズーミングレンズ位置検出部:14、714 振れ補正回路部:15、715 フォーカシングレンズ駆動部:16、716 フォーカシングレンズ位置検出部:17、717 シャッタ駆動部:18、718 操作部:20 固定部:20a、20b 固定部突起:21 可動部:21a、21b 可動部突起:22 摺動ボール:23 付勢バネ:30 集音部:31 記憶媒体:32 操作音発生部:40 コイル:41 駆動用マグネット:42 ヨーク:43 位置検出用マグネット:44 ホール素子:44a ホール素子(X軸):44b ホール素子(Y軸):120a 半押しSW:120b 全押しSW:121 メインSW:122a ズームダウンSW:122b ズームアップSW:123 メニューSW:124a マルチ選択(中央)SW:124b マルチ選択(右)SW:124c マルチ選択(上)SW:124d マルチ選択(左)SW:124e マルチ選択(下)SW:200a 振動ジャイロ(X軸):200b 振動ジャイロ(Y軸):201a 振動ジャイロ処理部(X軸):201b 振動ジャイロ処理部(Y軸):202a ホール素子処理部(X軸):202b ホール素子処理部(Y軸):203a 駆動部(X軸):203b 駆動部(Y軸):204a PWM変換部(X軸):204b PWM変換部(Y軸):205a 切替え部(X軸):205b 切替え部(Y軸):206a ハードウェア制御部(X軸):206b ハードウェア制御部(Y軸):251a A/D変換部(X軸):252a 駆動量演算部(X軸):253a タイミング/パラメタ制御部(X軸):254a 減算器(X軸):301a、302a、303a 演算増幅器:304a トランジスタ:305a、306a D/A変換器:311a、312a、313a、314a 抵抗:315a コンデンサ:401a D/A変換部:402a A/D変換部:403、404 演算増幅器:411、412、413、414、415、416、417 抵抗:421、422 コンデンサ:500a 駆動量ゲイン部:501a ディジタルフィルタ部