JP5187676B2 - 腹腔内腫瘍病変の治療又は予防用の医薬組成物 - Google Patents
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Description
Hasegawa,K. et al. Clinical Cancer Res., 2006, 12(6), 1868-75.Measle virusを用いたpreclinical study. Nawa, A. et al. Gynecol Oncol, 2003,91 81-88.
(抗腫瘍ウイルス)
本発明の抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞は、抗腫瘍ウイルスを保持している。抗腫瘍ウイルスは、抗腫瘍作用を示すウイルスである。抗腫瘍ウイルスとしては、腫瘍溶解性ウイルス(Oncolytic virus)が挙げられる。腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レオウイルス及び麻疹ウイルスに属する天然のウイルス及びこれらのウイルスを起源として人工的な遺伝子組換えがなされたウイルスが挙げられる。こうした腫瘍溶解性ウイルスは、腹腔内腫瘍病変の予防又は治療用として用いることができる程度に弱毒化されていることが好ましい。
抗腫瘍ウイルスが保持される細胞は、ヒト腹膜中皮細胞を用いることができる。ヒト腹膜は、腹腔を裏打ちするとともに腹腔のなかに含まれる内蔵の大部分を覆っている漿膜嚢を構成部分である中皮細胞及びその培養細胞を含んでいる。ヒト腹膜としては、例えば、胃の大弯から出て横行結腸に至る腹膜のひだである大網中皮細胞や小網中皮細胞が挙げられる。大網は、通常、エプロン状に小腸前部に垂れ下がっている。なお、本明細書において、ヒト腹膜中皮細胞とは、がん化等していない正常細胞を意味している。
抗腫瘍ウイルスに感染したヒト腹膜中皮細胞を取得する方法は、ヒト腹膜中皮細胞に抗腫瘍ウイルスを感染させる工程と、抗腫瘍ウイルスをヒト腹膜中皮細胞内で増殖させる工程と、を備えることができる。これらの感染工程及び増殖工程は、いずれも生体外のヒト腹膜中皮細胞に対して実施することが好ましい。
本発明の一実施形態である抗腫瘍ウイルス保持用材料は、ヒト大網中皮細胞などのヒト腹膜中皮細胞を含むことができる。上記のとおり、ヒト腹膜中皮細胞は、抗腫瘍ウイルスの感染、増殖及び保持に適したものであるから、抗腫瘍ウイルス感染細胞を取得するのに用いる抗腫瘍ウイルス保持用材料として好ましい。ヒト腹膜中皮細胞は、上記のように抗腫瘍ウイルスの増殖特性、抗腫瘍活性の発揮等に有効であるほか、その由来を考慮しても腹腔内投与に適しているといえる。ヒト腹膜中皮細胞は、また、培養が容易である点においても好ましい。
本発明の医薬組成物は、本発明の抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞を有効成分として含有することができる。本医薬組成物は、抗腫瘍ウイルス感染ヒト腹膜中皮細胞を有効成分とすることで、ヒト腹腔内に投与するのにあたり高い抗腫瘍ウイルスの増殖能及び抗腫瘍活性を発揮することができる。なお、本医薬組成物の実質的な有効成分は抗腫瘍ウイルスである。このため、本医薬組成物は、ヒト腹膜中皮細胞に保持される抗腫瘍ウイルスを有効成分とする、医薬組成物又はヒト腹膜中皮細胞をキャリアとして備える抗腫瘍ウイルスを有効成分とする医薬組成物と言い換えることができる。
本発明の抗腫瘍ウイルスの増殖方法は、ヒト腹膜中皮細胞に抗腫瘍ウイルスを感染させる工程と、抗腫瘍ウイルスをヒト腹膜中皮細胞内で増殖させる工程と、を備えることができる。本発明の増殖方法によれば、抗腫瘍ウイルスを速やかにかつ効率よく増殖させることができる。したがって、所望の量の抗腫瘍ウイルスを迅速に得ることができる。このため、抗腫瘍ウイルスをそのまま投与する場合に抗腫瘍ウイルスを調製することができる。
患者同意のもと、検体(ヒト大網)を採取(最大10cmX10cm)した。大網を滅菌PBSで洗浄後、はさみでカットし、再度PBSで洗浄した。カットした大網を50mlファルコンチューブに入れ(チューブの1/3−1/4程度)、37℃で温めておいた0.25%トリプシン含有/EDTA(ギブコ社製、GIBCO 25200)を大網が浸漬する程度(約25ml程度)加えた。37℃の温浴にチューブを配置して、5分毎に軽く振ることを20分間継続した。その後、滅菌ビーカーにチューブ内容物を出し、チューブ内を10%FCS−RPMI1640ですすぎ、さらに、大網表面を10%FCS−RPMI1640ですすぎ、新しいファルコンチューブにビーカー内容物を移し、2500rpmで5分間遠心した。遠心後、上清を残量が5mlくらいまで除き、新しい10%FCS−RPMI1640を加えて懸濁し、培養器(dish,flaskなど)に移し、37℃、5%CO2雰囲気(ガス)で静置した。翌日、培地を除き、10%FCS−RPMI1640加えて37℃、5%CO2雰囲気下で培養し、5〜7日程度で継代した。なお、採取した大網は正常であり、培養中の大網中皮細胞も正常細胞であることを確認している。
UL56遺伝子を含む領域を欠損しているHSV−1ウイルスをHF株から分離した。このHSV−1 HF株由来クローン10(MNO10:名古屋大学医学部病態制御研究施設ウイルス感染研究部門にて保管)は、PCR、塩基配列の決定およびウエスタン分析を行うことにより、UL56遺伝子が欠損していることを確認した。本実施例では、このHF10株を弱毒化(UL39遺伝子にLacZ遺伝子を挿入して破壊して弱毒化されている。)したHh101株を用いた。なお、Hh101株は、HF10株のマウスへの毒性を考慮して使用した。
実施例1と同様にして2回継代して得たヒト大網中皮細胞にMOI3でHh101株を感染させた。感染から2時間後に0.25%トリプシン/EDTA溶液を添加して感染細胞を分離して(A)1×104、(B)1×103、及び(C)1×102個の感染細胞をSKOV3細胞(約100×106個)に対して投与して細胞状態を観察した。対照として、Hh101株を(a)3×104PFU(MOI0.03)、(b)3×103PFU(MOI0.003)及び(c)3×102PFU(MOI0.0003)でSKOV3細胞に直接投与して細胞状態を観察した。なお、SKOV3細胞は、5%FCS−RPMI1640で培養を開始した。図5に、(A)及び(a)で投与した場合のSKOV3の細胞状態の経時的変化(Hh101感染ヒト大網中皮細胞のSKOV3細胞への感染から9時間から24時間)を示し、図6に、同様に(A)及び(a)で投与した場合のSKOV3のメイグリュンワルド・ギムザ染色による細胞状態の経時的変化(Hh101感染ヒト大網中皮細胞のSKOV3細胞への感染から9時間〜48時間経過後)を示す。
(1)腹腔内播種モデルの作製
エーテル麻酔下に、合計6匹の6週令のヌードマウスに卵巣癌由来のSKOV3 oldを2×106/500μlPBSをマウスの腹腔内に投与した。
腹腔内播種モデル作製からday6、day9及びday12のとき、実施例1において調製したヒト大網中皮細胞にHh101株をMOI3で感染させた。すなわち、PBSで所定濃度に調製したウイルス液を、所定の細胞数で準備されたヒト大網中皮細胞に対して添加し、1時間静置した。1時間後、ウイルス液を除き、5%FCS−RPMI1640で1時間培養した。感染2時間後に、0.25%トリプシン/EDTA液で処理して、細胞を分散させた後、細胞をファルコンチューブに回収した。回収した分散液を1100rpmで5分間遠心分離後、細胞をPBSで洗浄し、さらに、遠心及び洗浄を2回繰り返した。最終的に得られた細胞をPBSに懸濁して細胞数を計数し、3×106/1mlPBS/マウス)投与した。3匹の腹腔内播種モデル(ウイルス感染細胞1〜3)につき上記の日程でそれぞれ3回投与した。コントロールとして、PBS1mlを3匹の腹腔内播種モデル(コントロール1〜3)について上記日程でそれぞれ3回投与した。
Claims (10)
- 腫瘍溶解性を有する単純ヘルペスウイルスを保持するウイルス感染ヒト大網中皮細胞を有効成分として含有する、ヒト腹腔内腫瘍病変の予防又は治療用組成物。
- 前記ウイルスは、UL56遺伝子が不活性化されている変異単純ヘルペスウイルスである、請求項1に記載の組成物。
- 前記変異単純ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスタイプ1 HF10株を含む、請求項2に記載の組成物。
- ヒト腹腔内臓器腫瘍切除手術の前及び/又は後に腹腔内に投与される、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
- 前記ヒト大網中皮細胞が自家細胞である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
- 腫瘍溶解性を有するウイルスを保持するウイルス感染細胞の製造方法であって、
ヒト大網中皮細胞に腫瘍溶解性を有する単純ヘルペスウイルスを感染させる感染工程と、
前記ウイルスを前記ヒト大網中皮細胞内で増殖させる増殖工程と、
を備える、方法。 - ヒト大網中皮細胞を含む、抗腫瘍活性を有するウイルスの保持用材料。
- 前記保持用材料はヒト腹腔内投与用である、請求項7に記載の保持用材料。
- 抗腫瘍活性を有するウイルスの増殖方法であって、
ヒト大網中皮細胞に腫瘍溶解性を有する単純ヘルペスウイルスを感染させる工程と、
前記ウイルスを前記ヒト大網中皮細胞内で増殖させる工程と、
を備える、方法。 - 前記ウイルスは、UL56遺伝子が不活性化されている変異単純ヘルペスウイルスである、請求項9に記載の方法。
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